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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167723
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】スキャナ装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/87 20200101AFI20231116BHJP
   G01S 17/89 20200101ALI20231116BHJP
【FI】
G01S17/87
G01S17/89
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079116
(22)【出願日】2022-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鋪田 和夫
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084AA04
5J084BA04
5J084BA20
5J084BA36
5J084BA40
5J084BA48
5J084BB02
5J084BB20
5J084BB24
5J084BB28
5J084CA31
5J084CA70
5J084DA01
5J084DA08
5J084DA09
5J084EA31
5J084EA40
(57)【要約】
【課題】
装置の小型化、および、低コスト化が図られたスキャナ装置を提供することである。本発明によれば、持続可能な開発目標(SDGs)の「9産業と技術革新の基盤をつくろう」、「11住み続けられるまちづくりを」に貢献する。
【解決手段】
スキャナ装置は、表面形状測定部と、内部測定部と、スキャンミラーと、を備えている。前記の表面形状測定部は、レーザを発光し、物体から反射されたレーザを受光し、前記の物体の表面を測定することに用いられる。前記の内部測定部は、THz波(テラヘルツ波)を発信し、前記の物体からのTHz波を受信し、前記の物体の内部を測定することに用いられる。前記のスキャンミラーは、前記の物体の走査に用いられる。ここで、前記のスキャンミラーは、1枚以上であり、前記の表面形状測定部の測定、および、前記の内部測定部の測定のいずれの測定にも用いる構成とされている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザを発光し、物体から反射されたレーザを受光し、前記物体の表面を測定することに用いる表面形状測定部と、
テラヘルツ波を発信し、前記物体の内部で反射されたテラヘルツ波を受信し、前記物体の内部を測定することに用いる内部測定部と、
前記物体の走査に用いられ、前記表面形状測定部の測定および前記内部測定部の測定のいずれの測定も用いる1枚以上のスキャンミラーと、
を備えることを特徴とするスキャナ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のスキャナ装置であって、
前記表面形状測定部は、
レーザ発光部と、
レーザ受光部と、
ハーフミラーとを有し、
前記ハーフミラーは、
前記レーザ発光部から発光され第1の経路を進行するレーザについては、前記スキャンミラーに向かう第2の経路と、前記第2の経路とは異なる第3の経路に分離して進行させ、
前記物体で反射されたレーザであって、前記スキャンミラーを介して受光され、前記第2の経路を経たレーザについては、前記第1の経路と前記第1の経路とは異なる第4の経路に分離して進行させるものであり、
前記第4の経路を進行するレーザが前記レーザ受光部で受光される、
ことを特徴とするスキャナ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のスキャナ装置であって、
前記ハーフミラーは、
S偏光の反射率とP偏光の反射率の差が20%以内に設定されている、
ことを特徴とするスキャナ装置。
【請求項4】
請求項1に記載のスキャナ装置であって、
前記内部測定部は、
テラヘルツ波発信部と、
テラヘルツ波受信部と、
ハーフミラーとを有し、
前記ハーフミラーは、
前記テラヘルツ波発信部から発信され第1の経路を進行するテラヘルツ波については、前記スキャンミラーに向かう第2の経路と、前記第2の経路とは異なる第3の経路に分離して進行させ、
前記物体で反射されたテラヘルツ波であって、前記スキャンミラーを介して受信され、前記第2の経路を経たテラヘルツ波については、前記第1の経路と前記第1の経路とは異なる第4の経路に分離して進行させるものであり、
前記第4の経路を進行するテラヘルツ波が前記テラヘルツ波受信部で受信される、
ことを特徴とするスキャナ装置。
【請求項5】
請求項4に記載のスキャナ装置であって、
前記ハーフミラーは、
S偏光の反射率とP偏光の反射率の差が20%以内に設定されている、
ことを特徴とするスキャナ装置。
【請求項6】
請求項1に記載のスキャナ装置であって、
