(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167700
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】電流計測装置、回路遮断器及び分電盤
(51)【国際特許分類】
H02H 3/08 20060101AFI20231116BHJP
H01H 83/02 20060101ALI20231116BHJP
H02B 1/42 20060101ALI20231116BHJP
H01H 73/36 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
H02H3/08 D
H01H83/02 H
H02B1/42
H01H73/36 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079072
(22)【出願日】2022-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 博
(72)【発明者】
【氏名】塩川 明実
(72)【発明者】
【氏名】松田 啓史
(72)【発明者】
【氏名】守 信一
【テーマコード(参考)】
5G004
5G030
5G211
【Fターム(参考)】
5G004AA03
5G004AB01
5G004AB03
5G004BA01
5G004BA04
5G004CA04
5G004DA03
5G004DC06
5G004DC07
5G004DC14
5G030XX15
5G030XX20
5G211DD01
5G211DD14
5G211DD26
5G211DD27
(57)【要約】
【課題】電流計測部の信頼性を確保することができる電流計測装置を提供する。
【解決手段】電流計測装置40は、複数の電流計測部27a~27cと、自己診断判定部31cと、を備える。複数の電流計測部27a~27cは、交流電流が流れる一組の電路を構成する複数の電路7a~7cの各々を流れる電流を計測する。自己診断判定部31cは、複数の電流計測部27a~27cの各々の計測値に基づいて、複数の電流計測部27a~27cが正常であるか否かの自己診断判定を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電流が流れる一組の電路を構成する複数の電路の各々を流れる電流を計測する複数の電流計測部と、
前記複数の電流計測部の各々の計測値に基づいて、前記複数の電流計測部が正常であるか否かの自己診断判定を行う自己診断判定部と、を備える、
電流計測装置。
【請求項2】
前記自己診断判定部は、前記複数の電流計測部が同時刻に測定した計測値の和がゼロであるか否かに応じて、前記自己診断判定を行う、
請求項1に記載の電流計測装置。
【請求項3】
前記複数の電路は、第1電圧線と、前記第1電圧線とは逆相の第2電圧線と、接地された中性線とで構成され、
前記第1電圧線を流れる電流の前記計測値を第1計測値と定義し、
前記第2電圧線を流れる電流の前記計測値を第2計測値と定義し、
前記中性線を流れる電流の前記計測値を第3計測値と定義し、
前記自己診断判定部は、前記第1計測値と前記第2計測値と前記第3計測値との和がゼロであるか否かに応じて、前記自己診断判定を行う、
請求項2に記載の電流計測装置。
【請求項4】
前記複数の電路は、第1電圧線と、前記第1電圧線とは逆相の第2電圧線と、接地された中性線とで構成され、
前記第1電圧線を流れる電流の前記計測値の所定の時間帯の実効値を第1実効値と定義し、
前記第2電圧線を流れる電流の前記計測値の前記所定の時間帯の実効値を第2実効値と定義し、
前記中性線を流れる電流の前記計測値の前記所定の時間帯の実効値を第3実効値と定義し、
前記自己診断判定部は、前記第1実効値と前記第2実効値との差分の絶対値と前記第3実効値とが等しいか否かに応じて前記自己診断判定を行う、
請求項1に記載の電流計測装置。
【請求項5】
前記複数の電路は、第1電圧線と、前記第1電圧線とは逆相の第2電圧線と、接地された中性線とで構成され、
前記第1電圧線を流れる電流の前記計測値の所定の時間帯の積分値を第1積分値と定義し、
前記第2電圧線を流れる電流の前記計測値の前記所定の時間帯の積分値を第2積分値と定義し、
前記中性線を流れる電流の前記計測値の前記所定の時間帯の積分値を第3積分値と定義し、
前記自己診断判定部は、前記第1積分値と前記第2積分値との差分の絶対値と前記第3積分値とが等しいか否かに応じて前記自己診断判定を行う、
請求項1に記載の電流計測装置。
【請求項6】
前記複数の電路の各々に流れる電流の不平衡を計測する零相変流器と、
前記零相変流器の計測値に基づいて漏電が発生しているか否かを判定する漏電判定部と、を更に備え、
前記自己診断判定部は、漏電が発生していると前記漏電判定部が判定する場合は、前記自己診断判定の判定結果を破棄する、
請求項1~5のいずれか1項に記載の電流計測装置。
【請求項7】
前記複数の電流計測部は、基板と、基板にプリントされたコイルとを有する、
請求項1~5のいずれか1項に記載の電流計測装置。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか1項に記載の電流計測装置を備える回路遮断器であって、
交流電源から1つ以上の負荷に交流電力を供給するための一組の電路を構成する複数の電路を開閉する複数の接点と、
前記複数の電路を流れる電流を計測する前記複数の電流計測部を備える前記電流計測装置と、
前記複数の電流計測部の各々の計測値に基づいて、前記複数の電路において過電流が発生したか否かを判定する過電流判定部と、
前記過電流判定部の判定結果に基づいて、駆動部を制御することで前記複数の接点を開極させる駆動制御部と、を備える、
回路遮断器。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか1項に記載の回路遮断器と、
前記回路遮断器を保持するキャビネットと、
を備える、
分電盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電流計測装置、回路遮断器及び分電盤に関する。より詳細には、本開示は、交流電流を計測する電流計測装置、この電流計測装置を備える回路遮断器、及び、この回路遮断器を備える分電盤に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の回路遮断器は、接点と、開閉機構と、引き外し装置と、を備える。上記接点は、交流電源から負荷に電力を供給する電路に設けられており、上記電路を開閉する。上記開閉機構は、上記引き外し装置からの制御に応じて上記接点を開閉駆動する。上記引き外し装置は、上記電路に過電流等の異常電流が発生した場合に、上記開閉機構を介して上記接点を開極する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような回路遮断器において、上記引き外し装置の代わりに、上記電路を流れる電流を計測する電流センサ(電流計測部)を用いる構成が検討されている。しかし、上記電流センサは、上記引き外し装置よりも複雑な構成であるが、上記引き外し装置と同程度の信頼性を確保する必要がある。
【0005】
本開示は、上記事由に鑑みたものであり、その目的は、電流計測部の信頼性を確保することができる電流計測装置、上記電流計測装置を備える回路遮断器、及び上記回路遮断器を備える分電盤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一の態様の電流計測装置は、複数の電流計測部と、自己診断判定部と、を備える。前記複数の電流計測部は、交流電流が流れる一組の電路を構成する複数の電路の各々を流れる電流を計測する。前記自己診断判定部は、前記複数の電流計測部の各々の計測値に基づいて、前記複数の電流計測部が正常であるか否かの自己診断判定を行う。
