(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167765
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】タンクコンテナ、及び液化ガス燃料船
(51)【国際特許分類】
B63H 21/38 20060101AFI20231116BHJP
B63B 11/04 20060101ALI20231116BHJP
F02M 21/02 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
B63H21/38 B
B63B11/04 B
F02M21/02 L
F02M21/02 U
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079215
(22)【出願日】2022-05-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】518144045
【氏名又は名称】三井E&S造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】中田 崇
(57)【要約】
【課題】貯蔵した液化ガスを気体の状態でのみ、液化ガス燃料船の船内に供給できるタンクコンテナの提供。
【解決手段】液化ガスを貯蔵するタンク41と、タンク41を保持するフレーム43と、タンク41と接続される液体配管47と、液体配管47に接続され液化ガスを気化させる圧力揚貨装置45と、タンク41の、満載時の液化ガスの液面Luより上のタンク上部77と圧力揚貨装置45を接続する戻しガス管51を備え、液化ガス燃料船100に着脱可能に搭載され液化ガスを供給するタンクコンテナ1であって、戻しガス管51に接続され、気化した液化ガスを船内に供給する分岐ガス管53と、分岐ガス管53の中途に設けられ、気化した液化ガスを加熱する加熱器55を備え、戻しガス管51と分岐ガス管53の接続部79が液面Luより高い位置にある。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガスを貯蔵するタンクと、前記タンクを保持するフレームと、前記タンクと接続され液体の液化ガスが流入する液体配管と、前記液体配管に接続され液化ガスを気化させる圧力揚貨装置と、前記タンクの、満載時の液化ガスの液面より上のタンク上部と前記圧力揚貨装置の出口を接続し、前記圧力揚貨装置で気化した液化ガスが流入する戻しガス管を備え、液化ガス燃料船に着脱可能に搭載され液化ガスを船内に供給するタンクコンテナであって、
前記戻しガス管に直接又は前記タンク上部を介して接続され、前記戻しガス管から流入する気化した液化ガスを前記船内に供給するガス管である分岐ガス管と、
前記分岐ガス管の中途に設けられ、前記分岐ガス管に流入した気化した液化ガスを加熱する加熱器を備え、
前記戻しガス管と前記分岐ガス管の接続部が、前記タンクが満載時の前記タンク内の液化ガスの液面より高い位置にあることを特徴とするタンクコンテナ。
【請求項2】
前記タンクは、軸方向が水平方向を向く円筒状であり、
前記フレームは、
前記タンクを円筒の軸方向の両端から挟むように前記タンクの軸方向の両端に設けられ、前記タンクの円筒の軸方向から見て前記タンクの軸方向の端部を囲む1対の矩形の枠状で矩形の4辺のうち互いに平行な2辺が水平方向を向く1対の矩形枠を有する1対の両端フレームを備え、
前記圧力揚貨装置は、
1対の前記両端フレームの間に設けられ、かつ、
前記タンクの円筒の軸方向から見て、前記矩形枠の外周の内側の空間で、かつ前記矩形枠の4か所の角部のうち、下側の2か所の前記角部の一方と前記タンクの外周との間の空間に設けられ、
前記加熱器は、
1対の前記両端フレームの間に設けられ、かつ、
前記タンクの円筒の軸方向から見て、前記矩形枠の外周の内側の空間で、かつ4か所の前記角部のうち、前記圧力揚貨装置が設けられた空間に対応する前記角部以外の残り3か所のうちの1か所の前記角部と前記タンクの外周との間の空間に設けられる、請求項1に記載のタンクコンテナ。
【請求項3】
前記圧力揚貨装置は、液化ガスを外気との熱交換で気化させる熱交換器であり、
前記加熱器は、内部に液化ガスよりも高温の流体を熱媒体として循環させ、前記熱媒体と液化ガスとの熱交換で液化ガスを加熱する熱交換器である、請求項1又は2に記載のタンクコンテナ。
【請求項4】
前記圧力揚貨装置は、液化ガスを外気との熱交換で気化させる熱交換器であり、
前記加熱器は、前記圧力揚貨装置で気化させた液化ガスを外気との熱交換で加熱する熱交換器である、請求項1又は2に記載のタンクコンテナ。
【請求項5】
請求項4に記載のタンクコンテナを搭載し、前記タンクコンテナの外部に、
前記タンクコンテナから供給された液化ガスよりも高温の流体を熱媒体として内部に循環させ、前記熱媒体と前記タンクコンテナから供給された液化ガスとの熱交換で前記タンクコンテナから供給された液化ガスを加熱する船内熱交換器を備えた、液化ガス燃料船。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のタンクコンテナを搭載した、液化ガス燃料船。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタンクコンテナ、及びタンクコンテナを搭載した液化ガス燃料船に関する。
【背景技術】
【0002】
液化ガス燃料船はLNG(Liquefied Natural Gas)や水素等の液化した可燃性ガスを燃料とする船舶である。液化ガス燃料船は重油を燃料とする船舶と比べて燃焼の際の大気汚染物質の排出量が少ないため、環境負荷の低い船舶として注目されている。
【0003】
一方で、液化ガスは液体の状態では液化ガス燃料船を推進させる動力源である内燃機関の燃料として使用し難い。そのため、特許文献1に記載のように、船体に設置された液化ガス貯蔵タンクから液体の液化ガスを蒸発器等の熱交換機に送出して加熱して気化させてから内燃機関に供給する必要がある。
【0004】
しかしながら液化ガスは液体保存環境下では重油と比べて極低温である。そのため、特許文献1に記載のように液化ガス貯蔵タンクを船体に設置すると、液化ガス貯蔵タンクと熱交換器を接続する、液体の液化ガスが流れる配管も船内に設置する必要がある。そのため、配管にステンレス等の高価な材料を用いたり、防熱を施したり、種々の漏洩対策を施したり、急激な熱収縮による破損を避けるために伸縮継ぎ手を用いたりする必要がある。よって、設備費用が高額になり、その維持にも費用と手間が発生する。また、液化ガスを船内の液化ガス貯蔵タンクに積み込む作業の際には、可燃性ガスの取扱以外に極低温液体の取扱が加わることで、予冷作業が追加される等の作業が増加する。そのため船員への実務上の負担だけでなく、漏洩による自身や船体への影響の大きさから、心理的な負担も大きくなる。さらに、液化ガス燃料の取扱には相応の国家資格と経験を持った作業員が必要であるが、このような作業員は特に内航船で不足しており、液化ガス燃料船の運用の制約になっていた。
【0005】
そこで、液化ガスの漏洩対策として、非特許文献1に記載のように、液化ガス貯蔵タンクから送出される液体を気化する設備を、タンクの端部の区画であって、ステンレス等の材料で覆われた区画内に設けることで、漏洩の危険性を排除する構成が知られている。しかしながら、非特許文献1の構成ではステンレス等で覆われた特殊な区画が必要であり、設備費用が高額になり、維持にも費用と手間が発生していた。また、非特許文献1でも液化ガスを船内の液化ガス貯蔵タンクに積み込む作業は必要であるため、積み込み作業時の漏洩対策に関しては依然問題があった。
【0006】
