(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167773
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】波長変換部材および光源装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20231116BHJP
G02B 7/182 20210101ALI20231116BHJP
G02B 5/00 20060101ALI20231116BHJP
F21V 9/30 20180101ALI20231116BHJP
F21V 29/502 20150101ALI20231116BHJP
F21V 29/70 20150101ALI20231116BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
G02B5/20
G02B7/182
G02B5/00 Z
F21V9/30
F21V29/502 100
F21V29/70
H05K7/20 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079229
(22)【出願日】2022-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100157277
【弁理士】
【氏名又は名称】板倉 幸恵
(74)【代理人】
【識別番号】100195659
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 祐介
(72)【発明者】
【氏名】八谷 洋介
(72)【発明者】
【氏名】坂 慎二
(72)【発明者】
【氏名】桜井 利之
(72)【発明者】
【氏名】田中 智雄
【テーマコード(参考)】
2H042
2H043
2H148
5E322
【Fターム(参考)】
2H042AA02
2H042AA03
2H042AA19
2H042AA21
2H042DA02
2H042DA04
2H042DA10
2H042DA14
2H042DA18
2H042DB02
2H042DB13
2H042DC02
2H043CB01
2H043CB03
2H148AA00
2H148AA01
2H148AA19
5E322AA11
5E322EA11
5E322FA04
(57)【要約】
【課題】蛍光体と反射膜との接合強度を高めつつ、反射膜の反射率の低下を抑制できる技術を提供する。
【解決手段】波長変換部材であって、励起光によって蛍光を発する蛍光体であって、励起光が入射する入射面および入射面の反対側に位置する裏面を有する蛍光体と、蛍光体の裏面の側に配置され、金属層および金属層の内部に含まれる粒子から構成された反射膜と、を備え、粒子の融点は、金属層を構成する金属の融点よりも高く、反射膜は、蛍光体の裏面と対向する第1面と、第1面の反対側に位置する第2面と、を有し、粒子は、第1面の側よりも第2面の側に多く含まれていることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長変換部材であって、
励起光によって蛍光を発する蛍光体であって、前記励起光が入射する入射面および前記入射面の反対側に位置する裏面を有する蛍光体と、
前記蛍光体の前記裏面の側に配置され、金属層および前記金属層の内部に含まれる粒子から構成された反射膜と、を備え、
前記粒子の融点は、前記金属層を構成する金属の融点よりも高く、
前記反射膜は、
前記蛍光体の前記裏面と対向する第1面と、
前記第1面の反対側に位置する第2面と、を有し、
前記粒子は、前記第1面の側よりも前記第2面の側に多く含まれていることを特徴とする、波長変換部材。
【請求項2】
請求項1に記載の波長変換部材であって、
前記粒子の比重は、前記金属層の比重よりも小さいことを特徴とする、波長変換部材。
【請求項3】
請求項2に記載の波長変換部材であって、
前記第1面と前記第2面との間の長さを前記反射膜の厚さとしたとき、前記粒子の粒子径は、前記反射膜の厚さの半分以下であることを特徴とする、波長変換部材。
【請求項4】
請求項3に記載の波長変換部材であって、
前記粒子を構成する材料は、前記蛍光体に含まれる材料を含むことを特徴とする、波長変換部材。
【請求項5】
請求項4に記載の波長変換部材であって、さらに、
前記反射膜の前記第2面の側に配置され、前記蛍光体で発生する熱を外部に放熱する放熱部材を備えることを特徴とする、波長変換部材。
【請求項6】
光源装置であって、