【0007】
本開示の一の態様の回路遮断器は、前記電流計測装置を備える回路遮断器である。前記回路遮断器は、複数の接点と、前記電流計測装置と、過電流判定部と、駆動制御部と、を備える。前記複数の接点は、交流電源から1つ以上の負荷に交流電力を供給するための一組の電路を構成する複数の電路を開閉する。前記電流計測装置は、前記複数の電路を流れる電流を計測する前記複数の電流計測部を備える。前記過電流判定部は、前記複数の電流計測部の各々の計測値に基づいて、前記複数の電路において過電流が発生したか否かを判定する。前記駆動制御部は、前記過電流判定部の判定結果に基づいて、駆動部を制御することで前記複数の接点を開閉させる。
【0008】
本開示の一の態様の分電盤は、前記回路遮断器と、前記回路遮断器を保持するキャビネットと、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る電流計測装置、回路遮断器及び分電盤は、電流計測部の信頼性を確保することができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係る回路遮断器の概略構成図である。
【
図2】
図2は、同上の回路遮断器を備えた分電盤の概略構成図である。
【
図4】
図4は、同上の回路遮断器の一部を分解した斜視図である。
【
図5】
図5は、単相3線式の電路に流れる電流の電流波形の時間変化を示す電流波形図である。
【
図6】
図6は、同上の回路遮断器の制御基板の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1)概要
本実施形態の電流計測装置40、回路遮断器20及び分電盤1について、
図1及び
図2を用いて説明する。以下の説明では、電流計測装置40は、回路遮断器20に備えられており、回路遮断器20は、主幹ブレーカ2として分電盤1に備えられている場合を想定する。
【0012】
電流計測装置40は、自己診断機能を有する電流計測装置である。より詳細には、
図1に示すように、電流計測装置40は、複数(例えば3つ)の電流計測部27a~27cと、自己診断判定部31cとを備える。複数の電流計測部27a~27bは、交流電流が流れる一組の電路を構成する複数の電路7a~7cの各々を流れる電流を計測する。自己診断判定部31cは、複数の電流計測部27a~27cの各々の計測値に基づいて、複数の電流計測部27a~27cが正常であるか否かの自己診断判定を行う。この構成により、複数の電流計測部27a~27cの信頼性を確保できる。より詳細には、自己診断判定部31cは、例えば、複数の電流計測部27a~27cが同時刻に測定した計測値の和がゼロであるか否かに応じて、自己診断判定を行う。この構成により、簡単な判定原理で自己診断判定を行うことができる。
【0013】
回路遮断器20は、
図1に示すように、交流電源P1(例えば系統電源)からの交流電力を建物内の1つ以上の負荷B1に分配するための分電盤1に設けられている主幹ブレーカ2である。回路遮断器20は、複数の電路7a~7cに過電流が流れると、その過電流を検出して、複数の電路7a~7cを遮断して負荷B1への電力供給を停止する。
【0014】
回路遮断器20は、複数の接点C1と、電流計測装置40と、過電流判定部31bと、駆動制御部31dとを備える。複数の接点C1は、複数の電路7a~7cを開閉する。電流計測装置40は、上述の通り、複数の電流計測部27a~27cと、自己診断判定部31cとを備える。過電流判定部31bは、複数の電流計測部27a~27cの各々の計測値に基づいて、複数の電路7a~7cにおいて過電流が発生したか否かを判定する。駆動制御部31dは、過電流判定部31bの判定結果に基づいて、駆動部26を介して複数の接点C1を開閉させる。この構成により、回路遮断器20として、電流計測装置40の作用効果を有する回路遮断器を提供できる。
【0015】
分電盤1は、
図2に示すように、回路遮断器20(主幹ブレーカ2)と、回路遮断器20を保持するキャビネット10と、を備える。この構成により、分電盤1として、回路遮断器20の作用効果を有する分電盤を提供できる。
【0016】
(2)詳細構成
以下、本実施形態の電流計測装置40、回路遮断器20及び分電盤1について、
図1~
図6を用いてより詳細に説明する。以下の説明では、特に断りがない限り、
図2、
図3に示す仮想的な矢印の方向によって、電流計測装置40、回路遮断器20及び分電盤1の前後上下左右を規定する。ただし、これらの方向の規定は、回路遮断器20及び分電盤1の使用態様を限定する趣旨ではない。
【0017】
(2.1)分電盤
図2に示すように、分電盤1は、主幹ブレーカ2(回路遮断器20)と、複数の分岐ブレーカ3と、これらを収容するキャビネット10と、を備える。
【0018】
本実施形態では、分電盤1は、建物の一例として戸建住宅に設置される場合を例示するが、この例に限らない。分電盤1は、設置可能な施設であれば、例えば集合住宅の各住戸、事務所、店舗、工場、及び病院等の施設に設置されてもよい。
【0019】
分電盤1は、交流電源P1(例えば系統電源)からの交流電力を受電し、受電した交流電力を建物内の1以上の負荷B1に分配する。その際、交流電源P1からの交流電力の配電方式は、柱上変圧器T1で単相3線式の配電方式に変換される。このため、分電盤1は、単相3線の電路7a~7bを介して交流電源P1からの交流電力を受電する。また、交流電源P1からの交流電力の配電方式は、分電盤1内で上記単相3線式から2線式に変換される。これにより、分電盤1から各負荷B1への電力供給は、2線式の電路11a,11bによって行われる。すなわち本実施形態では、上記の単相3線式の電路7a~7cから、複数組の2線式の電路11a,11bが分岐されており、これら複数の2線式の電路11a,11bによって、分電盤1から1つ以上の負荷B1への電力供給が行われる。
【0020】
なお、電路7a~7cはそれぞれ、L1相電路7a(第1電圧線)、L2相電路7b(第2電圧線)及びN相電路7c(中性線)である。L1相電路7a及びL2相電路7bには、互いに逆相の電流が流れる。N相電路7cは、接地されている。本実施形態では、L1相電路7aは、後述の引き込み線8a、導電バー9a及び接続線24aを含む。L2相電路7bは、後述の引き込み線8b、導電バー9b及び接続線24bを含む。N相電路8cは、後述の引き込み線8c、導電バー9c及び接続線24cを含む。
【0021】
また、負荷B1は、例えば、照明器具、空調機器、テレビ受像器、給湯設備等の機器、又は壁スイッチ等の配線器具である。
【0022】
主幹ブレーカ2は、キャビネット10の内部に配置されている。主幹ブレーカ2は、上記の単相3線式の電路7a~7cの途中に接続されている。主幹ブレーカ2は、一次側端子21a~21cと、二次側端子22a~22cとを備える。本実施形態の分電盤1では配電方式として単相3線式を想定しているので、主幹ブレーカ2の一次側端子21a~21cには、交流電源P1側の単相3線式の引き込み線8a~8cが電気的に接続されている。また、主幹ブレーカ2の二次側端子22a~22cには、導電バー9a~9cが接続されている。
【0023】
主幹ブレーカ2の詳細については、「(2.2)主幹ブレーカ及び電流計測装置」の欄で説明する。
【0024】
図2に示すように、複数の分岐ブレーカ3は、上記の複数組の2線式の電路11a,11bの途中に接続されている。複数の分岐ブレーカ3はそれぞれ、それが接続される電路11a,11bに異常電流(過電流又は漏電電流)が流れると、その異常電流を検出して、その電路11a,11bを遮断して負荷B1への電力供給を停止する。
