(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167585
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】膝保護用エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/215 20110101AFI20231116BHJP
B60R 21/206 20110101ALI20231116BHJP
B60R 21/237 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
B60R21/215
B60R21/206
B60R21/237
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078877
(22)【出願日】2022-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】大野 稔
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054AA02
3D054AA03
3D054AA08
3D054AA14
3D054BB12
3D054BB13
3D054CC03
3D054CC11
3D054CC29
3D054DD15
3D054FF16
(57)【要約】
【課題】車両への搭載作業が行い易く、かつ、膨張時のエアバッグが搭載部位から的確に下方側に突出した後、後上方に展開する挙動を確保し易い膝保護用エアバッグ装置の提供。
【解決手段】エアバッグ11と、インフレーター20と、エアバッグカバー30と、これらを保持して、車体側部材2に取り付けられる取付ベース25と、を備える膝保護用エアバッグ装置10。取付ベースは、インフレーターの本体部21と、その下方に配置されるエアバッグの折畳部18と、の前方側に配置されて、締結ボルト22により、本体部とエアバッグとを保持する保持座26と、保持座の左右両側の車体側部材2に取り付けられる取付座27と、を備える。エアバッグカバーは、取付ベースの後面25c側で、エアバッグとインフレーターの本体部との周囲を覆い、締結ボルトにより、取付ベースに取り付けられ、膨張時のエアバッグの突出用開口39を底面側に形成可能としている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り畳まれて収納される膝保護用のエアバッグと、
前記エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターと、
折り畳まれて収納された前記エアバッグを覆い、かつ、膨張時の前記エアバッグに押されて前記エアバッグの突出用開口を形成可能なエアバッグカバーと、
前記エアバッグ、前記インフレーター、及び、前記エアバッグカバー、を保持して、車体側部材に取り付けられる取付ベースと、
を備えて構成されるとともに、
座席の前下方側に搭載されて、膨張時の前記エアバッグが、搭載部位から下方側に突出した後、後上方に展開する構成とした膝保護用エアバッグ装置であって、
前記インフレーターが、前記エアバッグ内に収納される本体部と、該本体部から突出するとともに前記エアバッグ外に突出して、前記取付ベースに締結される締結ボルトと、を備え、
前記エアバッグが、
前記インフレーターの本体部を収納して、前記締結ボルトの締結により、前記インフレーターの本体部とともに前記取付ベースに取り付けられる元部と、
膨張完了時に前記元部から下方に延びて上方に反転する反転部と、
該反転部から上方に延びるように膨張する膨張本体部と、
を備えて構成されるとともに、
前記膨張本体部の上縁側を前記元部側に接近させるように折り畳んだ折畳部を、前記インフレーターの本体部の下方に配置させて、前記搭載部位に収納される構成とし、
前記取付ベースが、
車両搭載時、前記インフレーターの本体部と前記エアバッグの折畳部との前方側に配置されて、前記締結ボルトの締結により、前記本体部と前記エアバッグとを取り付けて保持する保持座と、
該保持座の左右両側に配設されて、軸方向を前後方向に沿わせた取付ボルトを利用して、前記車体側部材に取り付けられる取付座と、
を備えて、
左右方向に延びる略平板状として、構成され、
前記エアバッグカバーが、
前記取付ベースの後面側で、折り畳まれた前記エアバッグと前記インフレーターの本体部との周囲を覆い、かつ、前記締結ボルトを貫通させて、前記取付ベースに取り付けられるとともに、前記突出用開口を底面側に配設可能に、構成されていることを特徴とする膝保護用エアバッグ装置。
【請求項2】
