(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167603
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
F02D 45/00 20060101AFI20231116BHJP
F02D 29/02 20060101ALI20231116BHJP
F02D 41/06 20060101ALI20231116BHJP
F02N 11/08 20060101ALI20231116BHJP
F02N 11/04 20060101ALI20231116BHJP
H02P 29/00 20160101ALN20231116BHJP
【FI】
F02D45/00 362
F02D29/02 321B
F02D29/02 321A
F02D41/06
F02N11/08 F
F02N11/04 A
H02P29/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078907
(22)【出願日】2022-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145023
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 学
(74)【代理人】
【識別番号】100105887
【弁理士】
【氏名又は名称】来山 幹雄
(74)【代理人】
【識別番号】100182028
【弁理士】
【氏名又は名称】多原 伸宜
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 淳士
【テーマコード(参考)】
3G093
3G301
3G384
5H501
【Fターム(参考)】
3G093AA02
3G093AA07
3G093BA14
3G093BA21
3G093CA02
3G093DB23
3G301HA01
3G301JA08
3G301JA20
3G301KA04
3G301LC03
3G384AA01
3G384AA27
3G384AA29
3G384DA04
3G384DA20
3G384DA27
3G384DA39
3G384ED07
5H501AA20
5H501CC04
5H501EE01
5H501HA08
5H501HB07
5H501JJ17
5H501JJ18
5H501LL35
5H501LL36
(57)【要約】
【課題】クランク角センサを省略しながら、内燃機関の温度に影響を受けることを抑制した態様で、電動機を逆回転するように駆動しながら内燃機関が逆回転から正回転に転じたことに基づき、クランク角を高精度に特定することが可能な車両制御装置を提供する。
【解決手段】車両制御装置100では、電動機110が逆回転で回転されることにより逆回転で回転されていた内燃機関1が正回転で回転するように、内燃機関1の回転が転じたことに応じて、内燃機関1のクランク角を特定するクランク角特定部133を備え、クランク角特定部133が、クランク角を特定する際の内燃機関1の温度が低くなればなる程、特定するクランク角をより進角した側のクランク角として特定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された内燃機関を始動させるように前記内燃機関を駆動する電動機を、逆回転で回転させてから正回転で回転させることにより、前記内燃機関を逆回転で回転させてから正回転で回転させることが可能な制御部を備えた車両制御装置であって、
前記電動機が逆回転で回転されることにより逆回転で回転されていた前記内燃機関が正回転で回転するように、前記内燃機関の回転が転じたことに応じて、前記内燃機関のクランク角を特定するクランク角特定部を更に備え、
前記制御部は、前記クランク角特定部の特定した前記クランク角に基づき、前記電動機を制御し、
前記クランク角特定部は、前記クランク角を特定する際の前記内燃機関の温度が低くなればなる程、特定する前記クランク角をより進角した側のクランク角として特定することを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
前記クランク角特定部は、前記電動機の前記回転位置を示す3相のセンサ信号を送出するセンサから送出される前記3相のセンサ信号の電圧の立ち上がり及び立ち下がりの間の期間が、前記3相のセンサ信号の全てにおいて、所定時間以上になるときに、前記内燃機関の前記回転が転じたとして前記クランク角を特定することを特徴とする請求項1に記載の車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置に関し、特に、車両に搭載され、内燃機関を正回転させることに加え逆回転させることが可能な電動機を制御する車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等の車両において、内燃機関の始動性を向上するために、内燃機関のクランク軸を電動機で一旦逆回転させ、そのクランク軸を内燃機関の圧縮上死点から若干進角側の角度となるクランク角に位置させた後に、内燃機関の始動のためにクランク軸を正回転させる制御を実行する車両制御装置が提案されている。
【0003】
