(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167802
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】容器詰めシャーベット状飲料用組成物、および容器詰めシャーベット状飲料用組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C12G 3/04 20190101AFI20231116BHJP
A23G 9/32 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
C12G3/04
A23G9/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079271
(22)【出願日】2022-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】311007202
【氏名又は名称】アサヒビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 みのり
(72)【発明者】
【氏名】林 宣光
【テーマコード(参考)】
4B014
4B115
【Fターム(参考)】
4B014GB23
4B014GE14
4B014GG07
4B014GG16
4B014GL03
4B014GL10
4B014GP25
4B014GY04
4B115LH11
4B115LP02
(57)【要約】
【課題】シャリシャリ感を得つつも、良好な甘味が得られる容器詰めシャーベット状飲料用組成物を提供する。
【解決手段】本発明の容器詰めシャーベット状飲料用組成物は、アルコール、グリセロール、および糖類を含有し、前記グリセロールの含有量をa(w/v%)とし、前記糖類の含有量をb(w/v%)、前記アルコール濃度をc(v/v%)としたとき、以下の関係式(1)~(3)を満たす。
10≦c≦19 (1) 0.5≦a≦10 (2) 0<b≦a (3)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコール、グリセロール、および糖類を含有し、
前記グリセロールの含有量をa(w/v%)とし、前記糖類の含有量をb(w/v%)、前記アルコール濃度をc(v/v%)としたとき、以下の関係式(1)~(3)を満たす、容器詰めシャーベット状飲料用組成物。
10≦c≦19 (1)
0.5≦a≦10 (2)
0<b≦a (3)
【請求項2】
請求項1に記載の容器詰めシャーベット状飲料用組成物であって、
以下の関係式(4)~(5)をさらに満たす、容器詰めシャーベット状飲料用組成物。
8-0.4(a+b)≦c≦32.5-1.5(a+b) (4)
2≦a+b≦10 (5)
【請求項3】
請求項1または2に記載の容器詰めシャーベット状飲料用組成物であって、
以下の関係式(6)~(8)のいずれか一つを満たす、容器詰めシャーベット状飲料用組成物。
10<c≦13のとき a+b≧6 (6)
13<c≦17のとき 2≦a+b≦10 (7)
17<c≦19のとき a+b≦4 (8)
【請求項4】
請求項1または2に記載の容器詰めシャーベット状飲料用組成物であって、
増粘安定剤を含有しない、容器詰めシャーベット状飲料用組成物。
【請求項5】
請求項1または2に記載の容器詰めシャーベット状飲料用組成物であって、
エキス分が9.0w/v%以下である、容器詰めシャーベット状飲料用組成物。
【請求項6】
請求項1または2に記載の容器詰めシャーベット状飲料用組成物であって、
クエン酸に換算した酸度が0.80g/100ml以下である、容器詰めシャーベット状飲料用組成物。
【請求項7】
請求項1または2に記載の容器詰めシャーベット状飲料用組成物であって、
前記糖類は、果糖、ショ糖、ブドウ糖、グラニュー糖、液糖、乳糖、麦芽糖、および糖アルコール等の中から選ばれる1種または2種以上を含む、容器詰めシャーベット状飲料用組成物。
【請求項8】
請求項1または2に記載の容器詰めシャーベット状飲料用組成物であって、
前記容器が可撓性を有する、容器詰めシャーベット状飲料用組成物。
【請求項9】
アルコール、グリセロール、および糖類を混合し、前記グリセロールの含有量をa(w/v%)とし、前記糖類の含有量をb(w/v%)、前記アルコール濃度をc(v/v%)としたとき、以下の関係式(1)~(3)を満たすようにシャーベット状飲料用組成物を調製する工程と、
