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2023-167629容器の収容状態の検査方法、および、容器の収容状態の検査装置
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  • -容器の収容状態の検査方法、および、容器の収容状態の検査装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167629
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】容器の収容状態の検査方法、および、容器の収容状態の検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 25/18 20060101AFI20231116BHJP
   G01N 25/72 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
G01N25/18 Z
G01N25/72 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078950
(22)【出願日】2022-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000213297
【氏名又は名称】中部電力株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391019658
【氏名又は名称】株式会社中部プラントサービス
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 義之
(72)【発明者】
【氏名】岡本 直也
(72)【発明者】
【氏名】加古 晃弘
【テーマコード(参考)】
2G040
【Fターム(参考)】
2G040AA07
2G040AA08
2G040BA01
2G040BA25
2G040CA02
2G040DA06
2G040DA12
2G040DA15
2G040EA06
2G040EA11
2G040HA01
2G040ZA08
(57)【要約】
【課題】収容物が収容された容器の収容状態を短時間で検査できる容器の収容状態の検査方法、および、容器の収容状態の検査装置を提供すること。
【解決手段】収容物30が収容された容器20の収容状態を検査する検査方法では、検査装置100を用い、まず、加熱源120により、容器20の外面に位置する検査面である底面23を加熱する。次に、加熱源120によって加熱された底面23の温度分布を計測する。そして、計測によって取得した底面23の温度分布において、温度差が予め定めた基準差よりも大きな箇所同士がある場合、その容器20の底部21に充填不良部21Bがあると判定する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容物が収容された容器の外面に位置する検査面を加熱し、
加熱した前記検査面の温度分布を計測し、
計測により取得した前記検査面の温度分布に基づいて、その容器の収容状態の良否を判定する容器の収容状態の検査方法。
【請求項2】
請求項1に記載の容器の収容状態の検査方法であって、
計測により取得した前記検査面の温度分布において、温度差が予め定めた基準差よりも大きな箇所同士があるときには、その容器の収容状態が不良であると判定する容器の収容状態の検査方法。
【請求項3】
請求項2に記載の容器の収容状態の検査方法であって、
前記検査面の加熱を開始してから予め定めた検査期間内に、計測により取得した前記検査面の温度分布において、温度差が前記基準差よりも大きな箇所同士がないときには、その容器の収容状態が不良であると判定しない容器の収容状態の検査方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれかに記載の容器の収容状態の検査方法であって、
前記検査面を、容器の底面とする容器の収容状態の検査方法。
【請求項5】
収容物が収容された容器の外面に位置する検査面を加熱する加熱源と、
前記加熱源によって加熱した前記検査面の温度分布を計測する温度計側部とを有する容器の収容状態の検査装置。
【請求項6】
請求項5に記載の容器の収容状態の検査装置であって、
容器を載置する載置板を有し、
前記検査面は、容器の底面であり、
前記載置板には、載置された容器の前記検査面に対応する箇所に貫通孔が形成されており、