一方で、液化ガス貯蔵タンクには非特許文献2に記載のタンクコンテナのような、液体輸送用の可搬式タンクもある。タンクコンテナは液化ガス貯蔵タンクをコンテナに収納したものであり、液化ガス燃料船の燃料タンクとして用いる場合、タンクコンテナを船体から取り外して陸上で液化ガスを積み込んでから船体にタンクコンテナを搭載できる。そのため、液化ガスを積み込む作業を船上で行う必要がなく、非特許文献1のようにタンクを船内に固定する場合と比べて積み込み時の作業性や安全性の面で優れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Krzysztof Czerski, "WORKSHOP ON MODERNISATION OF DANUBE VESSEL FLEET", Wartsila Ship Design, 18th April 2018, p29、URLはhttps://www.interreg-danube.eu/uploads/media/approved#project#public/0001/40/54cb794a692d45e7ee8cbdc076c02fb8704d13f6.pdf
【非特許文献2】"INSTRUCTIONS MANUAL FOR LNG ISO CONTAINER", Taylor-Wharton, 17th, February, 2016, p32、URLはhttps://twcryo.com/wp-content/uploads/2018/08/MANUAL-LNGT-40-FOOTER-VER.-1.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら非特許文献2に記載のタンクコンテナは、液化ガスを液体の状態で外部に供給するため、液化ガス燃料船に搭載して燃料タンクとして用いる場合、液体の状態で供給される液化ガスが流れる配管を船内に設ける必要がある。
そのため、非特許文献2に記載の技術でも船内での液体の液化ガスの漏洩対策のための設備費用が高額になり、維持にも費用と手間が発生していた。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、貯蔵した液化ガスを気体の状態でのみ、液化ガス燃料船の船内に供給できるタンクコンテナの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明の第1の態様は、液化ガスを貯蔵するタンクと、前記タンクを保持するフレームと、前記タンクと接続され液体の液化ガスが流入する液体配管と、前記液体配管に接続され液化ガスを気化させる圧力揚貨装置と、前記タンクの、満載時の液化ガスの液面より上のタンク上部と前記圧力揚貨装置の出口を接続し、前記圧力揚貨装置で気化した液化ガスが流入する戻しガス管を備え、液化ガス燃料船に着脱可能に搭載され液化ガスを船内に供給するタンクコンテナであって、前記戻しガス管に直接又は前記タンク上部を介して接続され、前記戻しガス管から流入する気化した液化ガスを前記船内に供給するガス管である分岐ガス管と、前記分岐ガス管の中途に設けられ、前記分岐ガス管に流入した気化した液化ガスを加熱する加熱器を備え、前記戻しガス管と前記分岐ガス管の接続部が、前記タンクが満載時の前記タンク内の液化ガスの液面より高い位置にあることを特徴とする。
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載のタンクコンテナを搭載し、前記タンクコンテナの外部に、前記タンクコンテナから供給された液化ガスよりも高温の流体を熱媒体として内部に循環させ、前記熱媒体と前記タンクコンテナから供給された液化ガスとの熱交換で前記タンクコンテナから供給された液化ガスを加熱する船内熱交換器を備えた、液化ガス燃料船である。
本発明の第3の態様は、第1の態様に記載のタンクコンテナを搭載した、液化ガス燃料船である。
【0011】
本発明では、タンクから送出された液化ガスが圧力揚貨装置で気化し、気化した一部が戻しガス管から、満載時のタンク内の液化ガスの液面の上限より高い位置にある接続部を介して分岐ガス管に流入して加熱器で加熱され、液化ガス燃料船の船内に供給される。
この構成では、戻しガス管と分岐ガス管の接続部が満載時のタンク内の液化ガスの液面の上限より高い位置にあるので、仮に液化ガスが液体の状態で圧力揚貨装置を通過して戻しガス管に流入しても、接続部より低い位置の戻しガス管内に液体が留まり分岐ガス管に流れない。さらに、仮に液化ガスが液体の状態で戻しガス管から分岐ガス管に流入しても加熱器で気化されるので、液化ガスが液体の状態で液化ガス燃料船の船内に供給されない。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、貯蔵した液化ガスを気体の状態でのみ、液化ガス燃料船の船内に供給できるタンクコンテナを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1の実施形態に係るタンクコンテナを着脱可能に搭載した液化ガス燃料船の概要を示す側面図であって、船内の甲板と横隔壁は断面図で示している。
【
図2】
図1のタンクコンテナを示す図であって、(a)は斜視図、(b)は(a)をX1の向きから見た図である。
【
図3】
図2のタンクコンテナの配管構造を示す模式図である。
【
図4】液化ガス燃料船にタンクコンテナを着脱可能に固定するツイストロックピンの構造を説明するための図であって、(a)はタンクコンテナを液化ガス燃料船から取り外した状態を示し、(b)はタンクコンテナを液化ガス燃料船に固定した状態を示す。
【
図5】第2の実施形態に係るタンクコンテナの配管構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づき本発明に好適な実施形態を詳細に説明する。
まず
図1を参照して第1の実施形態に係るタンクコンテナ1を搭載した液化ガス燃料船100の概略構成を説明する。ここでは液化ガス燃料船100として貨物船を例示している。
図1に示すように液化ガス燃料船100は船体3、プロペラ5、舵7、内燃機関9、タンクコンテナ1、及び燃料ガス供給システム11(Fuel Gas Supply System, FGSS)を備える。
【0015】
船体3は液化ガス燃料船100の船殻となる構造体であり、
図1に示すように船底13、側壁15、及び暴露甲板17で船内を囲むように構成される。具体的な船形や船殻構造、あるいは水密隔壁の配置等は液化ガス燃料船100が輸送する貨物の種類等に応じて適宜設定される。
【0016】
図1に示す液化ガス燃料船100は船底13が、船外の水と接する外側の外底板13aと、外底板13aの上方に設けられて船外の水に接しない内底板19を備える二重底構造を例示している。
また
図1に示す液化ガス燃料船100は船尾側から船首側に向けて順に機関区画21、貨物区画23、及び船首区画25の3つの区画がこの順番で設けられた構造を例示している。この構造では、機関区画21と貨物区画23が水密の横隔壁である機関室横隔壁27で区分される。貨物区画23と船首区画25は水密の横隔壁である貨物室横隔壁29で区分される。
【0017】
機関区画21は液化ガス燃料船100の推進に必要な機器が設置される区画である。
図1では機関区画21の上方の暴露甲板17上に甲板室31が設けられている。甲板室31は船員の居住区や操船の指揮所等が設けられた上部構造物である。
【0018】
貨物区画23は液化ガス燃料船100が運搬する貨物が搭載される区画である。船首区画25は図示しないバウスラスターや図示しない投錨装置が設けられる区画であり、船長方向であるX方向において船体3の最も船首側の区画である。
【0019】
プロペラ5は船長方向であるX方向を軸中心に水中で回転してX方向に揚力を発生させることで船体3をX方向へ推進させる推進器であり、機関区画21の船尾端よりも船長方向の後方の水中に設けられる。ここでいう「後方」とは、船長方向において、船首から遠い側を意味する。以下の説明も同様である。舵7はプロペラ5よりも船長方向の後方の水中に配置されて船体3に支持され、鉛直方向であるZ方向を軸中心に回動可能な水中板であり、回動する角度を調整することでプロペラ5が生成したプロペラ後流を曲げて船体3の針路を変更する。
