(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167778
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/50 20060101AFI20231116BHJP
H01L 23/28 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
H01L23/50 S
H01L23/50 D
H01L23/28 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079236
(22)【出願日】2022-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北川 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】前田 武彦
(72)【発明者】
【氏名】武藤 邦治
(72)【発明者】
【氏名】宮腰 武
【テーマコード(参考)】
4M109
5F067
【Fターム(参考)】
4M109AA01
4M109BA01
4M109DB17
5F067AB03
5F067BD05
5F067BE00
5F067DC17
(57)【要約】
【課題】半導体装置の性能を向上させる。
【解決手段】半導体チップCPと対向する上面DPtを備えるダイパッドDPと、上面DPt上に形成された金属膜MF1と、金属膜MF1を覆うように形成された接合材DBと、を有している。上面DPtは、半導体チップCPと重なる領域DPR1と、半導体チップCPと重ならない領域DPR2と、領域DPR1に含まれ、かつ、金属膜MF1に覆われた領域DPR3と、領域DPR1に含まれ、かつ、領域DPR3に隣接し、かつ、金属膜MF1に覆われていない領域DPR4と、を含む。金属膜MF1は、ダイパッドDPを構成する金属材料よりも酸化され難い金属材料から成る。半導体チップCPは、この半導体チップCPの中心が領域DPR3と重なるように、ダイパッドDP上に搭載されている。領域DPR4における上面DPtの表面粗さは、接合材DBが接触する金属膜MF1の接触面の表面粗さよりも粗い。領域DPR3の面積は、領域DPR1の面積に対して11%以上かつ55%以下である。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップと、
前記半導体チップと対向する第1面および前記第1面の反対側の第2面を備えるチップ搭載部と、
前記チップ搭載部の前記第1面上に形成された第1金属膜と、
前記第1金属膜を覆うように形成され、樹脂体および前記樹脂体に含まれた複数の金属粒子を含む接合材と、
を有し、
前記第1金属膜および前記接合材のそれぞれは、前記半導体チップと前記チップ搭載部との間に介在し、
前記チップ搭載部の前記第1面は、
前記半導体チップと重なる第1領域と、
前記第1領域の周囲に隣接し、かつ、前記半導体チップと重ならない第2領域と、
前記第1領域に含まれ、かつ、前記第1金属膜に覆われた第3領域と、
前記第1領域に含まれ、かつ、前記第3領域に隣接し、かつ、前記第1金属膜に覆われていない第4領域と、
を含み、
前記半導体チップは、この半導体チップの中心が前記第3領域と重なるように、前記チップ搭載部上に搭載されており、
前記第1金属膜は、前記チップ搭載部を構成する金属材料よりも酸化され難い金属材料から成り、
前記第4領域における前記第1面の表面粗さは、前記接合材が接触する前記第1金属膜の接触面の表面粗さよりも粗く、
前記第3領域の面積は、前記第1領域の面積に対して11%以上かつ55%以下である、半導体装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記チップ搭載部は、前記第1面および前記第2面と交差する第3面をさらに備え、
前記チップ搭載部の前記第1面、前記第2面、および前記第3面のそれぞれの表面粗さは、前記第1金属膜と前記接合材との接触界面における前記第1金属膜の表面粗さよりも粗い、半導体装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記第1金属膜は、銀または金から成る、半導体装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記チップ搭載部は、銅、銅を含む合金、または鉄を含む合金から成る、半導体装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記第1領域の面積は、25mm2以上、かつ、100mm2以下である、半導体装置。
【請求項6】