前記取付ベースが、前記保持座における前記締結ボルトの配置位置と、前記取付座における前記取付ボルトの配置位置と、の高さ位置を、左右方向で一致させるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の膝保護用エアバッグ装置。
【請求項3】
前記取付ベースが、上下の縁に、それぞれ、補強用リブを突設させて構成される略平板状の板金製としていることを特徴とする請求項1若しくは請求項2に記載の膝保護用エアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両における座席の前下方側に搭載される膝保護用エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の膝保護用のエアバッグ装置では、折り畳まれて収納される膝保護用のエアバッグと、エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターと、折り畳まれて収納されたエアバッグを覆い、かつ、膨張時のエアバッグに押されてエアバッグの突出用開口を形成可能なエアバッグカバーと、エアバッグ、インフレーター、及び、エアバッグカバー、を保持して、車体側部材に取り付けられる取付ベースと、を備えて構成されていた(例えば、特許文献1参照)。このエアバッグ装置は、座席の前下方側に搭載されて、膨張時のエアバッグが、搭載部位から下方側に向いて突出した後、後上方に展開する構成の所謂「ボトムタイプ」としていた。このエアバッグ装置のインフレーターは、エアバッグ内に収納される本体部と、本体部から突出するとともにエアバッグ外に突出して、取付ベースに締結される締結ボルトと、を備えていた。また、エアバッグは、インフレーターの本体部を収納して、締結ボルトの締結により、インフレーターの本体部とともに取付ベースに取り付けられる元部と、膨張完了時に元部から下方に延びて上方に反転する反転部と、反転部から上方に延びるように膨張する膨張本体部と、を備えて構成されるとともに、膨張本体部の上縁側を元部側に接近させるように折り畳んで、略四角筒形状のエアバッグカバーに収納されていた。エアバッグカバーは、不織布からなるシート材から形成される構成として、シート材をプレス加工して略四角筒形状とし、折り畳まれたエアバッグとインフレーターの本体部との周囲を覆い、かつ、締結ボルトを貫通させて、エアバッグカバーの上方に配置される取付ベースに取り付けられるとともに、突出用開口を底面側に配設させるように構成されていた。なお、取付ベースは、左右方向の中央付近に、インフレーターの締結ボルトを貫通させる締結孔を設けた保持座を配設させ、保持座の左右両側に、取付ボルト等を利用して、車体側部材に取り付ける取付座を配設させていた。
【0003】
また、別の膝保護用のエアバッグ装置としては、取付ベースを前側に配置させて、エアバッグ内に本体部を収納したインフレーターの締結ボルトを、取付ベースと車体側部材とに貫通させて、エアバッグとインフレーターとを、前方側に配置させた取付ベースに対して、取り付けるものもあった(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021―155018号公報
【特許文献2】特開2020-40505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の特許文献1に記載の膝保護用エアバッグ装置では、上方に配置させた取付ベースに対して、インフレーターの締結ボルトを下方から上方へ貫通させて締結し、エアバッグ装置の上面側に配置させた取付ベースの保持座の左右両側に設けた取付座を、上方に配置された車体側部材に対して、軸方向を上下方向に沿わせた取付ボルトを利用して、取り付ける構造としていた。すなわち、特許文献1に記載の膝保護用エアバッグ装置では、エアバッグ装置を車両に搭載する際、搭載部位の上方側に、ナット等を回すための作業スペースを必要としていた。そのため、このエアバッグ装置は、車両に搭載する際、搭載部位の上方側にスペースが無い車両では、ナット等を回す等の作業スペースが確保し難く、搭載し難かった。
【0006】
一方、従来の特許文献2に記載の膝保護用エアバッグ装置では、インフレーターの締結ボルトを利用して、車体側部材に取り付ける構成としており、エアバッグ装置を車両に搭載する際、搭載部位の上方にスペースが無くとも、搭載部位の前後や左右に作業スペースがあれば、車体側部材に取り付けることができる。しかし、このエアバッグ装置では、インフレーターの本体部の後方側に、折り畳んだエアバッグの折畳部位が配設されていることから、膨張時のエアバッグが後方に突出し易く、膨張時のエアバッグが搭載部位から的確に下方側に向いて突出した後、後上方に展開するタイプ、すなわち、ボトムタイプのエアバッグ装置としては、採用し難かった。
