(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167725
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】セメント含有疎水性材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 18/16 20230101AFI20231116BHJP
【FI】
C04B18/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079123
(22)【出願日】2022-05-13
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 発行者名:一般社団法人 廃棄物資源循環学会 刊行物名:廃棄物資源循環学会論文誌 巻数:第32巻 頁数:第147~156頁 発行年月日:令和4年2月12日
(71)【出願人】
【識別番号】591032703
【氏名又は名称】群馬県
(71)【出願人】
【識別番号】502046375
【氏名又は名称】ベスト資材株式会社
(72)【発明者】
【氏名】恩田 紘樹
(72)【発明者】
【氏名】黒崎 紘史
(72)【発明者】
【氏名】杉山 乃祐
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 和則
(57)【要約】
【課題】セメント含有材料の粉粒体の熱処理によって有機物を燃焼除去し、CSHが保持する水和水を除去しても再び空気中の湿気を吸収するため、建築構造物中に混練しても乾燥収縮ひび割れを抑制することが困難である。
【解決手段】本発明では、有機物が混合されたセメント含有材料の粉粒体に支燃性ガスを供給しながら900℃以上の温度で熱処理することで、有機物を燃焼除去できるだけでなく、表面親水性の低下と吸湿量の低減が可能となることを見出した。これにより、コンクリートの単位水量を低減でき、乾燥収縮に伴うひび割れを抑制できる。また、この他にも本発明は、例えばプラスチック成形品のフィラーや電気・電子部品に用いられる絶縁粉末といった低吸湿性が要求される用途で利用できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
50wt.%以下の割合で有機物を含むセメント含有材料の粉粒体を、支燃性ガスを供給しつつ、加熱手段により900℃以上~1200℃以下の温度で燃焼させ、前記セメント含有材料の粉粒体表面の親水性を低減させるセメント含有疎水性材料の製造方法。
【請求項2】
前記セメント含有材料の粉粒体が、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント、エコセメントのうち、少なくとも1種類以上を含有する請求項1に記載のセメント含有疎水性材料の製造方法。
【請求項3】
前記支燃性ガスが、空気、酸素、オゾン、亜酸化窒素、一酸化窒素、二酸化窒素よりなる群から少なくとも1種類以上を含有する請求項1に記載のセメント含有疎水性材料の製造方法。
【請求項4】
選択された前記支燃性ガスが、空気の場合、送り量が100aW/T~900aW/Tの範囲であり、選択された前記支燃性ガスが、酸素、オゾンまたは二酸化窒素の場合、送り量が20aW/T~180aW/Tの範囲であり、選択された前記支燃性ガスが、亜酸化窒素または一酸化窒素の場合、送り量が40aW/T~360aW/Tの範囲である請求項3に記載のセメント含有疎水性材料の製造方法。
ただし、前記支燃性ガスの送り量の単位記号において、Wは、前記セメント含有材料の一種の窯業系サイディングの重量(kg)を表し、aは、窯業系サイディングに含有される有機物の重量割合(wt.%) を表し、Tは、熱処理時間(分)を表す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフィラーや骨材に使用可能なセメント含有疎水性材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(セメント含有材料について)
建築物の住宅外壁材や外構などに利用されているコンクリート、モルタルあるいは窯業系サイディングを構成する主要のセメント含有材料は、セメントに繊維質原料、混和剤および水を添加し、任意の形状に成形して固形化したものである。
【0003】
上述のセメントにはケイ酸三カルシウム(エーライト、3CaO・SiO2)、ケイ酸二カルシウム(ビーライト、2CaO・SiO2)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)といった無機成分が含有されており、水と反応してセメント水和物(以下、CSHと呼称する。)を形成することにより硬化するようになる。また、セメント含有材料は表面吸着水の他、CSHが有する微細空隙への凝集水といった水分を保持しており、水分保持量は相対湿度によって可逆的に変動する。
【0004】
(セメント含有材料のリサイクルについて)
一方、セメント含有材料には機械的強度の向上や軽量化、保水性の向上といった機能性を付与する上に、デザイン性付与などを目的として有機物が混練されている。このようなセメント含有材料を建築物へ施工した後、建築物の取り壊し等で発生するセメント含有材料、あるいは工場におけるプレカットで発生する端材や粉末などは、廃棄する際の埋立地の確保難や、資源の有効活用の観点から、再利用する技術の確立が急務となっている。しかし、セメント含有材料のうち、特に窯業系サイディングの場合は有機物の混合割合が高く、またCSHと有機物を分離することも困難なため、現状でほとんど再利用されずに産業廃棄物として埋立処分されているのが現状である。
【0005】
このような背景から、これまで有機物を多く含むため再利用が困難だった窯業系サイディングを再利用する方法として、支燃性ガスを導入しながら500~600℃で加熱することにより有機物の燃焼除去と、CSHが保持する水和水の除去を同時に行う技術が提案されている。例えば、特許文献1および特許文献2などである。つまり、窯業系サイディング粉粒体も、熱処理することでCSHより水和水が除去され水分率を低減できる提案である。
【0006】
また、特許文献1および特許文献2によれば有機物を除去したセメント含有材料については、コンクリートやモルタルを製造する際の骨材として混合することで硬化時の発熱抑制や製造コストの低減に寄与できることも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-077572号
【特許文献2】特開2020-083727号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、セメント含有材料の粉粒体の熱処理によって有機物を燃焼除去し、CSHが保持する水和水を除去しても、再び空気中の湿気を吸収するため、建築構造物に利用したとしても、乾燥収縮ひび割れを抑制することが困難な場合が多い。以上のことから、表面親水性が低く(表面疎水性が高く)、なおかつ吸湿量の少ないセメント含有材料の粉粒体が希求されている。
【0009】
そこで本発明は、上述の問題点に鑑みて、使用済みのセメント含有材料の粉粒体を、コンクリート、モルタルあるいは窯業系サイディングなどに再利用した際の乾燥収縮ひび割れの抑制を可能にするため、疎水的な表面に改質する。なおかつ前述の疎水性が長期間持続するようなセメント含有疎水性材料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための手段1は、
50wt.%以下の割合で有機物を含むセメント含有材料の粉粒体に、支燃性ガスを供給しつつ、900℃以上~1200℃以下の温度範囲で燃焼効率よく加熱する方法である。すなわち、作用効果を考えた場合、先行技術とは全く異なる観点の発明であり、前述の粉粒体の形状があまり変形しない範囲で燃焼加熱するという方法により、含有される有機物を燃焼させ、取り除くのである。この結果、粉粒体の少なくとも表面の有機物を除去したセメント含有疎水性材料を製造する方法を提供する。
【0011】
このような手段1は、セメント含有材料をリサイクルするために種々の実験を通じ、非常に簡単な方法でセメント含有材料の粉粒体の表面の親水性を低減するにはどうすれば良いかを追求したことから見いだされ、その結果得られたセメント含有疎水性材料の製造方法の発明である。この様な方法で製造されたセメント含有疎水性材料を再利用し、コンクリートとする場合、単位水量を低減でき、乾燥収縮に伴うひび割れを抑制できる。また、例えば絶縁粉末やプラスチック成形品のフィラーといった低吸湿性が要求される材料として提供することができる。さらに、本発明における加熱処理により表面を疎水化した場合、一般的に使用される加工薬剤などを用いることも必要が無い。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、セメント含有材料の粉粒体の少なくとも表面を疎水的にし、なおかつ疎水性が長期間持続することが可能なセメント含有疎水性材料の製造方法を提供することができる。
【0013】
さらに、本発明により得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体は圧縮することで任意の形状に成形することが可能である。このため、例えば、汚れが付着しにくい外壁材や、内部への水分の侵入を抑制する防湿、防水パネルといった用途に利用できる。さらに本発明により、これまで廃棄されてきたコンクリート、モルタルおよび窯業系サイディングといったセメント含有材料の有効活用に寄与でき、建築系廃棄物量を削減できる。
【0014】
(課題を解決するためのその他の手段)
上記目的を達成するための手段2では、
前述の手段1において、セメント含有材料の粉粒体が、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント、エコセメントのうち、少なくとも1種類以上を含有しているセメント含有疎水性材料である。
【0015】
上述の手段2の発明によれば、すべての種類のポルトランドセメントに適用可能で、表面の疎水性を高め、かつその疎水性が長期間持続することが可能なセメント含有疎水性材料の製造方法を提供することができる。
【0016】
上記目的を達成するための手段3では、
前述の手段1において、前述の支燃性ガスが、空気、酸素、オゾン、亜酸化窒素、一酸化窒素、二酸化窒素よりなる群から少なくとも1種類以上を含に記載のセメント含有疎水性材料の製造方法を提供することができる。この手段3によれば、空気をはじめ各種ガスで加熱を効率よくさせることが可能となり、特に空気の場合、大気そのままの使用が可能であり、コストを低く抑えることが可能である。また、酸素、オゾン、亜酸化窒素、一酸化窒素、二酸化窒素のいずれかの雰囲気があれば、それらをそのまま使用が可能である。
【0017】
上記目的を達成するための手段4では、
前述の手段1において、前述の支燃性ガスの送り量の単位記号において、Wが窯業系サイディングの重量(kg)、aが窯業系サイディングに含有される有機物の重量割合(wt.%) 、Tを熱処理時間(分)とすると、選択される支燃性ガスが空気の場合、送り量が100aW/T~900aW/Tの範囲であり、選択される支燃性ガスが、酸素、オゾンまたは二酸化窒素の場合、送り量が20aW/T~180aW/Tの範囲であり、選択される支燃性ガスが、亜酸化窒素または一酸化窒素の場合、送り量が40aW/T~360aW/Tの範囲であるセメント含有疎水性材料の製造方法を提供することができる。この手段4によれば、様々な環境の中で、そこに存在する支燃性ガスを生かしながら本発明を実行できる。
【0018】
このように本発明によって、これまで廃棄されてきたコンクリート、モルタルおよび窯業系サイディングといったセメント含有材料の有効利活用に寄与でき、建築系廃棄物量の削減にもつながる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】セメント含有材料成形物の熱処理を行うための熱処理装置のうち、支燃性ガスとして空気を用いる場合の熱処理装置を模式的に表す図である。
【
図2】セメント含有材料成形物の熱処理を行うための熱処理装置のうち、空気以外の支燃性ガスを用いる場合の熱処理装置を模式的に表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、支燃性ガスを供給しながら900℃以上の温度で熱処理する熱処理工程により有機物の燃焼除去だけでなく、表面を疎水性に改質し、さらに吸湿量の低減が可能となる。かつこの表面親水性の低下と吸湿量の低減は長期間持続できることを見出したことによる。
【0021】
本発明におけるセメント含有疎水性材料の製造方法の好適な実施の形態について説明する。なお、以下に説明する実施の形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。
【0022】
(セメントの種類)
本発明に適用可能なセメント含有材料の粉粒体に含まれるセメントの種類について説明する。まず、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント、エコセメントなどが好ましい。普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメントがより好ましい。普通ポルトランドセメントが最も好ましい。一方、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント等のポルトランドセメントは、ロットによる成分変化が小さく、操作性が最も良いためである。
【0023】
(セメント含有材料の好適なサイズ)
本発明のセメント含有材料のサイズは、JIS Z8801に規定されている公称目開き32μmのふるいを通過し、公称目開き2mmのふるいを通過しないサイズが好ましく、公称目開き45μmのふるいを通過し、公称目開き1mmのふるいを通過しないサイズがより好ましい。さらには、公称目開き63μmのふるいを通過し、公称目開き106μmのふるいを通過しないサイズが最も好ましい。公称目開き32μmのふるいを通過するサイズの場合、飛散しやすいために取り扱い性が悪く、熱処理装置に用いられる部品のすき間に入り込むことで装置故障の原因となる懸念がある。一方、公称目開き2mmのふるいを通過しないサイズの場合にはセメント含有材料の粉粒体内部まで十分に疎水化できない懸念があり、また圧縮成形における成形性も低下する懸念があるためである。