請求項1において、
前記チップ搭載部と離間して配置された複数のリードと、
前記半導体チップと前記複数のリードとに接続された複数のワイヤと、
前記複数のワイヤ、および前記半導体チップを封止する封止体と、
をさらに有し、
前記チップ搭載部の前記第1面の前記第2領域は、前記封止体に接触している、半導体装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記複数のリードのそれぞれの一部分には、第2金属膜が形成され、
前記複数のワイヤのそれぞれは、前記第2金属膜に接合され、
前記第1金属膜と前記第2金属膜とは、同じ金属材料により形成されている、半導体装置。
【請求項8】
請求項6において、
前記チップ搭載部の前記第2面は、前記封止体から露出している、半導体装置。
【請求項9】
請求項1において、
前記半導体チップは、平面視において四角形を成している、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップの放熱性を向上するための技術として、ダイパッドのチップ搭載面にメッキ膜を形成しておき、このメッキ膜上に銀ペースト材を介して半導体チップを搭載する技術がある(例えば、特開2018-85480号公報(特許文献1)および特開2019-40994号公報(特許文献2)を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-85480号公報
【特許文献2】特開2019-40994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者の検討によれば、メッキ膜上に銀ペースト材を介して半導体チップが搭載した半導体装置の場合、メッキ膜と銀ペースト材との界面に剥離が発生することが判った。また、本願発明者は、他の検討例として、粗面化されたチップ搭載面上に、銀ペースト材を介し、かつ、メッキ膜を介さずに半導体チップが搭載された半導体装置について検討した。この検討例の場合、粗面化されたチップ搭載面と銀ペーストとの間にトラップされた気泡に起因して銀ペーストとチップ搭載面との界面に剥離が生じることが判った。半導体チップが動作することで発生した熱は、ダイパッドを介して半導体装置(半導体パッケージ)の外部に放熱されるが、ダイボンド材とダイパッドとの界面に剥離が生じると、熱放散効率が低下する。
【0005】
本発明の目的は、半導体装置の性能を向上させることにある。その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施の形態による半導体装置は、半導体チップと対向する第1面を備えるチップ搭載部と、上記第1面上に形成された第1金属膜と、上記第1金属膜を覆うように形成された接合材と、を有している。上記第1面は、上記半導体チップと重なる第1領域と、上記半導体チップと重ならない第2領域と、上記第1領域に含まれ、かつ、上記第1金属膜に覆われた第3領域と、上記第1領域に含まれ、かつ、上記第3領域に隣接し、かつ、上記第1金属膜に覆われていない第4領域と、を含む。上記半導体チップは、この半導体チップの中心が上記第3領域と重なるように、上記チップ搭載部上に搭載されている。上記第1金属膜は、上記チップ搭載部を構成する金属材料よりも酸化され難い金属材料から成る。上記第4領域における上記第1面の表面粗さは、上記接合材が接触する上記第1金属膜の接触面の表面粗さよりも粗い。上記第3領域の面積は、上記第1領域の面積に対して11%以上かつ55%以下である。
【発明の効果】
【0007】
上記一実施の形態によれば、半導体装置の性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】
図1に示す封止体を透視した状態で半導体装置の内部構造を示す透視平面図である。
【
図4】
図2に示す半導体装置を実装基板上に実装した状態を示す拡大断面図である。
【
図5】
図3に示す複数のワイヤの図示を省略し、かつ、
図3に示す半導体チップおよび接合材のそれぞれの輪郭を点線で示したダイパッドの拡大平面図である。
【
図7】
図5に示す金属膜が形成された領域の面積率と、接合材の剥離率との関係を示す説明図である。
【
図9】
図5に示す金属膜の形状の変形例を示す拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(本願における記載形式・基本的用語・用法の説明)