かかる状況下で、特許文献1は、車両制御装置に関し、アイドルストップ制御による内燃機関の停止の直後に、クランク軸51を所定位置まで逆転駆動させるアイドルストップ開始時巻き戻し制御部100を備える構成を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、本発明者の検討によれば、特許文献1が開示する構成では、モータ角度センサ29の出力信号に基づいてクランク軸が正転に転じたことを検知することにより、電動機で一旦逆回転させた内燃機関のクランク軸が、内燃機関の圧縮上死点から若干進角側の角度となるクランク角に位置されたこと判定するものであるため、内燃機関の各行程(吸気、圧縮、膨張及び排気)も含め720度のクランク角を概略的には特定可能となり、これにより、クランク角を検出するクランク角センサは省略可能となると考えられる。しかしながら、特許文献1が開示する構成では、内燃機関の温度が低いとき程、内燃機関の潤滑油の機能が低下し、クランク軸の逆回転に対するフリクションが大きくなることから、電動機を逆回転するように駆動しながら内燃機関が逆回転から正回転に転じる実際の回転位置は、内燃機関の温度が低いとき程、圧縮上死点から進角側に遠くなる位置(膨張下死点に近くなる位置)となってしまい、クランク角を高精度に特定できない可能性があるため、この点で改良の余地があるものである。
【0006】
本発明は、以上の検討を経てなされたものであり、クランク角センサを省略しながら、内燃機関の温度に影響を受けることを抑制した態様で、電動機を逆回転するように駆動しながら内燃機関が逆回転から正回転に転じたことに基づき、クランク角を高精度に特定することが可能な車両制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の目的を達成するべく、本発明は、車両に搭載された内燃機関を始動させるように前記内燃機関を駆動する電動機を、逆回転で回転させてから正回転で回転させることにより、前記内燃機関を逆回転で回転させてから正回転で回転させることが可能な制御部を備えた車両制御装置であって、前記電動機が逆回転で回転されることにより逆回転で回転されていた前記内燃機関が正回転で回転するように、前記内燃機関の回転が転じたことに応じて、前記内燃機関のクランク角を特定するクランク角特定部を更に備え、前記制御部は、前記クランク角特定部の特定した前記クランク角に基づき、前記電動機を制御し、前記クランク角特定部は、前記クランク角を特定する際の前記内燃機関の温度が低くなればなる程、特定する前記クランク角をより進角した側のクランク角として特定することを第1の局面とする。
【0008】
また、本発明は、第1の局面に加えて、前記クランク角特定部は、前記電動機の前記回転位置を示す3相のセンサ信号を送出するセンサから送出される前記3相のセンサ信号の電圧の立ち上がり及び立ち下がりの間の期間が、前記3相のセンサ信号の全てにおいて、所定時間以上になるときに、前記内燃機関の前記回転が転じたとして前記クランク角を特定することを第2の局面とする。
【発明の効果】
【0009】
以上の本発明の第1の局面にかかる車両制御装置によれば、電動機が逆回転で回転されることにより逆回転で回転されていた内燃機関が正回転で回転するように、内燃機関の回転が転じたことに応じて、内燃機関のクランク角を特定するクランク角特定部を備え、クランク角特定部が、クランク角を特定する際の内燃機関の温度が低くなればなる程、特定するクランク角をより進角した側のクランク角として特定するものであるため、内燃機関の温度が低いとき程、内燃機関の潤滑油の機能が低下し、内燃機関のクランク軸が逆回転する際のフリクションが大きくなることを考慮して、特定するクランク角を進角側のクランク角にすることができ、内燃機関の温度に不要な影響を受けることを抑制した態様で、電動機を逆回転するように駆動しながら内燃機関が逆回転から正回転に転じたことに基づき、内燃機関のクランク角を高精度に特定することができる。
【0010】
また、本発明の第2の局面にかかる車両制御装置によれば、クランク角特定部が、電動機の回転位置を示す3相のセンサ信号を送出するセンサから送出される3相のセンサ信号の電圧の立ち上がり及び立ち下がりの間の期間が、3相のセンサ信号の全てにおいて、所定時間以上になるときに、内燃機関の回転が転じたとしてクランク角を特定するものであるため、電動機を逆回転するように駆動しながら内燃機関が逆回転から正回転に転じたことをより確実に把握して、内燃機関のクランク角をより高精度に特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態における車両制御装置を、エンジン、エンジン制御装置及び三相交流始動発電機と共に示す模式図である。
【
図2】
図2は、本実施形態における車両制御装置の回路構成及び機能ブロックの概略を、エンジン制御装置及び三相交流始動発電機と共に示す模式図である。
【
図3】
図3は、本実施形態における車両制御装置がエンジンのクランク角を特定する際の位相センサからの3相の出力信号の波形の状態を、エンジンの行程やモータステージと共に示すタイムチャートである。
【
図4】
図4は、本実施形態における車両制御装置に用いられる変換テーブルを示し、
図4(a)は、エンジン温度が100℃である場合に、エンジンにおいて逆回転から正回転への反転があったときのモータステージを、エンジンのクランク角の変換する変換テーブルを示し、