【0025】
複数の分岐ブレーカ3は、導電バー9a~9cの上側と下側とに分かれて、それぞれ複数個ずつ左右方向に並ぶように配置されている。各分岐ブレーカ3は、分岐ブレーカ3には100V用と200V用がある。100V用の分岐ブレーカ3は、複数組の2線式の電路11a,11bのうち、L1相導電バー9a及びL2相導電バー9bのうちの一方と、N相導電バー9cとに接続された電路11a,11bの途中に接続されている。200V用の分岐ブレーカ3は、複数組の2線式の電路11a,11bのうち、L1相導電バー9aとL2相導電バー9bとに接続された電路11a,11bの途中に接続されている。
【0026】
(2.2)主幹ブレーカ及び電流計測装置
次に、本実施形態の主幹ブレーカ2(回路遮断器20)及び電流計測装置40について、
図1、
図3~
図5を参照して説明する。
【0027】
図1、
図3及び
図4に示すように、主幹ブレーカ2は、複数の一次側端子21a~21cと、複数の二次側端子22a~22cと、複数の接点機構23a~23cと、複数の接続線24a~24cと、操作レバー25と、駆動部26と、複数の電流計測部27a~27aと、零相変流器28と、報知部29と、電源回路30と、処理部31と、制御基板32と、電源基板33と、これらを収容するケース34とを備える。
【0028】
本実施形態では、主幹ブレーカ2の上記構成要素のうち、少なくとも、複数の電流計測部27a~27c、及び、処理部31の後述の自己診断判定部31cは、電流計測装置40を構成する。すなわち、電流計測装置40は、主幹ブレーカ2の上記構成要素のうち、少なくとも、複数の電流計測部27a~27cと、処理部31の後述の自己診断判定部31cとを備える。
【0029】
図3及び
図4に示すように、ケース34は、合成樹脂から中空の直方体状に形成されている。ケース34は、ボディ34aとカバー34bとを備える。ボディ34aは、前面が開口した直方体形の箱体である。カバー34bは、後面が開口した直方体状の箱体(例えば底浅の箱体)であり、ボディ34aの前面開口を覆うようにボディ34aに結合される。
【0030】
ケース34は、第1端子取付部34cと、第2端子取付部34dと、レバー挿通孔34eと、複数の報知用孔34fと、を備える。
【0031】
第1端子取付部34cは、複数の一次側端子21a~21cが取り付けられる部分であり、ケース34の上部において中央から左端に渡って形成されている。
【0032】
第2端子取付部34dは、複数の二次側端子22a~22cが取り付けられる部分であり、ケース34の上端部の右端において上方に突出するように設けられている。
【0033】
レバー挿通孔34eは、操作レバー25が配置される部分であり、例えば矩形状の孔である。レバー挿通孔34eは、例えば、ケース34の前壁(すなわちカバー34bの前壁)において第1端子取付部34cの下側でかつ左右方向の中央に設けられている。
【0034】
複数の報知用孔34fは、各種情報(過電流・漏電の発生など)を報知するための複数の発光部291(
図6参照)が配置される部分であり、ケース34の前壁(すなわちカバー34bの前壁)において、レバー挿通孔34eの左側に設けられている。
【0035】
複数(例えば3つ)の一次側端子21a~21cの各々は、端子板211及び端子ねじを備えたねじ付き端子である。複数の一次側端子21a~21cは、第1端子取付部34cの前面に、左右方向に並んで設けられている。複数の一次側端子21a~21cには、交流電源P1側からの単相3線式の引き込み線8a~8cが電気的に接続される。具体的には、左側の一次側端子21aに単相3線式のL1相引き込み線8aが接続され、右側の一次側端子21bにL2相引き込み線8bが接続され、中央の一次側端子21cにN相引き込み線8cが接続される。
【0036】
複数(例えば3つ)の二次側端子22a~22cは、第2端子取付部34dの右側面から突出するように配置されている。複数の二次側端子22a~22cには、それぞれ導電バー9a~9cが、端子ねじを用いて接続される。具体的には、上側の二次側端子22aにはL1相導電バー9aが接続され、下側の二次側端子22bにはL2相導電バー9bが接続され、中央の二次側端子22cにはN相導電バー9cが接続される。
【0037】
複数の一次側端子21a~21cと複数の二次側端子22a~22cとは、1対1に対応している。対応する一次側端子21a~21cと二次側端子22a~22cとは、対応する接続線24a~24cによって互いに接続されている(
図1)。各接続線24a~24cには、接点機構23a~23cが接続されている(
図1)。
【0038】
複数の接点機構23a~23cは、複数の接続線24a~24cと1対1に対応しており、対応する接続線24a~24cを導通及び遮断する(
図1)。各接点機構23a~23cは、固定接点231と、可動接点232とを備える。可動接点232は、閉極位置と開極位置との間で移動可能である。閉極位置は、可動接点232が固定接点231と接触する位置である。開極位置は、可動接点が固定接点231から離間する位置である。接点機構23a~23cは、可動接点232が閉極位置に位置するとき、対応する接続線24a~24cを導通し、可動接点232が開極位置に位置するとき、対応する接続線24a~24cを遮断する。可動接点232と固定接点231とで、主幹ブレーカ2(回路遮断器20)の接点C1が構成されている。つまり、接続線24a~24c(すなわち電路7a~7c)には、接点C1が接続されている。
【0039】
操作レバー25は、合成樹脂の成型品からなる。操作レバー25は、レバー挿通孔34eを通してケース34から露出するように配置されている(
図3)。操作レバー25は、その下端を中心に上下方向に回転可能である。操作レバー25は、閉位置と開位置との間で回転可能である。閉位置は、操作レバー25がレバー挿通孔34eの開口面と面一となる位置である。開位置は、操作レバー25がレバー挿通孔34eから突出する位置である。操作レバー25は、所定のバネによって、閉位置から開位置に向かう向きに付勢されている。
【0040】
駆動部26は、処理部31からの制御信号に応じて、複数の接点機構23a~23cを制御することで複数の接点C1を閉極状態から開極させる(
図1)。これにより、接続線24a~24cが導通状態から遮断される。
【0041】
より詳細には、駆動部26は、開閉機構261と、電磁釈放装置262とを備える(
図1)。
【0042】
開閉機構261は、接点C1の閉じた状態では、可動接点232を、所定のバネの付勢力によって閉極位置から開極位置に向かう向きに付勢して、ラッチしている。開閉機構261は、電磁釈放装置262によってラッチが解除されると、上記所定のバネの付勢力よって、可動接点232を閉極位置から開極位置に移動させることで、接点C1を開ける。これにより接続線24a~24cが遮断される。このとき、操作レバー25は、閉位置から開位置に回転する。開閉機構261は、操作レバー25への操作によって、操作レバー25が開位置から閉位置へ移動すると、複数の可動接点232を開極位置から閉極位置へ移動させて、接点C1を閉じる。これにより、接続線24a~24cが導通される。
【0043】
電磁釈放装置262は、コイルを含む電磁石装置と、上記コイルに流れる励磁電流による電磁力によって動かされるプランジャと、を備える。電磁釈放装置262は、処理部31からの制御信号に応じて、上記コイルに励磁電流を流すことでプランジャを動かして開閉機構261のラッチを解除する。これにより、開閉機構261によって、複数の接点C1が閉極状態から開極されて、接続線24a~24cが遮断される。
【0044】