【0007】
本発明に係る膝保護用エアバッグ装置は、上記の課題を解決するもので、車両への搭載作業が行い易く、かつ、膨張時のエアバッグが搭載部位から的確に下方側に突出した後、後上方に展開する挙動を確保し易い膝保護用エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る膝保護用エアバッグ装置では、折り畳まれて収納される膝保護用のエアバッグと、
前記エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターと、
折り畳まれて収納された前記エアバッグを覆い、かつ、膨張時の前記エアバッグに押されて前記エアバッグの突出用開口を形成可能なエアバッグカバーと、
前記エアバッグ、前記インフレーター、及び、前記エアバッグカバー、を保持して、車体側部材に取り付けられる取付ベースと、
を備えて構成されるとともに、
座席の前下方側に搭載されて、膨張時の前記エアバッグが、搭載部位から下方側に突出した後、後上方に展開する構成とした膝保護用エアバッグ装置であって、
前記インフレーターが、前記エアバッグ内に収納される本体部と、該本体部から突出するとともに前記エアバッグ外に突出して、前記取付ベースに締結される締結ボルトと、を備え、
前記エアバッグが、
前記インフレーターの本体部を収納して、前記締結ボルトの締結により、前記インフレーターの本体部とともに前記取付ベースに取り付けられる元部と、
膨張完了時に前記元部から下方に延びて上方に反転する反転部と、
該反転部から上方に延びるように膨張する膨張本体部と、
を備えて構成されるとともに、
前記膨張本体部の上縁側を前記元部側に接近させるように折り畳んだ折畳部を、前記インフレーターの本体部の下方に配置させて、前記搭載部位に収納される構成とし、
前記取付ベースが、
車両搭載時、前記インフレーターの本体部と前記エアバッグの折畳部との前方側に配置されて、前記締結ボルトの締結により、前記本体部と前記エアバッグとを取り付けて保持する保持座と、
該保持座の左右両側に配設されて、軸方向を前後方向に沿わせた取付ボルトを利用して、前記車体側部材に取り付けられる取付座と、
を備えて、
左右方向に延びる略平板状として、構成され、
前記エアバッグカバーが、
前記取付ベースの後面側で、折り畳まれた前記エアバッグと前記インフレーターの本体部との周囲を覆い、かつ、前記締結ボルトを貫通させて、前記取付ベースに取り付けられるとともに、前記突出用開口を底面側に配設可能に、構成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る膝保護用エアバッグ装置では、インフレーターの締結ボルトを利用して、取付ベースの保持座に、インフレーター、エアバッグ、及び、エアバッグカバー、を取り付けて、エアバッグ装置を組み立てた後、取付ベースの取付座を、車体側部材に配置させて、取付ボルトを利用すれば、エアバッグ装置を車両に搭載することができる。この搭載作業は、搭載部位の前後や左右には、搭載部位の上方と異なり、座席前方のインストルメントパネル内の種々の車両搭載部品が少なく、作業スペースを確保し易いことから、フロア側から手等を進入させ易いボトムタイプの膝保護用エアバッグ装置としていることも相俟って、容易に行える。
【0010】
また、インフレーターの本体部の下方に、エアバッグの折畳部が配設されており、作動時、折畳部が、本体部から吐出される膨張用ガスにより、円滑に下方に押し出されることとなって、エアバッグカバーの底面側を押し開いて、エアバッグカバーに突出用開口を形成できる。そのため、折り畳まれたエアバッグは、作動時、的確に、搭載部位から下方側に向いて突出した後、反転部により、後上方に展開し、そして、膨張本体部を膨張させて、膨張を完了させることとなる。その際、取付ベースが、インフレーターの本体部を覆った元部から元部近傍の折畳部の前面側を覆うように配設されていることから、エアバッグの膨張完了時、エアバッグの元部付近から元部付近の反転部にかけて、取付ベースの後面側に支持されて反力を確保できることから、膨張本体部が下がるような回転挙動を防止できて、エアバッグが、的確に、膝を保護可能に膨張を完了させることとなる。
【0011】
したがって、本発明に係る膝保護用エアバッグ装置では、車両への搭載作業が行い易く、かつ、膨張時のエアバッグが搭載部位から的確に下方側に突出した後、後上方に展開する挙動を確保でき、さらに、膨張完了時のエアバッグにおける膨張本体部を、的確な高さ位置に、配置させることもできる。
【0012】