本願において、実施の態様の記載は、必要に応じて、便宜上複数のセクション等に分けて記載するが、特にそうでない旨明示した場合を除き、これらは相互に独立別個のものではなく、記載の前後を問わず、単一の例の各部分、一方が他方の一部詳細または一部または全部の変形例等である。また、原則として、同様の部分は繰り返しの説明を省略する。また、実施の態様における各構成要素は、特にそうでない旨明示した場合、理論的にその数に限定される場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、必須のものではない。
【0010】
同様に実施の態様等の記載において、材料、組成等について、「AからなるX」等といっても、特にそうでない旨明示した場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、A以外の要素を含むものを排除するものではない。たとえば、成分についていえば、「Aを主要な成分として含むX」等の意味である。たとえば、「シリコン部材」等といっても、純粋なシリコンに限定されるものではなく、SiGe(シリコン・ゲルマニウム)合金やその他シリコンを主要な成分とする多元合金、その他の添加物等を含む部材も含むものであることはいうまでもない。また、金めっき、Cu層、ニッケル・めっき等といっても、そうでない旨、特に明示した場合を除き、純粋なものだけでなく、それぞれ金、Cu、ニッケル等を主要な成分とする部材を含むものとする。
【0011】
さらに、特定の数値、数量に言及したときも、特にそうでない旨明示した場合、理論的にその数に限定される場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、その特定の数値を超える数値であってもよいし、その特定の数値未満の数値でもよい。
【0012】
また、実施の形態の各図中において、同一または同様の部分は同一または類似の記号または参照番号で示し、説明は原則として繰り返さない。
【0013】
また、添付図面においては、却って、煩雑になる場合または空隙との区別が明確である場合には、断面であってもハッチング等を省略する場合がある。これに関連して、説明等から明らかである場合等には、平面的に閉じた孔であっても、背景の輪郭線を省略する場合がある。更に、断面でなくとも、空隙でないことを明示するため、あるいは領域の境界を明示するために、ハッチングやドットパターンを付すことがある。
【0014】
以下の実施の形態で説明する技術は、チップ搭載部上に搭載された半導体チップが封止体により封止された半導体装置に広く適用することができる。本実施の形態では、一例として、平面視において四角形を成す封止体が有する四辺のそれぞれからリードが突出する、QFP(Quad Flat Package)型の半導体装置に適用した実施態様について説明する。
【0015】
<半導体装置>
まず、本実施の形態の半導体装置PKG1の構成の概要について、
図1~
図4を用いて説明する。
図1は本実施の形態の半導体装置の上面図である。また、
図2は、
図1のA-A線に沿った断面図である。また、
図3は、
図1に示す封止体を透視した状態で半導体装置の内部構造を示す透視平面図である。また、
図4は、
図2に示す半導体装置を実装基板上に実装した状態を示す拡大断面図である。
【0016】
図1~
図3に示すように、半導体装置PKG1は、半導体チップCP(
図2、
図3参照)と、半導体チップCPが搭載されたダイパッド(チップ搭載部)DP(
図2、
図3参照)と、を有している。ダイパッドDPは、半導体チップCPと対向する上面(チップ搭載面)DPt(
図2参照)および上面DPtの反対側の下面(裏面)DPb(
図2参照)を備えている。また、半導体チップCPは、ダイパッドDPと離間して配置された複数のリードLDと、半導体チップCPと複数のリードLDとに接続された複数のワイヤBW(
図2、
図3参照)と、複数のワイヤBW、および半導体チップCPを封止する封止体(樹脂体)MR(
図1、
図2参照)と、をさらに有している。
【0017】
封止体MRは、樹脂材料を主成分とする樹脂体であって、例えばシリカなどのフィラ粒子や、黒色顔料などを含んでいる。
図1に示すように、半導体装置PKG1が備える封止体MRの平面形状は四角形から成る。封止体MRは上面MRtと、この上面MRtとは反対側の下面(裏面、被実装面)MRb(
図2参照)と、この上面MRtと下面MRbとの間に位置する複数の(4つの)側面MRsとを有している。また、
図1に示す例では、封止体MRの各側面MRsが交わる角部が面取り加工されている。
【0018】
図2および
