(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167769
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】生体物質の検出方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/531 20060101AFI20231116BHJP
G01N 33/569 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
G01N33/531 A
G01N33/569 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079221
(22)【出願日】2022-05-13
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 祐二
(72)【発明者】
【氏名】藤里 淳史
(72)【発明者】
【氏名】田中 大輔
(72)【発明者】
【氏名】武内 幸生
(57)【要約】
【課題】素材に吸着した生体物質を検出する際に生体物質が素材から剥がれにくくすることができ、様々な素材および観察手段によって生体物質の検出または定量を正確に行うことができる、生体物質の検出方法を提供する。
【解決手段】基材に対して生体物質を吸着させ、生体物質に結合する検出化合物を用いて生体物質を検出する方法であって、吸着させる工程の後に、基材に対して吸着した生体物質を化学的に処理し固定化する固定化工程を備えた、生体物質の検出方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に対して吸着した生体物質に対して、前記生体物質に結合する検出化合物を用いて前記生体物質を検出する方法であって、
前記基材に対して吸着した前記生体物質を化学的に処理し固定化する固定化工程を備えた、生体物質の検出方法。
【請求項2】
前記基材に対して生体物質を吸着させる吸着工程、および、前記検出化合物を前記生体物質に結合させる検出化合物処理工程、を備え、
前記吸着工程より後、前記検出化合物処理工程より前に、
前記固定化工程、ついで、前記基材にブロッキング剤を吸着させるブロッキング工程をさらに備えた、請求項1に記載の生体物質の検出方法。
【請求項3】
前記基材に対して生体物質を吸着させる吸着工程、および、前記検出化合物を前記生体物質に結合させる検出化合物処理工程、を備え、
前記吸着工程より後、前記検出化合物処理工程より前に、
前記生体物質を吸着させた前記基材にブロッキング剤を吸着させるブロッキング工程、ついで、前記固定化工程をさらに備えた、請求項1に記載の生体物質の検出方法。
【請求項4】
前記ブロッキング工程の後に前記基材を洗浄し、ついで、前記固定化工程を行う、請求項3に記載の生体物質の検出方法。
【請求項5】
前記基材に対して生体物質を吸着させる吸着工程、前記基材にブロッキング剤を吸着させるブロッキング工程、前記検出化合物を前記生体物質に結合させる検出化合物処理工程、および、前記検出化合物に結合する増幅化合物を前記検出化合物に結合させる増幅化合物処理工程を備え、
前記検出化合物処理工程より後、前記増幅化合物処理工程より前に、
前記固定化工程をさらに備えた、請求項1に記載の生体物質の検出方法。
【請求項6】
前記基材に対して生体物質を吸着させる吸着工程、前記基材にブロッキング剤を吸着させるブロッキング工程、前記検出化合物を前記生体物質に結合させる検出化合物処理工程、および、前記検出化合物に結合する増幅化合物を前記検出化合物に結合させる増幅化合物処理工程を備え、
前記増幅化合物処理工程より後に、
前記固定化工程をさらに備えた、請求項1に記載の生体物質の検出方法。
【請求項7】
前記生体物質が蛋白質、微生物またはウイルスである、請求項1から6のいずれか1項に記載の生体物質の検出方法。
【請求項8】
前記生体物質がコロナウイルスである、請求項1から6のいずれか1項に記載の生体物質の検出方法。
【請求項9】
前記基材が金属、ガラス、樹脂または布である、請求項1から6のいずれか1項に記載の生体物質の検出方法。
【請求項10】
前記検出化合物が、抗体またはアプタマーである、請求項1から6のいずれか1項に記載の生体物質の検出方法。
【請求項11】
前記増幅化合物が、二次抗体である、請求項1から6のいずれか1項に記載の生体物質の検出方法。
【請求項12】
前記固定化工程は、ホルムアルデヒドによる処理を行う、請求項1から6のいずれか1項に記載の生体物質の検出方法。
【請求項13】
前記ホルムアルデヒドによる処理は、ホルムアルデヒド水溶液の全体質量に対して10質量%以下のホルムアルデヒド水溶液により行う、請求項12に記載の生体物質の検出方法。
【請求項14】
前記基材に対して生体物質を吸着させる吸着工程、および、前記検出化合物を前記生体物質に結合させる検出化合物処理工程、を備え、
前記吸着工程より後、前記検出化合物処理工程より前に、