【0024】
(セメント含有材料の粉粒体に混合されている有機物の種類)
本発明におけるセメント含有材料の粉粒体に混合されている有機物は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、フェノール系樹脂、アクリル、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリフェニレンサルファイド、ポリ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリメチルメタクリレート、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、スチレン・ブタジエンゴム、絹、羊毛、羽毛、木材、木綿、麻、リヨセル、テンセル、パルプ、レーヨン、キュプラ、アセテート、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、グリコール酸、乳酸、ヒドロアクリル酸、α-オキシ酪酸、グリセリン酸、タルトロン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、サリチル酸、m-オキシ安息香酸、p-オキシ安息香酸、没食子酸、マンデル酸、トロバ酸などのいずれかが含まれている。これらの有機物は、900℃以上の熱処理により熱分解除去されるため、セメント含有材料の粉粒体に含まれていても熱処理後の表面疎水性に影響しない。なお、これらの有機物については予めセメント含有材料に混合されていても良いし、圧縮成形時に添加しても良い。
【0025】
(有機物の混合割合)
本発明のセメント含有材料に含まれる有機物の割合は50wt.%以下が好ましく、35wt.%以下がより好ましく、25wt.%以下が最も好ましい。セメント含有材料に含まれる有機物の割合が50wt.%を超えるようになると、熱処理時に発生するタール分が多く残り、清掃などの作業が煩雑になる懸念がある。
【0026】
(セメント含有材料成形品の熱処理工程の概要)
本発明のセメント含有材料成形品の熱処理工程の概要について記載する。熱処理工程では窯業系サイディングに支燃性ガスを供給しながら900℃以上で熱処理する。ただし、1200℃を超えることにならないようにする。これによりセメント含有材料の粉粒体に含まれる有機物の熱分解除去やCSHの水和水の脱水が進行する。以下、熱処理工程について詳細を記載する。
【0027】
セメント含有材料成形品は
図1に模式的に示すような熱処理装置によって熱処理される。すなわち、セメント含有材料成形品1を石英管2内に設置する。支燃性ガスに空気を用いる場合にはコンプレッサー3から配管4を通じて石英管2内へ空気が供給される。昇温には熱供給装置5を用い、熱電対6および温度調節器7により石英管2内の温度が把握される。また、温度調節器7と熱供給装置5は配線8により接続されており、石英管2内が所定温度に到達すると、熱供給装置5による熱供給が停止する。
【0028】
また、熱処理中にセメント含有材料成形品1が支燃性ガスにより移動し、石英管2の外に放出することを防止するため、石英管2内に石英ウール9aおよび石英ウール9bを設置する。
【0029】
さらに、コンプレッサー3からの空気が全量石英管2へ導入されるようにするため、石英管2と配管4とは耐熱材料よりなる栓10で接続する。さらに、支燃性ガスの流量調節はマスフローコントローラー11により行われる。
【0030】
支燃性ガスに空気以外のものを使用する場合には、
図3に模式的に示すように、コンプレッサー3の代わりに圧力調整器12と支燃性ガスが充填された高圧ガスボンベ13を配管4に接続すればよい。
【0031】
(熱処理温度)
本発明のセメント含有材料の粉粒体の熱処理温度は900℃以上で、かつ1200℃以下が好ましく、900℃以上1000℃以下がより好ましく、900℃以上で、かつ950℃以下が最も好ましい。900℃未満では、熱処理後のセメント含有材料の粉粒体表面が十分に疎水化されない可能性が高く、乾湿繰り返しによって表面疎水性が低下(親水化)する可能性がある。また、1200℃より高い温度ではセメント分が溶融し、粉粒体としての形状を維持できない可能性がある。
【0032】
(熱処理時間)
本発明における熱処理時間は15分以上60分以内が好ましく、20分以上で、かつ40分以下がより好ましく、25分以上で、かつ35分以下が最も好ましい。熱処理時間が15分未満の場合には有機物や水分が十分に燃焼除去されない懸念や、表面の疎水化が十分に進行しない懸念があり、また60分より長い時間熱処理しても有機物の燃焼除去や表面疎水性に変化は見られず、産業上の意義が希薄になるためである。
【0033】
(熱供給装置5の熱源)
本発明のセメント含有材料の粉粒体の熱処理には電気、都市ガスやLPGのガスボイラー、灯油や重油等の液体燃料ボイラーいずれも好ましく利用できるが、電気による熱処理が最も好ましい。これは、セメント含有材料成形品の昇温が均一なためである。
【0034】
(支燃性ガスの種類)
本発明の支燃性ガスは、空気、酸素、オゾン、亜酸化窒素、一酸化窒素、二酸化窒素が好ましく、空気および酸素がより好ましく、空気が最も好ましい。空気はコンプレッサーを用いて容易に供給可能で、かつ取り扱い性も良く、低コストなためである。また、酸素は入手が比較的容易で、効率よく窯業系サイディング中の有機物を熱分解除去できるため空気に次いで好ましい。さらにオゾン、亜酸化窒素、一酸化窒素、二酸化窒素は腐食性ガスであり、熱処理装置の金属部材が腐食しやすい懸念があるものの、空気よりも効率よく窯業系サイディング中の有機物を熱分解除去できるというメリットがある。なお、上記の支燃性ガスは、それぞれ単独で供給しても良いし、2種類以上を混合して供給してもかまわない。
【0035】
(熱処理工程における支燃性ガス送り量)
熱処理工程における支燃性ガス送り量は、セメント含有材料の粉粒体粉粒体の重量およびセメント含有材料の粉粒体粉粒体に含有される有機物の重量割合、および熱処理時間により決定される。
【0036】
熱処理工程の支燃性ガスとして空気を用いる場合、支燃性ガス送り量は、以下の数1式を満たすことが好ましい。なお、Aは支燃性ガス送り量(mL/min)、Wはセメント含有材料の粉粒体の重量(g)を、aはセメント含有材料の粉粒体に含有される有機物の重量割合(wt.%)およびTは熱処理時間(分)をそれぞれ表す。
【0037】
【0038】
空気の供給量は100aW/T以上~900aW/T以下が好ましく、200aW/T以上~700aW/T以下がより好ましく、400aW/T以上~500aW/T以下が最も好ましい。支燃性ガス送り量が100aW/Tより少ない場合、有機物が完全燃焼せず、十分に除去されない懸念がある。一方、900aW/Tより多い場合、有機物の除去効果や表面親水性、吸湿性に違いが見られないが、支燃性ガス自体の加熱に必要なエネルギーが大きくなり、処理コストの増大に繋がる懸念があるためである。
【0039】
また、熱処理工程において、支燃性ガスとして酸素、オゾンおよび二酸化窒素のいずれかを用いる場合、支燃性ガス送り量は、以下の数2式を満たすことが好ましい。なお、数1式と同様、Aは支燃性ガス送り量(mL/min)、Wはセメント含有材料の粉粒体の重量(g)を、aはセメント含有材料の粉粒体に含有される有機物の重量割合(wt.%)およびTは熱処理時間(分)をそれぞれ表す。
【0040】
【0041】
この場合の支燃性ガス供給量は、20aW/T以上ないし180aW/T以下が好ましく、60aW/T以上ないし140aW/T以下がより好ましく、80aW/T以上ないし100aW/T以下が最も好ましい。支燃性ガスの送り量が20aW/Tより少ない場合には有機物が不完全燃焼し、有機物を十分に除去できない懸念があり、一方180aW/Tより多い場合には有機物の除去効果や表面親水性、吸湿性に違いが見られず、産業上の意義が希薄になるためである。
【0042】
さらに、熱処理工程において、支燃性ガスとして亜酸化窒素および一酸化窒素のいずれかを用いる場合、支燃性ガス送り量は、以下の数3式を満たすことが好ましい。なお、数1式と同様、Aは支燃性ガス送り量(mL/min)、Wはセメント含有材料の粉粒体の重量(g)を、aはセメント含有材料の粉粒体に含有される有機物の重量割合(wt.%)およびTは熱処理時間(分)をそれぞれ表す。
【0043】
【0044】
この場合の支燃性ガス供給量は40aW/T以上ないし360aW/T以下が好ましく、80aW/T以上ないし240aW/T以下がより好ましく、120aW/T以上ないし150aW/T以下が最も好ましい。支燃性ガスの送り量が40aW/Tより少ない場合には有機物が不完全燃焼し、有機物を十分に除去できない懸念がある。一方360aW/Tより多い場合には有機物の除去効果や表面親水性、吸湿性に違いが見られず、産業上の意義が希薄になるためである。
【0045】
(熱処理後のセメント含有材料における粉粒体の成形)
熱処理後のセメント含有材料の粉粒体については、圧縮成形などにより任意の形状に成形することも可能である。また、用途に応じて熱処理後のセメント含有材料の粉粒体に染料や顔料といった着色材、抗菌剤や芳香剤といった機能性物質を混合しても良い。
【実施例0046】
以下に、好ましい熱処理後のセメント含有材料の粉粒体の成形を得るための実施例を示し、より詳細に説明する。なお、実施例は本発明を詳細に説明するためのものであり、本発明を限定的に捉えてはならない。
【0047】
[実施例1]
(セメント含有材料の粉粒体の粉粒体)
本実施例におけるセメント含有材料の粉粒体には外壁裁断加工で生じた窯業系サイディング粉粒体のうち、JIS Z8801に規定されている公称目開き63μmのふるいを通過し、公称目開き106μmのふるいを通過しないサイズのものを使用した。さらに、本実施例で用いたセメント含有材料について熱分解GC/MS分析により含有される有機物の定性分析を行ったところ、原綿およびスチレン・ブタジエンゴムが検出された。
【0048】
(比較試料)
建築構造物の乾燥収縮ひび割れを抑制することを目的とした吸水性の低い骨材(以下、低吸水性骨材)として石灰岩が用いられる。そこで比較試料としてJIS Z8801に規定されている公称目開き63μmのふるいを通過し、公称目開き106μmのふるいを通過しないサイズとなるように粉砕した石灰岩(米山薬品工業製)を使用した。
【0049】
(セメント含有材料の粉粒体に含まれる有機物量)
本実施例におけるセメント含有材料の粉粒体について、熱重量示差熱分析装置(MACサイエンス製、DTM-2000)により、温度域を室温から600℃、昇温速度を10℃/minの条件で熱重量測定を行い、以下の数4式により、有機物の重量割合を算出した。なお、aはセメント含有材料の粉粒体に含有される有機物の重量割合(wt.%)、WR600はセメント含有材料の粉粒体の熱重量測定を行った時の600℃時点における重量残存率(wt.%)をそれぞれ表す。
【0050】
【0051】
熱重量測定の結果、600℃時点における重量残存率は75.3wt.%だったことから、セメント含有材料の粉粒体に含有される有機物の重量割合は24.7wt.%であることが示された。
【0052】
(熱処理を伴うセメント含有材料における粉粒体の作成)
セメント含有材料の粉粒体0.52gを
図1に示す熱処理装置の石英管2内に設置した。なお、石英管2の直径は20mm、炉長は300mmとした。また、熱供給装置16には横置き型電気環状炉(光洋製、KTF030N1)を用い、支燃性ガスとして空気を180ml/minで供給しながら900℃で30分間熱処理を行った。熱処理後、室温になるまで自然冷却し、これを本実施例における熱処理後のセメント含有材料の粉粒体とした。
【0053】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における外観評価)
得られた熱処理後のセメント含有材料粉粒体および熱処理後の石英管2内の外観について、表1に示す5段階評価を基に、評価を行った。
【0054】
【0055】
(外観評価)
本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料における粉粒体について外観評価を行ったところ、その評価は5だった。
【0056】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における重量残存率)
本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体について熱重量測定を行った結果、600℃時点における重量残存率は99.8%だった。このことから、本実施例の熱処理後のセメント含有材料の粉粒体に有機物はほとんど含まれていないことが確認できた。
【0057】
(N2比表面積の算出)
本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体および、多検体ガス吸着量測定装置(アントンパール製、Autosorb-iQ2-XR-VP)を用い、吸着ガス種を窒素として液体窒素温度における吸着等温線測定を行った。また、相対圧0.1、0.2および0.3の時における窒素吸着量からBET法により比表面積を算出し、これをN2比表面積とした。また、比較試料として熱処理前のセメント含有材料の粉粒体、および石灰岩についてもN2比表面積を算出した。
【0058】
(水蒸気吸着等温線測定およびH2O比表面積の算出)
本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体について、前述の多検体ガス吸着量測定装置を用い、吸着ガス種を水蒸気として25℃における吸着等温線測定を行った。また相対圧範囲は0~0.9とし、相対圧0.05ごとに水蒸気吸着量を測定した。また、相対圧0.1、0.2および0.3の時の水蒸気吸着量からBET法により比表面積を算出し、これをH2O比表面積とした。また、比較試料としてセメント含有材料の粉粒体、石灰岩についてもH2O比表面積を算出した。
