(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167696
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】羽根駆動装置及びこれを備えた撮像装置
(51)【国際特許分類】
G03B 9/08 20210101AFI20231116BHJP
【FI】
G03B9/08 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079064
(22)【出願日】2022-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】ニデックプレシジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【弁理士】
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】山口 康孝
【テーマコード(参考)】
2H081
【Fターム(参考)】
2H081AA19
2H081AA24
2H081AA31
2H081BB39
(57)【要約】
【課題】駆動軸に沿った方向に厚くなることを避けつつ羽根の停止時の跳ね返りを抑制することができる羽根駆動装置を提供する。
【解決手段】羽根駆動装置1は、開口Sが形成された地板10と、閉位置と開位置との間で移動可能な羽根21~24と、羽根21~24に連結され、駆動軸18を中心として回転することで羽根21~24を閉位置と開位置との間で移動させることが可能な回転駆動部材50と、回転駆動部材50の近傍で回転可能に構成される制動部材90と、制動部材90の外周面94Aに摺接して摩擦により制動部材90の回転を抑制するブレーキパッド100とを備える。回転駆動部材50は、開動作及び閉動作のうち少なくとも一方の動作の終了前に制動部材90に接触して制動部材90を押すように構成されるプッシャ54,55を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口が形成された地板と、
前記開口を閉塞する閉位置と前記開口を開放する開位置との間で移動可能な少なくとも1枚の羽根と、
前記少なくとも1枚の羽根に直接又は間接的に連結され、駆動軸を中心として第1の回転位置から第2の回転位置に回転することで前記少なくとも1枚の羽根を前記閉位置から前記開位置に移動させ、前記第2の回転位置から前記第1の回転位置に回転することで前記少なくとも1枚の羽根を前記開位置から前記閉位置に移動させることが可能な回転駆動部材と、
前記回転駆動部材の近傍で移動可能に構成される制動部材と、
前記制動部材の外周面に摺接して摩擦により前記制動部材の移動を抑制する摺接部材と
を備え、
前記回転駆動部材は、前記第1の回転位置から前記第2の回転位置に回転する開動作及び前記第2の回転位置から前記第1の回転位置に回転する閉動作のうち少なくとも一方の動作の終了前に前記制動部材に接触して前記制動部材を押すように構成される接触部を有する、
羽根駆動装置。
【請求項2】
前記回転駆動部材の前記接触部は、
前記開動作の終了前に前記制動部材を第1の方向に押す第1のプッシャと、
前記閉動作の終了前に前記制動部材を前記第1の方向とは反対の第2の方向に押す第2のプッシャと
を含む、請求項1に記載の羽根駆動装置。
【請求項3】
前記回転駆動部材の前記第1のプッシャは、前記開動作の終了時に、前記制動部材を第1の待機位置まで移動するように構成され、
前記回転駆動部材の前記第2のプッシャは、前記閉動作の終了前に前記第1の待機位置に位置する前記制動部材に接触するように構成される、
請求項2に記載の羽根駆動装置。
【請求項4】
前記回転駆動部材の前記第2のプッシャは、前記閉動作の終了時に、前記制動部材を第2の待機位置まで移動するように構成され、
前記回転駆動部材の前記第1のプッシャは、前記開動作の終了前に前記第2の待機位置に位置する前記制動部材に接触するように構成される、
請求項2に記載の羽根駆動装置。
【請求項5】
前記地板は、前記制動部材の移動範囲を規定する規制部を有し、
前記制動部材は、前記地板の前記規制部に係合可能なストッパ片を有する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の羽根駆動装置。
【請求項6】
前記摺接部材を前記制動部材の前記外周面に押圧する付勢部材をさらに備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の羽根駆動装置。
