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特開2023-167625微生物培養装置、培養フィルム、及び微生物培養方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167625
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】微生物培養装置、培養フィルム、及び微生物培養方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20231116BHJP
【FI】
C12M1/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】26
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078941
(22)【出願日】2022-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】横井 肇
(72)【発明者】
【氏名】坂入 幸司
(72)【発明者】
【氏名】木島 匡彦
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029BB01
4B029CC01
4B029DA04
4B029DG06
4B029DG08
4B029GB05
4B029GB09
(57)【要約】
【課題】装置全体の軽量化を図ると共に、微生物の培養及び回収を容易に行うことの可能な微生物培養装置を提供する。
【解決手段】微生物培養装置1は、開口部を有する培養槽2と、培養槽2内の、開口部と対向する底部内側に向けて光照射を行う面光源からなる光源部3と、培養液wと、を備え、培養液wは、底部内側の最も高い箇所から培養液の液面までの距離が1mm以上10mm以下となるように貯留され、培養槽2内の、少なくとも底部内側は疎水性を有する。培養槽2は疎水性を有するため、微生物は培養槽2に付着しにくく剥がれやすい。そのため、微生物の回収を容易に行うことができる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する培養槽と、
前記培養槽内の、前記開口部と対向する底部内側に向けて光照射を行う面光源と、
前記培養槽内に貯留された培養液と、を備え、
前記培養液は、前記底部内側の最も高い箇所から前記培養液の液面までの距離が1mm以上10mm以下となるように貯留され、
前記培養槽内の、少なくとも前記底部内側は疎水性を有することを特徴とする微生物培養装置。
【請求項2】
前記底部内側は、水の接触角が10°以上となる特性を有することを特徴とする請求項1に記載の微生物培養装置。
【請求項3】
開口部を有する培養槽と、
前記培養槽内の、前記開口部と対向する底部内側に向けて光照射を行う面光源と、
前記底部内側に設けられ、凸部及び凹部からなる凹凸パターンを一方向に繰り返す第一凹凸形状と、
を備えることを特徴とする微生物培養装置。
【請求項4】
前記底部内側に設置された培養フィルムを有し、
前記第一凹凸形状は、前記培養フィルムに形成されていることを特徴とする請求項3に記載の微生物培養装置。
【請求項5】
前記培養槽内には培養液が貯留され、当該培養液は、前記培養フィルムの最も高い箇所から前記培養液の液面までの距離が1mm以上10mm以下となるように貯留され、
前記第一凹凸形状は前記培養フィルムの両面に形成され、当該培養フィルムは伸張性を有することを特徴とする請求項4に記載の微生物培養装置。
【請求項6】
開口部を有する培養槽と、
前記培養槽内の前記開口部と対向する底部内側に向けて光照射を行う面光源と、
前記底部内側に設けられ、凸部及び凹部からなる凹凸パターンを一方向に繰り返す第一凹凸形状と、当該第一凹凸形状に重畳して設けられ、前記第一凹凸形状よりも短い周期で凸部及び凹部からなる凹凸パターンを前記一方向に繰り返す第二凹凸形状と、
を備えることを特徴とする微生物培養装置。
【請求項7】
前記底部内側に設置された培養フィルムを有し、
前記第一凹凸形状及び前記第二凹凸形状は、前記培養フィルムに形成されていることを特徴とする請求項6に記載の微生物培養装置。
【請求項8】
前記培養槽内には培養液が貯留され、当該培養液は、前記培養フィルムの最も高い箇所から前記培養液の液面までの距離が1mm以上10mm以下となるように貯留され、
前記第一凹凸形状及び前記第二凹凸形状は前記培養フィルムの両面に形成され、当該培養フィルムは伸張性を有することを特徴とする請求項7に記載の微生物培養装置。
【請求項9】
前記第一凹凸形状の、隣り合う凸部と凹部とは、
前記凸部の凸方向の最大箇所と前記凹部の凹方向の最大箇所との間の鉛直距離が0.5mm以上であることを特徴とする請求項3から請求項8のいずれか一項に記載の微生物培養装置。
【請求項10】
前記第一凹凸形状の、隣り合う凸部と凹部とは、
前記凸部の凸方向の最大箇所と前記凹部の凹方向の最大箇所との間の鉛直距離が10μm以上100μm以下であることを特徴とする請求項3から請求項5のいずれか一項に記載の微生物培養装置。
【請求項11】
前記第二凹凸形状の、隣り合う凸部と凹部とは、
前記凸部の凸方向の最大箇所と前記凹部の凹方向の最大箇所との間の鉛直距離が10μm以上100μm以下であることを特徴とする請求項6から請求項8のいずれか一項に記載の微生物培養装置。
【請求項12】
前記第一凹凸形状の、隣り合う凸部と凹部とは、
前記凸部の凸方向の最大箇所と前記凹部の凹方向の最大箇所との間の鉛直距離が0.5mm以上であることを特徴とする請求項11に記載の微生物培養装置。
【請求項13】
前記培養槽の深さは300mm以下であることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の微生物培養装置。
【請求項14】
前記底部内側は、水平面に対する角度が0.1°以上10°以下であることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の微生物培養装置。
【請求項15】
前記培養槽の前記開口部と対向する底部は光透過性を有し、
前記面光源は、当該面光源の光出射面と、前記底部外側とが対向するように設けられていることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の微生物培養装置。
【請求項16】
前記培養槽と前記面光源との対が、上下方向に複数積層されていることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の微生物培養装置。
【請求項17】
微生物培養用の培養フィルムであって、
凸部及び凹部からなる凹凸パターンを一方向に繰り返す第一凹凸形状と、
前記第一凹凸形状に重畳して設けられ前記第一凹凸形状よりも短い周期で凸部及び凹部からなる凹凸パターンを前記一方向に繰り返す第二凹凸形状と、
を備えることを特徴とする培養フィルム。
【請求項18】
開口部を有する培養槽の、少なくとも前記開口部と対向する底部内側が疎水性を有する培養槽を用意し、
当該培養槽に培養液を注入し、前記底部内側の最も高い箇所から前記培養液の液面までの距離が1mm以上10mm以下となるまで前記培養液を注入すると共に、種となる微生物を配置し、
前記底部内側に向けて光照射して前記微生物を培養することを特徴とする微生物培養方法。
【請求項19】
開口部を有する培養槽の前記開口部と対向する底部内側に、凸部及び凹部からなる凹凸パターンを一方向に繰り返す第一凹凸形状を有する培養槽を用意し、
