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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167713
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】配置体固定構造
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/00 20060101AFI20231116BHJP
   E04D 13/18 20180101ALI20231116BHJP
   H02S 20/24 20140101ALI20231116BHJP
   H02S 20/23 20140101ALI20231116BHJP
   H02S 20/10 20140101ALI20231116BHJP
【FI】
E04D13/00 L ETD
E04D13/18
H02S20/24
H02S20/23 B
H02S20/10 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079102
(22)【出願日】2022-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000223403
【氏名又は名称】住ベシート防水株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100173428
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 慶
【テーマコード(参考)】
2E108
【Fターム(参考)】
2E108KK01
2E108LL01
2E108MM08
2E108NN07
(57)【要約】
【課題】シート防水構造による防水性の低下を招くことなく、躯体が備える床部に固定することができ、かつ、配置体の位置ズレが生じるのを的確に抑制または防止して配置体を床部に長期に亘って固定することができる配置体固定構造を提供すること。
【解決手段】本発明の配置体固定構造60は、断熱層40と防水シート30とを有するシート防水構造1が施された躯体10が備える床部11に、ソーラーパネルユニット70(配置体)を固定するのに用いられるものであり、固定用金具50とスペーサ45と金属シート片34と防水シート片35とを有し、防水シート30は、スペーサ45に対応して形成された、厚さ方向に貫通する孔部301が設けられており、金属シート片34は、防水シート30の平面視において、孔部301およびスペーサ45を包含して防水シート30を被覆している。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体が有する床部の少なくとも一部を防水シートで覆い、前記躯体に防水を施すシート防水構造が設けられた前記躯体の前記床部上に、前記シート防水構造を介して、配置体を固定するのに用いられる配置体固定構造であって、
前記シート防止構造は、前記床部の上側に敷設された断熱層と、該断熱層の上側に敷設された前記防水シートとを有し、
当該配置体固定構造は、前記配置体を前記床部に固定する固定用金具と、前記断熱層の厚さ方向に貫通し前記固定用金具に対応して設けられた貫通孔に配設されたスペーサと、前記固定用金具に対応する位置で、前記防水シートを被覆する金属シート片と、該金属シート片を包含して前記防水シートを被覆する防水シート片とを有し、
前記防水シートは、前記スペーサに対応して形成された、厚さ方向に貫通する孔部が設けられており、前記金属シート片は、前記防水シートの平面視において、前記孔部および前記スペーサを包含して前記防水シートを被覆することを特徴とする配置体固定構造。
【請求項2】
前記配置体は、ソーラーパネルユニットであり、平板状をなすソーラーパネル部と、該ソーラーパネル部から下側に向かって突出する脚部とを有し、
前記脚部の先端に、前記固定用金具が連結されることで、前記床部に固定される請求項1に記載の配置体固定構造。
【請求項3】
前記スペーサは、高さが前記断熱層と前記防水シートとの合計の厚さとほぼ等しく設定され、前記断熱層よりも硬度が高い筒体と、該筒体の内部空間に充填された断熱片とを有する請求項1または2に記載の配置体固定構造。
【請求項4】
前記固定用金具は、平板状をなす金属片と、該金属片から上側に向かって突出する第1固定ボルトと、前記金属片から下側に向かって突出する第2固定ボルトとを有し、
前記第1固定ボルトにより前記固定用金具に前記配置体が固定され、前記第2固定ボルトが、前記断熱層を貫通して、前記床部に打ち込まれており、
