(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167595
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】締付トルク点検システム
(51)【国際特許分類】
G01L 5/24 20060101AFI20231116BHJP
B25B 23/14 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
G01L5/24
B25B23/14 640W
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078890
(22)【出願日】2022-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000136136
【氏名又は名称】株式会社PFU
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 雅雄
【テーマコード(参考)】
2F051
3C038
【Fターム(参考)】
2F051AA24
2F051AC07
2F051AC09
2F051BA03
3C038CA06
3C038EA06
(57)【要約】
【課題】持ち運び可能な締付トルク点検システムを提供すること。
【解決手段】締付トルク点検システム10は、トルクメータ11と、コントローラ12と、ラベルプリンタ13と、コードリーダ14と、収納ケース16とを有し、トルクメータ11は、電動ドライバの締付トルクを測定し、コントローラ12は、測定された締付トルクが正常値であるか否かを締付トルクの基準値に基づいて判定し、ラベルプリンタ13は、測定された締付トルクが正常値であると判定されたときに、締付トルクの基準値と、電動ドライバの管理番号を示すコードとを含むラベルを印刷し、コードリーダ14は、ラベルに含まれるコードを読み取り、収納ケース16は、トルクメータ11と、コントローラ12と、ラベルプリンタ13と、コードリーダ14とを収納する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動ドライバの締付トルクを測定するトルクメータと、
測定された前記締付トルクが正常値であるか否かを前記締付トルクの基準値に基づいて判定するコントローラと、
測定された前記締付トルクが正常値であると判定されたときに、前記基準値と、前記電動ドライバの管理番号を示すコードとを含むラベルを印刷するプリンタと、
前記コードを読み取るリーダと、
前記トルクメータと、前記コントローラと、前記プリンタと、前記リーダとを収納するケースと、
を具備する締付トルク点検システム。
【請求項2】
前記トルクメータと、前記コントローラと、前記プリンタと、前記リーダとを駆動するバッテリ、をさらに具備し、
前記ケースは、前記トルクメータと、前記コントローラと、前記プリンタと、前記リーダと、前記バッテリとを収納する、
請求項1に記載の締付トルク点検システム。
【請求項3】
前記ケースは、本体と上蓋とから形成され、
前記コントローラは、タッチスクリーンを有し、
前記タッチスクリーンは、前記上蓋に設置され、
前記トルクメータ及び前記プリンタは、前記本体に設置される、
請求項1に記載の締付トルク点検システム。
【請求項4】
前記コントローラは、
前記リーダによって読み取られた前記コードが示す前記管理番号に基づいて前記基準値を取得し、
取得した前記基準値に基づいて、測定された前記締付トルクが正常値であるか否かを判定する、
請求項1に記載の締付トルク点検システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、締付トルク点検システムに関する。
【背景技術】
【0002】
製品の組立には様々なネジが使用され、ネジの締め付けには電動ドライバが使用される。それぞれのネジには適正な締付トルク(以下では「適正トルク」と呼ぶことがある)が存在する一方で、電動ドライバの使用に伴って、電動ドライバの締付トルク(以下では「ドライバトルク」と呼ぶことがある)には、適正トルクからの誤差が生じる。そこで、定期的にトルクメータを用いてドライバトルクを点検し、ドライバトルクを適正トルクに調節することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動ドライバを使用した製品の組立は組立工程に従って工場内の様々な場所で行われているため、膨大な数の電動ドライバが工場内で使用されている。工場内の様々な場所で使用される膨大な数の電動ドライバの締付トルクを点検するために多数のトルクメータを工場内に固定的に設置したのでは、トルクメータの設置コストが増大してしまうとともに、工場内のレイアウト変更に容易に対応することが困難になる。
【0005】
そこで、本開示では、持ち運び可能な締付トルク点検システムを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の締付トルク点検システムは、トルクメータと、コントローラと、プリンタと、リーダと、ケースとを有する。前記トルクメータは、電動ドライバの締付トルクを測定する。前記コントローラは、測定された前記締付トルクが正常値であるか否かを前記締付トルクの基準値に基づいて判定する。前記プリンタは、測定された前記締付トルクが正常値であると判定されたときに、前記基準値と、前記電動ドライバの管理番号を示すコードとを含むラベルを印刷する。前記リーダは、前記コードを読み取る。前記ケースは、前記トルクメータと、前記コントローラと、前記プリンタと、前記リーダとを収納する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、持ち運び可能な締付トルク点検システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の締付トルク点検システムの構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、本開示のトルクメータの使用形態を示す図である。