当該培養槽に培養液を注入し、前記底部内側の最も高い箇所から前記培養液の液面までの距離が1mm以上10mm以下となるまで前記培養液を注入すると共に、種となる微生物を配置し、
前記底部内側に向けて光照射して前記微生物を培養することを特徴とする微生物培養方法。
【請求項20】
前記第一凹凸形状を有する培養フィルムを前記培養槽の前記底部内側に設置して、当該培養フィルム上で前記微生物を培養し、
前記培養槽から前記培養フィルム全体を取り出し、当該培養フィルムに付着する前記微生物を回収することを特徴とする請求項19に記載の微生物培養方法。
【請求項21】
開口部を有する培養槽内の前記開口部と対向する底部内側に、凸部及び凹部からなる凹凸パターンを一方向に繰り返す第一凹凸形状と、当該第一凹凸形状に重畳して前記第一凹凸形状よりも短い周期で凸部及び凹部からなる凹凸パターンを前記一方向に繰り返す第二凹凸形状とを有する培養槽を用意し、
当該培養槽に培養液を注入し、前記底部内側の最も高い箇所から前記培養液の液面までの距離が1mm以上10mm以下となるまで前記培養液を注入すると共に、種となる微生物を配置し、
前記底部内側に向けて光照射して前記微生物を培養することを特徴とする微生物培養方法。
【請求項22】
前記第一凹凸形状と前記第二凹凸形状とを有する培養フィルムを前記培養槽の前記底部内側に設置して、当該培養フィルム上で前記微生物を培養し、
前記培養槽から前記培養フィルム全体を取り出し、当該培養フィルムに付着する前記微生物を回収することを特徴とする請求項21に記載の微生物培養方法。
【請求項23】
前記底部内側に向けて前記培養液を吐出する培養液吐出部を有し、
前記培養液吐出部から吐出される前記培養液の液圧を利用して前記底部内側に付着する前記微生物を剥離し、
剥離した前記微生物を回収することを特徴とする請求項18から請求項22のいずれか一項に記載の微生物培養方法。
【請求項24】
光照射された照射光の前記底部内側における透過率が、1%以上50%以下の範囲内の値であるときに、少なくとも種となる微生物を残して、前記培養液吐出部から吐出される前記培養液の液圧を利用して前記微生物を剥離し、
剥離した前記微生物を回収した後、前記種となる微生物を用いて培養を継続することを特徴とする請求項23に記載の微生物培養方法。
【請求項25】
光照射された照射光の前記底部内側における透過率が、1%以上50%以下の範囲内の値であるときに、前記培養槽に前記培養液を追加することを特徴とする請求項18から請求項22のいずれか一項に記載の微生物培養方法。
【請求項26】
前記培養槽に前記培養液を連続して注入すると共に、前記培養槽に注入される前記培養液と同量の培養液を前記培養槽から排出させることで、光照射された照射光の前記底部内側における透過率を5%以上に維持することを特徴とする請求項18から請求項22のいずれか一項に記載の微生物培養方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物培養装置、培養フィルム、及び微生物培養方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、微生物の培養方法として、懸濁相中で培養する方法が提案されている。この方法では、水を大量に使用する。また受光面が最表層近辺に限られているため、最表層近辺でしか微生物を培養することができない。
【0003】
これを改良するために、気相中や固相表面で培養する方法も開発されている。
【0004】
気相中や固相表面で培養する方法では、シート上で培養することで、フットプリントを狭くし土地を有効利用することができる。さらに、このシートをスタックすることで、土地の利用効率を飛躍的に向上させることができる。このシート上で培養する方法においては、担体として、微生物や培養液を保持することができるように、多孔質材料が広く用いられている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6152933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
担体として多孔質材料を用いた場合、内部に入り込んだ微生物を効率よく回収することができないという問題がある。また、担体として多孔質材料を用いた場合、水分を含むことから担体が重くなり、その結果、培養装置全体が重くなる。
【0007】
そこで、この発明は、従来の未解決の問題に着目してなされたものであり、装置全体の軽量化を図ると共に、微生物の培養及び回収を容易に行うことの可能な微生物培養装置、培養フィルム、及び微生物培養方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、開口部を有する培養槽と、培養槽内の、開口部と対向する底部内側に向けて光照射を行う面光源と、培養槽内に貯留された培養液と、を備え、培養液は、底部内側の最も高い箇所から培養液の液面までの距離が1mm以上10mm以下となるように貯留され、培養槽内の、少なくとも底部内側は疎水性を有する微生物培養装置が提供される。
【0009】
本発明の他の態様によれば、開口部を有する培養槽と、培養槽内の、開口部と対向する底部内側に向けて光照射を行う面光源と、底部内側に設けられ、凸部及び凹部からなる凹凸パターンを一方向に繰り返す第一凹凸形状と、を備える微生物培養装置が提供される。
【0010】
本発明の他の態様によれば、開口部を有する培養槽と、培養槽内の開口部と対向する底部内側に向けて光照射を行う面光源と、底部内側に設けられ、凸部及び凹部からなる凹凸パターンを一方向に繰り返す第一凹凸形状と、第一凹凸形状に重畳して設けられ、第一凹凸形状よりも短い周期で凸部及び凹部からなる凹凸パターンを一方向に繰り返す第二凹凸形状と、を備える微生物培養装置が提供される。
【0011】
本発明の他の態様によれば、微生物培養用の培養フィルムであって、凸部及び凹部からなる凹凸パターンを一方向に繰り返す第一凹凸形状と、第一凹凸形状に重畳して設けられ第一凹凸形状よりも短い周期で凸部及び凹部からなる凹凸パターンを一方向に繰り返す第二凹凸形状と、を備える微生物培養用の培養フィルムが提供される。
【0012】
本発明の他の態様によれば、開口部を有する培養槽の、少なくとも開口部と対向する底部内側が疎水性を有する培養槽を用意し、培養槽に培養液を注入し、底部内側の最も高い箇所から培養液の液面までの距離が1mm以上10mm以下となるまで培養液を注入すると共に、種となる微生物を配置し、底部内側に向けて光照射して微生物を培養する微生物培養方法が提供される。
【0013】
本発明の他の態様によれば、開口部を有する培養槽の開口部と対向する底部内側に、凸部及び凹部からなる凹凸パターンを一方向に繰り返す第一凹凸形状を有する培養槽を用意し、培養槽に培養液を注入し、底部内側の最も高い箇所から培養液の液面までの距離が1mm以上10mm以下となるまで培養液を注入すると共に、種となる微生物を配置し、底部内側に向けて光照射して微生物を培養する微生物培養方法が提供される。
【0014】
本発明の他の態様によれば、開口部を有する培養槽内の開口部と対向する底部内側に、凸部及び凹部からなる凹凸パターンを一方向に繰り返す第一凹凸形状と、第一凹凸形状に重畳して第一凹凸形状よりも短い周期で凸部及び凹部からなる凹凸パターンを一方向に繰り返す第二凹凸形状とを有する培養槽を用意し、培養槽に培養液を注入し、底部内側の最も高い箇所から培養液の液面までの距離が1mm以上10mm以下となるまで培養液を注入すると共に、種となる微生物を配置し、底部内側に向けて光照射して微生物を培養する微生物培養方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様によれば、装置全体の軽量化を図ると共に、微生物の培養及び回収を容易に行うことの可能な微生物培養装置、培養フィルム、及び微生物培養方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態に係る微生物培養装置の一例を模式的に示す断面図である。