これにより、前記固定用金具を介して、前記床部上に前記配置体が固定されるよう構成されている請求項3に記載の配置体固定構造。
【請求項5】
前記金属シート片は、前記金属片の下側に位置している請求項4に記載の配置体固定構造。
【請求項6】
前記金属シート片は、アルミシート片である請求項1に記載の配置体固定構造。
【請求項7】
前記金属シート片は、平面視において四角形状をなし、その縁部を構成する4辺からなる各辺の中央の内側に設けられたマーカーを備える請求項1に記載の配置体固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、躯体の床部上に配置体を固定する際に用いられる配置体固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の高耐久化が求められるに伴って、多くの建築物の屋上やベランダ等の躯体(構造体)において、防水シート(樹脂シート)を敷設施工したシート防水構造が採用されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このシート防水構造では、床部上に断熱材が敷設される場合、例えば、床部上に敷設された断熱材の少なくとも一部を防水シートで覆う構成をなしているが、防水シートの床部(躯体)への断熱材を介した固定は、その一例として、以下のようにして実施される。すなわち、まず、複数の円盤状をなす固定ディスク(鋼板)を、所定の間隔で断熱材上に配置させた状態で、断熱材を介して床部に固定ビス等を用いて固定する。さらに、これら固定ディスクにおいて、固定ディスクの上面と防水シートとの下面とを接合することで、断熱材上に配置された固定ディスクを介して床部と防水シートとが接合されることにより実施される。
【0004】
このようなシート防水構造が施された躯体に対して、ソーラーパネルユニットのような配置体を設置することが、近年、提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
この場合、防水シートが敷設された床部(平面)に対して固定用金具(アンカー)が備える柱状体を打ち込むことで床部に固定用金具を固定し、その後、この固定用金具に、ソーラーパネルユニット(配置体)が備える脚部を固定することで、シート防水構造が施された躯体に対してソーラーパネルユニットの設置がなされることがある。
【0006】
ここで、かかる方法によりソーラーパネルユニットを設置する場合、ソーラーパネルユニット(配置体)を、長期に亘って、床部(平面)に対して、位置ズレを生じさせることなく配置させることが求められる。しかしながら、固定用金具と床部との間に位置することとなる、断熱材が多孔体で構成され、その硬度が低いことに起因して、ソーラーパネルユニットの自重により、経時的に断熱材が押し潰され、これに伴い、ソーラーパネルユニットの位置ズレが生じると言う問題があった。かかる問題点を解決することを目的に、固定用金具が固定される位置の直下に位置する断熱材を、選択的(局所的)に切り取り、この切り取られた位置に、断熱材よりも硬度の高いスペーサを配置させることが提案されている。
【0007】
ところが、この場合、断熱材の選択的な切り取りが、防水シートを敷設したシート防水構造が床部(躯体)に対して施された状態で実施されることから、固定用金具が固定される位置の直下において、断熱材ばかりではなく防水シートをも切り取られることになる。そのため、固定用金具が固定される位置の直下に対応する防水シートが切り取られた位置において、シート防水構造による防水性が低下すると言う新たな問題が生じているのが実情であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2013-53517号公報
【特許文献2】特開2011-43018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、シート防水構造による防水性の低下を招くことなく、躯体が備える床部に固定することができ、かつ、配置体の位置ズレが生じるのを的確に抑制または防止して前記配置体を前記床部に長期に亘って固定することができる配置体固定構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的は、下記(1)~(7)に記載の本発明により達成される。
(1) 躯体が有する床部の少なくとも一部を防水シートで覆い、前記躯体に防水を施すシート防水構造が設けられた前記躯体の前記床部上に、前記シート防水構造を介して、配置体を固定するのに用いられる配置体固定構造であって、
前記シート防止構造は、前記床部の上側に敷設された断熱層と、該断熱層の上側に敷設された前記防水シートとを有し、