そして、本発明に係る膝保護用エアバッグ装置では、前記取付ベースが、前記保持座における前記締結ボルトの配置位置と、前記取付座における前記取付ボルトの配置位置と、の高さ位置を、左右方向で一致させるように構成されていることが望ましい。
【0013】
このような構成では、インフレーターの本体部から膨張用ガスが吐出されても、取付ベースにおける取付ボルトを利用した車体側部材への取付位置と、締結ボルトを利用したインフレーターの本体部の保持位置と、の高さ位置が、左右方向で一致しており、取付位置を中心として、取付ベースが前後に回転し難く、エアバッグの下方への突出方向等を安定させることができて、一層、エアバッグの膨張挙動を安定させることができる。ちなみに、例えば、取付ベースにおける車体側部材への取付位置が、インフレーターの本体部の保持位置より高ければ、取付位置を支点として、インフレーターの本体部から吐出される膨張用ガスの反力により、取付位置より下方の保持座におけるインフレーターの締結ボルトの配置位置付近が前方回転し易く、前方回転するように保持座が変形すれば、エアバッグの反転部や膨張本体部が、下方へずれてしまい、的確に、膨張本体部を配置させ難くなってしまう。
【0014】
また、本発明に係る膝保護用エアバッグ装置では、前記取付ベースが、上下の縁に、それぞれ、補強用リブを突設させて構成される略平板状の板金製としていることが望ましい。
【0015】
このような構成では、取付ベースが、略平板状としていても、曲げ変形し難く、膨張時のエアバッグを安定して支持することができる。また、取付ベースは、板金製としていても、左右方向に延びる略平板状としていることから、軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る一実施形態の膝保護用エアバッグ装置の車両搭載状態を示す概略縦断面図である。
【
図2】実施形態のエアバッグ装置の車両搭載状態における締結ボルト付近の概略拡大縦断面図である。
【
図3】実施形態のエアバッグ装置の車両搭載状態における取付ボルト付近の概略拡大縦断面図である。
【
図4】実施形態のエアバッグ装置の概略斜視図である。
【
図5】実施形態のエアバッグカバーを説明する展開図である。
【
図6】実施形態のエアバッグの折畳工程を説明する図である。
【
図7】実施形態の膝保護用エアバッグ装置の作動時の状態を順に示す概略縦断面図である。
【
図8】実施形態の膝保護用エアバッグ装置の作動時の状態を順に示す概略縦断面図であり、
図7の後の状態を示す。
【
図9】実施形態の膝保護用エアバッグ装置の作動完了時の状態を示す概略縦断面図である。
【
図10】エアバッグの変形例の折畳工程を説明する図である。
【
図11】
図10に示すエアバッグの車両搭載状態の概略縦断面図である。
【
図12】取付ベースを車体側部材に取り付ける取付ボルトの向きを変えた変形例を示す概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態の膝保護用エアバッグ装置を図面に基づいて説明すると、
図1,8に示すように、実施形態の膝保護用エアバッグ装置10は、運転席の前下方側、詳しくは、前方のインストルメントパネル(適宜、インパネと略す)8の下部側、さらに詳しくは、ステアリングコラム5のコラムカバー6の下方の部位におけるインパネ8の下縁8a側の開口9、を搭載部位LPとして、搭載されている。
【0018】
なお、本明細書での前後、上下、及び、左右の各方向は、車両搭載状態の方向に対応するもので、
図1~4に示すように、後述する取付ベース25の略長方形形状の長手方向を左右の方向とし、幅方向の短手方向を上下の方向として、厚さ方向を前後の方向として、説明する。
【0019】
エアバッグ装置10は、膨張時の後述するエアバッグ11を、搭載部位LPから下方側に突出させた後、後上方に展開させる構成の所謂「ボトムタイプ」の膝保護用エアバッグ装置10としている(
図1,7~9参照)。そして、エアバッグ装置10は、
図1~4に示すように、折り畳まれて収納される膝保護用のエアバッグ11と、エアバッグ11に膨張用ガスG(
図7,8参照)を供給するインフレーター20と、折り畳まれて収納されたエアバッグ11を覆い、かつ、膨張時のエアバッグ11に押されてエアバッグ11の突出用開口39を形成可能なエアバッグカバー30と、エアバッグ11、インフレーター20、及び、エアバッグカバー30、を保持して、車体側部材としてのボディ1側のブラケット2に取り付ける取付ベース25と、を備えて構成されている。
【0020】
インフレーター20は、エアバッグ11内に収納される略円柱状の本体部21と、本体部21から突出するとともに、エアバッグ11外に突出して、取付ベース25に締結される締結ボルト22と、を備えて構成されている。本体部21は、先端(左端)に、膨張用ガスGを吐出する複数のガス吐出口21a(
