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特開2023-167751消耗電極アーク溶接の溶接終了制御方法
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  • 特開-消耗電極アーク溶接の溶接終了制御方法 図1
  • 特開-消耗電極アーク溶接の溶接終了制御方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167751
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】消耗電極アーク溶接の溶接終了制御方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 10/00 20060101AFI20231116BHJP
   B23K 9/00 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
B23K10/00 502C
B23K9/00 330A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079184
(22)【出願日】2022-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(72)【発明者】
【氏名】今井 雄太
(72)【発明者】
【氏名】山田 浩貴
(57)【要約】
【課題】消耗電極アーク溶接において、種々な溶接条件に対応して良好な溶接終了制御を行うこと。
【解決手段】溶接電源PSに溶接終了信号Onが入力されると、溶接ワイヤの送給を停止へと導くと共に、ピーク電流及びベース電流の通電を1周期として通電して溶接を終了する消耗電極アーク溶接の溶接終了制御方法において、ピーク電流の値Ipr及び/又は期間Tprを、溶接ワイヤの脱酸成分の質量%Drに応じて変化させる。脱酸成分は、シリコン及びマンガンを合計した質量%である。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接電源に溶接終了信号が入力されると、溶接ワイヤの送給を停止へと導くと共に、ピーク電流及びベース電流の通電を1周期として通電して溶接を終了する消耗電極アーク溶接の溶接終了制御方法において、
前記ピーク電流の値及び/又は期間を、前記溶接ワイヤの脱酸成分の質量%に応じて変化させる、
ことを特徴とする消耗電極アーク溶接の溶接終了制御方法。
【請求項2】
前記脱酸成分は、シリコン及びマンガンを合計した質量%である、
ことを特徴とする請求項1に記載の消耗電極アーク溶接の溶接終了制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消耗電極アーク溶接の溶接終了制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
消耗電極アーク溶接を終了するときに、溶接終了時のビード外観が良好になり、溶接ワイヤが溶融池に溶着(スチック)するのを防止し、溶接終了時に形成されるワイヤ先端粒のサイズを適正化して次のアークスタート性を良好にするための溶接終了制御(アンチスチック制御)が行われる。溶接終了制御は、溶接電源に溶接終了信号が入力されて、送給モータが慣性によって過渡的に減速して停止するまでの慣性期間における溶接電流及び溶接電圧の制御である。
【0003】
特許文献1及び2には、 溶接電源に溶接終了信号が入力されるとピーク電流及びベース電流の通電を1周期として通電して溶接を終了する消耗電極アーク溶接の溶接終了制御方法が開示されている。特許文献1は、消耗電極アーク溶接が直流アーク溶接の場合である。特許文献2は、消耗電極アーク溶接がパルスアーク溶接の場合である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-313513号公報
【特許文献2】特開2012-130961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術の消耗電極アーク溶接の溶接終了制御方法においては、炭素鋼、ステンレス鋼等の鉄侯の種類、タンサンガス100%、アルゴンガス80%+炭酸ガス20%の混合ガス等のシールドガスの種類に応じて溶接終了制御のパラメータを適正値に設定している。しかし、鉄鋼の種類及びシールドガスの種類が同一であり、JIS規格が同じ溶接ワイヤを使用しても、溶接ワイヤの銘柄が異なると溶接終了制御の安定性がばらつき、溶接終了部の溶接品質が劣る場合が発生するという問題がある。