前記固定化工程、前記基材にブロッキング剤を吸着させるブロッキング工程、ついで前記固定化工程をさらに備えた、請求項1に記載の生体物質の検出方法。
【請求項15】
前記基材に対して生体物質を吸着させる吸着工程、および、前記検出化合物を前記生体物質に結合させる検出化合物処理工程、を備え、
前記吸着工程より後、前記検出化合物処理工程より前に、
前記固定化工程、ついで、前記基材にブロッキング剤を吸着させるブロッキング工程、ついで、前記ブロッキング工程の後に前記基材を洗浄する工程、ついで、前記固定化工程をさらに備えた、請求項1に記載の生体物質の検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生体物質の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医学的な目的のために、微生物、ウイルス等や、それらの構成化合物である蛋白質等の各種の生体物質を検出する方法は強く求められている。それらの方法の例として、生体物質に特異的に結合する抗体等の検出化合物を用いた免疫学的な手法が開発されている。免疫学的な手法は、高い感度でこれらの生体物質の検出を行うことができる。免疫学的な手法としては、ウエスタンブロッティングやELISA法等の分析手法が知られている。
【0003】
ウエスタンブロッティングやELISAの他に、金属の基材を用いて生体物質を定量的に検出する技術が開発されている。
特許文献1では、金属でコーティングされた基材と、結合蛋白質および少なくとも1つの硫黄原子を、有する官能基を含むアンカー物質と、を含み、前記アンカー物質は、前記官能基を介して前記金属に直接結合し、金属でコーティングされた前記基材上に単層を形成し、前記アンカー物質は、捕捉試薬に連結するように構成されている、バイオセンサー部品が開示されている。この技術では、アビジン等のアンカー物質を介して蛋白質を基材と結合することで、そのため、目的の生体分子/分析物を表面に効率的に結合させて、定量的な検出における検出感度を高めることができるバイオセンサー部品を提供しようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の手法では、生体物質が吸着しにくい素材上での検出を行うことには問題があった。すなわち、ウエスタンブロッティングでは、微生物、ウイルスまたは蛋白質が,これらの生体物質の吸着し易い、PVDFなどを構成素材とするメンブレンに吸着しているために可能になる手法であった。ELISA法では、樹脂のディッシュやプレートにこれらの生体物質の吸着し易いコーティング等を行ったものを用い、また小規模な系であるため、生体物質が脱落しにくかった。
これらに対して、例えば金属やガラスなどの蛋白質が吸着しにくい素材上の、前記微生物、ウイルスまたは蛋白質等の生体物質を検出しようとすると、従来法では検出が困難であった。すなわち、ブロッキングや抗体との反応中に、微生物、ウイルスまたは蛋白質が素材から剥がれ落ち、検出が困難になることがあった。また、生体物質を素材上から採取し、改めてサンプルから調整してPVDFメンブレンやELISAプレート等に吸着させるので、前述の金属やガラスなどの素材上の生体物質の形態等の状態を、そのまま観察(可視化)等する目的には適さなかった。
【0006】
特許文献1の技術は、金属の基材に生体物質を結合させる技術を開示している。しかし、この技術は、金属基材上で生体物質の定量的な検出を行うことを目的としている。すなわち、基材と生体物質の結合を一定として、結合量あたり一定の検出を行うためであり、生体物質を脱落しにくいようにする目的ではない。また、この技術では、あらかじめ基材に対してアンカー物質の処理を行う必要があり、すでに基材上に存在する生体物質の検出などに応用することはできない。また、アンカー物質と生体物質を一定の状態で結合させることを目的としているため、生体物質の状態の観察(可視化)等の目的には適さない。
【0007】
微生物、ウイルスまたは生体物質の検出では、採取したサンプルを調整しウェスタンブロットやELISA等の免疫学的調査に用いるという他にも、さまざまな素材、形状のセンサ等に付着した生体物質を、素材上の状態で検出する手段が求められることが考えられる。また、それらの素材上のウイルスや微生物等の形態等の状態を、免疫学的手法等と組み合わせて観察する手段も求められることが考えられる。
加えて、従来の、ウェスタンブロットやELISA等の免疫学的調査においても、生体物質をメンブレンやプレートから脱落しにくくする手段は強く求められている。
【0008】
