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  • 特開-連続焼付装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167786
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】連続焼付装置
(51)【国際特許分類】
   F27B 9/10 20060101AFI20231116BHJP
   F27D 3/16 20060101ALI20231116BHJP
   F27D 17/00 20060101ALI20231116BHJP
   F27D 7/06 20060101ALI20231116BHJP
   B05C 9/14 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
F27B9/10
F27D3/16 Z
F27D17/00 101A
F27D17/00 101Z
F27D7/06 B
B05C9/14
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079246
(22)【出願日】2022-05-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】520498413
【氏名又は名称】株式会社エス.ケーガス
(74)【代理人】
【識別番号】100129056
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 信雄
(72)【発明者】
【氏名】坂本 享司
【テーマコード(参考)】
4F042
4K050
4K055
4K056
4K063
【Fターム(参考)】
4F042AA09
4F042BA08
4F042BA13
4F042BA19
4F042DB02
4F042DB09
4F042DB12
4F042DB23
4F042DB26
4F042DB29
4F042DB30
4F042DB33
4F042DB34
4F042DB36
4F042DB37
4F042DF02
4F042DF17
4F042DH09
4K050AA01
4K050BA12
4K050CC07
4K050CC10
4K050CE03
4K050CF06
4K050CF16
4K050CG09
4K055AA05
4K056AA14
4K056BA02
4K056BB06
4K056CA15
4K056DA22
4K056DC01
4K063AA09
4K063BA02
4K063BA03
4K063CA03
4K063DA05
4K063DA23
(57)【要約】
【課題】塗装の色艶が均質に得られ、高温の熱を効率良く利用することができる焼付装置を提供する。
【解決手段】搬入口から搬出口へワークを搬送する搬送手段を備えた焼付室と、ガス供給源と、熱交換器と、ガス導入部と、ガス導出部と、を備えた連続焼付装置であって、前記焼付室には、加熱された高温ガスを分散させて室内の温度を均質化する噴出口を備えた送風管を配し、前記搬入口及び搬出口の近傍には、天井側に前記ガス導出部から供給されるガスを略鉛直下方に向けて膜状に吹き出す吹出器を配し、搬入口及び搬出口の近傍には、床側に主に該吹出器から吹き出されるガスを下方で吸い込む吸引器を夫々に配し、該吸引器にて吸い込んだガスを搬入口から所定間隔を有した前方箇所、及び、搬出口から所定間隔を有した後方箇所にて略鉛直下方へ再び膜状に吐出する再吹出器を配した手段を採用する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬入口から搬出口へワークを搬送する搬送手段を備えた焼付室と、該焼付室へ不活性ガスを供給するガス供給源と、前記焼付室から排出される排ガスと前記ガス供給源から供給されるガスとの熱交換を行う熱交換器と、該熱交換器を経て前記焼付室へ供給されるガスを焼付温度に加熱する電気ヒータを備えたガス導入部と、前記焼付室から排出された排ガスを濾過又は分解して処理する排ガス処理器と排ガス中の溶剤を熱分解可能な温度に加熱する高温電気ヒータを備えたガス導出部と、を備えた連続焼付装置であって、