当該配置体固定構造は、前記配置体を前記床部に固定する固定用金具と、前記断熱層の厚さ方向に貫通し前記固定用金具に対応して設けられた貫通孔に配設されたスペーサと、前記固定用金具に対応する位置で、前記防水シートを被覆する金属シート片と、該金属シート片を包含して前記防水シートを被覆する防水シート片とを有し、
前記防水シートは、前記スペーサに対応して形成された、厚さ方向に貫通する孔部が設けられており、前記金属シート片は、前記防水シートの平面視において、前記孔部および前記スペーサを包含して前記防水シートを被覆することを特徴とする配置体固定構造。
【0011】
(2) 前記配置体は、ソーラーパネルユニットであり、平板状をなすソーラーパネル部と、該ソーラーパネル部から下側に向かって突出する脚部とを有し、
前記脚部の先端に、前記固定用金具が連結されることで、前記床部に固定される上記(1)に記載の配置体固定構造。
【0012】
(3) 前記スペーサは、高さが前記断熱層と前記防水シートとの合計の厚さとほぼ等しく設定され、前記断熱層よりも硬度が高い筒体と、該筒体の内部空間に充填された断熱片とを有する上記(1)または(2)に記載の配置体固定構造。
【0013】
(4) 前記固定用金具は、平板状をなす金属片と、該金属片から上側に向かって突出する第1固定ボルトと、前記金属片から下側に向かって突出する第2固定ボルトとを有し、
前記第1固定ボルトにより前記固定用金具に前記配置体が固定され、前記第2固定ボルトが、前記断熱層を貫通して、前記床部に打ち込まれており、
これにより、前記固定用金具を介して、前記床部上に前記配置体が固定されるよう構成されている上記(3)に記載の配置体固定構造。
【0014】
(5) 前記金属シート片は、前記金属片の下側に位置している上記(4)に記載の配置体固定構造。
【0015】
(6) 前記金属シート片は、アルミシート片である上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の配置体固定構造。
【0016】
(7) 前記金属シート片は、平面視において四角形状をなし、その縁部を構成する4辺からなる各辺の中央の内側に設けられたマーカーを備える上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の配置体固定構造。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、シート防水構造による防水性の低下を招くのを的確に抑制または防止しつつ、躯体が備える床部に配置体固定構造を、固定することができるとともに、この配置体固定構造を介して、前記床部に固定された配置体を、前記床部から位置ズレするのを長期に亘って的確に抑制または防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】シート防水構造が施された躯体に対して、ソーラーパネルユニットが固定された状態を部分的に取り出した部分斜視図である。
図2図1に示すシート防水構造が施された躯体に固定されたソーラーパネルユニットのA-A線縦断面図である。
図3図1に示すシート防水構造が施された躯体に固定されたソーラーパネルユニットの図2に示すB部における縦断面図である。
図4図2に示すB部において、シート防水構造が施された躯体に、ソーラーパネルユニットを固定するために用いられる配置体固定構造の分解図である。
図5図4に示す配置体固定構造が備えるスペーサと金属シート片との位置関係を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の配置体固定構造を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0020】
まず、本発明の配置体固定構造を説明するのに先立って、シート防水構造が施された躯体に対して、本発明の配置体固定構造を介して躯体に固定されているソーラーパネルユニット(太陽光発電ユニット)について説明する。すなわち、本発明の配置体固定構造を介して、シート防水構造が施された躯体に固定された配置体として、ソーラーパネルユニットが適用されている場合について説明する。
【0021】
<ソーラーパネルユニット>
図1は、シート防水構造が施された躯体に対して、ソーラーパネルユニットが固定された状態を部分的に取り出した部分斜視図、図2は、図1に示すシート防水構造が施された躯体に固定されたソーラーパネルユニットのA-A線縦断面図、図3は、図1に示すシート防水構造が施された躯体に固定されたソーラーパネルユニットの図2に示すB部における縦断面図、図4は、図2に示すB部において、シート防水構造が施された躯体に、ソーラーパネルユニットを固定するために用いられる配置体固定構造の分解図、図5は、図4に示す配置体固定構造が備えるスペーサと金属シート片との位置関係を示す平面図である。なお、以下の説明では、図1図4中の上側を「上」、下側を「下」、図5中の紙面手前側を「上」、紙面奥側を「下」と言う。また、図1では、説明の便宜上、シート防水構造が施された躯体の全体を示すことなく、躯体が備える床部と壁部とを部分的に図示している。さらに、図2図4中では、理解を容易にするため、ソーラーパネルユニット、シート防水構造および配置体固定構造において、各部の厚さ方向を誇張して模式的に図示している。