図2】第1実施形態に係る微生物培養装置の動作説明に供する説明図である。
図3】第1実施形態に係る微生物培養装置の変形例を模式的に示す断面図である。
図4】第1実施形態に係る微生物培養装置の変形例を模式的に示す断面図である。
図5】第2実施形態に係る微生物培養装置の一例を模式的に示す断面図である。
図6】培養フィルムの一例を模式的に示す断面図である。
図7】培養液の量を説明するための説明図である。
図8】培養フィルムの凹凸パターンの変形例を模式的に示す図である。
図9】培養フィルムの凹凸パターンの変形例を模式的に示す図である。
図10】培養フィルムの凹凸パターンの変形例を模式的に示す図である。
図11】微生物培養装置の循環系の一例を模式的に示す説明図である。
図12】微生物培養装置の循環系の変形例を模式的に示す説明図である。
図13】微生物培養装置の循環系の変形例を模式的に示す説明図である。
図14】微生物培養装置の動作手順の一例を示すフローチャートである。
図15】第5実施形態に係る微生物培養装置の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0018】
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
〔第1実施形態〕
【0019】
まず、第1実施形態を説明する。
〔微生物培養装置の構成〕
【0020】
図1は、本発明の第1実施形態に係る微生物培養装置1の一例を模式的に示す断面図である。
【0021】
微生物培養装置1は、培養槽2と、光源部(面光源)3と、を備える。
【0022】
培養槽2は、平面視が矩形であり上部が開放した貯留槽からなる。培養槽2の内側の少なくとも底面(以後、底部内側ともいう。)、好ましくは底部内側と壁面、つまり培養槽2の内側の面のうち培養液wと接触する部分は疎水性を有する。また、培養槽2の底部内側は平面であり、培養槽2を水平な設置面に載置することで、底部内側は水平面となるようになっている。
【0023】
培養槽2の深さは、微生物を培養するために必要な量の培養液及び微生物を収納可能な深さであればよく、300mm以下程度、好ましくは10mm以上200mm以下である。培養槽2の深さがあまり浅すぎると、培養液wが培養槽2から溢れてしまう恐れがあり、逆に深すぎると、培養槽2の嵩が増し、その結果、微生物培養装置1全体の嵩が増し、床面積当たりの微生物の培養量の低減につながる可能性がある。
【0024】
培養槽2の底部内側の面積である底面積は、500cm以上10,000cm以下程度であることが好ましい。底面積、つまり、培養面積が小さすぎると、培養槽2の数が増え、管理が煩雑となる恐れがある。底面積が大きすぎると、培養槽2や培養槽2内の培養液wの量が増え、培養槽2の重量が増加し、ハンドリングが困難となる。
【0025】
培養液wは、培養槽2内に薄い水膜となるように供給され、培養する微生物の種類にもよるが、水深1mm以上10mm以下となるように供給される。なお、ここでは、所定の設置面に培養槽2を設置した状態にあるときの、培養槽2の底部内側の最も高い箇所から培養液wの液面までの鉛直方向の距離を「水深」という。図1の場合、水平な設置面上に培養槽2を設置し、培養槽2の底部内側は水平面となるため、水平な底面から培養液wの液面までの鉛直距離が「水深」となる。
【0026】
光源部3は、矩形状の導光板3aと、図示しない光源としてのLEDとを含み、例えば導光板3aの一端にLEDが配置される。導光板3aの一方の面が、培養槽2と対向するように配置することによって面光源を形成し、培養槽2と対向する面全体から、培養槽2の底部内側に向けて光照射が行われる。なお、図1では、光源部3を導光板3aとLEDとで構成しているが、これに限るものではなく、培養槽2の底部内側全体に光照射を行うことの可能な面光源であれば、適用することができる。例えば、透明な容器又は樹脂内にLEDをアレイ状に配置したものを面光源として用いてもよい。
【0027】
光源部3は、培養槽2との間に一定の間隔をもって配置され、例えば取り外し可能に設置される。光源部3は、例えば、培養槽2の四隅にアングルを用いることで、培養槽2との間に、5mm以上50mm以下程度の隙間が空くように配置される。このように光源部3と培養槽2との間に隙間を設けることで、培養槽2内の二酸化炭素COを交換することができる。
【0028】
培養槽2内の空気の循環は、自然にまかせるものであってもよく、ファン等で送風してもよい。また、空気に二酸化炭素COを混合して培養槽2内に循環させてもよい。培養液wを循環させる際には、培養液wを貯めておくタンクにおいて、二酸化炭素COや大気の曝気を行ってもよい。
【0029】
光源部3は、培養槽2の底面での照度として、光合成光量子束密度(PPFD)が、50μmol・m-2・s-1以上100μmol・m-2・s-1以下であることが好ましい。これよりも低いと照度不足により光合成の効率が落ち、高すぎると光阻害が起きてしまう恐れがある。
【0030】
LEDとしては緑色を除くスペクトルを出射するLEDが好ましく、例えば赤色及び青色のLEDが、電力効率の観点から好ましい。
〔微生物培養装置1の動作〕
【0031】
微生物培養時には、図1(b)に示すように、培養槽2に、水深10mm以下となるように培養液wを供給して、培養液wからなる薄い水膜を形成する。そして、形成した水膜状の培養液wに、培養対象の微生物の種を配置した状態で、光源部3により培養槽2の底部内側全体にわたって光照射を行い、微生物を培養する。また、所定のタイミングで培養液wを循環させて、培養槽2内の培養液wを交換する。
【0032】
培養液wは薄い水膜が形成される程度の量であるため、光源部3により照射された光は、培養槽2の底面まで十分に到達する。そのため、光源部3による光照射量が比較的少なくても、微生物の培養に十分な光を照射することができ、光利用効率が高くなる。したがって、光源部3を比較的簡易な構成で実現することができる。
【0033】
微生物回収時には、図2に示すように、微生物培養装置1自体を傾け、培養液wと共に微生物を排出する。培養槽2内の培養液wは、薄い水膜が形成される程度であるため、液量は少ない。そのため、微生物培養装置1を比較的容易に取り扱うことができる。
【0034】
また、培養槽2の少なくとも底面を含む内面は疎水性を有する。そのため、微生物が培養槽2の少なくとも底面を含む内面に付着することを抑制することができる。さらに、微生物を培養するための基材等を用いていない。そのため、培養槽2から培養液wを排出することで、培養した微生物を培養槽2から容易に取り出すことができると共に、培養槽2内に取り残される微生物の量を削減することができ、より多くの微生物を回収することができる。また、培養槽2内に残される微生物の量を低減することができるため、この培養槽2内に残される微生物が原因によるコンタミリスクを低減することができる。
〔第1実施形態の効果〕
(1)培養槽2は、蓋がないため、光源部3を取り外すことによって、培養槽2を容易に清掃することができる。また培養液wの回収も比較的容易に行うことができる。
(2)培養槽2の少なくとも底面を含む内面は疎水性を有する。そのため、培養槽2の内側に微生物が付着することを抑制することができる。