【請求項7】
前記摺接部材は、前記制動部材の前記外周面に向かって付勢されたバネ部材により構成される、請求項1から4のいずれか一項に記載の羽根駆動装置。
【請求項8】
請求項1から4のいずれか一項に記載の羽根駆動装置と、
前記羽根駆動装置を透過した光が結像する面に配置された撮像素子と
を備えた、撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、羽根駆動装置及びこれを備えた撮像装置に係り、特にデジタルカメラなどにおけるシャッタとして用いられる羽根駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラなどにおいては、駆動レバーを回転させることで、駆動レバーに連結された1つ以上のシャッタ羽根を移動させ、このシャッタ羽根により露光開口を開閉する羽根駆動機構が設けられることが多い。このような羽根駆動機構におけるシャッタ羽根はストッパに当接して停止するが、その際に跳ね返ってシャッタ羽根の一部が露光開口に進入するなどして撮影に悪影響を与えることがある。このようなシャッタ羽根の跳ね返りを抑制するために、駆動レバーに接触して駆動レバーを制動可能なブレーキ部材を駆動レバーと同軸に配置することも考えられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような従来の駆動レバーの制動機構においては、ブレーキ部材と地板との間に平座金が配置され、ブレーキ部材と駆動レバーの軸部との間にバネ座金が配置される。これによりブレーキ部材が軸方向に押圧され、ブレーキ部材がシャッタ羽根に押されて回転する際にブレーキ部材と平座金及びバネ座金との間に摩擦力が生じ、この摩擦力により駆動レバーが制動される。しかしながら、このような従来の制動機構においては、バネ座金、ブレーキ部材、及び平座金を駆動レバーと同軸上に軸方向に並べて配置する必要があるため、軸方向に沿った厚さがどうしても大きくなってしまい、カメラの薄型化を効果的に実現することが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、駆動軸に沿った方向に厚くなることを避けつつ羽根の停止時の跳ね返りを抑制することができる羽根駆動装置及びこれを備えた撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、駆動軸に沿った方向に厚くなることを避けつつ羽根の停止時の跳ね返りを抑制することができる羽根駆動装置が提供される。この羽根駆動装置は、開口が形成された地板と、上記開口を閉塞する閉位置と上記開口を開放する開位置との間で移動可能な少なくとも1枚の羽根と、上記少なくとも1枚の羽根に直接又は間接的に連結され、駆動軸を中心として第1の回転位置から第2の回転位置に回転することで上記少なくとも1枚の羽根を上記閉位置から上記開位置に移動させ、上記第2の回転位置から上記第1の回転位置に回転することで上記少なくとも1枚の羽根を上記開位置から上記閉位置に移動させることが可能な回転駆動部材と、上記回転駆動部材の近傍で移動可能に構成される制動部材と、上記制動部材の外周面に摺接して摩擦により上記制動部材の移動を抑制する摺接部材とを備える。上記回転駆動部材は、上記第1の回転位置から上記第2の回転位置に回転する開動作及び上記第2の回転位置から上記第1の回転位置に回転する閉動作のうち少なくとも一方の動作の終了前に上記制動部材に接触して上記制動部材を押すように構成される接触部を有する。
【0007】
本発明の第2の態様によれば、上記羽根駆動装置と、上記羽根駆動装置を透過した光が結像する面に配置された撮像素子とを備える撮像装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態における羽根駆動装置を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す羽根駆動装置における地板を示す正面図である。
【
図5A】
図5Aは、
図2に示す羽根駆動装置における羽根駆動レバーの正面図である。
【
図6】
図6は、
図2に示す羽根駆動装置におけるリンク部材の正面図である。
【
図7】
図7は、
図2に示す羽根駆動装置における制動部材の斜視図である。
【
図8】
図8は、
図2に示す羽根駆動装置におけるブレーキパッドの斜視図である。
【
図9A】
図9Aは、