【0022】
ソーラーパネルユニット70は、シート防水構造1が施工された、屋上やベランダのような躯体10(構造体)に対して固定される。
【0023】
躯体10は、本実施形態では、図1に示すように、床部11と、この床部11の外縁を取り囲むように沿って立設して設けられた壁部12(立ち上がり部)とを有している。
【0024】
シート防水構造1は、かかる構成をなしている、躯体10、すなわち枠体をなす壁部12と、底部を構成する床部11とを備えた躯体10に対して施工されるものであり、床部11の上側に敷設された断熱層40(断熱材)と、壁部12および断熱層40に敷設された防水シート30と、配置部材(図示せず)と、固定ディスク(図示せず)とを有している。
【0025】
断熱層40(断熱材)は、その全体形状がシート状(層状)をなして、床部11の上側に敷設され、その下面が床部11に当接し、上面が後述する防水シート30に当接している。これにより、断熱層40は、外部からの熱が躯体10の内部に伝達されるのを遮断する機能を発揮する。
【0026】
この断熱層40は、発泡体で構成され、その構成材料としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のような樹脂材料、金属材料、および、セラミックス材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせたものを主材料として用いることができるが、中でも、熱可塑性樹脂を主材料として構成されるものであることが好ましい。これにより、断熱層40の軽量化を図るとともに、化学的方法もしくは物理的方法を用いることで、発泡体で構成される断熱層40を比較的容易に形成することができる。
【0027】
なお、本明細書中において、「主材料」とは、このものを含有する層(膜)を構成する構成材料のうち、50重量%以上含有する構成材料のことを言うこととする。
【0028】
また、熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体のようなポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
なお、断熱層40は、上記の通り、発泡体の単体で構成される場合の他、前記発泡体の上面が被覆材で被覆された積層体であってもよい。このように、発泡体を被覆材で被覆することで、後述する防水シート30に含まれる可塑剤が発泡体側に移行するのを、確実に防止することができるため、防水シート30の変質・劣化を、より的確に抑制または防止することができる。
【0030】
また、被覆材としては、例えば、ポリエチレン製の織布からなる絶縁クロスシート、ガラス繊維製の防火用シート、ピンホール検査用のアルミ箔ラミネートシート等が挙げられる。
【0031】
さらに、断熱層40は、その平均厚さが30mm以上100mm以下程度であるのが好ましく、40mm以上70mm以下程度であるのがより好ましい。これにより、断熱層40に、外部からの熱が躯体10の内部に伝達されるのを遮断する機能を確実に発揮させることができる。
【0032】
配置部材は、床部11上に敷設された断熱層40と壁部12との境界部に配置され、さらに、複数の固定ディスクは、所定(一定)の間隔を開けて断熱層40上に配置されており、この状態で、配置部材および固定ディスクは、断熱層40を介して、床部11に固定ビス等により固定されている。
【0033】
そして、塩化ビニル系樹脂等の樹脂材料を主材料として構成され、可塑剤、安定化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加工助剤、滑剤、充填材、難燃剤および色材等の添加剤を好ましくは含む防水シート30は、上記のような構成をなしている、配置部材、固定ディスクおよび固定ビスとともに床部11と断熱層40とを覆った状態で、固定部材および固定ディスクに、溶着または接着により固定されており、これにより、躯体10の防水性が確保される。
【0034】
すなわち、日光や雨水には防水シート30が晒されることとなり、躯体10が直接的に日光や雨水に晒されることが防止されるため、躯体10の防水性が確保される。また、固定ディスクの上面と防水シート30との下面とが接合されており、これにより、固定ディスクを介して断熱層40が敷設された床部11と防水シート30とが接合され、その結果、風等に対して防水シート30が引き剥がされることなく躯体10に固定されている。