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の波長変換部材と、
前記入射面に前記励起光を照射する光源と、を備えることを特徴とする、光源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長変換部材および光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光源から照射された励起光を別の波長の蛍光に変換して発する波長変換部材が知られている。一般的に、波長変換部材は、励起光の波長を変換する蛍光体と、蛍光体のうち励起光が照射される側とは反対側に配置された反射膜と、を備えている。例えば、特許文献1には、蛍光体としてのコンバーターと、反射膜としての金属を含む被覆と、を備えた波長変換部材が開示されている。この波長変換部材において、金属を含む被覆においては、銀等の金属にガラスを含ませることにより、銀と蛍光体とのぬれ性の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1においては、金属を含む被覆をコンバーターに焼き付ける際、その被覆に含まれるガラスは、ガラスが溶融する温度まで加熱されている。溶融したガラスは流動可能であることから、ガラス同士の凝集や、蛍光体界面に偏在して蛍光体との反応を誘発する場合がある。その結果、蛍光体と反射膜との接合強度を低下させたり、反射膜の反射率を低下させたりすることがあった。
【0005】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、蛍光体と反射膜との接合強度を高めつつ、反射膜の反射率の低下を抑制できる波長変換部材および光源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現できる。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、波長変換部材が提供される。この波長変換部材は、励起光によって蛍光を発する蛍光体であって、前記励起光が入射する入射面および前記入射面の反対側に位置する裏面を有する蛍光体と、前記蛍光体の前記裏面の側に配置され、金属層および前記金属層の内部に含まれる粒子から構成された反射膜と、を備え、前記粒子の融点は、前記金属層を構成する金属の融点よりも高く、前記反射膜は、前記蛍光体の前記裏面と対向する第1面と、前記第1面の反対側に位置する第2面と、を有し、前記粒子は、前記第1面の側よりも前記第2面の側に多く含まれていることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、粒子の融点は、金属層を構成する金属の融点よりも高く、そのような粒子が第1面の側よりも第2面の側に多く含まれている。このような波長変換部材を製造する際、蛍光体の裏面に反射膜を成膜する工程において、反射膜の基となる材料(金属層を構成する金属および粒子を含む)を、金属層を構成する金属の融点以上且つ粒子の融点未満の温度に加熱した状態にすると、金属層を構成する金属は溶融していることから、蛍光体に対する金属層の密着性を高めた状態で、蛍光体の裏面に反射膜を成膜することができる。よって、蛍光体と反射膜との接合強度を高めることができる。また、蛍光体の裏面に反射膜を成膜する際、第2面の側に含まれる粒子は溶融しておらず且つ第1面の側より多くなっている。このため、各粒子と溶融金属に働く表面張力が、蛍光体と溶融金属に働く表面張力と背反し合うため、金属が蛍光体に対して凝集する力が弱められ、溶融した金属層が凝集するのを抑制することができる。すなわち、反射膜を蛍光体に沿って広げやすくできることから、このような点からも、蛍光体と反射膜との接合強度を高めることができる。さらに、蛍光体の裏面に反射膜を成膜する際、第1面の側に含まれる粒子は第2面の側に含まれる粒子と同様に溶融しておらず且つ第2面の側より少なくなっている。このため、溶融した粒子と蛍光体の裏面とが反応することや第1面の側に多くの粒子が集まって第1面に露出する金属層の面積が減少することで生じる反射膜の反射率の低下を抑制することができる。したがって、この構成によれば、蛍光体と反射膜との接合強度を高めつつ、反射膜の反射率の低下を抑制した波長変換部材を提供することができる。
【0009】
(2)上記態様の波長変換部材において、前記粒子の比重は、前記金属層の比重よりも小さくてもよい。