複数の電流計測部27a~27cは、複数の接続線24a~24cと1対1に対応しており、対応する接続線24a~24c(すなわち対応する電路7a~7c)に配置されており、対応する接続線24a~24cを流れる電流の電流値を計測する(
図1)。複数の電流計測部27a~27cは、対応する接続線24a~24cにおいて、例えば、接点C1と二次側端子22a~22cとの間に配置されている。
【0045】
複数の電流計測部27a~27cは、例えばロゴスキーコイル型の電流センサである。より詳細には、複数の電流計測部27a~27cは、コイル271を有する(
図6)。コイル271は、計測対象の接続線24a~24c(すなわち電路7a~7c)の周囲に沿って円形状に配置されたコイル(例えば空芯コイル)である。電流計測部27a~27cでは、測定対象の接続線24a~24cを流れる電流に応じた電圧がコイル271の両端に発生し、この電圧が計測信号としてコイル271から処理部31に出力される。処理部31は、複数の電流計測部27a~27cからの計測信号に基づいて過電流を検出すると、駆動部26を介して複数の接点C1を閉極状態から開極させる。これにより、接続線24a~24cが遮断される。
【0046】
零相変流器28は、各接続線24a~24c(すなわち各電路7a~7c)に流れる各電流の間の不均衡を検出することで、各接続線24a~24cが漏電しているか否かを検出する(
図1)。なお、上記の「各電流の間の不均衡」とは、同時刻の各電流の和がゼロにならないことである。
【0047】
零相変流器28は、環状鉄心(例えばトロイダルコア)と、二次巻線とを備える。環状鉄心の中央孔には、複数の接続線24a~24c(すなわち複数の電路7a~7c)が一次巻線として貫通している。二次巻線は、環状鉄心に巻回されており、複数の接続線24a~24cを流れる各電流の間に不均衡が発生すると、その不均衡に応じた電圧を計測信号として処理部31に出力する。処理部31は、零相変流器28からの計測信号に基づいて漏電を検出すると、駆動部26を介して複数の接点C1を閉極状態から開極させる。これにより、接続線24a~24cが遮断される。
【0048】
報知部29は、処理部31が各種異常(例えば漏電、過電流、及び電流計測部27a~27cの異常)を検出したときに、その異常を検出したことを周囲の人に報知する。
【0049】
より詳細には、報知部29は、複数の発光部291と、音出力部292とを備える(
図1)。
【0050】
複数の発光部291は、例えば上記各種異常と1対1に対応しており、対応する異常の発生を処理部31が検出すると、例えば、発光することで、その異常の発生を報知する。複数の発光部291は、例えばLED(Light Emitting Diode)等の発光源である。複数の発光部291は、電路7a~7cでの漏電の発生を報知する発光部と、電路7a~7cでの過電流の発生を報知する発光部と、複数の電流計測部27a~27cの異常(すなわち流計測部27a~27cが正常でないこと)を報知する発光部とを含む。複数の発光部291は、例えば、発光することで異常の発生を報知し、発光しないことで異常が発生していないことを報知する。複数の発光部291は、ケース34の複数の報知用孔34f(
図3)と1対1に対応しており、対応する報知用孔34fから前方に露出している。
【0051】
音出力部292は、例えばブザー装置であり、上記各種異常の発生を処理部31が検出すると、ブザー音を出力することで、上記各種異常の発生を周囲の人に報知する。なお、音出力部292は、「過電流が発生しました」等の音声によって上記各種異常の発生を個別に報知してもよい。
【0052】
電源回路30は、複数の接続線24a~24cのうちの2つの接続線(例えば接続線24a,24c)から受電する電圧に基づいて、主幹ブレーカ2(回路遮断器20)の電源電圧を生成する。そして電源回路30は、生成した電源電圧を、処理部31、報知部29及び駆動部26などに供給する。
【0053】
処理部31は、複数の電流計測部27a~27c及び零相変流器28の各々の計測信号に基づいて上記各種異常(例えば漏電、過電流、及び電流計測部27a~27cの異常)の検出を行う。そして処理部31は、上記各種異常を検出すると、複数の接点C1を閉極状態から開極することで複数の接続線24a~24cを遮断する。これにより、交流電源P1から負荷B1への電力供給が遮断される。
【0054】
処理部31は、漏電判定部31aと、過電流判定部31bと、自己診断判定部31cと、報知制御部31eと、駆動制御部31dとを備える。
【0055】
処理部31は、例えばCPU等の演算装置によって構成されている。より詳細には、処理部31は、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するコンピュータシステムを主構成とする。処理部31では、1以上のプロセッサがメモリに記録されているプログラムを実行することで、処理部31の各機能(漏電判定部31a、過電流判定部31b、自己診断判定部31c、報知制御部31e及び駆動制御部31d)が実現される。上記プログラムは、メモリに予め記録されていてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通して提供されてもよく、メモリカード等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0056】
過電流判定部31bは、複数の電流計測部27a~27cの各々の計測値に基づいて、複数の接続線24a~24c(すなわち複数の電路7a~7c)に過電流が発生したか否かの判定(過電流判定)を行う。過電流判定部31bは、例えば、過電流判定を定期的に行う。
【0057】
より詳細には、過電流判定部31bは、複数の電流計測部27a~27cからの計測信号(アナログ値)から計測値(デジタル値)を求める。そして、過電流判定部31bは、過電流判定として、複数の電流計測部27a~27cの各々の計測値(すなわち複数の接続線24a~24cを流れる電流の電流値)が所定閾値以上であるか否かの判定を行う。過電流判定部31bは、過電流判定の判定結果に基づいて、駆動部26を制御することで複数の接点C1の開閉を制御する。
【0058】
すなわち過電流判定部31bは、複数の電流計測部27a~27cの各々の計測値のうちの少なくとも1つの計測値が所定閾値以上である場合は、過電流が発生したと判定する。そして、この場合は、過電流判定部31bは、駆動部26を制御することで複数の接点C1を閉極状態から開極させる。他方、過電流判定部31bは、複数の電流計測部27a~27cの計測部の全てが所定閾値未満である場合は、過電流は発生していないと判定する。そして、この場合は、過電流判定部31bは、駆動部26を制御することで複数の接点C1を閉極状態を維持させる。
【0059】
漏電判定部31aは、零相変流器28の計測値に基づいて、複数の接続線24a~24c(すなわち複数の電路7a~7c)を流れる各電流に不平衡が発生したか否かに応じて、複数の接続線24a~24cを流れる電流が漏電しているか否かの判定(漏電判定)を行う。漏電判定部31aは、例えば、漏電判定を定期的に行う。
【0060】
より詳細には、漏電判定部31aは、零相変流器28の計測信号(アナログ値)から計測値(デジタル値)を求める。そして、漏電判定部31aは、漏電判定として、零相変流器28の計測値がゼロであるかの判定を行う。なお、上記「零相変流器28の計測値がゼロである」とは、計測値が厳密にゼロである場合に限定されず、計測値が実質的にゼロと見なせる一定範囲内に含まれる場合も含む。
【0061】
