(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167660
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】計測値監視システム、及び計測装置
(51)【国際特許分類】
G08C 15/06 20060101AFI20231116BHJP
G08C 15/00 20060101ALI20231116BHJP
G01D 13/22 20060101ALI20231116BHJP
G01B 7/30 20060101ALI20231116BHJP
G08C 19/00 20060101ALI20231116BHJP
H04W 52/02 20090101ALI20231116BHJP
H04W 4/38 20180101ALI20231116BHJP
H04W 84/22 20090101ALN20231116BHJP
【FI】
G08C15/06 H
G08C15/00 E
G01D13/22 102Z
G01B7/30 H
G08C19/00 301F
H04W52/02 111
H04W4/38
H04W84/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079007
(22)【出願日】2022-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】509044109
【氏名又は名称】ウイングレット・システムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼堂 博司
(72)【発明者】
【氏名】西野 憲次郎
【テーマコード(参考)】
2F063
2F073
5K067
【Fターム(参考)】
2F063AA35
2F063BB03
2F063CA01
2F063DA01
2F063DA05
2F063DC08
2F063DD02
2F063GA52
2F073AA01
2F073AA02
2F073AA03
2F073AB01
2F073BB01
2F073BB07
2F073BC01
2F073BC02
2F073CC02
2F073CC03
2F073CC07
2F073CD11
2F073DD07
2F073DE08
2F073DE13
2F073EE13
2F073FF01
2F073FG01
2F073FG02
2F073GG01
2F073GG07
5K067AA43
5K067BB27
5K067CC04
5K067CC22
5K067GG04
5K067HH22
5K067HH23
(57)【要約】
【課題】省電力性の向上を実現するとともに、プラント内の状況の変化を迅速に把握することができる計測値監視システムを提供する。
【解決手段】計測値監視システムは、計測値を出力する指示値取得装置と、指示値取得装置からアップリンク信号を受信するとともに、指示値取得装置にダウンリンク信号を送信する監視装置と、を備えている。指示値取得装置は、取得部と、周期的な第一送信タイミング(Tx)に計測値を監視装置に送信するアップリンク送信制御部と、第一送信タイミング(Tx)の後の第一受信タイミング(Rx)にダウンリンク信号を監視装置から受信可能な状態に移行するダウンリンク受信制御部と、通常状態と低消費電力状態との間で状態制御する状態制御部と、を有し、アップリンク送信制御部は、ダウンリンク受信制御部がダウンリンク信号を受信すると、第一送信タイミング(Tx)と異なる第二送信タイミング(tx)に、計測値を送信する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測値を取得して出力する計測装置と、前記計測装置からアップリンク信号を受信するとともに、前記計測装置にダウンリンク信号を送信する監視装置と、を備える計測値監視システムであって、
前記計測装置は、
前記計測値を取得する計測値取得部と、
予め定められた周期的な第一送信タイミングにおいて、前記計測値取得部が取得した前記計測値を、前記監視装置に送信するアップリンク送信制御部と、
前記第一送信タイミングから所定時間経過後の第一受信タイミングにおいて、前記ダウンリンク信号を、前記監視装置から受信可能な受信可能状態に移行するダウンリンク受信制御部と、
前記第一受信タイミングにおいて第一の消費電力で動作する通常状態と、前記第一受信タイミングと異なる期間において前記第一の消費電力よりも低い第二の消費電力で動作する低消費電力状態と、の間で状態制御する状態制御部と、を有し、
前記監視装置は、
前記計測装置が送信する前記アップリンク信号を受信するアップリンク受信制御部と、
前記アップリンク信号の受信後に、前記ダウンリンク信号の送信判定を行うダウンリンク送信判定部と、
前記ダウンリンク送信判定部の判定結果に基づいて、前記ダウンリンク信号を前記計測装置に送信するダウンリンク送信制御部と、を有し、
前記アップリンク送信制御部は、前記ダウンリンク受信制御部が前記ダウンリンク信号を受信すると、前記第一送信タイミングと異なる第二送信タイミングにおいて、前記監視装置に前記計測値を送信し、
前記ダウンリンク受信制御部は、前記第二送信タイミングから所定時間経過後の第二受信タイミングにおいて前記受信可能状態に移行し、
前記状態制御部は、前記第二受信タイミングにおいて前記第一の消費電力で動作するように状態制御することを特徴とする計測値監視システム。
【請求項2】
前記アップリンク送信制御部は、前記ダウンリンク受信制御部が前記ダウンリンク信号を受信すると、前記第二送信タイミングにおいて、前記計測値を前記監視装置に複数回送信することを特徴とする請求項1に記載の計測値監視システム。
【請求項3】
前記状態制御部は、前記計測装置の起動後に、前記第一の消費電力で動作する初期設定状態となるように状態制御し、
前記アップリンク送信制御部は、前記初期設定状態において、前記第一送信タイミングと異なる第三送信タイミングにおいて、前記計測値又は設定値を前記監視装置に複数回送信し、
前記ダウンリンク受信制御部は、前記第三送信タイミングから所定時間経過後の第三受信タイミングにおいて、前記受信可能状態に移行することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の計測値監視システム。
【請求項4】
前記ダウンリンク送信判定部は、前記計測装置の設定値の変更の要否を判定し、該判定結果に基づいて前記ダウンリンク信号の送信判定を行い、
前記ダウンリンク送信制御部は、前記送信判定結果に基づいて、変更後の設定値を前記計測装置に送信することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の計測値監視システム。
【請求項5】
前記計測装置は、アナログメータの回転軸に嵌合される指針に取り付けられる磁石と、前記磁石が生成する磁力を検知する磁気センサと、を有し、
前記磁気センサが検出した磁力に基づいて前記アナログメータの前記計測値を取得することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の計測値監視システム。
【請求項6】
前記磁石は、環状体からなる本体部を有し、該本体部の中心軸が前記回転軸の軸線上に位置するように配置され、