図4(b)は、エンジン温度が25℃である場合に、エンジンにおいて逆回転から正回転への反転があったときのモータステージを、エンジンのクランク角の変換する変換テーブルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を適宜参照して、本発明の実施形態における車両制御装置につき、詳細に説明する。なお、本実施形態では、車両制御装置をエンジン制御装置とは別体のものとして例示するが、もちろん車両制御装置は、エンジン制御装置と一体化された制御装置を成すものであってもかまわない。
【0013】
〔エンジンの構成〕
まず、
図1を参照して、本実施形態における車両制御装置が協働するエンジン制御装置の制御対象であるエンジンの構成について、詳細に説明する。
【0014】
図1は、本実施形態における車両制御装置を、エンジン、エンジン制御装置及び三相交流始動発電機と共に示す模式図である。
【0015】
図1に示すように、エンジン1は、典型的には、図示を省略する二輪自動車等の車両に搭載されて、1サイクルが4ストロークの内燃機関であり、エンジン制御装置50によりその動作が制御されるもので、シリンダブロック2を備えている。シリンダブロック2の側壁内には、シリンダブロック2及びその内部等を冷却するための冷却水が流通する冷却水通路3が形成されている。冷却水通路3には、冷却水通路3を流通する冷却水の温度を検出するための水温センサ4が設けられている。
【0016】
なお、
図1中では、説明の便宜上、エンジン1を単気筒として示しているが、エンジン1は複数の気筒を有するものであってもよく、気筒の配列も直列、水平対向やV型等であってもよい。また、
図1中では、説明の便宜上、エンジン1を水冷式として示しているが、空冷式であってもよく、かかる場合には、水温センサ4の代わりにエンジン1の温度を検出自在な温度センサをシリンダブロック2等に装着してもよい。
【0017】
シリンダブロック2の内部には、ピストン5が配置されている。ピストン5は、コンロッド6を介して、回転軸を有するクランクシャフト7に連結されている。シリンダブロック2の上部には、シリンダヘッド9が装着されている。ピストン5の上面と、シリンダブロック2及びシリンダヘッド9の各々の内面とが画成する内部空間は燃焼室10となる。
【0018】
シリンダヘッド9には、燃焼室10内の混合気に点火する点火プラグ11が設けられている。点火プラグ11の点火動作は、図示を省略する点火コイルへの通電が制御されることにより制御される。
【0019】
また、シリンダヘッド9には、燃焼室10と吸気通路12とを開閉自在に連通する吸気バルブ13が設けられている。吸気通路12は、シリンダヘッド9に装着される吸気管IM内に形成され、吸気管IMは、吸気通路12内に燃料を噴射する燃料噴射弁14及び燃料噴射弁14の上流側に配置されるスロットルバルブ15を備えている。スロットルバルブ15に対しては、その開度を検出するスロットル開度センサ106が設けられている。なお、燃料噴射弁14の燃料噴射動作(開弁動作)は、図示を省略するそのソレノイドバルブへの通電が制御されることにより制御される。また、燃料噴射弁14は、燃焼室10内に直接燃料を噴射するものであってもよい。
【0020】
シリンダヘッド9には、吸気管IMの反対側に排気管EMが装着され、排気管EM内には、燃焼室10と連通する排気通路16が形成されている。かかるシリンダヘッド9には、燃焼室10と排気通路16とを開閉自在に連通する排気バルブ17が設けられている。
【0021】
〔制御装置の構成及び動作〕
次に、更に
図2から
図4をも参照して、本実施形態におけるエンジン制御装置及び車両制御装置の構成について、それらの動作と共に、詳細に説明する。
【0022】
図2は、本実施形態における車両制御装置の回路構成及び機能ブロックの概略を、エンジン制御装置及び三相交流始動発電機と共に示す模式図である。
図3は、本実施形態における車両制御装置がエンジンのクランク角を特定する際の位相センサからの3相の出力信号の波形の状態を、エンジンの行程やモータステージと共に示すタイムチャートであり、下から上に向かって順に、三相交流始動発電機110の回転位置を示すモータステージのステージ値の経時変化、位相センサ103のV相用位相センサの出力信号の電圧の経時変化、位相センサ103のU相用位相センサの出力信号の電圧の経時変化、及び位相センサ103のW相用位相センサの出力信号の電圧の経時変化を示している。また、
図4は、本実施形態における車両制御装置に用いられる変換テーブルを示し、
図4(a)は、エンジン温度が100℃である場合に、エンジンにおいて逆回転から正回転への反転があったときのモータステージを、エンジンのクランク角の変換する変換テーブルを示し、
図4(b)は、エンジン温度が25℃である場合に、エンジンにおいて逆回転から正回転への反転があったときのモータステージを、エンジンのクランク角の変換する変換テーブルを示す
【0023】
