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特開2023-167576電子機器、取り外しネジ、およびカバー取り外し方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167576
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】電子機器、取り外しネジ、およびカバー取り外し方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 5/03 20060101AFI20231116BHJP
   H05K 5/02 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
H05K5/03 A
H05K5/02 V
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078863
(22)【出願日】2022-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木下 宏晃
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 大輔
(72)【発明者】
【氏名】佐野 哲也
(72)【発明者】
【氏名】山内 武仁
【テーマコード(参考)】
4E360
【Fターム(参考)】
4E360AA02
4E360AB05
4E360AB08
4E360AB17
4E360AB18
4E360AB42
4E360BA01
4E360BA11
4E360BB02
4E360BB12
4E360BB27
4E360BD03
4E360BD05
4E360CA02
4E360CA03
4E360EA18
4E360EA24
4E360EA28
4E360EC05
4E360EC14
4E360ED02
4E360ED03
4E360ED07
4E360EE03
4E360FA02
4E360FA12
4E360FA13
4E360GA07
4E360GA12
4E360GA47
4E360GA51
4E360GB26
4E360GB46
4E360GC02
4E360GC03
4E360GC04
4E360GC08
(57)【要約】
【課題】好適な外観が得られ、しかもカバーを筐体から適切に取り外すことのできる電子機器を提供する。
【解決手段】電子機器10は、第1筐体12Aの縁に沿って粘着テープ58で固定されたカバー18Aと、側壁40aに形成された雌ネジ孔52と、カバー18Aの内面18Acから突出する突出部54とを備える。突出部54は、雌ネジ孔52の延長上に位置し、側壁40cから離れる方向に向かって突出量が大きくなる傾斜面54bを有する。取り外しネジ70は、ヘッド70aと、ヘッド70aから突出し雌ネジ孔52に螺合する雄ネジ部70bと、雄ネジ部70bより小径で該雄ネジ部70bからさらに突出する円柱部70cと、円柱部70cの先端を形成する球面部70dとを有する。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器であって、
筐体と、
前記筐体の縁に沿って粘着材で固定されたカバーと、
前記筐体の側壁に形成された雌ネジ孔と、
前記カバーの内面から突出する突出部と、
を備え、
前記突出部は、前記雌ネジ孔の延長上に位置し、前記側壁から離れる方向に向かって突出量が大きくなる傾斜面を有する
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器において、
前記突出部は金属製であり、前記傾斜面には樹脂片が設けられている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項1に記載の電子機器において、
前記雌ネジ孔は、前記突出部に達しない長さの化粧ネジで塞がれている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項1に記載の電子機器において、
前記筐体は扁平の略矩形であり、1つの縁がヒンジによって他の筐体と回動可能に接続されており、
前記カバーは前記筐体の一面のほぼ全面を覆っており、