10≦c≦19 (1)
0.5≦a≦10 (2)
0<b≦a (3)
前記シャーベット状飲料用組成物を容器詰めする工程と、
を含む、容器詰めシャーベット状飲料用組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器詰めシャーベット状飲料用組成物、および容器詰めシャーベット状飲料用組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飲料用組成物を凍結し、半解凍状態で飲用する飲料の開発が進められている。かかる飲料用組成物の多くは常温で流通され、その後凍結され、飲用に際し凍結状態からもみほぐされる等によって均一な半解凍状態、いわゆるシャーベット状となり、良好な氷冷感やシャリシャリ感等といった嗜好性が得られることで知られる。
【0003】
このような飲料用組成物には、一般に、凍結後もみほぐしやすくするため、キサンタンガム及びローカストビーンガム等の増粘安定剤が用いられている。例えば、特許文献1には、アルコール濃度が3v/v%以上であり、キサンタンガム及びローカストビーンガムの組合せ、キサンタンガム及びκ-カラギナンの組合せ、又は、キサンタンガム及びグアガムの組合せからなる増粘剤のいずれかを合計量で、0.15w/v%以下の含有量とし、特定のBrixが、7~20であるものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、エタノールの凍結温度は-114.5℃であるため、アルコール度数を高くすると凍結することが困難になる。そのため、特許文献1に開示されるような従来技術において、単にアルコール度数を高くすると、凍結過程で増粘安定剤が凝集、沈殿しやすくなったり、糖などの成分の濃度勾配が生じることによって、部分的に氷状に硬く凍結し、もみほぐしが困難になったり、液状化し、べたつき、とろみが生じて、シャーベット感が低減するといった問題があった。
【0006】
本発明者は、かかる問題を解決すべく鋭意検討を行った結果、高アルコール度数のシャーベット状飲料用組成物において、グリセロールを用いることが有効であることを知見した。一方、グリセロールは独特な粘着質な甘味を有するため、単にグリセロールを配合するだけではシャリシャリ感が十分ではなかったり、甘味が後残りする場合があった。そこで、新たに、アルコール濃度と糖類濃度とグリセロール濃度に着目し、これらを高度に制御することによって、シャリシャリ感を得つつも、良好な甘味が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、以下の容器詰めシャーベット状飲料用組成物、および容器詰めシャーベット状飲料用組成物の製造方法が提供される。
【0008】
[1]アルコール、グリセロール、および糖類を含有し、
前記グリセロールの含有量をa(w/v%)とし、前記糖類の含有量をb(w/v%)、前記アルコール濃度をc(v/v%)としたとき、以下の関係式(1)~(3)を満たす、容器詰めシャーベット状飲料用組成物。
10≦c≦19 (1)
0.5≦a≦10 (2)
0<b≦a (3)
[2][1]に記載の容器詰めシャーベット状飲料用組成物であって、
以下の関係式(4)~(5)をさらに満たす、容器詰めシャーベット状飲料用組成物。
8-0.4(a+b)≦c≦32.5-1.5(a+b) (4)
2≦a+b≦10 (5)
[3][1]または[2]に記載の容器詰めシャーベット状飲料用組成物であって、
以下の関係式(6)~(8)のいずれか一つを満たす、容器詰めシャーベット状飲料用組成物。
10<c≦13のとき a+b≧6 (6)
13<c≦17のとき 2≦a+b≦10 (7)
17<c≦19のとき a+b≦4 (8)
[4][1]乃至[3]いずれか一つに記載の容器詰めシャーベット状飲料用組成物であって、
増粘安定剤を含有しない、容器詰めシャーベット状飲料用組成物。
[5][1]乃至[4]いずれか一つに記載の容器詰めシャーベット状飲料用組成物であって、
エキス分が9.0w/v%以下である、容器詰めシャーベット状飲料用組成物。
[6][1]乃至[5]いずれか一つに記載の容器詰めシャーベット状飲料用組成物であって、
クエン酸に換算した酸度が0.80g/100ml以下である、容器詰めシャーベット状飲料用組成物。