【0006】
そこで、本発明では、消耗電極アーク溶接において、同じJIS規格の溶接ワイヤであれば銘柄が異なっても、溶接状態を常に安定化することができる溶接終了制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、請求項1の発明は、
溶接電源に溶接終了信号が入力されると、溶接ワイヤの送給を停止へと導くと共に、ピーク電流及びベース電流の通電を1周期として通電して溶接を終了する消耗電極アーク溶接の溶接終了制御方法において、
前記ピーク電流の値及び/又は期間を、前記溶接ワイヤの脱酸成分の質量%に応じて変化させる、
ことを特徴とする消耗電極アーク溶接の溶接終了制御方法である。
【0008】
請求項2の発明は、
前記脱酸成分は、シリコン及びマンガンを合計した質量%である、
ことを特徴とする請求項1に記載の消耗電極アーク溶接の溶接終了制御方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、消耗電極アーク溶接において、同じJIS規格の溶接ワイヤであれば銘柄が異なっても、溶接状態を常に安定化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態に係る消耗電極アーク溶接の溶接終了制御方法を実施するための溶接電源PSのブロック図である。
図2】本発明の実施の形態に係る消耗電極アーク溶接の溶接終了制御方法を示す図1の溶接電源における各信号のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施の形態に係る消耗電極アーク溶接の溶接終了制御方法を実施するための溶接電源PSのブロック図である。以下、同図を参照して各ブロックについて説明する。
【0013】
電源主回路PMは、3相200V等の商用電源(図示は省略)を入力として、後述する駆動信号Dvに従ってインバータ制御等の出力制御を行い、アーク溶接に適した溶接電圧Vw及び溶接電流Iwを出力する。電源主回路PMは、図示は省略するが、商用電源を整流する1次整流回路、整流された直流を平滑するコンデンサ、平滑された直流を高周波交流に変換する上記の駆動信号Dvによって駆動されるインバータ回路、高周波交流をアーク溶接に適した電圧値に降圧する高周波トランス、降圧された高周波交流を直流に整流する2次整流回路、整流された直流を平滑するリアクトルを備えている。
【0014】
溶接ワイヤ1は、送給モータMに結合された送給ロール5の回転によって溶接トーチ4内を送給されて、ワーク2との間にアーク3が発生する。溶接ワイヤ1とワーク2との間には溶接電圧Vwが印加され、溶接電流Iwが通電する。溶接トーチ4の先端からはシールドガス(図示は省略)が噴出される。シールドガスは、アルゴンガス、アルゴンガスと炭酸ガスとの混合ガス、アルゴンガスと酸素との混合ガス等である。
【0015】
溶接開始・終了回路ONは、溶接を開始するときにHighレベル(溶接開始信号)となり、溶接を終了するときにLowレベル(溶接終了信号)となる溶接開始・終了信号Onを出力する。この回路は、溶接トーチ4に取り付けられたスイッチである。また、この回路は、ロボット溶接の場合はロボット制御装置に内蔵されている。
【0016】
溶接電流設定回路IRは、予め定めた溶接電流設定信号Irを出力する。
【0017】
送給速度設定回路FRは、上記の溶接電流設定信号Irを入力として、予め定めた電流・送給速度変換関数によって算出された送給速度設定信号Frを出力する。
【0018】
送給制御回路FCは、上記の溶接開始・終了信号On及び上記の送給速度設定信号Frを入力として、溶接開始・終了信号OnがHighレベル(溶接開始信号)のときは溶接ワイヤ1を送給速度設定信号Frによって設定された送給速度Fwで定速送給し、溶接開始・終了信号OnがLowレベル(溶接終了信号)に変化すると送給モータMを停止させるための送給制御信号Fcを出力する。溶接開始・終了信号OnがLowレベル(溶接終了信号)に変化すると、送給速度Fwは慣性によって次第に減速して停止する。この減速する期間が慣性期間となる。