前記雌ネジ孔および前記突出部は、前記カバーにおける前記1つの縁に沿った辺の端部の近傍に設けられている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項1に記載の電子機器において、
前記筐体は前記カバーの周囲を覆う塀を有する
ことを特徴とする電子機器。
【請求項6】
電子機器の筐体から該筐体に粘着材で固定されたカバーを取り外すための取り外しネジであって、
ヘッドと、
前記ヘッドから突出し前記雌ネジ孔に螺合する雄ネジ部と、
前記雄ネジ部より小径で該雄ネジ部からさらに突出する円柱部と、
前記円柱部の先端を形成する球面部と、
を有する
ことを特徴とする取り外しネジ。
【請求項7】
ネジを用いて電子機器の筐体から当該筐体に粘着材で固定されたカバーを取り外す方法であって
前記筐体の側壁に形成された雌ネジ孔に対して前記ネジを螺進させる工程と、
前記雌ネジ孔の延長上に位置し前記カバーの内面から突出する突出部
に対してさらに前記ネジを螺進させ、前記突出部に形成された傾斜面を前記ネジの先端に形成された球面部によって押し上げることで前記カバーを浮き上がらせる工程と、
を有することを特徴とするカバー取り外し方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体の縁に沿って粘着材で固定されたカバーを有する電子機器、該電子機器の筐体からカバーを取り外す取り外しネジ、および該電子機器の筐体からカバーを取り外すカバー取り外し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ノートブック型のパーソナルコンピュータ(ノート型PC)やタブレット型のパーソナルコンピュータ(タブレット型PC)等の電子機器の筐体には、一面をカバーで覆っているものがある。筐体の内部にはマザーボードなどの機器が収納されており、メンテナンス時にはカバーを取り外す必要がある。一般的にカバーは筐体に対して複数のビスで止められており(特許文献1)、ビスを取り外せばカバーが筐体から取り外される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-046022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところでカバーに複数のビスが留まっていると意匠上好ましくない。そのためカバーを筐体の縁に沿って粘着材で固定することが検討されている。しかしながら、粘着材によって固定されたカバーは取り外しが困難になる。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、好適な外観が得られ、しかもカバーを筐体から適切に取り外すことのできる電子機器、取り外しネジ、およびカバー取り外し方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の第1態様に係る電子機器は、電子機器であって、筐体と、前記筐体の縁に沿って粘着材で固定されたカバーと、前記筐体の側壁に形成された雌ネジ孔と、前記カバーの内面から突出する突出部と、を備え、前記突出部は、前記雌ネジ孔の延長上に位置し、前記側壁から離れる方向に向かって突出量が大きくなる傾斜面を有する。
【0007】
また、本発明の第2態様に係る取り外しネジは、電子機器の筐体から該筐体に粘着材で固定されたカバーを取り外すための取り外しネジであって、ヘッドと、前記ヘッドから突出し前記雌ネジ孔に螺合する雄ネジ部と、前記雄ネジ部より小径で該雄ネジ部からさらに突出する円柱部と、前記円柱部の先端を形成する球面部と、を有する。
【0008】
さらに、本発明の第3態様に係るカバー取り外し方法は、ネジを用いて電子機器の筐体から当該筐体に粘着材で固定されたカバーを取り外す方法であって
前記筐体の側壁に形成された雌ネジ孔に対して前記ネジを螺進させる工程と、