前記焼付室には、前記電気ヒータで加熱された高温ガスを分散させて室内の温度を均質化する噴出口を備えた送風管を配し、
前記搬入口近傍の天井側に前記ガス導出部から供給されるガスを略鉛直下方に向けて膜状に吹き出す前部吹出器を配し、前記搬入口近傍の床側には主に前部吹出器から吹き出されるガスを下方で吸い込む前部吸引器を配し、該前部吸引器にて吸い込んだガスを再送管を介して搬入口から所定間隔を有した前方箇所にて略鉛直下方へ再び膜状に吐出する前部再吹出器を配し、
前記搬出口近傍の天井側に前記ガス導出部から供給されるガスを略鉛直下方に向けて膜状に吹き出す後部吹出器を配し、前記搬出口近傍の床側には主に後部吹出器から吹き出されるガスを下方で吸い込む後部吸引器を配し、該後部吸引器にて吸い込んだガスを再送管を介して搬出口から所定間隔を有した後方箇所にて略鉛直下方へ再び膜状に吐出する後部再吹出器を配したことを特徴とする連続焼付装置。
【請求項2】
前記前部吸引器及び後部吸引器に接続される再送管同士が連結され、該前部吸引器及び後部吸引器によって吸引されたガスが再送管を介して前部再吹出器及び後部再吹出器へ夫々送気されることを特徴とする請求項1に記載の連続焼付装置。
【請求項3】
前記搬入口と前記前部再吹出器との中間所定箇所に、主に該前部再吹出器から吐出されたガスを吸引し排ガス管を介して外部へ排出するための前部排出器が備えられると共に、前記搬出口と前記後部再吹出器との中間所定箇所に、主に該後部再吹出器から吐出されたガスを吸引し排ガス管を介して外部へ排出するための後部排出器が備えられて成ることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の連続焼付装置。
【請求項4】
前記前部排出器及び後部排出器に接続される排ガス管同士が連結され、該前部排出器及び後部排出器によって吸引されたガスが排ガス管を介して一の排出口から外部へ排出されることを特徴とする請求項3に記載の連続焼付装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塗装した物品を搬送しつつ連続して焼付する連続焼付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属製の事務機器や自動車の部品等の焼付用塗料を塗った物品(以下ワークと呼ぶ)が、焼付温度に加熱する熱源を備えた焼付装置により焼付加工されている。
その熱源が化石燃料の装置では、バーナー等で燃焼されて煤が発生するので清掃等の維持管理が容易ではなく、これに対して、熱源が電気ヒータの装置では、煤は発生しないのでメンテナンスが容易となり、更に、発熱体の電気ヒータはバーナー等の燃焼機構に比べると簡単な構造なので、対象とするワークの大きさや種類に応じて装置の小型化等の多様化が容易となる。
【0003】
このような電気ヒータを用いた焼付装置については、例えば、下記特許文献1の図3に示された実用例には、焼付して発生する汚染ガスは外部に排出し、熱交換器によってその汚染ガスの熱で外気を加熱して炉内へ供給し、そのガスを更に加熱室内に設けた電気ヒータで焼付可能な温度に高めてワークの焼付をする加熱装置が示されている。この装置では、加熱室の側壁に設けられた電気ヒータによってワークが直接加熱されるが、そのワークの裏側は直接加熱することはできないので表裏に温度差が生じて均質な焼付ができないという問題がある。
又、例えば、下記特許文献2に示された塗装物の乾燥・焼付炉では、乾燥・焼付部に設けた複数の開閉量調整板の開閉によって空気の流れを均一化することで均等な乾燥・焼付が行えるとしている。しかしこの装置では、開閉量調整板から離れた場所の空気の流れまでは調節できないので乾燥・焼付部内の温度の均一化は難しく、又複数ある開閉量調整板の開閉制御は複雑で面倒である。
なお、上記特許文献1、2の装置では、いずれも扉の開閉によってワークを出し入れするものなので、出し入れ時に焼付作業を停止するため大量高速の連続焼付には適さず、又扉を開閉する毎に高温ガスが扉外に流出して高い熱効率を得るのが困難となる。