図1に示す羽根駆動装置における羽根が閉位置にある状態を模式的に示す平面図である。
【
図9B】
図9Bは、
図1に示す羽根駆動装置における羽根が開位置にある状態を模式的に示す平面図である。
【
図10C】
図10Cは、回転駆動部材が
図9Bに示す第2の回転位置状態から第1の回転位置に至る直前の状態を模式的に示す正面図である。
【
図11】
図11は、本発明の他の実施形態における羽根駆動装置の制動機構を模式的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る羽根駆動装置及び撮像装置の実施形態について
図1から
図11を参照して詳細に説明する。
図1から
図11において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。また、
図1から
図11においては、各構成要素の縮尺や寸法が誇張されて示されている場合や一部の構成要素が省略されている場合がある。以下の説明では、特に言及がない場合には、「第1」や「第2」などの用語は、構成要素を互いに区別するために使用されているだけであり、特定の順位や順番を表すものではない。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態における羽根駆動装置1を示す斜視図、
図2は分解斜視図である。本実施形態における羽根駆動装置1は、カメラなどの光学機器に組み込まれるシャッタ装置であるものとして説明するが、これは例示に過ぎず、本発明に係る羽根駆動装置はこのようなシャッタ装置の用途に限られるものではない。
【0011】
図1及び
図2に示すように、本実施形態における羽根駆動装置1は、矩形状の開口(露出開口)Sが形成された地板10と、地板10とカバー(図示せず)との間に形成される空間に収容される4枚の羽根21~24と、羽根21~24に連結された羽根アーム31,32とを含んでいる。この羽根駆動装置1は、CCDやCMOSセンサなどの撮像素子(図示せず)を備えた撮像装置に組み込まれるものであり、+Z方向が被写体側である。被写体からの光は、地板10の開口Sを通過して、羽根駆動装置1の-Z方向側に配置された撮像素子に入射するようになっている。なお、カメラの構成によっては、-Z方向が被写体側となり、+Z方向が撮像素子側となることもある。
【0012】
羽根21~24のそれぞれは、全体としてX方向に延びる薄板状の部材であり、4枚の羽根21~24が-Z方向に順番に重ねられている。羽根21はピン41,42によりそれぞれ羽根アーム31,32と連結され、羽根22はピン43,44によりそれぞれ羽根アーム31,32と連結され、羽根23はピン45,46によりそれぞれ羽根アーム31,32と連結され、羽根24はピン47,48によりそれぞれ羽根アーム31,32と連結されている。
【0013】
羽根アーム31の端部には円形孔33が形成されており、この円形孔33から少し離れた位置には略矩形状のレバー連結孔34が形成されている。この羽根アーム31は、円形孔33の中心周りに回転可能に構成される。また、羽根アーム32の端部には、ピン35が挿通される円形孔36が形成されており、この円形孔36に挿通されたピン35は、地板10に形成されたピン孔(図示せず)に圧入される。これにより、羽根アーム32は、ピン35を中心として回転可能に構成される。
【0014】
このように、羽根21~24と羽根アーム31,32とによってリンク機構が構成されている。すなわち、羽根アーム31が円形孔33の中心周りに回転し、羽根アーム32がピン35を中心として回転すると、リンク機構によって羽根21~24が互いに重なる領域を変化させつつ、主としてY方向に移動するようになっている。
【0015】
図3は、地板10を示す正面図である。
図3に示すように、地板10は、中央に円形孔11が形成された略円筒状の軸部17を有している。この軸部17は、+Y方向に延びる爪部17Aを有している。
図2に示すように、この軸部17の円形孔11にはZ方向に延びる駆動軸18が挿入され固定される。また、地板10には、軸部17から離れた位置に円形孔12が形成されており、この円形孔12を中心とする円弧に沿って円弧溝13が形成されている。
【0016】
図1及び
図2に示すように、羽根駆動装置1は、電磁コイルユニット80と、電磁コイルユニット80により回転駆動される回転駆動部材50と、回転駆動部材50により回転される羽根駆動レバー60と、回転駆動部材50と羽根駆動レバー60とを連結するリンク部材70とを含んでいる。
【0017】