図4参照)を配設させて構成され、締結ボルト22は、2本、突設されている。インフレーター20は、略円柱状の本体部21の軸方向を左右方向に配置されて、搭載部位LPに搭載されることから、2本の締結ボルト22は、高さ方向を一致させつつ、左右方向に沿って並設される状態として、前方側に突設されている。
【0021】
エアバッグ11は、インフレーター20の本体部21を収納する元部12と、エアバッグ11の膨張完了時に元部12から下方に延びて上方に反転する反転部13と、反転部13から上方に延びて、運転者Dの膝Kを保護可能に膨張する膨張本体部14と、を備えて構成されて、平らに展開すると、略台形形状としている(
図6参照)。元部12は、各締結ボルト22を貫通させる貫通孔12aを備え、貫通孔12aを貫通させた締結ボルト22を取付ベース25に締結させることにより、インフレーター20の本体部21とともに取付ベース25に取り付けられることとなる。
【0022】
また、エアバッグ11は、
図6に示すように、貫通孔12aから締結ボルト22を突出させる状態で、元部12内にインフレーター20の本体部21を収納し、そして、平らに展開させた状態で、膨張本体部14の先端(上縁)14a側を元部12側に接近させるように、ロール折りして、折り畳まれる。実施形態の場合、エアバッグ11の車体側壁部11aの側で巻くロール折りとしている。エアバッグ11は、ロール折りされた折畳部18を、インフレーター20の本体部21の下方に配置させて、搭載部位LPに収納される。
【0023】
なお、エアバッグ11は、ポリエステル等の織布から形成されて、膨張完了時に、
図9に示すように、インパネ8側に配置される車体側壁部11aと、運転者D側に配置される乗員側壁部11bと、を備えて、先端(上縁)14a側を幅広とした略台形形状としている。また、エアバッグ11は、車体側壁部11aと乗員側壁部11bとを連結する複数のテザー15を内部に配設させている。テザー15は、膨張本体部14側に配設される2つの厚さ規制テザー15a,15aと、反転部13を形成するように、側方から見て放射状に配設される放射状テザー15b,15bと、反転部13の下方への落ち込みを防止する牽引テザー15cと、から構成されている。放射状テザー15b,15bは、相互の離隔距離として、乗員側壁部11b側より車体側壁部11a側を短くして、反転部13が、元部12側から下方に延び、ついで、上方へ反転するように、設定されている。牽引テザー15cは、インフレーター20の本体部21の上方付近の車体側壁部11aと本体部21の下方付近の乗員側壁部11bとを連結するように、配設されている。これらのテザー15(15a,15b,15c)は、インフレーター20の本体部21におけるガス吐出口21aから吐出される膨張用ガスGの流れを阻害しないように、適宜、ガス流通路を設けて、車体側壁部11aと乗員側壁部11bとを連結するように配設されている。
【0024】
取付ベース25は、鉄等の板金製として、左右方向に延びる略平板状としている。この取付ベース25は、車両搭載時、インフレーター20の本体部21とエアバッグ11の折畳部18との前方側に配置されて、締結ボルト22の締結により、本体部21とエアバッグ11とを取り付けて保持し、そして、インフレーター20とエアバッグ11とを車体側部材としてのブラケット2に取り付けている。
【0025】
取付ベース25は、鋼板をプレス加工して形成されて、左右方向の中央に配置される保持座26と、保持座26の左右両側に配設される取付座27(L,R)と、を備えて構成されている。保持座26は、締結ボルト22を貫通させる締結孔26aを左右方向に並設させており、締結ボルト22,22を各締結孔26aに貫通させて、各締結ボルト22にナット23を締結すれば、インフレーター20の本体部21とエアバッグ11とを、取り付けて保持することとなる。左右の取付座27(L,R)は、軸方向を前後方向に沿わせた取付ボルト3を利用して、車体側部材としてのブラケット2の連結座2a(L,R)に取り付けられる部位としており、取付ボルト3を貫通させる取付孔27aを備えている。
【0026】
なお、車体側部材としてのブラケット2の連結座2a(L,R)は、取付ボルト3を貫通させる貫通孔2bと、取付ボルト3を螺合させるために取付座2aの前面側に溶着されたナット4(ウェルドナット)と、を備えて、エアバッグ装置10の搭載部位LPの左右両側に配設されている(
図3,4参照)。取付座27(L,R)の連結座2aへの取り付けは、左右の連結座2aL,2aRの後面に、各取付座27L,27Rを配置させて、取付孔27aと貫通孔2bとに取付ボルト3を貫通させつつ、各取付ボルト3をナット4に締結させれば、取付ベース25をブラケット2に取り付けることができて、エアバッグ装置10を搭載部位LPに搭載することができる。