本開示は上記のような事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、素材に吸着した生体物質を検出する際に生体物質が素材から剥がれにくくすることができ、様々な素材および観察手段によって生体物質の検出または定量を正確に行うことができる、生体物質の検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本開示に係る生体物質の検出方法は、の態様1は、基材に対して吸着した生体物質に対して、前記生体物質に結合する検出化合物を用いて前記生体物質を検出する方法であって、前記基材に対して吸着した前記生体物質を化学的に処理し固定化する固定化工程を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示の生体物質の検出方法によれば、素材に吸着した生体物質を検出する際に生体物質が素材から剥がれにくくすることができ、様々な素材および観察手段によって生体物質の検出または定量を正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の実施例の検出結果を示す写真図である。
【
図2】
図1の結果の各ピーク高さの評価を行ったグラフ図である。
【
図3】
図2の結果の発光強度とウイルス量との関係を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
以下、本開示に係る生体物質の検出方法について、実施形態を示して説明する。ただし、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0013】
(生体物質の検出方法)
本実施形態の生体物質の検出方法は、基材に対して生体物質を吸着させ、生体物質に結合する検出化合物を用いて生体物質を検出する方法であって、吸着させる工程の後に、基材に対して吸着した生体物質を化学的に処理し固定化する固定化工程を備える。
【0014】
生体物質とは、生体を構成する蛋白質、核酸、糖、脂質またはこれらが結合した物質を指すが、より具体的には、微生物やウイルス等の小型の生物を構成する物質である。また広くは、微生物やウイルス等をも指す。すなわち、本実施形態は、蛋白質等の生体物質を検出する目的の他、それらの生体物質を検出することで、微生物やウイルス等の存在を検出することを目的としている。
【0015】
生体物質とは、ウイルスであることも好ましい。また、前記ウイルスのうち、コロナウイルスであることも好ましい。また、前記コロナウイルスのうち、SARS-CоV-2であることも好ましい。また、COVID-19疾患または類似の症状を起こす各種ウイルスのいずれかであることも好ましい。
これらの生体物質の検出方法は強く求められており、本実施形態の検出方法は多種かつ高感度、定量的な検出手段に用いることができるため、有用性が高い。
【0016】
基材は、生体物質が吸着することができる、また吸着した生体物質を検出することができる構成素材からなる部材を指す。本実施形態では、後述する固定化により様々な構成素材、形態の基材に生体物質が吸着することができるため、基材の構成素材、形態は広く選択することができる。構成素材の例としては、金属、ガラス、樹脂または布などが挙げられる。これらは、通常蛋白質などの生体物質が吸着しにくいとされる構成素材からも選択することができる。基材の形態も、例えば表面の形状として平面、曲面や凹凸を備えたものなどから広く選択できる。
【0017】
また、従来知られている、蛋白質などの生体物質が吸着しやすいとされる構成素材から選択してもよい。生体物質が吸着しやすい構成素材としては、各種のメンブレン、ディッシュやプレート等を用いることができる。メンブレン、ディッシュやプレートは樹脂、布などから選択できる。メンブレンの素材としては、例えばウエスタンブロッティングに用いられるPVDFなどを用いてもよい。
また、基材の表面にさらに吸着しやすいようなコーティングや結合用物質を備えていてもよい。結合用物質としては、蛋白質、例えばゼラチンのコーティング剤やアビジン、ビオチン等の結合用物質であってもよい。
【0018】
生体物質が吸着するとは付着、固着していることを広く指し、物理的に付着していても、化学的に結合していてもよい。例えばセンサ等が備えた基材に自然に付着した場合や、生体物質をサンプルとして調整し、後述するウエスタンブロッティングの工程でメンブレンに転写し、結合した場合も指す。生体物質がメンブレンに転写される過程としては、電気的な転写、吸引ろ過、または毛細管現象による転写などを広く指す。
【0019】
生体物質に結合する検出化合物としては、例えば、生体物質を抗原とする抗体、また、特定の生体物質に特異的に結合する核酸分子(いわゆるアプタマー)等を用いることができる。
生体物質に結合する検出化合物を用いて生体物質を検出する方法としては、例えば、ウエスタンブロッティング、サザンブロッティング、またはノーザンブロッティング等が挙げられる。
例えば検出化合物として抗体を用いた場合、免疫学的な検出を行う手法を広く指す。例えば、上述のウエスタンブロッティングの他、免疫染色法なども指す。免疫学的な検出としては、ELISA法などを用いることができる。
【0020】
