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特開2023-167752壁板製造ラインでの二酸化炭素の固定量を算出するシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167752
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】壁板製造ラインでの二酸化炭素の固定量を算出するシステム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/04 20120101AFI20231116BHJP
【FI】
G06Q50/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079185
(22)【出願日】2022-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000110860
【氏名又は名称】ニチハ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大浦 舜
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 文宏
(72)【発明者】
【氏名】高村 泰寛
(72)【発明者】
【氏名】澤田 洋平
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】壁板製造ラインにおける二酸化炭素の固定量を算出するシステムを提供する。
【解決手段】水硬性材料と木質補強材を用いる壁板製造ラインにおいて、二酸化炭素の固定量を算出するシステムは、木質補強材として用いる国産木材加工物の使用量データを有する原料ファイル及び壁板製造ラインにおける二酸化炭素に関する情報である工程環境データと製造段階の壁板に関する情報である壁板データの少なくともいずれかを有する工程ファイルを備えるデータベースと、国産木材加工物の使用量データと国産木材加工物の炭素含有量に基づいて、国産木材加工物の使用により壁板に固定された二酸化炭素量である第1固定量を算出する原料演算部及び工程環境データと壁板データの少なくともいずれかに基づいて、壁板製造ラインで壁板に固定された二酸化炭素量である第2固定量を算出する工程演算部を有するアプリケーションサーバと、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料として水硬性材料と木質補強材を用いる壁板製造ラインにおける壁板への二酸化炭素の固定量を算出するシステムであって、
前記壁板製造ラインで前記木質補強材として用いられた国産木材加工物の使用量データを有する原料ファイルと、
前記壁板製造ラインにおける二酸化炭素に関する情報である工程環境データ、製造段階の前記壁板に関する情報である壁板データの少なくともいずれかを有する工程ファイルと、
前記原料ファイルと前記工程ファイルを有するデータベースと、
前記国産木材加工物の使用量データと国産木材加工物の炭素含有量に基づいて、前記国産木材加工物の使用により前記壁板に固定された二酸化炭素量である第1固定量を算出する原料演算部と、
前記工程環境データ、前記壁板データの少なくともいずれかに基づいて、前記壁板製造ラインで前記壁板に吸収固定された二酸化炭素量である第2固定量を算出する工程演算部と、を備える。
【請求項2】
前記工程環境データは、前記壁板製造ラインにおける雰囲気中の二酸化炭素データを有し、
前記壁板データは、製造段階の前記壁板の質量データ、製造段階の前記壁板の分析データの少なくともいずれかを有し、
前記工程演算部は、前記雰囲気中の二酸化炭素データ、前記壁板の質量データ、前記壁板の分析データの少なくともいずれかに基づいて前記第2固定量を算出する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記壁板製造ラインにおいて、原料として二酸化炭素を固定させた粒状物を用い、
前記原料ファイルは、前記粒状物の使用量データと、前記粒状物の二酸化炭素の固定量データを含み、
前記原料演算部は、前記粒状物の使用量データと、前記粒状物の二酸化炭素の固定量データに基づいて前記粒状物の使用により前記壁板に固定された二酸化炭素量である第3固定量を算出する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記壁板製造ラインは、燃料の燃焼により前記壁板製造ラインにエネルギーを供給するエネルギー供給工程を備え、
前記データベースは、前記エネルギー供給工程での燃料の使用量データと、燃料の単位発熱量データと、燃料の排出係数データを有する排出ファイルを備え、
更に、前記燃料の使用量データと、前記燃料の単位発熱量データと、前記燃料の排出係数データに基づいて前記エネルギー供給工程における二酸化炭素の排出量を算出する排出演算部を備える
請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記排出ファイルは、前記エネルギー供給工程外から供給された電気に関する電気データ、前記エネルギー供給工程外から供給された熱に関する熱データの少なくともいずれかを含み、
前記電気データは、電気の使用量データと、電気の排出係数データを含み、
前記熱データは、熱の使用量データと、熱の排出係数データを含み、
前記排出演算部は、前記電気の使用量データと、前記電気の排出係数データとに基づいて前記電気の使用による二酸化炭素排出量を算出する、前記熱の使用量データと、前記熱の排出係数データとに基づいて前記熱の使用による二酸化炭素排出量を算出する、の少なくともいずれかを行う
請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記排出ファイルは、前記壁板の輸送に関する輸送データを有し、
前記排出演算部は、前記輸送データに基づいて前記輸送による二酸化炭素排出量を算出する
請求項4に記載のシステム。
【請求項7】
前記輸送データは、輸送燃料の使用量データと、二酸化炭素の排出係数データを含み、
前記排出演算部は、前記輸送燃料の使用量データと、前記二酸化炭素の排出係数データとに基づいて前記輸送による二酸化炭素排出量を算出する
請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記固定量と、前記二酸化炭素の排出量を比較する比較部を備える
請求項4に記載のシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁板製造ラインで壁板に二酸化炭素が固定された量を算出するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