【0027】
また、取付ベース25は、車両搭載状態で、保持座26における締結ボルト22の配置位置である締結孔26a,26aと、取付座27(L,R)における取付ボルト3の配置位置である取付孔27aと、のエアバッグ装置10の底面10aからの高さ位置hを、左右方向で一致させるように構成されている。
【0028】
さらに、取付ベース25は、左右方向に延びた略長方形の略平板状としているものの、上下の縁25a,25bには、それぞれ、突出長さを短くした補強用リブ28(U,B)を突設させている。実施形態の場合、上縁25a側の補強用リブ28Uは、車両後方側に突設され、下縁25b側の補強用リブ28Dは、車両前方側に突設されている。
【0029】
エアバッグカバー30は、
図5に示すように、不織布製のシート用素材45から切り出したシート材40から形成されている。実施形態の不織布は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル等の短繊維同士を、接着剤や低融点繊維により接合させたり、あるいは、絡み合わせたりして、形成されている。
【0030】
そして、エアバッグカバー30は、平板状の底壁部31を共用して、中央の高さの高い略四角筒形状の中央筒部30aと、高さの低い略四角筒形状の縁側筒部30b(L,R)と、を備えて、折り畳まれたエアバッグ11とインフレーター20の本体部21との前後と上下とを覆うように構成されている。
【0031】
このエアバッグカバー30は、エアバッグ11の折畳部18の下方を覆う略長方形板状の底壁部31と、底壁部31の前縁31a側から上方に延びて、取付ベース25の後面25cに当接される前壁部32と、底壁部31の後縁31b側から上方に延びて、前壁部32と前後方向で対向するように配設される後壁部34と、インフレーター20の本体部21と折畳部18との上方を覆う天井壁部35と、を備えて構成されている。前壁部32は、左右方向の中央の高さの高い中央部32aと、中央部32aの左右両側に配置される中央部32aより高さの低い縁部32b(L,R)と、を備えて構成されている。後壁部34も、同様に、左右方向の中央の高さの高い中央部34aと、中央部34aの左右両側に配置される中央部34aより高さの低い縁部34b(L,R)と、を備えて構成されている。
【0032】
そして、天井壁部35は、前壁部32と後壁部34との中央部32a,34a相互を連結する中央部35aと、中央部35aから段差を有して下がり、前壁部32と後壁部34との左右の縁部32b(L,R),34b(L,R)相互を連結する縁部35b(L,R)と、を備えて構成されている。
【0033】
このエアバッグカバー30では、中央筒部30aが、インフレーター20の本体部21をエアバッグ11の折畳部18とともに覆う部位とし、縁側筒部30b(L,R)が、本体部21の領域から外れて、エアバッグ11の折畳部18だけを覆う部位としている。そして、中央筒部30aの前壁部32の部位には、締結ボルト22を貫通させる貫通孔33が形成されている。
【0034】
エアバッグカバー30は、底壁部31が、エアバッグ11の膨張時に突出用開口39を形成する扉部36、を構成している。この扉部36は、底壁部31の前縁31a側を、開き時のヒンジ部とし、後縁31b側に、エアバッグ11の膨張時に破断する薄肉の破断予定部37としている。
【0035】
エアバッグカバー30を形成するシート材40は、
図5に示すように、平らに展開した状態で、底壁部31を形成する部位に、後壁部34の中央部34aや縁部34b(L,R)を形成する部位が連なり、さらに、後壁部34を形成する部位に、天井壁部35の中央部35aや縁部35b(L,R)を形成する部位が連なり、さらに、天井壁部35を形成する部位に、前壁部32の中央部32aや縁部32b(L,R)を形成する部位が連なっている。そして、各部の境界部位には、折曲させる折目を付け易いように、プレス加工により、屈曲用凹溝41が形成されるとともに、破断予定部37を形成する部位には、破断し易いように、プレス加工により、破断用凹溝42が形成されている。なお、各屈曲用凹溝41は、エアバッグ装置10の組み立て時、折曲させやすいように、予め、くせ付けしておく。
【0036】
また、底壁部31の前縁31a側と前壁部32の下縁側との部位には、熱融着等して相互に結合させる結合代31c,32cが配設されており、エアバッグカバー30の組み立て時、シート材40の各屈曲用凹溝41を屈曲させて、結合代31c,32c相互を結合させて、中央筒部30aと縁側筒部30bとを形成すれば、エアバッグカバー30を組み立てることができる。
【0037】