ウエスタンブロッティングでは、蛋白質、微生物やウイルス等を懸濁した緩衝液(PBS等)を,蛋白質が吸着し易いメンブレン(ナイロン、PVDF、またはニトロセルロースなど)等で吸着させる(吸着方法は吸引ろ過等)。吸着させたメンブレンは,スキムミルクやBSAを含む緩衝液でブロッキング処理を行い、微生物やウイルス蛋白質に特異的に結合する抗体と反応させ,CCDカメラ等で発光量から微生物、ウイルス、または蛋白質などの量を検出する。
ELISA法では、小規模な系のディッシュや多数のウェル(サンプル注入部位)を有するプレートに前記蛋白質、微生物やウイルス等を吸着させ、同様に抗体を用いて検出を行う。
【0021】
(固定化工程)
本実施形態の生体物質の検出方法は、基材に対して吸着した生体物質を化学的に処理し固定化する固定化工程を備える。
【0022】
固定化工程は、生体物質に対して化学的な反応により、基材に対してより強固に吸着、すなわち付着または結合させる工程を広く指す。化学的な反応としては、生体物質の相互の結合、基材に対する結合、修飾、保護、これらの組み合わせを起こすものを広く指す。
【0023】
固定化工程の具体例としては、例えば固定化溶液で基材を処理する工程を用いることができる。固定化溶液は、固定化化合物を含む水等の溶液である。
固定化化合物としては、アルデヒド化合物、例えばホルムアルデヒドによる処理を用いることができる。
生体物質の蛋白質成分に対するホルムアルデヒド処理は、架橋剤としてのホルムアルデヒドが存在すると、ホルムアルデヒドと、蛋白質中のアミノ酸(アミノ基)の水素が反応して脱水縮合し、蛋白質同士が結合、架橋することで、固定化されるものと考えられている。
なお固定化溶液は水を溶媒とする溶液(水溶液)であることが好ましい。水としては、蒸留水などのほか、PBS等の各種pH調整バッファーを用いることもできる。
【0024】
ホルムアルデヒドによる処理の具体例としては、従来の免疫染色等の手法におけるホルムアルデヒドによる固定化処理の手法を適宜応用してよい。例えば、生体物質が吸着した基材をホルムアルデヒド水溶液(ホルマリン)に浸漬させる等の手段を用いることができる。
【0025】
ホルムアルデヒド溶液は、パラホルムアルデヒドを含む溶液を用いることが好ましい。また、メタノールを含まない溶液であることが好ましい。加えて、pHを中性(およそ6.5-8.0)に調整した緩衝液の溶液であることが好ましい。緩衝液としては、例えばPBS(リン酸緩衝食塩水、リン酸バッファー)などを用いることができる。
【0026】
ホルムアルデヒド溶液のホルムアルデヒド濃度は、固定化溶液の全体質量に対して、10質量%以下であることが好ましい。ホルムアルデヒド濃度は、7質量%以下がより好ましく、4質量%以下がさらに好ましい。複数の化合物のホルムアルデヒドホルムアルデヒドは架橋剤であり、高濃度のホルムアルデヒド処理を行うことで、生体物質と素材の結合力は高まるが、濃度が上述よりも高すぎると、生体物質同士の結合か強固になりすぎ、他の工程での検出化合物との結合が阻害される可能性がある。素材と生体物質の結合のしやすさから濃度を判断する必要がある。
【0027】
生体物質が吸着した基材をホルムアルデヒド水溶液に浸漬させる処理時間は、室温であれば例えば5~60分行うことが好ましい。例えば、基材がメンブレンで、メンブレン上に吸着したウイルス蛋白質を検出する場合は、10~20分、例えばおよそ15分前後が適切である。
【0028】
なお、ホルムアルデヒドの他に、グルタルアルデヒド等を用いることもできる。
グルタルアルデヒドを用いる場合、固定化溶液の全体質量に対して、5質量%以下が好ましく、3.5質量%以下がより好ましく、2.5質量%以下が好ましい。
これらの化合物を複数種類混合して用いることもできる。複数種類混合して用いる場合、合計濃度を上述した範囲内とすることが好ましい。例えば、PBS(pH7.4)内に2.5%グルタルアルデヒド及び2%のパラホルムアルデヒドを含む溶液を固定化溶液として用いることもできる。
【0029】
前記固定化工程は、具体的には、生体物質の検出方法において、基材に対して吸着した生体物質に対して行う。
具体的には、すでに生体物質が吸着した基材に対して行う生体物質の検出方法において、その検出方法が備える各工程のいずれかにおいて固定化工程を行ってもよい。
また、生体物質の検出方法が、基材に生体物質を吸着させる吸着工程を含んでいる場合、その吸着工程よりも後のいずれかの工程において、固定化工程を行う。これらの工程および順番の具体例については後述する。
【0030】
(生体物質の検出方法の各工程)
次に、本実施形態の生体物質の検出方法の各工程について、実施態様をさらに具体的に説明する。以下の工程では、各工程の順番の他、適宜他の工程を挿入してもよい。
【0031】
本実施形態では、
(A)吸着工程
(B)固定化工程
(C)ブロッキング工程
(D)検出化合物処理工程
を備える。
すなわち、吸着工程より後、検出化合物処理工程より前に、固定化工程、ついで、ブロッキング工程を備える。
【0032】