【0035】
また、防水シート30は、その平均厚さが0.5mm以上5.0mm以下程度であるのが好ましく、1.0mm以上2.5mm以下程度であるのがより好ましい。これにより、防水シート30に、躯体10の防水性を確保する機能を確実に発揮させることができる。
【0036】
ソーラーパネルユニット70は、前述の通り、断熱層40を備えるシート防水構造1が施された躯体10に対して固定される配置体であり、平板状をなす本体部71(ソーラーパネル部)と、本体部71の各隅部近傍から下側に向かって突出する4つの脚部72とを有しており、本実施形態では、複数(図1中では6つ)のソーラーパネルユニット70が、行列に整列した状態で、シート防水構造1が施された躯体10に対して配置されている。そして、ソーラーパネルユニット70は、このものが備える脚部72において、配置体固定構造60が備える固定用金具50を介して、シート防水構造1が施された床部11(躯体10)に対して固定されている(図1図2参照)。
【0037】
本体部71は、例えば多結晶シリコンからなるセルを行列に配列された状態で複数備え、これらセルを強化ガラスで覆ったものであり、本実施形態では、平面視形状が長方形状をなす平板であり、その下面の4つの隅部近傍から突出して脚部72が設けられている。
【0038】
脚部72は、1つの本体部71に対して4つ設けられ、それぞれ、基端が本体部71の隅部近傍に固定され、また、先端が、配置体固定構造60が備える固定用金具50を介してシート防水構造1が施された躯体10の床部11に対して固定されている。このような脚部72は、2つの脚部72が他方の2つの脚部72に対して長さが長く形成され、長さの長い2つの脚部72が一方の長辺に対応した隅部近傍に配置され、長さの短い2つの脚部72が他方の長辺に対応した隅部近傍に配置されている。これにより、ソーラーパネルユニット70の躯体10に対する固定時に、本体部71を床部11に対して傾斜させることができることから、傾斜された本体部71を南向きに向けた状態で躯体10に固定することで、本体部71に効率よく太陽光を受光させることができる。
【0039】
配置体固定構造60は、シート防水構造1が設けられた躯体10が備える床部11上に、このシート防水構造1を介して、ソーラーパネルユニット70を固定するのに用いられるものであり、固定用金具50と、防水シート片35と、スペーサ45と、金属シート片34とを有している。
【0040】
この配置体固定構造60を介して、床部11にソーラーパネルユニット70を固定することで、躯体10に施されたシート防水構造1による防水性の低下を招くことなく、断熱層40が敷設された床部11に固定し、かつ、配置体としてのソーラーパネルユニット70の位置ズレが生じるのを的確に抑制または防止して、ソーラーパネルユニット70を床部11に長期に亘って固定することができるが、以下、この配置体固定構造60が備える各部について、順次、説明する。
【0041】
固定用金具50(アンカー)は、各脚部72の先端に固定して設けられ、この固定用金具50の断熱層40が敷設された床部11に対する固定により、脚部72が固定用金具50を介して断熱層40が敷設された床部11に固定される。すなわち、ソーラーパネルユニット70が、断熱層40が敷設された床部11に対して固定される。
【0042】
この固定用金具50は、図3、4に示すように、固定板61(金属片)と、ボルト62(第2固定ボルト)、ボルト63(第1固定ボルト)と、ダブルアンカー64(柱状体)と、パッキン36、37と、座板51と、固定具本体52と、ワッシャー53と、ナット54、55と、固定体56と、ワッシャー57と、ナット58とを有している。
【0043】
ダブルアンカー64(柱状体)は、その全体形状が円筒状をなし、その内周面に雌ネジが形成されており、固定用金具50を固定すべき床部11(平面)に形成された穴部111に打ち込まれることで床部11に固定されている。
【0044】
固定板61は、その全体形状が平板状をなす金属片からなり、その中央部に設けられた1つの挿通孔611を備え、また、その縁部側に、挿通孔611を通過する線上に挿通孔611を中央側としてそれぞれ設けられた2つの挿通孔612を備えており、防水シート30上に配置された状態で、挿通孔611には、ボルト63が脚部72側(上側)に突出するように挿通され、さらに、挿通孔612には、ボルト62が床部11側(下側)に突出するようにそれぞれ挿通されている。
【0045】