前記本体部の中心には、前記指針を前記回転軸から引き抜く際に用いられる引き抜き工具が貫通する貫通孔が引き抜き方向に形成されていることを特徴とする請求項5に記載の計測値監視システム。
【請求項7】
監視装置に対してアップリンク信号を送信するとともに、前記監視装置からダウンリンク信号を受信する計測装置であって、
計測値を取得する計測値取得部と、
予め定められた周期的な第一送信タイミングにおいて、前記計測値取得部が取得した前記計測値を、前記監視装置に送信するアップリンク送信制御部と、
前記第一送信タイミングから所定時間経過後の第一受信タイミングにおいて、前記ダウンリンク信号を、前記監視装置から受信可能な受信可能状態に移行するダウンリンク受信制御部と、
前記第一受信タイミングにおいて第一の消費電力で動作する通常状態と、前記第一受信タイミングと異なる期間において前記第一の消費電力よりも低い第二の消費電力で動作する低消費電力状態と、の間で状態制御する状態制御部と、を備え、
前記アップリンク送信制御部は、前記ダウンリンク受信制御部が前記ダウンリンク信号を受信すると、前記第一送信タイミングと異なる第二送信タイミングにおいて、前記監視装置に前記計測値を送信し、
前記ダウンリンク受信制御部は、前記第二送信タイミングから所定時間経過後の第二受信タイミングにおいて前記受信可能状態に移行し、
前記状態制御部は、前記第二受信タイミングにおいて前記第一の消費電力で動作するように状態制御することを特徴とする計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測値監視システム及び計測装置に係り、特に省電力性の向上を図った計測値監視システム、及び計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プラント等で用いられる産業用の計測装置は、設備の状態を監視し、早期に異常を検出し、メンテナンスの要否を判断するために重要な役割を担ってきた。例えば、プラントの配管に設置される圧力計は、配管内を流れる流体の圧力を検知することによって、配管、及び配管内の流体の状態を監視するために広く普及している。
【0003】
また、近年、プラントにおける作業員の監視負担の軽減を図る目的で、計測装置を通信回線に接続し、計測装置の指示値を遠隔で監視可能な計測値監視システムが注目されている。より詳細には、計測装置の計測値を、通信回線を介して接続された遠隔のサーバに対して送信する。これにより、プラントの作業員が目視によって計測装置の計測値を確認することなく、設備の状態を監視することができるため、作業員の監視負担を軽減することが可能となる。
【0004】
特許文献1には、センサデータを収集する端末と、センサデータを監視する監視装置と、端末と監視装置の間の通信データを中継する中継器(ゲートウェイ装置)からなる監視システムが開示されている。端末と中継器は、LoRaWAN(登録商標)規格に準拠した無線通信を行う。これにより、センサデータを監視装置に送信することができるだけでなく、監視システムの省電力性を向上することが可能となる。
【0005】
より詳細に説明すると、LoRaWAN規格に準拠した無線通信を行う端末は、無線通信を行う所定の期間において起動状態に遷移するとともに、無線通信を行わない期間においてスリープ状態に遷移する。そのため、無線通信を行わない期間において端末で消費される電力を抑制することが可能となり、省電力性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1に開示された技術により、計測値を遠隔で監視可能な計測値監視システムの省電力性を向上することができるものの、プラント内の状況を迅速に把握し、早期に異常を検出するために、計測値監視システムに更なる改善が望まれていた。以下で、具体的に説明する。
【0008】
図15は、従来の端末と監視サーバとの間の通信タイミングを示している。
図15に示すように、端末と監視サーバの間の通信は、予め定められた周期的なタイミングで行われる。通信タイミングが到来すると、端末から監視サーバに対して計測値が送信される。端末から監視サーバに対して行われる通信は、アップリンク通信と呼ばれ、アップリンク通信の通信タイミング(送信スロット)は、
図15において「Tx」で示されている。
【0009】
監視装置60は、端末から計測値を受信した1秒後、及び2秒後に、端末に対してACK信号、又は設定情報等を含む制御信号を送信する。監視サーバから端末に対する通信は、ダウンリンク通信と呼ばれ、ダウンリンク通信の通信タイミング(受信スロット)は、
図15において「Rx」で示されている。
LoRaWANのCLASS Aの通信規格では、アップリンク通信が行われてからダウンリンク通信が行われるように規定されている。
【0010】
端末と監視サーバの間の通信周期は、計測データの性質に基づいて予め設定される。例えば、計測データが長期的なスパンで変動する性質を有する場合には、比較的長い通信周期が設定される。一方、計測データが短期的なスパンで変動する性質を有する場合等には、比較的短い通信周期が設定される。
端末は、休止フェーズにおいてスリープ状態で動作するため、長い通信周期を設定することによって端末の消費電力を抑制して省電力性を向上させることが可能となる。一方、短い通信周期を設定することによってプラントの状況の変化を早期に把握することが可能となる。
【0011】
しかしながら、端末と監視サーバの間の通信周期は、予め設定されるため、計測データの性質が変化した場合に、柔軟に対応することができなかった。すなわち、計測データが異常値を示した場合であっても、予め設定された次の通信フェーズが到来するまで、端末と監視サーバとの間の無線通信は行われない。したがって、次の通信フェーズまでの間に、プラントの状況がどのように変化しているか把握し、変化に対応することができなかった。そのため、省電力性の向上を実現させつつ、プラント内の状況を早期に把握し、異常を検出することができる計測値監視システムが望まれていた。
【0012】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、省電力性の向上を実現するとともに、プラント内の状況の変化を迅速に把握することができる計測値監視システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題は、本発明の計測値監視システムによれば、計測値を取得して出力する計測装置と、前記計測装置からアップリンク信号を受信するとともに、前記計測装置にダウンリンク信号を送信する監視装置と、を備える計測値監視システムであって、前記計測装置は、前記計測値を取得する計測値取得部と、予め定められた周期的な第一送信タイミングにおいて、前記計測値取得部が取得した計測値を、前記監視装置に送信するアップリンク送信制御部と、前記第一送信タイミングから所定時間経過後の第一受信タイミングにおいて、前記ダウンリンク信号を、前記監視装置から受信可能な受信可能状態に移行するダウンリンク受信制御部と、前記第一受信タイミングにおいて第一の消費電力で動作する通常状態と、前記第一受信タイミングと異なる期間において前記第一の消費電力よりも低い第二の消費電力で動作する低消費電力状態と、の間で状態制御する状態制御部と、を有し、前記監視装置は、前記計測装置が送信する前記アップリンク信号を受信するアップリンク受信制御部と、前記アップリンク信号の受信後に、前記ダウンリンク信号の送信判定を行うダウンリンク送信判定部と、前記ダウンリンク送信判定部の判定結果に基づいて、前記ダウンリンク信号を前記計測装置に送信するダウンリンク送信制御部と、を有し、前記アップリンク送信制御部は、前記ダウンリンク受信制御部が前記ダウンリンク信号を受信すると、前記第一送信タイミングと異なる第二送信タイミングにおいて、前記監視装置に前記計測値を送信し、前記ダウンリンク受信制御部は、前記第二送信タイミングから所定時間経過後の第二受信タイミングにおいて前記受信可能状態に移行し、前記状態制御部は、前記第二受信タイミングにおいて前記通常状態となるように状態制御することにより解決される。