地球の温暖化を防ぐために、温室効果ガスの排出量を削減することや温室効果ガスを吸収固定させることが取り組まれている。壁板製造においても、壁板に二酸化炭素を吸収させ、固定させることが検討されている。
【0003】
特許文献1には、セメントを含有する基材をオートクレーブ養生した後、炭酸化処理することにより二酸化炭素を吸収させた壁板が記載されている。特許文献2には、セメントを含有するセメント組成物を脱水成形した後、成形体を加熱乾燥し、その後炭酸ガス雰囲気中で30分~2時間養生することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61-106472号公報
【特許文献2】特開昭63-55174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、壁板製造において壁板に吸収、固定された二酸化炭素の量、すなわち二酸化炭素の固定量を明確に示すシステムは構築されていない。壁板製造における二酸化炭素の固定量を促進させるためには、壁板製造ラインにおける壁板への二酸化炭素の固定量を明確に把握する必要がある。
【0006】
本発明は、壁板製造ラインにおける壁板への二酸化炭素の固定量を算出することができるシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、原料として水硬性材料と木質補強材を用いる壁板製造ラインにおける壁板への二酸化炭素の固定量を算出するシステムが提供される。このシステムは、データベースと、原料演算部と、工程演算部とを備える。
【0008】
データベースは、原料ファイルと工程ファイルを有する。原料ファイルは、壁板製造ラインで木質補強材として用いられた国産木材加工物の使用量データを有する。工程ファイルは、壁板製造ラインにおける二酸化炭素に関する情報である工程環境データ、製造段階の壁板に関する情報である壁板データの少なくともいずれかを有する。
【0009】
原料演算部は、国産木材加工物の使用量データと国産木材加工物の炭素含有量に基づいて、国産木材加工物の使用により壁板に固定された二酸化炭素量である第1固定量を算出する。
【0010】
工程演算部は、工程環境データ、壁板データの少なくともいずれかに基づいて、壁板製造ラインで壁板に吸収固定された二酸化炭素量である第2固定量を算出する。
【0011】
本発明のシステムによると、壁板製造ラインでの二酸化炭素の固定量として、壁板の原料として使用した国産木材加工物により壁板に固定された二酸化炭素量である第1固定量と、壁板製造ラインで壁板に吸収固定された二酸化炭素量である第2固定量とが算出されるので、壁板製造ラインでの二酸化炭素の固定量を把握するのに適する。
【0012】
好ましくは、工程環境データは、壁板製造ラインにおける雰囲気中の二酸化炭素データを有し、壁板データは、製造段階の壁板の質量データ、製造段階の壁板の分析データの少なくともいずれかを有する。工程演算部は、雰囲気中の二酸化炭素データ、壁板の質量データ、壁板の分析データの少なくともいずれかに基づいて第2固定量を算出する。
【0013】
このような構成においては、工程雰囲気中の二酸化炭素の減少量、壁板が二酸化炭素を吸収固定したことによる壁板質量の増加量、壁板が二酸化炭素を吸収固定したことによる壁板中の炭酸カルシウムの増加量の少なくともいずれかを壁板への二酸化炭素の固定量として算出して、壁板製造ラインでの二酸化炭素の固定量を把握するのに適する。
【0014】
壁板製造ラインにおいて、原料として二酸化炭素を固定させた粒状物を使用することができる。その場合には、原料ファイルは、粒状物の使用量データと、粒状物の二酸化炭素の固定量データを含む。原料演算部は、粒状物の使用量データと、粒状物の二酸化炭素の固定量データに基づいて粒状物の使用により壁板に固定された二酸化炭素量である第3固定量を算出することができる。
【0015】
原料として二酸化炭素を固定させた粒状物を使用する場合、得られた壁板は粒状物に含まれている二酸化炭素を固定することとなる。従って、原料演算部が粒状物の使用により壁板に固定された二酸化炭素量を算出することで、壁板製造ラインでの二酸化炭素の固定量を把握するのに適する。
【0016】
壁板製造ラインは、燃料の燃焼により壁板製造ラインにエネルギーを供給するエネルギー供給工程を備えることができる。その場合には、データベースは、エネルギー供給工程での燃料の使用量データと、燃料の単位発熱量データと、燃料の排出係数データを有する排出ファイルを備える。また、システムは、燃料の使用量データと、燃料の単位発熱量データと、燃料の排出係数データに基づいてエネルギー供給工程における二酸化炭素の排出量を算出する排出演算部を備えることができる。
【0017】
壁板製造ラインが燃料の燃焼により各工程にエネルギーを供給するエネルギー供給工程を備える場合、排出演算部によりエネルギー供給工程での二酸化炭素の排出量を壁板製造ラインでの二酸化炭素の排出量として算出して、壁板製造ラインでの二酸化炭素の排出量を把握するのに適する。二酸化炭素の排出量を把握することで、現状の二酸化炭素の固定量が十分であるか把握することができる。
【0018】
排出ファイルは、エネルギー供給工程外から供給された電気に関する電気データ、エネルギー供給工程外から供給された熱に関する熱データの少なくともいずれかを含むことができる。電気データは、電気の使用量データと、電気の排出係数データを含む。熱データは、熱の使用量データと、熱の排出係数データを含む。排出演算部は、電気の使用量データと、電気の排出係数データとに基づいて電気の使用による二酸化炭素の排出量を算出する、熱の使用量データと、熱の排出係数データとに基づいて熱の使用による二酸化炭素の排出量を算出する、の少なくともいずれかを行うことができる。
【0019】
このような構成は、壁板製造ラインがエネルギー供給工程外から電気、熱の少なくともいずれかの供給を受けている場合における電気、熱の使用による二酸化炭素排出量を把握するのに適する。二酸化炭素の排出量を把握することで、現状の二酸化炭素の固定量が十分であるか把握することができる。
【0020】
更に、排出ファイルは、壁板の輸送に関する輸送データを有することができる。排出演算部は、輸送データに基づいて前記輸送による二酸化炭素排出量を算出することができる。
【0021】
このような構成は、壁板の輸送による二酸化炭素の排出量を把握するのに適する。二酸化炭素の排出量を把握することで、現状の二酸化炭素の固定量が十分であるか把握することができる。
【0022】