ボルト62(第2固定ボルト)は、円盤状をなすフランジ部と、フランジ部の中心部から突出して設けられ、その外周面に雄ネジが形成されたボルト本体とを有している。このボルト62が備えるボルト本体を、固定板61が備える挿通孔612に、床部11側(下側)に向かって突出するように挿通した状態で、防水シート30および断熱層40を貫通して、ダブルアンカー64に螺合することで、ボルト62は、床部11に打ち込まれることで固定され、その結果、固定板61は、断熱層40を介して床部11上に敷設された防水シート30に接触した状態で固定される。
【0046】
なお、ボルト62は、挿通孔612に挿通された状態で、床部11に固定され、このとき、固定板61の中央部の下側に対応する位置には、後述するスペーサ45が配置されるが、固定板61の平面視形状がスペーサ45よりも大きく設定され、また、挿通孔612が固定板61の縁部側に設けられている。そのため、スペーサ45を避け、防水シート30および断熱層40を挿通させて、ボルト62を、床部11に固定させることができる。すなわち、固定板61の下側に位置する、スペーサ45および、このスペーサ45を被覆する金属シート片34を避けて、固定板61に挿通されたボルト62により、固定板61に挿通されたボルト63を、床部11に固定させることができる。
【0047】
また、ボルト63(第1固定ボルト)は、円盤状をなすフランジ部と、フランジ部の中心部から突出して設けられ、その外周面に雄ネジが形成されたボルト本体とを有している。このボルト63が備えるボルト本体を、固定板61が備える挿通孔611に、脚部72側(上側)に突出するように挿通した状態で、固定板61が防水シート30上に固定されることで、ボルト63は、脚部72側に突出した状態で、固定板61を介して防水シート30上に固定される。
【0048】
固定具本体52は、平板状をなし、その中心部に厚さ方向に貫通する貫通孔を備える底部と、この底部が備える1辺の縁部から立設する立ち上がり部とを有している。この固定具本体52が備える底部の下側に、固定板61とほぼ同様の形状に形成され、その中心部に貫通孔を備えるパッキン36、37および座板51を配置し、各部材が備える貫通孔にボルト63を挿通し、さらに、ワッシャー53を介在させた状態で、ナット54、55を螺合することにより、固定具本体52は、ボルト63、固定板61、ボルト62およびダブルアンカー64を介して、床部11に固定されている。
【0049】
固定体56は、平板状をなす一対の底部と、各底部が備える1辺の縁部から立設する一対の立ち上がり部と、これら立ち上がり部の先端同士を連結し、その中心部に厚さ方向に貫通する貫通孔を備える頂部とを有している。この固定体56が備える底部を、固定具本体52が備える底部に接触させ、固定体56(頂部)が備える貫通孔にボルト63を挿通し、さらに、ワッシャー57を介在させた状態で、ナット58を螺合することにより、固定体56が固定具本体52に対して固定され、これにより、固定具本体52のボルト63を介した固定板61に対する固定強度がより強固なものとなっている。
【0050】
固定用金具50を、かかる構成を有するものとすることで、断熱層40と防水シート30とが床部11側から、この順で敷設された床部11に対して固定用金具50が強固に固定される。そのため、図3に示すように、固定具本体52の立ち上がり部に形成された貫通孔にボルト74を挿通し、さらに、このボルト74を脚部72が備える貫通孔に挿通した状態で、ナット73を螺合することにより、脚部72は、固定用金具50を介して断熱層40と防水シート30とが敷設された床部11に対して固定される。すなわち、ソーラーパネルユニット70が、固定用金具50を介して、断熱層40と防水シート30とが敷設された床部11に対して固定される。
【0051】
防水シート片35は、その平面視形状が固定板61よりも大きい平板状をなし、厚さ方向に貫通する貫通孔を中央部に備えており、この貫通孔に、脚部72側に突出するボルト63のボルト本体を挿通した状態で、防水シート30さらには固定板61に対して固定されており、これにより、固定用金具50の防水シート片35よりも下側に位置する部材、すなわち、固定板61、ボルト62、63およびダブルアンカー64の防水性が確保されている。
【0052】
スペーサ45は、その全体形状が円柱状をなし、断熱層40の厚さ方向に貫通し、固定用金具50に対応して、その下側に設けられた貫通孔41に配設されている。
【0053】
このスペーサ45は、図3に示すように、その高さが断熱層40と防水シート30との合計の厚さとほぼ等しく設定され、断熱層40よりも硬度が高い筒体46と、この筒体46の内部空間に充填された断熱片47とを有する。
【0054】