図3に示す半導体チップCPは、平面視において四角形を成し、表面CPtには、表面CPtの外縁を構成する4つの辺のそれぞれに沿って複数のパッド(ボンディングパッド)PDが設けられている。また、半導体チップCP(詳しくは、半導体基板)は、例えばシリコン(Si)から成る。図示は省略するが、半導体チップCPの主面(詳しくは、半導体チップCPの半導体基板の上面に設けられた半導体素子形成領域)には、複数の半導体素子(回路素子)が形成されている。そして、複数のパッドPDは、半導体チップCPの内部(詳しくは、表面CPtと図示しない半導体素子形成領域の間)に配置される配線層に形成された配線(図示は省略)を介して、この半導体素子と電気的に接続されている。つまり、複数のパッドPDは、半導体チップCPに形成された回路と、電気的に接続されている。
【0019】
また、半導体チップCPの表面CPtには、半導体チップCPの基板および配線を覆う絶縁膜が形成されており、複数のパッドPDのそれぞれの表面は、この絶縁膜に形成された開口部において、絶縁膜から露出している。また、このパッドPDは金属からなり、本実施の形態では、例えばアルミニウム(Al)からなる。
【0020】
半導体チップCPは、チップ搭載部であるダイパッドDPに搭載されている。
図3に示す例では、ダイパッドDPの上面(チップ搭載面)DPtは、平面積が半導体チップCPの表面CPtの面積よりも大きい四角形から成る。ダイパッドDPは、半導体チップCPを支持する支持部材であって、形状および大きさは、
図3に示す例の他、種々の変形例を適用することができる。
【0021】
図3に示すようにダイパッドDPの周囲には複数の吊りリードHLが配置される。吊りリードHLは、半導体装置PKG1の製造工程において、リードフレームの支持部(枠部)にダイパッドDPを支持するための部材であって、
図3に示す例では、ダイパッドDPの角部から封止体MRの角部に向かって4本の吊りリードHLが配置されている。詳しくは、複数の吊りリードHLが有する一方の端部は、ダイパッドDPの角部(角)に接続されている。また複数の吊りリードHLが有する他方の端部は、封止体MRの角部に向かって延び、角部の近傍において二股に分岐して、封止体MRの側面MRsにおいて封止体MRから露出する。
【0022】
また、本実施の形態では、ダイパッドDPの上面DPtと、リードLDのインナリード部ILDの上面が異なる高さに配置されている。
図2に示す例では、インナリード部ILDの上面LDtの位置よりもダイパッドDPの上面DPtの方が低い位置に配置されている。このため、
図3に示す複数の吊りリードHLには、ダイパッドDPの上面DPtの高さがリードLDのインナリード部ILDの上面LDt(
図2参照)とは異なる高さに位置するように折り曲げられた、オフセット部OSPがそれぞれ設けられている。
【0023】
また、半導体チップCPはダイパッドDPの中央に搭載されている。
図2に示すように半導体チップCPは、裏面CPbをダイパッドDPの上面DPtと対向させた状態で、接合材(ダイボンド材)DBを介してダイパッドDP上に搭載されている。接合材DBは、後述する
図6に示すように、樹脂体RBおよび樹脂体RBに含まれた複数の金属粒子CFを含む、導電性樹脂から成る。導電性樹脂として、エポキシ系の熱硬化性樹脂(樹脂体RB)に、銀などから成る金属粒子CFが含まれた、所謂、銀ペーストと呼ばれる接着部材が例示できる。接合材DBは、ダイパッドDPの上面DPtの一部に形成された金属膜MF1をおおうように配置されている。半導体チップCPとダイパッドDPとを接着する部分の詳細な構造については後述する。
【0024】
半導体チップCPの周囲(言い換えれば、ダイパッドDPの周囲)には、例えば、複数のリードLDが配置されている。複数のリードLDのそれぞれは、半導体装置PKG1を図示しない外部機器と電気的に接続する機能を備える外部端子である。半導体装置PKG1の場合、平面形状が四角形からなる封止体MRの各辺(各主辺)に沿って、それぞれ複数のリードLDが配置されている。複数のリードLDのそれぞれのインナリード部ILD(
図2、
図3参照)は封止体MRに封止され、かつ複数のリードLDのそれぞれのアウタリード部OLDは、封止体MRから露出している。複数のリードLDのアウタリード部OLDは、封止体MRの側面MRsにおいて、封止体MRの外側に向かって突出している。半導体チップCPの表面CPtにおいて露出する複数のパッド(ボンディングパッド)PDは、封止体MRの内部に位置する複数のリードLDのインナリード部ILDと、複数のワイヤ(導電性部材)BWを介してそれぞれ電気的に接続されている。
【0025】
ダイパッドDPおよび複数のリードLDは、同じ金属材料から成る。ダイパッドDPおよび複数のリードLDを構成する金属材料としては、例えば、銅、銅を含む合金、または鉄を含む合金(42アロイ)を例示することができる。
【0026】
複数のワイヤBWのそれぞれは、半導体チップCPの表面CPt(