【0014】
上記構成によれば、計測装置と監視装置は、予め定められた周期的な第一送信タイミングと第一受信タイミングにおいて通信を行う。計測装置は、通信を行わない時には、低消費電力状態(スリープ状態)に遷移する。これにより、計測装置で消費される電力を抑制し、省電力性を向上することが可能となる。
また、監視装置から計測装置に対してダウンリンク信号を送信することによって、第一送信タイミングとは異なる第二送信タイミングにおいて通信を行い、計測値を監視することができる。したがって、監視装置は、次の第一送信タイミングを待つことなく、第二送信タイミングに受信した計測値に基づいてプラント内の状況を把握し、早期に異常を検出することが可能となる。
【0015】
また、前記アップリンク送信制御部は、前記ダウンリンク受信制御部が前記ダウンリンク信号を受信すると、前記第二送信タイミングにおいて、前記計測値を前記監視装置に複数回送信すると好適である。
上記構成によれば、計測装置は、第二送信タイミングにおいて複数回計測値を監視装置に送信するとともに、送信後に監視装置からダウンリンク信号を複数回受信することができる。これにより、プラント内に異常等が発生した場合に計測装置と監視装置との間の送受信スロットを増加させることが可能となり、異常等に対応するために必要な通信機会を確保することが可能となる。
【0016】
また、前記状態制御部は、前記計測装置の起動後に、前記第一の消費電力で動作する初期設定状態となるように状態制御し、前記アップリンク送信制御部は、前記初期設定状態において、前記第一送信タイミングと異なる第三送信タイミングにおいて、前記計測値又は設定値を前記監視装置に複数回送信し、前記ダウンリンク受信制御部は、前記第三送信タイミングから所定時間経過後の第三受信タイミングにおいて、前記受信可能状態に移行すると好適である。
上記構成によれば、計測装置の初期設定状態において、計測装置と監視装置との間の送受信スロットを増加させることが可能となり、初期設定のために必要な通信機会を確保することが可能となる。
【0017】
また、前記ダウンリンク送信判定部は、前記計測装置の設定値の変更の要否を判定し、該判定結果に基づいて前記ダウンリンク信号の送信判定を行い、前記ダウンリンク送信制御部は、前記送信判定結果に基づいて、変更後の設定値を前記計測装置に送信すると好適である。
上記構成によれば、計測装置の設定値を変更する必要が生じた際に、計測装置と監視装置との間の送受信スロットを増加させることが可能となり、設定値の変更のために必要な通信機会を確保することが可能となる。
【0018】
また、前記計測値取得部は、アナログメータの回転軸に取り付けられた指針に取り付けられる磁石と、前記磁石が生成する磁力を検知する磁気センサによって前記アナログメータの前記計測値を取得すると好適である。
上記構成によれば、プラントに新たにスマートメータを導入することなく、既存のアナログメータに磁石及び磁気センサを取り付けることによってプラント内の状況を把握することが可能となるため、安価に計測値監視システムを構築することが可能となる。
【0019】
また、前記磁石は、環状体からなる本体部を有し、該本体部の中心軸が前記回転軸の軸線上に位置するように配置され、前記本体部の中心には、前記指針を前記回転軸から引き抜く際に用いられる引き抜き工具が貫通する貫通孔が引き抜き方向に形成されていると好適である。
上記構成によれば、プラントの作業員は、引き抜き工具を用いることによって磁石が取り付けられた指針を回転軸から引き抜くことが可能となるため、アナログメータのメンテナンス作業における作業負担を軽減することが可能となる。
【0020】
前記課題は、本発明の計測装置によれば、監視装置に対してアップリンク信号を送信するとともに、前記監視装置からダウンリンク信号を受信する計測装置であって、計測値を取得する計測値取得部と、予め定められた周期的な第一送信タイミングにおいて、前記計測値取得部が取得した前記計測値を、前記監視装置に送信するアップリンク送信制御部と、前記第一送信タイミングから所定時間経過後の第一受信タイミングにおいて、前記ダウンリンク信号を、前記監視装置から受信可能な受信可能状態に移行するダウンリンク受信制御部と、前記第一受信タイミングにおいて第一の消費電力で動作する通常状態と、前記第一受信タイミングと異なる期間において前記第一の消費電力よりも低い第二の消費電力で動作する低消費電力状態と、の間で状態制御する状態制御部と、を備え、前記アップリンク送信制御部は、前記ダウンリンク受信制御部が前記ダウンリンク信号を受信すると、前記第一送信タイミングと異なる第二送信タイミングにおいて、前記監視装置に前記計測値を送信し、前記ダウンリンク受信制御部は、前記第二送信タイミングから所定時間経過後の第二受信タイミングにおいて前記受信可能状態に移行し、前記状態制御部は、前記第二受信タイミングにおいて前記第一の消費電力で動作するように状態制御することにより解決される。
【0021】
上記構成によれば、計測装置は、予め定められた周期的な第一送信タイミングと第一受信タイミングにおいて通信を行う。計測装置は、通信を行わない時には、低消費電力状態(スリープ状態)に遷移する。これにより、計測装置で消費される電力を抑制し、省電力性を向上することが可能となる。
また、計測装置は、監視装置からダウンリンク信号を受信することによって、第一送信タイミングとは異なる第二送信タイミングにおいて通信を行い、計測値を送信することができる。したがって、監視装置は、次の第一送信タイミングを待つことなく、第二送信タイミングに受信した計測値に基づいてプラント内の状況を把握し、早期に異常を検出することが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の計測値監視システムによれば、省電力性の向上を実現するとともに、プラント内の状況の変化を迅速に把握することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】計測値監視システムの全体構成を説明する図である。
【
図2A】圧力計に指示値取得装置を取り付けた状態の正面図である。
【
図2B】圧力計に指示値取得装置を取り付けた状態の背面図である。
【
図3】圧力計と指示値取得装置の分解斜視図である。
【
図7】設定変更時の通信タイミングの説明図である。
【
図8】指示値取得装置を起動した後の通信タイミングの説明図である。
【
図9】指示値取得装置の通信タイミングと状態制御の説明図である。
【
図13A】引き抜き工具で指針を引き抜く前の状態を示す図である。
【
図13B】引き抜き工具で指針を引き抜いた状態を示す図である。
【
図14A】引き抜き工具を使用する前の状態を示す図である。
【
