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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167581
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】光源装置
(51)【国際特許分類】
   F21S 2/00 20160101AFI20231116BHJP
   F21V 5/04 20060101ALI20231116BHJP
   F21V 8/00 20060101ALI20231116BHJP
   F21V 9/32 20180101ALI20231116BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20231116BHJP
【FI】
F21S2/00 311
F21S2/00 330
F21S2/00 340
F21V5/04 400
F21V8/00 241
F21V8/00 261
F21V8/00 263
F21V9/32
F21Y115:30
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078869
(22)【出願日】2022-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】503098724
【氏名又は名称】株式会社オキサイド
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牧尾 諭
(57)【要約】
【課題】光源からの出力光を効率よく利用して、蛍光光とは異なる所望の色彩の出力光を得ることの可能な光源装置を提供する。
【解決手段】本発明の一実施の形態に係る光源装置は、蛍光体素子と、光源部と、NA0.3以下のコリメートレンズとを備えている。光源部は、蛍光体素子を励起する励起光である入射励起光を蛍光体素子の光入射面に向けて入射させる。コリメートレンズは、入射励起光のうち光入射面を透過した透過励起光と、蛍光体素子から発せられた蛍光光のうち、透過励起光と同等の広がり角の成分とを合成し、それにより得られた合成光を出力光として外部に出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光体素子と、
前記蛍光体素子を励起する励起光である入射励起光を前記蛍光体素子の光入射面に向けて入射させる第1光源部と、
前記入射励起光のうち前記光入射面を透過した透過励起光と、前記蛍光体素子から発せられた蛍光光のうち、前記透過励起光と同等の広がり角の成分とを合成し、それにより得られた合成光を出力光として外部に出力する、NA0.3以下のコリメートレンズと
を備えた
光源装置。
【請求項2】
前記コリメートレンズは、前記透過励起光と、前記蛍光体素子から発せられた蛍光光のうち、当該レンズのNAに一致した成分のみを合成する
請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記第1光源部は、前記入射励起光を導波し、前記蛍光体素子の表面に出射するNA0.3以下の光ファイバを有する
請求項1に記載の光源装置。
【請求項4】
前記コリメートレンズのNAと前記光ファイバのNAとの差が0.04以下となっている
請求項3に記載の光源装置。
【請求項5】
前記第1光源部は、前記入射励起光を集光し、前記蛍光体素子の表面に照射するNA0.3以下の集光レンズを有する
請求項1に記載の光源装置。
【請求項6】
前記コリメートレンズのNAと前記集光レンズのNAとの差が0.04以下となっている
請求項5に記載の光源装置。
【請求項7】
前記蛍光体素子を、前記蛍光体素子の光入射面と前記入射励起光の光軸とのなす角を調整可能な角度調整部を更に備えた
請求項1に記載の光源装置。
【請求項8】
前記入射励起光の、前記蛍光体素子の光入射面における入射ビーム径を調整可能な調整機構を更に備えた
請求項1に記載の光源装置。
【請求項9】
前記調整機構は、
前記第1光源部と前記蛍光体素子との間に配置され、前記入射励起光を集光する集光レンズと、
前記集光レンズを前記入射励起光の光軸上で移動させて、前記集光レンズの位置を調整するレンズ位置調整部と
を有する
請求項8に記載の光源装置。
【請求項10】
前記蛍光体素子を励起する波長帯とは異なる波長帯の光である入射可視光を、前記入射励起光の光軸と前記入射可視光の光軸とが前記蛍光体素子の光入射面において互いに重なり合うように、前記蛍光体素子の光入射面に向けて入射させる第2光源部を更に備えた
請求項1に記載の光源装置。
【請求項11】
前記蛍光体素子は、前記入射励起光および前記蛍光光を導波する導波領域を有する
請求項1に記載の光源装置。
【請求項12】
蛍光体素子と、
前記蛍光体素子を励起する励起光である入射励起光を前記蛍光体素子の光入射面に向けて入射させる光源部と、
前記入射励起光のうち前記光入射面を透過した透過励起光と、前記蛍光体素子から発せられた蛍光光とを合成し、それにより得られた合成光を出力光として外部に出力するレンズと
を備え、
前記蛍光体素子は、前記入射励起光および前記蛍光光を導波する導波領域を有する
光源装置。
【請求項13】
前記導波領域は、前記蛍光体素子を厚さ方向に貫通して設けられ、前記入射励起光が照射される領域を含む領域に設けられている