前記雌ネジ孔の延長上に位置し前記カバーの内面から突出する突出部に対してさらに前記ネジを螺進させ、前記突出部に形成された傾斜面を前記ネジの先端に形成された球面部によって押し上げることで前記カバーを浮き上がらせる工程と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の上記態様によれば、雌ネジ孔の延長上に突出部が設けられ、該突出部の傾斜面は側壁から離れる方向に向かって突出量が大きくなっており、該傾斜面に取り外しネジの先端を押圧することによりを筐体から適切に取り外すことができる。カバーは粘着材で粘着固定しておくことができ、ビス止めが不要となり好適な外観が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、一実施形態に係る電子機器を閉じて0度姿勢とした状態を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、図1に示す電子機器を開いて180度姿勢とした状態を模式的に示す斜視図である。
図3図3は、電子機器の側方の拡大斜視図である。
図4図4は、カバー取り外し機構の断面側面図である。
図5図5は、カバーの内面の一部を示す模式図である。
図6図6は、突出部とその周辺の斜視図である。
図7図7は、分解した突出部とその周辺の斜視図である。
図8図8は、取り外しネジの側面図である。
図9図9は、カバー取り外し機構に取り外しネジを適用してフレーム部材からカバーを取り外す方法のフローチャートである。
図10図10は、雌ネジ孔から化粧ネジを取り外す様子を示す斜視図である。
図11図11は、取り外しネジを雌ネジ孔に取り付ける様子を示す斜視図である。
図12図12は、取り外しネジの先端により傾斜面を押し上げてカバーを浮き上がらせた状態を示す断面側面図である。
図13図13は、板片によりカバーをさらに浮き上がらせる様子を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態にかかる電子機器10、取り外しネジ70、およびカバー取り外し方法を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0012】
図1は、一実施形態に係る電子機器10を閉じて0度姿勢とした状態を模式的に示す斜視図である。図2は、図1に示す電子機器10を開いて180度姿勢とした状態を模式的に示す斜視図である。図1図2に示すように、電子機器10は、第1筐体12A及び第2筐体12Bと、ヒンジ装置14と、ディスプレイ16とを備える。各筐体12A,12Bは、互いに隣接して配置されている。各筐体12A,12Bは、CPUを実装したマザーボード、バッテリ装置、アンテナモジュール、及び通信モジュール等の各種電子部品を適宜搭載している。
【0013】
第1筐体12Aは、フレーム部材17Aと、カバー18Aとを備える。フレーム部材17Aは、第2筐体12Bと隣接する隣接縁(1つの縁)38A以外の3辺に側壁40a,40b,40cを形成した矩形の枠状部材である。側壁40a,40bは、隣接縁38Aと直交する辺の壁であり、側壁40cは隣接縁38Aとは反対側の壁である。カバー18Aは、フレーム部材17Aの裏面開口を閉じるプレート状部材であり、第1筐体12Aの裏面のほぼ全面を覆っている。カバー18Aにおける隣接縁38Aに沿う辺18Aaの両端を内側端部(1つの縁に沿った辺の端部)42aおよび内側端部42bと呼ぶ。内側端部42aは側壁40aの側で、内側端部42bは側壁40bの側である。内側端部42a,42bは、0度姿勢における電子機器10の角部43a,43b(図1参照)よりもヒンジ装置14などの幅の分だけ他方に偏った位置にある。内側端部42a,42bは、0度姿勢では電子機器10の隅に近いが、180度姿勢では図2における左右方の略中間に位置する。
【0014】
第2筐体12Bは、第1筐体12Aと隣接する隣接縁(1つの縁)38B以外の3辺に側壁44a,44b,44cを形成したフレーム部材17Bと、フレーム部材17Bの裏面開口を閉じるカバー18Bとを備える。側壁44a,44bは、隣接縁38Bと直交する辺の壁であり、側壁44cは隣接縁38Bとは反対側の壁である。側壁44aは側壁40aと同じ側の壁であり、側壁44bは側壁40bと同じ側の壁である。カバー18Aは、フレーム部材17Aの裏面開口を閉じるプレート状部材であり、第2筐体12Bの裏面のほぼ全面を覆っている。カバー18Bにおける隣接縁38Bに沿う辺の両端を端部46aおよび端部46bと呼ぶ。端部46aは側壁44aの側で、端部46bは側壁44bの側である。
【0015】
各部材17A,17B,18A,18Bは、例えばステンレスやマグネシウム、アルミニウム等の金属部材、或いは炭素繊維等の強化繊維を含む繊維強化樹脂板等で構成される。
【0016】