吸着工程は、基材に対して生体物質を吸着させる工程である。具体的には、生体物質が吸着した基材を準備する工程を広く含む。この工程において、サンプルとして調整した生体物質を、吸着に関して前述した各種手法を用いて、基材に吸着させてもよい。また、すでに生体物質が吸着した基材を準備してもよい。
【0033】
固定化工程は、前述のホルムアルデヒド等を用いたものを用いることができる。
【0034】
ブロッキング工程は、前記基材にブロッキング剤を吸着させる工程である。ブロッキング工程は、基材または生体物質に対して、後述の検出化合物が非特異的に吸着することを防ぐため、これらの非特異吸着する部位を保護するために行う。この工程としては、各種免疫学的手法で用いられているブロッキングと同様の操作を行うことができる。具体的には、基材をブロッキング剤に室温で30分~3時間(または、4℃で6-12時間)浸漬し、PBS(リン酸緩衝食塩水、リン酸バッファー)やPBS-T(界面活性剤Tween20を含むPBS)で洗浄する操作を行うことができる。界面活性剤としては、0.2~2%のTween20などを用いることができる。ブロッキング剤は1-10質量%のスキムミルクまたはBSA(ウシ血清アルブミン)のPBS-T溶液を用いることができる。ブロッキング剤の成分、反応温度や時間等の条件は、検出化合物の感度等によって適宜選択することができる。
【0035】
検出化合物処理工程は、検出化合物を生体物質に結合させる工程である。具体的には、検出化合物を含む溶液で前記生体物質が吸着した基材を処理する等により行う。検出化合物として抗体を用いる免疫学的検出方法をとる場合、抗体を含むPBS-T溶液に前記基材を一定時間浸漬し、PBSまたはPBS-Tで洗浄する(後述の洗浄工程を行ってもよい)。
なお、検出化合物が抗体(一次抗体)である場合、前記検出化合物処理工程の後には、後述する増幅化合物処理工程として、増幅化合物としていわゆる二次抗体を用いた工程をさらに備えることが好ましい。
なお、検出化合物は、前記ブロッキング剤で希釈してもよい。
【0036】
この実施態様では、生体物質が基材に吸着した状態で、固定化工程を行うので、生体物質が基材に強固に結合する。そのため、その後の操作で生体物質が基材から剥がれにくい。前述したように、ブロッキング工程や検出化合物処理工程では非特異的吸着やノイズを抑えるために、溶液に界面活性剤が含まれている場合があるが、固定化工程の前にこれらの工程を行うと、これらの操作により生体物質が剥離し、感度が低下してしまう場合がある。この実施態様では、固定化工程を他の操作よりも先に行うことで、特に生体物質が基材から剥がれにくくすることができる。
【0037】
(本実施形態の作用効果)
本実施形態の生体物質の検出方法は、蛋白質等の生体物質を吸着しにくい構成素材や形態を有する基材に対しても、固定化工程により生体物質を結合させることができるので、これらの構成素材や形態の基材上の生体物質を有効に検出することができる。
また、基材に対して付着した生体物質をそのまま検出、観察することができる。例えば、従来のウエスタンブロッティングやELISA法では、ウイルス等が付着した対象からウイルス等を回収し、サンプルとして調整し、結合しやすいメンブレンやディッシュ等の上で各種の検出を行うことができるのみであった。本実施形態によれば、基材に対して付着した生体物質をそのまま検出できるので、例えば付着した状態のウイルスの形態、状態等をそのまま検出、観察することもできる。いわば、ウイルスの各種基材に結合した状態の可視化も行うことができる。そのため、ウイルス等の生体物質の検出、定量等の測定について、応用範囲が広い。例えば、様々な構成素材や形状からなるセンサ部材上に付着したウイルス等の検出に使用することができる。
【0038】
また、本実施形態の生体物質の検出方法は、従来のウエスタンブロッティングやELISA法などについても、メンブレンやディッシュの基材に対して生体物質を固定化し、強固に結合させることができるので、操作によって検出感度が落ちることがなく、また定量的な検出を行うことができる。
【0039】
<第二実施形態>
他の本実施形態では、
(A)吸着工程
(B)ブロッキング工程
(C)固定化工程
(D)検出化合物処理工程
を備える。
すなわち、吸着工程より後、検出化合物処理工程より前に、ブロッキング工程、ついで、固定化工程をさらに備える。
【0040】
この実施態様では、吸着工程の後にブロッキング工程、ついで固定化工程を行う(換言すればブロッキング工程と固定化工程を第一実施形態とは逆の順番で行う)点を除いては、第一実施形態と同様である。
【0041】
この実施形態では、生体物質が基材に吸着した状態で最初にブロッキングを行うため、非特異的結合が効果的に防がれる。その結果、高い検出感度が得られる。その後に固定化工程を行うため、生体物質が基材に結合する効果も得られる。
例えば、化学発光法によるウイルスの検出は、酵素を使った検出のため、酵素が働く環境を提供する必要がある(水の存在する環境、ブロッキング処理をすると,水が存在しやすくなるので、酵素を使った検出法では発光強度が増し、検出感度が高まる)。また、他蛋白質が何らかの理由で付着すると、ノイズの影響が出る(抗体を使った特異的検出が妨げられる)。ブロッキングは他の蛋白質の非特異的な付着を防止する目的で(ブロックする目的で)行う操作であり、本手法を使うことで特異的な検出を行う場合の感度が高くなるメリットがある。