請求項12に記載の光源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体を励起光により励起して蛍光体より発光する光と、励起光との合成光を出射する光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の蛍光体光源が、例えば、特許文献1~4に開示されている。
【0003】
特許文献1には、平板状の蛍光体を半導体レーザ光で励起し、それにより得られた蛍光光を光学系レンズにて出力させる構成が開示されている。また、特許文献2には、複数の半導体レーザを用いて蛍光体を励起する構成が開示されている。また、特許文献3には、蛍光体を半導体レーザ光で励起し、蛍光体を透過した、励起光としての半導体レーザ光も出力光として一部利用する構成が開示されている。また、特許文献4には、蛍光体の形状をプリズムとし、半導体レーザ光を蛍光体プリズムの平面に垂直に入射させ、透過した半導体レーザ光を斜面の反射膜で90°方向に光路変更し、蛍光体プリズムのもう一つの平面と平行な出力レンズにより出射させる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-074273号公報
【特許文献2】特開2014-002839号公報
【特許文献3】国際公開2019/124046号
【特許文献4】特開2013-254889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、各特許文献では、光源からの出力光を効率よく利用して、蛍光光とは異なる所望の色彩の出力光を得ることについては、開示も示唆もなされていない。従って、光源からの出力光を効率よく利用して、蛍光光とは異なる所望の色彩の出力光を得ることの可能な光源装置を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の側面に係る光源装置は、蛍光体素子と、光源部と、NA0.3以下のコリメートレンズとを備えている。光源部は、蛍光体素子を励起する励起光である入射励起光を蛍光体素子の光入射面に向けて入射させる。コリメートレンズは、入射励起光のうち光入射面を透過した透過励起光と、蛍光体素子から発せられた蛍光光のうち、透過励起光と同等の広がり角の成分とを合成し、それにより得られた合成光を出力光として外部に出力する。
【0007】
本発明の第2の側面に係る光源装置は、蛍光体素子と、光源部と、レンズとを備えている。光源部は、蛍光体素子を励起する励起光である入射励起光を蛍光体素子の光入射面に向けて入射させる。レンズは、入射励起光のうち光入射面を透過した透過励起光と、蛍光体素子から発せられた蛍光光とを合成し、それにより得られた合成光を出力光として外部に出力する。蛍光体素子は、入射励起光および蛍光光を導波する導波領域を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の第1の側面に係る光源装置によれば、透過励起光と、蛍光体素子から発せられた蛍光光のうち、透過励起光と同等の広がり角の成分とをNA0.3以下のレンズによって合成し、それにより得られた合成光を出力光として外部に出力するようにしたので、光源からの出力光を効率よく利用して、蛍光光とは異なる色彩の出力光を得ることができる。
【0009】
本発明の第2の側面に係る光源装置によれば、入射励起光のうち導波領域を導波した透過励起光と、導波領域を導波する入射励起光によって生成された蛍光光とをレンズによって合成し、それにより得られた合成光を出力光として外部に出力するようにしたので、光源からの出力光を効率よく利用して、蛍光光とは異なる色彩の出力光を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る光源装置の構成例を表す図である。
図2】蛍光体を照射する励起光のビームサイズ、蛍光体から出力される蛍光光のパワー、および蛍光体の温度の関係の一例を表す図である。
図3】光源装置の出力光の広がり角と、レンズのNAとの関係の一例を表す図である。
図4】蛍光体の厚さと、蛍光出力強度との関係の一例を表す図である。
図5】蛍光体の厚さと、励起光透過出力強度との関係の一例を表す図である。
図6】蛍光体の厚さを変化させたときの励起光透過率における出力光の色度の一例を表す図である。
図7】実施例に係る光源装置の構成例を表す図である。
図8】実施例および比較例に係る光源装置において、励起光入射ファイバおよび出力レンズのNAの組み合わせを変化させたときの出射光のスクリーン位置のビームサイズを表す図である。
図9】比較例に係る光源装置の構成例を表す図である。
図10図1の光源装置の構成の一変形例を表す図である。
図11図10の光源装置において、励起光以外の入射光の強度を変化させたときの色度の一例を表す図である。
図12図1の光源装置の構成の一変形例を表す図である。
図13図10の光源装置の構成の一変形例を表す図である。
図14図1の光源装置の構成の一変形例を表す図である。
図15】本発明の第2の実施の形態に係る光源装置の構成例を表す図である。
図16図15の光源装置の構成の一変形例を表す図である。
図17図15の光源装置の構成の一変形例を表す図である。
図18図16の光源装置の構成の一変形例を表す図である。
図19図15の光源装置の構成の一変形例を表す図である。
図20図16の光源装置の構成の一変形例を表す図である。
図21図19の光源装置において、レンズ位置を変化させたときの色度の一例を表す図である。
図22図20の光源装置において、レンズ位置と、励起光以外の入射光の強度とを変化させたときの色度の一例を表す図である。