この構成によれば、波長変換部材の製造時に溶融している金属層の内部において、粒子を重力方向上側に偏在しやすくすることができる。このため、蛍光体の裏面に反射膜を成膜する際、重力方向上側を向いた蛍光体の裏面に対して加熱した金属層および粒子を反射膜として成膜することにより、粒子を第2面の側に偏在しやすくすることができる。したがって、第1面の側よりも第2面の側に粒子が多く含まれている波長変換部材を精度良く提供することができる。
【0010】
(3)上記態様の波長変換部材において、前記第1面と前記第2面との間の長さを前記反射膜の厚さとしたとき、前記粒子の粒子径は、前記反射膜の厚さの半分以下であってもよい。
粒子の粒子径が大きくなると、反射膜の厚さのうち金属層が占める厚さの割合が相対的に小さくなり、金属層に貫通孔が形成される可能性が高くなる。つまり反射膜において、上面視で金属層が無い部分が形成される可能性が高くなる。この構成によれば、金属層に貫通孔が形成される可能性を低減することができ、反射膜の反射性能の低減を抑制することができる。
【0011】
(4)上記態様の波長変換部材において、前記粒子を構成する材料は、前記蛍光体に含まれる材料を含んでいてもよい。
この構成によれば、粒子の熱膨張率と蛍光体の熱膨張率との差を小さくできる。したがって、粒子が過度に熱膨張しない温度帯域と蛍光体が過度に熱膨張しない温度帯域とは広く重複していることから、波長変換部材の製造時の加熱や入射した励起光の熱変換による加熱において、粒子および蛍光体を過度に熱膨張させない許容温度帯域を広く設定することができる。すなわち、この構成によれば、クラックや変形、蛍光体と反射膜との剥離等の、蛍光体や粒子の過度な熱膨張によって生じる不具合を生じにくくすることができる。また、蛍光体と粒子とが接触している界面での反応による組成変化を抑制することもできる。
【0012】
(5)上記態様の波長変換部材において、さらに、前記反射膜の前記第2面の側に配置され、前記蛍光体で発生する熱を外部に放熱する放熱部材を備えていてもよい。
この構成によれば、蛍光体に入射した励起光の一部が変換されて生じる熱を、放熱部材により波長変換部材の外部に放熱することができる。これにより、温度上昇したことで蛍光体からの蛍光量が低下する熱消光を抑制することができる。したがって、蛍光体から発せられる蛍光量の低下を抑制することができる。
【0013】
(6)本発明の別の一形態によれば、光源装置が提供される。この光源装置は、上記形態に記載の波長変換部材と、前記入射面に前記励起光を照射する光源と、を備えることを特徴とする。
この構成によれば、光源から蛍光体に照射された励起光は、蛍光体から蛍光として発せられる。また、反射膜は、第1面の側よりも第2面の側に粒子が多く含まれていることで反射率の低下が抑制されている。このため、蛍光体に入射した励起光のうち蛍光体を透過した励起光と、蛍光体から発せられた蛍光のうち裏面の側に向かった蛍光と、の各々の強度低下を抑制しつつ、それら励起光および蛍光を蛍光体の側に反射させることができる。また、このような反射膜を備えていることにより、反射膜の反射率の低下が抑制されていることに加えて、蛍光体と反射膜との接合強度が高められた光源装置を提供することができる。
【0014】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、波長変換部材、光源装置、発光装置、照明、およびこれらを備える装置、およびこれらの製造方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】波長変換部材の断面構成を模式的に示す説明図である。
【
図2】波長変換部材の製造方法のフローチャートである。
【
図3】波長変換部材の製造工程を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の一実施形態の波長変換部材1の断面構成を模式的に示す説明図である。波長変換部材1は、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)や半導体レーザー(LD:Laser Diode)等の光源50から照射された励起光L1を、励起光L1とは異なる別の波長の蛍光L2に変換して発する部材である。波長変換部材1は、例えば、ヘッドランプ、照明、プロジェクタなどの各種光学機器において使用される。
図1に示された波長変換部材1は、光源装置100の一部である。光源装置100は、波長変換部材1の他に、励起光L1を照射する光源50を備えている。波長変換部材1は、蛍光体10と、反射膜20と、接合層30と、放熱部材40と、を備える。
【0017】