前記温度計側部は、前記載置板の下方に設けられ、前記貫通孔の内側にて露出する前記検査面を撮像範囲内とする赤外線サーモグラフィカメラを有する容器の収容状態の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収容物が収容された容器の収容状態の検査方法、および、容器の収容状態の検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、収容物が収容された容器の内部の良否を、容器を破壊することなく検査していることがある。例えば、特許文献1には、超音波を用いて包装体に充填された内容物について検査する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-273182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した従来の技術のように超音波を用いて容器の内部について検査する方法では、検査内容によっては、検査時間が長くなってしまうという問題があった。
【0005】
本開示技術の課題とするところは、収容物が収容された容器の収容状態を短時間で検査できる容器の収容状態の検査方法、および、容器の収容状態の検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示技術の一態様における容器の収容状態の検査方法は、収容物が収容された容器の外面に位置する検査面を加熱し、加熱した検査面の温度分布を計測し、計測により取得した検査面の温度分布に基づいて、その容器の収容状態の良否を判定する容器の収容状態の検査方法である。
【0007】
検査面の内側に収容物が接している部分と接していない部分とがある場合、加熱した際の検査面の温度上昇の程度には差が生じる。つまり、検査面の内側に収容物が接している部分と接していない部分とがある場合、加熱によって検査面に温度差が生じる。よって、加熱した検査面の温度分布を取得することで、内側に収容物が接している部分と接していない部分とを確認可能であり、それを基に容器の収容状態の良否を判定できる。この容器の収容状態の検査方法は、検査面の内側に収容物が接している部分と接していない部分とに温度差を生じさせる程度の加熱時間によって実施可能であり、短時間ですむ。
【0008】
また上記に記載の容器の収容状態の検査方法であって、計測により取得した検査面の温度分布において、温度差が予め定めた基準差よりも大きな箇所同士があるときには、その容器の収容状態が不良であると判定することが望ましい。このようにすると、短い検査時間で、収容状態が不良である容器を判別することができる。
【0009】
また上記に記載の容器の収容状態の検査方法であって、検査面の加熱を開始してから予め定めた検査期間内に、計測により取得した検査面の温度分布において、温度差が基準差よりも大きな箇所同士がないときには、その容器の収容状態が不良であると判定しないことが望ましい。このようにすると、短い検査時間で、収容状態が良好である容器を判別することができる。
【0010】
また上記に記載の容器の収容状態の検査方法であって、検査面を、容器の底面とすることが望ましい。このようにすると、収容物の収容時には確認しにくい容器の底部における収容状態の良否を判別することができる。
【0011】
本開示技術の他の態様である容器の収容状態の検査装置は、収容物が収容された容器の外面に位置する検査面を加熱する加熱源と、加熱源によって加熱した検査面の温度分布を計測する温度計側部とを有する容器の収容状態の検査装置である。
【0012】
この検査装置により、計測した温度分布に基づいて、その容器の収容状態の良否を短時間で判定することができる。
【0013】
また上記に記載の容器の収容状態の検査装置であって、容器を載置する載置板を有し、検査面は、容器の底面であり、載置板には、載置された容器の検査面に対応する箇所に貫通孔が形成されており、温度計側部は、載置板の下方に設けられ、貫通孔の内側にて露出する検査面を撮像範囲内とする赤外線サーモグラフィカメラを有することが望ましい。このようにすると、容器を通常の保管状態と同じ姿勢としつつ、短時間で正確に底部における収容状態を判別することができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示技術によれば、収容物が収容された容器の収容状態を短時間で検査できる容器の収容状態の検査方法、および、容器の収容状態の検査装置が提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施の形態に係る検査対象(内部に収容物が収容された容器)の断面図である。
図2】実施の形態に係る検査装置の概略構成図である。
図3】実施の形態に係る検査装置の斜視図である。
図4】実施の形態に係る検査方法の原理を説明するための図である。
図5】実施例に係る容器の加熱を開始した後、所定時間が経過したときの検査面の温度分布を示す図である。
図6】実施例に係る容器の加熱を開始した後、図5よりもさらに時間が経過したときの検査面の温度分布を示す図である。
図7】実施例に係る容器を解体して確認した充填不良部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示技術を具体化した実施形態である容器の収容状態の検査方法、および、容器の収容状態の検査装置について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0017】