(3)培養槽2内の培養液wは、薄い水膜を形成する程度の量である。そのため、培養槽2の底面まで、光源部3の照射光が届き易くすることができ、例えば濃い藻を収穫することができる。また、光利用効率を向上させることができる。さらに、培養槽2内の培養液wの量が少なくてすむため、培養槽2の軽量化、すなわち微生物培養装置1の軽量化を図ることができる。また、光利用効率が向上するため、その分、微生物培養装置1の小型化を図ることができる。このように微生物培養装置1の小型化を図ることができるため、微生物培養装置1自体を筐体内に収めることも可能である。そのため、培養槽2に蓋を設けなくとも、コンタミリスクを低減することができる。
(4)培養槽2は蓋がなく、また、培養液wは薄い水膜であるため、二酸化炭素COの交換を容易に行うことができる。
〔第1実施形態の変形例〕
(1)上述のように、微生物培養装置1を軽量化することができる。そのため、図3に示すように、微生物培養装置1を複数重ねることができ、狭い土地でも、より多量の微生物を培養することができる。
(2)図2では、微生物培養装置1を傾けることで微生物を回収しているが、回収方法はこれに限るものではない。例えば、培養槽2の底面に排水孔を設け、排水孔から培養液wと共に微生物を回収してもよく、ポンプ等によって吸い上げるようにしてもよい。
【0035】
また、微生物回収時に限らず、微生物培養装置1を机や床面等の水平な設置面上に設置する際に、図2に示すように、微生物培養装置1を設置面に対して傾斜した状態で設置し、この状態で培養してもよい。また、微生物培養装置1を図2に示すように傾斜した状態で配置する場合に代えて、図4に示すように、培養槽2の底部内側に、水平面に対して0.1°以上10°以下程度の傾斜を設けてもよい。つまり、培養槽2の底部内側に傾斜をつけると、培養槽2を水平な設置面上に載置した場合でも、培養槽2の底部内側は傾きを有する斜面となる。すなわち、培養槽2の底部内側は、図2に示すように培養槽2を傾斜した状態で設置した状態と同等となる。
【0036】
培養槽2の底部内側に水平面に対して0.1°以上10°以下程度の比較的緩い傾斜を設けることで、培養槽2内の培養液wの水深が場所によって大きく変わることを抑制しつつほぼ均一条件で光照射ができる。また、培養液wを循環させる際には、傾斜によって培養液wの流れを誘導することができる。仮に、培養槽2の内側底面の角度を10°以上とした場合には、光照射時の均一性が損なわれる可能性がある。
【0037】
培養槽2の内側底面が水平面に対して傾斜した状態となるように培養槽2を構成した場合、図4に示すように、培養槽2底部の斜面の高い位置側の端部に、培養槽2に培養液を供給する培養液供給部4を設け、斜面の低い位置側の端部に、培養槽2内の培養液を回収する培養液回収部5を設けてもよい。このような構成とすることで、培養液wの流れが作り易いため、培養液循環時に培養液wを容易に循環させることができ、培養液の循環作業に伴う処理時間を短縮することができる。
【0038】
なお、このように培養槽2の底部内側に傾斜を設ける場合には、培養液wの量は、斜面の最も高い箇所の水深、つまり、図2においては培養槽2の右端の位置、図4においては、斜面の右端の位置における、培養液wの液面までの鉛直距離が1mm以上10mm以下となるように貯留する。また、培養槽2の深さ、培養液wの量、及び傾斜角は、培養液wが、水深1mm以上10mm以下となるようにしつつ、培養槽2から溢れないように調整することが好ましい。
(3)培養槽2の底部を、光透過性を有する素材で形成し、光源部3を、この光源部3の光出射面と、培養槽2の底部外側とが対向するように配置してもよい。このように配置することによって、光源部3の光出射面が、培養液wの水はね等によって汚れることを防止することができる。また、培養槽2の開口部と光源部3とが対向するように配置する場合のように、培養槽2と光源部3との間に隙間を設ける必要がないため、その分、微生物培養装置1の厚みをより小さくすることができる。そのため、培養槽2と光源部3との対を上下方向に複数積層しやすく、装置床面積あたりの微生物の収穫量を増加させることができる。光透過性を有する素材としては、PMMA(アクリル樹脂)、PC(ポリカーボネート)、PS(ポリスチレン樹脂)、AS樹脂(アクリロニトリル、スチレンのコポリマー)、シリコーン樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)、及びポリ塩化ビニル(PVC)等の樹脂や、ガラス等を適用することができる。
【0039】
また、培養槽2の底部を、光透過性を有する素材で形成し、光源部3を、この光源部3の光出射面と培養槽2の底部外側とが対向するように配置し、さらに、別の光源部を、培養槽2の開口部と光出射面とが対向するように設けてもよい。つまり一つの培養槽2に対し、その上面側及び底面側の両方から光照射を行うようにしてもよい。このようにすることによって、光源部3としてより少ない出射光で十分に光照射を行うことができるため、光源部3としてより性能の低いLEDを用いることが可能となり、コスト削減を図ることができる。このように一つの培養槽2の上側及び下側に光源部3をそれぞれ設けた場合も、培養槽2とその上下に設けられた2つの光源部3を1セットとして、複数セットを上下方向に積層することも可能である。
(4)培養槽2を、その内面の培養液wの接触角が10°以上となるように構成してもよい。このように、構成することによって、培養槽2に対し培養液wはぬれ性が小さいため、微生物が培養槽2に固着しにくい。そのため、微生物の回収性を向上させることができる。
(5)培養槽2にスキージを設け、培養液wの供給側から排出側にスキージを動かすことで培養液wを入れ換えてもよく、また、微生物の回収を行ってもよい。
〔第2実施形態〕
【0040】
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
【0041】
第2実施形態に係る微生物培養装置1aは、図5に示すように、第1実施形態に係る微生物培養装置1において、培養槽2の構成が異なること以外は同一であるので、同一部の詳細な説明は省略する。
【0042】
第2実施形態に係る微生物培養装置1aにおける培養槽2aは、培養槽2の内面が必ずしも疎水性を有していなくてよい。そして、培養槽2a内に培養フィルム6を備え、この培養フィルム6上において微生物を培養させる。
〔培養フィルム6の構成〕
【0043】
培養フィルム6は、非吸液性を有する樹脂シートで形成される。培養フィルム6として、非吸液性を有する樹脂シートを用いることで、培養フィルム6が培養液を吸液することによって培養フィルム6が重くなることを回避している。
【0044】
培養フィルム6は、図6に示すように、表裏面に凹部及び凸部からなる凹凸形状を有する。凹凸形状として、例えば、先端が略尖った周期的な第一の凹凸形状P1(第一凹凸形状)を有する。この凹凸形状P1は、山状部と谷状部とからなる凹凸パターンを培養フィルム6の一方向に繰り返す形状である。さらに、図6中の拡大図に示すように、凹凸形状P1の斜面部61のそれぞれには、表裏面に周期的な第二の凹凸形状P2(第二凹凸形状)が重畳されている。
【0045】
第一の凹凸形状P1は、図6に示すように、一方の面にその幅方向全体にわたって水平且つ直線状に延在する谷状稜線6aと山状稜線6bとを交互に有している。同様に、他方の面にもその幅方向全体にわたって水平且つ直線状に延在する谷状稜線6cと山状稜線6dとを交互に有している。つまり、培養フィルム6は、幅方向に伸びるストライプ状に配置された谷状稜線6a、6c及び山状稜線6b、6dを有する。すなわち、培養フィルム6は、図6に示すように蛇腹形状を有し、この蛇腹形状を有することにより、培養フィルム6は伸張する。
【0046】