図4Aは、回転駆動部材50の正面図、
図4Bは背面図、
図4Cは右側面図である。
図4Aから
図4Cに示すように、回転駆動部材50は、駆動軸18が挿通される挿通孔51Aが形成された軸部51と、軸部51の+Z方向側の端部に固定される回転子52と、軸部51から半径方向外側に延びる腕部53と、軸部51から半径方向外側に延びる2つのプッシャ54,55とを有している。回転子52は、直径方向に異なる磁極52A,52Bに着磁された永久磁石から構成されている。例えば、磁極52AはS極、磁極52BはN極である。回転駆動部材50は、地板10の円形孔11に取り付けられる駆動軸18に回転可能に取り付けられる。
【0018】
図2に戻って、電磁コイルユニット80は、4つの金属製のヨーク81A,81B,82A,82Bと、2つのボビン83A,83Bと、それぞれのボビン83A,83Bに巻回された2つのコイル84とを含んでいる。コイル84は、図示しない制御部に接続されており、この制御部によってコイル84への通電が制御される。この電磁コイルユニット80と回転駆動部材50の回転子52とにより回転駆動部材50を駆動軸18周りに回転させるモータ(駆動部)が構成される。
【0019】
ヨーク81Aとヨーク81BはZ方向に重ねて配置され、ヨーク82Aとヨーク82BはZ方向に重ねて配置される。ヨーク81A,81Bとヨーク82A,82Bとは、X方向に対向するように配置されており、回転駆動部材50の回転子52の周囲を取り囲んでいる。ヨーク81A,81B,82A,82Bのそれぞれの端部は、ボビン83A,83Bの中空部に挿入されている。ボビン83Aの中空部では、ヨーク81Bとヨーク82AとがZ方向に重なるように配置され、ボビン83Bの中空部では、ヨーク81Aとヨーク82BとがZ方向に重なるように配置されている。
【0020】
図5Aは、羽根駆動レバー60の正面図、
図5Bは背面図、
図5Cは右側面図である。
図5Aから
図5Cに示すように、羽根駆動レバー60は、Z方向に延びる軸部61と、軸部61から湾曲して外側に延びる腕部62と、軸部61から湾曲して外側に延びる腕部63と、軸部61から直線状に延びる腕部64と、腕部64の端部から-Z方向に延びる駆動ピン65とを有している。
【0021】
羽根駆動レバー60の軸部61の-Z方向側の端部61Aは、地板10の円形孔12に回転可能に挿入され、さらに地板10から-Z方向に突出するようになっている。地板10から-Z方向に突出した羽根駆動レバー60の軸部61の端部61Aは、羽根アーム31の円形孔33に挿入される。また、羽根駆動レバー60の駆動ピン65は、地板10の円弧溝13を通って-Z方向に突出するように構成されており、この-Z方向に突出する駆動ピン65は羽根アーム31のレバー連結孔34に隙間なく嵌合されている。これにより、羽根駆動レバー60がその軸部61を中心として回転すると、駆動ピン65が地板10の円弧溝13内を移動し、羽根アーム31が円形孔33(羽根駆動レバー60の軸部61)を中心として回転するようになっている。なお、羽根駆動レバー60の腕部64は、地板10の円弧溝13の両側の終端部に当接可能となっている。
【0022】
図6は、リンク部材70の正面図である。
図6に示すように、リンク部材70の一端には円形孔71が形成され、他端には長孔72が形成されている。
図2に示すように、リンク部材70の円形孔71にはピン75が挿通され、このピン75は回転駆動部材50の腕部53の先端に形成された円形孔57(
図4A及び
図4B参照)に圧入される。これにより、回転駆動部材50とリンク部材70とはピン75を中心として回転可能に互いに連結される。
【0023】
また、羽根駆動レバー60の腕部62に形成された円形孔67(
図5A及び
図5B参照)にはピン76が挿入され、このピン76が羽根駆動レバー60から-Z方向に突出するようになっている。羽根駆動レバー60から-Z方向に突出したピン76は、リンク部材70の長孔72に挿入されており、長孔72の内部で移動できるようになっている。このように、羽根駆動レバー60とリンク部材70とはピン76を介して連結されている。
【0024】
図2に戻って、地板10の軸部17には軸部17の周囲で回転可能な制動部材90が配置されている。また、制動部材90に隣接してブレーキパッド100(摺接部材)が配置されている。地板10は、ブレーキパッド100の+Y方向側にバネ受け部14を有しており、このバネ受け部14とブレーキパッド100との間にはコイルバネ19(付勢部材)が圧縮された状態で装填されている。このコイルバネ19の付勢力によってブレーキパッド100が制動部材90に向かって押圧されている。