まず、検査の対象物の一例としての検査対象10について図1により説明する。図1は、検査対象10の断面図である。検査対象10は、容器20と、容器20の内部に収容された収容物30とを有している。容器20は、例えば、可視光を透過しない金属製のものである。よって、外部から内部の様子を直接的に観察することは困難である。本形態の容器20は、具体的には、200Lのドラム缶である。すなわち、本形態の容器20は、鋼鉄よりなるものであり、例えば、長期にわたって内部に水がたまった状態が続くと錆が生じる可能性のある材質のものである。
【0018】
収容物30は、例えば、廃棄物等である。本形態の収容物30は、固形物31とモルタル32とを含んでいる。本形態の固形物31は、放射性廃棄物である。本形態の容器20は、固形物31が収容された後、固形物31同士の隙間および固形物31と容器20との隙間にモルタル32が充填されている。
【0019】
このような容器20では、モルタル32が容器20の内部に適切に充填されていることが好ましい。例えば、容器20の内部の底部21付近において、モルタル32が適切に充填されていない場合、底部21の内面22とモルタル32との隙間に水分がたまってしまうことがある。そして、長期にわたって底部21に水がたまった状態が続くと、容器20に錆が生じてしまう可能性があるからである。なお、容器20内へと収容されるモルタル32は、まず最初に容器20の底部21の内面22を覆うこととなる。また、容器20および収容物30はともに、可視光を透過しないものである。つまり、容器20の底部21の内面22にモルタル32が適切に充填されているか否かは、収容物30が収容された後にも、収容物30の収容時にも確認することが困難である。
【0020】
次に、容器20の収容状態を検査する検査装置100について説明する。検査装置100は、容器20の外面に位置する検査面について検査を行う。本形態において、検査面は、容器20の底部21の外面である底面23である。検査装置100は、図2の概略構成図に示すように、載置板110、加熱源120、温度計測部130を有している。載置板110は、検査時に、上面に容器20が載置される。載置板110は、載置される容器20の底部21の底面23に対応した位置に貫通孔111が形成されている。貫通孔111は、容器20の底面23よりもやや小さい。このため、載置板110に載置した際に、容器20の底面23のほとんどを、貫通孔111の内側において露出させることができる。
【0021】
加熱源120は、容器20を外部から加熱することができるものである。本形態の検査装置100には、加熱源120として、第1加熱源120Aと第2加熱源120Bとが設けられている。本形態において、第1加熱源120Aおよび第2加熱源120Bはともに、赤外線ヒーターである。第1加熱源120Aおよび第2加熱源120Bは、ともに貫通孔111の斜め下の位置に、それぞれ異なる配置で設けられている。第1加熱源120Aおよび第2加熱源120Bは、それぞれ異なる位置から、貫通孔111の内側において露出している容器20の底面23に向けて赤外線を放射する。これにより、第1加熱源120Aおよび第2加熱源120Bは、検査面である容器20の底面23を加熱することができる。本形態では、加熱源120に赤外線ヒーターを用いていることで、検査面である容器20の底面23を短時間で正確に加熱することができる。また、赤外線ヒーターは、容器20の底面23を、離れた位置から加熱することができる。
【0022】
温度計測部130は、容器20の温度分布を容器20の外部から計測できるものである。本形態の温度計測部130は、赤外線サーモグラフィカメラを含むものである。温度計測部130は、貫通孔111の内側において露出している容器20の底面23を少なくとも撮像範囲内に収めている。よって、温度計測部130は、検査面である容器20の底面23の温度分布を計測できる。本形態では、温度計測部130に赤外線サーモグラフィカメラを用いていることで、撮像した容器20の底面23の画像から、検査面である底面23の温度分布を非接触で容易に取得することができる。なお、温度計測部130の赤外線サーモグラフィカメラとしては、例えば、日本アビオニクス株式会社製のInfReC R450を用いることができる。
【0023】
図3は、検査装置100の斜視図である。図3に示すように、検査装置100は、載置板110の下方に台座115を有している。載置板110は、台座115の上部に設けられている。これにより、載置板110の下方には空間112が形成されている。台座115は、例えば、複数の鋼管を接続することで構成することができる。
【0024】
台座115は、第1加熱源120Aおよび第2加熱源120Bをそれぞれ載せる第1加熱源支持部116Aおよび第2加熱源支持部116Bを有している。第1加熱源120Aおよび第2加熱源120Bは、図3からわかるように、水平方向において、これらの間に容器20の底面23を位置させつつ対向して配置されている。温度計測部130は、容器20の斜め下の位置に配置されている。また温度計測部130は、第1加熱源120Aと第2加熱源120Bとの間の位置に配置されている。このような配置であることで、温度計測部130の赤外線サーモグラフィカメラが、赤外線ヒーターである第1加熱源120Aおよび第2加熱源120Bが放射した赤外線を計測してしまうことを抑制できる。すなわち、温度計測部130によって、容器20の底面23の温度分布を正確に取得できる。