【0004】
一方、焼付用の電源は電気ではないが、下記特許文献3には、出入口に炉内の熱の流出を防ぐエアーカーテンを設けた乾燥焼付装置が示されている。この装置では、ワークは気体であるエアーカーテンを連続的に潜り抜けて炉内へ搬送されるが、潜り抜ける際にワークが外気を引き込んでカーテンの気流を乱し、ワークの搬送速度が大きいほどその乱れが大きくなってエアーカーテンの遮蔽機能が損なわれることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平3-6295号公報
【特許文献2】特開2013-79782号公報
【特許文献3】特開昭47-18931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたもので、膜状のガスの流れで確実に遮蔽された出入口を潜って、焼付室内に塗装したワークを連続的に搬送させつつ、不活性ガスが均質に分散された焼付室内で高品質の焼付塗装製品が得られる熱効率の優れた連続焼付装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、搬入口から搬出口へワークを搬送する搬送手段を備えた焼付室と、該焼付室へ不活性ガスを供給するガス供給源と、前記焼付室から排出される排ガスと前記ガス供給源から供給されるガスとの熱交換を行う熱交換器と、該熱交換器を経て前記焼付室へ供給されるガスを焼付温度に加熱する電気ヒータを備えたガス導入部と、前記焼付室から排出された排ガスを濾過又は分解して処理する排ガス処理器と排ガス中の溶剤を熱分解可能な温度に加熱する高温電気ヒータを備えたガス導出部と、を備えた連続焼付装置であって、前記焼付室には、前記電気ヒータで加熱された高温ガスを分散させて室内の温度を均質化する噴出口を備えた送風管を配し、前記搬入口近傍の天井側に前記ガス導出部から供給されるガスを略鉛直下方に向けて膜状に吹き出す前部吹出器を配し、前記搬入口近傍の床側には主に前部吹出器から吹き出されるガスを下方で吸い込む前部吸引器を配し、該前部吸引器にて吸い込んだガスを再送管を介して搬入口から所定間隔を有した前方箇所にて略鉛直下方へ再び膜状に吐出する前部再吹出器を配し、前記搬出口近傍の天井側に前記ガス導出部から供給されるガスを略鉛直下方に向けて膜状に吹き出す後部吹出器を配し、前記搬出口近傍の床側には主に後部吹出器から吹き出されるガスを下方で吸い込む後部吸引器を配し、該後部吸引器にて吸い込んだガスを再送管を介して搬出口から所定間隔を有した後方箇所にて略鉛直下方へ再び膜状に吐出する後部再吹出器を配した手段を採用する。
【0008】
また、本発明は、前記前部吸引器及び後部吸引器に接続される再送管同士が連結され、該前部吸引器及び後部吸引器によって吸引されたガスが再送管を介して前部再吹出器及び後部再吹出器へ夫々送気される手段を採用する。
【0009】
さらに、本発明は、前記搬入口と前記前部再吹出器との中間所定箇所に、主に該前部再吹出器から吐出されたガスを吸引し排ガス管を介して外部へ排出するための前部排出器が備えられると共に、前記搬出口と前記後部再吹出器との中間所定箇所に、主に該後部再吹出器から吐出されたガスを吸引し排ガス管を介して外部へ排出するための後部排出器が備えられて成る手段を採る。
【0010】
またさらに、本発明は、前記前部排出器及び後部排出器に接続される排ガス管同士が連結され、該前部排出器及び後部排出器によって吸引されたガスが排ガス管を介して一の排出口から外部へ排出される手段を採用する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の連続焼付装置は、上記構成としたことで以下の効果を奏する。
焼付に供されて溶剤を含んだガスは焼付室内からガス導出部へ送気され、ガス供給源から供給される清浄な不活性ガスがガス導入部の電気ヒータで焼付温度に加熱されて焼付室へ導入されるので、焼付室内の高温ガスに含まれる溶剤の濃度を常に低く保つことが可能となる。