図2参照)に設けられた複数の複数のパッド(ボンディングパッド)PD(
図2、
図3参照)と複数のリードと、を電気的に接続する金属細線である。ワイヤBWの一方の端部は、パッドPDに接合され、他方の端部は、リードLDの上面LDt(
図2参照)に形成された金属膜MF2(
図2参照)に接合されている。詳しくは、金属膜MF2は、リードLDのうち、封止体MRに封止されたインナリード部ILD(
図2参照)に形成されている。複数のワイヤBWのそれぞれは、封止体MRにより封止されている。これによりワイヤBWの変形等を防止することができる。
【0027】
ワイヤBWは、例えば、金(Au)や銅(Cu)から成り、ワイヤBWの一部(例えば一方の端部)がパッドPDに接合され、他部(例えば他方の端部)がインナリード部ILDの先端部に接合されている。なお、インナリード部ILDの先端部の表面には、金属膜(めっき膜、めっき金属膜)MF2(
図2参照)が形成されている。金属膜MF2は例えば、銀(Ag)、あるいは金から成る。インナリード部ILDのボンディング部WBRの表面に、銀、あるいは金を主成分とする材料から成る金属膜MF2を形成することにより、ワイヤBWとの接合強度を向上させることができる。
【0028】
図2に示すように、複数のリードLDのアウタリード部OLDの露出面には、例えば、基材の表面に、金属膜(外装めっき膜)MCが形成されている。また、ダイパッドDPの下面DPbは、封止体MRから露出している。ダイパッドDPの封止体MRからの露出面、すなわち、下面DPbには、金属膜(外装めっき膜)MCが形成されている。封止体MRからダイパッドDPの下面DPbを露出させることにより、ダイパッドDPから半導体装置PKG1の外部への放熱効率を向上させることができる。
【0029】
金属膜MCは、例えば、半田など、基材である銅よりも半田に対する濡れ性が良好な金属材料から成り、基材である銅部材の表面を被覆する金属皮膜である。半導体装置PKG1の外部端子である複数のリードLDのアウタリード部OLDのそれぞれに、半田などから成る、金属膜MCを形成することにより、
図4に示すように、半導体装置PKG1を実装基板MB1に実装する際に、導電性の接続材である半田材SDの濡れ性を向上させることができる。これにより、複数のリードLDと半田材SDとの接合面積が増大するので、複数のリードLDと実装基板MB1側の端子TMとの接合強度を向上させることができる。
【0030】
また、
図4に示すように、ダイパッドDPと実装基板MB1の放熱板TBとを、半田材SDを介して熱的に接続させた場合、放熱効率をさらに向上させることができる。ダイパッドDPと半田材SDとを接続する場合、ダイパッドDPの下面DPbにおける半田材SDの濡れ性を向上させる観点から、封止体MRから露出するダイパッドDPの下面DPbに、半田などから成る金属膜MC(
図2参照)を形成することが好ましい。
【0031】
<チップ搭載部の詳細な構造>
次に、
図3に示すダイパッドDP上の詳細な構造について説明する。
図5は、
図3に示す複数のワイヤの図示を省略し、かつ、
図3に示す半導体チップおよび接合材のそれぞれの輪郭を点線で示したダイパッドの拡大平面図である。
図6は、
図5のB-B線に沿った拡大断面図である。
図6では、
図5で図示を省略した接合材DBおよび半導体チップCPを図示している。
【0032】
図5に示すように、半導体装置PKG1は、ダイパッドDPの上面DPt上に形成された金属膜MF1と、接合材DBと、を有している。
図6に示すように、接合材DBは、樹脂体RBおよび樹脂体RBに含まれた複数の金属粒子CFを含んでいる。金属膜MF1および接合材DBのそれぞれは、半導体チップCPとダイパッドDPとの間に介在している。
【0033】
図5および
図6に示すように、ダイパッドDPの上面DPtは、半導体チップCPと重なる領域DPR1と、領域DPR1の周囲に隣接し、かつ、半導体チップCPと重ならない領域DPR2と、領域DPR1に含まれ、かつ、金属膜MF1に覆われた領域DPR3と、領域DPR1に含まれ、かつ、領域DPR3に隣接し、かつ、金属膜MF1に覆われていない領域DPR4と、を含んでいる。
図5に示すように、金属膜MF1(すなわち、その上面に金属膜MF1が形成される領域DPR3)は、ダイパッドDPの上面DPtの中央部に形成されている。また、
図5および
図6に示すように、半導体チップCPは、この半導体チップCPの中心が領域DPR3と重なるように、ダイパッドDP上に搭載されている。
【0034】