培養フィルム6において、谷状稜線6aと山状稜線6bのピッチPは等しくてもよいし、異なっていてもよく、同様に、谷状稜線6cと山状稜線6dのピッチも等しくてもよいし、異なっていてもよい。また、山状部と谷状部とからなる凹凸パターンの周期は、全凹凸パターンで同一であってもよく、異なっていてもよい。
また、図6において、谷状稜線6aと山状稜線6b、または谷状稜線6cと山状稜線6dの高さ方向の距離Hを、凹凸形状P1の高低差Hとすると、この凹凸形状P1の高低差Hは、隣り合う谷状稜線6a及び山状稜線6b間の高低差Hそれぞれが同一であってもよく異なっていてもよい。隣り合う谷状稜線6cと山状稜線6d間の高低差Hも同様に、隣り合う谷状稜線6cと山状稜線6dとの間の高低差Hは同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0047】
培養フィルム6は、非吸液性及び光透過性を有する樹脂シートを基材としている。培養フィルム6の厚みT(図示せず)は、5μm以上200μm以下であることが好ましい。培養フィルム6の厚みTが5μmよりも薄いと、培養フィルム6が破れたり、培養フィルム6同士を剥離しづらかったりする等、ハンドリングが困難となる。一方、厚みTが200μmよりも厚いと、厚みがある分、培養フィルム6が重くなる上にコスト増加につながる。また、表裏一体の凹凸パターンの場合には、厚みTが厚すぎると伸ばしづらくなり、表裏一体の凹凸パターンである意味が薄れる。
【0048】
培養フィルム6の厚みTは、必ずしも均一である必要は無い。例えば稜線付近の培養フィルム6の厚さは、他の部分の厚さと異なっていても良い。また、凹凸形状P1の高低差Hは、0.5mm以上であることが好ましい。培養フィルム6に凹凸形状P1を設けることによって、流速緩和効果を得ることができ、培養液wを循環させる際に、培養槽2の底部分における培養液wの流速を抑制することができる。そのため、培養液wを循環させる際に、微生物が剥がれることを抑制することができる。凹凸形状P1の高低差Hが0.5mmよりも小さい場合には、凹凸形状P1を設けることによる培養液wの流速緩和効果を期待できない。また、山谷の高低差Hが培養液wの深さ以上であると、山部が培養液wから飛び出した状態となり、その部分に微生物が培養されないため、微生物の培養効率が低下する。
【0049】
一方、凹凸形状P2は、先端が平らな凸部と凹部とからなる凹凸パターンを、凹凸形状P1と同一方向に繰り返す形状である。斜面部61は、一方の面に、その幅方向全体にわたって水平且つ直線状に延在する凹部61aと凸部61bとを交互に有している。同様に、他方の面にもその幅方向全体にわたって水平且つ直線状に延在する凹部61cと凸部61dとを交互に有している。つまり、斜面部61は、幅方向に延びるストライプ状に配置された凹部61a、61c及び凸部61b、61dを有し、図6の拡大図に示すように、凹部及び凸部が繰り返す先端が平坦な蛇腹形状を有し、この先端が平坦な蛇腹形状を有することにより、斜面部61は伸張する。つまり、培養フィルム6は、図6に示すように、周期が長く先端の尖った凹凸形状P1と、凹凸形状P1に重畳して設けられ、凹凸形状P1よりも周期が短く、先端が平坦な凹凸形状P2と、を備える。
【0050】
斜面部61において、凹部61aと凸部61bとのピッチは等しくしてもよいし、異なっていてもよく、同様に、凹部61cと凸部61dとのピッチは等しくてもよいし異なっていてもよい。また、凸部と凹部とからなる凹凸パターンの周期は、全凹凸パターンで同一であってもよく、異なっていてもよい。図6において、凹部61aと凸部61bの水平となる部分どうしの高さ方向の距離を、凹凸形状P2の高低差hという。
【0051】
斜面部61の凹凸形状P2の高低差hは、10μm以上100μm以下であることが好ましい。斜面部61に凹凸形状P2を重畳させることによって、凹部61aの凹状部分に微生物を引っかけることにより微生物の移動を制限し、凹部61a外に微生物が移動することを抑制することができ、すなわち、培養フィルム6上に微生物を保持することができる。そのため、培養液wを循環させる際に、微生物が剥がれることを抑制することができる。凹凸形状P2の高低差hが10μmよりも小さい場合には、微生物の移動を制限しにくい。また、製造上の観点より、凹凸形状P2の高低差hが100μmよりも大きい凹凸形状P2を凹凸形状P1に重畳して形成することは困難である。例えば、培養する微生物が藻であり、そのサイズが10μm程度である場合、凹凸形状P2の高低差hが10μm以上100μm以下であれば、斜面部61の凹凸部に微生物(藻)を十分確保することができる。凹凸形状P2の高低差hは、凹凸パターン毎に異なっていてもよいし、同一であってもよい。
【0052】
凹凸形状P2の凹部61aの水平部分外側の長さa2及び凸部61bの水平部分外側の長さb2は例えば70μm程度に設定され、凹部61aの水平部分内側の長さa1及び凸部61bの水平部分内側の長さb1は例えば30μm程度に設定され、凹部61aの深さa3は60μm程度に設定される。
【0053】
培養効率の観点から、培養フィルム6は、培養槽2の内側底面と同等又は多少小さい程度の大きさとなるように形成されることが好ましい。
【0054】
なお、微生物培養装置1aの場合も、培養槽2の底面での照度は、光合成光量子束密度(PPFD)が、50μmol・m-2・s-1以上100μmol・m-2・s-1以下であることが好ましいが、培養フィルム6を用いる場合、培養液wの底部が凹凸構造を有し、比表面積が大きいため、より強い光源を用いることも可能である。
〔微生物培養装置1aの動作〕
【0055】
このような構成を有する培養フィルム6を、培養槽2の底部内側上に載置する。このとき、培養槽2の、培養液wの排出側となる辺及び流入側となる辺と、培養フィルム6の谷状稜線6a及び山状稜線6bの延びる方向とが平行となるように培養フィルム6を載置する。
【0056】
培養槽2内の培養液wは、培養槽2の底部内側の、鉛直方向の高さが最も高い箇所から培養液wの液面までの距離δ、つまり、培養槽2の底部内側と培養液wの液面との間の鉛直距離の最小値が1mm以上10mm以下となるように注入する。例えば、図7(a)に示すように、培養槽2が水平面上に設置されて培養槽2が水平に維持され、培養フィルム6に山状部と谷状部とからなる凹凸パターンを繰り返す凹凸形状P1が形成されている場合は、培養槽2の底部内側において鉛直方向の高さが最も高い位置は、培養フィルム6の凹凸形状P1の山状稜線の位置であるため、山状稜線から液面までの距離がδとなる。また、培養槽2が図7(b)に示すように傾斜した面上に設置される場合には、傾斜状態にある培養槽2の底部内側において鉛直方向の高さが最も高い位置は、図7(b)において右端の山状稜線の位置であるため、右端の山状稜線から液面までの距離がδとなる。また、凹凸パターンが図7に示すような繰り返しパターンではなく凹凸パターン毎に周期や凹凸形状P1の高低差Hが異なる場合には、鉛直方向の高さが最も高い箇所から培養液wの液面までの距離がδとなる。
【0057】
微生物は培養フィルム6上で培養され、図6の拡大図に示すように、凹凸形状P1の凹状部分や凹凸形状P2の凹状部分に付着する。そのため、何らかによって培養槽2内の培養液wが前後左右に揺れたとしても、微生物は凹凸形状P2の凹状部分によって移動が制限されるため、培養フィルム6から剥がれにくい。また、培養液wを循環させるときには、培養槽2内に流入側から培養液wを導入した場合、培養槽2内に培養液wの流入側から排出側への培養液wの流れが生じるが、培養フィルム6は、その谷状稜線6a及び山状稜線6bの延びる方向と、培養槽2の培養液wの流入側の辺とが平行となるように配置されているため、培養フィルム6の凹凸形状P1によって、培養液wの移動が抑制されると共に、凹凸形状P2の凹部によって、培養液wが排出される方向への微生物の移動が制限される。そのため、培養液wを循環させる際に微生物が培養フィルム6から剥がれて培養槽2から流れ出てしまうことが抑制される。なお、培養液wを循環させる場合等、培養中に培養液wを培養槽2に注入する際には、例えば噴霧する等、微生物が培養フィルム6から剥がれないように注入することが好ましい。