【
図3】
図3は、本開示のコントローラの構成例を示す図である。
【
図4】
図4は、本開示のトルク基準値テーブルの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、本開示の締付トルク点検システムの動作例を示す図である。
【
図6】
図6は、本開示の締付トルク点検システムの動作例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施例を図面に基づいて説明する。図面において同一の構成には同一の符号を付す。
【0010】
[実施例]
<締付トルク点検システムの構成>
図1は、本開示の締付トルク点検システムの構成例を示す図である。
図1において、締付トルク点検システム10は、トルクメータ11と、コントローラ12と、ラベルプリンタ13と、コードリーダ14と、バッテリ15と、収納ケース16とを有する。トルクメータ11、ラベルプリンタ13及びコードリーダ14は、有線または無線によって、コントローラ12に接続されている。
【0011】
トルクメータ11は、電動ドライバDRに装着されたドライバビットBIが取り付けられるビット取付部11aを有し、電動ドライバDRの締付トルクを測定する。
【0012】
コントローラ12は、トルクメータ11によって測定されたドライバトルク(以下では「測定トルク」と呼ぶことがある)が正常値であるか否かをドライバトルクの基準値(以下では「トルク基準値」と呼ぶことがある)に基づいて判定する。コントローラ12は、タッチスクリーン12aを有し、コントローラ12の一例としてタブレット端末が挙げられる。
【0013】
ラベルプリンタ13は、コントローラ12によって測定トルクが正常値であると判定されたときに、電動ドライバDRの管理番号(以下では「ドライバ管理番号」と呼ぶことがある)と、トルク基準値と、ドライバ管理番号を示すコード(以下では「管理番号コード」と呼ぶことがある)と、次回の点検期限(以下では「次回点検期限」と呼ぶことがある)とを含むラベル(以下では「管理ラベル」と呼ぶことがある)を印刷する。管理番号コードの一例として、QRコード(登録商標)、バーコードが挙げられる。
【0014】
コードリーダ14は、管理番号コードを読み取る。
【0015】
バッテリ15は、トルクメータ11と、コントローラ12と、ラベルプリンタ13と、コードリーダ14とを駆動する。なお、トルクメータ11を駆動するバッテリをトルクメータ11が内蔵し、コントローラ12を駆動するバッテリをコントローラ12が内蔵し、ラベルプリンタ13を駆動するバッテリをラベルプリンタ13が内蔵し、コードリーダ14を駆動するバッテリをコードリーダ14が内蔵しても良い。
【0016】
収納ケース16は、ケース本体16Aとケース上蓋16Bとから形成され、トルクメータ11と、コントローラ12と、ラベルプリンタ13と、コードリーダ14と、バッテリ15とを収納する。トルクメータ11、ラベルプリンタ13及びバッテリ15は、ケース本体16Aに設置される。一方で、コントローラ12が有するタッチスクリーン12aは、ケース上蓋16Bに設置される。
【0017】
<トルクメータの使用形態>
図2は、本開示のトルクメータの使用形態を示す図である。
図2に示すように、電動ドライバDRのドライバビットBIがビット取付部11aに取り付けられた後、電動ドライバDRのスイッチSWが押下されてドライバビットBIが回転することにより、トルクメータ11によって、電動ドライバDRの締付トルクが測定される。トルクメータ11は、測定トルクをコントローラ12へ出力する。
【0018】
<コントローラの構成>
図3は、本開示のコントローラの構成例を示す図である。
図3において、コントローラ12は、タッチスクリーン12aと、CPU(Central Processing Unit)12bと、メモリ12cとを有する。メモリ12cには、
図4に示すようなトルク基準値テーブルTAが記憶されている。
図4は、本開示のトルク基準値テーブルの一例を示す図である。トルク基準値テーブルTAには、ドライバ管理番号とトルク基準値[Nm]との対応付けが設定されている。トルク基準値テーブルTAにおけるドライバ管理番号とトルク基準値との対応付けは、タッチスクリーン12aを用いたオペレータからの入力によって設定される。トルク基準値は、電動ドライバDRが使用されるネジの適正トルクと同一の値に設定される。
【0019】
<締付トルク点検システムの動作>
図5及び
図6は、本開示の締付トルク点検システムの動作例を示す図である。
図5には、管理ラベルの一例を示し、
図6には、タッチスクリーン12aにおける画面表示例を示す。以下では、当日日付が2015年3月6日である場合を一例に挙げて説明する。また以下では、ドライバトルクの定期点検が1ヶ月毎に行われる場合を一例に挙げて説明する。
【0020】
電動ドライバDRに貼り付けられている管理ラベルMLに記載された管理番号コードMCがコードリーダ14によって読み取られると、CPU12bは、管理番号コードMCが示すドライバ管理番号に基づいてトルク基準値テーブルTAを参照し、管理番号コードMCが示すドライバ管理番号に対応するトルク基準値をトルク基準値テーブルTAから取得する。ここでは、管理番号コードMCが示すドライバ管理番号が「AR007」であるものとする。よって、CPU12bは、「0.49」のトルク基準値をトルク基準値テーブルTAから取得する。