漏電判定部31aは、漏電判定の判定結果に基づいて、駆動部26を制御することで複数の接点C1の開閉を制御する。より詳細には、漏電判定部31aは、零相変流器28の計測値がゼロである場合は、複数の接続線24a~24cを流れる各電流に不平衡が発生した(すなわち漏電が発生した)と判定する。そして、この場合は、漏電判定部31aは、駆動部26を制御することで複数の接点C1を閉極状態から開極させる。他方、漏電判定部31aは、零相変流器28の計測値がゼロでない場合は、複数の接続線24a~24cを流れる各電流に不平衡は発生していない(すなわち漏電は発生していない)と判定する。そして、この場合は、漏電判定部31aは、駆動部26を制御することで複数の接点C1を閉極状態を維持させる。
【0062】
自己診断判定部31cは、複数の電流計測部27a~27cの各々の計測値に基づいて、複数の電流計測部27a~27cが正常であるか否かの判定(自己診断判定)を行う。自己診断判定部31cは、複数の電流計測部27a~27cが同時刻に測定した計測値(すなわち同時刻の瞬時値)の和がゼロであるか否かに応じて、自己診断判定を行う。
【0063】
具体的には、電流計測部27aが所定の時刻t1に計測した計測値(すなわちL1相電路7aを流れる電流Iaの上記所定の時刻t1での計測値)を、第1計測値Ia(t1)と定義する。電流計測部27bが上記所定の時刻t1で計測した計測値(すなわちL2相電路7bを流れる電流Ibの上記所定の時刻t1での計測値)を、第2計測値Ib(t1)と定義する。電流計測部27cが上記所定の時刻t1で計測した計測値(すなわちN相電路7cを流れる電流Icの上記所定の時刻t1での計測値)を、第3計測値Ic(t1)と定義する。
【0064】
この場合、自己診断判定部31cは、第1計測値Ia(t1)と第2計測値Ib(t1)と第3計測値Ic(t1)との和がゼロであるか否か(すなわち下記の式1が成立するか否か)に応じて、自己診断判定を行う。
【0065】
Ia(t1)+Ib(t1)+Ic(t1)=0…式1
すなわち自己診断判定部31cは、同時刻に計測した上記3つの計測値の和がゼロである場合(すなわち式1が成立する場合)は、複数の電流計測部27a~27cは正常であると判定する。他方、自己診断判定部31cは、同時刻に計測した上記3つの計測値の和がゼロでない場合(すなわち式1が成立しない場合)は、複数の電流計測部27a~27cは正常でない(すなわち複数の電流計測部27a~27cのうちの少なくとも1つは異常である)と判定する。
【0066】
なお、上記「第1計測値Ia(t1)と第2計測値Ib(t1)と第3計測値Ic(t1)との和がゼロである」とは、上記和が厳密にゼロである場合に限定されず、上記和が実質的にゼロである場合(すなわち上記和の絶対値が実質的にゼロと見なせる所定値以下の値である場合)も含む。
【0067】
すなわち、交流電源P1からの交流電力の配電方式が単相3線式の場合は、3つの電路7a~7cを流れる各電流Ia~Icの同時刻(例えばt1)の電流値の和は常にゼロであるという特性(すなわち式1が成立するという特性)がある(
図5)。自己診断判定部31cは、この特性を利用して、同時刻に計測した上記3つの計測値の和がゼロであるか否かに応じて、複数の電流計測部27a~27cが正常であるか否かの自己診断判定を行っている。
【0068】
自己診断判定部31cは、漏電判定部31aの判定結果に応じて、自己診断判定の判定結果を破棄する。より詳細には、自己診断判定部31cは、複数の電路7a~7cで漏電が発生していないと漏電判定部31aが判定した場合は、自己診断判定の判定結果を有効とする。他方、自己診断判定部31cは、複数の電路7a~7cで漏電が発生していると漏電判定部31aが判定した場合は、自己診断判定の判定結果を破棄する。
【0069】
つまり、複数の電路7a~7cで漏電が発生していない場合は、上記特性(すなわち上記式1)が成立するため、上記特性を利用する自己診断判定を利用することができる。他方、複数の電路7a~7cで漏電が発生している場合は、上記特性が成立しないため、上記特性を利用する自己診断判定を利用することができない。このため、自己診断判定部31cは、複数の電路7a~7cで漏電が発生していると漏電判定部31aが判定した場合は、自己診断判定の判定結果を破棄する。
【0070】
なお、複数の電路7a~7cで漏電が発生している場合は、下記の式2が成立するため、上記の式1は成立しない。
【0071】
Ia(t1)+Ib(t1)+Ic(t1)+Ie(t1)=0…式2
ここで、Ia(t1)~Ic(t1)は、上記同様に所定の時刻t1での第1~第3計測値である。Ie(t1)は、同時刻t1での漏電電流である。すなわち、複数の電路7a~7cで漏電が発生している場合は、同時刻t1の第1~第3計測値Ia(t1)~Ic(t1)と漏電電流Ie(t1)との和がゼロになる。
【0072】
自己診断判定部31cは、自己診断判定を定期的に行う。又は、自己診断判定部31cは、過電流判定部31bが過電流判定を行う前後に行ってもよい。
【0073】
報知制御部31eは、各種判定部(過電流判定部31b、漏電判定部31a及び自己診断判定部31c)の判定結果に基づいて、報知部29を制御することで上記各種判定部の判定結果を周囲の人に報知する。より詳細には、報知制御部31eは、過電流が発生したと過電流判定部31bが判定した場合は、対応する発光部291を発光させかつ音出力部292からブザー音を一定時間出力させる。他方、報知制御部31eは、過電流が発生していないと過電流判定部31bが判定した場合は、対応する発光部291を発光させずかつ音出力部292からブザー音を出力させない。
【0074】
また、報知制御部31eは、漏電が発生したと漏電判定部31aが判定した場合は、対応する発光部291を発光させかつ音出力部292からブザー音を一定時間出力させる。他方、報知制御部31eは、漏電が発生していないと漏電判定部31aが判定した場合は、対応する発光部291を発光させずかつ音出力部292からブザー音を出力させない。
【0075】
また、報知制御部31eは、複数の電流計測部27a~27cが正常でないと自己診断判定部31cが判定した場合は、対応する発光部291を発光させかつ音出力部292からブザー音を一定時間出力させる。他方、報知制御部31eは、複数の電流計測部27a~27cが正常であると自己診断判定部31cが判定した場合は、対応する発光部291を発光させずかつ音出力部292からブザー音を出力させない。
【0076】
駆動制御部31dは、過電流判定部31b及び漏電判定部31aの各々の判定結果に基づいて、駆動部26を制御することで複数の接点C1を開閉する。より詳細には、駆動制御部31dは、過電流が発生したと過電流判定部31bが判定した場合、又は、漏電が発生したと漏電判定部31aが判定した場合は、駆動部26を制御することで複数の接点C1を閉極状態から開極させる。これにより、接続線24a~24cが遮断されて、交流電源P1から各負荷B1への電力供給が停止される。他方、駆動制御部31dは、過電流が発生していないと過電流判定部31bが判定した場合、かつ、漏電が発生していないと漏電判定部31aが判定した場合は、駆動部26を制御することで複数の接点C1の閉極状態を維持させる。これにより、接続線24a~24cが導通されて、交流電源P1から各負荷B1への電力供給が維持される。
【0077】
制御基板32は、処理部31、複数の電流計測部27a~27c、零相変流器28、複数の発光部291、及び音出力部292などが実装される回路基板である(
図6)。制御基板32は、複数(例えば4つ)の挿通孔32a~32dを有する。制御基板32の前側主面には、例えば、処理部31、複数の電流計測部27a~27c、複数の発光部291、及び音出力部292などが配置されている。制御基板32の後側主面には、例えば、零相変流器28などが配置されている。
【0078】