【0059】
(セメント含有材料の粉粒体における表面親水性評価)
本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料における粉粒体の表面親水性を評価するため、液体窒素温度における窒素の吸着等温線からN2比表面積を、25℃における水蒸気吸着等温線からH2O比表面積を算出し、H2O比表面積をN2比表面積で割った値(以下、H2O比表面積/N2比表面積と表記する。)を熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における表面親水性指標とした。
【0060】
(セメント含有材料の粉粒体におけるN2比表面積)
まず、熱処理前のセメント含有材料の粉粒体について、液体窒素温度における窒素の吸着等温線からN2比表面積を算出したところ、20.7m2/gだった。
【0061】
(セメント含有材料の粉粒体におけるH2O比表面積)
また、セメント含有材料の粉粒体について、25℃における水蒸気の吸着等温線からH2O比表面積を算出したところ、106.0m2/gだった。
【0062】
(セメント含有材料の粉粒体における表面親水性指標)
このことから、熱処理前セメント含有材料の粉粒体におけるH2O比表面積/N2比表面積は5.12だった。
【0063】
(石灰岩のN2比表面積)
また石灰岩について、液体窒素温度における窒素の吸着等温線からN2比表面積を算出したところ、1.7m2/gだった。
【0064】
(石灰岩のH2O比表面積)
また、セメント含有材料の粉粒体について、25℃における水蒸気の吸着等温線からH2O比表面積を算出したところ、1.5m2/gだった。
【0065】
(石灰岩の表面親水性指標)
このことから、熱処理前セメント含有材料の粉粒体におけるH2O比表面積/N2比表面積は0.88だった。
【0066】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体におけるN2比表面積)
一方、本実施例で得られた熱処理セメント含有材料の粉粒体について、液体窒素温度における窒素の吸着等温線からN2比表面積を算出したところ、2.0m2/gだった。
【0067】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体におけるH2O比表面積)
また、本実施例で得られた熱処理セメント含有材料の粉粒体について、25℃における水蒸気の吸着等温線からH2O比表面積を算出したところ、1.7m2/gだった。
【0068】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における表面親水性指標)
このことから、本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体のH2O比表面積/N2比表面積は0.85だった。
【0069】
(多湿環境における水蒸気吸着量)
熱処理前のセメント含有材料の粉粒体、石灰岩および本実施例で得られた熱処理セメント含有材料の粉粒体1g当たりの相対湿度90%時点における水蒸気吸着量は、それぞれ90.3mg、1.9mgおよび1.8mgだった。
【0070】
(乾湿繰り返し処理)
乾燥や湿潤を繰り返すことによる熱処理後のセメント含有材料の粉粒体のN2比表面積およびH2O比表面積変化について評価するため、が恒温恒湿機(東京理化機械(株)製,KCL-2000W)を使用し,25℃、相対湿度40%の乾燥条件で12時間静置後、40℃、相対湿度90%の湿潤条件で12時間静置する処理を1サイクルとして180サイクル(180日)繰り返した。
【0071】
(乾湿繰り返し処理後での熱処理後のセメント含有材料の粉粒体におけるN2比表面積およびH2O比表面積)
180サイクルの乾湿繰り返し処理後に本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体について、N2比表面積およびH2O比表面積を測定したところ、それぞれ2.0m2/gおよび1.8m2/gだった。
【0072】
(評価基準)
1)熱処理後のセメント含有材料の粉粒体の外観については、表1に示す5段階評価のうち4以上で基準を満たすこととした。
2)熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における表面親水性指標であるH2O比表面積/N2比表面積が、熱処理前のセメント含有材料の粉粒体のH2O比表面積/N2比表面積(5.12)よりも低い場合には、熱処理により表面の親水性が低下したこと、つまり表面の疎水性が高くなったことを表す。しかし、コンクリートの乾燥収縮ひび割れを抑制する骨材、絶縁粉末やプラスチック成形品のフィラーとしての用途を考慮し、表面親水性指標の基準については、熱処理後のセメント含有材料の粉粒体表面のH2O比表面積/N2比表面積の値が1.05未満とした。なお、数値1.05は、石灰岩のH2O比表面積/N2比表面積(0.88)の1.2倍に相当する値である。
3)相対湿度90%時点における熱処理後のセメント含有材料1g当たりの水蒸気吸着量が、粉粒体熱処理前のセメント含有材料の粉粒体の相対湿度90%時点における1g当たりの水蒸気吸着量(90.3mg)と比べて、小さい値であれば熱処理により吸湿性が低下したことを表す。しかし、コンクリートの乾燥収縮ひび割れを抑制する骨材、絶縁粉末やプラスチック成形品のフィラーとしての用途を考慮し、水蒸気吸着量の基準については、相対湿度90%時点における熱処理後のセメント含有材料1g当たりの水蒸気吸着量が2.28mg未満とした。なお、数値2.28mgは、相対湿度90%時点における石灰岩1gあたりの水蒸気吸着量(1.9mg)の1.2倍に相当する値である。
4)180サイクルの乾湿繰り返し処理によるN2比表面積の増加率とH2O比表面積の増加率がいずれも、乾湿繰り返し前の初期値の10%未満であれば、乾湿繰り返し処理によるN2比表面積とH2O比表面積の変化に関する基準を満たすこととした。
上述の1)~4)の評価基準を全て満たしたとき、総合評価を適とした。また、この評価基準を全て満たすことで、再生材料ではあるが、フィラーや骨材として使用可能な優れた材料であることを示している。
【0073】
(総合評価)
以上の結果から、本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における表面親水性指標は、熱処理前のセメント含有材料の粉粒体の0.166倍、石灰岩のそれの0.966倍であった。また、本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体の相対湿度90%における水蒸気吸着量は、熱処理前のセメント含有材料の粉粒体の0.020倍、石灰岩の0.947倍だった。このように、セメント含有材料の粉粒体は、本実施例による熱処理によって十分に表面疎水化されたと考えられる。さらに、180サイクルの乾湿繰り返し処理によるN2比表面積やH2O比表面積の増加率が乾湿繰り返し前の10%以下だった。以上のことから、本実施例の総合評価は適であった。
【0074】
[実施例2]
(セメント含有材料の粉粒体)
本実施例におけるセメント含有材料の粉粒体には、外壁裁断加工で生じた窯業系サイディング粉粒体のうち、JIS Z8801に規定されている公称目開き63μmのふるいを通過し、公称目開き106μmのふるいを通過しないサイズのものを使用した。また、本実施例で用いたセメント含有材料の粉粒体について実施例1と同様の方法により、含有有機物の定性分析を行ったところ、パルプが検出された。
【0075】
(セメント含有材料の粉粒体に含まれる有機物量)
本実施例におけるセメント含有材料の粉粒体について、実施例1と同様の方法により含有される有機物の重量割合を算出したところ、5.4wt.%だった。
【0076】
(熱処理を伴うセメント含有材料の粉粒体の作製)
セメント含有材料の粉粒体0.81gを
図1に示した熱処理装置に設置した。また、支燃性ガスは酸素とし、支燃性ガス導入量を10ml/min、熱処理温度を1000℃、熱処理時間を35分とした以外は実施例1に記載の方法と同様の方法で作製した。
【0077】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における外観評価)
本実施例の熱処理後のセメント含有材料の粉粒体および熱処理後の石英管2内の外観について、表1に示す5段階評価を行ったところ、評価は5だった。
【0078】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における熱重量測定)
本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体について、実施例1と同様の方法で熱重量測定を行ったところ、600℃時点における重量残存率は99.8%だった。このことから、本実施例の熱処理セメント含有材料の粉粒体に有機物はほとんど含まれないと考えられた。
【0079】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体におけるN2比表面積)
本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体について、液体窒素温度における窒素の吸着等温線からN2比表面積を算出したところ、1.8m2/gだった。
【0080】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体におけるH2O比表面積)
また、本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体について、25℃における水蒸気の吸着等温線からH2O比表面積を算出したところ、1.5m2/gだった。
【0081】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における表面親水性指標)
このことから、本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体のH2O比表面積/N2比表面積は0.83だった。
【0082】
(多湿環境における水蒸気吸着量)
本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体1g当たりの相対湿度90%時点における水蒸気吸着量は1.5mgだった。
【0083】
(乾湿繰り返し処理)
本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体の乾湿繰り返し処理は実施例1に記載の方法と同様の方法で行った。
【0084】
(乾湿繰り返し処理後において、熱処理後のセメント含有材料の粉粒体におけるN2比表面積およびH2O比表面積)
180サイクルの乾湿繰り返し処理後に本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体のN2比表面積およびH2O比表面積を測定したところ、それぞれ1.9m2/gおよび1.6m2/gだった。
【0085】
(総合評価)
以上の結果から、本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における表面親水性指標は、実施例1に記載した熱処理前のセメント含有材料の粉粒体のそれの0.163倍、石灰岩のそれの0.947倍であった。また本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における相対湿度90%の水蒸気吸着量は、実施例1に記載した熱処理前のセメント含有材料の粉粒体のそれの0.017倍、石灰岩のそれの0.789倍だった。このように、セメント含有材料の粉粒体は本実施例による熱処理によって十分に表面疎水化されたと考えられる。さらに180サイクルの乾湿繰り返し処理によるN2比表面積やH2O比表面積の増加率が乾湿繰り返し前の10%以下だった。以上のことから、本実施例の総合評価は適であった。
【0086】
[実施例3]
(セメント含有材料の粉粒体)
本実施例におけるセメント含有材料の粉粒体には、外壁裁断加工で生じた窯業系サイディング粉粒体のうち、JIS Z8801に規定されている公称目開き63μmのふるいを通過し、公称目開き106μmのふるいを通過しないサイズのものを使用した。また、本実施例で用いたセメント含有材料の粉粒体について、実施例1と同様の方法により、含有有機物の定性分析を行ったところ、パルプが検出された。
【0087】
(セメント含有材料の粉粒体に含まれる有機物量)
本実施例におけるセメント含有材料の粉粒体について、実施例1と同様の方法により含有される有機物の重量割合を算出したところ、15.7wt.%だった。
【0088】
(熱処理を伴うセメント含有材料の粉粒体の作製)
セメント含有材料の粉粒体1.22gを
図1に示した熱処理装置に設置した。また、支燃性ガスは亜酸化窒素とし、支燃性ガス導入量を50ml/min、熱処理温度を1000℃、熱処理時間を20分とした以外は実施例1に記載の方法と同様の方法で作製した。
【0089】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における外観評価)
本実施例の熱処理後のセメント含有材料の粉粒体および熱処理後の石英管2内の外観について、表1に示す5段階評価を行ったところ、評価は5だった。
【0090】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における熱重量測定)
本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体について、実施例1と同様の方法で熱重量測定を行ったところ、600℃時点における重量残存率は99.6%だった。このことから、本実施例の熱処理セメント含有材料の粉粒体に有機物はほとんど含まれないと考えられた。
【0091】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体におけるN2比表面積)