【0019】
送給モータMは、上記の送給制御信号Fcによって回転速度が制御されて、溶接ワイヤ1を送給速度Fwで送給する。
【0020】
溶接電圧設定回路VRは、予め定めた溶接電圧設定信号Vrを出力する。溶接電圧検出回路VDは、上記の溶接電圧Vwを検出して、溶接電圧検出信号Vdを出力する。電圧誤差増幅回路EVは、上記の溶接電圧設定信号Vrと上記の溶接電圧検出信号Vdとの誤差を増幅して、電圧誤差増幅信号Evを出力する。
【0021】
JIS規格設定回路JRは、溶接作業者が使用する溶接ワイヤのJIS規格を入力すると、JIS規格設定信号Jrとして出力する。例えば、アルゴンと炭酸ガスとの混合ガスを使用するマグ溶接の場合、主にJIS規格のYGW15又はYGW16の溶接ワイヤが使用される。
【0022】
脱酸成分基準値回路DSは、上記のJIS規格設定信号Jrを入力として、JIS規格設定信号Jrに対応して予め記憶されている主な脱酸成分であるシリコンとマンガンの合計の質量%を脱酸成分基準値信号Dsとして出力する。JIS規格設定信号Jrに対応したシリコンとマンガンの合計の質量%が規格表を参考にして予め設定されている。
【0023】
脱酸成分設定回路DRは、溶接作業者が使用する溶接ワイヤの銘柄のシリコンとマンガンの合計の質量%を入力すると、脱酸成分設定信号Drとして出力する。溶接作業者は、使用する溶接ワイヤの銘柄のカタログを参考にして、シリコンとマンガンの合計の質量%を入力する。
【0024】
脱酸成分差分回路Edは、上記の脱酸成分設定信号Drと上記の脱酸成分基準値信号Dsとの差分値(Dr-Ds)を算出して、脱酸成分差分信号Edを出力する。
【0025】
所定回数設定回路NRは、上記の溶接電流設定信号Irを入力として、溶接電流設定信号Irに対応した所定回数設定信号Nrを出力する。例えば、Ir=50AのときはNr=3とし、Ir=100AのときはNr=4とする。
【0026】
ピーク期間設定回路TPRは、上記のJIS規格設定信号Jr及び上記の脱酸成分差分信号Edを入力として、JIS規格設定信号Jrに対応して予め設定されているピーク期間基準値Tp0に対してTp0+G1・Edの補正を行い、ピーク期間設定信号Tprを出力する。ここで、G1は脱酸成分差分信号Edの値を、ピーク期間に対する補正値へと変換するための予め定めた正の定数である。したがって、使用する溶接ワイヤの脱酸成分の質量%が基準値よりも第である場合(Ed>0の場合)には、ピーク期間設定信号Tprはピーク期間基準値Tp0よりも大きな値へと補正される。逆の場合は、小さな値へと補正される。
【0027】
ピーク電流設定回路IPRは、上記のJIS規格設定信号Jr及び上記の脱酸成分差分信号Edを入力として、JIS規格設定信号Jrに対応して予め設定されているピーク電流基準値Ip0に対してIp0+G2・Edの補正を行い、ピーク電流設定信号Iprを出力する。ここで、G2は脱酸成分差分信号Edの値を、ピーク電流に対する補正値へと変換するための予め定めた正の定数である。したがって、使用する溶接ワイヤの脱酸成分の質量%が基準値よりも第である場合(Ed>0の場合)には、ピーク電流設定信号Iprはピーク電流基準値Ip0よりも大きな値へと補正される。逆の場合は、小さな値へと補正される。
【0028】
パルス電流設定回路ICRは、後述する切換制御信号Sc、上記の所定回数設定信号Nr、上記のピーク期間設定信号Tpr及び上記のピーク電流設定信号Iprを入力として、切換制御信号ScがLowレベルに変化した時点から、ピーク期間設定信号Tprによって設定されたピーク期間中はピーク電流設定信号Iprの値となり、予め定めたベース期間中は予め定めたベース電流設定値となる信号を1周期として、所定回数設定信号Nrの値だけ繰り返すパルス電流設定信号Icrを出力すると共に、繰り返しが終了すると短時間Highレベルとなる停止信号Offを出力する。
【0029】
溶接電流検出回路IDは、上記の溶接電流Iwを検出して、溶接電流検出信号Idを出力する。電流誤差増幅回路EIは、上記のパルス電流設定信号Icrと溶接電流検出信号Idとの誤差を増幅して、電流誤差増幅信号Eiを出力する。
【0030】
アーク期間計測回路TAは、短絡が解除されてアークが再発生した時点からのアーク期間の経過時間を計測して、アーク期間計測信号Taを出力する。