【0020】
内燃機関9は液化ガスを燃焼させることで化学エネルギーを機械エネルギーに変換し、この機械エネルギーを図示しない減速機等を介してプロペラ5の回転軸に伝達することでプロペラ5を回転させる熱機関であり、機関区画21に設置される。内燃機関9としては、燃焼で生じた燃焼ガスのガス圧でピストンを上下動させ、ピストンに連結したクランクシャフトで上下動を回転運動に変換して回転力をプロペラ5の回転軸に伝達するレシプロエンジンが挙げられる。内燃機関9としては燃焼ガスのガス圧でタービンを回転させ、この回転力を図示しない減速機等を介してプロペラ5の回転軸に伝達するガスタービンエンジンも挙げられる。より具体的な内燃機関9の構造や熱サイクルは燃料の種類によって異なる。なお、ここでいう液化ガスとは、常温で気体のガスを温度や圧力を下げることで液化した可燃性ガスを意味する。以下の説明も同様である。
【0021】
タンクコンテナ1は内燃機関9の駆動用燃料である液化ガスを貯蔵し、貯蔵した液化ガスを液化ガス燃料船100の船内の内燃機関9に供給するコンテナである。タンクコンテナ1は、
図1では船体3の船尾の暴露甲板17に設けられた設置台33上に着脱可能に搭載されている。なおタンクコンテナ1は液化ガスを液体の状態で貯蔵するが、液化ガス燃料船100の船内の内燃機関9に液化ガスを供給する際には、液化ガスを加熱して気化させて気体の状態で供給する。
【0022】
燃料ガス供給システム11は、気体の状態でタンクコンテナ1から供給された液化ガスの流量と温度と圧力を内燃機関9の駆動に適した値に調整して内燃機関9に供給する装置であり、バッファタンク11a、船内熱交換器11b及び圧縮機11cを備える。バッファタンク11aはタンクコンテナ1から供給された、気化した液化ガスを一時的に貯蔵することで、内燃機関9の負荷変動による、内燃機関9の駆動に要する液化ガスの容積の変動、つまり流量や圧力の変動を吸収する圧力容器である。船内熱交換器11bはタンクコンテナ1から供給された、気化した液化ガスを加熱して昇温する熱交換器である。熱交換の方式としては、タンクコンテナ1から供給された液化ガスよりも高温の流体を熱媒体として内部に循環させ、熱媒体とタンクコンテナ1から供給された液化ガスとの熱交換で、タンクコンテナ1から供給された液化ガスを加熱する方式を例示できる。熱媒体としては、清水や海水が挙げられる。熱媒体としてはエチレングリコール水溶液のようなグリコール系の水溶液も挙げられる。この構造の船内熱交換器11bは、液化ガスの流れる流路に接するように熱媒体が流れる流路が形成される。なお、清水やグリコール系の水溶液を熱媒体として用いる場合、液化ガス燃料船100が図示しないポンプで周囲の海水を汲みあげ、汲みあげた海水との熱交換で清水やグリコール系の水溶液を昇温させる。さらに昇温させた清水やグリコール系の水溶液と液化ガスとの熱交換で、液化ガスを加熱する。加熱後の液化ガスの温度は、船内熱交換器11bに供給される熱媒体の流量や温度で調整できる。圧縮機11cは、タンクコンテナ1から供給された、気化した液化ガスの圧力を内燃機関9の要求圧力に調整する装置である。
【0023】
なお、バッファタンク11a、船内熱交換器11b及び圧縮機11cは、タンクコンテナ1内のタンクの気相部分の容積や耐圧、タンクコンテナ1が液化ガスを気化させて船内に供給する際の液化ガスへの加熱能力によっては不要な場合もある。例えば、タンクコンテナ1内のタンクの気相部分の容積が内燃機関9の負荷変動による、内燃機関9に駆動に要する液化ガスの容積の変動より常に十分大きければ、バッファタンク11aは不要である。また、タンクコンテナ1内で気化させた液化ガスの温度をタンクコンテナ1内で目標温度に制御できるのであれば、船内熱交換器11bは不要である。さらに、タンクコンテナ1内のタンクの耐圧が、内燃機関9の要求圧力に比べて十分高い場合、圧縮機11cは不要である。
【0024】
燃料ガス供給システム11はガス管である船内配管35でタンクコンテナ1と接続され、タンクコンテナ1から気体の状態で液化ガスが供給される。燃料ガス供給システム11はガス管である船内配管37で内燃機関9と接続され、気体の状態で液化ガスを内燃機関9に供給する。
以上が第1の実施形態に係る液化ガス燃料船100の概略構成の説明である。
【0025】
次に、
図1~
図4を参照して第1の実施形態に係るタンクコンテナ1の構造をより詳細に説明する。
タンクコンテナ1は
図2及び
図3に示すタンク41及び
図2に示すフレーム43を備える。タンクコンテナ1は
図3に示す液体配管47、液体配管バルブ47a、圧力揚貨装置45、戻しガス管51、戻しガス管バルブ51a、分岐ガス管53、分岐ガス管バルブ53a、及び加熱器55を備える。タンクコンテナ1は、
図2に示す収納ボックス57も備える。
【0026】
タンク41は液化ガスを液体の状態で貯蔵する圧力容器であり、
図2に示すように軸方向が水平方向であるX方向を向く円筒状で、
図3に示すように軸方向の両端が半球状に先細りした形状を例示している。このような形状とすることで、タンク41は特定の箇所への応力集中を防いで圧力容器としての強度を確保できる。タンク41の内部構造は液化ガスを液体の状態で貯蔵できるのであれば公知の液化ガスタンクの構造を利用できる。
【0027】
例えばタンク41は円筒状の容器の外側をさらに円筒状の容器で覆う2重構造になっている。この構造では内側の容器は液化ガスを液体の状態で貯蔵する容器であり、ステンレスのような、タンク41に貯蔵された液体の液化ガスの温度で脆化しない材料で構成される。一方で外側の容器はアウタージャケットとも呼ばれ、内側の容器に貯蔵された液化ガスが外気との熱交換で加熱されないようにする防熱構造を備える。また、この構造では内側の容器と外側の容器を密着させずに間に隙間を設け、隙間を真空引きする等して気体を排気して、内側の容器と外側の容器の間に、熱を伝達する媒体となる気体の量を減らして断熱効果を高めた構造も例示できる。なお、タンク41は、液化ガスを燃料として消費する内燃機関9が要求する、気化した液化ガスの圧力以上の圧力に耐えられる耐圧構造となっているのが好ましい。タンクコンテナ1から供給された時点で、気化した液化ガスの圧力を内燃機関9が要求する圧力以上にできるため、燃料ガス供給システム11等の船内設備で液化ガスの圧力を上昇させる必要がなくなるためである。
【0028】
フレーム43はタンク41を囲んで保持する枠であり、
図2(a)に示す例では両端フレーム59、及び連結フレーム61を備える。
両端フレーム59はタンク41を円筒の軸方向の両端から挟むように保持する部材であり、矩形枠59a及び脚部69を有する。矩形枠59aはタンク41を円筒の軸方向の両端から挟むようにタンク41の軸方向の両端に設けられる1対の矩形の枠状の部材である。矩形枠59aは
図2(b)に示すように、タンク41の円筒の軸方向から見て、タンク41の軸方向の端部を囲む。より具体的には両端フレーム59は、矩形枠59aの4辺のうち互いに平行な2辺が水平方向でX方向に直交する幅方向であるY方向を向き、他の2辺は鉛直方向であるZ方向を向いている。なお
図2では矩形枠59aを構成する4辺の内、互いに直交するように接続された2辺の内側をブレース63で連結して補強した例を示している。
【0029】
脚部69はタンクコンテナ1を
図1に示す設置台33、あるいは陸上の地面や他のコンテナの上に設置する際の設置面となる部材であり、
図2(b)に示す矩形枠59aの下側の角部75b、75cの近傍の下面に設けられている。脚部69の下面には
図4に示すようにX方向に延在する長孔71が設けられている。この構成では、設置台33の上面には
図4(a)及び