図14B】回転軸の軸線上に引き抜き工具を位置させた状態を示す図である。
【
図14C】回転軸に固定軸の先端を当接させた状態を示す図である。
【
図14D】回転軸から指針を引き抜いた状態を示す図である。
【
図15】従来の端末通信とゲートウェイとの間の通信タイミングを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、
図1~
図14Dを参照しながら、本発明の一実施形態(以下、本実施形態)に係る計測値監視システム1について説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。つまり、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。
【0025】
本発明の計測値監視システム1は、プラントに設置された圧力計20の計測値を取得するとともに、遠隔の監視装置60で計測値を監視するために用いられる。本発明の計測値監視システム1を用いることにより、作業員の作業負担の軽減を実現する。また、本発明の計測値監視システム1を用いることにより、省電力性の向上を図るとともに、監視員が、プラント内の状況の変化を迅速に把握することが可能となる。
【0026】
<計測値監視システム1の全体構成>
図1は、計測値監視システム1の全体構成の一例を示す図である。
図1に示すように、計測値監視システム1は、圧力計20に取り付けられた指示値取得装置10と、指示値取得装置10が取得した指示値(計測値)を監視する監視装置60と、指示値取得装置10と監視装置60の間の通信を中継する中継器50と、から主に構成されている。中継器50と監視装置60は、インターネット等の公衆に利用可能な通信回線NWを介して接続されている。
【0027】
圧力計20は、プラント内の配管に取り付けられて、配管、及び配管の内部を流れる流体の異常を検出するために用いられる。
図1において、3つの圧力計20が図示されているが、圧力計20の数はこれに限定されない。例えば、4つ以上の圧力計20がプラント内の配管に取り付けられて、異常を検出するために用いられていてもよい。本実施形態において、プラントの状態を監視するアナログメータとして、圧力計20を例として説明するが、これに限定されない。例えば、温度計、湿度計、振動計に対して本発明を適用してもよい。
【0028】
計測装置に相当する指示値取得装置10は、プラントに予め設置された圧力計20に取り付けられる。指示値取得装置10は、圧力計20の指針24が指示する指示値(計測値に相当する)を取得するとともに、取得した指示値を、中継器50を介して監視装置60に対して出力する。換言すると、指示値取得装置10は、プラントの作業員に代わって圧力計20の指示値を読み取り、監視装置60に計測データとして記憶させる。これにより、プラントの作業員の作業負担を軽減することが可能となる。また、プラントに新しい圧力計20を導入することなく、既存の圧力計20に指示値取得装置10を取り付けることによって、容易に計測値監視システム1を構築することが可能となる。
【0029】
指示値取得装置10は、後述するように、角度検知器12によって圧力計20の指示値(計測値)を取得する。取得された指示値は、LPWA(Low Power Wide Area)通信、例えばLoRaWAN規格に準拠した無線通信によって中継器50に送信される。ただし、指示値取得装置10は、Wi-Fi(登録商標)、又はLTEに対応した通信インターフェースによって監視装置60に対して指示値を送信することとしてもよい。
【0030】
中継器50は、インターネット等の公衆に利用可能な通信回線NWに接続されて、指示値取得装置10と監視装置60の間の無線通信信号を中継するゲートウェイ装置である。中継器50は、プラント内に設置される複数の圧力計20の指示値を受信し、監視装置60へ中継する。また中継器50は、監視装置60から指示値取得装置10に対する設定値を含む制御信号を受信し、指示値取得装置10へ中継する。
【0031】
監視装置60は、プラントから送信される指示値を蓄積し、プラントの監視員に対して監視データとして提供する。監視装置60は、プラントで取得された指示値を蓄積するストレージサーバとして機能するとともに、プラントの監視員に対して監視データを提供する監視サーバとして機能する。これにより、プラントの監視員は、プラントの設備の異常の有無やメンテナンスの要否を判断することが可能となる。
【0032】
図1に示す計測値監視システム1の構成は例示であって、計測値監視システム1の構成を限定する趣旨ではない。
図1において図示されていないものの、通信回線NWには、LoRaWAN規格に対応したネットワークサーバが接続されて、中継器50と監視装置60の間の通信を制御する役割を担うこととしてもよい。
【0033】
<圧力計20>
最初に、圧力計20について説明する。
図3は、圧力計20及び指示値取得装置10の構成を示す部分分解斜視図である。
図3に示すように、圧力計20は、本体部21と、目盛板22と、回転軸23と、指針24と、固定部材25と、を有している。また、外枠27、及び外枠27に保持された透明板26が、目盛板22及び指針24を視認可能に本体部21の正面側に取り付けられる。
【0034】
本体部21は、弾性式の圧力測定手段であるブルドン管である。本体部21の内部には、計測対象となる流体の圧力を受けて、回転軸23を機械的に回転させる周知の回転機構が収容されている。本体部21の正面側には、目盛が印字された目盛板22が取り付けられている。目盛板22の中心から回転軸23が突出している。
回転軸23を中心に回転する指針24は、固定部材25によって回転軸23に対して固定されている。より詳細には、固定部材25の中心に形成された嵌合孔25aを、指針24を介して回転軸23に嵌合させることで、指針24が回転軸23に対して固定される。
【0035】
圧力計20のメンテナンス作業が行われる際には、本体部21に対して外枠27を回転させることによって、外枠27と透明板26が本体部21から取り外される。次に、後述する引き抜き工具30を用いて指針24が回転軸23から引き抜かれる。これにより、指針24の交換作業や本体部21に対するメンテナンス作業が可能となる。
【0036】
<指示値取得装置10>
次に、指示値取得装置10について説明する。
図2A及び
図2Bは、圧力計20と、圧力計20に取り付けられた状態の指示値取得装置10の外観を示している。
図2Aは正面図であり、
図2Bは背面図である。
図3に示すように、指示値取得装置10は、磁石11と、角度検知器12と、計測処理器14と、から主に構成されている。
【0037】
磁石11は、指針24の正面側に取り付けられる。磁石11は、環状体からなる磁石本体11aを有している。換言すると、磁石11は、内周面と外周面を有しており、中心には貫通孔11bが形成されている。磁石11の中心軸は、回転軸23の軸線上に位置している。磁石11は、強力な磁界を生成するネオジム磁石であるが、これに限定されない。磁石11は、ネオジム磁石以外の永久磁石であってもよく、サマリウムコバルト磁石(サマコバ磁石)やフェライト磁石であってもよい。
リング形状を有するネオジム磁石を採用することによって、磁石11を軽量化することができ、指針24の動きに影響を与えることなく、十分な追従性をもって回転することが可能となる。また、リング形状を有する磁石11の内側に形成された貫通孔11bは、後述する引き抜き工具30の固定軸31が貫通する。すなわち、貫通孔11bは、回転軸23の軸線上に延びる引き抜き方向Pに引き抜き工具30が貫通可能となるように形成されている。