図23】蛍光体にガイド部を設けた例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。以下の説明は本発明の一具体例であって、本発明は以下の態様に限定されるものではない。また、本発明は、各図に示す各構成要素の配置や寸法、寸法比などについても、それらに限定されるものではない。
【0012】
<1.第1の実施の形態>
[構成]
本発明の第1の実施の形態に係る光源装置1の構成について説明する。図1は、光源装置1の構成例を表す図である。光源装置1は、発光部10と、光ファイバ20と、蛍光体素子30と、レンズ40と、制御部50とを備えている。発光部10および光ファイバ20からなるモジュールが、本発明の「第1光源部」の一具体例に相当する。
【0013】
発光部10は、蛍光体素子30を励起する励起光である入射励起光L1を発する。発光部10は、例えば、入射励起光L1を蛍光体素子30の光入射面に対して垂直に入射させる。なお、発光部10は、例えば、入射励起光L1を蛍光体素子30の光入射面に対して斜めに入射させてもよい。発光部10は、入射励起光L1を発する半導体レーザを含んで構成されている。入射励起光L1の波長は、可視波長域内の波長であり、例えば、青色波長域内の波長である。入射励起光L1の波長は、青色波長域内の波長に限定されるものではなく、蛍光体が励起される光の波長である。入射励起光L1としてレーザ光を用いることで光学系によるビーム調整が容易になり、正確な集光条件やその光をより遠方に照射することが可能となる。
【0014】
光ファイバ20は、発光部10に接続されている。光ファイバ20は、発光部10から発せられた入射励起光L1を導波し、蛍光体素子30の表面に出射する。光ファイバ20の開口数(NA)は、いわゆる低NA(一般的には0.3以下)となっている。
【0015】
図2は、蛍光体素子30における入射励起光L1のビーム径と、蛍光体素子30から発せられる蛍光光L3の出力と、蛍光体素子30の温度との関係の一例を表す図である。入射励起光L1は、蛍光体素子30の表面上で微小な領域に照射される。そのような微小な領域において、入射励起光L1の密度(つまり出力)を高くすることにより、蛍光光L3を効率良く発生させることができる。しかし、入射励起光L1の密度(つまり出力)を高くし過ぎた場合には、蛍光体素子30が局所的に発熱してしまい、蛍光体素子30において熱降伏が起こってしまう。蛍光光L3を効率良く発生させることと、蛍光体素子30における熱降伏を避けることとを勘案すると、蛍光体素子30における入射励起光L1のビーム径は、0.5mm以上1mm以下となっていることが好ましい。
【0016】
図3は、屈折率n=1.45の光ファイバ20からの出射ビームの拡がり角度と、光ファイバ20のNAとの関係を表した図である。光ファイバ20から出射される入射励起光L1の集光角度(広がり角度)は、光ファイバ20のNAに依存する。光ファイバ20のNAが低NA(一般的には0.3以下)となっている場合、蛍光体素子30の入出射面でのビーム径の差が小さくなり、入射励起光L1による蛍光体素子30にて発生する蛍光光L3の効率を高めることができる。図3より、光ファイバ20のNAを0.3以下にすることにより、出射ビームの拡がり角度を12°以下と狭くすることが可能となる。出射ビームの拡がり角度が12°以下と狭くなっていることにより、蛍光体素子30における入射励起光L1のビーム径を、上述した0.5mm以上1mm以下の範囲内にすることが容易となる。従って、光ファイバ20のNAは、0.3以下となっていることが好ましい。なお、光源装置1では、出力光量を確保するとともに、出射ビームにおける色ムラの少ない色彩調整を行うという観点から、実用上、光ファイバ20のNAは、0.1以上となっていることが好ましく、0.15以上となっていることがさらに好ましい。
【0017】
蛍光体素子30は、蛍光体を含んで構成されている。蛍光体素子30の材料系としては、例えば、1または複数の希土類元素が添加された、アルミニウムおよび酸素を含むガーネット構造の単結晶材料、共晶体材料または無機化合物材料でかつ、励起光が透過できる蛍光体が挙げられる。蛍光体素子30は、入射励起光L1が入射する光入射面を有する平板状の素子である。蛍光体素子30では、入射励起光L1が光入射面に入射すると、蛍光体素子30に含まれる蛍光体が入射励起光L1によって励起され、蛍光体から蛍光光L3が発せられる。
【0018】
レンズ40は、入射励起光L1のうち、蛍光体素子30を透過した光(以下、「透過励起光L2」と称する。)と、蛍光体素子30から発せられた蛍光光L3とを合成し、それにより得られた合成光を出力光L4として外部に出力する。レンズ40は、コリメートレンズであり、出力光L4は、レンズ40によって平行光となっている。レンズ40は、透過励起光L2が進行する角度方向に配置されている。レンズ40は、レンズ40の光軸が透過励起光L2の光軸と重なり合うか、または所定の角度範囲内(双方の光軸の交差角が例えば±5°以下の範囲内)で交差する位置に配置されている。レンズ40のNAは、低NA(一般的には0.3以下)となっており、例えば、光ファイバ20のNAと等しくなっている。
【0019】
図4は、入射励起光L1の強度を一定として、蛍光体素子30の厚さと、蛍光光L3がレンズ40により出力される効率との関係を表す図である。図4から、蛍光光L3がレンズ40により出力される効率は、蛍光体素子30の厚さに若干依存しているが、概ね大きな変化がないと言うことができる。