これに加えて、熱交換器でガスの熱により加熱されてからガス導入部の電気ヒータで焼付温度に加熱された高温の不活性ガスが、焼付室内に敷設され送風管の複数の噴出口から分散されて噴出し、焼付室内に均一な温度で溶剤の濃度が低い均質な高温ガスで満たされた焼付領域が得られ、この焼付領域の中において、ワーク表面を塗装した塗料が均質に焼付されて均一な色艶となった高品質のワークを得ることが可能となる。
【0012】
又、焼付室の搬入口と搬出口の近傍では、天井側に備えられた前部吹出器及び後部吹出器と、床側に備えられた前部吸引器及び後部吸引器とによって、膜状の遮蔽層が形成され、搬入口と搬出口を搬送手段によって運ばれたワークが連続して通過する際にワークが発生させる乱れたガスの流れを該遮蔽層が抱き込むように制し、焼付室の内部と外部を確実に遮断することが可能となる。
同時に床側の前部吸引器及び後部吸引器によって吸入されたガスが、配管を介して前部再吹出器及び後部再吹出器から吐出されて膜状の遮蔽層を形成することにより、焼付炉内への外気侵入を防止すると共に、塗装前後のワーク全体を外気よりも高熱且つ不活性ガスを多く含んだガス層に晒す事が可能となり、外気と焼付炉内の中間部における環境変化を緩やかにするといった優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明にかかる連続焼付装置の実施形態を示す模式面である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態を、以下図を参考して説明する。
本発明の連続焼付装置は、図1に示すように、ワークWの焼付を行う焼付室1の前後に開口した搬入口2と搬出口3とを除いて、周囲をステンレス等の耐火材で被膜し、該搬入口2の外側から搬出口3の外側へと焼付室1内を通って対象の物品を運ぶ搬送手段4を設置する。
本発明で焼付対象とするワークWは、例えば、焼付用の塗料が塗られた金属製の事務機器や自動車の部品、飲料缶等である。
焼付室1は、焼付するワークWに適する大きさの焼付領域を備える。そして、該焼付領域内において、焼付対象の種類により焼付温度は異なるが、通常、約250~350℃の高温ガスの中でワークWが焼付される。
前記搬送手段4は、個々の塗装したワークWを並べて連続的に搬送する装置であり、その装置は、ワークWの運搬に適したベルトコンベアや吊下げ式の移動機等が使用可能である。
【0015】
焼付用塗料で塗装された多数の個々のワークWは、前記搬送手段4によって搬入口2と搬出口3の開口を遮るように流れる膜状のガスを潜って前記焼付室1内に連続して搬送され、その移動中に室内の高温ガスでワークWが焼付される。
以下、ワークWが搬入される搬入口2側を前側とし、搬出される搬出口3側を後側として説明する。
【0016】
本発明では、前記焼付室1内の焼付領域がワークWの材質や塗料の種類に応じた焼付温度となるように温度調節された高温ガスを、焼付室1の外部からその内部へ送り込むものであり、焼付室1の内部に設けた電気ヒータによって直接ワークを加熱するものではない。
焼付する高温ガスは、使用される焼付塗料が酸化による変色等を起すことない不活性ガスを使用する。
例えば、アルゴンガスや窒素ガス等の不活性ガスが使用可能であるが、窒素ガスを使用する場合には窒素ガス製造機で製造し、これをガス供給源5とすることができる。
そして、その不活性ガスは、図1で示すように、ガス供給源5からガス導入管11を通って電気ヒータ16を備えたガス導入部7で焼付温度に加熱してから前記焼付室1内へ導入する。
その際、例えば、該ガス導入管11にガス圧調整器14を設けることでガス圧を調整しつつガスを前記焼付室1へ設定圧で導入することができる。つまり、前記焼付室1内のガス圧は、該ガス圧調整器14によって最適な値に決めることができる。
なお、ガス圧を安定させるためガス圧を調節する複数のブロアを該ガス導入管11の適宜位置に設けても良い。
【0017】
不活性ガスは前記ガス供給源5からガス導入管11に導かれて前記焼付室1へ導入されるが、前記焼付室1の手前にガス導入部7が設けられ、そのガスは該ガス導入部7を通って前記焼付室1に導入される。