筐体12A,12B間の角度姿勢について、互いに面方向で重なるように積層された状態を0度姿勢(図1参照)と呼び、互いに面方向と垂直する方向に並んだ状態を180度姿勢(図2参照)と呼んで説明する。ヒンジ装置14は、筐体12A,12Bを0度姿勢と180度姿勢との間で相対的に回動可能に連結している。ヒンジ装置14は、図1に示す0度姿勢で形成される隣接縁38A,38B間の隙間を隠す背表紙としても機能する。ディスプレイ16は、筐体12A,12B間に亘って延在している。
【0017】
図1に示す0度姿勢において、筐体12A,12Bは、二つ折りに折り畳まれた状態となる。ディスプレイ16は、有機ELで形成されたペーパー状のフレキシブルディスプレイである。0度姿勢時、ディスプレイ16は、図2に示す第1筐体12A側の領域R1と第2筐体12B側の領域R2とが対向するように配置され、領域R1,R2間の境界領域である折曲領域R3が円弧状に折り曲げられた状態となる。図2に示す180度姿勢において、筐体12A,12Bは、互いに左右に並んで配置される。この際、ディスプレイ16は、領域R1,R2及び折曲領域R3が平面上に並んで配置され、全体として1枚の平板形状を成す。ディスプレイ16は、領域R1が第1筐体12Aに対して相対的に固定され、領域R2が第2筐体12Bに対して相対的に固定される。ディスプレイ16の折曲領域R3は、筐体12A,12Bに対して相対移動可能である。
【0018】
図3は、電子機器10の側方の拡大斜視図である。図3に示すように、内側端部42aの近傍、および端部46aの近傍にはそれぞれカバー取り外し機構50が設けられている。第1筐体12Aおよび第2筐体12Bにおけるカバー取り外し機構50とその周辺部は同様の構造となっており、以下では第1筐体12A側の内側端部42a近傍に設けられたものについて説明する。
【0019】
図4は、カバー取り外し機構50の断面側面図である。図3図4に示すように、カバー取り外し機構50は、側壁40aにおける内側端部42aの近傍に形成された雌ネジ孔52と、カバー18Aの内面18Acから突出する突出部54とを備える。雌ネジ孔52は化粧ネジ56が螺合されて塞がれている。
【0020】
雌ネジ孔52の外部開口には2段のザグリ52aが形成されている。化粧ネジ56はヘッド56aと、雄ネジ部56bとを有する。ヘッド56aは2段のザグリ52aのうち深い座面に当接するようになっており、やや奥まった位置となり外観的に目立つことがない。ヘッド56aは好適な外観となるように側壁40aと同様の色であってスピンカットが形成されている。雄ネジ部56bは比較的短く、突出部54に達しない長さとなっている。
【0021】
図5は、カバー18Aの内面18Acの一部を示す模式図である。図5に示すように、カバー18Aの側方の辺を辺18Abとする。辺18Abは側壁44aに沿う辺である。また、辺18Abにおける内側端部42aと逆側の部分を突出部54はカバー取り外しのきっかけとなるので、簡単にとりはずしができるように突出部54の周囲は粘着テープのエリアを減らす必要がありました。しかし、システムの角に近い箇所は衝撃を受けやすいので範囲を減らせませんでした。そこで、衝撃の受けにくい端部42a近傍に突出部54を配置し、その周辺の粘着テープを可能限り減らすことで、簡単な取り外しと耐衝撃性の両立を実現した。
【0022】
突出部54は、内側端部42aの近傍に設けられている。内面18Acの縁に沿って粘着テープ(粘着材)58が設けられている。粘着テープ58は図5で図示されない範囲にも設けられている。粘着テープ58のうち粘着剤を有する部分をドット地で示し、延着剤のない部分を白地で示す。つまり、辺18Aaに沿う粘着テープ58aのうち符号58aaの部分は粘着剤があり、その他は粘着剤のない剥離用部分である。粘着テープ58aおよび粘着剤のある符号58aaの部分は突出部54および内側端部42aの周囲を避ける位置に設けられている。
【0023】
粘着テープ58bは、辺18Abの略中間部から内側端部42aの側に向かって延在しているが、突出部54および内側端部42aの周囲にまでは達していない。粘着テープ58cは辺18Abの略中間部から外側端部42cの側に向かって延在し、該外側端部42cを含むように設けられている。
【0024】