【0020】
図5は、入射励起光L1の強度を一定として、蛍光体素子30の厚さと、入射励起光L1が蛍光体素子30を透過してレンズ40より出力される効率との関係を表す図である。図5から、入射励起光L1が蛍光体素子30を透過してレンズ40より出力される効率は、蛍光体素子30が厚くなるにつれて低下することがわかる。これは、入射励起光L1が蛍光体素子30の入射面から出射面に到達するまでの間に、入射励起光L1が蛍光体素子30に吸収されるためである。
【0021】
以上のことから、レンズ40において蛍光光L3の一部と透過励起光L2とが互いに合成されることにより得られる出力光L4は、蛍光体素子30の厚さに依存した色度となる。図6は、蛍光体素子30の厚さを変化させたときの出力光L4の色度を表す図である。蛍光体素子30の厚さを変化させることにより、出力光L4に含まれる透過励起光L2の割合が変化し、その結果、色度が変化することがわかる。出力光L4の色度を変化させるためには、蛍光体素子30の厚さを2~3mmに設定することが好ましい。
【0022】
制御部50は、発光部10に制御信号を出力することにより、発光部10の発光・消光や、入射励起光L1の光強度を制御する。
【0023】
次に、光ファイバ20およびレンズ40のNAについて説明する。
【0024】
図7は、図8に記載の実験結果を得るために用いた光源装置の概略構成例を表す図である。図7に記載の光源装置は、上述の光源装置1に対してスクリーンSCを設けたものであり、かつ、NAの値が図8に記載の値に設定された光ファイバ20およびレンズ40を用いたものに相当する。スクリーンSCは、蛍光体素子30から距離D1(150mm)または距離D2(500mm)の位置に配置され、スクリーンSCには、レンズ40から出力された出力光L4が投影される。
【0025】
光ファイバ20からの出射光(入射励起光L1)の広がり角は光ファイバ20のNAに依存しており、光ファイバ20のNAに依存した焦点距離にレンズ40を配置することで、透過励起光L2がコリメートビームとしてレンズ40から出射される。このとき、蛍光体素子30から発生した蛍光光L3はレンズ40のNAに一致した成分のみが透過励起光L2と合成されて出力光L4としてレンズ40から出射される。つまり、レンズ40は、透過励起光L2と、蛍光光L3のうち、透過励起光L2と同等の広がり角の成分を合成する。
【0026】
図8(A),(B),(C),(D)は、光ファイバ20のNAが0.22のときに、レンズ40のNAを0.18、0.2、0.26、0.42とした場合に、距離D1,D2においてスクリーンSCに投影されるビーム投影図を示したものである。つまり、図8(A),(B),(C),(D)では、光ファイバ20のNAと、レンズ40のNAとの差が低NAの範囲において0.04以下となっている。図8(E)は、光ファイバ20のNAが0.39のときに、レンズ40のNAを0.42とした場合に、距離D1,D2においてスクリーンSCに投影されるビーム投影図を示したものである。図8(A),(B),(C),(D),(E)に記載の破線は、透過励起光L2のビームを示している。
【0027】
図8(A),(B),(C)から、光ファイバ20のNAとレンズ40のNAとが互いに近いときには、ビーム投影図における透過励起光L2および蛍光光L3の分布の違いがほとんどなく、出力光L4が遠くの位置まで投射できていることがわかる。一方、光ファイバ20のNAとレンズ40のNAとの差が大きい図8(D)では、レンズ40の焦点距離が短いため、蛍光光L3が多く取り込まれ、その結果、ビーム投影図における透過励起光L2および蛍光光L3の分布の違いが大きく、色ムラが生じていることがわかる。図8(D)では、さらに、距離D2においてビーム投影図自体が大きく広がってしまっていることもわかる。光ファイバ20のNAとレンズ40のNAとの差が小さい図8(E)では、図8(A),(B),(C)と比べて、NAが低NAを外れた値(高NA)となっており、それが原因となって、色ムラが生じていることがわかる。
【0028】
幾何光学的にはレンズ40の焦点位置に発光点を配置すれば、コリメート光とすることが出来る。しかし、実際には発光点が点ではなくある大きさを持っているので、遠方までコリメート光で飛ばすことはできない。ある大きさとは光ファイバ20のコア径に相当するので、この場合の大きさは約200μmである。このように発光点がある大きさを持っている場合に、高NAのレンズを用いたときには、遠方にコリメートビームを飛ばすことは出来ず、ビーム径が広がってしまい、実用的ではない。従って、光ファイバ20およびレンズ40が低NAとなっていることにより、上述した程度の発光点の大きさであっても、ビームを合成して、遠方にコリメートビームを飛ばすことができる。
【0029】
[効果]
次に、比較例と対比して、本実施の形態に係る光源装置1の効果について説明する。
【0030】
図9は、比較例に係る光源装置の構成例を表したものである。図9に記載の光源装置では、励起光Laがミラー130を透過して蛍光体素子110に垂直に入射し、反射光Lbはミラー130を透過する。その一方で、蛍光体素子110から発せられた蛍光光Lcの一部がレンズ120で平行光化された後、ミラー130で反射され、出力光Ldとして出力される。図9に記載の光源装置では、蛍光光Lcだけが出力光Ldとして利用され、励起光Laは出力光Ldとして利用されていない。そのため、出力光Ldの色彩を調整する際には、蛍光体素子110に含まれる蛍光体の成分を調整することが必要となる。