好ましくは、輸送データは、輸送燃料の使用量データと、二酸化炭素の排出係数データを含む。排出演算部は、輸送燃料の使用量データと、二酸化炭素の排出係数データとに基づいて輸送による二酸化炭素排出量を算出する。
【0023】
このような構成は、壁板の輸送による二酸化炭素の排出量をより正確に把握するのに適する。二酸化炭素の排出量を正確に把握することで、現状の二酸化炭素の固定量が十分であるか把握することができる。
【0024】
好ましくは、システムは、固定量と、二酸化炭素の排出量を比較する比較部を備える。
【0025】
比較部を備えることで、二酸化炭素の固定量と二酸化炭素の排出量を比較し、二酸化炭素の固定量が二酸化炭素排出量よりも多いか把握するのに適する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の第一の実施形態に係るシステム構成例を概略的に表す。
図2図1のサーバ装置及びデータベースの内部構成を概略的に表す機能ブロック図である。
図3図2のサーバ装置のデータベース内のファイル構成を模式的に表す図である。
図4図1の端末装置の内部構成を概略的に表す機能ブロック図である。
図5】本発明の第一の実施形態のシステムを利用して壁板製造ラインの二酸化炭素固定量を算出する際の処理の流れを概略的に示すフローチャートである。
図6】二酸化炭素の固定量を表示する画面の一例を示す図である。
図7】本発明の第二の実施形態におけるサーバ装置のデータベース内のファイル構成を模式的に表す図である。
図8】本発明の第二の実施形態のシステムを利用して壁板製造ラインの二酸化炭素の固定量を算出する際の処理の流れを概略的に示すフローチャートである。
図9】本発明の第三の実施形態に係るシステム構成例を概略的に表す図である。
図10図9のサーバ装置及びデータベースの内部構成を概略的に表す機能ブロック図である。
図11図10のデータベース内のファイル構成を模式的に表す図である。
図12】本発明の第三の実施形態のシステムを利用して壁板製造ラインの二酸化炭素の固定量と二酸化炭素の排出量を算出する際の処理の流れを概略的に示すフローチャートである。
図13図12のフローチャートで得られた二酸化炭素の固定量と二酸化炭素の排出量を表示する画面の一例を示す。
図14】第四の実施形態におけるサーバ装置及びデータベースの内部構成を概略的に表す機能ブロック図である。
図15図14のデータベース内のファイル構成を模式的に表す図である。
図16】第四の実施形態のシステムを利用して壁板製造ラインの二酸化炭素の固定量と二酸化炭素の排出量を算出する際の処理の流れを概略的に示すフローチャートである。
図17図16のフローチャートで得られた二酸化炭素の固定量と二酸化炭素の排出量を表示する画面の一例を示す。
図18】第五の実施形態におけるデータベース内のファイル構成を模式的に表す図である。
図19】第五の実施形態のシステムを利用して壁板製造ラインの二酸化炭素の固定量と二酸化炭素の排出量を算出する際の処理の流れを概略的に示すフローチャートである。
図20図19のフローチャートで得られた二酸化炭素の固定量と二酸化炭素の排出量を表示する画面の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を参照しながら、本発明のシステムを実施するための形態を説明する。図1図20は、本発明の実施の形態を例示する図であり、これらの図において同一の符号を付した部分は同一物を表し、基本的な構成及び動作は同様であるものとする。
【0028】
図1は、本発明の第一の実施形態について、そのシステム構成例を概略的に表す図である。図1において、第一の実施形態のシステムは、サーバ装置と、製造ライン等に設置された端末装置と、該サーバ装置と端末装置を接続するネットワークとから構成されている。
【0029】
サーバ装置と各端末装置とは、ネットワークを通じて通信可能なシステムを構成している。サーバ装置及び各端末装置間のそれぞれの機能については、データベース層、ファンクション層(アプリケーションサーバ)、プレゼンテーション層(ユーザインターフェイス)からなる3層構造とするのが好ましい。この場合、サーバ装置においてはデータベース及びアプリケーションサーバを備えるとともに、端末装置ではユーザインターフェイス(WEBブラウザ等)のみを備えるように構成することができる。
【0030】
図2は、図1のサーバ装置及びデータベースの内部構成を概略的に表す機能ブロック図である。サーバ装置は、主制御部200と、記憶部201と、ネットワークインターフェイス部202と、原料演算部203と、工程演算部204と、データベース210とから構成されている。そして、データベース210は、原料ファイル221と、工程ファイル222と、RDBMS230とから構成されている。
【0031】
サーバ装置の主制御部200は、CPU、MPU等の処理装置から構成されており、予め記憶されているプログラム等に従って所定の演算を行い、本サーバ装置内の各構成部分の動作を制御し、各構成部分間のデータ通信を制御する。
【0032】
記憶部201は、揮発性又は不揮発性の半導体記憶素子などから構成されており、主制御部200の動作用プログラムを記憶したROMや、主制御部200の作業領域として利用されるRAMなどを含んでいる。また、各種データやアプリケーションプログラムなどを記憶しておくための磁気ディスク装置(ハードディスク)やリムーバブルディスクメディア(CD-R、SD、USB等)などの補助記憶装置を更に含んでいてもよい。
【0033】
ネットワークインターフェイス部202は、ネットワークを通じて端末装置との通信を可能にするためのインターフェイスであり、NIC(Network Interface Card)等のネットワークアダプタ及びこれを駆動するためのソフトウェアから構成されるものである。例えば、ネットワークがインターネットである場合には、TCP/IP等のプロトコルを利用して通信を行うことができる。
【0034】
原料演算部203は、データベース210に記憶されている原料ファイル221のデータを管理するとともに、これらのデータを用いて二酸化炭素の固定量を算出する機能を有する。その具体的な機能については、後に詳細に説明する。
【0035】
工程演算部204は、データベース210に記憶されている工程ファイル222のデータを管理するとともに、これらのデータを用いて二酸化炭素の固定量を算出する機能を有する。その具体的な機能については、後に詳細に説明する。
【0036】
RDBMS230は、データベース210を操作するための基本的なデータベース管理システム(Relational Database Management System)であり、主制御部200はRDBMS230に命令することにより、各ファイルに対して、データの検索、追加、更新、削除等の所定の操作を行うことができるようになっている。