蛍光体10は、照射された励起光L1によって蛍光L2を発する。蛍光体10は、入射面10fと、裏面10bと、を有する。入射面10fは、励起光L1が入射する面である。裏面10bは、入射面10fの反対側に位置する面である。蛍光体10を構成するセラミック焼結体には、蛍光性を有する結晶粒子を主体とする蛍光相と、透光性を有する結晶粒子を主体とする透光相と、が含まれる。透光相の結晶粒子は、Al2O3(アルミナ)である。一方、蛍光相の結晶粒子は、A3B5O12:Ceで表される組成(いわゆる、ガーネット構造)であることが好ましい。「A3B5O12:Ce」とは、A3B5O12の中にCeが固溶し、元素Aの一部がCeに置換されていることを示す。
【0018】
A3B5O12:Ce中の元素Aおよび元素Bは、それぞれ下記の元素群から選択される少なくとも1種類の元素から構成されている。
元素A:Sc、Y、Ceを除くランタノイド(ただし、元素AとしてさらにGdを含んでいてもよい)
元素B:Al(ただし、元素BとしてさらにGdを含んでいてもよい)
蛍光体10として、セラミック焼結体を採用することで、蛍光相と透光相との界面で光が散乱し、光の色の角度依存性を減らすことができる。これにより、色の均質性を向上することができる。なお、蛍光体10の材料は、上述の材料に限定されない。
【0019】
反射膜20は、蛍光体10の裏面10bの側に配置され、蛍光体10に入射した励起光L1のうち蛍光体10を透過した励起光や、蛍光体10から発せられた蛍光L2のうち裏面10bの側に向かった蛍光を、蛍光体10の側に反射する。反射膜20は、第1面20fと、第2面20bと、を有する。第1面20fは、蛍光体10の裏面10bと対向する面である。第2面20bは、第1面20fの反対側に位置する面である。
【0020】
反射膜20は、金属層21および粒子22から構成されている。金属層21を構成する金属として、銀(Ag)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、銀合金などが例示され、本実施形態では、金属層21を構成する金属は、銀(Ag)である。粒子22は、金属層21の内部に含まれている。粒子22として、Al2O3、YAG、TiO2、Y2O3、SiO2、Cr2O3、Nb2O5、Ta2O5等のセラミック粒子や、Ni、W、Mo、Cr、Nb等の金属粒子などが例示され、本実施形態では、粒子22は、Al2O3である。すなわち、粒子22を構成する材料は、蛍光体10の透光相の結晶粒子と同様のAl2O3であることから、粒子22を構成する材料は、蛍光体10に含まれる材料を含んでいる。反射膜20のうち粒子22が占める体積の割合は、金属層21が占める体積に対して0.1~20.0%であるのが好ましい。また、第1面20fと第2面20bとの間の長さを反射膜20の厚さとしたとき、その厚さは、1~100μmであるのが好ましく、粒子22の粒子径は、0,5~50μmであるのが好ましい。本実施形態では、粒子22の粒子径は、反射膜20の厚さの半分以下である。なお、粒子径の値には、走査型電子顕微鏡(SEM)による断面画像において観察される粒子22のうち、任意の100個の粒子22の粒子径の平均値が用いられる。
【0021】
また、反射膜20において、粒子22の融点は、金属層21を構成する金属の融点よりも高い。なお、本実施形態の粒子22を構成するAl2O3の融点は2072℃であり、金属層21を構成する銀(Ag)の融点は961.8℃である。また、粒子22の比重は、金属層21の比重よりも小さい。
【0022】
図1に示すように、粒子22は、第1面20fの側よりも第2面20bの側に多く含まれている。このような粒子22の分布は、走査型電子顕微鏡(SEM)による断面画像を解析することによって確認される。具体的には、このような粒子22の分布は、蛍光体10の入射面10fに直交する断面(例えば
図1に示すような断面)画像において、第1面20fの近傍における粒子22の分布と、第2面20bの近傍における粒子22の分布と、を比較することによって確認される。この第1面20fの近傍における粒子22の分布は、第1面20fから反射膜20の厚さ(第1面20fと第2面20bとの間の長さ)の10%の深さまでの範囲内に存在する粒子22の断面積を、同範囲内に存在する金属層21の断面積で除した値で表される。一方、第2面20bの近傍における粒子22の分布は、同様に、第2面20bから反射膜20の厚さの10%の深さまでの範囲内に存在する粒子22の断面積を、同範囲内に存在する金属層21の断面積で除した値で表される。なお、