図2に示すように、エンジン制御装置50は、スタータスイッチ105がオン状態となって起動され、エンジン1の動作を制御するもので、詳細を後述する車両制御装置100が特定したエンジン1のクランク角を示して車両制御装置100から送出される出力信号や、水温センサ4及びスロットル開度センサ106等から送出される出力信号等に基づき、主として、図示を省略する点火コイルへの通電を制御することにより点火プラグ11の点火動作を制御すると共に、燃料噴射弁14への通電を制御することにより燃料噴射弁14の燃料噴射動作(開弁動作)を制御するエンジンECU(Electronic Control Unit)60を備えている。エンジンECU60は、マイクロコンピュータ等を含む演算処理装置であり、図示を省略するメモリやタイマを有している。かかるメモリには、必要な制御・処理プログラム及び制御・処理データが記憶され、エンジンECU60は、メモリから必要な制御・処理プログラム及び制御・処理データを読み出して、制御・処理プログラムを実行することにより、点火プラグ11や燃料噴射弁14等の動作を制御することになる。なお、エンジン制御装置50は、車両制御装置100が特定したエンジン1のクランク角を用いて規定される720度ステージ(エンジン1のクランクシャフト7の回転軸周りの2回転の角度である720度を72等分したステージ0から71を有するように規定されたステージ)を用いることにより、点火プラグ11や燃料噴射弁14等の動作を制御することが可能となり、エンジン1のクランク角を検出するクランク角センサの適用を省略可能である。
【0024】
ここで、車両制御装置100は、発電電動機である三相交流始動発電機110の動作を制御するための始動発電ECU130を備えている。具体的には、始動発電ECU130は、スタータスイッチ105がオン状態となって起動され、二次電池である鉛バッテリ101を、三相交流始動発電機110を発電させることにより充電すると共に、三相交流始動発電機110をスタータモータとして機能させてエンジン1のクランクシャフト7を回転させることにより、エンジンECU60と協働しながら、エンジン1を始動する。二次電池としては、鉛バッテリ以外に、ニッケル水素バッテリやリチウムイオンバッテリも利用可能である。また、図中、符号102は、鉛バッテリ101に接続される負荷を示し、及び符号103は、三相交流始動発電機110の図示を省略する筐体等に装着された典型的にはホールセンサである位相センサを示している。なお、本実施形態では、車両制御装置100に対して、発電機能及び駆動機能の双方を有する発電電動機である三相交流始動発電機110を制御対象として適用した構成を例に挙げて説明するが、発電機能と駆動機能とが分離された各々個別の電機部品である発電機及び電動機を適用した構成を適用することも可能であり、かかる場合には、発電機とは切り離された電動機(スタータモータ)を用いて、エンジン1のクランクシャフト7を回転させることにより、エンジンECU60と協働しながら、エンジン1を始動することになる。
【0025】
発電機の機能と電動機の機能とを兼ね備えた構成例として示す三相交流始動発電機110は、その詳細な構成は省略するが、典型的にはPWM(Pulse Width Modulation)制御されるもので、U相のコイル110a、V相のコイル110b及びW相のコイル110cから成る3相の発電出力発生用のコイル(固定子巻線)が巻回された固定子と、これらの各相のコイル110a、コイル110b及び110cに対応する界磁束発生用の永久磁石が各々装着されると共に固定子の外周側を周回するように配設された回転子と、を備え、かかる回転子がエンジン1のクランクシャフト7に、図示を省略する減速ギヤ系を介して機械的に連結される。よって、かかるギヤ系を介して、三相交流始動発電機110の回転位置、つまり回転子の回転位置(模式的に
図1に示す回転軸112周りの回転位置)と、エンジン1の回転位置、つまりクランクシャフト7の回転位置であるクランク角と、は1対1の対応関係にある。位相センサ103は、U相用位相センサ、V相用位相センサ及びW相用位相センサを有し、U相用位相センサ、V相用位相センサ及びW相用位相センサは、典型的には回転子の永久磁石の回転位置の変化に対応して、回転子において各々対応するU相の回転位置、V相の回転位置及びW相の回転位置を示す出力信号を、始動発電ECU130に送出する。
【0026】
U相のコイル110aは、AC/DCコンバータ131の一方のU相のスイッチング素子131aの他方の端子と、AC/DCコンバータ131の他方のU相のスイッチング素子131bの一方の端子と、に電気的に接続する接続端子111aを有している。V相のコイル110bは、AC/DCコンバータ131の一方のV相のスイッチング素子131cの他方の端子と、AC/DCコンバータ131の他方のV相のスイッチング素子131dの一方の端子と、に電気的に接続する接続端子111bを有している。また、W相のコイル110cは、AC/DCコンバータ131の一方のW相のスイッチング素子131eの他方の端子と、AC/DCコンバータ131の他方のW相のスイッチング素子131fの一方の端子と、に電気的に接続する接続端子111cを有している。
【0027】
始動発電ECU130は、マイクロコンピュータ等を含む演算処理装置であり、図示を省略するメモリやタイマを有している。かかるメモリには、必要な制御・処理プログラム及び制御・処理データが記憶され、ECU130は、メモリから必要な制御・処理プログラム及び制御・処理データを読み出して、制御・処理プログラムを実行することにより、発電電動機である三相交流始動発電機110の動作を制御する。
【0028】
具体的には、始動発電ECU130は、電力変換器であるAC(Alternate Current)/DC(Direct Current)コンバータ131と、AC/DCコンバータ131の動作を制御すべくそれに制御信号を送出する制御部132と、エンジン1を始動させるようにエンジン1を駆動すると共にエンジン1により駆動されて発電するように三相交流始動発電機110を制御する制御部132と、エンジン1のクランク角を特定するクランク角特定部133と、を備えている。なお、図中では、制御部132及びクランク角特定部133は、各々制御・処理プログラムを実行する際の機能ブロックとして示し、クランク角特定部133は、制御部132の中に含まれるものとして示すが、これは、制御部132の外にあって同等の機能を発揮するものでもよい。