【0031】
また、上述の特許文献1,2に記載の光源装置においても、蛍光光だけが出力光として利用され、励起光は出力光として利用されていない。そのため、上述の特許文献1,2に記載の光源装置においても、出力光の色彩を調整する際には、蛍光体の成分を調整することが必要となる。
【0032】
また、上述の特許文献3には、蛍光体を透過した励起半導体レーザ光も出力光として一部利用することが記載されている。しかし、上述の特許文献3には、励起半導体レーザ光をどのようにして利用するか具体的な光学設計について開示も示唆もなされていない。そのため、上述の特許文献3の記載からは、出力光の色彩を調整するための具体的な構成について想起することができない。
【0033】
また、上述の特許文献4には、蛍光体を透過した励起光を、蛍光光とともに出力光として利用することが記載されているが、特許文献4の光源装置では、出力光の色彩を調整するための具体的な構成について記載も示唆もない。従って、特許文献4からは、本願発明の技術的思想を想起することは困難である。また、特許文献4の光源装置では、半導体レーザからの出射光を直接蛍光体に入射する構成としている。しかし、一般的に半導体レーザから直接出射される光は活性層に垂直方向の拡がり角が約30°以上と大きく、その水平方向は10°以下と小さい。そのため、直接、蛍光体に入射してもビーム径の縦横比が異なり、蛍光体における励起密度にも差があるので、レンズからの出射光ビームの縦横比が異なり、さらにはビーム内での蛍光光の強度差も発生するため、むしろ色彩ムラが発生してしまう。
【0034】
一方、本実施の形態では、透過励起光L2と、蛍光体素子30から発せられた蛍光光L3のうち、透過励起光L2と同等の広がり角の成分とがNA0.3以下のレンズ40によって合成され、それにより得られた合成光が出力光L4として外部に出力される。これにより、色ムラの少ない蛍光光L3とは異なる色彩の出力光L4を得ることができる。
【0035】
また、本実施の形態では、透過励起光L2と、蛍光体素子30から発せられた蛍光光L3のうち、レンズ40のNAに一致した成分のみがレンズ40によって合成される。これにより、色ムラの少ない蛍光光L3とは異なる色彩の出力光L4を得ることができる。
【0036】
また、本実施の形態では、入射励起光L1が導波され、蛍光体素子30の表面に出射されるNA0.3以下の光ファイバ20が設けられている。これにより、蛍光光L3を効率良く発生させることと、蛍光体素子30における熱降伏を避けることとを容易に両立させることができる。また、色ムラの少ない蛍光光L3とは異なる色彩の出力光L4を得ることができる。
【0037】
また、本実施の形態では、光ファイバ20のNAと、レンズ40のNAとの差が低NAの範囲において0.04以下となっている。これにより、蛍光光L3を効率良く発生させることと、蛍光体素子30における熱降伏を避けることとを容易に両立させることができる。また、色ムラの少ない蛍光光L3とは異なる色彩の出力光L4を得ることができる。
【0038】
<2.第1の実施の形態の変形例>
以下に、光源装置1の変形例について説明する。なお、以下では、上記第1の実施の形態と共通の構成要素に対しては、上記第1の実施の形態で付されていた符号と同一の符号が付される。また、上記第1の実施の形態と異なる構成要素の説明を主に行い、上記第1の実施の形態と共通の構成要素の説明については、適宜、省略するものとする。
【0039】
[変形例1-1]
図10は、光源装置1の構成の一変形例を表す図である。本変形例に係る光源装置1は、上記実施の形態に係る光源装置1に対して、発光部60を新たに設けるとともに、光ファイバ20の代わりに、光ファイバ21,22,23およびコンバイナ24を設けたものに相当する。発光部10、光ファイバ21,23およびコンバイナ24からなるモジュールが、本発明の「第1光源部」の一具体例に相当する。発光部60、光ファイバ22,23およびコンバイナ24からなるモジュールが、本発明の「第2光源部」の一具体例に相当する。
【0040】
発光部60は、蛍光体素子30を励起する波長帯とは異なる波長帯の光(例えば、赤色光)である入射可視光L5を発する。発光部60から発せられる光は、赤色光に限定されるものではない。制御部50は、発光部10,60に制御信号を出力することにより、発光部10,60の発光・消光や、入射励起光L1および入射可視光L5の光強度を制御する。
【0041】
光ファイバ21は、発光部10およびコンバイナ24に接続されており、発光部10から発せられた入射励起光L1を導波し、コンバイナ24に出力する。光ファイバ22は、発光部60およびコンバイナ24に接続されており、発光部60から発せられた入射可視光L5を導波し、コンバイナ24に出力する。コンバイナ24は、光ファイバ21を介して入射した入射励起光L1と、光ファイバ22を介して入射した入射可視光L5とを合成し、それにより得られた合成光(入射合成光L6)を光ファイバ23に出力する。光ファイバ23は、コンバイナ24に接続されており、コンバイナ24から出力された光(入射合成光L6)を導波し、蛍光体素子30の表面(光入射面)に出射する。
【0042】
蛍光体素子30では、入射合成光L6が光入射面に入射すると、蛍光体素子30に含まれる蛍光体が入射した入射合成光L6に含まれる入射励起光L1によって励起され、蛍光体から蛍光光L3が発せられる。
【0043】