金属膜MF1は、ダイパッドDPを構成する金属材料よりも酸化され難い金属材料から成る。金属材料の「酸化され難さ」は、金属のイオン化傾向の比較により定義できる。ダイパッドを構成する金属材料を銅または鉄(詳しくは、鉄を含む合金である42アロイ)とすると、金属膜MF1は、銅(銅合金の場合もある)および鉄よりもイオン化傾向が小さい金属材料から成る。銅および鉄よりもイオン化傾向が小さい金属材料として例えば銀(Ag)あるいは金(Au)などを例示できる。
【0035】
また、
図6に示すように領域DPR4における上面DPtの粗さ(表面粗さ)は、接合材DBが接触する金属膜MF1の表面(接触面)の粗さ(表面粗さ)よりも粗い。なお、本実施の形態の場合、ダイパッドDPの上面DPtの全体に粗面化処理を施した後、ダイパッドDPの上面DPtの領域DPR3に金属膜MF1をめっき法で形成する。この場合、
図6に示す金属膜MF1のうち、ダイパッドDPと対向する下面MF1bの表面粗さは、ダイパッドDPと対向しない上面MF1tの表面粗さよりも粗い。金属膜MF1と接合材DBとの接触界面における金属膜MF1の表面粗さとは、
図6に示す上面MF1tの表面粗さを意味する。
【0036】
ここで、領域DPR3の面積は、領域DPR1の面積に対して11%以上かつ55%以下であることが好ましい。
図5に示す例では、領域DPR1の面積に対して11%になっている。以下、その理由について説明する。
図7は、
図5に示す金属膜が形成された領域の面積率と、接合材の剥離率との関係を示す説明図である。
図7では、横軸が
図5に示す領域DPR1に対する領域DPR3の面積率を示している。紙面に対して最も左側の第1試験区TP1は、金属膜MF1を形成しない製品について評価を示している。紙面に対して最も右側の第5試験区TP5は、
図5に示す領域DPR1の全体を覆うように金属膜MF1が形成された製品に対する評価を示している。第1試験区TP1と第5試験区TP5との間の第2試験区TP2、第3試験区TP3、および第4試験区TP4のそれぞれは、金属膜MF1に覆われる領域DPR3の面積を異ならせた製品に対しての評価を示している。また、
図7では、縦軸に、各試験区において、
図6に示す接合材DBと、ダイパッドDP(または金属膜MF1)との界面において剥離が発生した部分の面積の値を
図5に示す領域DPR1の面積で除した値を剥離率として示している。半導体装置の熱放散効率を向上させる観点からは、
図6に示す接合材DBと、ダイパッドDPおよび金属膜MF1とが剥離していない状態が好ましい。したがって、剥離率が低い方が好ましいと言える。
【0037】
銅(Cu)や鉄(Fe)など、酸化し易い金属材料からなるチップ搭載部上に直接的に金属粒子を含む樹脂接着剤を接触させて半導体チップを搭載する場合、チップ搭載部の上面は、半導体チップが搭載されるダイボンド工程の前に酸化し易い。上面が酸化した状態でダイボンド工程を行うと、酸化した上面と樹脂接着剤との間で剥離が発生し易い。そこで、
図6に示すように、ダイパッドDPと接合材DBとの間に、ダイパッドDPの金属材料よりも酸化し難い金属材料から成る金属膜MF1を介在させて、剥離を抑制できるかどうかについて検討した。まずは、
図7において第5試験区TP5として示すように、ダイパッドDP(
図6参照)の全体に金属膜MF1を形成した場合について評価を行った。
【0038】
図7に示すように、第5試験区TP5の製品において、剥離率が25%を超えることを確認した。これは、製品の製造工程における加熱プロセス、あるいは製品の実装時の加熱プロセスで印加される熱に起因して半導体チップCPの周縁部に加わる応力が、接合材DB(
図6参照)と金属膜MF1との接着力を上回ったことによると考えられる。半導体チップCPの半導体基板に用いられるシリコン(Si)と、板状の金属製部材であるダイパッドDPを構成する金属材料とは、線膨張係数が大きく異なる。このため、半導体チップCPの平面サイズが大きくなると、半導体チップCPの周縁部近傍に印加される応力が大きくなる。また、本実施の形態では、接合材DBと金属膜MF1との接着力が、接合材DBとダイパッドDPとの接着力よりも低い。そのため、半導体チップCPの周縁部近傍に印加される応力が大きくなると、半導体チップCP(
図6参照)の周縁部付近で、接合材DBと金属膜MF1との界面に剥離が発生し、これが中央に向かって進展した状態になる。
【0039】
また、
図7に示す第1試験区TP1の製品において、剥離率が25%を超えることを確認した。接着面への粗面化処理は、接合材と被接着物であるダイパッドとの接触面積を増やす目的、あるいは、粗面化された面によるアンカー効果を得る目的で行われる。したがって、金属膜MF1が形成されず、ダイパッドDP(
図6参照)の上面DPt(
図6参照)が粗面化された第1試験区TP1の製品は、剥離率を抑制できると考えられた。ところが、