ところで、電子機器10が落下する際には外側端部42cや角部43a(図1参照)が床にぶつかるケースが多く衝撃を受けやすい。外側端部42cは衝撃を受けやすいいため該外側端部42cに粘着テープ58cを配置することによりカバー18Aとフレーム部材17Aとを外側端部42cで粘着するようにしている。このため、外側端部42cではカバー18Aが外れにくくなっている。
【0025】
一方、内側端部42aはヒンジ装置14などの幅の分だけ角部43aから多少距離が離れているため外側端部42cと比較すると衝撃を受けにくい構造となっている。また、内側端部42aは180度姿勢では図2における左右方向の略中間にあることから強い衝撃を受けることがない。このため内側端部42aの周囲には粘着テープ58を設けてなくフレーム部材17Aに対してカバー18Aが比較的外れやすくなっている。換言すると、突出部54はカバー取り外しのきっかけとなるものであり、簡単にとりはずしができるように周囲は粘着テープ58のエリアを減らすことが好ましい。しかし、外側端部42cは衝撃を受けやすいので粘着テープ58を減らすことが望ましくないため、衝撃の受けにくい内側端部42a近傍に突出部54を配置し、その周辺の粘着テープ58を可能限り減らすことで、簡単な取り外しと耐衝撃性との両立を実現している。
【0026】
図4に示すように、フレーム部材17Aの周囲にはテープ貼付台60が設けられている。カバー18Aは粘着テープ58によってテープ貼付台60に対して粘着固定されている。突出部54が突出している箇所にはテープ貼付台60がない。
【0027】
フレーム部材17Aのテープ貼付台60の縁には低い小塀62が突出するように設けられている(図3も参照)。小塀62はカバー18Aの周囲を覆っており、該カバー18Aの小口が露呈されずに好適な外観が得られる。また、小塀62が設けられていることから、テープ貼付台60とカバー18Aとの間にマイナスドライバーなどが差し込まれることがなく、不用意にカバー18Aが取り外されることがない。図4の符号64はディスプレイ16とフレーム部材17Aとの隙間を覆うベゼル部材である。
【0028】
図6は、突出部54とその周辺の斜視図である。図7は、樹脂片66を分解した突出部54とその周辺の斜視図である。突出部54は2つの辺18Aa,18Abからわずかに離れた位置にある。突出部54は、平面視(図5参照)が略正方形で、2つの側面54aが略直角二等辺三角形の形状であって、傾斜面54bを形成している。突出部54の内部には、側面54aよりやや小さい傾斜支柱54cが設けられている。突出部54は、樹脂片66が傾斜支柱54cに対して粘着テープで粘着固定されることによって傾斜面54bを形成している。樹脂片66は2つの側面54aの間に嵌り込んで安定している。突出部54における樹脂片66以外の部分は金属製であり、カバー18Aと一体的に成型されている。ただし、カバー18Aは少なくとも内側端部42aおよび突出部54とその周辺部が金属製であって、一部に樹脂材を用いた複合材であってもよい。また、設計条件によりカバー18Aの全体を樹脂材とする場合には、傾斜面54bをその他の突出部54の部分と一体的に成型してもよい。
【0029】
図4に戻り、突出部54および傾斜面54bは雌ネジ孔52の延長上で該雌ネジ孔52の内側開口に十分近い場所に位置している。図4の符号Cは雌ネジ孔52の中心線である。傾斜面54bは側壁40aの側に形成されている。突出部54の傾斜面54bは側壁40aから離れる方向(図4の右方向)に向かって突出量が大きくなっている。突出部54の頂部54dは、雌ネジ孔52における中心線Cを超えた側の縁52bと略同じ高さにある。
【0030】
図8は、取り外しネジ70の側面図である。取り外しネジ70は、カバー取り外し機構50に適用してフレーム部材17Aからカバー18Aを取り外すためのものである。取り外しネジ70は、通常はメンテナンスの作業員が所持している。取り外しネジ70は、ヘッド70aと、ヘッド70aから突出し雌ネジ孔52に螺合する雄ネジ部70bと、雄ネジより小径で該雄ネジ部70bからさらに突出する円柱部70cと、円柱部70cの先端を形成する球面部70dとを有する。ヘッド70aは化粧ネジ56のヘッド56aと同形状である。雄ネジ部70bは化粧ネジ56の雄ネジ部56bと同じ呼び径であるが、該雄ネジ部56bよりやや長い。円柱部70cは雄ネジ部56bより短く、滑らかな柱面を有している。球面部70dは円柱部70cから連続する半球形状であり、滑らかな面を有している。