3つの挿通孔32a~32cは、3つの電流計測部27a~27cを構成する。3つの挿通孔32a~32cは、3つの接続線24a~24cと1対1に対応し、対応する接続線24a~24cが挿入される孔である。制御基板32における各挿通孔32a~32cの周縁部の全周に渡って、電流計測部27a~27cのコイル271が配置されている。これにより、接続線24a~24cが挿通孔32a~32cに挿入されることで、電流計測部27a~27cのコイル271が接続線24a~24cの周囲に配置される。コイル271は、例えば、制御基板32にプリントされて形成されている。
【0079】
挿通孔32dは、3つの接続線24a~24cがまとめて挿入される孔である。制御基板32の後側主面における挿通孔32dの周縁部には、零相変流器28が配置されている。挿通孔32dと零相変流器28の中央孔とは、互いに繋がっている。これにより、3つの接続線24a~24cがまとめて挿通孔32dに挿入されることで、3つの接続線24a~24cがまとめて零相変流器28の中央孔に挿入される。
【0080】
本実施形態では、3つの接続線24a~24cは、制御基板32の前側主面に配置されている。3つの接続線24a~24cの各々の一端は、対応する挿通孔32a~32cを通って制御基板32の前側から後側へと配索されて、対応する接点C1を介して対応する一次側端子21a~21cに接続されている。3つの接続線24a~24cの各々の他端は、まとめて挿通孔32dを通って制御基板32の前側から後側へと配索されて、対応する二次側端子22a~22cに接続されている。
【0081】
電源基板33は、電源回路30などが実装される基板である。電源基板33は、制御基板32の後側に配置されてボディ34a内に収容される(
図4)。
【0082】
(3)動作説明
図1に基づいて、本実施形態の回路遮断器20の動作を説明する。
【0083】
回路遮断器20は、複数の接続線24a~24cを流れる電流が定格値(例えば、定格感度電流)以下の場合、複数の接点C1を閉じて、複数の接続線24a~24cに電流が流れることを許容する。これにより、交流電源P1から各負荷B1に交流電力が供給される。
【0084】
回路遮断器20では、複数の接続線24a~24cに過電流が流れると、電流計測部27a~27cがその過電流を計測し、処理部31(過電流判定部31b)がその計測値に基づいて過電流が発生していると判定する。そして、処理部31(駆動制御部31d)は、その判定結果に応じて、駆動部26を制御することで複数の接点C1を閉極状態から開極させる。これにより、回路遮断器20では、複数の接続線24a~24cに過電流が流れ続けることが抑制される。このとき、開閉機構261によって操作レバー25が閉位置から開位置に回転させられる。また、処理部31(報知制御部31e)は、報知部29を制御することで過電流の発生を周囲の人に報知する。過電流の発生の原因が解決した後に操作レバー25が開位置から閉位置に戻されることで、複数の接点C1が開極状態から閉極される。
【0085】
また、回路遮断器20では、漏電の発生によって複数の接続線24a~24cを流れる電流に不平衡が生じると、零相変流器28がその不平衡を計測し、処理部31(漏電判定部31a)がその計測値に基づいて漏電が発生していると判定する。そして、処理部31(駆動制御部31d)は、その判定結果に応じて、駆動部26を制御することで複数の接点C1を閉極状態から開極させる。これにより、回路遮断器20では、複数の接続線24a~24cに漏電電流が流れ続けることが抑制される。このとき、開閉機構261によって操作レバー25が閉位置から開位置に回転させられる。また、処理部31(報知制御部31e)は、報知部29を制御することで漏電が発生したことを周囲の人に報知する。漏電の発生の原因が解決した後に操作レバー25が開位置から閉位置に戻されることで、複数の接点C1が開極状態から閉極される。
【0086】
また、回路遮断器20では、処理部31(自己診断判定部31c)は、複数の電流計測部27a~27cの各々の計測値に基づいて、複数の電流計測部27a~27cが正常であるか否かの自己診断判定を、例えば定期的に行っている。より詳細には、自己診断判定部31cは、自己診断判定として、複数の電流計測部27a~27cにおける同時刻の計測値の和がゼロであるか否かに応じて、複数の電流計測部27a~27cが正常であるか否かの判定を、例えば定期的に行っている。そして、自己診断判定部31cは、複数の電流計測部27a~27cにおける同時刻の計測値の和がゼロである場合は、複数の電流計測部27a~27cは正常であると判定する。他方、自己診断判定部31cは、複数の電流計測部27a~27cにおける同時刻の計測値の和がゼロでない場合は、複数の電流計測部27a~27cは正常でないと判定する。
【0087】
また、自己診断判定部31cは、自己診断判定の判定結果を出したときに、漏電が発生していないと漏電判定部31aが判定している場合は、自己診断判定の判定結果を有効とする。また、自己診断判定部31cは、自己診断判定の判定結果を出したときに、漏電が発生していると漏電判定部31aが判定している場合は、自己診断判定の判定結果を破棄する。
【0088】
そして、処理部31(報知制御部31e)は、複数の電流計測部27a~27cが正常でないと自己診断判定部31cが判定しかつその判定結果が有効である場合は、報知部29を制御することで複数の電流計測部27a~27cが正常でないことを周囲の人に報知する。他方、処理部31(報知制御部31e)は、複数の電流計測部27a~27cが正常であると自己診断判定部31cが判定しかつその判定結果が有効である場合は、報知制御部31eは、その判定結果を報知しない。すなわち、複数の電流計測部27a~27cが正常でない場合だけ、その自己診断判定の判定結果が報知部29から報知される。なお、複数の電流計測部27a~27cが正常でない場合だけなく、複数の電流計測部27a~27cが正常である場合も、自己診断判定の判定結果が報知部29から報知されてもよい。
【0089】
このように、複数の電流計測部27a~27cが正常でないときは、その事が周囲の人に速やかに報知されるため、複数の電流計測部27a~27cの信頼性を確保することができる。この結果、複数の電流計測部27a~27cの計測値に基づいて判定される過電流判定部31bの判定結果の信頼性も確保できる。
【0090】
(4)主要な効果
本実施形態に係る電流計測装置40は、複数の電流計測部27a~27cと、自己診断判定部31cとを備える。複数の電流計測部27a~27cは、交流電流が流れる一組の電路を構成する複数の電路7a~7cの各々を流れる電流を計測する。自己診断判定部31cは、複数の電流計測部27a~27cが正常であるか否かの自己診断判定を行う。この構成によれば、自己診断判定部31cによって複数の電流計測部27a~27cの信頼性を確保できる。
【0091】
また、本実施形態に係る回路遮断器20は、電流計測装置40を備える回路遮断器である。回路遮断器20は、複数の接点C1と、電流計測装置40と、過電流判定部31bと、駆動制御部31dとを備える。複数の接点C1は、交流電源P1から1つ以上の負荷B1に交流電力を供給するための一組の電路を構成する複数の電路7a~7cを開閉する。電流計測装置40は、複数の電路7a~7cを流れる電流を計測する複数の電流計測部27a~27cを備える。過電流判定部31bは、複数の電流計測部27a~27cの各々の計測値に基づいて、複数の電路7a~7cにおいて過電流が発生したか否かを判定する。駆動制御部31dは、過電流判定部31bの判定結果に基づいて、駆動部26を介して複数の接点C1を開閉させる。この構成によれば、回路遮断器20として、上記の電流計測装置40の作用効果を有する回路遮断器を提供できる。
【0092】