(1)前記表面形状測定部で発光されたレーザを反射させ前記スキャンミラーに入射させ、且つ、前記内部測定部で発信されたテラヘルツ波を透過させ前記スキャンミラーに入射させる、あるいは、(2)前記内部測定部で発信されたテラヘルツ波を反射させ前記スキャンミラーに入射させ、且つ、前記表面形状測定部で発光されたレーザを透過させ前記スキャンミラーに入射させる、反射/透過ミラーを備える、
ことを特徴とするスキャナ装置。
【請求項7】
請求項6に記載のスキャナ装置であって、
前記反射/透過ミラーは、
S偏光の反射率とP偏光の反射率の差が20%以内に設定されている、
ことを特徴とするスキャナ装置。
【請求項8】
請求項1に記載のスキャナ装置であって、
前記表面形状測定部および前記内部測定部は、それぞれ同期して動作する、
ことを特徴とするスキャナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スキャナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、対象物を走査し、対象物のデータを取得する技術について知られている。
【0003】
特許文献1には、「THz入射ビーム10は方向変換鏡20によって案内されて集束レンズ30に入射し、レンズ30によって撮像対象40に集束される。方向変換鏡20は回転して撮像対象の表面のさまざまな位置(101、102及び103等々)に焦点を走査する。撮像対象と相互作用(透過又は反射)したTHzビームは集光されて、点検出器に供給される。撮像対象の像は方向変換鏡20を回転させることによって生成される。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-8658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
物体の内部構造を把握する場合、THz波(テラヘルツ波)の直進性(すなわち、ビームとしての性質)および透過性に基づいて、精度の良いデータを取得することができると考えられる。また、THz波とは異なる波長の電磁波(例えば、赤外線)を利用して測定することで、物体の表面形状に関する精度の良いデータを取得することができ、精度の更なる向上が期待できると考えられる。しかしながら、複数の種類の電磁波を用いる測定を行う場合、装置が複雑化することで、装置が大型化したり、コストが増加するという課題が考えられる。
【0006】
そこで、本発明は、装置の小型化、および、低コスト化が図られたスキャナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、下記のスキャナ装置が提供される。スキャナ装置は、表面形状測定部と、内部測定部と、1枚以上のスキャンミラーと、を備える。表面形状測定部は、レーザを発光し、物体から反射されたレーザを受光し、物体の表面を測定することに用いる。内部測定部は、THz波を発信し、物体からのTHz波を受信し、物体の内側を測定することに用いる。スキャンミラーは、物体の走査に用いられ、表面形状測定部の測定および内部測定部の測定のいずれの測定も用いる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、装置の小型化、および、低コスト化が図られたスキャナ装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】スキャナ装置の構成の一例を示すブロック図。
図2】表面形状測定部で発光した赤外線レーザの経路と、内部測定部で発信したTHz波の経路の一例を説明するための図。
図3】物体で反射した赤外線レーザおよびTHz波の経路の一例を説明するための図。
図4】表面形状測定部および内部測定部が受信する受信信号のデータと、スキャンミラーの位相との関係の一例を説明するための図。
図5】物体の表面形状および内部の状態の2次元情報を取得するフローの一例を示す図。
図6】ハーフミラーと赤外線反射ミラーの反射特性の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1図6を参照しながら、実施形態のスキャナ装置について説明する。スキャナ装置は、発光した赤外線レーザ、および、発信したTHz波(テラヘルツ波)を物体に照射し、物体からの反射波に基づくデータ処理により、物体の表面状態および内部の状態に関する情報を取得することができる装置である。また、物体の表面の状態および内部の状態を立体的に測定する場合は、3Dスキャナ装置と呼んでもよい。
【0011】
図1に示すように、スキャナ装置1は、光が通過する開口部2が形成された筐体3の内部に、表面形状測定部11と、内部測定部21(THz発信/受信部)と、赤外線反射ミラー31と、スキャンミラー41と、CPU51と、記憶部52、操作入力部53、表示部54、インタフェース55と、を備える。
【0012】
表面形状測定部11は、物体の表面の形状を測定することに用いられ、赤外線レーザ発光部12と、赤外線レーザ受光部13と、集光レンズ(14a、14b)と、ハーフミラー15と、を備える。赤外線レーザ発光部12は、赤外線を発光する光源を含み、赤外線を発光する。光源は、一例として、LD(Laser Diode)やLED(Light-Emitting Diode)を用いて構成することができる。