図4(b)に示すようにタンクコンテナ1を設置台33に着脱可能に保持する回転式のフックであるツイストロックピン73がZ方向を軸中心に回転可能にZ方向上方に向けて突設される。この構成では、まずツイストロックピン73の先端を、Z方向を軸中心に回転させ、
図4(a)に示すように先端の長手方向を長孔71の長手方向であるX方向に合わせる。次にタンクコンテナ1を矢印Z1の向きに移動させ、長孔71にツイストロックピン73が挿入されるようにタンクコンテナ1を設置台33上に搭載する。次に、挿入したツイストロックピン73の先端を、Z方向を軸中心に90°回転させ、
図4(b)に示すように長孔71の長手方向に対してツイストロックピン73の先端の長手方向が直交する向きにする。これにより、ツイストロックピン73が長孔71から抜けなくなり、タンクコンテナ1が設置台33に固定される。逆に
図4(b)に示す状態からツイストロックピン73の先端を、Z方向を軸中心に90°回転させるとツイストロックピン73によるロックが解除され、タンクコンテナ1を設置台33から取り外せる。このように、タンクコンテナ1はツイストロックピン73で液化ガス燃料船100の設置台33に着脱可能に搭載される。
【0030】
なお、長孔71は
図2(b)に示す矩形枠59aの上側の角部75a、75dの近傍の上面にも設けられる。この長孔71はタンクコンテナ1をコンテナクレーン等で吊り上げる際に用いられる。具体的にはコンテナクレーン側の吊具であるスプレッダの下面から突設されたツイストロックピン73を矩形枠59aの上側の長孔71に挿入し、90°回転させることでスプレッダからタンクコンテナ1が抜けなくなり、タンクコンテナ1を吊り上げられる。また、矩形枠59aの上側の長孔71はタンクコンテナ1の上に他のコンテナを積み重ねる場合にも利用される。具体的には、まず矩形枠59aの上側の長孔71にスタッキングコーンと呼ばれる、2つのツイストロックピン73を互いに上下逆向きで同軸に連結した治具を挿入する。次に、タンクコンテナ1の上に他のコンテナをスタッキングコーンがコンテナ下面の長孔に挿入されるように積み重ねてからスタッキングコーンを90°回転させることで、タンクコンテナ1から他のコンテナが抜けなくなる。
【0031】
図2(a)に示す連結フレーム61は、1対の両端フレーム59を連結する、X方向に延在した角柱状の外形を有する部材であり、両端フレーム59の矩形枠59aの辺のうち、水平方向を向く辺で、かつ下側の辺の下面同士を連結する。
【0032】
両端フレーム59と連結フレーム61は、タンク41を囲んで保持できる寸法、形状である。具体的には、両端フレーム59は、
図2(b)の点線で示すようにX方向から見て、脚部69を含む両端フレーム59の矩形の外周62の内側にタンク41等のタンクコンテナ1を構成する他の部材が配置される寸法、形状が好ましい。また、
図2(a)に示す1対の両端フレーム59間のX方向の最大長さXmはタンク41等のタンクコンテナ1を構成する他の部材のX方向の長さ以上であるのが好ましい。さらに、連結フレーム61は、X方向の最大長さがタンク41等のタンクコンテナ1を構成する他の部材のX方向の長さ以上であるのが好ましい。
【0033】
より具体的には、両端フレーム59及び連結フレーム61は、
図2(a)に示す立方体の領域70にタンク41等のタンクコンテナ1を構成する他の部材が収まる寸法であるのが好ましい。立方体の領域70は、1対の両端フレーム59の外周62、及び外周62の角部同士を結ぶ4本のX方向に延在する点線で示された仮想線68で囲まれた領域である。
フレーム43の両端フレーム59及び連結フレーム61をこのような寸法・形状とすることで、タンクコンテナ1に他のコンテナ等を隣接配置する際にタンクコンテナ1を構成する他の部材が他のコンテナと干渉することがない。
【0034】
両端フレーム59と連結フレーム61を構成する部材の太さや材料は、フレーム43の自重や、タンクコンテナ1を構成する他の部材の重量を支持でき、液化ガス燃料船100の航行中に風雨や波浪に曝されても容易に腐食しない材料とすればよい。
【0035】
一方で、タンク41の軸方向の長さ、及び円筒の径は、フレーム43の領域70内に収納できる寸法で、かつ液化ガスを貯蔵した状態でタンク41の自重や液化ガスの重量で変形しない範囲でなるべく長くするのが好ましい。貯蔵できる液化ガスの量をなるべく多くするためである。具体的にはタンク41の軸方向の長さは1対の両端フレーム59間のX方向の最大長さXm以下でなるべく長いのが好ましい。タンク41の円筒の直径は
図2(b)に示す両端フレーム59の幅方向であるY方向の最大長さYm及び鉛直方向であるZ方向の最大長さZm以下で、なるべく長いのが好ましい。
【0036】
図3に示す液体配管47は液化ガスが液体の状態でタンク41の外部に送出される際の出口となる配管であり、一端がタンク41の下端に接続される。液体配管47は、タンク41を介して
図2に示すフレーム43に支持される。
図3に示すように液体配管47の中途には液体配管47を開閉する弁体である液体配管バルブ47aが設けられる。液体配管47は液体の液化ガスが流れる配管であるため、材料はタンク41と同様にステンレス等の、液体配管47を流れる液体の状態の液化ガスの温度で脆化しない材料が好ましい。
【0037】
図2に示す圧力揚貨装置45は液体の液化ガスを流体との熱交換で気化させる熱交換器であり、
図3に示すように液体配管47の出口と接続されて
図2に示すようにタンク41の外周41aに固定され、タンク41を介してフレーム43に支持される。
圧力揚貨装置45は液化ガスを流体との熱交換で気化させる熱交換器であれば、構造は適宜選択できる。
【0038】
例えば熱交換の方式としては、流体としての外気との熱交換で液化ガスを気化させる構造が挙げられる。液化ガスの沸点は外気よりも低いため、外気との熱交換で液化ガスを加熱して自然気化させられるためである。外気との熱交換で液化ガスを気化させる圧力揚貨装置45としては、外気と液化ガスが流れる流路との接触面積を増やすために、液化ガスが流れる流路をコイル状に巻かれた流路とした構造を例示できる。これは、外気と液化ガスが流れる流路との接触面積が大きくなるほど圧力揚貨装置45が液化ガスに与える熱量を多くできるためである。よって、圧力揚貨装置45が液化ガスに与える熱量は流路と液化ガスとの接触面積で調整できる。
【0039】
一方で圧力揚貨装置45は、圧力揚貨装置45の内部に液化ガスの沸点よりも高温の流体を熱媒体として循環させ、この熱媒体との熱交換で液化ガスを気化させる方式でもよい。この場合、熱媒体の種類や熱媒体の昇温方式は船内熱交換器11bと同様のものを例示できる。
【0040】
圧力揚貨装置45として外気との熱交換で液化ガスを気化させる方式を採用するか、圧力揚貨装置45の内部を循環する熱媒体との熱交換で液化ガスを気化させる方式を採用するかは、各々の利点を考慮して適宜選択すればよい。
【0041】
例えば外気との熱交換で液化ガスを気化させる方式は、熱媒体を圧力揚貨装置45内で循環させる必要がないため、熱媒体を循環させるポンプ、熱媒体を加熱する機構、及びこれらを駆動する電源が不要な点で有利である。また、公知のISOタンクコンテナには外気との熱交換で液化ガスを気化させる方式の圧力揚貨装置45が設置されている場合が多いため、既存の圧力揚貨装置45を流用できる点でも有利である。
【0042】
一方で圧力揚貨装置45の内部を循環する熱媒体との熱交換で液化ガスを気化させる方式では、熱媒体の温度を調整することで、気化させた液化ガスの温度を調節できる点で有利である。
以下の説明では特に断りがない限り、外気との熱交換で液化ガスを気化させる方式の圧力揚貨装置45を例に説明する。
【0043】
圧力揚貨装置45はタンクコンテナ1内において、なるべく低い位置に設けるのが好ましい。圧力揚貨装置45を高い位置に設けるほど、タンク41から圧力揚貨装置45に液体の液化ガスを送出するのに必要な力が大きくなり、設置高さによってはポンプ等が必要になるためである。