【0025】
なお、温度計測部130に赤外線サーモグラフィカメラを用いた検査装置100では、温度計測部130の撮像範囲内に、装置の外部から入射する赤外線についても低減できることが好ましい。温度計測部130によって、容器20の底面23の温度分布を正確に取得できるからである。よって、検査装置100は、温度計測部130の撮像方向に入射する赤外線を抑制する遮光部を有していることが好ましい。具体的には、例えば、温度計測部130の赤外線サーモグラフィカメラの前方に位置する台座115の側面115A、115B、115Cには、赤外線を遮光する膜を設けておくことが好ましい。これにより、外部からの赤外線が載置板110の下方の空間112に入射することを抑制することができる。すなわち、温度計測部130によって、容器20の底面23の温度分布を正確に取得できる。
【0026】
次に、検査装置100を用いて容器20の収容状態を検査する検査方法について説明する。まず、検査原理について説明する。図4は、容器20の底部21を加熱したときにおける充填良好部21Aおよび充填不良部21Bの温度推移をそれぞれ示す図である。
【0027】
充填良好部21Aは、底部21のうち、モルタル32が適切に充填されている部分である。すなわち、充填良好部21Aは、底部21のうち、内面22にモルタル32が接している部分である。充填不良部21Bは、底部21のうち、モルタル32が適切に充填されていない部分である。すなわち、充填不良部21Bは、底部21のうち、内面22にモルタル32が接していない部分である。
【0028】
充填良好部21Aと充填不良部21Bとが存在する底部21を加熱すると、充填良好部21Aと充填不良部21Bとで温度推移が異なる。具体的に、充填不良部21Bは、充填良好部21Aと比較して、温度が上昇しやすい傾向にある。内面22にモルタル32が接している充填良好部21Aでは、加熱された際に、モルタル32へと熱が伝わりやすい。このため、充填良好部21Aは、その外部へと熱が伝わりやすく、温度が上昇しにくい。これに対し、内面22にモルタル32が接していない充填不良部21Bでは、内面22側に、モルタル32よりも熱伝導率が低い空気が存在している。このため、充填不良部21Bでは、熱がその外部へと伝わりにくく、温度が上昇しやすいからである。
【0029】
よって、図4に示すように、加熱開始後に所定の時間が経過した時刻t1において、充填良好部21Aの温度TAは、充填不良部21Bの温度TBよりも低い。本形態では、この加熱時に生じる充填良好部21Aと充填不良部21Bとの温度差に基づいて、底部21に充填不良部21Bが存在するか否かを検査する。なお、充填良好部21Aと充填不良部21Bとの温度差は、加熱開始後の初期には小さく、その後、時間の経過とともに大きくなる。さらに加熱し続けると、やがて充填良好部21Aと充填不良部21Bとの温度差は小さくなり、同じ温度となる。このため、本形態では、加熱開始後、充填良好部21Aと充填不良部21Bとが同じ温度となる前のタイミングにおいて検査を行う。
【0030】
続いて、検査装置100を用いた容器20の収容状態の検査方法の手順について詳細に説明する。本検査方法では、まず、検査装置100の載置板110の上に、収容物30が収容された容器20を載置する。この際、容器20の底部21の中心を、載置板110の貫通孔111に合わせる。これにより、容器20の底部21を、貫通孔111の内側にて露出させる。
【0031】
載置板110の上に容器20を載置した状態で、加熱源120によって底部21を加熱する。加熱の際には、第1加熱源120Aおよび第2加熱源120Bを両方とも用いる。これにより、一方のみを用いた場合よりも、底部21の温度を短時間で上昇させることができる。つまり、複数の加熱源を用いることで、検査に要する時間を短くできる。
【0032】
加熱源120による加熱を開始後、温度計測部130によって底部21の温度分布を計測することで取得する。そして、加熱源120による加熱を開始してから予め定めた検査時間内に、底部21の温度分布において、温度差が予め定めた基準差よりも大きな箇所同士が確認できた場合、その容器20には充填不良部21Bがあると判定する。すなわち、容器20内部における底部21付近に収容物30が適切に充填されていない部分があり、収容状態が不良であると判定する。本形態では、収容状態が不良であると判定された容器20については、収容物30を取り出し、取り出した収容物30を他の容器20へと再度、収容する。異なる容器20へと収容物30を収容した後、その容器20について再度、検査装置100を用いて同様の検査を行う。
【0033】