図11は、入射可視光L5の強度を変化させたときの出力光L4の色度の一例を表す図である。図11には、入射可視光L5の強度を変化させたときの出力光L4の色度が○で示されている。図11から、入射可視光L5の強度を変化させることにより、出力光L4の色度が変化することがわかる。
【0044】
なお、図11の結果は、蛍光体素子30としてCeを含むセラミックス等で形成された平板状の蛍光体素子を用いて得られた。このとき、蛍光体素子30の厚さは2.5mmであった。また、入射励起光L1の波長は450nmであり、発光部10には、波長450nmのレーザ光を出力する半導体素子を用いた。また、入射可視光L5の波長は637nmであり、発光部60には、波長637nmのレーザ光を出力する半導体素子を用いた。
【0045】
本変形例では、入射合成光L6と蛍光光L3とがレンズ40によって合成され、それにより得られた合成光が出力光L4として、レンズ40を介して外部に出力される。このとき、例えば、入射可視光L5の強度を変化させることにより、出力光L4の色彩が変化する。従って、光源からの出力光を効率よく利用して、出力光L4の色彩を、蛍光光L3とは異なる色彩に調整することができる。
【0046】
[変形例1-2]
上記実施の形態および変形例1-1において、例えば、図12図13に示したように、蛍光体素子30を、蛍光体素子30の光入射面と入射励起光L1もしくは入射合成光L6の光軸とのなす角θを調整可能な角度調整部70が設けられていてもよい。角度調整部70は、蛍光体素子30の端部を支持しており、蛍光体素子30を所定の角度に傾けることの可能な機構を有している。
【0047】
角θを変化させることにより、入射励起光L1が蛍光体素子30の中を透過する経路の長さが変化する。これにより、蛍光体素子30に入射した入射励起光L1のうち、蛍光体素子30を透過する割合が変化する。従って、角度調整部70によって蛍光体素子30の傾きを変化させることにより、光源からの出力光を効率よく利用して、出力光L4の色彩を、蛍光光L3とは異なる色彩に調整することができる。
【0048】
[変形例1-3]
上記変形例1-1,1-2において、光源装置1は、例えば、図14に示したように、蛍光体素子30を励起する波長帯や、発光部60から発せられる入射可視光L5の波長帯とは異なる波長帯の光(例えば、緑色光)である入射可視光L7を出力する発光部61を更に備えていてもよい。発光部61から発せられる光は、緑色光に限定されるものではない。制御部50は、発光部10,60,61に制御信号を出力することにより、発光部10,60,61の発光・消光や、入射励起光L1、入射可視光L5および入射可視光L7の光強度を制御する。
【0049】
本変形例では、発光部61とコンバイナ24とを接続する光ファイバ25が設けられている。コンバイナ24は、光ファイバ21を介して入射した入射励起光L1と、光ファイバ22を介して入射した入射可視光L5と、光ファイバ25を介して入射した入射可視光L7とを合成し、それにより得られた合成光(入射合成光L6)を光ファイバ23に出力する。光ファイバ23は、コンバイナ24に接続されており、コンバイナ24から出力された光(入射合成光L6)を導波し、蛍光体素子30の表面(光入射面)に出射する。
【0050】
本変形例では、入射合成光L6と蛍光光L3とがレンズ40によって合成され、それにより得られた合成光が出力光L4として、レンズ40を介して外部に出力される。このとき、例えば、入射可視光L5および入射可視光L7のうち少なくとも一方の強度を変化させることにより、出力光L4の色彩が変化する。従って、光源からの出力光を効率よく利用して、出力光L4の色彩を、蛍光光L3とは異なる色彩に調整することができる。
【0051】
<3.第2の実施の形態>
[構成]
本発明の第2の実施の形態に係る光源装置2の構成について説明する。図15は、光源装置2の構成例を表す図である。光源装置1は、発光部10と、蛍光体素子30と、レンズ40と、制御部50と、レンズ群80とを備えている。
【0052】
レンズ群80は、入射励起光L1を蛍光体素子30の光入射面に照射する。レンズ群80は、例えば、入射励起光L1を平行光化するレンズ81と、レンズ81によって平行光化された光(入射励起光L1)を集光するレンズ82とを含んで構成されている。レンズ82は、レンズ82の焦点距離がレンズ82と、蛍光体素子30において入射励起光L1が照射される部分との距離と等しくなるか、または、概ね等しくなる位置に配置される。レンズ82のNAは、レンズ40のNAと同様、いわゆる低NA(一般的には0.3以下)となっている。
【0053】
レンズ群80(レンズ82)から出射される入射励起光L1の集光角度(広がり角度)は、レンズ82のNAに依存する。レンズ82のNAが低NA(一般的には0.3以下)となっている場合、蛍光体素子30の入出射面でのビーム径の差が小さくなり、入射励起光L1による蛍光体素子30にて発生する蛍光光L3の効率を高めることができる。図3に示した特徴は、レンズ82にも当てはまる。そのため、レンズ82のNAを0.3以下にすることにより、出射ビームの拡がり角度を12°以下と狭くすることが可能となる。出射ビームの拡がり角度が12°以下と狭くなっていることにより、蛍光体素子30における入射励起光L1のビーム径を、上述した0.5mm以上1mm以下の範囲内にすることが容易となる。従って、レンズ82のNAは、0.3以下の値となっていることが好ましい。
【0054】