実施形態のエアバッグ装置10の組立作業を説明すると、まず、締結ボルト22を突出させるように、エアバッグ11内にインフレーター20の本体部21を収納しておき、そして、
図6に示すように、上縁14a側を元部12に接近させるようにロール折りしてエアバッグ11を折り畳んで、折畳部18を形成する。ついで、エアバッグカバー30の前壁部32の貫通孔33に締結ボルト22を貫通させて、前壁部32の後面側に、インフレーター20の本体部21と折り畳んだエアバッグ11とを配置させ、各屈曲用凹溝41を折曲させて、本体部21を収納して折り畳まれているエアバッグ11の周囲に、天井壁部35、前壁部32、及び、底壁部31を配置させ、さらに、底壁部31と前壁部32との結合代31c,32c相互を重ねて、結合すれば、エアバッグカバー30を形成することができる。その後、各締結ボルト22,22を取付ベース25の保持座26の締結孔26aに貫通させて、各締結ボルト22にナット23を締結すれば、取付ベース25に対して、インフレーター20の本体部21とエアバッグ11とを取り付けることができて、エアバッグ装置10を組み立てることができる。
【0038】
そして、エアバッグ装置10を組み立てた後には、インフレーター20から延びる図示しない作動用信号線を所定のコネクタに結線するとともに、取付ベース25の取付座27(L,R)を、車体側部材としてのブラケット2における左右の連結座2aの後面に配置させて、取付ボルト3を取付孔27aと貫通孔2bとに貫通させつつ、取付ボルト3をナット4に締結すれば、取付ベース25がボディ1側のブラケット2に取り付けられ、エアバッグ装置10を、車両の搭載部位LPに搭載することができる。
【0039】
エアバッグ装置10の搭載後、インフレーター20が作動すれば、ガス吐出口21aから膨張用ガスGが吐出され、
図7のA,B、
図8のA,Bに示すように、エアバッグ11が、展開膨張し、エアバッグカバー30の破断予定部37を破断させて、扉部36を押し開いて突出用開口39を形成し、その突出用開口39を経て、運転者Dの膝Kの前方側に、配置されることとなる(
図9参照)。
【0040】
そして、実施形態のエアバッグ装置10では、インフレーター20の締結ボルト22を利用して、取付ベース25の保持座26に、インフレーター20、エアバッグ11、及び、エアバッグカバー30、を取り付けて、エアバッグ装置10を組み立てた後、取付ベース25の取付座27(L,R)を、車体側部材としてのブラケット2の連結座2aに配置させて、取付座27と連結座2aとに貫通させつつナット4に締結する取付ボルト3を利用すれば、エアバッグ装置10を車両に搭載することができる。この搭載作業は、搭載部位LPの前後や左右には、搭載部位LPの上方と異なり、座席前方のインパネ8内の種々の車両搭載部品(ステアリング装置や空調装置等)が少なく、作業スペースを確保し易いことから、フロアF側から手等を進入させ易いボトムタイプの膝保護用エアバッグ装置10としていることも相俟って、容易に行える。
【0041】
また、インフレーター20の本体部21の下方に、エアバッグ11の折畳部18が配設されており、作動時、折畳部18が、本体部21から吐出される膨張用ガスGにより、円滑に下方に押し出されることとなって(
図7のA,B参照)、エアバッグカバー30の底面側(底壁部31側)を押し開いて、エアバッグカバー30に突出用開口39を形成できる。そのため、折り畳まれたエアバッグ11は、作動時、的確に、搭載部位LPから下方側に向いて突出した後、反転部13により、後上方に展開し、そして、
図8のA,Bや
図9に示すように、膨張本体部14を膨張させて、膨張を完了させることとなる。その際、取付ベース25が、インフレーター20の本体部21を覆った元部12から元部12近傍の折畳部18の前面側を覆うように配設されていることから、エアバッグ11の膨張完了時、エアバッグ11の元部12付近から元部12付近の反転部13にかけて、取付ベース25の後面25c側に支持されて反力を確保できることから、膨張本体部14が下がるような回転挙動を防止できて、エアバッグ11が、的確に、膝Kを保護可能に膨張を完了させることとなる。
【0042】
したがって、実施形態の膝保護用エアバッグ装置10では、車両への搭載作業が行い易く、かつ、膨張時のエアバッグ11が搭載部位LPから的確に下方側に突出した後、後上方に展開する挙動を確保でき、さらに、膨張完了時のエアバッグ11における膨張本体部14を、的確な高さ位置に、配置させることもできる。
【0043】