【0031】
切換制御回路SCは、上記の溶接開始・終了信号On及び上記のアーク期間計測信号Taを入力として、溶接開始・終了信号OnがHighレベル(溶接開始)に変化するとHighレベルに変化し、Lowレベル(溶接終了)に変化した後にアーク期間計測信号Taの値が予め定めた遅延時間Tdの値と等しくなった時点でLowレベルに変化する切換制御信号Scを出力する。遅延時間Tdは、5ms程度であり、0秒に設定して遅延しないようにしても良い。
【0032】
切換回路SWは、上記の電圧誤差増幅信号Ev、上記の電流誤差増幅信号Ei及び上記の切換制御信号Scを入力として、切換制御信号ScがHighレベル(定常溶接期間)のときはa側に切り換わり電圧誤差増幅信号Evを誤差増幅信号Eaとして出力し、Lowレベル(パルス電流通電期間)のときはb側に切り換わり電流誤差増幅信号Eiを誤差増幅信号Eaとして出力する。したがって、切換制御信号ScがHighレベルのときは一般的な消耗電極アーク溶接電源と同様に定電圧制御となり、Lowレベルのときは定電流制御となりピーク電流及びベース電流から形成されるパルス電流が所定回数だけ通電する。
【0033】
駆動回路DVは、上記の溶接開始・終了信号On、上記の停止信号Off及び上記の誤差増幅信号Eaを入力として、溶接開始・終了信号OnがHighレベルに変化した時点から停止信号Offが短時間Highレベルに変化するまでの期間中は、誤差増幅信号Eaに基づいてPWM変調制御を行い、駆動信号Dvを出力する。したがって、溶接電源PSは、溶接開始・終了信号OnがHighレベルに変化した時点から出力を開始し、溶接開始・終了信号OnがLowレベルに変化して所定回数のパルス電流が通電した時点で停止信号Offが短時間Highレベルとなり出力を停止する。
【0034】
図2は、本発明の実施の形態に係る消耗電極アーク溶接の溶接終了制御方法を示す図1の溶接電源における各信号のタイミングチャートである。同図(A)は溶接開始・終了信号Onの時間変化を示し、同図(B)は送給速度Fwの時間変化を示し、同図(C)は溶接電流Iwの時間変化を示し、同図(D)は溶接電圧Vwの時間変化を示し、同図(E)は切換制御信号Scの時間変化を示し、同図(F)は停止信号Offの時間変化を示す。以下、同図を参照して各信号の動作について説明する。
【0035】
時刻t1において、同図(A)に示すように、溶接開始・終了信号OnがHighレベル(溶接開始)からLowレベル(溶接終了)に変化すると、溶接終了制御(アンチスティック制御)が開始する。これに応動して、図1の送給モータMは停止動作に移行し、同図(B)に示すように、送給速度Fwは慣性によって次第に減速して時刻t4で0となる。時刻t1~t4の期間が慣性期間となり、50~100ms程度である。
【0036】
時刻t1の直前に発生した短絡が解除されてアークが再発生した時点からのアーク期間の経過時間が予め定めた遅延時間Tdに達する時刻t2において、同図(E)に示すように、切換制御信号ScがHighレベルからLowレベルに変化する。これに応動して、パルス電流通電期間に入り、同図(C)に示すように、ピーク期間中のピーク電流及び予め定めたベース期間中の予め定めたベース電流から形成されるパルス電流を1周期として所定回数繰り返して溶接電流Iwが通電する。上記のピーク期間は、図1のピーク期間設定信号Tprによって設定される。上記のピーク電流は、図1のピーク電流設定信号Iprによって設定される。ピーク期間設定信号Tpr及びピーク電流設定信号Iprの補正方法については、後述する。同図(D)に示すように、溶接電圧Vwについても、ピーク期間中のピーク電圧及びベース期間中のベース電圧が溶接ワイヤとワークとの間に印加する。ピーク電圧及びベース電圧はアーク長に比例した値となる。例えば、ピーク期間は1.5ms程度であり、ピーク電流は400A程度であり、ベース期間は8ms程度であり、ベース電流は50A程度である。これらのパラメータは図1のパルス電流設定信号Icrによって設定され、1周期ごとに一つの溶滴が移行する状態となるように設定される。
【0037】