【0037】
図3は、データベース210内のファイル構成を模式的に表す図である。データベース210は、壁板製造ラインで使用された各原料に関する原料ファイル221、壁板製造ラインの工程情報に関する工程ファイル222を含む。
【0038】
原料ファイル221は、壁板製造ラインで使用された各原料に関する原料データ、壁板製造ラインで使用された各原料の使用量に関する原料使用量データなどを含む。詳しくは、原料データは、各原料について、原料名、原料コード、原料使用日などのデータを含む。また、原料データは、国産木材加工物について炭素含有量のデータも含んでいる。炭素含有量は、国産木材加工物を分析して得られた値、又は、2013年京都議定書補足的ガイダンスに提示されているデフォルト値などであり、外国産木材加工物、非木材物については炭素含有量のデータを有しない。原料使用量データは、各原料について、原料名、原料コード、原料使用日、原料使用量のデータなどを含む。原料ファイルの原料データ、原料使用量データは、ネットワークを通じて端末装置から提供される。
【0039】
工程ファイル222は、壁板製造ラインについて、各工程での二酸化炭素量などの環境情報に関する工程環境データ、各工程での製造段階の壁板の質量情報に関する壁板質量データ、各工程での製造段階の壁板の分析情報に関する壁板分析データなどを含む。詳しくは、工程環境データは、壁板生産日、測定箇所、測定時刻、雰囲気中の二酸化炭素の測定値、装置の容積、二酸化炭素の供給箇所、二酸化炭素の供給量などのデータを含む。壁板の質量データは、壁板生産日、測定箇所、測定時刻、製造段階の壁板の水分量、製造段階の壁板の質量などのデータを含む。壁板の分析データは、壁板生産日、測定箇所、測定時刻、製造段階の壁板の分析値などのデータを含む。工程ファイル222の工程環境データ、壁板質量データ、壁板分析データは、ネットワークを通じて端末装置から提供される。
【0040】
図4は、図1の端末装置の内部構成を概略的に表す機能ブロック図である。端末装置は、主制御部400と、記憶部401と、入力部402と、ネットワークインターフェイス部403とから構成されている。
【0041】
端末装置の主制御部400は、CPU、MPU等の処理装置から構成されており、予め記憶されているプログラム等に従って所定の演算を行い、本端末装置内の各構成部分の動作を制御し、各構成部分間のデータ通信を制御する。
【0042】
記憶部401は、揮発性又は不揮発性の半導体記憶素子などから構成されており、主制御部400の動作用プログラムを記憶したROMや、主制御部400の作業領域として利用されるRAMなどを含んでいる。また、各種データやアプリケーションプログラムなどを記憶しておくための磁気ディスク装置(ハードディスク)やリムーバブルディスクメディア(CD-R、SD、USB等)などの補助記憶装置を更に含んでいてもよい。
【0043】
入力部402は、本端末装置に対する操作者、又は測定機器などから入力操作を受け付けるものである。
【0044】
ネットワークインターフェイス部403は、ネットワークを通じてサーバ装置との通信を可能にするためのインターフェイスであり、NIC(Network Interface Card)等のネットワークアダプタ及びこれを駆動するためのソフトウェアから構成されるものである。例えば、ネットワークがインターネットである場合には、TCP/IP等のプロトコルを利用して通信を行うことができる。
【0045】
本発明のシステムの一実施形態における壁板製造ラインは、原料の供給工程と、原料の混合工程と、成形工程と、養生・保管工程と、を有する。
【0046】
原料の供給工程では、壁板製造ラインに原料を供給する。本実施形態では、原料として、水硬性材料と木質補強材を供給する。
【0047】
水硬性材料としては、例えば、セメント、石膏、およびスラグが挙げられる。セメントとしては、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、アルミナセメント、高炉セメント、およびフライアッシュセメントが挙げられる。石膏としては、例えば、無水石膏、半水石膏、および二水石膏が挙げられる。スラグとしては、例えば、高炉スラグおよび転炉スラグが挙げられる。一種類の水硬性材料が用いられてもよいし、二種類以上の水硬性材料が用いられてもよい。
【0048】
木質補強材としては、例えば、国産木材を加工して得られた、木粉、木毛、木片、木質パルプ、木質繊維、木質繊維束や、外国産木材を加工して得られた、木粉、木毛、木片、木質パルプ、木質繊維、木質繊維束や、故紙などが挙げられる。一種類の木質補強材が用いられてもよいし、二種類以上の木質補強材が用いられてもよい。
【0049】
更に他の原料を含有しても良い。他の原料としては、珪酸質材料、混和材、補強繊維、防水剤、硬化剤などが挙げられる。珪酸質材料としては、例えば、珪砂、ケイ石粉、シリカ粉、石炭灰、フライアッシュ、および珪藻土が挙げられる。一種類の珪酸質材料が用いられてもよいし、二種類以上の珪酸質材料が用いられてもよい。
【0050】
混和材としては、マイカ、製紙スラッジ焼却灰、シリカフューム、ウォラストナイト、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、バーミキュライト、セピオライト、ゾノトライト、カオリナイト、ゼオライト、発泡ポリスチレンビーズ、マイクロスフィア、パーライト、フライアッシュバルーン、シラスバルーン、膨張頁岩、膨張粘土、焼成珪藻土が挙げられる。一種類の混和材が用いられてもよいし、二種類以上の混和材が用いられてもよい。
【0051】
補強繊維としては、竹繊維、麻繊維、バガス、籾殻、稲藁、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、アセテート繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ビニロン繊維等の合成繊維、ガラス繊維、カーボン繊維、セラミック繊維、ロックウール等が挙げられる。一種類の補強繊維が用いられてもよいし、二種類以上の補強繊維が用いられてもよい。
【0052】
防水剤としては、ワックス、パラフィン、コハク酸、脂肪酸、シリコーン、合成樹脂が挙げられる。硬化剤としては、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等の塩化物の無水物あるいは結晶化物、硫酸アルミニウム、ミョウバン、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム等の硫酸塩の無水物あるいは結晶化物、硝酸カルシウム、亜硝酸カルシウム等の硝酸塩の無水物あるいは結晶化物、ギ酸カルシウム、酢酸カルシウム等のギ酸塩、酢酸塩の無水物あるいは結晶化物、アルミン酸ソーダ、水ガラス等が挙げられる。防水剤、硬化剤においても、一種類が用いられても良いし、二種類以上が用いられても良い。