そして、実施形態の膝保護用エアバッグ装置10では、取付ベース25が、保持座26における締結ボルト22の配置位置と、取付座27(L,R)における取付ボルト3の配置位置と、の高さ位置を、左右方向で一致させるように構成されている。実施形態では、エアバッグ装置10の底面10aからの高さ位置hが、締結ボルト22の配置位置P2と、取付ボルト3の配置位置P1とで、一致している。換言すれば、実施形態の場合、取付ベース25における締結ボルト22を貫通させる締結孔26aの配置位置(保持位置)P2と、取付ベース25における取付ボルト3を貫通させる取付孔27aの配置位置P1と、が、エアバッグ装置10の底面10aからの高さ位置hを一致させている。
【0044】
そのため、実施形態では、インフレーター20の本体部21から膨張用ガスGが吐出されても、取付ベース25における取付ボルト3を利用した車体側部材としてブラケット2との取付位置(取付孔27aの配置位置)P1と、締結ボルト22を利用したインフレーター20の本体部21の保持位置(締結孔26aの配置位置)P2と、の高さ位置hが、左右方向で一致しており、取付位置P1を中心として、取付ベース25が前後に回転し難く、エアバッグ11の下方への突出方向等を安定させることができて、一層、エアバッグ11の膨張挙動を安定させることができる。ちなみに、例えば、取付ベース25における車体側部材への取付位置P3(
図2の二点鎖線参照)が、インフレーター20の本体部21の保持位置P2より高ければ、取付位置P3を支点として、インフレーター20の本体部21から吐出される膨張用ガスGの反力により、取付位置P3より下方の保持座26におけるインフレーター20の締結ボルト22の配置位置P2付近が前方回転し易く、前方回転するように保持座26が変形すれば、エアバッグ11の反転部13や膨張本体部14が、下方へずれてしまい、的確に、膨張本体部14を配置させ難くなってしまう。
【0045】
また、実施形態の膝保護用エアバッグ装置10では、取付ベース25が、上下の縁25a,25bに、それぞれ、補強用リブ28(U,D)を突設させて構成される略平板状の板金製としている。
【0046】
そのため、実施形態では、取付ベース25が、略平板状としていても、曲げ変形し難く、膨張時のエアバッグ11を安定して支持することができる。また、取付ベース25は、板金製としていても、左右方向に延びる略平板状としていることから、軽量化を図ることができる。
【0047】
なお、実施形態では、インフレーター20の本体部21の下方に配置させるエアバッグ11の折畳部18を、平らに展開した状態の上縁14a側を元部12側に接近させるようにロール折りして、形成した場合を示したが、
図10,11に示すように、実施形態のようにロール折りした折畳部18の左右の両縁部18bを、折畳部18の左右方向の中央部18a側の下方に折って、折畳部18Aを形成してもよい。この場合でも、インフレーター20の本体部21の下方に、折畳部18A、すなわち、中央部18aと縁部18bとが配設されて、エアバッグカバー30Aに覆われて、搭載されることから、折畳部18Aを設けたエアバッグ11は、インフレーター20の作動時、円滑に、搭載部位LPから下方側に向いて突出した後、反転して、後上方に展開し、膨張を完了させることができる。
【0048】
また、実施形態では、取付ベース25の取付座27(L,R)を車体側部材としてのブラケット2に取り付ける際、取付孔27aに対して、後方から前方に貫通させる取付ボルト3を使用した場合を示したが、
図12に示すように、取付ベース25の取付座27(L,R)側の取付孔27aの前面側周縁にナット(ウェルドナット)4Bを設けて、この取付孔27aに対して、前方から取付ボルト3Bを貫通させつつナット4Bに締結させて、ブラケット2に対して取付座27を取り付けてもよい。勿論、実施形態のナット4や
図12のナット4Bとして、ウェルドナットを使用したが、別途、取付孔27aや貫通孔2bを貫通させた取付ボルト3,3Bに対して、ナット4,4Bを締結させてもよい。
【0049】
さらに、実施形態では、運転席の前下方側に搭載される膝保護用エアバッグ装置10について説明したが、本発明は、運転席の他、助手席を含めた座席の前下方に搭載される膝保護用エアバッグ装置に、適用できる。
【符号の説明】
【0050】
2…(車体側部材)ブラケット、2a(L,R)…連結座、3…取付ボルト、10…膝保護用エアバッグ装置、11…エアバッグ、12…元部、13…反転部、14…膨張本体部、14a…上縁、18,18A…折畳部、20…インフレーター、21…本体部、22…締結ボルト、25…取付ベース、25c…後面、26…保持座、27(L,R)…取付座、28(U,D)…補強用リブ、30,30A…エアバッグカバー、36…扉部、37…破断予定部、38…ヒンジ部、39…突出用開口、
LP…搭載部位、h…高さ位置、P1…(取付ボルトの配置位置)取付位置、P2…(締結ボルトの配置位置)保持位置、G…膨張用ガス。