また、本実施形態に係る分電盤1は、回路遮断器20と、回路遮断器20を保持するキャビネット10とを備える。この構成によれは、分電盤1として、回路遮断器20の作用効果を有する分電盤を提供できる。
【0093】
(5)変形例
上述の実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上述の実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下、上述の実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例及び上記実施形態は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0094】
(5.1)変形例1
上記の実施形態では、交流電力の配電方式として単相3線式を例示するが、三相4線式、三相3線式、単相2線式であってもよい。これらの場合も、各線に対応する各電路に流れる電流の同時刻の電流値(計測値)の和はゼロになるという特性が成立する。このため、上記の実施形態の場合と同様に、複数の電路を流れる電流を計測する複数の電流計測部の各々の同時刻の計測値の和がゼロであるか否かに応じて、複数の電流計測部が正常であるか否かの自己診断判定を行うことができる。
【0095】
(5.2)変形例2
上記の実施形態では、自己診断判定部31cは、複数の電流計測部27a~27cにおける同時刻の計測値(すなわち同時刻の瞬時値)を利用して自己診断判定を行う。これに対し、変形例2では、自己診断判定部31cは、複数の電流計測部27a~27cにおける計測値の同じ時間帯の実効値を利用して、自己診断判定を行う。なお、上記実効値とは、計測値の二乗の時間平均値(例えば1周期分の時間平均値)の平方根である。
【0096】
より詳細には、変形例2の自己診断判定部31cは、複数の電流計測部27a~27cの各々から計測信号を取得する。そして、自己診断判定部31cは、複数の電流計測部27a~27cの各々の計測信号(アナログ値)から計測値(デジタル値)を求め、求めた計測値に基づいて、複数の電流計測部27a~27cにおける計測値の同じ時間帯Δt1の実効値を計算する。ここで、L1相電路7aを流れる電流の上記計測値の所定の時間帯Δt1の上記実効値を第1実効値Ja(Δt1)と定義する。L2相電路7bを流れる電流の上記計測値の上記所定の時間帯Δt1の上記実効値を第2実効値Jb(Δt1)と定義する。N相電路7cを流れる電流の上記計測値の上記所定の時間帯Δt1の上記実効値を第3実効値Jc(Δt1)と定義する。なお、変形例2でも、上記実施形態と同様に、交流電力の配電方式は単相3線式であることを想定する。
【0097】
このとき、自己診断判定部31cは、自己診断判定として、第1実効値Ja(Δt1)と第2実効値Jb(Δt1)との差分の絶対値と第3実効値Jc(Δt1)とが等しいか否か(すなわち下記式3が成立するか否か)に応じて、複数の電流計測部27a~27cが正常であるか否かの判定を行う。
【0098】
|Ja(Δt1)-Jb(Δt1)|=Jc(Δt1)…式3
なお、式3は、実施形態の式1において、計測値Ia(t1)~Ic(t1)を実効値Ja(Δt1)~Jc(Δt1)に置換した式と実質的に同じである。
【0099】
より詳細には、自己診断判定部31cは、第1実効値Ja(Δt1)と第2実効値Jb(Δt1)との差分の絶対値と第3実効値Jc(Δt1)とが等しい場合(すなわち式3が成立する場合)は、複数の電流計測部27a~27cは正常であると判定する。他方、自己診断判定部31cは、第1実効値Ja(Δt1)と第2実効値Jb(Δt1)との差分の絶対値と第3実効値Jc(Δt1)とが等しくない場合(すなわち式3が成立しない場合)は、複数の電流計測部27a~27cは正常でないと判定する。
【0100】
なお、上記の「第1実効値Ja(Δt1)と第2実効値Jb(Δt1)との差分の絶対値と第3実効値Jc(Δt1)とが等しい」とは、厳密に等しい場合に限定されず、実質的に等しいと見なせる程度の誤差を含んでもよい。
【0101】
例えば、第1実効値Ja(Δt1)=60Arms、第2実効値Jb(Δt1)=100Arms、第3実効値Jc(Δt1)=40Armsである場合は、|Ja(Δt1)-Jb(Δt1)|=40Arms=Jc(Δt1)となる。このため、この場合は、自己診断判定部31cは、複数の電流計測部27a~27cは正常であると判定する。
【0102】
変形例2によれば、自己診断判定において、複数の電流計測部27a~27cにおける計測値の同じ時間帯の実効値を利用する。この場合、第1~第3実効値の各々の時間帯が多少ずれていても、自己診断判定を正確に行うことができる。このため、実施形態1の場合(すなわち同時刻の計測値を利用して自己診断判定を行う場合)と比べて、自己診断判定部31cにおいて、第1~第3実効値の各々の時間帯を合わせるための演算負担を軽減できる。
【0103】
(5.3)変形例3
上記の実施形態では、自己診断判定部31cは、複数の電流計測部27a~27cにおける同時刻の計測値(すなわち同時刻の瞬時値)を利用して自己診断判定を行う。これに対し、変形例3では、自己診断判定部31cは、複数の電流計測部27a~27cにおける計測値の同じ時間帯の積分値を利用して自己診断判定を行う。なお、積分値とは、計測値を一定時間(例えば1分間)に渡って積分した値(積分値)である。
【0104】
より詳細には、変形例3の自己診断判定部31cは、複数の電流計測部27a~27cの各々から計測信号を取得する。そして、自己診断判定部31cは、複数の電流計測部27a~27cの各々の計測信号(アナログ値)から計測値(デジタル値)を求め、求めた計測値に基づいて、複数の電流計測部27a~27cにおける計測値の同じ時間帯Δt1の積分値を計算する。ここで、L1相電路7aを流れる電流の上記計測値の所定の時間帯Δt1の上記積分値を第1積分値Sa(Δt1)と定義する。L2相電路7bを流れる電流の上記計測値の上記所定の時間帯Δt1の上記積分値を第2積分値Sb(Δt1)と定義する。N相電路7cを流れる電流の上記計測値の上記所定の時間帯Δt1の上記積分値を第3積分値Sc(Δt1)と定義する。なお、変形例3でも、上記実施形態と同様に、交流電力の配電方式は単相3線式であることを想定する。
【0105】
このとき、自己診断判定部31cは、自己診断判定として、第1積分値Sa(Δt1)と第2積分値Sb(Δt1)との差分の絶対値と第3積分値Sc(Δt1)とが等しいか否か(すなわち下記式4が成立するか否か)に応じて、複数の電流計測部27a~27cが正常であるか否かの判定を行う。
【0106】
|Sa(Δt1)-Sb(Δt1)|=Sc(Δt1)…式4
なお、式4は、実施形態の式1において、計測値Ia(t1)~Ic(t1)を積分値Sa(Δt1)~Sc(Δt1)に置換した式と実質的に同じである。
【0107】
より詳細には、自己診断判定部31cは、第1積分値Sa(Δt1)と第2積分値Sb(Δt1)との差分の絶対値と第3積分値Sc(Δt1)とが等しい場合(すなわち式4が成立する場合)は、複数の電流計測部27a~27cは正常であると判定する。他方、自己診断判定部31cは、第1積分値Sa(Δt1)と第2積分値Sb(Δt1)との差分の絶対値と第3積分値Sc(Δt1)とが等しくない場合(すなわち式4が成立しない場合)は、複数の電流計測部27a~27cは正常でないと判定する。
【0108】
なお、上記の「第1積分値Sa(Δt1)と第2積分値Sb(Δt1)との差分の絶対値と第3積分値Sc(Δt1)とが等しい」とは、厳密に等しい場合に限定されず、実質的に等しいと見なせる程度の誤差を含んでもよい。
【0109】
変形例3によれば、計測値の積分値を用いて自己診断判定を行うため、計測値が小さい値であっても(すなわち複数の電路7a~7cに流れる電流が微少電流であっても)、自己診断判定を正確に行うことができる。