【0013】
赤外線レーザ受光部13は、物体から反射する赤外線を受光するセンサを含み、物体から反射する赤外線を検出する。センサは、一例として、2次元に配列された受光素子を有するCMOSセンサとすることができるが、他の種類のセンサであってもよい。本実施形態では、電荷を増幅させる機能を有するSPADセンサが用いられる。
【0014】
集光レンズ(14a、14b)は、赤外線を集光し、より密度の高い光に変換する。集光レンズ14aは、赤外線レーザ発光部12が発光する赤外線を集光する。集光レンズ14bは、赤外線レーザ受光部13に受光される赤外線を集光する。
【0015】
ハーフミラー15は、発光する赤外線レーザと受光する赤外線レーザを分ける構成である。本実施形態では、ハーフミラー15は、赤外線レーザ発光部12で発光した赤外線を反射し、赤外線レーザ受光部13で受光する赤外線を透過する構成である。より詳細には、ハーフミラー15は、赤外線レーザ発光部12から発光され経路Aを進行するレーザについては、後述するスキャンミラー41に向かう経路Bと、経路Bとは異なる経路Cに分離して進行させ、物体で反射されたレーザであって、スキャンミラー41を介して受光され、経路Bを経たレーザについては、経路Aと経路Aとは異なる経路Dに分離して進行させるものであり、経路Dを進行するレーザが赤外線レーザ受光部13で受光されることとなる。ここで、経路Cを進行するレーザは測定に使用されないレーザであるため、経路Cを進行するレーザの進行方向側に反射防止加工を施した部材や光吸収部材等を配置することで、経路Cを進行するレーザの反射光の影響を抑える対策をすることが好ましい。
【0016】
内部測定部21は、物体の内側(内部)を測定することに用いられ、THz波発信部22と、THz波受信部23と、集光レンズ(24a、24b)と、ハーフミラー25と、を備える。
【0017】
THz波発信部22は、THz波を発信する装置であり、本実施形態では、周波数が0.1~10THzのTHz波を用いた測定が行われる。
【0018】
THz波受信部23は、物体から反射する反射波(THz波)を検出する装置である。
【0019】
集光レンズ(24a、24b)は、THz波を集光し、より密度の高い光に変換する。集光レンズ24aは、THz波発信部22が発信するTHz波を集光する。集光レンズ24bは、THz波受信部23に入射するTHz波を集光する。
【0020】
ハーフミラー25は、発信するTHz波と受信するTHz波を分ける構成である。本実施形態では、ハーフミラー25は、THz波発信部22で発信したTHz波を透過し、THz波受信部23で受信するTHz波を反射する構成である。より詳細には、ハーフミラー25は、THz波発信部22から発信され経路Eを進行するTHz波については、後述するスキャンミラー41に向かう経路Fと、経路Fとは異なる経路Gに分離して進行させ、物体で反射されたTHz波であって、スキャンミラー41を介して受信され、経路Fを経たTHz波については、経路Eと経路Eとは異なる経路Hに分離して進行させるものであり、経路Hを進行するTHz波がTHz波受信部23で受信されることとなる。ここで、経路Gを進行するTHz波は測定に使用されないTHz波であるため、経路Gを進行するTHz波の進行方向側に反射防止加工を施した部材や電波吸収部材等を配置することで、経路Gを進行するTHz波の反射波の影響を抑える対策をすることが好ましい。
【0021】
赤外線反射ミラー31は、赤外線を反射し、THz波を透過する構成である。
【0022】
スキャンミラー41は、物体を走査する際に、表面形状測定部11および内部測定部21からの光を物体に照射するミラーである。スキャンミラー41は、走査時において、CPU51が制御するモータ(不図示)を駆動源として回転することができるように設けられる。なお、本実施形態では、スキャンミラー41は、表面形状測定部11の測定および内部測定部21の測定において共通に使用され、入射する赤外線レーザおよびTHz波を反射するように構成されている。また、スキャンミラー41の枚数は特に限定されないが、本実施形態では、1枚とされている。
【0023】
CPU51(Central Processing Unit)は、所定のプログラムを実行して、表面形状測定部11、内部測定部21、スキャンミラー41等の動作制御処理、および、データ処理を行う。本実施形態では、CPU51がプロセッサとして用いられているが、所定の処理を実行する主体であればよく、他の半導体デバイスが用いられてもよい。
【0024】
記憶部52は、主記憶部と、補助記憶部と、を用いて構成することができる。主記憶部は、例えば、RAM(Random access memory)を用いて構成することができる。補助記憶部は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)を用いて構成することができ、データ処理やスキャナ装置1の動作制御に用いるプログラム、取得したデータ等を記憶する。
【0025】