図7に評価結果を示す通り、広範囲にわたって剥離が発生していることが判った。この原因は、粗面化されたダイパッドDPの上面DPtと接合材DB(
図6参照)との間に閉じ込められた気体が熱により膨張して剥離を生じさせたと考えられる。このモードの場合、ダイパッドDPの中央部で剥離が確認され、周辺領域に向かって進展している。このことから、ダイパッドDPの周辺領域では、ダイパッドDPの上面DPtと接合材DBとの間に気体が含まれていたとしても、この気体は半導体チップCP(
図6参照)をダイパッドDP上に搭載する工程において接合材DBの周囲に逃げやすいと考えられる。一方、ダイパッドDPの中央部では、気体をリークする経路が長いことにより、気体が閉じ込められやすかったと考えられる。
【0040】
ここで、
図7に示す第2試験区TP2(面積率は11%)、第3試験区TP3(面積率は28%)、および第4試験区TP4(面積率は55%)のそれぞれは、剥離率が5%未満(0.5~2.5%程度)である。言い換えれば、第2試験区TP2、第3試験区TP3、および第3試験区TP3のそれぞれの場合、第1試験区TP1および第5試験区TP5の剥離率に対して剥離率の値を90%以上低下させることができた。
【0041】
第2試験区TP2、第3試験区TP3、および第3試験区TP3のそれぞれの場合、気体が閉じ込められやすい中央部にダイパッドDP(
図6参照)を構成する金属よりも酸化され難い金属材料から成る金属膜MF1が形成されている。これにより、領域DPR1の中央部にある領域DPR3(
図5参照)において、酸化膜による剥離の発生を抑制できる。また、金属膜MF1の表面粗さは、ダイパッドDPの上面DPt(
図6参照)の表面粗さよりも平滑である。これにより、領域DPR1の中央部にある領域DPR3(
図5参照)において、気体の閉じ込めに伴う剥離の発生を抑制できる。
【0042】
また、第2試験区TP2、第3試験区TP3、および第3試験区TP3のそれぞれの場合、半導体チップCP(
図6参照)からの応力が印加され易い周縁部(
図5に示す領域DPR4)では、粗面化されたダイパッドDP(
図6参照)の上面DPt(
図6参照)と接合材DB(
図6参照)とが密着している。周縁部において、ダイパッドDPの上面DPtが粗面化されている場合、上面DPtに酸化膜が形成された場合でも接合材DBとの界面剥離を抑制できる。また、周縁部では、接合材DBとダイパッドDPとの間の気体は、接合材DBの周囲に排出されやすい。このため、周縁部における剥離の発生を抑制できる。
【0043】
第2試験区TP2、第3試験区TP3、および第3試験区TP3のそれぞれは、上記の通り、領域DPR3と領域DPR4のそれぞれにおいて、異なる剥離対策を施したことにより、剥離率を低減できたと考えられる。
【0044】
図7に示す結果および上記考察から、
図5に示す領域DPR3の面積が、領域DPR1の面積に対して11%以上かつ55%以下である場合には、
図6に示す接合材DBの剥離を抑制できることが判った。言い換えると、半導体チップCPの面積(すなわち、領域DPR1の面積)が25mm
2以上の場合、たとえ、半導体チップCPからの応力が印加され易い周縁部において粗面化されたダイパッドDPの上面DPtと接合材DBとが密着している構成であっても、領域DPR3の面積率が11%未満、あるいは、56%以上である場合には、接合材DBの剥離が生じるおそれがある。また、接合材DBの剥離を抑制することにより、半導体チップCPからダイパッドDPに至る放熱経路の熱放散特性を向上させることができることが判った。
【0045】
ところで、
図6に示す金属膜MF1は、ダイボンド工程を実施するまでの間、接合材DBとの密着界面に酸化膜が形成されることを防止できればよい。このため、金属膜MF1を構成する金属材料としては、ダイパッドDPを構成する金属材料よりも酸化され難い(言い換えれば、イオン化傾向が小さい)金属材料であれば種々の材料を用いることができる。ただし、放熱特性を向上させる観点からは、金属膜MF1自身の熱伝導特性が高いことが好ましい。この観点からは、本実施の形態のように、金属膜MF1は、銀または金から成ることが特に好ましい。
【0046】
また、
図7に示す第5試験区TP5における剥離現象は、半導体チップCP(
図6参照)の面積、言い換えれば領域DPR1の面積が25mm
2以上になると、特に顕著になることが判った。また、半導体チップCPの面積、言い換えれば領域DPR1の面積が25mm
2以上、かつ、100mm
2以下の範囲では上記した対策を施すことにより、
図7に示す剥離率を大幅に低減できることが判った。なお、
図7に示すデータは、領域DPR1の面積が、54.76mm