【0038】
角度検知器12は、
図2A及び
図3に示すように、回転軸23の軸線に対して直交面を有する透明板26に取り付けられる。角度検知器12は、ケース体12aと、ケース体12aに収容された磁気センサ12bと、角度変換ユニット12cと、を有している(
図5参照)。ケース体12aは、略直方体形状を有する樹脂製の筐体である。ケース体12aは、透明板26に対して接着剤、又は両面テープによって固着することができる。
【0039】
図4に示すように、磁気センサ12bは、ケース体12aの先端部に収容されて、回転軸23の軸線上において磁石11と正対するように配置される。磁気センサ12bは、磁石11が生成する磁力及び磁界を検出する。磁気センサ12bは、トンネル磁気抵抗素子である。磁気センサ12bが磁石11と正対するように配置されるとともに、トンネル磁気抵抗素子を採用することによって、磁石11が生成する磁力及び磁界を高感度かつ高精度で検出することができる。
【0040】
図2A及び
図4に示すように、ケース体12aの先端部には、磁気センサ12bの収容位置を外部から確認するための位置マーカー12dが形成されている。位置マーカー12dが回転軸23の軸線上に位置するようにケース体12aを透明板26に対して固定することによって、ケース体12a内に収容された磁気センサ12bを磁石11と正対配置させることが可能となる。なお、位置マーカー12dの形状は、
図2Aに示す形状に限定されない。ケース体12aの外部から磁気センサ12bの収容位置を確認することができればよく、位置マーカー12dは十字形状を有していてもよい。これにより、磁気センサ12bの位置を容易に確認することが可能となる。
角度変換ユニット12cは、磁気センサ12bの検出値を角度信号に変換し、接続ケーブル13を介して計測処理器14に出力する。
【0041】
図2Bに示すように、計測処理器14は、圧力計20の本体部21の背面に固定され、接続ケーブル13を介して角度検知器12と電気的に接続している。計測処理器14は、ケース体14aを有し、ケース体14aの内部に空中線14bと、後述する計測ユニット141と、無線通信ユニット142と、電源ユニット143と、を収容している(
図5参照)。ケース体14aは、略直方体形状を有する樹脂製の筐体である。ケース体14aは、本体部21の背面に接着剤、又は両面テープによって接着することができるが、これに限定されない。
【0042】
空中線14bは、無線通信信号を送受信する。
図2A及び
図2Bに示すように、空中線14bは、本体部21と前後方向に重ならない位置に配置されている。これにより、空中線14bの送信利得、及び受信利得が低下することを抑制することができ、計測処理器14と中継器50との間に安定した無線通信チャンネルを確保することが可能となる。
【0043】
<計測処理器14の構成>
次に、計測処理器14の構成について説明する。
図5は、計測処理器14の構成を示している。計測処理器14は、計測ユニット141と、無線通信ユニット142と、電源ユニット143と、をその主な構成として有している。
計測ユニット141は、プロセッサと、揮発性メモリと、不揮発性メモリと、を有している。プロセッサが不揮発性メモリに記憶されたプログラムを実行することによって、計測ユニット141は、取得部141a、計測部141b、通信制御部141c、及び状態制御部141dとして機能する。
【0044】
取得部141aは、角度検知器12が出力する角度信号を取得し、圧力信号(計測値)に変換する。角度信号から圧力信号への変換は、予め設定された所定の関係式によって変換することができる。所定の関係式とは、例えば線形一次式である。また所定の関係式は、線形一次式によって得られる値に対して補正値を加算してもよい。取得部141aは、得られた圧力信号を計測部141bに出力する。取得部141aは、計測値取得部に相当する。
取得部141aは、磁気センサ12bが検出した磁力信号を取得し、磁力信号を圧力信号に変換してもよい。この場合、取得部141aは、ADC(アナログデジタル変化器)と、フィルタ回路と、を有していると好適である。
【0045】
計測部141bは、取得部141aが出力する圧力信号(計測値)の統計値を算出する。具体的には、計測部141bは、所定の計測期間における圧力信号の振幅レベルの平均値を算出するが、これに限定されない。計測部141bが出力する計測結果に基づいてプラントの状態を把握し、異常を検出することができればよく、平均値とともに最小値、最大値が算出されてもよい。
【0046】
また、計測部141bは、取得部141aが出力する圧力信号の周波数パラメータを算出してもよい。詳細には、所定の計測期間における平均値を算出し、圧力信号が平均値と交差する交差点(クロスポイント)の出現回数を計数することによって周波数パラメータを取得することができる。ここでクロスポイントとして、圧力信号が平均値より小さい値から平均値より大きい値へと変化する点と、平均値より大きい値から平均値より小さい値へと変化する点と、を取得する。そして計測部141bは、クロスポイントの総出現回数を2で割った値を、圧力信号の推定周波数として出力する。
このように、平均値に対するクロスポイントを取得することにより、FFT(Fast Fourier Transform)よりも少ない計算資源(プロセッサの処理能力、又は揮発性メモリの記憶容量)で圧力信号の周波数パラメータを得ることが可能となり、計測処理器14の消費電力の抑制が可能となる。
【0047】
通信制御部141cは、指示値取得装置10と監視装置60との間で行われる無線通信の通信制御を行う。詳細には、通信制御部141cは、指示値取得装置10から中継器50を介して監視装置60に対して送信されるアップリンク送信制御と、中継器50を介して監視装置60から送信した信号を受信するダウンリンク受信制御を行う。アップリンク送信とは、IoTエッジデバイスである指示値取得装置10が取得した計測値等を、監視装置60に対して送信するために行われる通信である。一方、ダウンリンク受信とは、指示値取得装置10に対して監視装置60が送信する設定パラメータ(設定値に相当する)を含む制御信号を受信するために行われる通信である。
【0048】
図6は、指示値取得装置10と監視装置60との間の通信タイミングを示している。
図6に示すように、指示値取得装置10と監視装置60との間の通信は、予め設定された所定の周期で訪れる通信フェーズにおいて、定期的に行われる。所定の周期は、例えば6時間(1日に4回)であるが、これに限定されない。所定の周期は、例えば12時間であってもよいし、24時間であってもよい。
【0049】
図6に示すように、指示値取得装置10と監視装置60との間の通信は、指示値取得装置10から監視装置60に対するアップリンク送信から始まる。アップリンク送信の後には、2回のダウンリンク受信が行われる。
通信制御部141cは、送信タイミング(以下、送信スロットと呼ぶ。)が到来すると、指示値取得装置10が取得した計測値、又は計測部141bが算出した統計値を、監視装置60に対してアップリンク送信するように後述する無線通信ユニット142を制御する。
図6における「Tx」は、送信スロット(第一送信タイミングに相当する)を示している。通信制御部141cは、アップリンク送信制御部に相当する。