操作入力部53は、ユーザによる所定の操作内容(例えば、走査の開始等)の入力に用いられる。操作入力部53は、ボタンやタッチパネル等を用いて適宜に構成することができる。
【0026】
表示部54は、データの表示に用いられ、適宜のディスプレイを用いて構成される。表示部54には、一例として、測定結果に関するデータが表示されてもよい。
【0027】
インタフェース55は、他の装置(例えば、パーソナルコンピュータ)との通信に用いる構成である。スキャナ装置1は、有線通信または無線通信により、他の装置と通信可能に構成され、インタフェース55を介して、測定結果の出力等のデータの入出力を行ってもよい。
【0028】
次に、スキャナ装置1における光の経路について説明する。図2は、表面形状測定部で発光した赤外線の経路と、内部測定部で発信したTHz波の経路の一例を説明するための図である。
【0029】
図2に示すように、赤外線レーザ発光部12で発光した赤外線レーザは、集光レンズ14aで集光され、ハーフミラー15に入射する。そして、赤外線レーザは、ハーフミラー15および赤外線反射ミラー31で反射され、スキャンミラー41に入射する。また、THz波発信部22で発信したTHz波は、集光レンズ24aで集光され、ハーフミラー25に入射する。そして、THz波は、ハーフミラー25を透過し、赤外線反射ミラー31を透過し、スキャンミラー41に入射する。
【0030】
スキャンミラー41に入射した赤外線レーザおよびTHz波は、スキャンミラー41に反射され、筐体3に形成された開口部2を通過する。そして、測定する物体(測定サンプル61)に赤外線レーザおよびTHz波が混合波62として照射される。
【0031】
次に、反射波の経路について説明する。図3は物体で反射した赤外線レーザおよびTHz波の経路の一例を説明するための図である。
【0032】
図3に示すように、物体(測定サンプル61)により反射される赤外線レーザおよびTHz波の混合波62は、スキャンミラー41に反射され、赤外線反射ミラー31に入射する。そして、赤外線反射ミラー31において、混合波62は赤外線とTHz波に分けられる。赤外線反射ミラー31により反射される赤外線レーザは、ハーフミラー15を透過し、集光レンズ14bに集光され、赤外線レーザ受光部13に入力される。その一方で、赤外線反射ミラー31を透過するTHz波は、ハーフミラー25に反射され、集光レンズ24bに集光され、THz波受信部23に入力される。
【0033】
次に、図4を参照しながら、物体を測定した際における受信信号のデータの一例について説明する。図4は、表面形状測定部および内部測定部が受信する受信信号のデータと、スキャンミラーの位相との関係の一例を示す図である。
【0034】
本実施形態では、表面形状測定部11および内部測定部21は、それぞれ同期して動作し、図4の例では、表面形状測定部11および内部測定部21それぞれは、測定開始後の時間Aのタイミングで、反射波の受信信号を受信する。その後、時間Bのタイミングで、表面形状測定部11は、反射波の受信信号を受信しないが、内部測定部21は、反射波の受信信号を受信する。
【0035】
すなわち、表面形状測定部11は、物体の表面から反射された赤外線を検出する。その一方で、THz波は、赤外線レーザの場合と異なり、電磁波の透過性と光の直進性(ビームとしての性質)の両方を有しているので、内部測定部21は、物体の表面から反射されたTHz波、および、物体の内部で反射されたTHz波を検出する。
【0036】
次に、図5を参照しながら、取得した受信情報およびスキャンミラー位相情報に基づいて、物体の表面形状および内部の状態の2次元情報を取得するフローについて説明する。
【0037】
CPU51は、赤外線レーザとTHz波の混合波62を照射してサンプル(物体)を走査するスキャンミラー41の位相に基づいて、サンプルの座標を計算する。そして、CPU51は、表面形状測定部11から出力される受信情報、および、内部測定部21から出力される受信情報に基づいて、サンプルの各座標の表面形状、および、サンプル内部の状態に関する3次元的な情報を取得する。
【0038】
ここで、CPU51は、反射に要した時間から、サンプルの奥行座標を計算する。図4の例で具体的に説明すると、時間Aにおける受信信号がサンプル表面を示すデータであるので、本実施形態では、CPU51は、時間Aでの赤外線レーザの受信情報に基づいて、サンプルの各座標の表面形状に関する状態の情報を取得する。また、時間B等の時間A後における受信信号がサンプル内部を示すデータであるので(すなわち、時間Aから受信信号を検出するまでの時間が、表面からの奥行きに関するデータとなるので)、本実施形態では、CPU51は、時間B等の時間A後でのTHz波の受信情報に基づいて、サンプル内部の状態を取得する。
【0039】
そして、CPU51は、取得したデータを用いて2次元スキャンを行い(すなわち、3Dデータを用いた2次元の図面化を行い)、サンプルの表面形状およびサンプルの内部の状態の2次元情報を取得する。
【0040】
次に、図6を参照しながら、ハーフミラーの反射特性、および、赤外線反射ミラーの反射特性について説明する。図6は、ハーフミラーと赤外線反射ミラーの反射特性の一例を示す図である。
【0041】