[7][1]乃至[6]いずれか一つに記載の容器詰めシャーベット状飲料用組成物であって、
前記糖類は、果糖、ショ糖、ブドウ糖、グラニュー糖、液糖、乳糖、麦芽糖、および糖アルコール等の中から選ばれる1種または2種以上を含む、容器詰めシャーベット状飲料用組成物。
[8][1]乃至[7]いずれか一つに記載の容器詰めシャーベット状飲料用組成物であって、
前記容器が可撓性を有する、容器詰めシャーベット状飲料用組成物。
[9]アルコール、グリセロール、および糖類を混合し、前記グリセロールの含有量をa(w/v%)とし、前記糖類の含有量をb(w/v%)、前記アルコール濃度をc(v/v%)としたとき、以下の関係式(1)~(3)を満たすようにシャーベット状飲料用組成物を調製する工程と、
10≦c≦19 (1)
0.5≦a≦10 (2)
0<b≦a (3)
前記シャーベット状飲料用組成物を容器詰めする工程と、
を含む、容器詰めシャーベット状飲料用組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シャリシャリ感を得つつも、良好な甘味が得られる容器詰めシャーベット状飲料用組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例および比較例の総合評価の結果をプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。なお、本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下のことを表す。
【0012】
本実施形態において「シャリシャリ感」とは、容器詰めシャーベット状飲料用組成物を凍結した後、容器の外側から手でもみほぐすことにより、半解凍状態が均一に得られ、適度な硬さを保持しつつも、シャーベット状の滑らかな状態が得られることを意図する。また、もみほぐしに際し、シャリシャリといった感触がえられる。
本実施形態において「良好な甘味」とは、容器詰めシャーベット状飲料用組成物を凍結した後、容器の外側から手でもみほぐしてから飲用した際、グリセロール特有のべたつきのある甘味がなく、後に残らない甘味を意図する。
【0013】
<容器詰めシャーベット状飲料用組成物>
本実施形態の容器詰めシャーベット状飲料用組成物(以下、単に「飲料用組成物」とも称して説明する)は、アルコール、グリセロール、および糖類を含有し、前記グリセロールの含有量をa(w/v%)とし、前記糖類の含有量をb(w/v%)、前記アルコール濃度をc(v/v%)としたとき、以下の関係式(1)~(3)を満たす。
10≦c≦19 (1)
0.5≦a≦10 (2)
0<b≦a (3)
【0014】
本実施形態の飲料用組成物によれば、上記(1)~(3)の関係式を満たすことにより、当該飲料用組成物を凍結した後、容器の外側から手でもみほぐすことができるとともに、シャーベット状のシャリシャリ感が得られるようになる。また、もみほぐされた当該飲料用組成物を飲用した際には、グリセロール特有のべたつきのある甘味が低減され、良好な甘味が得られる。かかるメカニズムの詳細は明らかではないが、高アルコール度数であることを前提として、特定量のグリセロールを含むことで、グリセロールが有する不凍作用により氷のように硬く凍結してもみほぐしができなくなることを抑制できると推測される。さらに、グリセロールに糖類を組み合わせることで、グリコール特有の甘味を適度にマスキングし、良好な甘味が得られやすくなると推測される。
【0015】
本実施形態において、糖類の含有量b(w/v%)は、a(w/v%)以下であればよいが、好ましくは0.1~20(w/v%)であり、より好ましくは0.5~10(w/v%)である。
【0016】
本実施形態の飲料用組成物は、例えば、常温で流通され、その後、消費者等が冷凍庫に保存する等して凍結され、飲用する際に、容器の外側からもみほぐされることが好ましい。本実施形態の飲料用組成物は、ストレートに飲用されてもよく、水や炭酸水等で希釈されてから飲用されてもよい。また、本実施形態の飲料用組成物は、氷冷状態で飲用されることにより、嗜好性の高い甘味を呈することができる。
【0017】
本実施形態の飲料用組成物は、さらに、以下の関係式(4)~(5)をさらに満たすことが好ましい。
8-0.4(a+b)≦c≦32.5-1.5(a+b) (4)