【0042】
<第三実施形態>
他の本実施形態では、
(A)吸着工程
(B)ブロッキング工程
(C)洗浄工程
(D)固定化工程
(E)検出化合物処理工程
を備える。
すなわち、吸着工程より後、検出化合物処理工程より前に、ブロッキング工程、洗浄工程、ついで、固定化工程をさらに備える。
【0043】
この実施態様では、ブロッキング工程と固定化工程の間に洗浄工程を行う点を除いては、第二実施形態と同様である。
【0044】
洗浄工程は、PBSやPBS-Tによる洗浄で、操作、時間、PBS-Tの界面活性剤の濃度等は、検出化合物の感度に応じて適宜選択してよい。例えば、基材を振盪機を用いて1~10分間、好ましくはおよそ5分間、PBS-T内で振盪し、PBS-Tを交換する作業を3回繰り返す、等で行うことができる。
【0045】
この実施形態では、洗浄により誤ったシグナルが除去され、高い感度が得られる。特に、アルデヒド等の架橋剤は抗体と反応させると誤ったシグナルを発することになるので、抗体を使用する前に洗浄のプロセスを入れることで、誤ったシグナルを減らすことができる。
【0046】
<第四実施形態>
他の本実施形態では、
(A)吸着工程
(B)ブロッキング工程
(C)検出化合物処理工程
(D)固定化工程
(E)増幅化合物処理工程
を備える。
すなわち、検出化合物処理工程より後、増幅化合物処理工程より前に、固定化工程を備える。
【0047】
増幅化合物処理工程は、検出化合物に結合する増幅化合物を前記検出化合物に結合させる工程である。具体的には、増幅化合物を含む溶液で前記生体物質が吸着した基材を処理する等により行う。検出化合物として抗体(一次抗体)を用いる免疫学的検出方法をとる場合、増幅化合物は二次抗体である。二次抗体としては、一次抗体に結合する従来知られた抗体を選択して用いることができる。操作としては、二次抗体を含むPBS-T溶液に前記基材を一定時間浸漬し、PBSまたはPBS-Tで洗浄する。
なお、増幅化合物は、前記ブロッキング剤で希釈してもよい。
【0048】
また、洗浄工程は適宜前記工程間に挿入できるが、前述したように、アルデヒド等の架橋剤は二次抗体と反応させると誤ったシグナルを発するので、固定化工程の後、増幅化合物処理工程の前には、洗浄工程を1回以上さらに挿入することが好ましい。
【0049】
この実施形態では、検出化合物を使用した状態で固定化するので、検出化合物が基材、生体物質に結合し、高い感度が得られる。
【0050】
<第五実施形態>
他の本実施態様では、
(A)吸着工程
(B)ブロッキング工程
(C)検出化合物処理工程
(D)増幅化合物処理工程
(E)固定化工程
を備える。
すなわち、増幅化合物処理工程より後に、固定化工程をさらに備える。
【0051】
この実施態様では、増幅化合物処理の後に固定化工程を行う点を除いては、第四実施形態と同様である。
【0052】
この実施形態では、増幅化合物処理を行った後に固定化するので、増幅化合物が基材、生体物質に結合し、高い感度が得られる。また、生体物質、検出化合物、増幅化合物が基材に結合し剥がれにくいので、検出可能な状態で基材上のサンプルが維持され、この後の観察等の操作を行いやすい。
【0053】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0054】
なお、以上の各実施態様は、実施形態同士や、実施形態内の工程を適宜組み合わせて選択することもできる。
例えば、第一実施形態と第二実施形態を組み合わせ、固定化工程またはブロッキング工程を複数回行うこともできる。
また、第一実施形態と第三実施形態を組み合わせ、ブロッティング工程の後に固定化及び洗浄工程、加えて、ブロッキング工程の後に固定化及び洗浄工程を行うこともできる。
これらは検出の感度や基材と生体物質の剥がれやすさに応じて、適宜選択することができる。
【0055】
(本実施形態のさらに他の側面)
本実施形態のさらに他の側面は、前記基材に対して吸着した前記生体物質の検出における使用のための、前記基材に対して吸着した前記生体物質を化学的に処理し固定化してなる生体物質検出用基材である。
本実施形態のさらに他の側面は、前記基材に対して吸着した前記生体物質を化学的に処理し固定化してなる生体物質検出用基材である。
本実施形態のさらに他の側面は、前記基材に対して吸着した前記生体物質を化学的に処理し固定化する、生体物質検出用基材の製造方法である。
本実施形態のさらに他の側面は、前記基材に対して吸着した前記生体物質を検出するための、前記基材に対して吸着した前記生体物質を化学的に処理し固定化してなる生体物質検出用基材の使用である。
本実施形態のさらに他の側面は、前記基材に対して吸着した前記生体物質を化学的に処理し固定化してなる生体物質検出用基材を含む、生体物質検出用キットである。