【0053】
原料の混合工程では、供給した原料を所定の割合で混合して原料混合物を製造する。本実施形態では、例えば、水硬性材料を30~70%、木質補強材を3~30%、珪酸質材料を0~60%質量、混和材を1~65質量%の割合で混合する。なお、原料の混合工程では、必要に応じて所定量の水が混合される。また、物性に影響を与えない範囲で、二酸化炭素を吹き込みながら原料を混合して、二酸化炭素を吸収、固定させた原料混合物を製造することができる。二酸化炭素の吹き込みは、密閉された装置内にて行われる。
【0054】
成形工程では、原料混合物を成形して成形物を製造する。成形物を得る方法としては、原料混合物を水と混合してスラリーとし、抄造する方法、原料混合物を押出成形する方法、原料混合物を散布し、堆積物を成形する乾式製法、原料混合物を型枠に流し込む流し込み製法などが挙げられる。得られた成形物は、必要に応じて圧力をかけて成型する。また、物性に影響を与えない範囲で、成形工程において二酸化炭素を吹きかけ、成形物に二酸化炭素を吸収、固定させることができる。二酸化炭素の吹きかけは、密閉された装置内にて行われる。
【0055】
養生・保管工程では、成形物を常温環境下、加温環境下、蒸気加温環境下、圧力加温環境下にさらして養生すること、養生後の成形物を保管することが行われる。養生は、一方法が用いられても良いし、二方法以上が用いられても良い。また、必要に応じて養生前や養生後の成形物を乾燥する、又は加水することが行われても良く、養生・保管工程には成形物の乾燥、加水が含まれる。成形物は必要に応じて塗装を施しても良く、養生・保管工程には塗装前と塗装後の成形物の保管も含まれる。養生・保管工程において、密閉された装置内であって二酸化炭素を一定量供給した環境下に成形物をさらし、成形物に二酸化炭素を吸収、固定させることができる。
【0056】
以上の原料の供給工程と、原料の混合工程と、成形工程と、養生・保管工程により、壁板が製造される。
【0057】
次に、本実施形態のシステムの利用形態と、端末装置及びサーバ装置の動作について詳細に説明する。図5は、本システムを利用して壁板製造ラインの二酸化炭素の固定量を算出する際の処理の流れを概略的に示すフローチャートである。
【0058】
木は成長する上で光合成をして二酸化炭素を吸収しており、木材加工物を壁板の原料として使用すると壁板に二酸化炭素が固定されることとなる。また、二酸化炭素の固定量は、壁板の製造国における数値である必要がある。よって、本実施形態では、まず、原料演算部203により国産木材加工物の使用に基づく壁板への二酸化炭素の固定量が算出される(ステップS11)。データベース210の原料データは、原料毎に、原料名、原料コード、国産木材加工物の炭素含有量のデータを含み、原料使用量データは、原料名、原料コード、各原料の使用量のデータを含む。原料演算部203は、同じ原料名、又は同じ原料コードについて、原料使用量データの原料使用量に、原料データの炭素含有量と、換算係数である44/12と、を乗じることにより、各原料における国産木材の使用に基づく二酸化炭素の固定量を算出する。更に、原料演算部203は、算出された各原料における国産木材の使用に基づく二酸化炭素の固定量の総和を算出する。原料演算部203は、算出された二酸化炭素の固定量の総和を、壁板製造ラインにおける、国産木材加工物の使用に基づく二酸化炭素の固定量として、原料使用日とともにサーバ装置の記憶部201に記録する。ステップS11で算出された二酸化炭素の固定量が第1固定量である。
【0059】
国産木材加工物の使用に基づく二酸化炭素の固定量の算出では、全ての原料について、国産木材加工物の炭素含有量と原料使用量を乗じることにより、各原料における国産木材の使用に基づく二酸化炭素の固定量を算出しても良いし、国産木材加工物を抽出し、抽出された原料のみで二酸化炭素の固定量を算出しても良い。国産木材加工物の抽出は、原料演算部203が国産木材加工物の炭素含有量データに数値が入力されている原料を国産木材加工物として抽出する、国産木材加工物の識別コードを設け、原料演算部203が該当品を抽出することにより行われる。
【0060】
ステップS11の処理を終えると、工程演算部204が工程における二酸化炭素の固定量を算出する(ステップS12)。工程ファイル222は、壁板製造ラインにおける工程環境データ、壁板質量データ、壁板分析データの少なくともいずれかを有するので、工程演算部204は、工程ファイル222の工程環境データ、壁板質量データ、壁板分析データの少なくともいずれかに基づいて二酸化炭素の固定量を算出する。ステップS12で算出された二酸化炭素の固定量が第2固定量である。
【0061】
工程環境データに基づく二酸化炭素の固定量の算出では、工程演算部204は工程環境データに基づいて壁板製造工程での二酸化炭素の減少量を算出し、当該減少量を二酸化炭素の固定量とする。
【0062】
製造ラインの各工程には装置が設置されており、工程環境データは、各製造装置において、壁板生産日、測定箇所、測定時刻、雰囲気中の二酸化炭素の測定値、装置の容積、二酸化炭素の供給箇所、二酸化炭素の供給量などのデータを含む。
【0063】
測定箇所は、装置内部であり、雰囲気中の二酸化炭素の測定値は、装置内で雰囲気中の二酸化炭素濃度を測定した装置内の二酸化炭素値である。一例として、測定箇所は5箇所であり、雰囲気中の二酸化炭素の測定値は、装置内の5カ所での雰囲気中の二酸化炭素濃度である。また、工程環境データは、装置の容積(D130)と、装置内への二酸化炭素供給量(D140)と、を有する。
【0064】
工程演算部204は、測定箇所と測定時刻に基づいて、同じ地点での二酸化炭素の測定値を抽出する。詳しくは、工程演算部204は、測定箇所と測定時刻に基づいて、二酸化炭素供給前(壁板製造前)の5カ所での二酸化炭素濃度(D111~115)と、壁板製造後の5カ所での二酸化炭素濃度(D121~125)を抽出する。そして、工程演算部204は、二酸化炭素濃度(D111~115)の平均値に、装置の容積(D130)と、係数44/22.4を乗ずることにより、二酸化炭素供給前(壁板製造前)の装置内の二酸化炭素の量(D150)を算出する。更に、工程演算部204は、二酸化炭素濃度(D121~125)の平均値に、装置の容積(D130)と、係数44/22.4を乗ずることにより、壁板製造後の装置内の二酸化炭素の量(D160)を算出する。更に、装置内への二酸化炭素供給量(D140)と二酸化炭素供給前(壁板製造前)の装置内の二酸化炭素の量(D150)の和から、壁板製造後の装置内の二酸化炭素の量(D160)を差し引くことにより、装置での二酸化炭素の減少量を算出し、当該減少量を当該装置での二酸化炭素の固定量とする。