【0029】
AC/DCコンバータ131は、典型的には3相ブリッジ接続されたスイッチング素子131a、131b、131c、131d、131e及び131fを有し、制御部132からの制御信号に従って、スイッチング素子131a、131b、131c、131d、131e及び131fの各々をオン状態又はオフ状態にして三相交流始動発電機110から供給された3相交流電流を直流電流に変換すると共に、直流電流を鉛バッテリ101に供給する。かかる場合には、三相交流始動発電機110は、エンジン1により駆動され、AC/DCコンバータ131を介して制御部132でいわゆる遅角制御される発電機として機能する。また、AC/DCコンバータ131は、制御部132からの制御信号に従って、スイッチング素子131a、131b、131c、131d、131e及び131fの各々をオン状態又はオフ状態にして鉛バッテリ101から供給された直流電流を3相交流電流に変換すると共に、その三相交流電流を三相交流始動発電機110に供給する。かかる場合には、AC/DCコンバータ131は、DC/ACコンバータとして機能すると共に、三相交流始動発電機110は、その回転子の回転を、減速ギヤ系を介してエンジン1のクランクシャフト7に伝達することにより、エンジン1を駆動するスタータモータとして機能する。なお、スイッチング素子131a、131b、131c、131d、131e及び131fは、典型的には各々トランジスタであり、
図2中では、一例として、N型のMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)として各々示している。
【0030】
具体的には、AC/DCコンバータ131は、U相、V相及びW相の3相の各相に対して、一対のスイッチング素子131a、131b、131c、131d、131e及び131fを各々対応して有している。
【0031】
つまり、AC/DCコンバータ131では、U相の一対のスイッチング素子131aとスイッチング素子131bとが電気的に接続されており、スイッチング素子131aがオン状態で、且つ、スイッチング素子131bがオフ状態の場合にU相の駆動電圧をハイレベルにし、スイッチング素子131aがオフ状態で、且つ、スイッチング素子131bがオン状態の場合にU相の駆動電圧をローレベルにする。
【0032】
また、AC/DCコンバータ131では、V相の一対のスイッチング素子131cとスイッチング素子131dとが電気的に接続されており、スイッチング素子131cがオン状態で、且つ、スイッチング素子131dがオフ状態の場合にV相の駆動電圧をハイレベルにし、スイッチング素子131cがオフ状態で、且つ、スイッチング素子131dがオン状態の場合にV相の駆動電圧をローレベルにする。
【0033】
更に、AC/DCコンバータ131では、W相の一対のスイッチング素子131eとスイッチング素子131fとが電気的に接続されており、スイッチング素子131eがオン状態、且つ、スイッチング素子131fがオフ状態の場合にW相の駆動電圧をハイレベルにし、スイッチング素子131eがオフ状態、且つ、スイッチング素子131fがオン状態の場合にW相の駆動電圧をローレベルにする。
【0034】
ここで、スイッチング素子131aは、制御部132に電気的に接続された制御端子と、鉛バッテリ101の高電位側に電気的に接続された一方の入力端子と、スイッチング素子131b及び三相交流始動発電機110の接続端子111aに電気的に接続された他方の入力端子と、を有している。かかるスイッチング素子131aは、その制御端子に対して制御部132から印加される所定の制御信号に従って、オン/オフ動作し、それがオン状態のときは、一方の入力端子から他方の入力端子へ電流が流れる。
【0035】
また、スイッチング素子131bは、制御部132に電気的に接続された制御端子と、スイッチング素子131a及び三相交流始動発電機110の接続端子111aに電気的に接続された一方の入力端子と、鉛バッテリ101の低電位側に電気的に接続された他方の入力端子と、を有している。かかるスイッチング素子131bは、その制御端子に対して制御部132から印加される所定の制御信号に従って、オン/オフ動作し、それがオン状態のときには、一方の入力端子から他方の入力端子へ電流が流れる。
【0036】
また、スイッチング素子131cは、制御部132に電気的に接続された制御端子と、鉛バッテリ101の高電位側に電気的に接続された一方の入力端子と、スイッチング素子131d及び三相交流始動発電機110の接続端子111bに電気的に接続された他方の入力端子と、を有している。かかるスイッチング素子131cは、その制御端子に対して制御部132から印加される所定の制御信号に従って、オン/オフ動作し、それがオン状態のときには、一方の入力端子から他方の入力端子へ電流が流れる。
【0037】
また、スイッチング素子131dは、制御部132に電気的に接続された制御端子と、スイッチング素子131c及び三相交流始動発電機110の接続端子111bに電気的に接続された一方の入力端子と、鉛バッテリ101の低電位側に電気的に接続された他方の入力端子と、を有している。かかるスイッチング素子131dは、その制御端子に対して制御部132から印加される所定の制御信号に従って、オン/オフ動作し、それがオン状態のときには、一方の入力端子から他方の入力端子へ電流が流れる。