【0025】
図7は、制動部材90の斜視図である。
図7に示すように、制動部材90は、地板10の軸部17が挿入される楕円孔91が形成されたリング部92と、リング部92から外側に延出するストッパ片93と、リング部92よりもZ方向の厚さの大きいブレーキ片94とを有している。ブレーキ片94の外周面94Aは円筒面の一部により構成される。ブレーキ片94の一方の側部95は回転駆動部材50のプッシャ54(第1のプッシャ)と接触可能となっており、他方の側部96は回転駆動部材50のプッシャ55(第2のプッシャ)と接触可能となっている。
【0026】
図8は、ブレーキパッド100の斜視図である。
図8に示すように、ブレーキパッド100は、制動部材90のブレーキ片94の外周面94Aに摺接する摺接面101Aを有するパッド本体101と、コイルバネ19を受けるバネ受け部102とを有している。摺接面101Aは、ブレーキ片94の外周面94Aを構成する円筒面と同一径の円筒面の一部により構成される。
【0027】
制動部材90とブレーキパッド100とは、摺接する際に摩擦力が生じやすい材料の組み合わせから形成されることが好ましい。例えば、制動部材90及びブレーキパッド100の一方をアセタール、他方をナイロンにより形成することができる。
【0028】
羽根21~24は、
図9Aに示すように地板10の開口Sを閉塞する位置(以下、「閉位置」という)と
図9Bに示すように地板10の開口Sを開放する位置(以下、「開位置」という)との間で移動可能となっている。一般的に、カメラにおける羽根駆動装置の動作には、羽根が露光開口を閉塞している状態を初期状態とし、撮影のためにレリーズボタンが押されると、羽根が初期状態から直ちに作動するノーマリークローズ動作と、羽根が露光開口を開放している状態を初期状態とし、レリーズボタンが押された後、撮影の最終段階になってはじめて羽根が作動するノーマリーオープン動作とがある。本実施形態における羽根駆動装置1は、いずれの動作にも対応可能であるが、ここではノーマリークローズ動作を行う場合について説明する。
【0029】
ノーマリークローズ動作では、レリーズボタン(図示せず)が押されると、羽根21~24が
図9Aに示す閉位置から
図9Bに示す開位置に移動する。
図9Aに示す状態においては、羽根駆動レバー60は、反時計回りに最大限回転した位置にあり、羽根駆動レバー60の腕部64が地板10の円弧溝13の+Y方向側の終端部に当接している。このとき電磁コイルユニット80のコイル84には通電されていないが、回転駆動部材50の回転子52の2つの磁極52A,52Bと4つのヨーク81A,81B,82A,82Bにより形成される磁極との間で発生する磁気的な吸着力及び反発力によって、回転駆動部材50の回転子52に時計回りの回転力が作用するようになっている。このため、リンク部材70を介して羽根駆動レバー60に反時計回りの回転力が生じ、羽根駆動レバー60が
図9Aに示す位置に保持される。このときの回転駆動部材50の位置を「第1の回転位置」ということとする。
【0030】
図9Aに示す状態で撮影者がレリーズボタンを押すと、コイル84に通電され、例えばヨーク81A,81BにN極が生じ、ヨーク82A,82BにS極が生じる。この磁極の変化によって、回転駆動部材50の回転子52に反時計回りの回転力が生じ、回転駆動部材50が駆動軸18を中心として反時計回りに回転する。これに伴い、回転駆動部材50の腕部53に連結されたリンク部材70を介して羽根駆動レバー60が時計回りに回転する。羽根駆動レバー60が時計回りに回転すると、羽根駆動レバー60の駆動ピン65によって羽根アーム31が時計回りに回転し、上述のリンク機構により羽根21~24が-Y方向に移動する。最終的に羽根駆動レバー60の腕部64が地板10の円弧溝13の-Y方向側の終端部に当接することで、羽根駆動レバー60が停止し、羽根21~24は、地板10の開口Sを開放する開位置(
図9B)に移動する。
【0031】
ここで、
図9Bに示す状態では、回転駆動部材50の回転子52の2つの磁極52A,52Bと4つのヨーク81A,81B,82A,82Bにより形成される磁極との間で発生する磁気的な吸着力及び反発力によって、回転駆動部材50の回転子52に反時計回りの回転力が作用するようになっている。したがって、羽根21~24が
図9Bに示す開位置に移動した後は、コイル84への通電を停止したとしても、リンク部材70を介して羽根駆動レバー60に時計回りの回転力が生じ、羽根駆動レバー60が