本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体について、液体窒素温度における窒素の吸着等温線からN2比表面積を算出したところ、1.8m2/gだった。
【0092】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体におけるH2O比表面積)
また、本実施例で得られた熱処理セメント含有材料の粉粒体について、25℃における水蒸気の吸着等温線からH2O比表面積を算出したところ、1.5m2/gだった。
【0093】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における表面親水性指標)
このことから、本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体のH2O比表面積/N2比表面積は0.83だった。
【0094】
(多湿環境における水蒸気吸着量)
本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体1g当たりの相対湿度90%時点における水蒸気吸着量は1.5mgだった。
【0095】
(乾湿繰り返し処理)
本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における乾湿繰り返し処理は実施例1に記載の方法と同様の方法で行った。
【0096】
(乾湿繰り返し処理後における熱処理後のセメント含有材料の粉粒体におけるN2比表面積およびH2O比表面積)
180サイクルの乾湿繰り返し処理後に本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体におけるN2比表面積およびH2O比表面積を測定したところ、それぞれ1.8m2/gおよび1.5m2/gだった。
【0097】
(総合評価)
以上の結果から、本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における表面親水性指標は、実施例1に記載した熱処理前のセメント含有材料の粉粒体におけるそれの0.163倍、石灰岩のそれの0.947倍であり、また本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における相対湿度90%の水蒸気吸着量は、実施例1に記載した熱処理前のセメント含有材料の粉粒体のそれの0.018倍、石灰岩のそれの0.842倍だった。このように、セメント含有材料の粉粒体は本実施例による熱処理によって十分に表面疎水化されたと考えられる。さらに180サイクルの乾湿繰り返し処理によるN2比表面積やH2O比表面積の増加率が乾湿繰り返し前の10%以下だった。以上のことから、本実施例の総合評価は適であった。
【0098】
[実施例4]
(セメント含有材料の粉粒体)
本実施例におけるセメント含有材料の粉粒体には、外壁裁断加工で生じた窯業系サイディング粉粒体のうち、JIS Z8801に規定されている公称目開き63μmのふるいを通過し、公称目開き106μmのふるいを通過しないサイズのものを使用した。また、本実施例で用いたセメント含有材料の粉粒体について、実施例1と同様の方法により、含有有機物の定性分析を行ったところ、原綿およびスチレン・ブタジエンゴムが検出された。
【0099】
(セメント含有材料の粉粒体に含まれる有機物量)
本実施例におけるセメント含有材料の粉粒体について、実施例1と同様の方法により含有される有機物の重量割合を算出したところ、24.9wt.%だった。
【0100】
(熱処理を伴うセメント含有材料の粉粒体の作製)
セメント含有材料の粉粒体0.55gを
図1に示した熱処理装置に設置した。また、支燃性ガスは酸素とし、支燃性ガス導入量を20ml/min、熱処理時間を60分とした以外は実施例1に記載の方法と同様の方法で作製した。
【0101】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における外観評価)
本実施例における熱処理後のセメント含有材料の粉粒体および熱処理後の石英管2内の外観について、表1に示す5段階評価を行ったところ、評価は5だった。
【0102】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における熱重量測定)
本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体について、実施例1と同様の方法で熱重量測定を行ったところ、600℃時点における重量残存率は99.7%だった。このことから、本実施例における熱処理後のセメント含有材料の粉粒体に有機物はほとんど含まれないと考えられた。
【0103】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体におけるN2比表面積)
本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体について、液体窒素温度における窒素の吸着等温線からN2比表面積を算出したところ、2.0m2/gだった。
【0104】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体におけるH2O比表面積)
また、本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体について、25℃における水蒸気の吸着等温線からH2O比表面積を算出したところ、1.8m2/gだった。
【0105】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における表面親水性指標)
このことから、本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体のH2O比表面積/N2比表面積は0.90だった。
【0106】
(多湿環境における水蒸気吸着量)
本実施例で得られた熱処理セメント含有材料の粉粒体1g当たりの相対湿度90%時点における水蒸気吸着量は1.8mgだった。
【0107】
(乾湿繰り返し処理)
本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体の乾湿繰り返し処理は実施例1に記載の方法と同様の方法で行った。
【0108】
(乾湿繰り返し処理後における熱処理後のセメント含有材料の粉粒体におけるN2比表面積およびH2O比表面積)
180サイクルの乾湿繰り返し処理後に本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体におけるN2比表面積およびH2O比表面積を測定したところ、それぞれ2.1m2/gおよび1.9m2/gだった。
【0109】
(総合評価)
以上の結果から、本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における表面親水性指標は、実施例1に記載した熱処理前のセメント含有材料の粉粒体の0.176倍、石灰岩の1.023倍であり、また本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における相対湿度90%の水蒸気吸着量は、実施例1に記載した熱処理前のセメント含有材料の粉粒体の0.020倍、石灰岩の0.947倍だった。このように、セメント含有材料の粉粒体は本実施例による熱処理によって十分に表面疎水化されたと考えられる。さらに180サイクルの乾湿繰り返し処理によるN2比表面積やH2O比表面積の増加率が乾湿繰り返し前の10%以下だった。以上のことから、本実施例の総合評価は適であった。
【0110】
[実施例5]
(セメント含有材料の粉粒体)
本実施例におけるセメント含有材料の粉粒体には外壁裁断加工で生じた窯業系サイディング粉粒体のうち、JIS Z8801に規定されている公称目開き63μmのふるいを通過し、公称目開き106μmのふるいを通過しないサイズのものを使用した。また、本実施例で用いたセメント含有材料の粉粒体について実施例1と同様の方法により、含有有機物の定性分析を行ったところ、原綿およびスチレン・ブタジエンゴムが検出された。
【0111】
(セメント含有材料の粉粒体に含まれる有機物量)
本実施例におけるセメント含有材料の粉粒体について、実施例1と同様の方法により含有される有機物の重量割合を算出したところ、11.4wt.%だった。
【0112】
(熱処理を伴うセメント含有材料の粉粒体の作製)
セメント含有材料の粉粒体0.27gを
図1に示した熱処理装置に設置した。また、支燃性ガス導入量を100ml/min、熱処理温度を950℃、熱処理時間を15分とした以外は実施例1に記載の方法と同様の方法で作製した。
【0113】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における外観評価)
本実施例の熱処理後のセメント含有材料の粉粒体および熱処理後の石英管2内の外観について、表1に示す5段階評価を行ったところ、評価は5だった。
【0114】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における熱重量測定)
本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体について、実施例1と同様の方法で熱重量測定を行ったところ、600℃時点における重量残存率は99.8%だった。このことから、本実施例の熱処理後のセメント含有材料の粉粒体に有機物はほとんど含まれないと考えられた。
【0115】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体におけるN2比表面積)
本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体について、液体窒素温度における窒素の吸着等温線からN2比表面積を算出したところ、1.9m2/gだった。
【0116】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体におけるH2O比表面積)
また、本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体について、25℃における水蒸気の吸着等温線からH2O比表面積を算出したところ、1.6m2/gだった。
【0117】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における表面親水性指標)
このことから、本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体のH2O比表面積/N2比表面積は0.84だった。
【0118】
(多湿環境における水蒸気吸着量)
本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体1g当たりの相対湿度90%時点における水蒸気吸着量は1.7mgだった。
【0119】
(乾湿繰り返し処理)
本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体の乾湿繰り返し処理は実施例1に記載の方法と同様の方法で行った。
【0120】
(乾湿繰り返し処理後における熱処理後のセメント含有材料の粉粒体におけるN2比表面積およびH2O比表面積)
180サイクルの乾湿繰り返し処理後に本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体におけるN2比表面積およびH2O比表面積を測定したところ、それぞれ1.9m2/gおよび1.7m2/gだった。
【0121】
(総合評価)
以上の結果から、本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における表面親水性指標は、実施例1に記載した熱処理前のセメント含有材料の粉粒体のそれの0.164倍、石灰岩のそれの0.957倍であり、また本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における相対湿度90%の水蒸気吸着量は、実施例1に記載した熱処理前のセメント含有材料の粉粒体のそれの0.019倍、石灰岩のそれの0.895倍だった。このように、セメント含有材料の粉粒体は本実施例による熱処理によって十分に表面疎水化されたと考えられた。さらに180サイクルの乾湿繰り返し処理によるN2比表面積やH2O比表面積の増加率が乾湿繰り返し前の10%以下だった。以上のことから、本実施例の総合評価は適であった。
【0122】
[実施例6]
(セメント含有材料の粉粒体)
本実施例におけるセメント含有材料の粉粒体には外壁裁断加工で生じた窯業系サイディング粉粒体のうち、JIS Z8801に規定されている公称目開き63μmのふるいを通過し、公称目開き106μmのふるいを通過しないサイズのものを使用した。また、本実施例で用いたセメント含有材料の粉粒体について、実施例1と同様の方法により、含有有機物の定性分析を行ったところ、パルプが検出された。
【0123】
(セメント含有材料の粉粒体に含まれる有機物量)
本実施例におけるセメント含有材料の粉粒体について、実施例1と同様の方法により含有される有機物の重量割合を算出したところ、50.0wt.%だった。
【0124】
(熱処理に伴うセメント含有材料の粉粒体の作製)
セメント含有材料の粉粒体2.11gを
図1に示した熱処理装置に設置した。また、支燃性ガス導入量を360ml/min、熱処理温度を1000℃とした以外は実施例1に記載の方法と同様の方法で作製した。
【0125】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における外観評価)
本実施例の熱処理後のセメント含有材料の粉粒体および熱処理後の石英管2内の外観について、表1に示す5段階評価を行ったところ、評価は5だった。
【0126】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における熱重量測定)