【0038】
また、スイッチング素子131eは、制御部132に電気的に接続された制御端子と、鉛バッテリ101の高電位側に電気的に接続された一方の入力端子と、スイッチング素子131f及び三相交流始動発電機110の接続端子111cに電気的に接続された他方の入力端子と、を有している。かかるスイッチング素子131eは、その制御端子に対して制御部132から印加される所定の制御信号に従って、オン/オフ動作し、それがオン状態のときには、一方の入力端子から他方の入力端子へ電流が流れる。
【0039】
更に、スイッチング素子131fは、制御部132に電気的に接続された制御端子と、スイッチング素子131e及び三相交流始動発電機110の接続端子111cに電気的に接続された一方の入力端子と、鉛バッテリ101の低電位側に電気的に接続された他方の入力端子と、を有している。かかるスイッチング素子131fは、その制御端子に対して制御部132から印加される所定の制御信号に従って、オン/オフ動作し、それがオン状態のときには、一方の入力端子から他方の入力端子へ電流が流れる。
【0040】
ここで、制御部132は、クランク角特定部133が特定したエンジン1のクランク角に基づき、三相交流始動発電機110の動作、つまりその駆動や発電を、AC/DCコンバータ131への制御を介して、制御することになる。具体的には、制御部132は、クランク角特定部133が特定したエンジン1のクランク角に基づき、スイッチング素子131a、131b、131c、131d、131e及び131fの各々のオン状態とオフ状態とを切り替えるスイッチング制御を行う。
【0041】
典型的には、エンジン1の始動時において、制御部132は、スタータスイッチ105がオン状態となってそれから送出されたエンジン1の始動指令信号が入力された際に三相交流始動発電機110の回転位置に基づきながら、三相交流始動発電機110に印加する駆動制御信号のデューティを制御するように、スイッチング素子131a、131b、131c、131d、131e及び131fの各々のオン状態とオフ状態とを切り替えるスイッチング制御を行うことにより、三相交流始動発電機110の出力トルクを制御して、エンジン1のクランクシャフト7を回転させ、エンジン1の始動を制御する。この際、制御部132は、エンジン1を始動させるために、エンジン1を逆回転で回転させてから正回転で回転させるように三相交流始動発電機110の出力トルクを制御する。このように三相交流始動発電機110を逆回転で回転させることによりエンジン1を逆回転で回転させて一旦停止させる位置としては、エンジン1の動作サイクルの圧縮行程における典型的には圧縮上死点に近接した回転位置が好ましい。ここで、制御部132が位相センサ103の出力信号から検出する三相交流始動発電機110の回転子の1回転における回転位置は、エンジン1のクランクシャフト7の回転位置に1対1で対応しているため、かかる回転子の回転位置がエンジン1の動作サイクルの圧縮行程における圧縮上死点に近接した回転位置に相当することになるタイミングで、制御部132は、エンジン1の逆回転を一旦停止させるように三相交流始動発電機110の逆回転を一旦停止させる、つまり三相交流始動発電機110の出力トルクをゼロにするように、スイッチング素子131a、131b、131c、131d、131e及び131fの各々のオン状態とオフ状態とを切り替えるスイッチング制御を一旦停止することになる。この際、クランク角特定部133に特定されるエンジン1の圧縮上死点に相当するクランク角が適切に特定されていると、そのクランク角に対応する回転位置を含む三相交流始動発電機110の回転位置が適切に検出されて、エンジン1を始動させるために、エンジン1を逆回転で回転させてから正回転で回転させる動作がより適切に実行されることになる。
【0042】
また、典型的には、エンジン1の始動時以外の運転時において、制御部132は、三相交流始動発電機110のU相、V相及びW相の各相のコイルの通電タイミング(遅角量)と、三相交流始動発電機110のU相、V相及びW相の各相に対応する回転子の回転位置(より好ましくは、制御部132が算出する回転子の回転位置の時間変化量である回転速度)と、に基づいて鉛バッテリ101への充電状態を推定し、この推定結果に基づいてスイッチング素子131a、131b、131c、131d、131e及び131fの各々のオン状態とオフ状態とを切り替えるスイッチング制御を行って三相交流始動発電機110を制御することにより、鉛バッテリ101を充電することになる。この際、クランク角特定部133に特定されるエンジン1の圧縮上死点に相当するクランク角が適切に特定されていると、そのクランク角に対応する回転位置を含む三相交流始動発電機110の回転位置や回転速度が適切に検出されて、鉛バッテリ101がより適切に充電されることになる。
【0043】
さて、クランク角特定部133が、エンジン1のクランクシャフト7の回転軸回りの回転角度(回転位置)であるクランク角を検出するクランク角センサを用いることなく、かつエンジン1の温度に不要な影響を受けることを抑制して、エンジン1の基準となるクランク角としてその圧縮上死点に相当するクランク角を特定することにより、制御部132は、そのクランク角特定部133が特定したエンジン1の圧縮上死点に相当するクランク角に対応する回転位置を含む三相交流始動発電機110の回転位置を用いて、三相交流始動発電機110の動作を適切に制御することが可能となる。以下、かかるエンジン1の基準となるクランク角を特定する特定処理について、詳細に説明する。