【0058】
そして、微生物を回収する場合には、例えば培養フィルム6を培養槽2から取り出してそのままの状態で乾燥させ、十分に乾燥させた後、培養フィルム6の折り目が平らとなるように引き延ばす。培養フィルム6を引き延ばすことにより、乾燥した微生物は培養フィルム6から剥がれ、微生物をはぎ取る操作を行うことによって、さらに微生物は培養フィルム6から剥がれる。この培養フィルム6から剥がれた乾燥した微生物を集めることで、微生物が回収される。
〔第2実施形態の効果〕
(1)上記第1実施形態と同等の作用効果を得ることができると共に、培養フィルム6上に微生物を培養し、培養フィルム6には、周期が長くピッチが大きい凹凸形状P1を設け、さらに、凹凸形状P1の斜面部61に凹凸形状P1よりも周期が短くピッチが小さい凹凸形状P2を重畳させている。そのため、マニングの公式から推察されるように、周期の長い凹凸形状P1により粗度係数が大きくなり培養液wの流速が抑えられ、培養フィルム6上の微生物が剥がれにくくなる。また、周期の短い凹凸形状P2は、その凹部に微生物が入り込むことにより、培養フィルム6上の微生物が剥がれにくくなる。そのため、培養液wを循環する際、或いは、何らかによって培養液wが前後左右に揺れた場合であっても、意図せず微生物が剥がれることを抑制することができる。
【0059】
また、凹凸形状P1の山状部の稜線を基準として液面までの距離が1mm以上10mm以下となるように培養液wを注入している。そのため、微生物が培養液w中で浮遊したり揺れたりすることを抑制できるため、微生物が培養フィルム6から剥がれ易くなることを抑制することができる。
(2)培養槽2内に配置される培養フィルム6は、培養槽2の底面上に略水平に維持される。そのため、培養フィルム6が疎水性を有し、培養液wが培養フィルム6上にたまりにくい賦形パターンを有していたとしても、例えば培養フィルム6を垂直に維持する場合等に比較して、培養フィルム6の上に培養液wの薄膜を形成し易い。そのため、親水性や疎水性、賦形パターン等に制約を設ける必要はなく、培養フィルム6の素材や形状の選択の自由度を高めることができる。
(3)培養フィルム6は、凹凸形状が設けられており、微生物は、培養フィルム6そのものの内部には進入せず、培養フィルム6の表面で培養される。そのため、培養フィルム6を乾燥させ、折り目が平らとなるように引き延ばすことによって、培養フィルム6上で培養された微生物を、培養フィルム6から容易に剥がすことができる。つまり、乾燥してシート状になった藻などの微生物と、培養フィルム6とでは、培養フィルム6を引き延ばしたときの伸び量が異なるため、界面に応力が生じ、界面破壊が生じる。そのため、微生物は培養フィルム6から剥がれやすくなる。したがって微生物の回収を容易に行うことができる。
【0060】
また、乾燥させずに回収する場合でも、微生物は培養フィルム6の表面に存在するため、例えば、培養フィルム6を折り目が平らとなるように引き延ばした状態で、培養液w等の流体をスプレー噴霧したり、スキージ等を利用して微生物をかき集めたりすることで、微生物を容易に回収することができる。また、培養フィルム6自体の内部に微生物が進入することはないため、培養フィルム6に張り付いている微生物であっても、スキージ等を利用することでより確実に回収することができる。
(4)微生物は培養フィルム6上で培養されるため、培養槽2本体に付着する微生物の量を低減することができ、培養槽2自体に微生物を培養させる場合に比較して、培養槽2の洗浄を容易に行うことができる。
(5)培養フィルム6の凹凸形状P2には、微生物が引っかかるため、培養フィルム6の折り目を平らに引き延ばさなければ微生物は比較的剥がれにくい。そのため、微生物を回収する際に、培養液w中に浮遊している微生物或いは培養フィルム6に弱く接着している微生物などを回収した後、培養フィルム6に比較的十分接着している微生物を、そのまま微生物培養時の種として再利用することができる。
〔第2実施形態の変形例〕
(1)微生物培養装置1aは、凹凸形状P1及びP2を有する培養フィルム6を培養槽2の底面に載置することで、微生物の剥がれを抑制する場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、培養槽2の底部内側自体に凹凸形状P1及びP2を設けてもよい。この場合も、凹凸形状P1及びP2を有するため、培養中微生物が剥がれにくくすることができる。また回収時には、培養液w等の流体をスプレー噴射することで、微生物を容易に回収することができる。
(2)培養フィルム6は、光透過性を有していてもよい。光透過性を有する培養フィルム6である場合には、培養槽2の底部に光透過性を持たせ、培養槽2の底部外側からと培養槽2の開口部側との両方から光照射を行うことができる。
(3)培養フィルム6には、コロナ処理等の表面処理を行ってもよい。コロナ処理を行うことによって、濡れ性が向上し、より少ない培養液wで、培養フィルム6全体を濡れた状態とすることができる。また、微生物が付着しやすくなることも期待することができる。
【0061】
また、コロナ処理に限らず、例えばカチオン性材料を培養フィルム6の表面に吸着させる等、表面の自由エネルギを変化させる表面処理を行うことで、微生物が付着しやすくしてもよい。
(4)培養フィルム6の凹凸形状P1及びP2として、山状稜線と谷状稜線とを有する蛇腹形状等、凹部及び凸部を有する略蛇腹形状を適用しているが、これに限るものではない。培養フィルム6は、ストライプ、波、ミウラ折り等のように、折り目を伸ばせば平坦となる形状であっても適用することができる。さらに培養フィルム6としてディンプル状の凹凸を有するシートを適用することも可能であり、ディンプル状の凹凸部分を伸ばしても平坦にはならないが培養フィルム6自体が伸びて平坦となる形状であってもよい。多孔質状のシート等のようにシート自体の内部に微生物が進入し得る形状ではなく、シート自体の表面に微生物が付着する形状であることが好ましい。図8図9に、凹凸形状P1の一例を模式的に示し、図10に凹凸形状P2の一例を模式的に示す。図8(a)は、波状の周期断面形状、図8(b)は、側面視で、山状稜線及び谷状稜線部分が除去された台形となる形状(つまり、凹凸形状P2)である。図9(a)は正弦波形状、(b)は矩形波形状、(c)は三角波形状、(d)はランプ波(のこぎり波)形状、(e)はミウラ折り形状である。図10は、凹凸形状P1が山状稜線と谷状稜線とを有する蛇腹形状である場合に、凹凸形状P2が正弦波形状である場合を示す。凹凸形状P2も、正弦波形状に限らず、矩形波形状、三角波形状、ランプ波(のこぎり波)形状等を適用することができる。なお、第2実施形態では、蛇腹形状の凹凸形状P1において、斜面部61に凹凸形状P2を形成しているが、凹凸形状P2は、凹凸形状P1のいずれの箇所に形成してもよい。例えば、例えば凹凸形状P1が矩形波形状(図9(b))の場合、凹凸形状P2は、矩形波の立ち上がり部分、立ち下がり部分、HIGHレベル部分、及びLOWレベル部分のいずれに賦形されてもよい。
【0062】