本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体について、実施例1と同様の方法で熱重量測定を行ったところ、600℃時点における重量残存率は99.8%だった。このことから、本実施例の熱処理後のセメント含有材料の粉粒体に有機物はほとんど含まれないと考えられた。
【0127】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体におけるN2比表面積)
本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体について、液体窒素温度における窒素の吸着等温線からN2比表面積を算出したところ、1.7m2/gだった。
【0128】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体におけるH2O比表面積)
また、本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体について、25℃における水蒸気の吸着等温線からH2O比表面積を算出したところ、1.4m2/gだった。
【0129】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における表面親水性指標)
このことから、本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料における粉粒体のH2O比表面積/N2比表面積は0.82だった。
【0130】
(多湿環境における水蒸気吸着量)
本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体1g当たりの相対湿度90%時点における水蒸気吸着量は1.5mgだった。
【0131】
(乾湿繰り返し処理)
本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における乾湿繰り返し処理は実施例1に記載の方法と同様の方法で行った。
【0132】
(乾湿繰り返し処理後において、熱処理後のセメント含有材料の粉粒体におけるN2比表面積およびH2O比表面積)
180サイクルの乾湿繰り返し処理後に本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体におけるN2比表面積およびH2O比表面積を測定したところ、それぞれ1.8m2/gおよび1.5m2/gだった。
【0133】
(総合評価)
以上の結果から、本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体の表面親水性指標は、実施例1に記載した熱処理前のセメント含有材料の粉粒体におけるそれの0.161倍、石灰岩のそれの0.936倍であった。また本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における相対湿度90%の水蒸気吸着量は、実施例1に記載した熱処理前のセメント含有材料の粉粒体のそれの0.017倍、石灰岩のそれの0.789倍だった。このように、セメント含有材料の粉粒体は本実施例による熱処理によって十分に表面疎水化されたと考えられる。さらに180サイクルの乾湿繰り返し処理によるN2比表面積やH2O比表面積の増加率が乾湿繰り返し前の10%以下だった。以上のことから、本実施例の総合評価は適であった。
【0134】
[実施例7]
(セメント含有材料の粉粒体)
本実施例におけるセメント含有材料の粉粒体には、外壁裁断加工で生じた窯業系サイディング粉粒体のうち、JIS Z8801に規定されている公称目開き63μmのふるいを通過し、公称目開き106μmのふるいを通過しないサイズのものを使用した。また、本実施例で用いたセメント含有材料の粉粒体について、実施例1と同様の方法により、含有有機物の定性分析を行ったところ、原綿が検出された。
【0135】
(セメント含有材料の粉粒体に含まれる有機物量)
本実施例におけるセメント含有材料の粉粒体について、実施例1と同様の方法により含有される有機物の重量割合を算出したところ、10.9wt.%だった。
【0136】
(熱処理を伴うセメント含有材料の粉粒体の作製)
セメント含有材料の粉粒体0.53gを
図1に示した熱処理装置に設置した。また、支燃性ガスは酸素とし、支燃性ガス導入量を20ml/min、熱処理時間を45分とした以外は実施例1に記載の方法と同様の方法で作製した。
【0137】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体おける外観評価)
本実施例の熱処理後のセメント含有材料の粉粒体および熱処理後の石英管2内の外観について、表1に示す5段階評価を行ったところ、評価は5だった。
【0138】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における熱重量測定)
本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体について、実施例1と同様の方法で熱重量測定を行ったところ、600℃時点における重量残存率は99.8%だった。このことから、本実施例の熱処理後のセメント含有材料の粉粒体に有機物はほとんど含まれないと考えられた。
【0139】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体におけるN2比表面積)
本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体について、液体窒素温度における窒素の吸着等温線からN2比表面積を算出したところ、1.9m2/gだった。
【0140】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体におけるH2O比表面積)
また、本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体について、25℃における水蒸気の吸着等温線からH2O比表面積を算出したところ、1.8m2/gだった。
【0141】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における表面親水性指標)
このことから、本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体におけるH2O比表面積/N2比表面積は0.95だった。
【0142】
(多湿環境における水蒸気吸着量)
本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体1g当たりの相対湿度90%時点における水蒸気吸着量は1.9mgだった。
【0143】
(乾湿繰り返し処理)
本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における乾湿繰り返し処理は実施例1に記載の方法と同様の方法で行った。
【0144】
(乾湿繰り返し処理後において、熱処理後のセメント含有材料の粉粒体におけるN2比表面積およびH2O比表面積)
180サイクルの乾湿繰り返し処理後に本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体のN2比表面積およびH2O比表面積を測定したところ、それぞれ2.0m2/gおよび1.8m2/gだった。
【0145】
(総合評価)
以上の結果から、本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における表面親水性指標は、実施例1に記載した熱処理前のセメント含有材料の粉粒体におけるそれの0.185倍、石灰岩のそれの1.077倍であった。また本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における相対湿度90%の水蒸気吸着量は、実施例1に記載した熱処理前のセメント含有材料の粉粒体のそれの0.021倍、石灰岩のそれの1.000倍だった。このように、セメント含有材料の粉粒体は、本実施例による熱処理によって十分に表面疎水化されたと考えられた。さらに180サイクルの乾湿繰り返し処理によるN2比表面積やH2O比表面積の増加率が乾湿繰り返し前の10%以下だった。以上のことから、本実施例の総合評価は適であった。
【0146】
[実施例8]
(セメント含有材料の粉粒体)
本実施例におけるセメント含有材料の粉粒体には外壁裁断加工で生じた窯業系サイディング粉粒体のうち、JIS Z8801に規定されている公称目開き63μmのふるいを通過し、公称目開き106μmのふるいを通過しないサイズのものを使用した。また、本実施例で用いたセメント含有材料の粉粒体について実施例1と同様の方法により、含有有機物の定性分析を行ったところ、原綿およびスチレン・ブタジエンゴムが検出された。
【0147】
(セメント含有材料の粉粒体に含まれる有機物量)
本実施例におけるセメント含有材料の粉粒体について、実施例1と同様の方法により含有される有機物の重量割合を算出したところ、25.1wt.%だった。
【0148】
(熱処理を伴うセメント含有材料の粉粒体の作製)
セメント含有材料の粉粒体0.52gを
図1に示した熱処理装置に設置した。また、支燃性ガス導入量を300ml/min、熱処理温度を950℃、熱処理時間を20分とした以外は実施例1に記載の方法と同様の方法で作製した。
【0149】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における外観評価)
本実施例の熱処理後のセメント含有材料の粉粒体および熱処理後の石英管2内の外観について、表1に示す5段階評価を行ったところ、評価は5だった。
【0150】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における熱重量測定)
本実施例で得られた熱処理セメント含有材料の粉粒体について、実施例1と同様の方法で熱重量測定を行ったところ、600℃時点における重量残存率は99.8%だった。このことから、本実施例の熱処理後のセメント含有材料の粉粒体に有機物はほとんど含まれないと考えられた。
【0151】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体におけるN2比表面積)
本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体について、液体窒素温度における窒素の吸着等温線からN2比表面積を算出したところ、1.7m2/gだった。
【0152】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体におけるH2O比表面積)
また、本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体について、25℃における水蒸気の吸着等温線からH2O比表面積を算出したところ、1.7m2/gだった。
【0153】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における表面親水性指標)
このことから、本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体のH2O比表面積/N2比表面積は1.00だった。
【0154】
(多湿環境における水蒸気吸着量)
本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体1g当たりの相対湿度90%時点における水蒸気吸着量は1.7mgだった。
【0155】
(乾湿繰り返し処理)
本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体の乾湿繰り返し処理は実施例1に記載の方法と同様の方法で行った。
【0156】
(乾湿繰り返し処理後において、熱処理後のセメント含有材料の粉粒体におけるN2比表面積およびH2O比表面積)
180サイクルの乾湿繰り返し処理後に、本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体におけるN2比表面積およびH2O比表面積を測定したところ、それぞれ1.8m2/gおよび1.8m2/gだった。
【0157】
(総合評価)
以上の結果から、本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における表面親水性指標は、実施例1に記載した熱処理前のセメント含有材料の粉粒体のそれの0.195倍、石灰岩のそれの1.136倍であった。また本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における相対湿度90%の水蒸気吸着量は、実施例1に記載した熱処理前のセメント含有材料の粉粒体のそれの0.019倍、石灰岩のそれの0.895倍だった。このように、セメント含有材料の粉粒体は本実施例による熱処理によって、十分に表面疎水化されたと考えられる。さらに180サイクルの乾湿繰り返し処理によるN2比表面積やH2O比表面積の増加率が乾湿繰り返し前の10%以下だった。以上のことから、本実施例の総合評価は適であった。
【0158】
[実施例9]
(セメント含有材料の粉粒体)
本実施例におけるセメント含有材料の粉粒体には外壁裁断加工で生じた窯業系サイディング粉粒体のうち、JIS Z8801に規定されている公称目開き63μmのふるいを通過し、公称目開き106μmのふるいを通過しないサイズのものを使用した。また、本実施例で用いたセメント含有材料の粉粒体について実施例1と同様の方法により、含有有機物の定性分析を行ったところ、原綿およびスチレン・ブタジエンゴムが検出された。
【0159】
(セメント含有材料の粉粒体に含まれる有機物量)
本実施例におけるセメント含有材料の粉粒体について、実施例1と同様の方法により含有される有機物の重量割合を算出したところ、24.7wt.%だった。
【0160】
(熱処理を伴うセメント含有材料の粉粒体の作製)
セメント含有材料の粉粒体0.53gを
図1に示した熱処理装置に設置した。また、支燃性ガス導入量を200ml/min、熱処理温度を1200℃とした以外は実施例1に記載の方法と同様の方法で作製した。