【0044】
図3に示すように、クランク角特定部133がエンジン1の圧縮上死点に相当するクランク角を特定するには、まず、制御部132が、三相交流始動発電機110を逆回転で回転させることによりエンジン1を逆回転で回転させ始めることになる。この際、クランク角特定部133は、位相センサ103からのU相、V相及びW相の各相の出力信号の電圧の変化を経時的に検出していく。すると、エンジン1の回転が逆回転から正回転に転じる際に、時刻t2から時刻t4の間の期間で、位相センサ103からのU相、V相及びW相の各相の出力信号において、V相の出力信号の電圧の立ち上がりと立ち下がりとの間の期間T3は、それ以前の立ち上がりと立ち下がりとの間の期間T1や立ち下がりと立ち上がりとの間の期間T2に比較して明らかに長くなる。また、期間T3に比較して引き伸ばされたような態様にはなるが、U相の出力信号の電圧の立ち下がりと立ち上がりとの間の期間T’3は、それ以前の立ち下がりと立ち上がりとの間の期間T’1や立ち上がりと立ち下がりとの間の期間T’2に比較して明らかに長くなり、かつW相の出力信号の電圧の立ち上がりと立ち下がりとの間の期間T”3は、それ以前の立ち上がりと立ち下がりとの間の期間T”1や立ち下がりと立ち上がりとの間の期間T”2に比較して明らかに長くなっていることが分かる。そこで、クランク角特定部133は、このようなU相、V相及びW相の各相の出力信号の電圧の対応する立ち上がり及び立ち下がり間の期間T3、T3’、T”3において、エンジン1の逆回転時にピストン5が上昇して燃焼室10内の圧力が上昇することにより、ピストン5を下降させる向きの圧縮反力が増大して逆回転から正回転への反転が生じ得るとの観点から、かかる期間T3、T3’、T”3において、エンジン1の圧縮行程における上死点である圧縮上死点が存在すると判定し、典型的には、かかる期間T3、T3’、T”3の時系列的に中央の時刻t2に圧縮上死点が存在すると判定して、時刻t2でのクランク角が圧縮上死点に到達したクランク角(例えば60度)であるというように圧縮上死点に相当するクランク角を特定する。また、かかる期間T3、T3’、T”3が、それらの前の対応する比較期間よりも明らかに長いと実用的に判定するためには、かかる期間T3、T3’、T”3が、例えば数秒程度である所定時間以上継続したものであれば足りる。また、その他の判定の手法としては、その内容が煩雑とはなるが、かかる期間T3、T3’、T”3が、例えば、それらの前の対応する比較期間よりも2倍以上長い時間継続したものとしてもよい。なお、図中では、エンジン1の圧縮行程は、時刻t1と時刻t5との間の期間に示されている。
【0045】
この際、エンジン1のクランクシャフト7の回転軸と、三相交流始動発電機110の回転子の回転軸112と、は、ギヤ系を介して機械的に連結されているため、そのギヤ系のギヤ比が分かれば、エンジン1の行程(1サイクルが4ストロークの場合には、1サイクルはクランク角の720度の角度範囲に相当する)と、三相交流始動発電機110の回転位置を示すモータステージと、の対応関係を規定することができる。ここで一例として、モータステージを、三相交流始動発電機110の回転軸112周りの1回転の角度である360度を6等分したステージ0から5を有するものとし、かつモータステージのステージ0をエンジン1の圧縮上死点に対応させれば、
図3に示すように、モータステージのステージ0の長さが、それ以前のステージ1等の長さに比較して経時的に引き延ばされたような長さを呈することになる。
【0046】
また、このように、クランク角特定部133は、U相、V相及びW相の各相の出力信号の電圧の対応する立ち上がり及び立ち下がり間の期間T3、T3’、T”3において、エンジン1の逆回転時における圧縮反力が増大しているとの観点から、かかる期間T3、T3’、T”3において、エンジン1の圧縮行程における上死点である圧縮上死点が存在すると判定するものであるが、エンジン1の逆回転時における圧縮反力は、エンジン1の潤滑油の粘度が高くなる程、エンジン1内部のフリクションが大きくなるために大きくなる傾向にある。更に、エンジン1の潤滑油の種類を1つに固定したとしても、典型的にはエンジン1の水温で代表されるエンジン1の温度が低くなる程、潤滑油の粘度が大きくなるためにエンジン1内部のフリクションが大きくなって、エンジン1の逆回転時における圧縮反力も大きくなる傾向がある。このような潤滑油の粘度の温度に対する特性線は、非線形であってエンジン1の温度が低くなる程、負の傾きが漸次大きくなるものであるから、エンジン1の逆回転時におけるエンジン1内部のフリクションの特性線、ひいては圧縮反力の特性線も、これと同様のものとなる。
【0047】
つまり、U相、V相及びW相の各相の出力信号の電圧の対応する立ち上がり及び立ち下がり間の期間T3、T3’、T”3は、エンジン1の温度が低くなる程、
図3でより早い時刻に出現するようになるものである。このことは、U相、V相及びW相の各相の出力信号の電圧の対応する立ち上がり及び立ち下がり間の期間T3、T3’、T”3は、エンジン1の温度が低くなる程、よりエンジン1の進角側のクランク角で出現するようになることを意味するから、エンジン1の圧縮上死点は、エンジン1の温度が低くなる程、エンジン1の進角側のクランク角の値を呈することになる。