【0050】
通信制御部141cは、送信スロットから所定時間(例えば1秒、及び2秒)経過後の受信タイミング(以下、受信スロットと呼ぶ。)に、中継器50を介して監視装置60からダウンリンク信号を受信可能な状態(受信可能状態に相当)に移行する。
図6における「Rx」は、受信スロット(第一受信タイミング)を示している。受信スロットは、送信スロット後に2回設定されている。通信制御部141cは、ダウンリンク受信制御部に相当する。
後述するように、通信制御部141cは、指示値取得装置10と監視装置60との間で通信が行われない休止フェーズにおいて、低消費電力で動作するように制御される。これにより、指示値取得装置10の消費電力の抑制が可能となり、省電力性が向上する。
【0051】
従来、指示値取得装置10から監視装置60に対してアップリンク送信が行われない休止フェーズにおいて、プラントの監視員は、プラントの状態を把握することができなかった。そのため、プラントの監視員は、プラントの状態に懸念を抱いた場合であっても、次の通信フェーズが訪れるまで待機しなければならず、早期にプラント内の状況を把握することを可能とする仕組みの実現が望まれていた。そこで、本実施形態における計測値監視システム1は、定期通信と異なるタイミングで指示値取得装置10から計測値を取得することを可能とするための仕組みが設けられた。これについて、
図7及び
図8を参照して説明する。
【0052】
図7は、監視装置60から指示値取得装置10に対してダウンリンク信号が送信された場合の通信タイミングを示している。
図7に示すように、通信制御部141cは、監視装置60からダウンリンク信号を受信すると、上述した定期的な通信タイミングと異なるタイミングに、通信が行われる。より詳細には、通信制御部141cは、定期的な受信スロットにおいてダウンリンク信号を受信すると、監視装置60に対して、次の定期的な通信タイミングの到来を待つことなく、計測値を複数回送信する。
図7における「tx」は、定期的な送信スロットと異なる第二送信スロット(第二送信タイミングに相当する)を示している。
【0053】
そして通信制御部141cは、第二送信スロットから所定時間(例えば1秒、及び2秒)経過後に、中継器50を介して監視装置60からダウンリンク信号を受信可能な状態(受信可能状態に相当)に移行する。
図7における「rx」は、定期的な受信スロットと異なる第二受信スロット(第二受信タイミングに相当する)を示している。
【0054】
後述するように、プラントの監視員は、プラントの状態に懸念を抱いた際に、監視装置60に対してダウンリンク信号の送信指示を入力することができる。監視装置60は、ダウンリンク信号の送信指示が入力されたと判定すると、指示値取得装置10に対してダウンリンク信号を送信する。具体的には、監視装置60は、指示値取得装置10に対して、通信周期の短縮を要求する制御信号、又は設定パラメータを送信することができる。これにより、次の定期通信タイミングの到来を待つことなく、最新の計測値を複数回、指示値取得装置10から受信することができる。そのため、プラントの監視者は、早期にプラントの状況を把握し、異常を検出することが可能となる。また、設定パラメータの変更のために必要な通信機会を獲得することが可能となる。
【0055】
図8は、指示値取得装置10が起動された後の通信タイミングを示している。
図8に示すように、通信制御部114cは、起動後の初期設定フェーズ(初期設定状態に相当)において、上述した定期的な通信タイミングと異なるタイミングで監視装置60に対して計測値を複数回送信する。
図8における「tx」は、定期的な送信スロットと異なる第三送信スロット(第三送信タイミングに相当する)を示している。
【0056】
そして通信制御部141cは、初期設定フェーズにおいて、第三送信スロットから所定時間(例えば1秒、及び2秒)経過後の受信タイミングに、中継器50を介して監視装置60からダウンリンク信号を受信可能な状態(受信可能状態に相当)に移行する。
図8における「rx」は、定期的な受信スロットと異なる第三受信スロット(第三受信タイミングに相当する)を示している。
【0057】
このように、初期設定フェーズにおいて、指示値取得装置10から監視装置60に対してアップリンク信号を複数回送信することによって、監視装置60から指示値取得装置10に対してダウンリンク信号を送信するタイミングを増加させることができる。これにより、初期設定時に必要な設定パラメータを送受信する機会を確保することが可能となる。
【0058】
図5に戻って、状態制御部141dは、計測処理器14を、第一の消費電力で動作する通信フェーズ(通常状態に相当)又は初期設定フェーズ(初期設定状態に相当)と、第一の消費電力より小さい第二の消費電力で動作する休止フェーズ(低消費電力状態に相当)と、の間で状態遷移するように制御する。計測処理器14は、通信フェーズ及び初期設定フェーズにおいて、監視装置60と無線通信を行う。そして計測処理器14は、休止フェーズにおいて、中継器50と無線通信を行わない。
【0059】
図9は、指示値取得装置10と監視装置60との間の通信タイミングと、状態遷移タイミングを示している。
図9に示すように、無線通信ユニット142は、通信フェーズが到来すると、上述した計測値の取得、及び統計値の算出を行い、監視装置60に向けて送信する。送信タイミングから所定時間が経過すると、無線通信ユニット142は、監視装置60からダウンリンク信号を受信可能な状態に移行する。
図9において、受信可能なタイミング(受信スロット)が2回示されているが、受信スロットは1回でもよい。
【0060】
休止フェーズにおいて、無線通信ユニット142は、監視装置60との間で無線通信を行わない。そのため状態制御部141dは、休止フェーズにおいて、無線通信ユニット142に対する電源供給を遮断する。これにより指示値取得装置10は、休止フェーズにおいて通信フェーズよりも低い消費電力で動作することが可能となる。
【0061】
無線通信ユニット142は、LoRaWAN(登録商標)規格に準拠した通信装置であって、監視装置60と双方向の無線通信を行うために用いられる無線通信回路である。無線通信ユニット142は、取得部141aが取得した計測値、又は計測部141bが算出した統計値を、中継器50を介して監視装置60に対して送信する。
また、無線通信ユニット142は、計測処理器14に対する設定パラメータを含む制御信号を、中継器50を介して監視装置60から受信する。設定パラメータには、定期通信の周期を含むことができる。
【0062】
以上のように、無線通信ユニット142は、LoRaWAN規格に準拠した通信装置であるとして説明したが、これに限定されない。無線通信ユニット142は、SIGFOX(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)、又はLTEに準拠した無線装置であってもよい。
【0063】
電源ユニット143は、上述した計測ユニット141及び無線通信ユニット142が必要とする電力の供給を行う。電源ユニット143は、一次電池であって、塩化チオニルリチウム電池である。電池容量の大きい塩化チオニルリチウム電池を採用することによって、電池の交換作業に伴う作業負担を軽減することが可能となる。ただし、上述した計測ユニット141及び無線通信ユニット142が必要とする電力を供給することができればよく、例えばアルカリ電池や二酸化マンガンリチウム電池を採用してもよい。電源ユニット143は、外部から給電することによって充電可能な二次電池を有していてもよい。