【0044】
一方で圧力揚貨装置45はタンクコンテナ1のフレーム43で構成される立方体の領域70の内側に収まる寸法・形状であるのが好ましい。立方体の領域70の外側に圧力揚貨装置45が配置されると、タンクコンテナ1に他のコンテナ等を隣接配置する際に圧力揚貨装置45が他のコンテナと干渉する場合があるためである。
例えば、圧力揚貨装置45は、
図2に示すように1対の両端フレーム59の間に設けられるのが好ましい。また、圧力揚貨装置45は、タンク41の円筒の軸方向から見て矩形枠59aの外周の内側の空間に設けられるのが好ましい。さらに圧力揚貨装置45は、矩形枠59aの4か所の角部75a~75dのうち、下側の2か所の角部75b、75cの一方とタンク41の外周41aとの間の空間に設けられるのが好ましい。この点についてより詳細に説明する。
図2(b)に示すように、タンク41の円筒の軸方向から見て、タンク41の外周41aは円形であるのに対し、タンク41の先端を囲む矩形枠59aは矩形の枠状である。そのため、タンク41の円筒の軸方向から見て両端フレーム59の矩形枠59aの外周の内側には、角部75a~75dと、タンク41の外周41aとの間に
図2(b)では点描で示す4か所の空間R1~R4が形成される。圧力揚貨装置45は、空間R1~R4のうち、下側の2か所の空間R2、R3の一方、ここでは空間R2に設けられるのが好ましい。また、
図2(a)に示すように圧力揚貨装置45のX方向の長さは両端フレーム59間のX方向の最大長さXmより短いのが好ましい。
【0045】
圧力揚貨装置45を1対の両端フレーム59の間で、かつ矩形枠59aの外周の内側の空間で、さらに下側の2か所の角部75b、75cの一方とタンク41の外周41aとの間の空間に設けることで、圧力揚貨装置45を領域70内の下端に設けられる。そのため、ポンプ等を用いずにタンク41から圧力揚貨装置45に液体の液化ガスを自重で送出できる。また、空間R2、R3はタンク41の円筒の軸方向から見てタンク41とフレーム43の間の隙間であり、従来はデッドスペースだった場所なので、デッドスペースを圧力揚貨装置45の設置場所として活用できる。
【0046】
さらに、この配置では、圧力揚貨装置45がタンク41の円筒の軸方向であるX方向に沿うように1対の両端フレーム59の間に配置されるので、タンク41の軸方向であるX方向に対してタンク41と圧力揚貨装置45が並列配置される。そのため、タンク41と圧力揚貨装置45をX方向に直列配置する場合と比べて、タンクコンテナ1のX方向の全長が同じ場合はタンク41をX方向に長くでき、液化ガスの積載量を増やすことができる。
【0047】
図3に示す戻しガス管51は圧力揚貨装置45で気化した液化ガスが流入するガス管である。より具体的には圧力揚貨装置45が気化させた液化ガスの一部をタンク41に戻してタンク41内を加圧して気相部分の圧力を高めることで、船内へ送る気化した液化ガスの圧力を一定以上にするガス管である。戻しガス管51はタンク41を介してフレーム43に支持される。戻しガス管51はタンク41の、満載時のタンク41内の液化ガスの液面Luより上の部分であるタンク上部77と、圧力揚貨装置45の出口、つまり気化した液化ガスが送出される部分を接続するガス管である。
図3では戻しガス管51は一端が圧力揚貨装置45の出口に接続され、他端がタンク上部77の壁面、ここではタンク上部77の上端の壁面の開口部に接続されている。
【0048】
満載時の液化ガスの液面Luとは、タンク41に許容される最大積載量の液化ガスをタンク41が貯蔵した場合のタンク41内の液化ガスの液面のことである。例えばISOタンクコンテナでは、揺れや熱膨張による液化ガスの漏洩を防ぐために、許容される液化ガスの最大積載量がタンク容積の95%以下の容積に制限されている。そのため、タンクコンテナ1がISOタンクコンテナの場合、満載時の液化ガスの液面Luは、液化ガスの積載量がタンク41の容積の95%の容積の場合の液面である。なお、戻しガス管51の中途には戻しガス管51を開閉する弁体である戻しガス管バルブ51aが設けられる。
【0049】
戻しガス管51は圧力揚貨装置45で気化した液化ガスが流入するガス管である。しかしながら圧力揚貨装置45に流入する液化ガスの流量が圧力揚貨装置45の加熱能力を超える等して、液化ガスが液体の状態で圧力揚貨装置45を通過して戻しガス管51内に流入した場合でも脆化しない材料で戻しガス管51を構成するのが好ましい。このような材料としては例えばタンク41の材料と同様にステンレスのような特殊鋼が挙げられる。
【0050】
分岐ガス管53は圧力揚貨装置45で気化した液化ガスの一部が戻しガス管51から流入するガス配管であり、戻しガス管51から流入する気化した液化ガスを液化ガス燃料船100の船内配管35に供給するガス管でもある。分岐ガス管53はタンク41を介してフレーム43に支持される。
分岐ガス管53は戻しガス管51に直接又はタンク上部77を介して接続される。
図3では、戻しガス管51の中途に直接、接続されて戻しガス管51から分岐した配管を例示している。この構成では分岐ガス管53が戻しガス管51に接続される部分が戻しガス管51と分岐ガス管53の接続部79を構成する。
分岐ガス管53の出口側端部53bは
図1に示す船内配管35に接続される。
また、
図3に示すように分岐ガス管53の中途には分岐ガス管53を開閉する弁体である分岐ガス管バルブ53aが設けられる。
【0051】
分岐ガス管53は通常は圧力揚貨装置45が気化させた液化ガスの一部が戻しガス管51から流れ込むガス管である。ただし、液化ガスが液体の状態で分岐ガス管53内に流入した場合に備えて、液化ガスが液体の状態で分岐ガス管53内に流入しても脆化しない材料で分岐ガス管53を構成するのが好ましい。具体的には戻しガス管51と同じ材料で構成すればよい。なお分岐ガス管53のうち、加熱器55よりも下流の部分は加熱器55で加熱後の、気化させた液化ガスの温度で脆化しない材料で構成すればよい。
【0052】
加熱器55は分岐ガス管53に流入した気化した液化ガスを加熱する熱交換器であり、
図3に示すように分岐ガス管53の中途に配置されて
図2(a)に示すようにタンク41の外周に固定され、タンク41を介してフレーム43に支持される。この構成では
図3に示す分岐ガス管53に流入した気化した液化ガスは、加熱器55を通過する際に加熱され、出口側端部53bから
図1に示す船内配管35に送出されることで、液化ガス燃料船100の船内に供給される。
【0053】
加熱器55は気化した液化ガスを加熱して昇温できる構造であれば、具体的な熱交換器としての構造は適宜選択できる。例えば加熱器55の内部に液化ガスの沸点よりも高温の流体を熱媒体として循環させ、この熱媒体との熱交換で液化ガスを加熱する方式でもよい。この場合、熱媒体の種類や熱媒体の昇温方式は船内熱交換器11bと同様のものを例示できる。
なお、加熱器55は通常、気体の液化ガスが流入するが、液体の液化ガスが流入した場合に気化させられるように、液体の状態の液化ガスを、気化する温度まで昇温できる構造である必要もある。
【0054】
一方で、加熱器55は流体としての外気との熱交換で液化ガスを加熱する構造でもよい。外気との熱交換で液化ガスを加熱する加熱器55の具体的な構造は、圧力揚貨装置45を、外気との熱交換で液化ガスを気化させる構造とした場合と同様である。
加熱器55を外気との熱交換で液化ガスを加熱する構造にすると、圧力揚貨装置45で外気との熱交換で気化させた液化ガスを、加熱器55で外気との熱交換で加熱する構成にできる。この場合、タンクコンテナ1内で熱媒体を循環させる必要がない。そのため、この構成は、熱媒体を循環させるための配管、具体的には熱媒体を供給する配管と、熱交換後の熱媒体が排出される配管をタンクコンテナ1に取り付ける必要がない点で有利である。
【0055】