【0031】
図9は、カバー取り外し機構50に取り外しネジ70を適用してフレーム部材17Aからカバー18Aを取り外すカバー取り外し方法のフローチャートである。図10は、雌ネジ孔52から化粧ネジ56を取り外す様子を示す斜視図である。図11は、取り外しネジ70を雌ネジ孔52に取り付ける様子を示す斜視図である。図12は、取り外しネジ70の先端により傾斜面54bを押し上げてカバー18Aを浮き上がらせた状態を示す断面側面図である。図13は、板片72によりカバー18Aをさらに浮き上がらせる様子を示す斜視図である。
【0032】
まず、図9のステップS1において、図10に示すように、雌ネジ孔52から化粧ネジ56を取り外す。ステップS2において、図11に示すように、取り外しネジ70を雌ネジ孔52に取り付け、該雌ネジ孔52に対して取り外しネジ70を螺進させる。
【0033】
ステップS3において、図12に示すように、雌ネジ孔52に対して取り外しネジ70をさらに螺進させる。そして、ヘッド70aがザグリ52aに当接するまで雄ネジ部70bを雌ネジ孔52に螺合させ、先端の球面部70dおよび円柱部70cにより傾斜面54bを押し上げることでカバー18Aを浮き上がらせる。突出部54の頂部54dは円柱部70cに乗り上げる。傾斜面54bを押し上げて頂部54dが乗り上げる箇所は、球面部70dから円柱部70cに亘る何れかの箇所でよい。
【0034】
球面部70dが傾斜面54bを押し上げるとき、粘着テープ58を剥離させるためにある程度強い反力が発生するが、球面部70dは曲面形状でしかも表面が滑らかであるため傾斜面54bをほとんど損傷させることがない。仮に傾斜面54bが球面部70dとの摺動により僅かに切り屑が発生しても該傾斜面54bは樹脂片66で構成されていることから、切り屑が他の電子素子に対して短絡することがない。また、このとき雄ネジ部70bは傾斜面54bに対して非接触となっており、該雄ネジ部70bが傾斜面54bを損傷させることがない。仮に樹脂片66の表面に傷などが発生した場合には、該樹脂片66を交換するとよい。
【0035】
そして、ステップS4において、図13に示すように、カバー18Aと小塀62との間に生じた隙間Gに板片72を差し込んで矢印に示すように押し下げ、該板片72によりカバー18Aをさらに浮き上がらせる。これにより、カバー18Aが第1筐体12Aのフレーム部材17から取り外される。
【0036】
このように本実施の形態にかかる電子機器10、電子機器10のカバー取り外し機構50に適用する取り外しネジ70およびカバー取り外し方法では、雌ネジ孔52の延長上に突出部54が設けられ、該突出部54の傾斜面54bは側壁40aから離れる方向に向かって突出量が大きくなっており、該傾斜面54bに取り外しネジ70の先端を押圧することによりカバー18Aを筐体12Aのフレーム部材17Aから適切に取り外すことができる。カバー取り外し機構50が設けられていることからカバー18Aは粘着テープ58で粘着固定しておくことができ、ビス止めが不要となり好適な外観が得られる。
【0037】
取り外しネジ70は雌ネジ孔52に対してドライバを用いて螺進させるために適度に大きな力を発生し粘着テープ58を剥がすことができる。取り外しネジ70を雌ネジ孔52に螺合させる作業は容易であり、作業員の技量によらずカバー18Aの取り外しを適切に行うことができる。カバー18Aが適度に浮き上がった状態(図12参照)では、取り外しネジ70のヘッド70aがザグリ52aに当接するため、作業員は取り外しネジ70の螺合作業の終了タイミングを認識可能である。作業員が過度に取り外しネジ70を螺進させてしまうことが防止され、雄ネジ部70bが傾斜面54bに当接することがなく、また先端の球面部70dが筐体内の他の部品に干渉することがない。取り外しネジ70は、逆回しすることにより雌ねじ孔52から容易に取り外される。取り外しネジ70は、化粧ネジ56と容易に区別されるような色(例えば赤)にしてもよい。
【0038】
カバー取り外し機構50は、ヒンジ装置14の内側端部42aの近傍に設けられており、該内側端部42aは反対側の外側端部42c(図5参照)と比較して粘着テープ58の必要量が少ないためカバー18Aの取り外しに好適な場所にある。
【0039】