該ガス導入部7は前記焼付室1外部に隣接させるか焼付室1の近い位置に設けることができる。
そして、前記ガス導入管11中を通過するガスをガス導入部7の電気ヒータ16で焼付温度である約250~350℃に加熱してからその高音ガスを前記焼付室1へ導入する。
該電気ヒータ16にはシーズー線等の電気による発熱体を使用することができる。
そして、前記焼付室1内の焼付領域には温度センサー(図中省略)を設けて、その温度センサーで検知された温度により電気ヒータ16の強弱及びオン・オフを制御し、焼付領域内のガスが一定の焼付温度に維持されるよう最適な温度に制御することができる。
この温度の制御によって、例えば、焼付室1内の温度センサーが感知した温度が低い場合には、電気ヒータ16で加熱する温度を高く調節して、焼付領域を焼付に最適な温度に保つことができるようになる。
【0018】
使用される焼付用塗料には有機溶剤が含まれており、前記焼付室1内でワークWを連続して焼付することでガス中にはワークW表面の塗料から発生した溶剤及び溶剤が高温の焼付高温で変化した溶剤由来物質(以下まとめて溶剤と呼ぶ)の混入量が増加する。
この溶剤の混入量が増加するとワークW塗装面の色艶に悪影響が生じることがある。
このため、図1にあるように、不活性ガス中の溶剤の濃度が上昇する焼付室1の所定箇所、例えば略中央部分やワークWの焼付が終了する室内後部に、室内のガスを排出可能な一乃至複数の排気口10を設け、該排気口10からガス導出管12内へ排出された排ガスは、該ガス導出管12に設けたブロア19でガス導出部8へ流入させることとなる。
【0019】
ガス導出部8には、ガス中の溶剤を無害化するために排ガス処理器17及び高温電気ヒータ18を設けることができる。
該排ガス処理器17は、溶剤をフィルタで濾過して除去するか、又は溶剤を触媒で分解することができる構造を有するガスの処理器である。
前記フィルタ及び触媒は、既存のものが使用でき、例えばフィルタは、焼付室1から排出されたガス(250~350℃)の高温に耐え得る金属焼結フィルタの使用が可能である。又、触媒もその高温に耐えるものを使用することができる。
【0020】
又、大気汚染源となる溶剤は600℃以上の高温では熱分解されて、無臭化及び無害化することができるが、本発明では、図1に示すように、前記ガス導出部8のガス導出管12の排ガス処理器17と、後述する熱交換器6との間に600℃以上の高温に加熱可能な高温電気ヒータ18を設けることで、排ガスが熱交換器6へ流入する前に、該高温電気ヒータ18で排ガスを600℃以上の高温に加熱してその中の溶剤を無害な物質に熱分解させることが可能となる。
なお、図1には高温電気ヒータ18を前記排ガス処理器17の下流側に設けた態様を示しているが、前記ガス導出部8に排ガス処理器17は設けずに、高温電気ヒータ18のみを設けることもできる。
前記熱交換器6は、高温電気ヒータ18によりガスは600℃以上の高温のままで熱交換器6へ送り込まれるので、その高温に耐える耐熱性能を有するものが使用可能となる。
そして、該熱交換器6と高温電気ヒータ18によって、焼付室1に導入する不活性ガスの加熱も、溶剤の熱分解も一緒に行えるようになる。
この場合、高温電気ヒータ18で高温となった不活性ガスを熱交換器6により350℃程度の温度に低下させる調整をすれば、ガス導入部7の電気ヒータ16による不活性ガスを焼付温度にする加熱は極めて少なくて済むこととなる。
【0021】
前記ガス導出部8より下流となる部位と、前記ガス導入管11の電気ヒータ16より上流となる部位とを交差させ、その交差部分に熱交換器6を設ける。
該熱交換器6は、前記焼付室1から排出され排ガス処理器17や高温電気ヒータ18により溶剤が取り除かれあるいは無害化された高温の排ガスと、前記焼付室1へガス供給源5から送られる清浄で常温のガスとの熱を交換し、焼付室1から導出させる高温の排ガスで焼付室1へ導入させる常温の清浄な不活性ガスの温度を高めるものである。