【0161】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における外観評価)
本実施例の熱処理後のセメント含有材料の粉粒体および熱処理後の石英管2内の外観について、表1に示す5段階評価を行ったところ、評価は5だった。
【0162】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における熱重量測定)
本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体について、実施例1と同様の方法で熱重量測定を行ったところ、600℃時点における重量残存率は99.8%だった。このことから、本実施例の熱処理後のセメント含有材料の粉粒体に有機物はほとんど含まれないと考えられる。
【0163】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体におけるN2比表面積)
本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体について、液体窒素温度における窒素の吸着等温線からN2比表面積を算出したところ、1.7m2/gだった。
【0164】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体におけるH2O比表面積)
また、本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体について、25℃における水蒸気の吸着等温線からH2O比表面積を算出したところ、1.5m2/gだった。
【0165】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における表面親水性指標)
このことから、本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体におけるH2O比表面積/N2比表面積は0.88だった。
【0166】
(多湿環境における水蒸気吸着量)
本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体1g当たりの相対湿度90%時点における水蒸気吸着量は1.6mgだった。
【0167】
(乾湿繰り返し処理)
本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体の乾湿繰り返し処理は実施例1に記載の方法と同様の方法で行った。
【0168】
(乾湿繰り返し処理後において、熱処理後のセメント含有材料の粉粒体におけるN2比表面積およびH2O比表面積)
180サイクルの乾湿繰り返し処理後に本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体におけるN2比表面積およびH2O比表面積を測定したところ、それぞれ1.7m2/gおよび1.6m2/gだった。
【0169】
(総合評価)
以上の結果から、本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における表面親水性指標は、実施例1に記載した熱処理前のセメント含有材料の粉粒体のそれの0.172倍、石灰岩のそれの1.003倍であった。また本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における相対湿度90%の水蒸気吸着量は、実施例1に記載した熱処理前のセメント含有材料の粉粒体のそれの0.018倍、石灰岩のそれの0.842倍だった。このように、セメント含有材料の粉粒体は、本実施例による熱処理によって十分に表面疎水化されたと考えられた。さらに180サイクルの乾湿繰り返し処理によるN2比表面積やH2O比表面積の増加率が乾湿繰り返し前の10%以下だった。以上のことから、本実施例の総合評価は適であった。
【0170】
[実施例10]
(セメント含有材料の粉粒体)
本実施例におけるセメント含有材料の粉粒体には外壁裁断加工で生じた窯業系サイディング粉粒体のうち、JIS Z8801に規定されている公称目開き63μmのふるいを通過し、公称目開き106μmのふるいを通過しないサイズのものを使用した。また、本実施例で用いたセメント含有材料の粉粒体について、実施例1と同様の方法により、含有有機物の定性分析を行ったところ、原綿およびスチレン・ブタジエンゴムが検出された。
【0171】
(セメント含有材料の粉粒体に含まれる有機物量)
本実施例におけるセメント含有材料の粉粒体について、実施例1と同様の方法により含有される有機物の重量割合を算出したところ、20.5wt.%だった。
【0172】
(熱処理を伴うセメント含有材料の粉粒体の作製)
セメント含有材料の粉粒体0.52gを
図1に示した熱処理装置に設置した。また、支燃性ガス導入量を170ml/min、熱処理時間を25分とした以外は実施例1に記載の方法と同様の方法で作製した。
【0173】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における外観評価)
本実施例の熱処理セメント含有材料の粉粒体および熱処理後の石英管2内の外観について、表1に示す5段階評価を行ったところ、評価は5だった。
【0174】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における熱重量測定)
本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体について、実施例1と同様の方法で熱重量測定を行ったところ、600℃時点における重量残存率は99.8%だった。このことから、本実施例の熱処理後のセメント含有材料の粉粒体に有機物はほとんど含まれないと考えられた。
【0175】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体におけるN2比表面積)
本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体について、液体窒素温度における窒素の吸着等温線からN2比表面積を算出したところ、2.0m2/gだった。
【0176】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体におけるH2O比表面積)
また、本実施例で得られた熱処理セメント含有材料の粉粒体について、25℃における水蒸気の吸着等温線からH2O比表面積を算出したところ、1.9m2/gだった。
【0177】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における表面親水性指標)
このことから、本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体におけるH2O比表面積/N2比表面積は0.95だった。
【0178】
(多湿環境における水蒸気吸着量)
本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体1g当たりの相対湿度90%時点における水蒸気吸着量は1.8mgだった。
【0179】
(乾湿繰り返し処理)
本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における乾湿繰り返し処理は実施例1に記載の方法と同様の方法で行った。
【0180】
(乾湿繰り返し処理後における熱処理後のセメント含有材料の粉粒体のN2比表面積およびH2O比表面積)
180サイクルの乾湿繰り返し処理後に本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体におけるN2比表面積およびH2O比表面積を測定したところ、それぞれ2.1m2/gおよび2.0m2/gだった。
【0181】
(総合評価)
以上の結果から、本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における表面親水性指標は、実施例1に記載した熱処理前のセメント含有材料の粉粒体におけるそれの0.186倍、石灰岩のそれの1.080倍であった。また本実施例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における相対湿度90%の水蒸気吸着量は、実施例1に記載した熱処理前のセメント含有材料の粉粒体のそれの0.020倍、石灰岩のそれの0.947倍だった。このように、セメント含有材料の粉粒体は本実施例による熱処理によって十分に表面疎水化されたと考えられる。さらに180サイクルの乾湿繰り返し処理によるN2比表面積やH2O比表面積の増加率が乾湿繰り返し前の10%以下だった。以上のことから、本実施例の総合評価は適であった。
【0182】
[比較例1]
(セメント含有材料の粉粒体)
本比較例におけるセメント含有材料の粉粒体には外壁裁断加工で生じた窯業系サイディング粉粒体のうち、JIS Z8801に規定されている公称目開き63μmのふるいを通過し、公称目開き106μmのふるいを通過しないサイズのものを使用した。また、本比較例で用いたセメント含有材料の粉粒体について実施例1と同様の方法により、含有有機物の定性分析を行ったところ、原綿およびスチレン・ブタジエンゴムが検出された。
【0183】
(セメント含有材料の粉粒体に含まれる有機物量)
本比較例におけるセメント含有材料の粉粒体について、実施例1と同様の方法により含有される有機物の重量割合を算出したところ、20.7wt.%だった。
【0184】
(熱処理を伴うセメント含有材料の粉粒体の作製)
セメント含有材料の粉粒体0.52gを
図1に示した熱処理装置に設置した。また、支燃性ガス導入量を200ml/min、熱処理温度を500℃、熱処理時間を25分とした以外は実施例1に記載の方法と同様の方法で作製した。
【0185】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における外観評価)
本比較例の熱処理後のセメント含有材料における粉粒体および熱処理後の石英管2内の外観について、表1に示す5段階評価を行ったところ、評価は3だった。
【0186】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における熱重量測定)
本比較例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体について、実施例1と同様の方法で熱重量測定を行ったところ、600℃時点における重量残存率は97.2%だった。このことから、本比較例の熱処理後のセメント含有材料の粉粒体に有機物がわずかに残存したと考えられた。
【0187】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体におけるN2比表面積)
本比較例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体について、液体窒素温度における窒素の吸着等温線からN2比表面積を算出したところ、14.5m2/gだった。
【0188】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体におけるH2O比表面積)
また、本比較例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体について、25℃における水蒸気の吸着等温線からH2O比表面積を算出したところ、27.6m2/gだった。
【0189】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における表面親水性指標)
このことから、本比較例で得られた熱処理セメント含有材料の粉粒体におけるH2O比表面積/N2比表面積は1.90だった。
【0190】
(多湿環境における水蒸気吸着量)
本比較例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体1g当たりの相対湿度90%時点における水蒸気吸着量は31.4mgだった。
【0191】
(乾湿繰り返し処理)
本比較例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における乾湿繰り返し処理は実施例1に記載の方法と同様の方法で行った。
【0192】
(乾湿繰り返し処理後における熱処理後のセメント含有材料の粉粒体におけるN2比表面積およびH2O比表面積)
180サイクルの乾湿繰り返し処理後に本比較例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体におけるN2比表面積およびH2O比表面積を測定したところ、それぞれ18.5m2/gおよび53.2m2/gだった。
【0193】
(総合評価)
以上の結果から、本比較例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における表面親水性指標は、実施例1に記載した熱処理前のセメント含有材料の粉粒体のそれの0.372倍、石灰岩のそれの2.163倍であった。また本比較例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における相対湿度90%の水蒸気吸着量は、実施例1に記載した熱処理前のセメント含有材料の粉粒体のそれの0.348倍、石灰岩のそれの16.526倍だった。このように、本比較例で得られた熱処理セメント含有材料の粉粒体における表面親水性指標や相対湿度90%時点の水蒸気吸着量は、熱処理前のセメント含有材料の粉粒体のそれらよりは減少したものの、石灰岩のそれらと比較すると1.2倍以上だった。さらに180サイクルの乾湿繰り返し処理によるN2比表面積やH2O比表面積の増加率が乾湿繰り返し前と比較して10%より大きくなった。以上のことから、実施例1に記載の評価基準に則り、総合評価は不適であった。なおこれは、熱処理温度が低く、カーボン分が残存したこと、また熱処理によるN2比表面積およびH2O比表面積が不十分なことが原因と推測された。
【0194】
[比較例2]
(セメント含有材料の粉粒体)