スキャナ装置1の走査において、測定物を反射して光が戻ってくる際に、どのような偏光状態であるか未知であるので、光学系における偏光特性の差が小さいことが好ましい。このような観点から、図6に示すように、ハーフミラー15の赤外線領域(75~400THz)の反射率特性、ハーフミラー25のTHz領域(0.1~10THz)の反射率特性、および、赤外線反射ミラー31の赤外線領域およびTHz領域の反射率特性に関して、S偏光の反射率平均値とP偏光反射率平均値の差は、20%以内に設定されると好ましく、10%以内に設定されるとより好ましい。これにより、より良好な測定を行うことができる。
【0042】
本実施形態によれば、表面形状測定部11と内部測定部21の測定において共通して使用するスキャンミラー41を1枚以上用いて構成することで、異なる性質の電磁波を用いて走査する場合であっても、装置の大型化および装置の高コスト化を抑制することができる。
【0043】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。例えば、前記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。さらに、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【0044】
例えば、物体を測定する際に、CPU51は、受信情報の入力に応じたリアルタイム的な処理を行い、物体の2次元情報を取得してもよい。その一方で、CPU51は、受信情報を記憶部52の補助記憶部に保存し、保存した受信情報を用いて物体の2次元情報を取得してもよい。
【0045】
スキャナ装置1は、同期した動作を実行するためのクロックを生成する適宜の構成(例えば、水晶発振器やPLL回路)を備えてもよい。
【0046】
ハーフミラー15は、反射波を赤外線受光部13に入射させる構成であればよく、出射する赤外線レーザを透過させ、受光する赤外線レーザを反射する構成であってもよい。同様に、ハーフミラー25は、反射波をTHz波受信部23に受信させる構成であればよく、発信するTHz波を反射させ、受信するTHz波を透過させる構成であってもよい。
【0047】
本実施形態では、赤外線レーザおよびTHz波をスキャンミラー41に入射させる赤外線反射ミラー(反射/透過ミラー)が用いられた。しかしながら、赤外線レーザおよびTHz波をスキャンミラー41に入射させることができればよく、THz波を反射させ、且つ、赤外線レーザを透過させるTHz波反射ミラー(反射/透過ミラー)が用いられてもよい。また、THz波反射ミラーを用いる場合においても、赤外線反射ミラーの場合と同様の反射特性とすることが好ましい。すなわち、THz波反射ミラーのTHz領域(0.1~10THz)および赤外線領域(75~400THz)の反射率特性では、S偏光の反射率平均値とP偏光反射率平均値の差は、20%以内に設定されると好ましく、10%以内に設定されるとより好ましい。
【0048】
スキャナ装置1は、据え置き型であってもよいし、携帯型であってもよい。
【0049】
スキャナ装置1は、外部の記憶媒体(例えば、USBフラッシュドライブ)とのデータの入出力に用いる装置を備えてもよい。そして、一例として、CPU51は、当該装置を介して、取得したデータを外部の記憶媒体に出力してもよい。
【0050】
スキャナ装置1は、測定データを用いて物体の情報を取得する際に、適宜の画像処理(例えば、ガウシアンフィルタ処理やメディアンフィルタ処理)を行ってもよい。
【0051】
スキャナ装置1は、物体の表面形状の情報を適切に取得することができれば、赤外線レーザに代えて他の波長帯のレーザを用いた測定を行ってもよい。この場合、実施形態と同様の観点に基づいて、スキャナ装置1の構成を当該波長帯に応じた構成に変更し、ミラーの反射特性を設定することができる。
【0052】
本実施形態に係る技術では、物体の表面形状の測定に赤外線レーザを用い、内部構造の測定にTHz波を用いることにより、それぞれの測定に適した精度の良いデータの取得が可能になる。また、表面形状の測定および内部構造の測定に用いる1枚以上のスキャンミラーをいずれの測定にも用いる構成とすることにより、小型化および低コスト化を実現したスキャナ装置を提供することが可能になる。これにより、国連の提唱する持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)の「9産業と技術革新の基盤をつくろう」に貢献する。
【0053】
また、本実施形態に係る技術を用いたスキャナ装置は、例えば、トンネル内壁や建築構造物内のひび割れ検知等への応用が期待でき、人々の生活に密接した交通インフラや公共施設、住宅等の安全性向上に貢献する。これにより、国連の提唱する持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)の「11住み続けられるまちづくりを」に貢献する。
【符号の説明】
【0054】
1 スキャナ装置
11 表面形状測定部
21 内部測定部
31 赤外線反射ミラー
41 スキャンミラー
51 CPU
図1
図2
図3
図4
図5
図6