【0021】
次いで、トルクメータ11は、電動ドライバDRの締付トルクを測定する。
【0022】
次いで、CPU12bは、測定された締付トルクが正常値であるか否かを判定する。例えば、CPU12bは、トルク基準値に0.05[Nm]を加えた値を第一閾値TH1として設定するとともに、トルク基準値から0.05[Nm]を減じた値を第二閾値TH2として設定する。よってここでは、第一閾値TH1は0.54[Nm]に設定され、第二閾値TH2は0.44[Nm]に設定される。第一閾値TH1は適正トルクの上限値に相当し、第二閾値TH2は適正トルクの下限値に相当する。CPU12bは、測定トルクが第一閾値TH1以下で、かつ、第二閾値TH2以上であるときに、測定トルクが正常値であると判定する。一方で、CPU12bは、測定トルクが第一閾値TH1より大きいか、または、第二閾値TH2未満であるときに、測定トルクが異常値であると判定する。
【0023】
ラベルプリンタ13は、測定トルクが正常値であると判定されたときに、
図5に示す管理ラベルMLを印刷する。管理ラベルMLには、「AR007」のドライバ管理番号CNと、「0.49」のトルク基準値TRと、「2015年4月」の次回点検期限CDと、「AR007」のドライバ管理番号CNを示す管理番号コードMCとが含まれる。オペレータは、電動ドライバDRに貼り付けられている管理ラベルMLを、ラベルプリンタ13によって印刷された管理ラベルMLに貼り替える。一方で、ラベルプリンタ13は、測定トルクが異常値であると判定されたときは、管理ラベルMLを印刷しない。
【0024】
なお、電動ドライバDRの締付トルクの測定が連続して3回行われ、CPU12bは、3回すべての測定トルクが正常値であるときに総合判定結果を「OK」とし、3回の何れかの測定トルクが異常値であるときに総合判定結果を「NG」としても良い。また、ラベルプリンタ13は、総合判定結果が「OK」であるときに管理ラベルMLを印刷する一方で、総合判定結果が「NG」であるときに管理ラベルMLを印刷しなくても良い。
【0025】
また、CPU12bは、電動ドライバDRの締付トルクの測定が行われる際に、
図6に示すように、管理番号コードMCが示すドライバ管理番号と、トルク基準値テーブルTAから取得したトルク基準値と、第一閾値TH1と、第二閾値TH2と、今回の総合判定結果と、過去の総合判定結果とをタッチスクリーン12aに表示させても良い。
【0026】
以上、実施例について説明した。
【0027】
以上のように、本開示の締付トルク点検システム(実施例の締付トルク点検システム10)は、トルクメータ(実施例のトルクメータ11)と、コントローラ(実施例のコントローラ12)と、プリンタ(実施例のラベルプリンタ13)と、リーダ(実施例のコードリーダ14)と、ケース(実施例の収納ケース16)とを有する。トルクメータは、電動ドライバの締付トルクを測定する。コントローラは、測定された締付トルクが正常値であるか否かを締付トルクの基準値に基づいて判定する。プリンタは、測定された締付トルクが正常値であると判定されたときに、締付トルクの基準値と、電動ドライバの管理番号を示すコードとを含むラベルを印刷する。リーダは、ラベルに含まれるコードを読み取る。ケースは、トルクメータと、コントローラと、プリンタと、リーダとを収納する。
【0028】
このように、トルクメータと、コントローラと、プリンタと、リーダとが1セットにされてケースに収納されることで、持ち運び可能な締付トルク点検システムを実現できる。これにより、工場内の様々な場所で使用される膨大な数の電動ドライバの締付トルクを点検するために、多数のトルクメータを工場内に設置する必要が無くなるため、ドライバトルクの点検に要するコストを削減することができるとともに、工場内のレイアウト変更に容易に対応することができる。
【0029】
また、本開示の締付トルク点検システムは、トルクメータと、コントローラと、プリンタと、リーダとを駆動するバッテリ(実施例のバッテリ15)をさらに有し、ケースは、トルクメータと、コントローラと、プリンタと、リーダと、バッテリとを収納する。
【0030】
このようにバッテリもケースに収納されることで、固定電源が無い場所でもドライバトルクの点検を行うことができる。
【0031】
また、ケースは、本体(実施例のケース本体16A)と上蓋(実施例のケース上蓋16B)とから形成され、タッチスクリーン(実施例のタッチスクリーン12a)はケースの上蓋に設置され、トルクメータ及びプリンタはケースの本体に設置される。
【0032】
このようにタッチスクリーンがケースの上蓋に設置されることでタッチスクリーンに表示される画面の視認性を向上できるとともに、トルクメータ及びプリンタがケースの本体に設置されることで、トルクメータ及びプリンタの操作性を向上できる。
【0033】
また、コントローラは、リーダによって読み取られたコードが示す管理番号に基づいて基準値を取得し、取得した基準値に基づいて、測定された締付トルクが正常値であるか否かを判定する。
【0034】
こうすることで、オペレータは締付トルクの点検の度に基準値を入力する必要がなくなるため、ドライバトルクの点検を効率的に行うことができる。
【符号の説明】
【0035】
10 締付トルク点検システム
11 トルクメータ
12 コントローラ
12a タッチスクリーン
13 ラベルプリンタ
14 コードリーダ
15 バッテリ
16 収納ケース
16A ケース本体
16B ケース上蓋