図9Bに示す位置に保持される。このときの回転駆動部材50の位置を「第2の回転位置」ということとする。
【0032】
このように、羽根21~24が
図9Aに示す閉位置から
図9Bに示す開位置に移動する際に、回転駆動部材50が第1の回転位置から第2の回転位置に反時計回りに回転する(開動作)が、回転駆動部材50が第2の回転位置に至る直前で、
図10Aに示すように、回転駆動部材50のプッシャ54が制動部材90のブレーキ片94の側部95に接触するようになっている。この状態から回転駆動部材50がさらに反時計回りに回転すると、プッシャ54が制動部材90のブレーキ片94を反時計回りに押すことになる。ブレーキパッド100はコイルバネ19によって制動部材90のブレーキ片94に向けて押圧されているため、制動部材90のブレーキ片94の外周面94Aとブレーキパッド100の摺接面101Aとの間で摺接による摩擦力が生じ、制動部材90の回転、ひいては回転駆動部材50の回転が減速される。これにより、羽根21~24が停止する直前の速度を低減することができ、羽根21~24の停止時の跳ね返りを抑制することができる。回転駆動部材50は、最終的には羽根駆動レバー60の腕部64が上述したように地板10の円弧溝13の-Y方向側の終端部に当接するまで回転し、
図10Bに示す第2の回転位置に至る。このときの制動部材90の位置を「第1の待機位置」ということとする。
【0033】
上述のようにして羽根21~24が
図9Bに示す開位置に移動した後、撮像素子に蓄積されていた電荷が放出され、撮影のための電荷の蓄積が開始される。所定時間の経過後、制御回路からの信号によってコイル84に先に流した電流とは逆方向の電流が流され、例えばヨーク81A,81BにS極が生じ、ヨーク82A,82BにN極が生じる。この磁極の変化によって、回転駆動部材50の回転子52に時計回りの回転力が生じ、回転駆動部材50が駆動軸18を中心として時計回りに回転する。これに伴い、回転駆動部材50の腕部53に連結されたリンク部材70を介して羽根駆動レバー60が反時計回りに回転する。羽根駆動レバー60が反時計回りに回転すると、羽根駆動レバー60の駆動ピン65によって羽根アーム31が反時計回りに回転し、上述のリンク機構により羽根21~24が+Y方向に移動する。最終的に羽根駆動レバー60の腕部64が地板10の円弧溝13の+Y方向側の終端部に当接することで、羽根駆動レバー60が停止し、羽根21~24は、地板10の開口Sを閉塞する閉位置(
図9A)に移動する。
【0034】
このように、羽根21~24が
図9Bに示す開位置から
図9Aに示す閉位置に移動する際に、回転駆動部材50が第2の回転位置から第1の回転位置に時計回りに回転する(閉動作)が、回転駆動部材50が第1の回転位置に至る直前で、
図10Cに示すように、回転駆動部材50のプッシャ55が、(第1の待機位置に位置している)制動部材90のブレーキ片94の側部96に接触するようになっている。この状態から回転駆動部材50がさらに時計回りに回転すると、プッシャ55が制動部材90のブレーキ片94を時計回りに押すことになる。ブレーキパッド100はコイルバネ19によって制動部材90のブレーキ片94に向けて押圧されているため、制動部材90のブレーキ片94の外周面94Aとブレーキパッド100の摺接面101Aとの間で摺接による摩擦力が生じ、制動部材90の回転、ひいては回転駆動部材50の回転が減速される。これにより、羽根21~24が停止する直前の速度を低減することができ、羽根21~24の停止時の跳ね返りを抑制することができる。回転駆動部材50は、最終的には羽根駆動レバー60の腕部64が上述したように地板10の円弧溝13の+Y方向側の終端部に当接するまで回転し、
図10Dに示す第1の回転位置に至る。このときの制動部材90の位置を「第2の待機位置」ということとする。上述した回転駆動部材50の開動作においては、この第2の待機位置に位置している制動部材90のブレーキ片94の側部95に回転駆動部材50のプッシャ54が接触するようになっている(
図10A参照)。
【0035】