本比較例におけるセメント含有材料の粉粒体には、外壁裁断加工で生じた窯業系サイディング粉粒体のうち、JIS Z8801に規定されている公称目開き63μmのふるいを通過し、公称目開き106μmのふるいを通過しないサイズのものを使用した。また、本比較例で用いたセメント含有材料の粉粒体について、実施例1と同様の方法により、含有有機物の定性分析を行ったところ、パルプが検出された。
【0195】
(セメント含有材料の粉粒体に含まれる有機物量)
本比較例におけるセメント含有材料の粉粒体について、実施例1と同様の方法により含有される有機物の重量割合を算出したところ、21.2wt.%だった。
【0196】
(熱処理を伴うセメント含有材料の粉粒体の作製)
セメント含有材料の粉粒体0.31gを
図1に示した熱処理装置に設置した。また、支燃性ガス導入量を200ml/min、熱処理時間を1分とした以外は実施例1に記載の方法と同様の方法で作製した。
【0197】
(熱処理セメント含有材料の粉粒体における外観評価)
本比較例の熱処理後のセメント含有材料の粉粒体および熱処理後の石英管2内の外観について、表1に示す5段階評価を行ったところ、評価は2だった。
【0198】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における熱重量測定)
本比較例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体について、実施例1と同様の方法で熱重量測定を行ったところ、600℃時点における重量残存率は77.4%だった。このことから、本比較例の熱処理後のセメント含有材料の粉粒体に有機物が残存したと考えられた。
【0199】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体におけるN2比表面積)
本比較例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体について、液体窒素温度における窒素の吸着等温線からN2比表面積を算出したところ、17.4m2/gだった。
【0200】
(熱処理セメント含有材料の粉粒体におけるH2O比表面積)
また、本比較例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体について、25度における水蒸気の吸着等温線からH2O比表面積を算出したところ、95.3m2/gだった。
【0201】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における表面親水性指標)
このことから、本比較例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体におけるH2O比表面積/N2比表面積は5.48だった。
【0202】
(多湿環境における水蒸気吸着量)
本比較例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体1g当たりの相対湿度90%時点における水蒸気吸着量は85.4mgだった。
【0203】
(乾湿繰り返し処理)
本比較例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における乾湿繰り返し処理は、実施例1に記載の方法と同様の方法で行った。
【0204】
(乾湿繰り返し処理後における熱処理後のセメント含有材料の粉粒体におけるN2比表面積およびH2O比表面積)
180サイクルの乾湿繰り返し処理後に本比較例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体におけるN2比表面積およびH2O比表面積を測定したところ、それぞれ19.7m2/gおよび102.5m2/gだった。
【0205】
(総合評価)
以上の結果から、本比較例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における表面親水性指標は、実施例1に記載した熱処理前のセメント含有材料の粉粒体のそれの1.070倍、石灰岩のそれの6.224倍であった。また本比較例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における相対湿度90%の水蒸気吸着量は、実施例1に記載した熱処理前のセメント含有材料の粉粒体の0.946倍、石灰岩の44.947倍だった。このように、本比較例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における相対湿度90%時点の水蒸気吸着量は、熱処理前のセメント含有材料の粉粒体のそれよりは減少したものの、熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における表面親水性は熱処理前のセメント含有材料の粉粒体のそれよりも多くなった。また熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における表面親水性や相対湿度90%時点の水蒸気吸着量は、石灰岩のそれらと比較すると1.2倍以上だった。さらに180サイクルの乾湿繰り返し処理によるN2比表面積の増加率が乾湿繰り返し前と比較して10%より大きくなった。以上のことから、実施例1に記載の評価基準に則り、総合評価は不適であった。なおこれは、支燃性ガス流量が熱処理に供するセメント含有材料の粉粒体量や熱処理時間に応じて決定される支燃性ガス流量範囲よりも少なく、カーボン分が残存したためと推測される。
【0206】
[比較例3]
(セメント含有材料の粉粒体)
本比較例におけるセメント含有材料の粉粒体には、外壁裁断加工で生じた窯業系サイディング粉粒体のうち、JIS Z8801に規定されている公称目開き63μmのふるいを通過し、公称目開き106μmのふるいを通過しないサイズのものを使用した。また、本比較例で用いたセメント含有材料の粉粒体について、実施例1と同様の方法により、含有有機物の定性分析を行ったところ、原綿およびスチレン・ブタジエンゴムが検出された。
【0207】
(セメント含有材料の粉粒体に含まれる有機物量)
本比較例におけるセメント含有材料の粉粒体について、実施例1と同様の方法により含有される有機物の重量割合を算出したところ、32.1wt.%だった。
【0208】
(熱処理を伴うセメント含有材料の粉粒体の作製)
セメント含有材料の粉粒体0.52gを
図1に示した熱処理装置に設置した。また、支燃性ガス導入量を5ml/min、熱処理温度を950℃とした以外は実施例1に記載の方法と同様の方法で作製した。
【0209】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における外観評価)
本比較例の熱処理後のセメント含有材料における粉粒体および熱処理後の石英管2内の外観について、表1に示す5段階評価を行ったところ、評価は4だった。
【0210】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における熱重量測定)
本比較例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体について、実施例1と同様の方法で熱重量測定を行ったところ、600℃時点における重量残存率は89.4%だった。このことから、本比較例の熱処理後のセメント含有材料の粉粒体に有機物が残存したと考えられた。
【0211】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体におけるN2比表面積)
本比較例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体について、液体窒素温度における窒素の吸着等温線からN2比表面積を算出したところ、1.9m2/gだった。
【0212】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体のH2O比表面積)
また、本比較例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体について、25℃における水蒸気の吸着等温線からH2O比表面積を算出したところ、7.4m2/gだった。
【0213】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における表面親水性指標)
このことから、本比較例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体におけるH2O比表面積/N2比表面積は3.89だった。
【0214】
(多湿環境における水蒸気吸着量)
本比較例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体1g当たりの相対湿度90%時点における水蒸気吸着量は16.5mgだった。
【0215】
(乾湿繰り返し処理)
本比較例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における乾湿繰り返し処理は、実施例1に記載の方法と同様の方法で行った。
【0216】
(乾湿繰り返し処理後における熱処理後のセメント含有材料の粉粒体におけるN2比表面積およびH2O比表面積)
180サイクルの乾湿繰り返し処理後に本比較例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体におけるN2比表面積およびH2O比表面積を測定したところ、それぞれ2.1m2/gおよび8.9m2/gだった。
【0217】
(総合評価)
以上の結果から、本比較例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における表面親水性指標は、実施例1に記載した熱処理前のセメント含有材料の粉粒体のそれの0.761倍、石灰岩のそれの4.426倍であった。また本比較例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における相対湿度90%の水蒸気吸着量は、実施例1に記載した熱処理前のセメント含有材料の粉粒体のそれの0.183倍、石灰岩のそれの8.684倍だった。このように、本比較例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における表面親水性指標や相対湿度90%時点の水蒸気吸着量は、熱処理前のセメント含有材料の粉粒体のそれらよりは減少したものの、石灰岩のそれらと比較すると1.2倍以上だった。さらに180サイクルの乾湿繰り返し処理によるH2O比表面積の増加率が乾湿繰り返し前と比較して10%より大きくなった。以上のことから、実施例1に記載の評価基準に則り、総合評価は不適であった。なおこれは、支燃性ガス流量が熱処理に供するセメント含有材料の粉粒体量や熱処理時間に応じて決定される支燃性ガス流量範囲よりも少なく、カーボン分が残存したためと推測される。
【0218】
[比較例4]
(セメント含有材料の粉粒体)
本比較例におけるセメント含有材料の粉粒体には、外壁裁断加工で生じた窯業系サイディング粉粒体のうち、JIS Z8801に規定されている公称目開き63μmのふるいを通過し、公称目開き106μmのふるいを通過しないサイズのものを使用した。また、本比較例で用いたセメント含有材料の粉粒体について実施例1と同様の方法により、含有有機物の定性分析を行ったところ、原綿が検出された。
【0219】
(セメント含有材料の粉粒体に含まれる有機物量)
本比較例におけるセメント含有材料の粉粒体について、実施例1と同様の方法により含有される有機物の重量割合を算出したところ、22.5wt.%だった。
【0220】
(熱処理を伴うセメント含有材料の粉粒体の作製)
セメント含有材料の粉粒体0.52gを
図1に示した熱処理装置に設置した。また、支燃性ガス導入量を200ml/min、熱処理温度を800℃とした以外は実施例1に記載の方法と同様の方法で作製した。
【0221】
(熱処理セメント含有材料の粉粒体の外観評価)
本比較例の熱処理後のセメント含有材料の粉粒体および熱処理後の石英管2内の外観について、表1に示す5段階評価を行ったところ、評価は5だった。
【0222】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における熱重量測定)
本比較例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体について、実施例1と同様の方法で熱重量測定を行ったところ、600℃時点における重量残存率は99.8%だった。このことから、本比較例の熱処理後のセメント含有材料の粉粒体には有機物はほとんど残存していないと考えられた。
【0223】
(熱処理セメント含有材料の粉粒体におけるN2比表面積)
本比較例で得られた熱処理セメント含有材料の粉粒体について、液体窒素温度における窒素の吸着等温線からN2比表面積を算出したところ、4.8m2/gだった。
【0224】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体におけるH2O比表面積)
また、本比較例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体について、25℃における水蒸気の吸着等温線からH2O比表面積を算出したところ、4.4m2/gだった。
【0225】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における表面親水性指標)
このことから、本比較例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体におけるH2O比表面積/N2比表面積は0.92だった。
【0226】
(多湿環境における水蒸気吸着量)
本比較例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体1g当たりの相対湿度90%時点における水蒸気吸着量は6.2mgだった。
【0227】
(乾湿繰り返し処理)
本比較例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における乾湿繰り返し処理は実施例1に記載の方法と同様の方法で行った。