かかる構成をなすスペーサ45は、固定用金具50に対応して、その下側において、断熱層40に形成された貫通孔41に、防水シート30の厚さ方向に貫通して設けられた孔部301に挿通した状態で、配設されることにより、床部11上に配置される。そのため、固定用金具50が備える固定板61は、スペーサ45を介して、床部11により支持される。このとき、スペーサ45は、断熱層40よりも硬度が高い筒体46を備えることから、固定板61ひいては固定用金具50を優れた強度で支持することができる。そのため、固定用金具50を介して床部11に固定された、配置体としてのソーラーパネルユニット70の自重により、スペーサ45が押し潰されるのを、的確に抑制または防止し得ることから、ソーラーパネルユニット70の床部11からの位置ズレを、長期に亘って発生させることなく、ソーラーパネルユニット70を床部11に固定することができる。
【0055】
なお、スペーサ45の高さは、図3のように、断熱層40と防水シート30との合計の厚さとほぼ等しく設定されるのが好ましいが、断熱層40の厚さとほぼ等しく設定されるものであってもよい。スペーサ45の高さを、断熱層40の厚さとほぼ等しく設定した場合においても、固定用金具50に対応してスペーサ45を、配設することにより得られる前記効果を、ほぼ同様に発揮させることができる。
【0056】
また、本明細書において、スペーサ45の高さが、断熱層40と防水シート30との合計の厚さ、または、断熱層40の厚さとほぼ等しいとは、それぞれ、断熱層40と防水シート30との合計の厚さ、または、断熱層40の厚さに対して、±10.0%以内のズレ量でスペーサ45の高さに誤差が生じていることを許容することとする。
【0057】
筒体46は、緻密体で構成され、断熱層40よりも硬度を高くし得る構成材料からなり、この構成材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂のような樹脂材料、チタン、アルミニウム、ニッケル、ステンレスのような金属材料が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0058】
断熱片47は、好ましくは発泡体で構成される。これにより、断熱片47に断熱層40と同一の機能を発揮させることができる。そのため、スペーサ45が配置された位置において、外部からの熱が躯体10の内部に伝達されるのを、的確に抑制または防止することができる。
【0059】
この断熱片47の構成材料としては、断熱層40で挙げたのと、同一の構成材料を用いることができる。
【0060】
金属シート片34は、その平面視形状が四角形状をなし、固定用金具50に対応する位置で、防水シート30を被覆するものである。
【0061】
防水シート30は、断熱層40が備える貫通孔41にスペーサ45を配置するために設けられ、その平面視において重なる位置で、貫通孔41(スペーサ45)に対応して形成された、厚さ方向に貫通する孔部301が設けられている。金属シート片34は、この防水シート30に形成された孔部301を被覆するものであり、金属シート片34の平面視形状がスペーサ45すなわち孔部301よりも大きく設定されており、これにより、金属シート片34は、固定用金具50に対応する位置で、防水シート30の平面視において、孔部301およびスペーサ45を包含して防水シート30を被覆することができる。
【0062】
このように、貫通孔41に対応したスペーサ45の配置のために、防水シート30に孔部301が形成されていたとしても、この孔部301を包含して防水シート30に対して金属シート片34が被覆されている。そして、この金属シート片34を包含して、防水シート片35は、防水シート30を被覆している。したがって、金属シート片34と防水シート片35とにより、孔部301を介して、雨水等の水が躯体10側に浸入するのを的確に抑制または防止し得る。したがって、躯体10に施されたシート防水構造1による防水性の低下を招くのを的確に抑制または防止することができる。また、躯体10が備える床部11に対する、シート防水構造1および配置体固定構造60の施工は、床部11に対してシート防水構造1を形成した後に、配置体固定構造60を設けることにより実施される。そのため、孔部301を包含した防水シート30に対する金属シート片34の被覆の後に、金属シート片34を包含した防水シート30に対する防水シート片35の被覆がなされることとなる。したがって、シート防水構造1および配置体固定構造60の施工時において、例えば、防水シート30に対する金属シート片34の被覆の後に、防水シート30に対して防水シート片35が被覆される迄の間に、シート防水構造1が風雨に曝されたとしても、孔部301を介して、床部11に雨水が浸入するのを、金属シート片34により的確に抑制または防止することができる。さらに、防水シート片35と断熱片47とが不本意に接触することに起因して、防水シート片35に含まれる可塑剤が断熱片47側に移行するのを、確実に防止することができるため、防水シート片35の変質・劣化を、より的確に抑制または防止することができる。そして、貫通孔41に対応してスペーサ45を配置した状態で、固定用金具50ひいては配置体固定構造60を、床部11に固定し得ることから、この配置体固定構造60を介して、床部11に固定されたソーラーパネルユニット70を、優れた強度で固定することができる。