【0048】
よって、クランク角特定部133は、エンジン1の温度が低くなる程、エンジン1の圧縮上死点に相当するクランク角をより進角側の角度として特定することになる。これを、
図4に示すように、エンジン1の圧縮上死点に相当するクランク角と三相交流始動発電機110のモータステージとの関係で示せば、例えば、エンジン温度が100℃の場合の
図4(a)では、圧縮上死点に相当するクランク角が50度でモータステージ0に対応しているとすると、エンジン温度が25℃の場合の
図4(b)では、圧縮上死点に相当するクランク角が60度で同じモータステージ0に対応することとなり、エンジン温度が100℃の場合の
図4(a)では、圧縮上死点に相当するクランク角が40度でモータステージ1に対応しているとすると、エンジン温度が25℃の場合の
図4(b)では、圧縮上死点に相当するクランク角が50度で同じモータステージ1に対応することとなる。これをより一般化して、例えば、-30℃から+100℃のエンジン1の温度の範囲内で、圧縮上死点に相当するクランク角の値とモータステージの値との関係を各々のエンジン1の温度における変換テーブルとして用意してこれをデータ化しておけば、エンジン1の圧縮上死点に相当するクランク角の値が特定されれば、かかる変換テーブルのデータを用いて、特定されたクランク角をモータステージの値に変換することにより、エンジン1のクランク角に適切に対応した三相交流始動発電機110の回転位置を用いて、三相交流始動発電機110の制御が可能となる。また、車両制御装置100は、このようにクランク角特定部133が特定したエンジン1の圧縮上死点に相当するクランク角に関する情報を示す出力信号をエンジン制御装置50に送出することにより、これを受けたエンジン制御装置50は、エンジン1の圧縮上死点に相当するクランク角に基づいてエンジン1の燃料噴射や点火等の制御を行うことが可能となる。
【0049】
以上のように、本実施形態における車両制御装置100では、電動機110が逆回転で回転されることにより逆回転で回転されていた内燃機関1が正回転で回転するように、内燃機関1の回転が転じたことに応じて、内燃機関1のクランク角を特定するクランク角特定部133を備え、クランク角特定部133が、クランク角を特定する際の内燃機関1の温度が低くなればなる程、特定するクランク角をより進角した側のクランク角として特定するものであるため、内燃機関1の温度が低いとき程、内燃機関1の潤滑油の機能が低下し、内燃機関1のクランク軸が逆回転する際のフリクションが大きくなることを考慮して、特定するクランク角を進角側のクランク角にすることができ、内燃機関1の温度に不要な影響を受けることを抑制した態様で、電動機110を逆回転するように駆動しながら内燃機関1が逆回転から正回転に転じたことに基づき、内燃機関1のクランク角を高精度に特定することができる。
【0050】
また、本実施形態における車両制御装置100では、クランク角特定部133が、電動機110の回転位置を示す3相のセンサ信号を送出するセンサ103から送出される3相のセンサ信号の電圧の立ち上がり及び立ち下がりの間の期間が、3相のセンサ信号の全てにおいて、所定時間以上になるときに、内燃機関1の回転が転じたとしてクランク角を特定するものであるため、電動機110を逆回転するように駆動しながら内燃機関1が逆回転から正回転に転じたことをより確実に把握して、内燃機関1のクランク角をより高精度に特定することができる。
【0051】
なお、本発明は、部材の種類、形状、配置、個数等は前述の実施形態に限定されるものではなく、その構成要素を同等の作用効果を奏するものに適宜置換する等、発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上のように、本発明は、クランク角センサを省略しながら、内燃機関の温度に影響を受けることを抑制した態様で、電動機を逆回転するように駆動しながら内燃機関が逆回転から正回転に転じたことに基づき、クランク角を高精度に特定することが可能な車両制御装置を提供することができるものであり、その汎用普遍的な性格から自動車に広く適用され得るものと期待される。
【符号の説明】
【0053】
1…エンジン(内燃機関)
2…シリンダブロック
3…冷却水通路
4…水温センサ
5…ピストン
6…コンロッド
7…クランクシャフト
9…シリンダヘッド
10…燃焼室
11…点火プラグ
12…吸気通路
13…吸気バルブ
14…燃料噴射弁
15…スロットルバルブ
16…排気通路
17…排気バルブ
50…エンジン制御装置
60…エンジンECU(Electronic Control Unit)
100…車両制御装置
101…鉛バッテリ
102…負荷
103…位相センサ
105…スタータスイッチ
106…スロットル開度センサ
110…発電電動機(三相交流始動発電機)
110a…U相のコイル
110b…V相のコイル
110c…W相のコイル
111a、111b、111c…接続端子
112…回転軸
130…始動発電ECU
131…AC(Alternate Current)/DC(Direct Current)コンバータ
131a、131b…U相のスイッチング素子
131c、131d…V相のスイッチング素子
131e、131f…W相のスイッチング素子
132…制御部
133…クランク角特定部
EM…排気管
IM…吸気管