【0228】
(乾湿繰り返し処理後における熱処理セメント含有材料の粉粒体のN2比表面積およびH2O比表面積)
180サイクルの乾湿繰り返し処理後に本比較例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体におけるN2比表面積およびH2O比表面積を測定したところ、それぞれ5.9m2/gおよび5.6m2/gだった。
【0229】
(総合評価)
以上の結果から、本比較例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における表面親水性指標は、実施例1に記載した熱処理前のセメント含有材料の粉粒体におけるそれの0.179倍、石灰岩のそれの1.042倍であった。また本比較例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における相対湿度90%の水蒸気吸着量は、実施例1に記載した熱処理前のセメント含有材料の粉粒体におけるそれの0.069倍、石灰岩のそれの3.268倍だった。このように、本比較例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における表面親水性指標や相対湿度90%時点の水蒸気吸着量は、熱処理前のセメント含有材料の粉粒体のそれらよりは減少したものの、石灰岩のそれらと比較すると1.2倍以上だった。さらに180サイクルの乾湿繰り返し処理によるN2比表面積やH2O比表面積の増加率が乾湿繰り返し前と比較して10%より大きくなった。以上のことから、実施例1に記載の評価基準に則り、総合評価は不適であった。なおこれは、熱処理温度が低く、カーボン分が残存したこと、また熱処理によるN2比表面積およびH2O比表面積が不十分なことが原因と推測される。
【0230】
[比較例5]
(セメント含有材料の粉粒体)
本比較例におけるセメント含有材料の粉粒体には、外壁裁断加工で生じた窯業系サイディング粉粒体のうち、JIS Z8801に規定されている公称目開き63μmのふるいを通過し、公称目開き106μmのふるいを通過しないサイズのものを使用した。また、本比較例で用いたセメント含有材料の粉粒体について、実施例1と同様の方法により、含有有機物の定性分析を行ったところ、原綿が検出された。
【0231】
(セメント含有材料の粉粒体に含まれる有機物量)
本比較例におけるセメント含有材料の粉粒体について、実施例1と同様の方法により含有される有機物の重量割合を算出したところ、25.1wt.%だった。
【0232】
(熱処理を伴うセメント含有材料の粉粒体の作製)
セメント含有材料の粉粒体15gを
図1に示した熱処理装置に設置した。また、支燃性ガス導入量を450ml/minとした以外は、実施例1に記載の方法と同様の方法で作製した。
【0233】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における外観評価)
本比較例の熱処理後のコメント含有材料の粉粒体および熱処理後の石英管2内の外観について、表1に示す5段階評価を行ったところ、評価は3だった。
【0234】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における熱重量測定)
本比較例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体について、実施例1と同様の方法で熱重量測定を行ったところ、600℃時点における重量残存率は98.1%だった。このことから、本比較例の熱処理後のセメント含有材料の粉粒体にはカーボン分がわずかに残存したと考えられる。
【0235】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体におけるN2比表面積)
本比較例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体について、液体窒素温度における窒素の吸着等温線からN2比表面積を算出したところ、2.1m2/gだった。
【0236】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体におけるH2O比表面積)
また、本比較例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体について、25℃における水蒸気の吸着等温線からH2O比表面積を算出したところ、3.7m2/gだった。
【0237】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における表面親水性指標)
このことから、本比較例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体におけるH2O比表面積/N2比表面積は1.76だった。
【0238】
(多湿環境における水蒸気吸着量)
本比較例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体1g当たりの相対湿度90%時点における水蒸気吸着量は5.2mgだった。
【0239】
(乾湿繰り返し処理)
本比較例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体の乾湿繰り返し処理は、実施例1に記載の方法と同様の方法で行った。
【0240】
(乾湿繰り返し処理後において、熱処理後のセメント含有材料の粉粒体におけるN2比表面積およびH2O比表面積)
180サイクルの乾湿繰り返し処理後に、本比較例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体におけるN2比表面積およびH2O比表面積を測定したところ、それぞれ2.3m2/gおよび4.7m2/gだった。
【0241】
(総合評価)
以上の結果から、本比較例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における表面親水性指標は、実施例1に記載した熱処理前のセメント含有材料の粉粒体のそれの0.344倍、石灰岩のそれの2.002倍であった。また本比較例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における相対湿度90%の水蒸気吸着量は、実施例1に記載した熱処理前のセメント含有材料の粉粒体におけるそれの0.058倍、石灰岩のそれの2.737倍だった。このように、本比較例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における表面親水性指標や相対湿度90%時点における水蒸気吸着量は、熱処理前のセメント含有材料の粉粒体のそれらよりは減少したものの、石灰岩のそれらと比較すると1.2倍以上だった。さらに180サイクルの乾湿繰り返し処理によるH2O比表面積の増加率が、乾湿繰り返し前と比較して10%より大きくなった。以上のことから、実施例1に記載の評価基準に則り、総合評価は不適であった。なおこれは、支燃性ガス流量が熱処理に供するセメント含有材料の粉粒体量や熱処理時間に応じて決定される支燃性ガス流量範囲よりも少なく、カーボン分が残存したためと推測される。
【0242】
[比較例6]
(セメント含有材料の粉粒体)
本比較例におけるセメント含有材料の粉粒体には外壁裁断加工で生じた窯業系サイディング粉粒体のうち、JIS Z8801に規定されている公称目開き63μmのふるいを通過し、公称目開き106μmのふるいを通過しないサイズのものを使用した。また、本比較例で用いたセメント含有材料の粉粒体について実施例1と同様の方法により、含有有機物の定性分析を行ったところ、パルプが検出された。
【0243】
(セメント含有材料の粉粒体に含まれる有機物量)
本比較例におけるセメント含有材料の粉粒体について、実施例1と同様の方法により含有される有機物の重量割合を算出したところ、26.4wt.%だった。
【0244】
(熱処理を伴うセメント含有材料の粉粒体の作製)
セメント含有材料の粉粒体0.56gを
図1に示した熱処理装置に設置した。また、不燃性ガスとして窒素を導入し、支燃性ガス導入量を200ml/minとした以外は実施例1に記載の方法と同様の方法で作製した。
【0245】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における外観評価)
本比較例の熱処理後のセメント含有材料の粉粒体および熱処理後の石英管2内の外観について、表1に示す5段階評価を行ったところ、評価は2だった。
【0246】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における熱重量測定)
本比較例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体について、実施例1と同様の方法で熱重量測定を行ったところ、600℃時点における重量残存率は86.1%だった。このことから、本比較例の熱処理後のセメント含有材料の粉粒体には、カーボン分が残存したと考えられた。
【0247】
(熱処理セメント含有材料の粉粒体におけるN2比表面積)
本比較例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体について、液体窒素温度における窒素の吸着等温線からN2比表面積を算出したところ、2.0m2/gだった。
【0248】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体におけるH2O比表面積)
また、本比較例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体について、25℃における水蒸気の吸着等温線からH2O比表面積を算出したところ、13.6m2/gだった。
【0249】
(熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における表面親水性指標)
このことから、本比較例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体におけるH2O比表面積/N2比表面積は、6.80だった。
【0250】
(多湿環境における水蒸気吸着量)
本比較例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体1g当たりの相対湿度90%時点における水蒸気吸着量は31.1mgだった。
【0251】
(乾湿繰り返し処理)
本比較例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体の乾湿繰り返し処理は、実施例1に記載の方法と同様の方法で行った。
【0252】
(乾湿繰り返し処理後における熱処理後のセメント含有材料における粉粒体のN2比表面積およびH2O比表面積)
180サイクルの乾漆繰返し処理後に本比較例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体におけるN2比表面積およびH2O比表面積を測定したところ、それぞれ2.1m2/gおよび16.5m2/gだった。
【0253】
(総合評価)
以上の結果から、本比較例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における表面親水性指標は、実施例1に記載した熱処理前のセメント含有材料の粉粒体のそれの1.328倍、石灰岩のそれの7.727倍であった。また本比較例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における相対湿度90%の水蒸気吸着量は、実施例1に記載した熱処理前のセメント含有材料の粉粒体のそれの0.344倍、石灰岩のそれの16.368倍だった。このように、本比較例で得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における相対湿度90%時点の水蒸気吸着量は、熱処理前のセメント含有材料の粉粒体のそれよりは減少したものの、熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における表面親水性は、熱処理前のセメント含有材料の粉粒体のそれよりも多くなった。また熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における表面親水性や相対湿度90%時点の水蒸気吸着量は、石灰岩のそれらと比較すると1.2倍以上だった。さらに180サイクルの乾湿繰り返し処理によるH2O比表面積の増加率が乾湿繰り返し前と比較して10%より大きくなった。以上のことから、実施例1に記載の評価基準に則り、総合評価は不適であった。なおこれは、支燃性ガスではなく、不燃性ガスである窒素を供給したことでカーボン分が残存したためと推測された。
【0254】
実施例1~10および比較例1~6で行った熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における作製条件を表2に、また熱処理後のセメント含有材料の粉粒体における外観評価、熱重量測定による600℃時点の重量残存率、N2比表面積、H2O比表面積、N2比表面積/H2O比表面積、相対湿度90%時点の水蒸気吸着量、乾湿繰り返し処理180サイクル後のN2比表面積、乾湿繰り返し処理180サイクル後のH2O比表面積および総合評価を表3にまとめて示す。
【0255】
【0256】
本発明によってセメント含有材料の粉粒体表面を疎水性にすることで、コンクリートの単位水量を低減でき、乾燥収縮に伴うひび割れを抑制できる。これにより、例えばコンクリートの乾燥収縮ひび割れを抑制する骨材、絶縁粉末やプラスチック成形品のフィラーといった低吸湿性が要求される材料として提供することができる。
さらに、本発明により得られた熱処理後のセメント含有材料の粉粒体は、圧縮することで任意の形状に成形することが可能である。このため、例えば汚れの付着しにくい外壁材や、内部への水分の侵入を抑制する防湿、防水パネルといった用途での利用も期待できる。