【0065】
壁板質量データに基づく二酸化炭素の固定量の算出では、工程演算部204は壁板製造工程での製造段階の壁板の水分を除く増加量を算出し、当該増加量を二酸化炭素の固定量とする。
【0066】
製造ラインの各工程には装置が設置されており、壁板の質量データは、壁板生産日、測定箇所、測定時刻、製造段階の壁板の水分量、製造段階の壁板の質量などのデータを含む。
【0067】
測定箇所は、製造段階の壁板を装置内に受け入れる受入口、当該製造段階の壁板を当該装置外に排出する排出口があげられる。この場合、製造段階の壁板の質量は、受入口での壁板の質量(D211)と、排出口での壁板の質量(D221)となる。製造段階の壁板の水分量は、受入口での壁板の水分量(D212)と、排出口での壁板の水分量(D222)となる。なお、原料の混合工程においては、装置に受け入れるのは混合前の各原料及び水であり、混合する各原料及び水分の質量の総和を受入口での製造段階の壁板の質量(D211)とし、添加する水の質量を当該受入口での当該壁板の水分量(D212)とする。
【0068】
工程演算部204は、排出口での壁板の質量(D221)から、受入口での壁板の質量(D211)と当該受入口での壁板の水分量(D212)の差と、当該排出口での壁板の水分量(D222)と、を差し引くことにより装置での壁板の増加量を算出し、当該増加量を二酸化炭素の固定量とする。
【0069】
壁板分析データに基づく二酸化炭素の固定量の算出では、工程演算部204は製造段階の壁板における炭酸カルシウムの増加量を算出し、当該増加量を二酸化炭素の固定量とする。
【0070】
製造ラインの各工程には装置が設置されており、壁板の分析データは、壁板生産日、測定箇所、測定時刻、製造段階の壁板の分析値などのデータを含む。
【0071】
一例として、測定箇所は、製造段階の壁板を装置内に受け入れる受入口、当該製造段階の壁板を当該装置外に排出する排出口があげられる。この場合、製造段階の壁板の分析値は、受入口で壁板の一部を採取し示差熱天秤分析して得られた、受入口での炭酸カルシウム含有量(D311)と、排出口で壁板の一部を採取し示差熱天秤分析して得られた、排出口での炭酸カルシウム含有量(D312)となる。なお、原料の混合工程においては、装置に受け入れるのは混合前の各原料であるので、混合する各原料を示差熱天秤分析して得られた炭酸カルシウム含有量に各原料の使用量を乗じた値の総和を受入口での炭酸カルシウム含有量(D311)とする。
【0072】
工程演算部204は、排出口での炭酸カルシウム含有量(D312)から受入口での炭酸カルシウム含有量(D311)を差し引くことにより装置での壁板の炭酸カルシウムの増加量を算出し、当該増加量を二酸化炭素の固定量とする。
【0073】
工程演算部204による二酸化炭素の固定量の算出は、各装置について行われる。工程演算部204は、各製造装置における二酸化炭素の固定量と壁板の生産日をサーバ装置の記憶部201に記録する。各製造装置における二酸化炭素の固定量の総和が第2固定量である。なお、工程演算部204は、二酸化炭素の固定量を、工程環境データに基づいて算出された値、壁板質量データに基づいて算出された値、壁板分析データに基づいて算出された値の平均値とすることもできる。
【0074】
ステップS12の処理を終えると、二酸化炭素の固定量が表示される(ステップS13)。二酸化炭素の固定量を表示する画面の一例を図6に示す。
【0075】
図6では、工程1~4、小計の各々について二酸化炭素の固定量が表示されている。工程1は原料の供給工程であり、工程2は原料の混合工程であり、工程3は成形工程であり、工程4は養生・保管工程である。
【0076】
工程1には、原料演算部203により算出された二酸化炭素の固定量(第1固定量)が表示される。工程2には、工程演算部204により算出された、原料の混合工程での二酸化炭素の固定量が表示される。工程3には、工程演算部204により算出された、成形工程での二酸化炭素の固定量が表示される。工程4には、工程演算部204により算出された、養生・保管工程での二酸化炭素の固定量が表示される。小計には、原料演算部203により算出された二酸化炭素の固定量と工程演算部204により算出された二酸化炭素の固定量の和が表示される。なお、原料演算部203により算出された二酸化炭素の固定量と工程演算部204により算出された二酸化炭素の固定量のリレーションは、原料使用日と壁板生産日に基づいて行われる。すなわち、原料使用日と壁板生産日が同一であるデータを抽出し、図6の画面に表示する。
【0077】
以上説明したように、本実施形態のシステムは、壁板製造ラインでの二酸化炭素の固定量として、壁板の原料として使用した国産木材加工物により壁板に固定された二酸化炭素量と、壁板製造ラインで壁板に固定された二酸化炭素量とを算出するので、壁板製造ラインでの二酸化炭素の固定量を把握するのに適する。また、図6に示されるように、各工程の二酸化炭素の固定量や壁板製造ライン全体の二酸化炭素の固定量を把握することも可能である。
【0078】
本発明のシステムの第二の実施形態では、原料として、壁板の端材を粉砕して粒状物とし、二酸化炭素雰囲気下で処理して二酸化炭素を吸収固定させた粒状物を用い、当該粒状物の使用による壁板への二酸化炭素の固定量も把握する。
【0079】
第二の実施形態において、システム構成は図1と同じであり、サーバ装置及びデータベースの内部構成は図2と同じである。
【0080】
図7は、第二の実施形態におけるサーバ装置のデータベース内のファイル構成を模式的に表す図である。原料ファイル221は、原料データに、原料の二酸化炭素固定量を備えることが図3の原料ファイル221と異なるが、他は図3と同じである。原料の二酸化炭素固定量は、原料の製造工程で原料に吸収固定された二酸化炭素固定量である。原料の二酸化炭素固定量は、工程演算部と同様の算出方法で、原料の製造における、工程環境データ、原料の質量データ、原料の分析データなどから算出された値である。国産木材加工物は、原料の製造において二酸化炭素を吸収固定させる処理を行っておらず、原料の二酸化炭素固定量がゼロである。
【0081】
原料の混合工程では、二酸化炭素を固定させた粒状物を他の原料と混合し、原料混合物を製造する。二酸化炭素を固定させた粒状物の割合は、例えば、1~65質量%である。
【0082】
図8は、本システムを利用して壁板製造ラインの二酸化炭素の固定量を算出する際の処理の流れを概略的に示すフローチャートである。図8のフローチャートでは、原料演算部による粒状物の使用に基づく壁板への二酸化炭素の固定量を算出する(ステップS22)ことが図5のフローチャートと異なる。