該熱交換器6では清浄な不活性ガスの温度を上げることができるが、別に加熱する手段を有していない場合には前記熱交換器6だけでは焼付する温度にまでは加熱することができないので、更に前記電気ヒータ16でガスを焼付に必要な温度に、例えば350℃程度にまで高めてからその高温ガスを焼付室1へ送る。
なお、前記排ガス処理器17により排気ガス中の溶剤を除去すれば、熱交換器6内の流路に溶剤由来の汚れ物質がヤニ状に付着蓄積するのが防止され、熱交換器6のメンテナンスの手間を減らし、使用寿命を延ばすことが可能となる。
【0022】
又、導入された清浄な不活性ガスは、前記電気ヒータ16で加熱されて焼付に必要な温度に調整されるが、そのまま直接焼付室1内へは入れない。
前記焼付室1内に送風管9を敷設し、該送風管9の基端部を前記ガス導入管11に接続し、前記電気ヒータ16で加熱された高温ガスは前記ガス導入管11から該送風管9内へ圧送される。
該送風管9には、高温ガスを室内に分散状態に噴出させる多数の噴出口9aが分散させて備えられている。
その噴出口9aから室内に分散状態にガスを噴出させることによって、室内の温度を均一化することが可能となる。
これに対して、例えば、噴出口9aが2、3個程度の少ない数で且つ室内に分散されていない場合には、高温ガスを室内に入れたとき、その少ない噴出口9aから離れて温度が低くなってしまう領域が増えて、焼付領域全体を均一な温度にすることが困難となるので好ましくない。
【0023】
前記送風管9は、例えば、図1に示すように、分岐させた焼付室1の搬入口2寄り部位から搬出口3寄り部位にまで届くような長い送風管9を焼付室1内の天井1aの左右両側と床1b側の左右両側に平行に敷設し、該送風管9に噴出口9aを多数分散させて設けることができる。
この場合、各噴出口9aは室内の形状に応じて大小異なる口径とすることができ、又各噴出口9aの噴出させる方向を、一方では搬入口2側の噴出口9aは搬入口2に向けず、他方では搬出口3側の噴出口9aは搬出口3に向けず、全ての噴出口9aから噴出されたガスの流れが室内に調和して分散できるよう各噴出口9aの向きを決める。
該噴出口9aによって、焼付室1内の空間全域に渡ってほぼ同じ温度のガスが行き渡り、室内の焼付領域を均一な温度とすることができる。
そして、このような送風管9により、温度の偏りが解消されて均一な焼付温度となる。
又、溶剤で汚れたガスは排気口10より排出されると同時にガス供給源5から供給された清浄な不活性ガスが導入されて溶剤の濃度が低く保たれる。
この結果、焼付温度が均一で溶剤の濃度が低い均質なガスで満たされた焼付領域の中で、塗料の色艶が良好で均質な焼付塗装された高品質の製品が得られることとなる。
【0024】
焼付室1での焼付を、ワークを連続的に移動させて行おうとする場合、毎回扉を開閉する方法では対応できないが、膜状のガスはワークを連続して自由に通過させることができる。
このため本発明では、前記焼付室1の前後に、ワークWの移動・出入に支障がない程度に開口した搬入口2及び搬出口3を設け、前記焼付室1の内側と外側とを仕切るようにガスを膜状に流して、前記焼付室1の内側の高温ガスと外側の常温の空気との流通を遮断する構造を有する。
単に上下に吹き出すガスの膜のみでは、搬送されるワークWの移動に伴ってガスの膜が乱れ易く、焼付室に外気が侵入するのを防ぐことは困難であり、その形態について以下説明する。
尚、この膜状に流すガスとして、エアガス(空気)を使用することも考え得るが、焼付室1への空気の流入を遮断するという機能・作用の確実性に鑑みると、アルゴンガスや窒素ガス等の不活性ガスを使用する態様がより好適であり、本発明では不活性ガスを採用する。
【0025】
その基本となる形態は、図1に示すように、前記搬入口2と前記搬出口3の開口領域近傍における内側の天井側に、燃焼室1内の使用済みガスを回収して無害化した後の清浄なガスを上方から略鉛直下方に向けて膜状に吹き出す前部吹出器20と後部吹出器30とを夫々配設し、搬入口2と搬出口3の開口領域近傍における外側の床側に、主に前部吹出器20並びに後部吹出器30から吹き出されるガスを下方で吸い込む前部吸引器21及び後部吸引器31を備え、該前部吸引器21及び該後部吸引器31にて吸い込んだガスを搬入口2から所定間隔を有した前方箇所並びに搬出口3から所定間隔を有した後方箇所にて上方から略鉛直下方へ再び膜状に吐出して、前部吹出器20及び後部吹出器30から吹き出されたガスとの間に遮断層A、Bを形成する前部再吹出器22及び後部再吹出器32を夫々配設するものである。尚、前部吹出器20並びに後部吹出器30の配設箇所については、開口領域近傍であれば、搬入口2並びに搬出口3より外側の天井側であってもよい。