【0063】
金属シート片34は、金属材料を主材料として構成され、この金属材料としては、特に限定されないが、例えば、アルミニウム、ニッケル、ステンレス、銅、チタンおよびタングステン等が挙げられ、これらの金属を単独または合金として用いることができる。これらの中でも、アルミニウムであることが好ましい。すなわち、金属シート片34は、アルミシート片であることが好ましい。これにより、優れた密着性をもって、孔部301およびスペーサ45を包含して防水シート30を被覆することができる。
【0064】
また、金属シート片34は、本実施形態では、図5に示す通り、平面視において四角形状をなし、その縁部を構成する4辺からなる各辺の中央の内側に設けられたマーカー341を4つ備えている。
【0065】
ここで、固定用金具50を固定する固定位置は、一般的に、左右方向に墨出しされた墨出し線332と、左右方向に直交する前後方向に墨出しされた墨出し線331との交点によって決定される。しかしながら、本発明では、金属シート片34の防水シート30に対する貼付、および、固定用金具50の床部11に対する固定の際には、墨出し線331、332の交点に対応する位置に形成された孔部301および貫通孔41にスペーサ45が配置されており、墨出し線331、332の交点は、防水シート30上から消失している。これに対して、本実施形態では、上記の通り、金属シート片34が4つのマーカー341を備えており、これらのうち、前後方向に延びる2つの辺にそれぞれ対応して設けられた2つのマーカー341を、墨出し線332に重なるように配置し、さらに、左右方向に延びる2つの辺にそれぞれ対応して設けられた2つのマーカー341を、墨出し線331に重なるように配置することで、金属シート片34を、スペーサ45に対して位置精度よく貼付することができる。
【0066】
なお、本実施形態では、固定用金具50は、固定板61と、ボルト62、63と、ダブルアンカー64と、パッキン36、37と、座板51と、固定具本体52と、ワッシャー53と、ナット54、55と、固定体56と、ワッシャー57と、ナット58とを有している場合について説明したが、かかる構成のものに限定されず、固定板61と、ボルト62、63とを有し、ボルト63を介して、固定用金具50にソーラーパネルユニット70が固定された構成のものであれば、いかなる構成のものであってもよい。
【0067】
また、スペーサ45は、その全体形状が円柱状をなすものについて説明したが、これに限定されず、柱状体をなしていればよく、例えば、3角柱、4角柱のような多角柱状をなしていてもよい。
【0068】
以上、本発明の配置体固定構造について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0069】
例えば、本発明の配置体固定構造において、各構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、任意の構成のものを付加することができる。
【0070】
また、前記実施形態では、本発明の配置体固定構造により、躯体に固定される配置体がソーラーパネルユニットである場合について説明したが、この場合に限定されず、配置体は、空調装置が備える室外機、変電装置、アンテナ、カーポート等であってもよい。
【0071】
また、躯体は、床部と壁部とを備えるものに限らず、壁部が省略されたものであってもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 シート防水構造
10 躯体
11 床部
12 壁部
30 防水シート
34 金属シート片
35 防水シート片
36 パッキン
37 パッキン
40 断熱層
41 貫通孔
45 スペーサ
46 筒体
47 断熱片
50 固定用金具
51 座板
52 固定具本体
53 ワッシャー
54 ナット
55 ナット
56 固定体
57 ワッシャー
58 ナット
60 配置体固定構造
61 固定板
62 ボルト
63 ボルト
64 ダブルアンカー
70 ソーラーパネルユニット
71 本体部
72 脚部
73 ナット
74 ボルト
111 穴部
301 孔部
331 墨出し線
332 墨出し線
341 マーカー
611 挿通孔
612 挿通孔
図1
図2
図3
図4
図5