一方、加熱源120による加熱開始後の検査時間内に、底部21の温度分布において、温度差が基準差よりも大きな箇所同士が確認されなかった場合、その容器20については、充填不良部21Bがないと判定する。すなわち、容器20の底部21の全体に収容物30が適切に充填されており、収容状態が良好であると判定する。
【0034】
検査装置100を用い、このような手順で検査を行う場合、検査に要する時間は、加熱によって充填良好部21Aと充填不良部21Bとに温度差が生じる程度でよい。つまり、検査時間が短い。また、底部21の温度分布を取得し、温度差が基準差よりも大きな箇所同士があるか否かを確認することで、検査前の底部21の温度が検査結果に影響することがない。つまり、底部21の温度分布における相対的な温度変化を用いる本検査方法では、検査前の底部21の温度が常温である場合、常温に比べて低い場合、常温に比べて高い場合のいずれであっても、正確な検査結果を得ることができる。
【0035】
加熱開始後に温度分布を取得する検査時間、および、充填不良部21Bがあると判定する温度差についての基準等の各検査条件については、予め充填不良部21Bを有する容器20を用いた実験を行うことで定めておくことができる。例えば、加熱開始後に温度分布を取得する検査時間は、60~90秒程度とすることができる。例えば、充填不良部21Bがあると判定する温度差についての基準差は、1~2℃程度とすることができる。
【0036】
充填不良部21Bの有無の判定は、例えば、検査担当者が、底面23について取得された温度分布の画像を目視によって確認することで行うことができる。また例えば、底面23について取得された温度分布の画像から、基準差よりも温度差が大きな箇所同士があるか否かを判定する判定処理を実行可能な判定部を検査装置100に設けておいてもよい。
【0037】
また、充填不良部21Bの有無の判定に用いる温度分布の取得のタイミングは、加熱開始後に所定の時間が経過したタイミングに定めておいてもよい。具体的には、例えば、加熱開始後、60秒が経過したタイミングの温度分布の画像を用いて、充填不良部21Bの有無を判定することができる。また例えば、加熱開始後の複数の異なるタイミングに温度分布を取得し、異なるタイミングで取得した複数の温度分布を用いて充填不良部21Bの有無を判定してもよい。この場合、例えば、異なるタイミングで取得した複数の温度分布のなかに、基準差よりも温度差が大きな箇所同士が確認できるものが1つ以上、ある場合に、充填不良部21Bがあると判定することができる。また例えば、異なるタイミングで取得した複数の温度分布のなかに、基準差よりも温度差が大きな箇所同士が確認できるものが複数ある場合に、充填不良部21Bがあると判定することとしてもよい。
【0038】
本検査方法では、容器20の底面23を検査面として検査を行う。よって、収容物30が収容された後にも、収容物30の収容時にも確認することが困難な容器20の底部21付近に、収容物30が適切に収容されているか否かを確認できる。さらに、保管中に、内部における底部21付近に水分がたまってしまう可能性のある箇所がある容器20を適切に判別できる。
【0039】
また、容器20の底部21を下方に向けた状態で検査を行うことができる。これにより、容器20を通常の保管状態と同じ姿勢として、底部21の検査を行うことができる。すなわち、容器20を通常の保管状態における姿勢とは異なる姿勢として検査を行った場合、収容物30の偏り等によって、通常の保管状態に対応していない検査結果となってしまうことがあり得る。これに対し、容器20の底部21を下方に向けた状態で検査を行うことで、容器20の保管状態に合わせた正確な検査結果を得ることができる。
【0040】
次に、本実施形態に係る実施例について説明する。本実施例では、収容物30を収容した容器20について、検査装置100を用い、上記で説明した手順で検査を行った。実施例の検査には、容器20として、充填不良部21Bを設けたものを用いた。図5および図6に、実施例に係る容器20の底面23について計測して得られた温度分布を示している。図5および図6はともに、同じ容器20から得られた温度分布である。
【0041】
図5は、加熱開始後、15秒が経過したときに計測した容器20の底面23の温度分布を示す画像である。図6は、加熱開始後、60秒が経過したときに計測した容器20の底面23の温度分布を示す画像である。図5に示す15秒経過時の温度分布では、目立った温度差が明確には表れていない。これに対し、図6に示す60秒経過時の温度分布では、その他の部分よりも高い温度となっている高温箇所THが3つ、明確に確認できる。高温箇所THは、高温箇所TH以外の底面23との温度差が大きな箇所である。
【0042】
図7は、図5および図6の画像を取得した後に、実施例に係る検査に用いた容器20を分解することで確認した充填不良部21Bを示す図である。具体的には、実施例において使用した容器20を解体して底部21を取り外し、モルタル32が付着しているか否かを確認することで図7を作成した。図7には、モルタル32が付着していなかった底部21の部分である充填不良部21Bをハッチングにより示している。
【0043】