2(一辺の長さが7.4mmの正方形)である半導体装置を評価した時の結果を示している。
【0047】
また、
図2に示すように、接合材DBの周囲において、ダイパッドDPの上面DPtと、封止体MRとは接触している。言い換えれば、
図5に示すダイパッドDPの上面DPtの領域DPR2は、
図2に示す封止体MRに接触している。接合材DBとダイパッドDPとの間に気体が残留していた場合、封止体MRとダイパッドDPとの剥離を発生させる原因になる。本実施の形態の場合には、接合材DBとダイパッドDPとの間に存在した気体はダイボンド工程において大気中に排出される。このため、この気体に起因した剥離の発生を防止できる。
【0048】
また、
図2に示すように、複数のリードLDのそれぞれの一部分(インナリード部ILDの上面LDtの先端部分)には、金属膜MF2が形成されている。複数のワイヤBWのそれぞれは、金属膜MF2に接合されている。金属膜MF2は、ワイヤBWとリードLDとの電気的な接続信頼性を向上させるために形成されるめっき膜である。金属膜MF1と金属膜MF2とは、同じ金属材料(例えば銀または金)により形成されている。このように、金属膜MF1と金属膜MF2とが同じ金属材料により形成されている場合、製造工程において、金属膜MF1と金属膜MF2とを同じ工程で一括して形成することができる。
【0049】
また、
図2に示すように、ダイパッドDPの下面DPbは、封止体MRから露出している。ダイパッドDPからの放熱効率を考慮すると、ダイパッドDPの下面DPbは、封止体MRから露出していることが特に好ましい。ただし、図示は省略するが、変形例としてダイパッドDPの下面DPbが封止体MRから露出せず、封止体MRに封止されている場合もある。
【0050】
<変形例>
次に、いくつかの変形例について説明する。
図8は、
図6に対する変形例を示す拡大断面図である。
図6に示す半導体装置PKG1の場合、ダイパッドDPの上面DPtのみが粗面化され、側面DPsおよび下面DPbは粗面化されていない。側面DPsは、上面DPtおよび下面DPbに交差する面である。上記した剥離対策という観点では、少なくともダイパッドDPの上面DPtが粗面化されていれば足りる。
【0051】
ただし、
図6に示すように上面DPtのみを選択的に粗面化する場合、下面DPbおよび側面DPsをマスクした状態で粗面化処理を行う必要がある。
図8に示す半導体装置PKG2の場合、側面DPsおよび下面DPbのそれぞれが、上面DPtと同様に粗面化されている。この場合、ダイパッドDPの上面DPt、下面DPb、および側面DPsのそれぞれの表面粗さは、金属膜MF1と接合材DBとの接触界面(上面MF1t)における金属膜MF1の表面粗さよりも粗い。
【0052】
半導体装置PKG2の場合、粗面化処理において、下面DPbおよび側面DPsをマスクする必要がないので、作業効率を向上させることができる。また、側面DPsが粗面化されていることにより、封止体MR(
図2参照)と側面DPsとの密着強度を向上させることができる。
【0053】
図9は、
図5に示す金属膜の形状の変形例を示す拡大平面図である。半導体装置PKG3は、金属膜MF1の形状が
図5に示す半導体装置PKG1と相違する。半導体装置PKG3の金属膜MF1の平面形状は、例えば円形である。角部を有さない円形の金属膜MF1の場合、角部を有する四角形の金属膜と比較して、応力集中が発生し難いというメリットがある。このため、金属膜MF1の面積が大きい場合でも、応力に起因する剥離の発生を抑制し易いという利点がある。また、金属膜MF1の平面形状には、
図9に示す円形の他、楕円形や多角形など、種々の変形例を適用できる。
【0054】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0055】
BW ワイヤ(導電性部材)
CF 金属粒子
CP 半導体チップ
CPb 裏面
CPt 表面
DB 接合材(ダイボンド材)
DP ダイパッド(チップ搭載部)
DPb 下面(裏面)
DPR1,DPR2,DPR3,DPR4 領域
DPs 側面
DPt 上面(チップ搭載面)
HL 吊りリード
ILD インナリード部
LD リード
LDt 上面
MB1 実装基板
MC 金属膜(外装めっき膜)
MF1,MF2 金属膜(めっき膜、めっき金属膜)
MF1b 下面
MF1t 上面
MR 封止体(樹脂体)
MRb 下面(裏面、被実装面)
MRs 側面
MRt 上面
OLD アウタリード部
PD パッド(ボンディングパッド)
PKG1,PKG2,PKG3 半導体装置
RB 樹脂体
SD 半田材
TB 放熱板
TM 端子
TP1 第1試験区
TP2 第2試験区
TP3 第3試験区
TP4 第4試験区
TP5 第5試験区