ところで、図8に示した実験結果は、光ファイバ20の代わりにレンズ82を用いた場合にも当てはまる。従って、図8(A),(B),(C)から、レンズ82のNAとレンズ40のNAとが互いに近いときには、ビーム投影図における透過励起光L2および蛍光光L3の分布の違いがほとんどなく、出力光L4が遠くの位置まで投射できることがわかる。一方、レンズ82のNAとレンズ40のNAとの差が大きい図8(D)では、レンズ40の焦点距離が短いため、蛍光光L3が多く取り込まれ、その結果、ビーム投影図における透過励起光L2および蛍光光L3の分布の違いが大き、色ムラが生じることがわかる。図8(D)では、さらに、距離D2においてビーム投影図自体が大きく広がってしまっていることもわかる。レンズ82のNAとレンズ40のNAとの差が小さい図8(E)では、図8(A),(B),(C)と比べて、NAが低NAを外れた値(高NA)となっており、それが原因となって、色ムラが生じていることがわかる。
【0055】
[効果]
次に、本実施の形態に係る光源装置2の効果について説明する。
【0056】
本実施の形態では、透過励起光L2と、蛍光体素子30から発せられた蛍光光L3のうち、透過励起光L2と同等の広がり角の成分とがNA0.3以下のレンズ40によって合成され、それにより得られた合成光が出力光L4として外部に出力される。これにより、色ムラの少ない蛍光光L3とは異なる色彩の出力光L4を得ることができる。
【0057】
また、本実施の形態では、透過励起光L2と、蛍光体素子30から発せられた蛍光光L3のうち、レンズ40のNAに一致した成分のみがレンズ40によって合成される。これにより、色ムラの少ない蛍光光L3とは異なる色彩の出力光L4を得ることができる。
【0058】
また、本実施の形態では、入射励起光L1を集光し、蛍光体素子30の表面に照射するNA0.3以下のレンズ82が設けられている。これにより、蛍光光L3を効率良く発生させることと、蛍光体素子30における熱降伏を避けることとを容易に両立させることができる。また、色ムラの少ない蛍光光L3とは異なる色彩の出力光L4を得ることができる。
【0059】
また、本実施の形態では、レンズ82のNAと、レンズ40のNAとの差が低NAの範囲において0.04以下となっている。これにより、蛍光光L3を効率良く発生させることと、蛍光体素子30における熱降伏を避けることとを容易に両立させることができる。また、色ムラの少ない蛍光光L3とは異なる色彩の出力光L4を得ることができる。
【0060】
<4.第2の実施の形態の変形例>
以下に、光源装置2の変形例について説明する。なお、以下では、上記第1および第2の実施の形態と共通の構成要素に対しては、上記第1および第2の実施の形態で付されていた符号と同一の符号が付される。また、上記第2の実施の形態と異なる構成要素の説明を主に行い、上記第1および第2の実施の形態と共通の構成要素の説明については、適宜、省略するものとする。
【0061】
[変形例2-1]
図16は、光源装置2の構成の一変形例を表す図である。本変形例に係る光源装置2は、上記第2の実施の形態に係る光源装置2に対して、発光部60およびミラー62を新たに設けものに相当する。発光部10、光ファイバ21,23およびコンバイナ24からなるモジュールが、本発明の「第1光源部」の一具体例に相当する。発光部60およびミラー62が、本発明の「第2光源部」の一具体例に相当する。
【0062】
発光部60は、発光部60から発せられた入射可視光L5がミラー62で反射され、蛍光体素子30の光入射面のうち、入射励起光L1が入射する箇所と同じ箇所に入射するように配置されている。ミラー62は、入射励起光L1を透過し、入射可視光L5を反射する機能を有する。ミラー62は、入射励起光L1の光軸上に配置されており、発光部10とレンズ群80との間に配置されている。ミラー62は、反射後の入射可視光L5の光軸が入射励起光L1の光軸と重なり合うように配置されている。発光部60およびミラー62からなる光学モジュール(光源部)は、入射可視光L5を、入射励起光L1の光軸と入射可視光L5の光軸とがレンズ群80(さらには蛍光体素子30の光入射面)において互いに重なり合うように、蛍光体素子30の光入射面に向けて入射させる。つまり、ミラー62によって、入射励起光L1と入射可視光L5とが合成され、それにより生成された合成光(入射合成光L6)がレンズ群80を透過した後、蛍光体素子30の光入射面に入射する。
【0063】
レンズ群80は、入射合成光L6を蛍光体素子30の光入射面に照射する。レンズ81は、入射合成光L6を平行光化する。レンズ82は、レンズ81によって平行光化された光(入射合成光L6)を集光する。
【0064】
本変形例では、入射合成光L6と蛍光光L3とがレンズ40によって合成され、それにより得られた合成光が出力光L4として、レンズ40を介して外部に出力される。このとき、例えば、入射可視光L5の強度を変化させることにより、出力光L4の色彩が変化する。従って、光源からの出力光を効率よく利用して、出力光L4の色彩を、蛍光光L3とは異なる色彩に調整することができる。
【0065】
[変形例2-2]
上記第2の実施の形態および変形例2-1において、例えば、図17図18に示したように、蛍光体素子30を、蛍光体素子30の光入射面と入射励起光L1もしくは入射合成光L6の光軸とのなす角θを調整可能な角度調整部70が設けられていてもよい。角度調整部70は、蛍光体素子30の端部を支持しており、蛍光体素子30を所定の角度に傾けることの可能な機構を有している。
【0066】