このように、本実施形態における回転駆動部材50のプッシャ54,55は、開動作の終了前及び閉動作の終了前に制動部材90のブレーキ片94に接触して制動部材90を押すように構成される接触部として機能する。このように、接触部としてのプッシャ54,55が回転駆動部材50の開動作の終了前及び閉動作の終了前に制動部材90のブレーキ片94に接触して制動部材90を押すため、制動部材90のブレーキ片94の外周面94Aとブレーキパッド100の摺接面101Aとの間で摺接による摩擦力が生じ、制動部材90の回転、ひいては回転駆動部材50の回転が減速される。これにより、羽根21~24が停止する前の速度を低減することができ、羽根21~24の停止時の跳ね返りを抑制することができる。また、制動部材90とブレーキパッド100とは回転駆動部材50の半径方向外側で摺接するものであるため、羽根駆動装置1が駆動軸18に沿った方向に厚くなることを避けることができる。
【0036】
また、本実施形態におけるプッシャ55は、回転駆動部材50のプッシャ54が接触可能な位置(第1の待機位置)に制動部材90を移動することができ、プッシャ54は、回転駆動部材50のプッシャ55が接触可能な位置(第2の待機位置)に制動部材90を移動することができる。このため、開動作の終了前及び閉動作の終了前の双方において羽根21~24の速度を低減することが可能である。
【0037】
ここで、
図2に示すように、地板10は、+Z方向に突出する規制突起15,16(規制部)を有している。これらの規制突起15,16は、制動部材90のストッパ片93の周方向に隣接した位置に配置されており、制動部材90のストッパ片93と係合可能となっている。
図10Dに示すように、規制突起15は制動部材90の時計回りの回転を規制し、
図10Bに示すように、規制突起16は制動部材90の反時計回りの回転を規制するように構成されており、規制突起15,16が制動部材90の回転範囲を規定している。このように、地板10の規制突起15,16により制動部材90が回転可能な範囲を規定することができ、制動部材90が意図しない位置に移動することによる動作の不具合を防ぐことができる。
【0038】
本実施形態においては、制動部材90を地板10の軸部17に取付可能とするために制動部材90の楕円孔91が地板10の軸部17の外径よりも大きくなっているが、制動部材90を地板10の軸部17に取り付けた後は、制動部材90はコイルバネ19によって-Y方向に押されるため、地板10の軸部17に設けられた爪部17Aが制動部材90のリング部92に係合する。したがって、制動部材90は地板10の軸部17から外れにくい。
【0039】
本実施形態における制動部材90は、地板10の軸部17周りに回転し、回転駆動部材50と同一軸周りに回転するように構成されているが、制動部材90は、回転駆動部材50と同軸に配置されている必要はなく、また回転駆動部材50の近傍で移動可能とされていれば、必ずしも軸周りに回転する必要もない。
【0040】
また、本実施形態においては、回転駆動部材50と羽根アーム31との間に羽根駆動レバー60及びリンク部材70が介在しているが、回転駆動部材50が直接羽根アーム31に連結されていてもよい。
【0041】
本実施形態では、回転駆動部材50を電磁コイルユニット80により駆動しているが、回転駆動部材50の駆動方法は電磁的なものに限られるものではなく、バネなどの付勢手段を用いて回転駆動部材50を駆動するように構成してもよい。
【0042】
本実施形態では、コイルバネ19によってブレーキパッド100を制動部材90のブレーキ片94の外周面94Aに押圧しているが、例えば、
図11に示すように、地板10のバネ受け210と制動部材90のブレーキ片94との間に板バネ220を撓ませた状態で配置し、板バネ220の摺接面220Aが制動部材90のブレーキ片94の外周面94Aに向かって付勢されるように構成してもよい。この場合には、
図2に示すバネ受け部14、コイルバネ19、及びブレーキパッド100を省略することができる。この板バネ220は、制動部材90が摺接する際に摩擦力が生じやすい材料で形成されていることが好ましい。
【0043】
以上述べたように、本発明の第1の態様によれば、駆動軸に沿った方向に厚くなることを避けつつ羽根の停止時の跳ね返りを抑制することができる羽根駆動装置が提供される。具体的には、本発明に係る羽根駆動装置は、以下のような構成を採用することができる。
【0044】
(構成1)