また、凹凸形状P1及びP2を同時に形成した場合に比較して、微生物を補足する効果は薄れるが、凹凸形状P1のみを培養フィルム6に形成してもよい。凹凸形状P1のみを培養フィルム6に形成する場合、凹凸形状P1の高低差Hを0.5mm以上とすることで、培養液wの流速を抑えるようにしてもよく、また、凹凸形状P1の高低差Hを、凹凸形状P2の高低差hと同様に10μm以上100μm以下とすることで、その凹部に微生物を入り込ませるようにしてもよい。
〔第3実施形態〕
【0063】
次に、本発明の第3実施形態を説明する。
【0064】
この第3実施形態は、微生物培養装置1及び微生物培養装置1aにおいて、培養液を循環させるようにしたものである。培養液の循環系は、微生物培養装置1と微生物培養装置1aとで同一であるので、ここでは、微生物培養装置1について説明する。
【0065】
図11は、循環系を備えた微生物培養装置1の一例を示す概略構成図である。多段に積層された複数の培養槽2を備え、各培養槽2の培養液の供給側が排出側よりも高くなるように配置される。これら培養槽2は、筐体11に収納されている。各培養槽2の培養液の供給側それぞれには培養液タンク10の排出側が接続され、各培養槽2の培養液の排出側それぞれには培養液タンク10の流入側が接続されている。
【0066】
培養液タンク10内の培養液に対し、二酸化炭素COをバブリングして溶かしてもよいし、筐体11内に二酸化炭素COを吹き込み、筐体11中のガスを、COリッチな雰囲気とすることによって、二酸化炭素COが溶け込んだ培養液wを得るようにしてもよい。
【0067】
また、培養液タンク10から排出される培養液wに栄養分を追加してもよく、排出された培養液wを濾過し、UV光等により減菌してもよい。排出された培養液wの濾過や培養液wへの二酸化炭素COの導入、また、栄養分の追加や減菌処理等は、培養槽2から排出された時点から培養槽2内に流入されるまでの間のいずれかの時点で行えばよい。例えば、培養液wの濾過は筐体11内又は培養液タンク10内で行うようにしてもよく、また、培養液wへの二酸化炭素COの導入は、筐体11内又は培養液タンク10内で行うようにしてもよく、栄養分の追加や減菌処理等は、培養液wが培養槽2内に流入されるまでの間に行ってもよい。また、これら処理は、オンライン及びオフラインのいずれで行ってもよい。
【0068】
各培養槽2での培養液wの供給は、例えば、培養槽2の培養液wの導入側に図示しない導入口(培養液吐出部)を設け、導入口と培養液タンク10とをホース又は給水パイプで接続することで導入口の位置に培養液を導入するようにしてもよく、スプレー状の導入口を設けることで、培養液wを噴霧するようにしてもよい。また、導入口を培養槽2内で前後左右に移動可能に構成し、培養液wを吐出する場所を選択可能に構成してもよく、また、培養液wの吐出量を選択可能に構成してもよい。
【0069】
また、培養槽2の排出口は、培養槽2の培養液の導入側と対向する側に設けているが、図12に示すように、培養槽2の排出側の側面の下端寄りに設けてもよく、排出側の側面寄りの底面又は排出側の側面と直交する側面の排出側寄りの位置に設けてもよい。
【0070】
また、図13(a)、(b)に示すように、培養槽2内に、培養液の導入側から排出側まで移動するスキージSを設け、通常は培養液wに浸からない位置に配置しておき、培養槽2内の培養液wを排出する場合には、培養槽2内の培養液wに浸かる位置にスキージSの上下方向の位置を調整し、導入側から排出側にスキージSを移動させることで、培養液wを排出側に押し出して排出を行うようにしてもよい。
〔第4実施形態〕
【0071】
次に、本発明の第4実施形態を説明する。
【0072】
この第4実施形態では、微生物培養装置1又は微生物培養装置1aにおける培養方法を説明する。
【0073】
図14は、微生物培養時の手順の一例を示すフローチャートである。ここでは、微生物培養装置1aを用いて培養する場合について説明するが、微生物培養装置1を用いて培養する場合も培養フィルムを設置する工程を除いて同様の手順で培養することができる。
【0074】
まず、培養槽2内に、培養フィルム6を載置する。培養フィルム6の稜線の延びる方向と、培養槽2の、培養液wの流入側と排出側となる対をなす辺の延びる方向とが平行となるように培養フィルム6を配置する(ステップS1)。
【0075】
次に、培養槽2内に、培養液wを供給する。培養液wは、培養槽2底部内側の、微生物が付着可能な最も高い位置を基準とする液面までの高さが10mm以下となるように注入する。すなわち、凹凸形状を有する培養フィルム6の山状稜線の位置を基準としてこの位置から液面までの高さが10mm以下となるように注入する。なお、液面までの高さは1mm以上10mm以下である。なお、培養槽2の内側底面に微生物を付着させる微生物培養装置1の場合は、培養槽2の底部内側の最も高い箇所から培養液の液面までの高さが1mm以上10mm以下となるように注入する(ステップS2)。
【0076】
そして、種となる微生物を培養フィルム6の上の培養液wに接する位置に配置し、光源部3を作動させる。これにより、培養槽2の底部内側全体にわたって光照射が行われ、照射光と、開口部から培養槽2内に導入される二酸化炭素と、培養液wとを用いて微生物の培養が行われる(ステップS3)。
【0077】
次に、対面する光源部3からの照射光の透過率を、微生物培養前を100%と定義する、またはいくつかの濃度の標準懸濁液を準備して透過率を校正し、照射光の透過率が1%以上50%以下であるときに、新たに培養液wを注入する(ステップS4)。つまり流加培養を行う。透過率が1%以上50%以下であるときに、例えば微生物培養装置1aの、培養液wの流入口から培養液wを注入してもよいし、培養槽2内の培養液wを新規培養液と置換してもよい。流加培養を行うことで、微生物(例えば藻)の濃度を適切なレベルに維持することができ、微生物が高密度になったことに起因して栄養分不足や老廃物蓄積による定常期、死滅期を回避することで、培養性を向上させることができる。
【0078】
なお、透過率は、対面する光源部3から最も遠くにある培養液の位置で測定する。光源部3を培養槽2の開口部側に設ける場合には、培養槽2の内側底面や培養槽2に敷設してある培養フィルム6の上面又は裏面における透過率を測定する。光源部3が培養槽2の底部側に配置されている場合には、培養槽2における培養液wの液面位置における透過率を測定する。この透過率の測定は、例えば、受光センサを培養槽2内に配置すること等により行う。
【0079】
また、透過率が1%以上50%以下になったときに培養液wを注入する場合に限るものではなく、培養液wを導入口から常時追加し、同量の培養液wを排出口から常時排出することで、光源部3の出射光が培養フィルム6を透過する透過率が5%以上を維持するように培養液wの注入量及び排出量を制御するように構成してもよい。この場合も、微生物(例えば藻)の濃度を適切なレベルに維持することができる。
【0080】
また、培養槽2に追加する培養液wは、必ずしも、使用していない新規の培養液である必要はなく、抜き取った培養液をそのまま用いてもよく、又は適宜希釈して用いてもよく、又は抜き取った培養液から微生物を濾過したものを用いてもよい。
【0081】
また、培養槽2に追加する培養液wは、培養槽2に最初に供給した培養液と同一の濃度として連続培養を行ってもよいし、高濃度な培養液を少量添加したり栄養組成を変更したりして流加培養を行ってもよい。また、培養槽2から抜き出した培養液をそのまま循環させてもよく、その場合、回収した培養液中の微生物を濾過して回収してもよく、また濾液(培養液)をUV等で減菌した後に戻してもよい。
【0082】
また、培養時には、培養液を静止状態に維持してもよいし、循環させてもよい。また定期的に振動を与えたり、攪拌したりしてもよい。培養液wを非静止状態とすることによって、培養液w中の二酸化炭素濃度の低下や培養させる微生物の不均衡を抑制することができる。