角θを変化させることにより、入射励起光L1が蛍光体素子30の中を透過する経路の長さが変化する。これにより、蛍光体素子30に入射した入射励起光L1のうち、蛍光体素子30を透過する割合が変化する。従って、角度調整部70によって蛍光体素子30の傾きを変化させることにより、光源からの出力光を効率よく利用して、出力光L4の色彩を、蛍光光L3とは異なる色彩に調整することができる。
【0067】
[変形例2-3]
上記第2の実施の形態および変形例2-1,2-2において、例えば、図19図20に示したように、レンズ位置調整部90が設けられていてもよい。
【0068】
レンズ位置調整部90は、制御部50による制御に従って、蛍光体素子30の光入射面に入射する入射励起光L1もしくは入射合成光L6の入射ビーム径を変化させる。入射励起光L1もしくは入射合成光L6の入射ビーム径が変化することによって、入射励起光L1もしくは入射合成光L6の、蛍光体素子30の光入射面における光密度や照射面積が変化し、それによって、蛍光光L3の光量が変化する。蛍光光L3の光量が変化すると、レンズ40で合成された出力光L4の色彩が変化する。レンズ位置調整部90は、つまり、レンズ82の位置を調整することにより、出力光L4の色彩を調整するようになっている。
【0069】
図21は、レンズ82の位置を変化させたときの出力光L4の色度の一例を表したものである。図21には、レンズ82が初期位置0.5にあるときの出力光L4の色度が「○」で示され、レンズ82が初期位置から1.0移動したときの出力光L4の色度が「*」で示され、レンズ82が初期位置から1.5移動したときの出力光L4の色度が「▽」で示され、レンズ82が初期位置から2.0移動したときの出力光L4の色度が「□」で示されている。ている。図21から、レンズ82の位置を変化させることにより、出力光L4の色度が変化することがわかる。
【0070】
図22は、入射可視光L5の強度を変化させるとともに、レンズ82の位置を変化させたときの出力光L4の色度の一例を表したものである。図22から、入射可視光L5の強度を変化させるとともに、レンズ82の位置を変化させることにより、出力光L4の色度が変化することがわかる。
【0071】
制御部50は、発光部10(更には発光部60)に制御信号を出力することにより、発光部10(更には発光部60)の発光・消光や、入射励起光L1の光強度を制御する。制御部50は、さらに、レンズ位置調整部90に制御信号を出力することにより、レンズ位置調整部90の動作を制御する。
【0072】
本変形例では、入射励起光L1もしくは入射合成光L6と蛍光光L3とがレンズ40によって合成され、それにより得られた合成光が出力光L4として、レンズ40を介して外部に出力される。このとき、例えば、入射励起光L1もしくは入射合成光L6の、蛍光体素子30の光入射面における入射ビーム径を変化させることにより、入射励起光L1もしくは入射合成光L6の、蛍光体素子30の光入射面における光密度や照射面積が変化し、それによって、蛍光光L3の光量が変化する。蛍光光L3の光量が変化すると、出力光L4の色彩が変化する。従って、光源からの出力光を効率よく利用して、出力光L4の色彩を調整することができる。
【0073】
<5.各実施の形態に共通の変形例>
図23は、上記第1および第2の実施の形態およびこれらの変形例に係る光源装置1,2における蛍光体素子30の変形例を表す図である。本変形例において、蛍光体素子30は、入射励起光L1もしくは入射合成光L6が照射される箇所にガイド部31を有している。
【0074】
ガイド部31は、入射励起光L1、入射合成光L6および蛍光光L3を導波する導波領域である。ガイド部31は、蛍光体素子30のうち、厚さ方向に貫通する領域に対してイオン交換やレーザ光によって屈折率変化を起こした領域である。これにより、ガイド部31は、入射励起光L1、入射合成光L6および蛍光光L3を選択的に伝搬させることができる。ガイド部31を伝搬した入射励起光L1、入射合成光L6および蛍光光L3は、蛍光体素子30の出射端面から放射される。蛍光体素子30の出射端面から放射された光(透過励起光L2および蛍光光L3)が、レンズ40によって出力光L4として外部に出力される。
【0075】
本変形例では、蛍光体素子30に対してガイド部31が設けられている。これにより、透過励起光L2の放射角度と、蛍光光L3の放射角度とが互いに近くなり、レンズ40によりこれらの光を効率よく結合し出射することができる。また、ガイド部31の長さ(厚さ)や励起光以外の波長の光の出力を調整することで、色度が可変でき出力光L4の強度も大きくすることができる。ガイド部31の直径は1mm以下程度であればよく、条件に応じて最適な大きさとしてもよい。
【0076】
本発明は、レーザディスプレイ(レーザプロジェクタ、レーザTV、ヘッドマウントディスプレイ等)や、レーザ照明(顕微鏡、ヘッドランプ、室内間接照明、植物工場等)、プロジェクションマッピング、医療(レーザメス等)などの様々な分野に適用可能である。
【符号の説明】
【0077】
1,2…光源装置、10,60,61…発光部、20,21,22,23,25…光ファイバ、24…コンバイナ、30、110…蛍光体素子、31…ガイド部、40,120…レンズ、50…制御部、62,130…ミラー、70…角度調整部、80…レンズ群、81,82…レンズ、D1,D2…距離、L1…入射励起光、L2…透過励起光、L3…蛍光光、L4…出力光、L5,L7…入射可視光、L6…入射合成光、La…励起光、Lb…反射光、Lc…蛍光光、Ld…出力光、SC…スクリーン。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23