羽根駆動装置は、開口が形成された地板と、上記開口を閉塞する閉位置と上記開口を開放する開位置との間で移動可能な少なくとも1枚の羽根と、上記少なくとも1枚の羽根に直接又は間接的に連結され、駆動軸を中心として第1の回転位置から第2の回転位置に回転することで上記少なくとも1枚の羽根を上記閉位置から上記開位置に移動させ、上記第2の回転位置から上記第1の回転位置に回転することで上記少なくとも1枚の羽根を上記開位置から上記閉位置に移動させることが可能な回転駆動部材と、上記回転駆動部材の近傍で移動可能に構成される制動部材と、上記制動部材の外周面に摺接して摩擦により上記制動部材の移動を抑制する摺接部材とを備える。上記回転駆動部材は、上記第1の回転位置から上記第2の回転位置に回転する開動作及び上記第2の回転位置から上記第1の回転位置に回転する閉動作のうち少なくとも一方の動作の終了前に上記制動部材に接触して上記制動部材を押すように構成される接触部を有する。
【0045】
このような構成によれば、回転駆動部材の開動作及び閉動作のうち少なくとも一方の動作の終了前に回転駆動部材の接触部が制動部材に接触して制動部材を押すため、制動部材の外周面と摺接部材との間で摺接による摩擦力が生じ、制動部材の回転、ひいては回転駆動部材の回転が減速される。これにより、羽根が停止する前の速度を低減することができ、羽根の停止時の跳ね返りを抑制することができる。また、制動部材と摺接部材とは回転駆動部材の半径方向外側で摺接するため、羽根駆動装置が駆動軸に沿った方向に厚くなることを避けることができる。
【0046】
(構成2)
上記構成1において、上記回転駆動部材の上記接触部は、上記開動作の終了前に上記制動部材を第1の方向に押す第1のプッシャと、上記閉動作の終了前に上記制動部材を上記第1の方向とは反対の第2の方向に押す第2のプッシャとを含むことが好ましい。これらのプッシャによって回転駆動部材の開動作の終了前及び閉動作の終了前の双方において回転駆動部材の回転を減速することができる。
【0047】
(構成3)
上記構成2において、上記回転駆動部材の上記第1のプッシャは、上記開動作の終了時に、上記制動部材を第1の待機位置まで移動するように構成され、上記回転駆動部材の上記第2のプッシャは、上記閉動作の終了前に上記第1の待機位置に位置する上記制動部材に接触するように構成されていてもよい。このような構成によれば、回転駆動部材の第1のプッシャにより制動部材を回転駆動部材の第2のプッシャが接触可能な位置(第1の待機位置)に移動することができる。
【0048】
(構成4)
上記構成2又は3において、上記回転駆動部材の上記第2のプッシャは、上記閉動作の終了時に、上記制動部材を第2の待機位置まで移動するように構成され、上記回転駆動部材の上記第1のプッシャは、上記開動作の終了前に上記第2の待機位置に位置する上記制動部材に接触するように構成されていてもよい。このような構成によれば、回転駆動部材の第2のプッシャにより制動部材を回転駆動部材の第1のプッシャが接触可能な位置(第2の待機位置)に移動することができる。
【0049】
(構成5)
上記構成1から4のいずれかにおいて、上記地板は、上記制動部材の移動範囲を規定する規制部を有し、上記制動部材は、上記地板の上記規制部に係合可能なストッパ片を有することが好ましい。このような構成によれば、地板の規制部により制動部材が移動可能な範囲を規定することができ、制動部材が意図しない位置に移動することによる動作の不具合を防ぐことができる。
【0050】
(構成6)
上記構成1から5のいずれかにおいて、上記羽根駆動装置は、上記摺接部材を上記制動部材の上記外周面に押圧する付勢部材をさらに備えていてもよい。
【0051】
(構成7)
上記構成1から5のいずれかにおいて、上記摺接部材は、上記制動部材の上記外周面に向かって付勢されたバネ部材により構成されていてもよい。
【0052】
本発明の第2の態様によれば、上記構成1から7のいずれか1つに記載の羽根駆動装置と、上記羽根駆動装置を透過した光が結像する面に配置された撮像素子とを備える撮像装置が提供される。
【0053】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0054】
1 羽根駆動装置
10 地板
13 円弧溝
14 バネ受け部
15,16 規制突起(規制部)
17 軸部
18 駆動軸
19 コイルバネ(付勢部材)
21~24 羽根
31,32 羽根アーム
50 回転駆動部材
51 軸部
52 回転子
53 腕部
54 (第1の)プッシャ
55 (第2の)プッシャ
60 羽根駆動レバー
61 軸部
62~64 腕部
65 駆動ピン
70 リンク部材
80 電磁コイルユニット
81A,81B,82A,82B ヨーク
83A,83B ボビン
84 コイル
90 制動部材
93 ストッパ片
94 ブレーキ片
94A 外周面
100 ブレーキパッド(摺接部材)
220 板バネ
S 開口