図6および図7から、60秒経過時の温度分布の画像によって確認できた高温箇所THは、充填不良部21Bに対応した位置および大きさであることが確認できた。本実施例によって、検査装置100を用い、本形態において説明した手順の検査方法を用いることで、充填不良部21Bを有する容器20を適切に判別できることが確認できた。
【0044】
また、本実施例では、検査時間が60秒でよいことが確認できた。これに対し、例えば、超音波を用いて底部21の全域について充填不良部21Bの有無を検査する場合、数十分を要した。すなわち、本実施形態に係る検査装置100を用いた検査方法では、他の検査方法と比べて、短時間で検査を完了できる。
【0045】
さらに、本実施形態に係る他の実験によって、本実施形態に係る検査装置100を用いた検査方法では、数ミリ程度の小さな充填不良部21Bについても発見可能であることが確認できた。よって、本実施形態に係る検査装置100を用いた検査方法は、容器20における収容物30の収容状態を、正確に判定できる。つまり、収容状態が不良である容器20を正確に判別できる。
【0046】
以上、詳細に説明したように、本形態に係る検査方法は、収容物30が収容された容器20の収容状態を検査する方法である。その手順は、検査装置100を用い、まず、加熱源120により、容器20の外面に位置する検査面である底面23を加熱する。次に、加熱源120によって加熱された底面23の温度分布を計測する。そして、計測によって取得した底面23の温度分布において、温度差が予め定めた基準差よりも大きな箇所同士がある場合、その容器20の底部21に充填不良部21Bがあると判定する。つまり、底部21の温度が高い部分に収容物30のうちのモルタル32が適切に存在していないことにより、収容物30の収容状態が不良であると判定する。すなわち、加熱された容器20の底面23の温度分布を計測し、計測された底面23の温度分布に基づいて、容器20の収容状態の良否を判定している。この方法による検査に要する時間は、加熱によって充填良好部21Aと充填不良部21Bとに温度差が生じる程度で済む。これにより、収容物が収容された容器の収容状態を短時間で検査できる容器の収容状態の検査方法および検査装置が実現されている。
【0047】
本実施の形態は単なる例示にすぎず、本開示技術を何ら限定するものではない。したがって本開示技術は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能である。例えば、上記の実施形態では、容器20がドラム缶であり、収容物30が固形物31とモルタル32とにより構成された例について説明した。しかし、これらは本開示技術を説明するための単なる一例であり、収容物30の熱伝導率が空気と同じでない限り、本開示技術は他の検査対象についても同様に使用することができる。
【0048】
上記の実施形態では、検査面を、容器20の外面における底面23として説明した。しかし、例えば、底面23以外の他の面を検査面とし、その検査面の内側に収容物30が適切にあるか否かの収容状態について検査することも可能である。ただし、容器20の保管状態において底部21に液状の成分が溜まってしまう可能性があり、底部21に溜まった液状の成分によって容器20の底部21が劣化する可能性がある場合、容器20の底面23を検査面とすることが好ましい。またこの場合、検査装置100およびこれを用いた検査方法は、容器20をその保管状態と同様に、底面23が下方に向けられた状態で検査するものであることが好ましい。
【0049】
上記の実施形態では、加熱された底面23の温度分布において、温度差が予め定めた基準差よりも大きな箇所同士があるときには、その容器20の収容状態が不良であると判定する例について具体的に説明した。しかし、例えば、加熱された底面23の温度分布において、温度差が基準差よりも大きな箇所同士があり、充填不良部21Bがある場合でも、その大きさが予め定めた許容面積内である場合には、収容状態が不良であると判定しないこととしてもよい。
【0050】
また例えば、検査面を容器20の側面とし、容器20の内部における収容物30の高さについて検査することも可能である。具体的には、容器20の側面を加熱し、加熱された側面の温度分布を計測すると、収容物30が存在する箇所と、収容物30が存在しない箇所とに温度差が生じる。つまり、容器20内部における収容物30の高さを確認すること等も可能である。そして、収容物30の高さに許容範囲を設けて置き、容器20の側面の温度分布から取得された収容物30の高さが許容範囲内であるか否かにより、容器20の収容状態の良否を判定することもできる。
【0051】
上記の実施形態では、加熱した底面23の温度分布のみによって容器20の収容状態の良否を判定した例について説明した。しかし、容器20について、他の検査についても行うこととしてもよい。
【符号の説明】
【0052】
20 容器
23 底面(検査面)
30 収容物
100 検査装置
110 載置板
111 貫通孔
120 加熱源
130 温度計側部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7