図1は、反射膜20内の粒子22の分布を概略的に示した図であり、第1面20fの側に含まれる粒子22や第2面20bの側に含まれる粒子22は、等間隔に分布していなくてもよく、また、反射膜20のうち第1面20fと第2面20bとの間の中央寄りの部分にも粒子22が含まれていてもよい。むろん、第1面20fの側に含まれる粒子22と第2面20bの側に含まれる粒子22との比についても、
図1に示された比でなくてもよい。
【0023】
接合層30は、反射膜20と後述する放熱部材40との間に配置され、反射膜20と放熱部材40とを接合している。接合層30は、金(Au)と錫(Sn)とを含むAuSn半田から形成されている。なお、接合層30は、AuSn半田に限定されず、Sn-Pb半田、Sn-Ag-Cu半田、Sn-Zn-Bi半田、Sn-Cu半田、Sn-Ag-In-Bi半田などの半田でもよい。また、例えば、銀(Ag)や銅(Cu)などの微細粉末を焼結して形成されていてもよい。
【0024】
放熱部材40は、反射膜20の第2面20bの側に配置され、蛍光体10で発生する熱を波長変換部材1の外部に放熱する。本実施形態では、放熱部材40は、接合層30のうち反射膜20と接合した面の反対側に位置する面に配置されている。放熱部材40を構成する材料として、銅、銅モリブデン合金、銅タングステン合金、アルミニウムなど、蛍光体10よりも高い熱伝導性を有する材料が例示され、本実施形態では、放熱部材40を構成する材料は、銅である。
【0025】
図2は、波長変換部材1の製造方法のフローチャートである。
図3(A)~(D)は、波長変換部材1の製造工程を示した説明図である。波長変換部材1の製造においては、まず初めに、
図3(A)に示すように、蛍光体10が準備される(ステップS10)。詳細には、蛍光体10は、蛍光相および透光相の基となる材料とエタノールとを粉砕混合したスラリーを乾燥したのち造粒し、更にバインダおよび水を加えて混錬した坏土とし、その坏土から作製した成形物を焼成することによって準備される。次に、
図3(B)に示すように、蛍光体10の裏面10bに第1ペースト21pfが塗布される(ステップS20)。詳細には、蛍光体10の裏面10bが重力方向上側を向いた状態において、その裏面10bの上に第1ペースト21pfが塗布される。第1ペースト21pfは、金属層21を構成する金属の粉末および粒子22にアクリル系のバインダと溶剤を混合することによって予め作製されている。
【0026】
次に、
図3(C)に示すように、第1ペースト21pfのうち裏面10bの側とは反対側の面に第2ペースト21pbが塗布される(ステップS30)。第2ペースト21pbは、第1ペースト21pfと比べて粒子22を多く含有している点を除いて、第1ペースト21pfと同じである。積層体LMは、蛍光体10、第1ペースト21pfおよび第2ペースト21pbが積層された積層体を示している。次に、第1,2ペースト21pf、21pbに含まれる金属の融点以上且つ粒子22の融点未満の温度で積層体LMが加熱されて、第1ペースト21pfおよび第2ペースト21pbが融合することにより、
図3(D)に示すように、蛍光体10の裏面10bに反射膜20が成膜される(ステップS40)。なお、第1ペースト21pfおよび第2ペースト21pbが融合する際、各々のペースト中に含まれる粒子22の比重は、同ペースト中に含まれる金属の比重より小さいことから、第1ペースト21pfに含まれる粒子22の一部は第2ペースト21pbの側に移動する(
図3(D)には不図示)。粒子22の移動量は、加熱温度および加熱時間によって調整される。そして、反射膜20と放熱部材40とを接合層30を介して接合すること(ステップS50)によって、波長変換部材1の製造方法は終了する。
【0027】
以上説明したように、本実施形態の波長変換部材1によれば、粒子22の融点は、金属層21を構成する金属の融点よりも高く、そのような粒子22が第1面20fの側よりも第2面20bの側に多く含まれている。このような波長変換部材1を製造する際、蛍光体10の裏面10bに反射膜20を成膜する工程において、反射膜20の基となる材料(金属層21を構成する金属および粒子22を含む)を、金属層21を構成する金属の融点以上且つ粒子22の融点未満の温度に加熱した状態にすると(