【0064】
<監視装置60の機能構成>
次に、監視装置60について説明する。
図10は、監視装置60の機能構成を示している。
図10に示すように、監視装置60は、監視データ出力部61と、操作受付部62と、異常判定部63と、通信制御部64と、通信ユニット65と、記憶部66と、を主な構成として有している。
監視装置60は、プロセッサと、揮発性メモリと、不揮発性メモリを有し、不揮発性メモリに格納されたプログラムを実行することによって監視データ出力部61、操作受付部62、異常判定部63、及び通信制御部64として機能する。
【0065】
監視データ出力部61は、後述する記憶部66に蓄積された監視データを、表示装置(不図示)又は通信回線NWを介して接続されたプラントの監視員が操作する情報処理端末に対して出力する。監視データは、上述した指示値取得装置10が出力する計測値、又はその統計値であってもよいし、計測値に対して所定の分析処理を施すことによって生成されたデータであってもよい。監視データ出力部61は、監視員による監視作業を支援するために、監視データを時系列データとして出力し、又は複数の監視データを比較可能に出力することができる。
【0066】
操作受付部62は、プラントの監視員による入力操作を受け付ける。具体的には、操作受付部62は、指示値取得装置10の設定パラメータの変更入力を受け付けることができる。設定パラメータには、上述した定期通信の通信周期が含まれる。後述する通信制御部64は、操作受付部62が設定パラメータの変更入力を受け付けた際に、指示値取得装置10の設定値を変更する必要があると判定し、指示値取得装置10にダウンリンク信号を送信する。
また、操作受付部62は、プラントの監視員が異常を発見した際に、監視データを記録し、又は外部に通知するために必要な入力操作を受け付けることができる。これにより、プラントに異常が発見された場合に、迅速に対応することが可能となる。
【0067】
異常判定部63は、監視データに基づいて、プラントの設備の異常の有無を判定する。詳細には、異常判定部63は、監視データを予め定められた所定の閾値と比較することによって、異常の有無を判定する。ただし、異常の判定方法は、閾値と比較する方式に限定されない。異常判定部63は、予め機械学習によって構築された異常判定モデルに監視データを入力することによって、異常の有無を推定することとしてもよい。また異常判定部63は、閾値を機械学習によって学習する閾値学習手段と、学習された閾値を動的に設定する閾値設定手段を有していてもよい。
【0068】
通信制御部64は、後述する通信ユニット65を制御することによって、指示値取得装置10が出力する計測値、又は上述した統計値を取得する。換言すると、通信制御部64は、指示値取得装置10が送信するアップリンク信号を受信するように制御する。また通信制御部64は、操作受付部62が受け付けた入力操作及び異常判定部63の判定結果に基づいて、指示値取得装置10にダウンリンク信号を送信するか否かを判定する。詳細には、通信制御部64は、操作受付部62が設定パラメータの変更入力を受け付けた場合、又は異常判定部63が異常有りと判定した場合に、指示値取得装置10の設定パラメータを変更する必要があると判定し、ダウンリンク信号の送信を行うと判定する。そして通信制御部64は、通信ユニット65を制御することによって、指示値取得装置10に対して設定パラメータ、又は制御信号を送信する。換言すると、通信制御部64は、指示値取得装置10に対してダウンリンク信号を送信する。通信制御部64は、アップリンク受信制御部、ダウンリンク送信判定部、及びダウンリンク送信制御部に相当する。
【0069】
通信ユニット65は、インターネット等の公衆に利用可能な通信回線NWを介して、中継器50との間で双方向通信を行うことができる通信インターフェース回路である。通信ユニット65は、中継器50を介して指示値取得装置10が出力する計測値又は統計値からなるアップリンク信号を受信する。また通信ユニット65は、中継器50を介して指示値取得装置10に対して設定パラメータからなるダウンリンク信号を送信する。
【0070】
記憶部66は、HDD(Hard Disk Drive)、あるいはSSD(Solid State Drive)等からなる不揮発性の補助記憶装置である。記憶部66は、指示値取得装置10が出力した計測値又は統計値を記憶するとともに、監視装置60のプロセッサが実行するプログラム等が格納されている。
【0071】
<通信制御処理>
次に、
図11を参照して、通信制御処理について説明する。
図11は、監視装置60によって実行される通信制御処理の流れを示している。
図11に示すように、最初に、監視装置60は、記憶部66に格納された監視データを取得して、監視装置60の表示部又は監視員が操作する情報処理端末に対して出力する(ステップS10)。
【0072】
次に、監視装置60は、アップリンク信号を受信したか否かを判定する(ステップS11)。IoTエッジデバイスである指示値取得装置10が送信する計測値等をアップリンク信号として受信したと判定されなかった場合(ステップS11:No)、監視装置60は、アップリンク信号を受信するまで待機する。
【0073】
一方、アップリンク信号を受信したと判定された場合(ステップS11:Yes)、監視装置60は、中継器50を介して指示値取得装置10に対してダウンリンク信号を送信するか否かを判定する(ステップS12)。詳細に説明すると、監視員が入力する設定パラメータの変更入力を受け付けた場合、又は異常判定部63によってプラントに異常が検出された場合に、ダウンリンク信号を送信すると判定する。ただし、これに限定することなく、監視装置60は、プラントの点検を目的としてダウンリンク信号を送信することとしてもよい。
【0074】
ダウンリンク信号を送信すると判定された場合(ステップS12:Yes)、監視装置60は、指示値取得装置10にダウンリンク信号を送信して(ステップS13)、通信制御処理を終了する。ダウンリンク信号は、例えば指示値取得装置10の設定パラメータを含む制御信号である。
一方、ダウンリンク信号を送信すると判定されなかった場合(ステップS12:No)、監視装置60は、指示値取得装置10にダウンリンク信号を送信することなく、通信制御処理を終了する。
【0075】
<引き抜き工具30>
次に、圧力計20のメンテナンスを行うために、圧力計20の回転軸23から指針24を引き抜く際に用いられる引き抜き工具30について、
図12、
図13A及び
図13Bを参照して説明する。
図12は、引き抜き工具30の斜視図を示している。
図13Aは、指針24を回転軸23から引き抜く前の状態を示している。
図13Bは、指針24を回転軸23から引き抜いた後の状態を示している。
図13A及び
図13Bにおいて、圧力計20は、プラントの配管から取り外されて横置きされた状態を示している。
【0076】
図12に示すように、引き抜き工具30は、引き抜き方向Pに延びる固定軸31と、固定軸31に対して引き抜き方向Pに変位可能な引き抜き部32と、から主に構成されている。