なお、圧力揚貨装置45と加熱器55を、外気との熱交換で液化ガスを加熱する構造にする場合、加熱後の液化ガスの温度が外気の温度変化で変動する。そのため、出口側端部53bから船内に送出される液化ガスの温度をタンクコンテナ1側では目標温度に制御できない可能性がある。その場合、タンクコンテナ1の外部の熱交換器、例えば液化ガス燃料船100の船内にある燃料ガス供給システム11の船内熱交換器11bで液化ガスの温度を目標温度に制御すればよい。
以下の説明では特に断りが無い限り、加熱器55の内部に液化ガスの沸点よりも高温の流体を熱媒体として循環させ、この熱媒体との熱交換で液化ガスを加熱する方式の加熱器55を例に説明する。
【0056】
加熱器55は、液化ガスの目標温度として、内燃機関9の駆動を妨げない温度まで、気化した液化ガスを加熱するのが好ましい。また、加熱器55は加熱した液化ガスが送出される液化ガス燃料船100側のガス管である船内配管35が、送出された液化ガスの温度で脆化しない温度まで、気化した液化ガスを加熱する構成でもよい。
例えば、加熱器55は、船内配管35を低温鋼で構成しても、船内配管35を流れる気化した液化ガスの温度で船内配管35が脆化しない温度まで液化ガスを加熱できる構造が好ましい。船内配管35を低温鋼で構成しても船内配管35が脆化しない液化ガスの温度とは、例えば-55℃以上である。
なお、低温鋼とは、炭素鋼の中でも低温での靭性に優れた鋼で、かつ炭素以外の含有元素の割合が特殊鋼に分類されない割合の鋼を意味する。
【0057】
加熱器55は、加熱した液化ガスが送出される液化ガス燃料船100側のガス管である船内配管35を、一般鋼で構成しても、船内配管35を流れる気化した液化ガスの温度で船内配管35が脆化しない温度まで液化ガスを加熱できる構造が、より好ましい。船内配管35を一般鋼で構成しても船内配管35が脆化しない液化ガスの温度とは、例えば-10℃以上である。なお一般鋼とは、低温鋼や耐熱鋼とは異なり特定の温度条件での使用を想定しておらず、かつ炭素以外の含有元素の割合が特殊鋼に分類されない割合の炭素鋼を意味する。
一方で液化ガスを加熱器55で加熱しすぎると分岐ガス管53や船内配管35、37が液化ガスの熱で変形する恐れがある。そのため、分岐ガス管53や船内配管35、37が液化ガスの熱で変形しない温度が、加熱器55から送出される気化した液化ガスの温度の上限である。
【0058】
加熱器55は、タンクコンテナ1のフレーム43で構成される立方体の領域70の内側に収まる寸法・形状であるのが好ましい。理由は圧力揚貨装置45と同様に、タンクコンテナ1に他のコンテナ等を隣接配置する際に加熱器55が他のコンテナと干渉するのを防ぐためである。
【0059】
具体的には加熱器55は、
図2に示すように1対の両端フレーム59の間に設けられるのが好ましい。また加熱器55は、タンク41の円筒の軸方向から見て矩形枠59aの外周の内側の空間に設けられるのが好ましい。加熱器55はさらに、矩形枠59aの4か所の角部75a~75dのうち圧力揚貨装置45が設けられた空間に対応する角部以外の残り3か所のうち1か所で、かつ、その角部とタンク41の外周41aとの間の空間に設けられるのが好ましい。
図2(b)では、圧力揚貨装置45が設けられた空間R2に対応する角部75b以外の残り3か所の角部75a、75c、75dのうちの1か所である角部75aで、かつ角部75aと外周41aとの間に形成される空間R1に加熱器55を設けている。また加熱器55のX方向の長さは両端フレーム59間のX方向の最大長さXmよりも短い。
加熱器55を、このような配置とすることで、圧力揚貨装置45の配置と同様に従来はデッドスペースになっていた場所を加熱器55の設置場所として活用できる。
【0060】
さらに、この配置では加熱器55がタンク41の円筒の軸方向であるX方向に沿うように1対の両端フレーム59の間に配置されるため、タンク41の軸方向であるX方向に対してタンク41と加熱器55が並列配置される。そのため、タンク41と加熱器55をX方向に直列配置する場合と比べて、タンクコンテナ1のX方向の全長が同じ場合はタンク41をX方向に長くでき、液化ガスの積載量を増やすことができる。
【0061】
なお、加熱器55は圧力揚貨装置45とは異なり、角部75a~75dの内、必ずしも下側の角部75b、75cとタンク41の外周41aとの間に形成される空間R2、R3の一方に設ける必要はない。これは、加熱器55に流入する液化ガスは通常は気化しており、液体の状態より比重が小さいため、加熱器55に流入させるのに要する力が液体の状態の液化ガスほど大きくないためである。
逆に、加熱器55は角部75a~75dの内、上側の角部75a、75dとタンク41の外周41aとの間に形成される空間R1、R4の一方に設けることが好ましい。つまり加熱器55の設置高さは圧力揚貨装置45の設置高さよりも高い方が好ましい。液化ガス燃料船100の船体動揺でタンクコンテナ1が傾斜する等して、仮に液化ガスが液体の状態で戻しガス管51から分岐ガス管53を経由して加熱器55に流入しても、傾斜が戻った場合には、分岐ガス管53内の液体の液化ガスが戻しガス管51を経由して自重で圧力揚貨装置45へ戻されるため、液化ガスが液体の状態で液化ガス燃料船100に供給され難くなるためである。より好ましい加熱器55の設置高さは液面Luより高い位置である。
【0062】
ここで、
図3に示すようにタンクコンテナ1は、分岐ガス管53と戻しガス管51の接続部79が、タンク41が満載時のタンク41内の液化ガスの液面Luより高い位置にある。具体的にはタンク41の底面から満載時の液化ガスの液面Luまでの高さLmよりも、タンク41の底面から接続部79までの高さLcの方が高い。
【0063】
また、
図3に示すように戻しガス管51と分岐ガス管53は接続部79を介してのみ接続される。よって分岐ガス管53はタンク41から液体の状態で液化ガスが送出される配管と直結されず、液体の状態で液化ガスが送出される配管から分岐ガス管53に至る液化ガスの流路は必ず接続部79を経由する。
図3では液体配管47と分岐ガス管53は直結されず、液体配管47から分岐ガス管53に至る液化ガスの流路は圧力揚貨装置45、戻しガス管51、及び接続部79を経由している。
【0064】
このように分岐ガス管53を液体配管47に直結せずに戻しガス管51に接続し、戻しガス管51と分岐ガス管53の接続部79が液面Luより高い位置にある構造とする理由を、タンクコンテナ1から液化ガスを内燃機関9に供給する場合を例に説明する。
【0065】
タンクコンテナ1から液化ガスを内燃機関9に供給する場合、まず
図3に示す戻しガス管バルブ51a及び分岐ガス管バルブ53aを開放して戻しガス管51と分岐ガス管53を開放する。
【0066】
次に液体配管バルブ47aを開放してタンク41内の液化ガスを自重で、液体の状態で液体配管47に流入させる。液体配管47は分岐ガス管53と直結されていないため、液体配管47に流入した液体の液化ガスは分岐ガス管53には流入せずに
図3の矢印A1に示すように圧力揚貨装置45に流入する。圧力揚貨装置45に流入した液化ガスは外気との熱交換で気化して沸点よりも若干高い温度の気体になり、戻しガス管51に流入する。
【0067】
戻しガス管51に流入した、気化した液化ガスの一部は
図3の矢印A2に示すようにタンク上部77に流入してタンク41に戻される。タンク41に戻された、気化した液化ガスは、タンク41内の気相部分を加圧して、船内へ送る気化した液化ガスの圧力を一定以上にする。
【0068】
戻しガス管51に流入したガスのうち、タンク41に戻されない残りは、矢印B1で示すように接続部79から分岐ガス管53に流入し、加熱器55を通過する。加熱器55を通過する際に、気体の状態の液化ガスは、加熱器55内を流れる熱媒体との熱交換で、さらに加熱される。加熱された液化ガスは矢印B2で示すように分岐ガス管53の出口側端部53bから液化ガス燃料船100内の