【0026】
図1に示すように、搬入口2側と搬出口3側とは前後対称の構造とするので、以下搬入口2側の方を詳述し、搬出口3側は簡略に説明する。
該搬入口2側の構造として、前部吹出器20は、ガスをモータの回転で送風するファン20aと、該ファン20aの稼働でガスを膜状に吹き出す吹出口20bとを備える。
そして、該吹出口20bは、細長い開口部の両側の長さが前記搬入口2の開口領域の左右の長さと同等の長さとし、その細長い開口部からガスが一枚の膜状となって流れ出るように形成する。
該吹出口20bからの吹き出し方向は、略鉛直下方となるよう固定する。
この結果、前部吹出器20は、前記吹出口20bから噴出して膜状となったガスの略鉛直下降流を発生させることとなるが、焼付室1内に供給されているガスの押圧により、略鉛直下降流は前方側(搬入口2から外側)へやや押されるため、実際には若干の前傾斜状を成す下降流となる。
【0027】
又、前記前部吸引器21は、前記前部吹出器20の吹出口20bから吹き出された略鉛直下降流のガスを下方で吸い込める広い間口の吸引口21aを備える。尚、該前部吸引器21は、主に前部吹出器20から吹き出されるガスを下方で吸い込むものであるが、同時に搬入口2より上流側の搬送手段4上に存するガスも少なからず吸引することとなる。
前部吸引器21の吸引口21aによって吸入されたガスは、再送管13の所定箇所に設けられたブロア19により圧力が増加されつつ前部再吹出器22に送られ、該前部再吹出器22から略鉛直下方に向けて膜状に吐出される。
この結果、前部再吹出器22は、膜状となったガスの略鉛直下降流を発生させることとなる。そして、図1に示すように、前部吹出器20から吹き出された略鉛直下降流と前部再吹出器22から吹き出された略鉛直下降流との間に、不活性ガスによる遮断層Aが形成されることとなる。
【0028】
搬入口2と前部再吹出器22との中間上部所定箇所には、図示の様に、主に前部再吹出器22から吐出されたガスで形成される遮断層Aに存するガスを吸引して外部へ排出するための前部排出器23を備える態様が好適である。前部吹出器20から吐出されるガス及びそのガスを吸引して前部再吹出器22から吐出されるガスは、燃焼室1から排出される排ガスを再利用したものであり、排ガス処理器17や高温電気ヒータ18によって処理しているとはいえ、未だ微量の有害物質を含有しているおそれも想定される。よって、そのまま炉外に放出するのではなく、前部排出器23を配設してブロア19で吸引し、排ガス管15を介して排出口40から屋外などへ送出する態様が望ましい。
【0029】
一方、前記搬出口3側の構造も、図1に示すように、上記の如く搬入口2側と前後対称となる同じ構造となっている。
このため、前記天井側の後部吹出器30は、ファン30aと、該ファン30aの稼働でガスを膜状に噴き出す吹出口30bとを備える。
そして、該吹出口30bは、その細長く開口することでガスが一枚の膜状となって略鉛直下方に向け吹き出すように固定し、該吹出口30bからガスが吹き出して略鉛直下降流を発生させる。尚、焼付室1内に供給されているガスの押圧により、略鉛直下降流は後方側(搬出口3から外側)へやや押されるため、実際には若干の後傾斜状を成す下降流となる。
【0030】
又、後部吸引器31は、主に後部吹出器30からの略鉛直下降流のガスを下方で吸い込む吸引口31aを備える。尚、後部吸引器31は、同時に搬出口3より下流側の搬送手段4上に存するガスも少なからず吸引することとなる。
後部吸引器31の吸引口31aによって吸入されたガスは、配管所定箇所に設けられたブロア19により圧力が増加され、後部再吹出器32から略鉛直下方に向けて膜状に吐出され、略鉛直下降流を発生させることとなる。