【0110】
(6)態様
以上説明した実施形態及び変形例等から以下の態様が開示されている。
【0111】
第1の態様の電流計測装置(40)は、複数の電流計測部(27a~27c)と、自己診断判定部(31c)と、を備える。複数の電流計測部(27a~27c)は、交流電流が流れる一組の電路を構成する複数の電路(7a~7c)の各々を流れる電流を計測する。自己診断判定部(31c)は、複数の電流計測部(27a~27c)の各々の計測値に基づいて、複数の電流計測部(27a~27c)が正常であるか否かの自己診断判定を行う。
【0112】
この構成によれば、自己診断判定部(31c)によって複数の電流計測部(27a~27c)の信頼性を確保できる。
【0113】
第2の態様の電流計測装置(40)では、第1の態様において、自己診断判定部(31c)は、複数の電流計測部(27a~27c)が同時刻(t1)に測定した計測値(Ia(t1)~Ic(t1))の和がゼロであるか否かに応じて、自己診断判定を行う。
【0114】
この構成によれば、簡単な判定原理で、複数の電流計測部(27a~27c)が正常であるか否かの判定(自己診断判定)を行うことができる。
【0115】
第3の態様の電流計測装置(40)では、第2の態様において、複数の電路(7a~7c)は、第1電圧線(7a)と、第1電圧線(7a)とは逆相の第2電圧線(7b)と、接地された中性線(7c)とで構成される。第1電圧線(7a)を流れる電流の上記計測値を第1計測値(Ia(t1))と定義する。第2電圧線(7b)を流れる電流の上記計測値を第2計測値(Ib(t1))と定義する。中性線(7c)を流れる電流の上記計測値を第3計測値(Ic(t1))と定義する。自己診断判定部(31c)は、第1計測値(Ia(t1))と第2計測値(Ib(t1))と第3計測値(Ic(t1))との和がゼロであるか否かに応じて、自己診断判定を行う。
【0116】
この構成によれば、交流電流が流れる一組の電路(すなわち複数の電路(7a~7c))が単相3線の電路である場合に好適である。
【0117】
第4の態様の電流計測装置(40)では、第1の態様において、複数の電路(7a~c)は、第1電圧線(7a)と、第1電圧線(7a)とは逆相の第2電圧線(7b)と、接地された中性線(7c)とで構成される。第1電圧線(7a)を流れる電流の上記計測値の所定の時間帯(Δt1)の実効値を第1実効値(Ja(Δt1))と定義する。第2電圧線(7b)を流れる電流の上記計測値の上記所定の時間帯(Δt1)の上記実効値を第2実効値(Jb(Δt1))と定義する。中性線(7c)を流れる電流の上記計測値の上記所定の時間帯(Δt1)の上記実効値を第3実効値(Jc(Δt1))と定義する。自己診断判定部(31c)は、第1実効値(Ja(Δt1))と第2実効値(Jb(Δt1))との差分の絶対値と第3実効値(Jc(Δt1))とが等しいか否かに応じて、自己診断判定を行う。
【0118】
この構成によれば、自己診断判定において、複数の電流計測部(27a~27c)における計測値の同じ時間帯(Δt1)の実効値(Ja(Δt1)~Jc(Δt1))を利用する。この場合、第1~第3実効値(Ja(Δt1)~Jc(Δt1))の各々の時間帯が多少ずれていても、自己診断判定を正確に行うことができる。このため、自己診断判定部(31c)において、第1~第3実効値(Ja(Δt1)~Jc(Δt1))の各々の時間帯(Δt1)を合わせるための演算負担を軽減できる。
【0119】
第5の態様の電流計測装置(40)では、第1の態様において、複数の電路(7a~7c)は、第1電圧線(7a)と、第1電圧線(7a)とは逆相の第2電圧線(7b)と、接地された中性線(7c)とで構成される。第1電圧線(7a)を流れる電流の上記計測値の所定の時間帯(Δt1)の積分値を第1積分値(Sa(Δt1))と定義する。第2電圧線(7b)を流れる電流の上記計測値の上記所定の時間帯(Δt1)の積分値を第2積分値(Sb(Δt1))と定義する。中性線(7c)を流れる電流の上記計測値の上記所定の時間帯(Δt1)の積分値を第3積分値(Sc(Δt1))と定義する。自己診断判定部(31c)は、第1積分値(Sa(Δt1))と第2積分値(Sb(Δt1))との差分の絶対値と第3積分値(Sc(Δt1))とが等しいか否かに応じて、自己診断判定を行う。
【0120】
この構成によれば、計測値の積分値(Sa(Δt1)~Sc(Δt1))を用いて自己診断判定を行うため、計測値が小さい値であっても(すなわち複数の電路(7a~7c)に流れる電流が微少電流であっても)、自己診断判定を正確に行うことができる。
【0121】
第6の態様の電流計測装置(40)は、第1~第5の態様のいずれか1つにおいて、零相変流器(28)と、漏電判定部(31a)と、を更に備える。零相変流器(28)は、複数の電路(7a~7c)の各々に流れる電流の不平衡を計測する。漏電判定部(31a)は、零相変流器(28)の計測値に基づいて漏電が発生しているか否かを判定する。自己診断判定部(31c)は、漏電が発生していると漏電判定部(31a)が判定する場合は、自己診断判定の判定結果を破棄する。
【0122】
この構成によれば、漏電が発生している場合において、自己診断判定部(31c)が間違った判定結果を出すことを防止できる。
【0123】
第7の態様の電流計測装置(40)では、第1~第6の態様のいずれか1つにおいて、複数の電流計測部(27a~27c)は、基板(32)と、基板(32)にプリントされたコイル(271)とを有する。
【0124】
この構成によれば、電流計測部(27a~27c)を簡単に構成できる。
【0125】
第8の態様の回路遮断器(20)は、第1~第7の態様のいずれか1つの電流計測装置(40)を備える回路遮断器である。回路遮断器(20)は、複数の接点(C1)と、電流計測装置(40)と、過電流判定部(31b)と、駆動制御部(31d)と、を備える。複数の接点(C1)は、交流電源(P1)から1つ以上の負荷(B1)に交流電力を供給するための一組の電路を構成する複数の電路(7a~7c)を開閉する。電流計測装置(40)は、複数の電路(7a~7c)を流れる電流を計測する複数の電流計測部(27a~27c)を備える。過電流判定部(31b)は、複数の電流計測部(27a~27c)の各々の計測値に基づいて、複数の電路(7a~7c)において過電流が発生したか否かを判定する。駆動制御部(31d)は、過電流判定部(31b)の判定結果に基づいて、駆動部(26)を制御することで複数の接点(C1)を開極させる。
【0126】
この構成によれば、回路遮断器(20)として、電流計測装置(40)の作用効果を有する回路遮断器(20)を提供できる。
【0127】
第9の態様の分電盤(1)は、第1~第8の態様のいずれか1つの回路遮断器(20)と、回路遮断器(20)を保持するキャビネット(10)と、を備える。
【0128】
この構成によれは、分電盤(1)として、回路遮断器(20)の作用効果を有する分電盤を提供できる。
【符号の説明】
【0129】
1 分電盤
10 キャビネット
7a L1相電路(電路、第1電圧線)
7b L2相電路(電路、第2電圧線)
7c N相電路(電路、中性線)
26 駆動部
27a~27c 電流計測部
28 零相変流器
31a 漏電判定部
31b 過電流判定部
31d 駆動制御部
31c 自己診断判定部
32 制御基板
40 電流計測装置
B1 負荷
t1 定の時刻(時刻)
Δt1 所定の時間帯
Ia(t1) 第1計測値
Ib(t1) 第2計測値
Ic(t1) 第3計測値
Ja(Δt1) 第1実効値
Jb(Δt1) 第2実効値
Jc(Δt1) 第3実効値
Sa(Δt1) 第1積分値
Sb(Δt1) 第2積分値
Sc(Δt1) 第3積分値