固定軸31は、長尺形状を有し、先端部31aと、螺合部31bと、操作部31cと、を有している。先端部31aは、固定軸31の一方の端部に位置し、後述するように圧力計20の回転軸23に当接する。先端部31aは、テーパー形状を有しており、先端に向かうとともに細径となる。先端部31aは、後述するように、固定部材25の嵌合孔25aに挿入可能な寸法を有している。
【0077】
螺合部31bは、先端部31aから引き抜き方向Pに延びて、先端部31aと操作部31cを接続している。螺合部31bの外周には、ねじ加工が施されており、後述する引き抜き部32に形成されたねじ孔32dと螺合可能な径寸法を有している。
【0078】
操作部31cは、先端部31aとは反対側の端部に位置している。操作部31cの外周面には、滑り止め効果を得るためのローレット加工が施されている。これにより、操作部31cを操作する際に操作部31cを指で確実に挟持して回転操作することが可能となる。操作部31cを回転操作することによって、固定軸31に対して引き抜き部32を引き抜き方向Pに変位させることができる。
【0079】
引き抜き部32は、リング形状を有し、切欠部32aと、切欠部32aの両側に位置する一対の引き抜き片32bと、一対の腕部32cと、ねじ孔32dと、を有している。切欠部32aは、引き抜き部32の下端部に形成されている。切欠部32aは、
図13Bに示すように、指針24を回転軸23に対して固定する固定部材25を嵌入することができる位置及び形状に形成されている。
【0080】
一対の引き抜き片32bは、切欠部32aの左右において、切欠部32aに隣接して設けられている。引き抜き片32bは、
図13A及び
図13Bに示すように、圧力計20の目盛板22と、指針24との間の隙間に進入可能な厚さ寸法を有し、指針24を回転軸23から引き抜く際に、指針24を下方から上方に向けて押圧する。
【0081】
一対の腕部32cは、一対の引き抜き片32bから左右に広がるように湾曲しながら引き抜き方向Pに延びて、切欠部32aと対向する位置において互いに接続している。腕部32cは、下方から上方に向かうにつれて肉厚となり、最も肉厚となる箇所にねじ孔32dが形成されている。
【0082】
ねじ孔32dは、引き抜き部32の引き抜き方向Pの端部に位置し、引き抜き部32を上下に貫通するように形成されている。ねじ孔32dには、上述した固定軸31が貫通される。ねじ孔32dの内面に形成されたねじ溝によって、引き抜き部32は、固定軸31に対して相対的に回転し、引き抜き方向Pに変位する。
【0083】
<指針24の引き抜き方法>
次に、指針24の引き抜き方法について、
図14Aから
図14Dを参照して説明する。
図14Aから
図14Dは、引き抜き工具30を用いて指針24を回転軸23から引き抜く手順を示している。
図14Aから
図14Dにおいて、圧力計20は、プラントの配管から取り外されて横置きされた状態を示している。
図14Aは、圧力計20の要部を拡大した側面図を示している。
図14Aに示すように、圧力計20の目盛板22の中心には、中心孔22aが形成されており、中心孔22aから回転軸23が突出している。指針24は、回転軸23に対して固定部材25を介して固定されて、回転軸23を中心に回転する。固定部材25には、指示値取得装置10の磁石11が固定されている。
【0084】
次に、
図14Bは、圧力計20に対して引き抜き工具30が取り付けられた状態を示している。すなわち、引き抜き工具30の切欠部32aに固定部材25を嵌入させるとともに、目盛板22と指針24との間に引き抜き片32bが位置している状態を示している。このとき、回転軸23の軸線方向、すなわち引き抜き方向Pに引き抜き工具30の固定軸31の長手方向が延びている。
【0085】
続いて、
図14Cは、操作部31cを回転操作することによって固定軸31が下降し、先端部31aが回転軸23の上端に当接した状態を示している。詳細に説明すると、
図14Bに示した状態から、一方の手で引き抜き部32の腕部32cを固定し、他方の手で操作部31cを回転操作することによって、先端部31aが引き抜き部32に対して下方に変位する。
ここで、磁石11は、リング形状を有しており、中心に貫通孔11bが形成されている。詳細には、磁石11の磁石本体11aには、引き抜き工具30が引き抜き方向Pに貫通する貫通孔11bが形成されている。したがって、固定軸31は、磁石11の貫通孔11b及び固定部材25の嵌合孔25aを貫通して下方に変位し、回転軸23に当接する。固定軸31は、先端部31aが回転軸23の上端に当接すると、それ以上、圧力計20に対して下方に変位することはできない。換言すると、圧力計20に対する固定軸31の引き抜き方向Pの位置が固定される。
【0086】
図14Dは、指針24が回転軸23から引き抜かれた状態を示している。詳細に説明すると、
図14Cに示した状態から、さらに操作部31cを回転操作することによって、引き抜き部32が、固定軸31に対して相対的に上方に変位する。このとき、引き抜き片32bは、指針24の下面を、下方から上方に向けて押し上げるように押圧する。これにより、指針24及び固定部材25は回転軸23から引き抜かれる。
以上により、操作部31cを回転操作することによって指針24を回転軸23から容易に引き抜くことが可能となり、作業員の負担が軽減されるとともに、指針24を強引に引き抜くことによる圧力計20の損傷を抑制することが可能となる。
【0087】
本発明の一実施形態に係る指示値取得装置10について説明してきたが、上述した実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0088】
上述した実施形態において、圧力計20に取り付けられた指示値取得装置10が圧力計20の指示値を計測し、計測結果を監視装置60に送信することとして説明したが、これに限定されない。プラント内の設備の状況を迅速に把握することによって異常を検出するための検出器であればよく、例えば、プラント内に設置された温度計や湿度計、振動計等から監視装置60に対して計測値が出力されることとしてもよい。
また計測装置は、プラントに設置される検出器に限定されない。例えば、住宅等の水道メータやガスメータとして用いられるスマートメータや、自動車等の交通手段に取り付けられるセンサであってもよい。
【符号の説明】
【0089】
1 計測値監視システム
10 指示値取得装置(計測装置)
11 磁石
11a 磁石本体(本体部)
11b 貫通孔
12 角度検知器
12a ケース体
12b 磁気センサ
12c 角度変換ユニット
12d 位置マーカー
13 接続ケーブル
14 計測処理器
14a ケース体
14b 空中線
141 計測ユニット
141a 取得部(計測値取得部)
141b 計測部
141c 通信制御部(アップリンク送信制御部、ダウンリンク受信制御部)
141d 状態制御部
142 無線通信ユニット
143 電源ユニット
20 圧力計
21 本体部
22 目盛板
22a 中心孔
23 回転軸
24 指針
25 固定部材
25a 嵌合孔
26 透明板
27 外枠
30 引き抜き工具
31 固定軸
31a 先端部
31b 螺合部
31c 操作部
32 引き抜き部
32a 切欠部
32b 引き抜き片
32c 腕部
32d ねじ孔
50 中継器
60 監視装置
61 監視データ出力部
62 操作受付部
63 異常判定部
64 通信制御部(アップリンク受信制御部、ダウンリンク送信制御部)
65 通信ユニット
66 記憶部
NW 通信回線
P 引き抜き方向