以上説明した電子機器10は、第1筐体12Aと第2筐体12Bとがヒンジ装置14で折り畳み可能に構成されディスプレイ16が第1筐体12Aと第2筐体12Bとに亘って設けられているものであるが、本発明は、ノート型PC、デスクトップ型PC、スマートフォン又は携帯用ゲーム機等にも適用可能である。ノート型PCはキーボードを備える本体筐体とディスプレイを備えるディスプレイ筐体とがヒンジ装置によって回動可能に構成されているが、本発明は本体筐体の裏カバーの取り外し、およびディスプレイ筐体の裏カバーの取り外しに適用可能である。カバー取り外し機構50に適用するのは取り外しねじ70に限らず、状況によっては同じ長さの他のネジを用いてもよい。
【0040】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0041】
10 電子機器
12A 筐体
14 ヒンジ装置
16 ディスプレイ
17A フレーム部材
18A カバー
18Ac 内面
38A 隣接縁
40a 側壁
42a,42b 内側端部(1つの縁に沿った辺の端部)
42c 外側端部
50 カバー取り外し機構
52 雌ネジ孔
52a ザグリ
54 突出部
54a 側面
54b 傾斜面
54c 傾斜支柱
54d 頂部
56 化粧ネジ
58 粘着テープ(粘着材)
60 テープ貼付台
62 小塀
66 樹脂片
70 取り外しネジ
70a ヘッド
70b 雄ネジ部
70c 円柱部
70d 球面部
72 板片
C 中心線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2023-07-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器であって、
筐体と、
前記筐体の縁に沿って粘着材で固定されたカバーと、
前記筐体の側壁に形成された雌ネジ孔と、
前記カバーの内面から突出する突出部と、
を備え、
前記突出部は、前記雌ネジ孔の延長上に位置し、前記側壁から離れる方向に向かって突出量が大きくなる傾斜面を有する
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器において、
前記突出部は金属製であり、前記傾斜面には樹脂片が設けられている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項1に記載の電子機器において、
前記雌ネジ孔は、前記突出部に達しない長さの化粧ネジで塞がれている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項1に記載の電子機器において、
前記筐体は扁平の略矩形であり、1つの縁がヒンジによって他の筐体と回動可能に接続されており、
前記カバーは前記筐体の一面のほぼ全面を覆っており、
前記雌ネジ孔および前記突出部は、前記カバーにおける前記1つの縁に沿った辺の端部の近傍に設けられている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項1または4に記載の電子機器において、
前記粘着材は前記筐体および前記カバーの少なくとも交差する2つの縁に沿って設けられており、
前記突出部は、前記2つの縁の前記粘着材の延長上の位置に設けられてい
ことを特徴とする電子機器。
【請求項6】
筐体、前記筐体の縁に沿って粘着材で固定されたカバー、前記筐体の側壁に形成された雌ネジ孔、および前記カバーの内面から突出する突出部を備える電子機器の前記筐体から前記カバーを取り外すためのネジであって、
ヘッドと、
前記ヘッドから突出し前記筐体の側壁に形成された雌ネジ孔に螺合する雄ネジ部と、
前記雄ネジ部より小径で該雄ネジ部からさらに突出する円柱部と、
前記円柱部の先端を形成する球面部と、
を有し、
前記雌ネジ孔に螺合することで前記球面部が前記突出部を押し上げ可能な長さを有する
ことを特徴とする取り外しネジ。
【請求項7】
ネジを用いて電子機器の筐体から当該筐体に粘着材で固定されたカバーを取り外す方法であって
前記筐体の側壁に形成された雌ネジ孔に対して前記ネジを螺進させる工程と、
前記雌ネジ孔の延長上に位置し前記カバーの内面から突出する突出部に対してさらに前記ネジを螺進させ、前記突出部に形成された傾斜面を前記ネジの先端に形成された球面部によって押し上げることで前記カバーを浮き上がらせる工程と、
を有することを特徴とするカバー取り外し方法。