【0083】
また、例えば藻等の微生物の場合、微生物の濃度が一定の濃度を超えたときに、光透過性が急激に低下する。このため、受光センサを用い、光透過性が急激に低下したとき、すなわち1%以上50%以下となったときに、微生物の濃度が一定の濃度を超えたものとみなして、培養液wの一部を交換又は循環させて透過性を維持してもよい。これにより、適度なタイミングで透過性を回復することができ、栄養分不足等が生じることを抑制することができる。
【0084】
なお、培養液wを注入したり、振動を与えたり攪拌する際には、培養中の微生物が、培養フィルム6から剥がれないように行う。
【0085】
また、培養中に培養液wを培養槽2から抜く場面として、上述のように(1)藻等の微生物の濃度が高くなりすぎて面光源の出射光が、極表面の微生物にしかあたらなくなることを防ぐ、(2)栄養素の補給並びに老廃物の除去、(3)攪拌、等の場面が想定される。培養中に、培養液を抜く方法としては、例えば、培養槽から溢れ出させる、培養槽2の側面又は底面に設けたドレン抜き孔より抜き出す、培養槽2にチューブを挿しポンプで抜く、培養槽2を傾けてスキージで掻き出す等の手法をとることができる。
【0086】
そして、微生物が十分に培養されたとき、回収を行う(ステップS5)。なお、ステップS5にて培養槽中の微生物をすべて回収せず、一部を種として残し、ステップS4を再開してもよい。
(回収法1)
【0087】
培養フィルム6を培養槽2から取り出し、乾燥させる。そして、乾燥した後、培養フィルム6が平坦な面となるように折り目を伸ばし、培養フィルム6に付着した微生物を回収する。また、培養槽2内の培養液w中に存在する微生物は、培養槽2内の培養液wを全て排出して濾過すること等により回収する。そして必要に応じて培養槽2内の清掃を行う。微生物は主に培養フィルム6上に付着し、培養フィルム6を取り出すことができるため、培養槽2内の清掃を容易に行うことができる。
【0088】
続いて培養を行うときには新たな培養フィルム6を用い、また新たな培養液wを用いて行う。
(回収法2)
【0089】
培養槽2に培養液wを注入し、注入による培養液wの振動或いは攪拌すること等により微生物を培養フィルム6から剥がし、培養フィルム6から剥がれた微生物を大量に含む培養液w全てを培養槽2から排出させて濾過を行い、微生物を回収する。
【0090】
このとき、培養槽2に培養液wを注入する際には、培養フィルム6上に付着した微生物が剥がれるように、流加培養のため培養液wを交換する場合に比較して、培養液wの流量を増大し、吐出圧の高い培養液wを培養フィルム6に付着した微生物に吹きつけることで、培養液の吐出圧を利用して、微生物を剥がすようにしてもよい。注入する培養液wの液量を増加させることで培養液wの液圧を利用して培養フィルム6に付着した微生物を剥離することができるため、必ずしも培養フィルム6を培養槽2から取り出さなくても微生物を回収することができる。
【0091】
そして、必要に応じて培養槽2内の清掃を行う。この場合も培養フィルム6を取り出すことができるため、培養槽2内の清掃を容易に行うことができる。
【0092】
続いて培養を行うときには、培養液の液流によって剥がれずに僅かに微生物が残った培養フィルム6を再度用い、培養フィルム6上に残った藻等の微生物を種として培養を行ってもよい。
【0093】
また、微生物回収時に培養液の吐出圧を利用して、微生物を剥がす場合に、培養槽2に培養液wを注入すると共に、例えば、空気及び二酸化炭素の少なくともいずれか一方を培養液に注入するようにすることで、培養液wの吐出圧と空気や二酸化炭素の吐出圧とを利用して、微生物を剥がすようにしてもよい。空気や二酸化炭素も同時に培養液に注入することによって、次にこの培養液を利用して培養を行う際に、空気や二酸化炭素を新たに注入する手間を省くことができる。
【0094】
また、培養フィルム6上の微生物を回収する際に、敢えて全ての微生物を回収せずに、種となる量だけ微生物を残すようにしてもよい。このようにすることによって、次にこの培養フィルム6を利用して培養する際に、種となる微生物を培養フィルム6上に設置する手間を省くことができる。
(回収法3)
【0095】
培養フィルム6を用いずに、培養槽2の内側に疎水性を持たせた第一実施形態の微生物培養装置1を用いた場合には、例えば以下の手順で回収する。
【0096】
培養槽2内の培養液wを排出し、この培養液wを濾過して微生物を回収する。培養槽2内は疎水性を有するため、微生物は培養槽2の内側に付着しにくい。そのため、容易に回収することができる。上記第3実施形態で説明したように、図11に示す培養液wの循環経路の途中で、培養液wを濾過して微生物を回収してもよい。
【0097】
図4に示すように、培養液供給部4及び培養液回収部5を備えている場合には、これら培養液供給部4及び培養液回収部5を作動させ、培養液wを供給し、培養槽2の許容量を超える培養液wを回収して濾過することで、微生物を回収してもよい。
【0098】
そして、次に、微生物の培養を行う場合には、培養槽2に新たな培養液を注入して培養を行う。
〔第5実施形態〕
【0099】
第5実施形態における微生物培養装置1bは、図15に示すように、導光板3aを垂直に設け、導光板3aの光の出射面に沿わせて培養フィルム6を配置したものである。図中3bは光源である。
【0100】
図15の微生物培養装置1bは、培養フィルム6の、導光板3aの光の出射面とは逆側の面に培養液を連続して供給することにより、培養フィルム6の、導光板3aの光の出射面から最も離れた位置と培養フィルム6に沿って流れる培養液の、導光板3aとは逆側の端部との間の距離が、1mm以上10mm以下となるように培養液を供給する。つまり、培養フィルム6に沿って培養液が流れるように供給する。そのため、上記第2実施形態の微生物培養装置1aが水平に配置されている培養フィルム6上に薄膜を形成して微生物を培養する場合と同様に、垂直に配置されている培養フィルム6に薄膜を形成した場合と同等の状態となり、微生物培養装置1aと同様に微生物を培養することができる。
【0101】
なお、この場合も、微生物を回収する際には、培養フィルム6を取り外して、或いは、培養液の供給を停止し、乾燥させた後、培養フィルム6の折り目を平らに延ばすことで培養フィルム6から微生物を剥がして回収してもよく、また、供給する培養液を増量し、培養液の液圧により微生物を剥がす、或いはスキージを利用して剥がす、或いは、培養フィルム6を上下に揺らして伸張させたり伸び縮みさせたりすることで剥がす、等により微生物を回収してもよい。
【0102】
なお、図15では培養フィルム6を垂直に配置しているが、培養フィルム6が略水平となる角度から略垂直となる角度までの間のいずれの角度に設置してもよい。
【0103】
また、培養フィルム6の表面が培養液で濡れればよいため、培養液wは培養フィルム6の上端から供給する場合に限るものではなく、例えば、培養フィルム6の長手方向中央部近傍と対向する位置から培養フィルム6の全体に向けて噴霧すること等により培養液wを供給してもよく、また培養フィルム6の幅方向の端部から供給するようにしてもよい。
【0104】
なお、上述した実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、上述した実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0105】
1、1a、1b 微生物培養装置
2 培養槽
3 光源部
3a 導光板
3b 光源
6 培養フィルム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15