【0083】
図8では、原料演算部203は、粒状物名、又は粒状物の原料コードに基づいてデータを抽出し、原料使用量データの原料使用量に原料データが有する原料の二酸化炭素固定量を乗じることにより、粒状物の使用による二酸化炭素の固定量を算出する。更に、原料演算部203は、粒状物の使用に基づく二酸化炭素の固定量として、原料使用日とともにサーバ装置の記憶部201に記録する。ステップS22で算出された二酸化炭素の固定量が第3固定量である。
【0084】
なお、粒状物だけでなく、各原料の使用による二酸化炭素の固定量を算出しても良い。各原料における二酸化炭素の固定量の算出では、全ての原料について、二酸化炭素の固定量と原料使用量を乗じることにより、各原料における二酸化炭素の固定量を算出しても良いし、二酸化炭素を固定している原料を抽出し、抽出された原料のみで二酸化炭素の固定量を算出しても良い。二酸化炭素を固定している原料の抽出は、原料の二酸化炭素固定量に数値が入力されている原料を抽出する、二酸化炭素を固定している原料の識別コードを設け、該当品を抽出するなどが例示される。原料演算部203は、算出された各原料における二酸化炭素の固定量の総和を算出し、原料使用日とともにサーバ装置の記憶部201に記録する。
【0085】
本実施形態においても、図6に示す画面により二酸化炭素の固定量が表示される。しかし、本実施形態では、工程1には、原料演算部により算出された、国産木材加工物の使用に基づく二酸化炭素の固定量(第1固定量)と、炭酸化処理された原料の使用による二酸化炭素の固定量(第3固定量)の総和が表示されることが第一の実施形態と異なる。他は第一の実施形態と同じである。
【0086】
以上説明したように、本実施形態のシステムは、壁板製造ラインでの二酸化炭素の固定量として、壁板の原料として使用した国産木材加工物により壁板に固定された二酸化炭素量と、炭酸化処理された原料の使用により壁板に固定された二酸化炭素量と、壁板製造ラインで壁板に固定された二酸化炭素量とを算出するので、壁板製造ラインでの二酸化炭素の固定量を把握するのに適する。また、各工程の二酸化炭素の固定量や壁板製造ライン全体の二酸化炭素の固定量を把握することも可能である。
【0087】
本発明の第三の実施形態では、第二の実施形態に加え、壁板製造ラインは、石炭、ガソリン、重油などの燃料の燃焼により各工程に電気、熱などのエネルギーを供給するエネルギー供給工程を備える。また、システムは、エネルギー供給工程での二酸化炭素排出量を壁板製造ラインでの二酸化炭素排出量として算出する排出演算部と、データベースにエネルギー供給工程の情報を有する排出ファイルを備える。
【0088】
図9は、本実施形態に係るシステム構成例を概略的に表す図である。図9において、エネルギー供給工程に端末装置が設置されており、当該端末装置はネットワークを通じてサーバ装置と接続している。他は図1と同じである。
【0089】
図10は、図9のサーバ装置及びデータベースの内部構成を概略的に表す機能ブロック図である。サーバ装置は、更に排出演算部205と、データベース210に排出ファイル223を備えることが図2のサーバ装置と異なるが、他は図2のサーバ装置と同じである。端末装置の構成は図4と同じである。
【0090】
図11は、データベース210内のファイル構成を模式的に表す図である。データベース210は、排出ファイル223を含むことが図7のデータベースと異なるが、他は同じである。排出ファイル223は、燃料データを有する。燃料データは、壁板生産日と、エネルギー供給工程での燃料使用量と、燃料の単位発熱量と、燃料の排出係数のデータを有する。燃料の単位発熱量は、燃料の購入時に入手することが望ましいが、全国平均のデフォルト値を用いることもできる。燃料の排出係数は、活動を実施した場合に排出される二酸化炭素の量を示す値であり、燃料の単位重量または体積当たりの炭素含有量に係数44/12を乗じ、得られた値を単位重量または体積当たりの発熱量で除することにより算出することができるが、全国平均のデフォルト値を用いても良い。
【0091】
図12は、本システムを利用して壁板製造ラインの二酸化炭素の固定量と二酸化炭素排出量を算出する際の処理の流れを概略的に示すフローチャートである。図12のフローチャートでは、工程演算部が工程における二酸化炭素の固定量を算出した(ステップS33)後に、排出演算部が排出ファイルのデータに基づいて二酸化炭素の排出量を算出する(ステップS34)こと、二酸化炭素の固定量と排出量が表示されること(ステップS35)が図8のフローチャートと異なる。
【0092】
図12のステップS34では、排出演算部205は、エネルギー供給工程での燃料使用量に、燃料の単位発熱量と、燃料の排出係数を乗じることにより、エネルギー供給工程での二酸化炭素排出量を算出する。更に、排出演算部205は、算出された二酸化炭素排出量を、壁板生産日とともにサーバ装置の記憶部201に記録する。
【0093】
図12のフローチャートで得られた二酸化炭素の固定量を表示する画面の一例を図13に示す。図13では、エネルギー供給工程の欄と二酸化炭素排出量の欄が設けられている。エネルギー供給工程の欄と二酸化炭素排出量の欄が交差する箇所には、二酸化炭素排出量が表示される。他は図6と同じである。
【0094】
以上説明したように、本実施形態のシステムは、壁板製造ラインでの二酸化炭素の固定量として、壁板の原料として使用した国産木材加工物により壁板に固定された二酸化炭素量と、炭酸化処理された原料の使用により壁板に固定された二酸化炭素量と、壁板製造ラインで壁板に固定された二酸化炭素量とを算出するので、壁板製造ラインでの二酸化炭素の固定量を把握するのに適する。各工程の二酸化炭素の固定量や壁板製造ライン全体の二酸化炭素の固定量を把握することも可能である。また、壁板製造ラインでのエネルギー供給による二酸化炭素の排出量も把握するのに適する。二酸化炭素の排出量を把握することで、現状の二酸化炭素の固定量が十分であるか把握することができる。
【0095】
本発明の第四の実施形態では、第三の実施形態に加え、壁板製造ラインの各工程は、外部から電気と熱の供給を受けており、システムは、各工程での電気と熱の使用による二酸化炭素の排出量を壁板製造ラインでの二酸化炭素の排出量として算出する。また、システムは、二酸化炭素の固定量と排出量を比較する比較部を有する。
【0096】
図14は、第四の実施形態におけるサーバ装置及びデータベースの内部構成を概略的に表す機能ブロック図である。サーバ装置は、更に比較部206を備えることが図10のサーバ装置と異なるが、他は図10のサーバ装置と同じである。端末装置の構成は図4と同じである。
【0097】