時刻t3において、所定回数のパルス電流の通電が終了すると、同図(F)に示すように、停止信号Offが短時間Highレベルとなる。これに応動して、溶接電源は出力を停止するので、同図(C)に示すように、溶接電流Iwは0Aとなり、同図(D)に示すように、溶接電圧Vwは0Vとなる。同図では、時刻t3は、送給速度Fwの慣性期間が終了する時刻t4の直前となっているが、直後となる場合もある。時刻t3は、時刻t4の近傍の時刻となる。
【0038】
パルス電流を繰り返す所定回数は、図1の所定回数設定信号Nrによって設定される。所定回数設定信号Nrは、図1の溶接電流設定信号Irに対応して自動設定される。
【0039】
上述した実施の形態においては、定常溶接期間が直流アーク溶接(短絡移行アーク溶接)の場合について説明したが、パルスアーク溶接であっても良い。
【0040】
以下、ピーク期間設定信号Tpr及びピーク電流設定信号Iprの補正方法について説明する。
1)図1のJIS規格設定回路JRに対して、溶接作業者が、使用する溶接ワイヤのJIS規格を入力すると、JIS規格設定信号Jrが出力される。
2)図1の脱酸成分基準値回路DSは、上記のJIS規格設定信号Jrに対応した予め記憶されている主な脱酸成分であるシリコンとマンガンの合計の質量%を脱酸成分基準値信号Dsとして出力する。
3)図1の脱酸成分設定回路DRに対して、溶接作業者が、使用する溶接ワイヤの銘柄のシリコンとマンガンの合計の質量%を入力すると、脱酸成分設定信号Drが出力される。
4)図1の脱酸成分差分回路Edは、上記の脱酸成分設定信号Drと上記の脱酸成分基準値信号Dsとの差分値(Dr-Ds)を算出して、脱酸成分差分信号Edを出力する。
5)図1のピーク期間設定回路TPRは、上記のJIS規格設定信号Jrに対応して予め設定されているピーク期間基準値Tp0に対してTp0+G1・Edの補正を行い、ピーク期間設定信号Tprを出力する。
6)図1のピーク電流設定回路IPRは、上記のJIS規格設定信号Jrに対応して予め設定されているピーク電流基準値Ip0に対してIp0+G2・Edの補正を行い、ピーク電流設定信号Iprを出力する。
【0041】
使用する溶接ワイヤに含まれている脱酸成分の質量%がその規格の基準値に対して多い場合には、ピーク期間及び/又はピーク電流が大きくなるように補正している。逆に、基準値よりも少ない場合には、ピーク期間及び/又はピーク電流が小さくなるように補正している。このように補正することによって、溶接終了制御の安定化を図っている。
【0042】
本実施の形態では、同じJIS規格の溶接ワイヤに対しても、銘柄が異なる場合には、その銘柄に含まれている脱酸成分の質量%に応じて、溶接終了制御のピーク期間及び/又はピーク電流を最適化することができる。脱酸成分の主なものはシリコンとマンガンであるので、両者を対象としている。この結果、常に安定した溶接終了制御を行うことができるので、溶接終了部の溶接品質を良好にすることができる。上述した実施の形態では、ピーク期間及びピーク電流の両値を適正化する場合について説明したが、どちらか一方だけを適正化するようにしても良い。
【符号の説明】
【0043】
1 溶接ワイヤ
2 ワーク
3 アーク
4 溶接トーチ
5 送給ロール
DR 脱酸成分設定回路
Dr 脱酸成分設定信号
DS 脱酸成分基準値回路
Ds 脱酸成分基準値信号
DV 駆動回路
Dv 駆動信号
Ea 誤差増幅信号
ED 脱酸成分差分回路
Ed 脱酸成分差分信号
EI 電流誤差増幅回路
Ei 電流誤差増幅信号
EV 電圧誤差増幅回路
Ev 電圧誤差増幅信号
FC 送給制御回路
Fc 送給制御信号
FR 送給速度設定回路
Fr 送給速度設定信号
Fw 送給速度
ID 溶接電流検出回路
Id 溶接電流検出信号
ICR パルス電流設定回路
Icr パルス電流設定信号
IPR ピーク電流設定回路
Ipr ピーク電流設定信号
IR 溶接電流設定回路
Ir 溶接電流設定信号
Iw 溶接電流
JR JIS規格設定回路
Jr JIS規格設定信号
M 送給モータ
NR 所定回数設定回路
Nr 所定回数設定信号
Off 停止信号
ON 溶接開始・終了回路
On 溶接開始・終了信号
PM 電源主回路
PS 溶接電源
SC 切換制御回路
Sc 切換制御信号
SW 切換回路
TA アーク期間計測回路
Ta アーク期間計測信号
Td 遅延時間
TPR ピーク期間設定回路
Tpr ピーク期間設定信号
VD 溶接電圧検出回路
Vd 溶接電圧検出信号
VR 溶接電圧設定回路
Vr 溶接電圧設定信号
Vw 溶接電圧
図1
図2