図2のステップS40に相当)、金属層21を構成する金属は溶融していることから、蛍光体10に対する金属層21の密着性を高めた状態で、蛍光体10の裏面10bに反射膜20を成膜することができる。よって、蛍光体10と反射膜20との接合強度を高めることができる。また、蛍光体10の裏面10bに反射膜20を成膜する際、第2面20bの側に含まれる粒子22は溶融しておらず且つ第1面20fの側より多くなっている。このため、各粒子22と溶融金属に働く表面張力が、蛍光体10と溶融金属に働く表面張力と背反し合うため、金属が蛍光体10に対して凝集する力が弱められ、溶融した金属層21が凝集するのを抑制することができる。すなわち、反射膜20を蛍光体10に沿って広げやすくできることから、このような点からも、蛍光体10と反射膜20との接合強度を高めることができる。さらに、蛍光体10の裏面10bに反射膜20を成膜する際、第1面20fの側に含まれる粒子22は第2面20bの側に含まれる粒子22と同様に溶融しておらず且つ第2面20bの側より少なくなっている。このため、溶融した粒子22と蛍光体10の裏面10bとが反応することや第1面20fの側に多くの粒子22が集まって第1面20fに露出する金属層21の面積が減少することで生じる反射膜20の反射率の低下を抑制することができる。したがって、本実施形態の波長変換部材1によれば、蛍光体10と反射膜20との接合強度を高めつつ、反射膜20の反射率の低下を抑制した波長変換部材1を提供することができる。
【0028】
また、本実施形態の波長変換部材1では、粒子22は、Al2O3である。Al2O3は透光性が高いため、反射膜20側に到達した励起光や蛍光を粒子22が吸収するのを抑制できることから、反射膜20の反射率の低下を抑制することができる。
【0029】
また、本実施形態の波長変換部材1では、粒子22の比重は、金属層21の比重よりも小さいことから、波長変換部材1の製造時に溶融している金属層21の内部において、粒子22を重力方向上側に偏在しやすくすることができる。このため、蛍光体10の裏面10bに反射膜20を成膜する際、重力方向上側を向いた蛍光体10の裏面10bに対して加熱した金属層21および粒子22を反射膜20として成膜することにより(
図3参照)、粒子22を第2面20bの側に偏在しやすくすることができる。その結果、第1面20fの側よりも第2面20bの側に粒子22が多く含まれている波長変換部材1を精度良く提供することができる。
【0030】
また、本実施形態の波長変換部材1では、粒子22の粒子径は、反射膜20の厚さの半分以下である。粒子22の粒子径が大きくなると、反射膜20の厚さのうち金属層21が占める厚さの割合が相対的に小さくなり、金属層21に貫通孔が形成される可能性が高くなる。つまり反射膜20において、上面視で金属層21が無い部分が形成される可能性が高くなる。したがって、波長変換部材1においては、金属層21に貫通孔が形成される可能性を低減することができ、反射膜の反射性能の低減を抑制することができる。
【0031】
また、本実施形態の波長変換部材1では、粒子22を構成する材料は、蛍光体10に含まれる材料を含んでいる。このため、粒子22の熱膨張率と蛍光体10の熱膨張率との差を小さくできる。したがって、粒子22が過度に熱膨張しない温度帯域と蛍光体10が過度に熱膨張しない温度帯域とは広く重複していることから、波長変換部材1の製造時の加熱や入射した励起光L1の熱変換による加熱において、粒子22および蛍光体10を過度に熱膨張させない許容温度帯域を広く設定することができる。すなわち、波長変換部材1では、クラックや変形、蛍光体と反射膜との剥離等の、蛍光体10や粒子22の過度な熱膨張によって生じる不具合を生じにくくすることができる。また、蛍光体10と粒子22とが接触している界面での反応による組成変化を抑制することもできる。
【0032】
また、本実施形態の波長変換部材1では、蛍光体10で発生する熱を外部に放熱する放熱部材40を備えている。このため、蛍光体10に入射した励起光L1の一部が変換されて生じる熱を、放熱部材40により波長変換部材1の外部に放熱することができる。これにより、温度上昇したことで蛍光体10からの蛍光量が低下する熱消光を抑制することができる。したがって、蛍光体10から発せられる蛍光量の低下を抑制することができる。
【0033】
また、本実施形態の光源装置100によれば、光源50から蛍光体10に照射された励起光L1は、蛍光体10から蛍光L2として発せられる。また、反射膜20は、第1面20fの側よりも第2面20bの側に粒子が多く含まれていることで反射率の低下が抑制されている。このため、蛍光体10に入射した励起光L1のうち蛍光体10を透過した励起光と、蛍光体10から発せられた蛍光L2のうち裏面の側に向かった蛍光と、の各々の強度低下を抑制しつつ、それら励起光および蛍光を蛍光体10の側に反射させることができる。また、このような反射膜20を備えていることにより、光源装置100では、反射膜20の反射率の低下が抑制されていることに加えて、蛍光体10と反射膜20との接合強度が高められている。