そして搬出口3側でも、搬入口2側と同様、後部吹出器30から吹き出された略鉛直下降流と後部再吹出器32から吹き出された略鉛直下降流との間に、不活性ガスによる遮断層Bが形成されることとなる。
【0031】
さらに、搬入口2側と同様、搬出口3と後部再吹出器32との中間上部所定箇所には、主に後部再吹出器32から吐出されたガスで形成される遮断層Bに存するガスを吸引して外部へ排出するための後部排出器33を配設し、該後部排出器33によって吸引したガスを、排ガス管15を介して排出口40から屋外などへ送出する態様が好適である。
【0032】
前部吸引器21に接続される再送管13と後部吸引器31に接続される再送管13とは、図示の様に所定箇所で合流・連結させ、一のブロア13で吸引及び送気を行う態様が好適である。このとき、再送管13はブロアを経由後に分岐し、夫々前部再吹出器22並びに後部再吹出器32へ送気される態様となる。
また、前部排出器23に接続される排ガス管15と後部排出器33に接続される排ガス管15についても同様、所定箇所で連結・合流させ、一のブロア13で吸引及び送気を行う態様が好適である。このとき、排ガス管15はブロア13を経由後に分岐することなく、そのまま一の排出口40から屋外などへ送出される態様となる。
【0033】
本発明では、図示のとおり、搬入口2と搬出口3の両方側で、上記の如く、天井側の前部吹出器20及び後部吹出器30と、床側の前部吸引器21及び後部吸引器21と、前部再吹出器22及び後部再吹出器32とによって、不活性ガスが滞留する遮蔽層A、Bが形成されると共に、搬入口2と搬出口3の開口領域が確実に遮断され、焼付室1内の高温のガスは前後両側からほとんど漏出されず、且つ冷たい外気は焼付室1内へ侵入されないようにブロックされる。
又、前記搬入口2と搬出口3の両方で、不活性ガスの一つの流れを繰り返すことで、両方に別々に不活性ガスを使用するよりも、約半分のガス使用量で二重の流れが得られるので大幅な不活性ガスの節約となる。
【0034】
なお、焼付室1のガス圧は、焼付室1内のガスをガス導出管12を介してモータの回転で強制的に排出させるブロア19によって減圧されるが、焼付室1内へガスをガス導入管11を介して圧送するガス圧調整器14等によって、焼付室1内のガス圧が調整され、搬入口2及び搬出口3から焼付室1内へ温度低下の原因となる外気の流入が起こらないように、焼付室1内のガス圧の値は外気圧よりも若干高い値とすることが好ましい。
これに加えて、前記前部吹出器20、後部吹出器30の吹出口20b、30bから吹き出されるガスは、搬入口2及び搬出口3において天井側から略鉛直下方へ吐出され、焼付室1のガス圧により前傾斜状あるいは後傾斜状を成す下降流となって搬入口2及び搬出口3から外向きに流れるので、搬入口2及び搬出口3から侵入しようとする外気は搬入口2及び搬出口3の外側へと押し出され、焼付室1への侵入はできなくなる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明で焼付対象となるワークは、塗装された金属に限定するものではなく、ワークの塗料及び材質に適した温度とすることで、プラスチック、セラミック等の各種素材の製品の焼付にも利用することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 焼付室
1a 天井
1b 床
2 搬入口
20 前部吹出器
20a ファン
20b 吹出口
21 前部吸引器
21a 吸引口
22 前部再吹出器
23 前部排出器
3 搬出口
30 後部吹出器
30a ファン
30b 吹出口
31 後部吸引器
31a 吸引口
32 後部再吹出器
33 後部排出器
4 搬送手段
5 ガス供給源
6 熱交換器
7 ガス導入部
8 ガス導出部
9 送風管
9a 噴出口
10 排気口
11 ガス導入管
12 ガス導出管
13 再送管
14 ガス圧調整器
15 排ガス管
16 電気ヒータ
17 排ガス処理器
18 高温電気ヒータ
19 ブロア
40 排出口
A 遮断層
B 遮断層
W ワーク

図1