【実施例0056】
以下、実施例により、本開示の効果をより明らかなものとする。なお、本開示は、以下の実施例のみに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施できるものである。
【0057】
(試験例)
前述の第一実施形態の各工程に従った生体物質の検出方法の操作を行った。
107pfu/mlのSARS-CoV-2液を、吸引ろ過でPDVFメンブレン素材による基材に吸着させた。
【0058】
この基材を、ブロッキング液(スキムミルク:5%、PBS-TweenすなわちTween 20を0.05%加えたリン酸緩衝生理食塩水)室温で一時間ブロッキング工程を行った。ついで、前記洗浄工程を行った。一次抗体(:SARS-CoV-2 エンベロープタンパク質抗体、Proteintech社製を、PBS-Tweenで5000に希釈して使用した)で室温で1時間、検出化合物処理工程を行った。ついで、前記洗浄工程を行った。二次抗体(Abcam社製二次抗体(HRP標識)を、PBS-Tweenで100,000倍に希釈して使用した)で室温で1時間、増幅化合物処理工程を行った。ついで、前記洗浄工程を行った。この基材を、ELC試薬(Cytiva社製、プロトコールに従って用いた)で処理し、発光を検出した。
【0059】
図1に、検出結果の写真図を示す。図中の数値(μL)は、10
7pfu/ml SARS-CoV-2液をPDVF膜に吸着させた量を示す。
【0060】
図2に、
図1の結果をImage J(生物系試験画像処理要フリーソフト)にて、各ピーク高さの評価を行った結果を示す。図中のピーク下部に示した数値(μL)は、10
7pfu/ml SARS-CoV-2液をPDVF膜に吸着させた量を示す。図中のピーク上部の数字は,SARS-CoV-2吸着量に応じた発光強度(ケミカルルミネッセンス量)を示す。なお、図中の縦線は、
図2の定量のために用いた位置を示している。
【0061】
図3に、
図2からから得られた発光強度とウイルス量との関係を示したものである。PVDF膜に吸着させたウイルス量と発光強度に一次式で回帰できることが判る。
これらの結果から、本実施例によりウイルスの検出を有効に行うことができ、また、ウイルス量に対して定量的に検出を行うことができる旨が示された。
【0062】
<付記>
各実施形態に記載の生体物質の検出方法は、例えば以下のように把握される。
【0063】
(1)本発明の態様1は、基材に対して吸着した生体物質に対して、前記生体物質に結合する検出化合物を用いて前記生体物質を検出する方法であって、前記基材に対して吸着した前記生体物質を化学的に処理し固定化する固定化工程を備えた、生体物質の検出方法である。
【0064】
この態様の生体物質の検出方法によれば、素材に吸着した生体物質を検出する際に生体物質が素材から剥がれにくくすることができ、様々な素材および観察手段によって生体物質の検出または定量を正確に行うことができる。
【0065】
(2)本発明の態様2は、(1)の生体物質の検出方法において、前記基材に対して生体物質を吸着させる吸着工程、および、前記検出化合物を前記生体物質に結合させる検出化合物処理工程、を備え、前記吸着工程より後、前記検出化合物処理工程より前に、前記固定化工程、ついで、前記基材にブロッキング剤を吸着させるブロッキング工程をさらに備える。
【0066】
この態様の生体物質の検出方法によれば、生体物質が基材に吸着した状態で、固定化工程を行うので、生体物質が基材に強固に結合する。そのため、その後の操作で生体物質が基材から剥がれにくい。
【0067】
(3)本発明の態様3は、(1)または(2)の生体物質の検出方法において、前記基材に対して生体物質を吸着させる吸着工程、および、前記検出化合物を前記生体物質に結合させる検出化合物処理工程、を備え、前記吸着工程より後、前記検出化合物処理工程より前に、前記生体物質を吸着させた前記基材にブロッキング剤を吸着させるブロッキング工程、ついで、前記固定化工程をさらに備える。
【0068】
この態様の生体物質の検出方法によれば、生体物質が基材に吸着した状態で最初にブロッキングを行うため、非特異的結合が効果的に防がれる。その結果、高い検出感度が得られる。その後に固定化工程を行うため、生体物質が基材に結合する効果も得られる。
【0069】
(4)本発明の態様4は、(1)から(3)のいずれか1の生体物質の検出方法において、前記ブロッキング工程の後に前記基材を洗浄し、ついで、前記固定化工程を行う。
【0070】
この態様の生体物質の検出方法によれば、洗浄により誤ったシグナルが除去され、高い感度が得られる。
【0071】
(5)本発明の態様5は、(1)から(4)のいずれか1の生体物質の検出方法において、前記基材に対して生体物質を吸着させる吸着工程、前記基材にブロッキング剤を吸着させるブロッキング工程、前記検出化合物を前記生体物質に結合させる検出化合物処理工程、および、前記検出化合物に結合する増幅化合物を前記検出化合物に結合させる増幅化合物処理工程を備え、前記検出化合物処理工程より後、前記増幅化合物処理工程より前に、前記固定化工程をさらに備える。