【0034】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0035】
上記実施形態では、反射膜20は、
図1に示すように、蛍光体10の裏面10bに直接接触された状態で配置されていたが、これに限られない。例えば、反射膜20は、蛍光体10の裏面10bの側に配置される限り、反射膜20と蛍光体10との間に他の構成が配置されていてもよい。他の構成としては、密着膜や増反射膜が例示される。このような構成が反射膜20と蛍光体10との間に配置された場合であっても、それら構成や蛍光体10に対し、密着性を高めた状態で反射膜20を成膜することができる。
【0036】
上記実施形態で説明したように、粒子22は、Al2O3に限られない。例えば、粒子22がYAGであってもよい。YAGで構成された粒子22が反射膜20に含まれる場合、反射膜20側に到達した励起光や蛍光に含まれる青色光を吸収して、黄色光を発光させることができる。
【0037】
上記実施形態では、粒子22を構成する材料は、蛍光体10の透光相の結晶粒子と同様のAl2O3であったが、これに限られない。粒子22を構成する材料は、蛍光体10に含まれる材料のうち少なくとも一部を含んでいればよく、さらに、蛍光体10に含まれる材料とは異なる材料を含んでいてもよい。また、蛍光体10に含まれる材料が粒子22を構成する材料に含まれていない場合には、粒子22を構成する材料に、蛍光体10に含まれる材料の熱膨張率と同等の熱膨張率を有する材料が含まれている方が好ましい。
【0038】
上記実施形態では、粒子22はAl2O3で構成され、金属層21は銀(Ag)で構成されていたが、これに限られない。例えば、粒子22および金属層21は、それぞれ複数の材料から構成されていてもよい。また、そのような場合、粒子22の融点が金属層21を構成する金属の融点よりも高いとは、粒子22を構成する材料のうち最も融点が低い材料の融点が、金属層21を構成する複数の材料のうち最も融点が高い材料の融点より高いということである。
【0039】
上記実施形態では、粒子の含有量が異なる2種類のペースト(第1,2ペースト21pf、21pb)から反射膜20を成膜していたが、これに限られない。例えば、反射膜20は、金属層21を構成する金属およびその金属より比重の小さい粒子22を含んでいるペーストである限り、1種類のペーストから成膜されてもよいし、3種類以上のペーストから成膜されてもよい。
【0040】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【0041】
本発明は、以下の形態としても実現することが可能である。
[適用例1]
波長変換部材であって、
励起光によって蛍光を発する蛍光体であって、前記励起光が入射する入射面および前記入射面の反対側に位置する裏面を有する蛍光体と、
前記蛍光体の前記裏面の側に配置され、金属層および前記金属層の内部に含まれる粒子から構成された反射膜と、を備え、
前記粒子の融点は、前記金属層を構成する金属の融点よりも高く、
前記反射膜は、
前記蛍光体の前記裏面と対向する第1面と、
前記第1面の反対側に位置する第2面と、を有し、
前記粒子は、前記第1面の側よりも前記第2面の側に多く含まれていることを特徴とする、波長変換部材。
[適用例2]
適用例1に記載の波長変換部材であって、
前記粒子の比重は、前記金属層の比重よりも小さいことを特徴とする、波長変換部材。
[適用例3]
適用例1または適用例2に記載の波長変換部材であって、
前記第1面と前記第2面との間の長さを前記反射膜の厚さとしたとき、前記粒子の粒子径は、前記反射膜の厚さの半分以下であることを特徴とする、波長変換部材。
[適用例4]
適用例1から適用例3までのいずれかに記載の波長変換部材であって、
前記粒子を構成する材料は、前記蛍光体に含まれる材料を含むことを特徴とする、波長変換部材。
[適用例5]
適用例1から適用例4までのいずれかに記載の波長変換部材であって、さらに、
前記反射膜の前記第2面の側に配置され、前記蛍光体で発生する熱を外部に放熱する放熱部材を備えることを特徴とする、波長変換部材。
[適用例6]
光源装置であって、
適用例1から適用例5までのいずれかに記載の波長変換部材と、
前記入射面に前記励起光を照射する光源と、を備えることを特徴とする、光源装置。
【符号の説明】
【0042】
1…波長変換部材
10…蛍光体
10f…入射面
10b…裏面
20…反射膜
20f…第1面
20b…第2面
21…金属層
21pf…第1ペースト
21pb…第2ペースト
22…粒子
30…接合層
40…放熱部材
50…光源
100…光源装置