図1に示す船内配管35に流入する。船内配管35に流入した液化ガスは、燃料ガス供給システム11及び船内配管37を介して内燃機関9に供給される。
【0069】
なお、液化ガスをタンク41から内燃機関9に供給する際のタンク41内の圧力は液体配管バルブ47aのバルブ開度を調整する等して一定の範囲内となるように制御する。タンク41内の圧力の上限はタンク41の耐圧の上限であり、下限は内燃機関9で消費される際の必要圧力の下限である。この上下限の中間付近を目標圧力としてタンク41の圧力を制御する。また、タンク41内の液体の液化ガスは外部から侵入する熱のために一部が気化してBOG(Boil Off Gas)と呼ばれる気体の液化ガスになる。そのため、内燃機関9の燃料消費量とタンク41内でのBOG発生量から圧力揚貨装置45での液化ガスの気化量が調整される。これによりタンク41内の気相部分と戻しガス管51内と分岐ガス管53内の圧力を等しくして、船内へ送る気化した液化ガスの圧力を一定以上にする。よって内燃機関9での燃料消費量とタンク41内でのBOG発生量と圧力揚貨装置45での液化ガスの気化量の関係次第で、戻しガス管51を流れる気化した液化ガスは、タンク41へ向けて流れる場合もあれば、タンク41から流れ込んでくる場合もある。そのため、戻しガス管51が「気化させた液化ガスをタンク41に戻す」という記載の意味は、タンク41の圧力が目標圧力よりも低い場合に、気化した液化ガスをタンク41に送出するという意味である。タンク41の圧力が目標圧力以上の場合でも気化させた液化ガスをタンク41に戻すという意味ではない。なお、タンク41の圧力が目標圧力よりも低い場合の例としては、液化ガスを船内に供給する作業を開始した直後で、タンク41の内圧が目標圧力まで上昇していない場合や、内燃機関9の燃料消費量が急増して圧力揚貨装置45からのガス供給が一時的に不足した場合を例示できる。
【0070】
このように、タンクコンテナ1は、タンク41から送出された液化ガスが圧力揚貨装置45で気化し、気化した一部が戻しガス管51から分岐ガス管53に流入して加熱器55で加熱され、気体の状態で液化ガス燃料船100の内燃機関9に供給される。
【0071】
ここで、仮に圧力揚貨装置45に流入する液化ガスの流量が圧力揚貨装置45の加熱能力を超える等して、液化ガスが液体の状態で圧力揚貨装置45を通過して戻しガス管51内に流入したとする。この場合、
図3に示すようにタンク41と圧力揚貨装置45は戻しガス管51で連結されており、かつタンク41内の気相部分と戻しガス管51内の圧力が等しくなるように制御しているので、タンク41内と戻しガス管51内の気化した液化ガスの圧力は等しい。そのため、仮に圧力揚貨装置45で液化ガスが全く気化しなかったとしても、圧力揚貨装置45を通過した、戻しガス管51内の液体の液化ガスの液面はパスカルの原理により、タンク41内の液面と等しい高さになる。タンク41内の液面は満載時の液面Lu以下であり、接続部79は満載時のタンク41内の液面Luより高い位置にある。そのため、圧力揚貨装置45を通過した戻しガス管51内の液体の液化ガスは接続部79より低い液面Lu以下の高さに留まり、分岐ガス管53に流れない。さらに、液化ガス燃料船100の船体動揺でタンクコンテナ1が傾斜する等して、仮に液化ガスが液体の状態で戻しガス管51から分岐ガス管53に流入しても加熱器55で加熱されて気化する。そのため、液化ガスが液体の状態で液化ガス燃料船100に供給されない。
【0072】
そのため、タンクコンテナ1は、タンク41が貯蔵した液化ガスを気体の状態でのみ、液化ガス燃料船100の船内に供給できる。これが、分岐ガス管53を液体配管47に直結せずに戻しガス管51に接続し、戻しガス管51と分岐ガス管53の接続部79が液面Luより高い位置にある構造とする理由である。
【0073】
なお、タンク41から内燃機関9に液化ガスを供給中は、供給する気化した液化ガスの圧力を一定に保つために、タンク41内と戻しガス管51内と分岐ガス管53内の気化した液化ガスの圧力を等しくする。そのため圧力揚貨装置45に液化ガスが流入している間は、戻しガス管バルブ51aと分岐ガス管バルブ53aのバルブ開度は全開でよい。また、内燃機関9に供給される気体の液化ガスの流量や圧力は、内燃機関9の燃料消費量とタンク41内でのBOG発生量から求められる圧力揚貨装置45での液化ガスの気化量で調整できる。内燃機関9に供給される気体の液化ガスの流量や圧力は燃料ガス供給システム11のバッファタンク11aや圧縮機11cでも調節できる。また、気化した液化ガスは体積が一定の場合は温度が高くなるほど圧力が高くなるため、内燃機関9に供給される気体の液化ガスの圧力は、気化した液化ガスに加熱器55が与える熱量を調整することでも調節できる。
よって、分岐ガス管53と戻しガス管51には気化した液化ガスの圧力や流量を調整するポンプやバッファタンク等の装置を設ける必要はない。
また、タンク41から圧力揚貨装置45に流入する液体の液化ガスの流量は液体配管バルブ47aのバルブ開度で調整すればよい。
【0074】
図2(a)に示す収納ボックス57は
図3に示す液体配管バルブ47a、戻しガス管バルブ51a、分岐ガス管バルブ53a等の、液化ガスをタンクコンテナ1から液化ガス燃料船100に供給する際に作業員が操作する機器が収納された箱である。収納ボックス57は、
図3に示す分岐ガス管53の出口側端部53bや、加熱器55の内部を循環させる熱媒体が流れる配管の入口側と出口側の端部が収納された箱でもある。
図2(a)に示す収納ボックス57はX方向から見て直角三角形の箱型であり、直角三角形の互いに直交する辺がY方向及びZ方向を向き、斜辺がタンク41の外周41aと対向する。また、収納ボックス57はタンク41の外周41aに沿うようにX方向に延在し、X方向の一端が一方の両端フレーム59の、下側の角部近傍に固定されて支持されている。さらに、収納ボックス57のX方向及びZ方向に平行な面は開閉可能な蓋57aになっている。この構成では液化ガスをタンクコンテナ1から液化ガス燃料船100に供給する際は、作業員が蓋57aを開けて、
図1に示す船内配管35を、収納ボックス57内に設けられた
図3に示す分岐ガス管53の出口側端部53bに連結する。また作業員が、収納ボックス57内に設けられた、加熱器55の内部を循環させる熱媒体が流れる配管の入口側と出口側の端部に熱媒体が供給される配管と排出される配管を各々接続する。さらに作業員が、収納ボックス57内に設けられた液体配管バルブ47a、戻しガス管バルブ51a、分岐ガス管バルブ53a等を操作することで、液化ガスをタンクコンテナ1から液化ガス燃料船100に供給する。
【0075】
なお、タンクコンテナ1の寸法、形状、材質、及びタンク41の容量、耐圧等の条件はISOタンクコンテナの規格を満たすのが好ましい。例えば
図2に示すフレーム43の両端フレーム59間のX方向の最大長さXm、両端フレーム59のY方向の最大長さYm、Z方向の最大長さZmがISOタンクコンテナで規定される長手方向、幅方向、高さ方向の長さであるのが好ましい。
タンクコンテナ1がISOタンクコンテナに要求される条件を満たすことで、タンクコンテナ1をISOタンクコンテナとして取り扱える。具体的にはISO規格のコンテナ用のコンテナクレーンで荷役ができる。また、ISO規格のコンテナ用のトレーラーで陸上輸送ができる。
以上が第1の実施形態に係るタンクコンテナ1の構造の詳細な説明である。
【0076】
このように、第1の実施形態によればタンクコンテナ1がタンク41、フレーム43、液体配管47、圧力揚貨装置45、戻しガス管51、分岐ガス管53、及び加熱器55を備える。タンクコンテナ1は戻しガス管51と分岐ガス管53の接続部79が満載時のタンク41内の液化ガスの液面Luより高い位置にあり、戻しガス管51と分岐ガス管53が、接続部79を介してのみ接続される。
【0077】