【0072】
この態様の生体物質の検出方法によれば、検出化合物を使用した状態で固定化するので、検出化合物が基材、生体物質に結合し、高い感度が得られる。
【0073】
(6)本発明の態様6は、(1)から(5)のいずれか1の生体物質の検出方法において、前記基材に対して生体物質を吸着させる吸着工程、前記基材にブロッキング剤を吸着させるブロッキング工程、前記検出化合物を前記生体物質に結合させる検出化合物処理工程、および、前記検出化合物に結合する増幅化合物を前記検出化合物に結合させる増幅化合物処理工程を備え、前記増幅化合物処理工程より後に、前記固定化工程をさらに備える。
【0074】
この態様の生体物質の検出方法によれば、増幅化合物処理を行った後に固定化するので、増幅化合物が基材、生体物質に結合し、高い感度が得られる。
【0075】
(7)本発明の態様7は、(1)から(6)のいずれか1の生体物質の検出方法において、前記生体物質が蛋白質、微生物またはウイルスである。
【0076】
この態様の生体物質の検出方法によれば、検出の需要および応用範囲が広く求められている蛋白質、微生物またはウイルスの検出に用いることができる。
【0077】
(8)本発明の態様8は、(1)から(7)のいずれか1の生体物質の検出方法において、前記生体物質がコロナウイルスである。
【0078】
この態様の生体物質の検出方法によれば、検出の需要および応用範囲が特に社会で強く求められているコロナウイルスの検出に用いることができる。
【0079】
(9)本発明の態様9は、(1)から(8)のいずれかの生体物質の検出方法において、前記基材が金属、ガラス、樹脂または布である。
【0080】
この態様の生体物質の検出方法によれば、生体物質が付着または吸着しにくい構成素材による基材上の生体物質を検出することができる。
【0081】
(10)本発明の態様10は、(1)から(9)のいずれかの生体物質の検出方法において、前記検出化合物が、抗体またはアプタマーである。
【0082】
この態様の生体物質の検出方法によれば、抗体またはアプタマーにより生体物質を特異的に検出することができる。
【0083】
(11)本発明の態様11は、(1)から(10)のいずれかの生体物質の検出方法において、前記増幅化合物が、二次抗体である。
【0084】
この態様の生体物質の検出方法によれば、二次抗体生体物質を高感度に検出することができる。
【0085】
(12)本発明の態様12は、(1)から(11)のいずれかの生体物質の検出方法において、前記固定化工程は、ホルムアルデヒドによる処理を行う。
【0086】
この態様の生体物質の検出方法によれば、アミノ基を含む生体物質を化学的に強固に固定化することができる。
【0087】
(13)本発明の態様13は、(1)から(12)のいずれかの生体物質の検出方法において、前記ホルムアルデヒドによる処理は、ホルムアルデヒド水溶液の全体質量に対して10質量%以下のホルムアルデヒド溶液により行う。
【0088】
この態様の生体物質の検出方法によれば、ホルムアルデヒドによる固定を高い結合力で、かつ検出を阻害しないように行うことができる。
【0089】
(14)本発明の態様14は、(1)から(13)のいずれかの生体物質の検出方法において、前記基材に対して生体物質を吸着させる吸着工程、および、前記検出化合物を前記生体物質に結合させる検出化合物処理工程、を備え、前記吸着工程より後、前記検出化合物処理工程より前に、前記固定化工程、前記基材にブロッキング剤を吸着させるブロッキング工程、ついで前記固定化工程をさらに備える。
【0090】
この態様の生体物質の検出方法によれば、生体物質が基材に吸着した状態で、固定化工程を行い、ブロッキング工程の後にさらに固定化工程を行うので、生体物質が基材に強固に結合する。
【0091】
(15)本発明の態様15は、(1)から(14)のいずれかの生体物質の検出方法において、前記基材に対して生体物質を吸着させる吸着工程、および、前記検出化合物を前記生体物質に結合させる検出化合物処理工程、を備え、前記吸着工程より後、前記検出化合物処理工程より前に、前記固定化工程、ついで、前記基材にブロッキング剤を吸着させるブロッキング工程、ついで、前記ブロッキング工程の後に前記基材を洗浄する工程、ついで、前記固定化工程をさらに備える。
【0092】
この態様の生体物質の検出方法によれば、生体物質が基材に吸着した状態で、固定化工程を行い、ブロッキング工程の後にさらに固定化工程を行うので、生体物質が基材に強固に結合する。さらに、ブロッキング工程の後、固定化工程の前に洗浄の工程を備えるので、固定化された生体物質がブロッキングされ、余剰のブロッキング剤や不純物が除かれた状態でさらに固定化される。そのため、ブロッキングされた生体物質の状態で、様々な素材上で、また様々な観察手段に供することができ、生体物質の検出または定量を正確に行うことができる。