図15は、データベース210内のファイル構成を模式的に表す図である。データベース210は、排出ファイル223に、電気データと熱データを有する。電気データは、壁板生産日と、電気の使用量と、電気の排出係数を有する。熱データは、壁板生産日と、熱の使用量と、熱の排出係数を有する。他は図11と同じである。電気の排出係数は、電気事業者から提供された排出係数を用いることが望ましいが、全国平均のデフォルト値を用いることもできる。熱の排出係数は、熱事業者から提供された排出係数を用いることが望ましいが、全国平均のデフォルト値を用いることもできる。
【0098】
図16は、本システムを利用して壁板製造ラインの二酸化炭素の固定量と二酸化炭素の排出量を算出する際の処理の流れを概略的に示すフローチャートである。図16のフローチャートでは、排出演算部205が排出ファイル223の電気データと熱データに基づいて二酸化炭素の排出量を算出する(ステップS45)ことが図12のフローチャートと異なる。
【0099】
図16のステップS45では、排出演算部205は、電気の使用量に、電気の排出係数を乗じることにより、電気による二酸化炭素の排出量を算出する。また、排出演算部205は、熱の使用量に、熱の排出係数を乗じることにより、熱による二酸化炭素の排出量を算出する。更に、排出演算部205は、算出された二酸化炭素の排出量を、壁板生産日とともにサーバ装置の記憶部201に記録する。
【0100】
図16のフローチャートで得られた二酸化炭素の固定量を表示する画面の一例を図17に示す。図17では、外部からの電気の導入の欄と、外部からの熱の導入の欄と、二酸化炭素の固定量から二酸化炭素の排出量を差し引いた欄が設けられている。外部からの電気の導入には、電気データに基づいて算出された二酸化炭素の排出量が表示される。外部からの熱の導入には、熱データに基づいて算出された二酸化炭素の排出量が表示される。二酸化炭素の固定量から二酸化炭素の排出量を差し引いた欄には、比較部206により二酸化炭素の固定量から二酸化炭素の排出量を差し引いた値が算出され、表示される。
【0101】
以上説明したように、本実施形態のシステムは、壁板製造ラインでの二酸化炭素の固定量として、壁板の原料として使用した国産木材加工物により壁板に固定された二酸化炭素量と、炭酸化処理された原料の使用により壁板に固定された二酸化炭素量と、壁板製造ラインで壁板に固定された二酸化炭素量とを算出するので、壁板製造ラインでの二酸化炭素の固定量を把握するのに適する。各工程の二酸化炭素の固定量や壁板製造ライン全体の二酸化炭素の固定量を把握することも可能である。また、壁板製造ラインでのエネルギー供給、電気の使用、熱の使用による二酸化炭素の排出量も把握するのに適する。更に、二酸化炭素の固定量が二酸化炭素の排出量を上回っているか把握するのに適する。
【0102】
本発明の第五の実施形態では、第四の実施形態に加え、排出ファイルは壁板の輸送に関する輸送データを有し、排出演算部は輸送データに基づいて輸送による二酸化炭素の排出量を算出する。
【0103】
第五の実施形態における壁板製造ラインの工程、サーバ装置は第四の実施形態と同じである。
【0104】
図18は、データベース210内のファイル構成を模式的に表す図である。データベース210は、排出ファイル223に、輸送データを有する。輸送データは、壁板生産日と、燃料の使用量と、二酸化炭素の排出係数を有する。他は図15と同じである。
【0105】
図19は、本システムを利用して壁板製造ラインの二酸化炭素の固定量と二酸化炭素の排出量を算出する際の処理の流れを概略的に示すフローチャートである。図19のフローチャートでは、排出演算部205が排出ファイル223の輸送データに基づいて二酸化炭素の排出量を算出する(ステップS56)ことが図16のフローチャートと異なる。
【0106】
図19のステップS56では、排出演算部205は、燃料の使用量に、二酸化炭素の排出係数を乗じることにより、輸送による二酸化炭素の排出量を算出する。排出演算部205は、算出された二酸化炭素排出量を、壁板生産日とともにサーバ装置の記憶部201に記録する。
【0107】
図19のフローチャートで得られた二酸化炭素の固定量を表示する画面の一例を図20に示す。図20では、輸送の欄が設けられている。輸送には、輸送データに基づいて算出された二酸化炭素の排出量が表示される。
【0108】
以上説明したように、本実施形態のシステムは、壁板製造ラインでの二酸化炭素の固定量として、壁板の原料として使用した国産木材加工物により壁板に固定された二酸化炭素量と、炭酸化処理された原料の使用により壁板に固定された二酸化炭素量と、壁板製造ラインで壁板に固定された二酸化炭素量とを算出するので、壁板製造ラインでの二酸化炭素の固定量を把握するのに適する。各工程の二酸化炭素の固定量や壁板製造ライン全体の二酸化炭素の固定量を把握することも可能である。また、壁板製造ラインでのエネルギー供給、電気の使用、熱の使用、輸送による二酸化炭素の排出量も把握するのに適する。更に、二酸化炭素の固定量が二酸化炭素の排出量を上回っているか把握するのに適する。
【0109】
以上、本発明のシステムについて、具体的な実施の形態を示して説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。当業者であれば、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、上記各実施形態に係る発明の構成及び機能に様々な変更・改良を加えることが可能である。
【0110】
例えば、工程環境データは、装置内の圧力、温度のデータを有し、工程演算部は、圧力、温度のデータを用いて二酸化炭素の減少量を算出しても良い。また、工程環境データは、装置内の雰囲気中の二酸化炭素濃度と製造段階の壁板の二酸化炭素固定量の相関データを有し、工程演算部は、測定された装置内の二酸化炭素濃度と相関データに基づいて壁板に吸収固定された二酸化炭素の固定量を算出することもできる。
【0111】
輸送データは、輸送距離、燃費を含み、排出演算部は、輸送距離を燃費で除した後に、二酸化炭素の排出係数を乗じることにより、輸送による二酸化炭素排出量を算出しても良い。また、輸送による二酸化炭素排出量は、車両の最大積載量別積載率別にトンキロ排出原単位を設定し、輸送トンキロと原単位を乗ずることにより算出することもできる。
【符号の説明】
【0112】
200 主制御部
201 記憶部
202 ネットワークインターフェイス部
203 原料演算部
204 工程演算部
205 排出演算部
206 比較部
210 データベース
221 原料ファイル
222 工程ファイル
223 排出ファイル

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20