この構成ではタンク41から送出された液化ガスが圧力揚貨装置45で気化し、気化した一部が戻しガス管51から分岐ガス管53に流入して加熱器55で加熱され、気体の状態で船内配管35に送出され、液化ガス燃料船100の内燃機関9に供給される。
この構成では戻しガス管51と分岐ガス管53の接続部79が満載時のタンク41内の液化ガスの液面Luより高い位置にある。そのため、仮に液化ガスが液体の状態で圧力揚貨装置45を通過して戻しガス管51に流入しても、接続部79より下方の戻しガス管51内に液体が留まり分岐ガス管53に流入しない。さらに、仮に液化ガスが液体の状態で戻しガス管51から分岐ガス管53に流入しても加熱器55で気化するので、液体の状態で液化ガス燃料船100に供給されない。そのため、タンクコンテナ1は、タンク41が貯蔵した液化ガスを気体の状態でのみ、液化ガス燃料船100の船内に供給できる。
【0078】
また、第1の実施形態では、圧力揚貨装置45が液化ガスを外気との熱交換で気化させる熱交換器であり、加熱器55が、内部を循環する流体と気化した液化ガスとの熱交換で、気化した液化ガスを加熱する熱交換器である。
【0079】
この構成では、圧力揚貨装置45で液化ガスを沸点より若干高い温度となるように自然気化させ、気化した液化ガスを加熱器55で、船内配管35が脆化しない温度に加熱する。
この構成では、圧力揚貨装置45に熱媒体を循環させる機構や、熱媒体を加熱する機構を設けなくても、気化した液化ガスの温度を加熱器55で船内配管35が脆化しない温度にできる。
また、この構成では船内に供給される液化ガスが、圧力揚貨装置45で加熱して気化させてから加熱器55で加熱するという二段階の加熱で気化・昇温される。そのため、圧力揚貨装置45及び加熱器55による液化ガスの加熱が不十分で液化ガスが液体の状態で分岐ガス管53の出口側端部53bから流出するという状態になり難い。
さらに、この構成では、圧力揚貨装置45がタンク41内の気相部分を加圧する気体の液化ガスを生成する機能と、船内に供給する気体の液化ガスを生成する機能の両方を備える。そのため、既存のISOタンクコンテナに搭載された、タンク41内の気相部分を加圧する気体の液化ガスを生成する圧力揚貨装置45を、船内に供給する気体の液化ガスを生成するために流用できる。
【0080】
次に、第2の実施形態について、
図5を参照して説明する。第2の実施形態は第1の実施形態において、分岐ガス管53を戻しガス管51に直結せずにタンク上部77の壁面に接続して、タンク上部77を介して分岐ガス管53を戻しガス管51に接続したものである。
なお、第2の実施形態において第1の実施形態と同様の機能を果たす要素については同一の番号を付し、主に第1の実施形態と異なる部分について説明する。
【0081】
図5に示すように第2の実施形態に係るタンクコンテナ1aは、分岐ガス管53が戻しガス管51に直結されてない。一方で分岐ガス管53はタンク上部77の壁面、ここではタンク上部77の上端の壁面の開口部に接続されており、タンク41内の、タンク上部77を介して戻しガス管51と接続される。この構成では、タンク上部77が接続部79を構成する。
【0082】
なおタンク上部77はタンク41の、満載時のタンク41内の液化ガスの液面Luより上の部分である。そのため、タンクコンテナ1aは、分岐ガス管53と戻しガス管51の接続部79としてのタンク上部77が、必然的に満載時のタンク41内の液化ガスの液面Luより上になる。
このように分岐ガス管53はタンク上部77を介して戻しガス管51と接続されてもよい。
【0083】
この構成では、タンク41から送出された液化ガスが圧力揚貨装置45で気化し、気化した一部が戻しガス管51からタンク上部77を経由して分岐ガス管53に流入して加熱器55で加熱され、気体の状態で液化ガス燃料船100に供給される。
そのため、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0084】
第1の実施形態のように戻しガス管51に分岐ガス管53を直結するか、第2の実施形態のようにタンク上部77を介して戻しガス管51に分岐ガス管53を接続するかは、各々の利点を考慮して適宜選択すればよい。
【0085】
例えば第1の実施形態のように戻しガス管51に分岐ガス管53を直結する構造の場合、第2の実施形態のようにタンク上部77に分岐ガス管53を接続する場合と異なり、分岐ガス管53を接続するための開口部をタンク上部77に設ける必要がない。そのため、タンク41の強度を確保しやすい点で有利である。またISOタンクコンテナには液化ガスの漏洩防止や圧力容器としての堅牢性を確保するためにタンク41に空けることが可能な開口部の数は最小限とすることが求められる。そのため、分岐ガス管53を接続するための開口部をタンク上部77に空ける必要がない第1の実施形態の構造は、タンクコンテナ1がISOタンクコンテナとしての規格を満たしやすい点で有利である。
【0086】
また、分岐ガス管53を接続するための開口部をタンク上部77に空ける必要がない第1の実施形態の構造は、既存のISOタンクコンテナのタンクを、孔空けや分岐ガス管53の接続等の加工をせずにそのまま流用できる点でも有利である。
【0087】
一方で、第2の実施形態では、戻しガス管51と分岐ガス管53が別々にタンク上部77に接続されている。そのため、戻しガス管51と圧力揚貨装置45を備える既存のタンクコンテナを第2の実施形態のタンクコンテナ1aにするための加工を行う際に、分岐ガス管53を設置するために、既設の戻しガス管51等の配管の敷設場所を変更したり、分岐ガス管53を戻しガス管51に接続したりする必要が無い。そのため、第2の実施形態では既存のタンクコンテナを加工して第2の実施形態のタンクコンテナ1aを製造する際に、タンクコンテナに既設の配管の加工が不要な点で有利である。
【0088】
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は実施形態に限定されない。当業者であれば、本発明の技術思想の範囲内において各種変形例及び改良例に想到するのは当然のことであり、これらも本発明に含まれる。
【0089】
例えば上記した実施形態では液化ガス燃料船100として、液化ガスを燃料として駆動する内燃機関9でプロペラ5の軸を直接駆動させる機構を備えた船舶を例示した。しかしながら、液化ガスを燃料として推進するのであれば、内燃機関9で発電機を駆動して発電させ、発電機が発電した電力でモータを駆動し、モータがプロペラ5の回転軸を駆動することで推進する電気推進船にも本発明は適用できる。
【0090】
また、上記した実施形態ではタンクコンテナ1、1aが圧力揚貨装置45と加熱器55を1つずつ備える構成を例示したが、液体の液化ガスを気化して所望の温度に加熱できれば、圧力揚貨装置45と加熱器55は複数を直列又は並列に配置してもよい。
【符号の説明】
【0091】
1、1a :タンクコンテナ
3 :船体
5 :プロペラ
7 :舵
9 :内燃機関
11 :燃料ガス供給システム
11a :バッファタンク
11b :船内熱交換器
11c :圧縮機
13 :船底
13a :外底板
15 :側壁
17 :暴露甲板
19 :内底板
21 :機関区画
23 :貨物区画
25 :船首区画
27 :機関室横隔壁
29 :貨物室横隔壁
31 :甲板室
33 :設置台
35、37 :船内配管
41 :タンク
41a :外周
43 :フレーム
45 :圧力揚貨装置
47 :液体配管
47a :液体配管バルブ
51 :戻しガス管
51a :戻しガス管バルブ
53 :分岐ガス管
53a :分岐ガス管バルブ
53b :出口側端部
55 :加熱器
57 :収納ボックス
57a :蓋
59 :両端フレーム
59a :矩形枠
61 :連結フレーム
62 :外周
63 :ブレース
68 :仮想線
69 :脚部
70 :領域
71 :長孔
73 :ツイストロックピン
75a、75b、75c、75d :角部
77 :タンク上部
79 :接続部
100 :液化ガス燃料船