2≦a+b≦10 (5)
これにより、シャリシャリ感と良好な甘味とのバランスを向上できる。また、シャーベット状の好ましい食感が得られやすくなる。
【0018】
本実施形態の飲料用組成物は、さらに、以下の関係式(6)~(8)をさらに満たすことが好ましい。
10<c≦13のとき a+b≧6 (6)
13<c≦17のとき 2≦a+b≦10 (7)
17<c≦19のとき a+b≦4 (8)
すなわち、本実施形態の飲料用組成物は、アルコール濃度c(v/v%)に応じて、グリセロールと糖類の合計含有量(a+b)を制御することで、シャリシャリ感と良好な甘味とのバランスをより高水準で実現しつつ、シャーベット状の好ましい食感を向上できる。
【0019】
[アルコール]
本実施形態においてアルコールとは、特に断りがない限りエチルアルコール(エタノール)のことをいう。
アルコールは、特に制限されず、通常酒類に用いられるものを使用することができるが、例えば、醸造用アルコール;ウオッカ、ラム、テキーラ、ジン、アクアビット、およびコルン等のスピリッツ類;リキュール類、ウイスキー、ブランデー、焼酎等の中から選ばれる1種または2種以上が挙げられる。
【0020】
なお、アルコール度数は、例えば、国税庁所定分析法(平19国税庁訓令第6号、平成19年6月22日改訂)に記載の方法によって測定することができる。
【0021】
[グリセロール]
グリセロールは、1,2,3-プロパントリオール、グリセロール、またはグリセリン等と称される。本実施形態においてグリセロールは、不凍作用を有し、良好なもみほぐし感を付与するために用いられる。また、糖類と併用されることで、良好な甘味を呈することができる。
【0022】
[糖類]
糖類としては、例えば、果糖、ショ糖、ブドウ糖、グラニュー糖、液糖、乳糖、麦芽糖、および糖アルコール等の中から選ばれる1種または2種以上が挙げられる。なかでも液糖を含むことが好ましい。
上記液糖としては、特に限定されないが、例えば、異性化糖、転化糖、水あめ、蜂蜜、およびオリゴ糖などの中から選ばれる1種または2種以上が挙げられ、より好ましくは、果糖ぶどう糖液糖、ぶどう糖果糖液糖、および高果糖液糖が挙げられる。なお、本実施形態の飲料組成物は、高甘味度甘味料を含まないものとしてもよい。
【0023】
[クエン酸酸度]
本実施形態の飲料用組成物は、過度な酸味を抑制し、飲料としての飲みやすさ、良好な食感と甘味のバランスを得る点から、クエン酸酸度が0.80g/100ml以下であることが好ましく、0.75g/100ml以下であることがより好ましい。
一方、クエン酸酸度は、適度な酸味による飲みやすさ等を得る点から、0.20g/100ml以上であることが好ましく、0.35g/100ml以上であることがより好ましい。
【0024】
クエン酸酸度は、100ml中に含まれる酸量をクエン酸に換算した場合のグラム数(無水クエン酸g/100ml)で表すことができる。酸度もまた、JAS規格の酸度測定法で定められた方法、具体的には0.1mol/L水酸化ナトリウム標準液をアルカリ溶液として使用した中和滴定法(定量式)により測定できる。
【0025】
[柑橘風味]
本実施形態の飲料用組成物は、氷冷感を向上させ、良好な甘味およびおいしさを向上する点から、柑橘類風味を呈することが好ましい。柑橘類風味は、後述する柑橘類果汁や柑橘類フレーバーなどを用いることによって得られる。
また、柑橘類の具体例としては、柑橘類果汁と同様の柑橘類が挙げられる。なかでも、氷冷感と良好な甘味とのバランスが良好な点から、レモン風味であることが好ましい。
【0026】
[成分]
本実施形態の飲料用組成物は、本発明の効果が得られる限りにおいて、グリセロール、糖類以外の種々の成分を含んでもよく、例えば、果汁、酸味料、香料、pH調整剤、各種栄養成分、着色料、希釈剤、酸化防止剤、および増粘安定剤等を含んでもよい。
【0027】
上記の果汁としては、例えば、オレンジ果汁、ミカン果汁、マンダリン果汁、グレープフルーツ果汁、レモン果汁、ライム果汁等の柑橘類果汁;ブドウ果汁、リンゴ果汁、モモ果汁、イチゴ果汁、バナナ果汁、およびマンゴー果汁等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
なかでも、氷冷感との相性がよく、よりおいしく飲用する点から、柑橘類果汁を含むことが好ましく、レモン果汁であることがより好ましい。
【0028】
なお、果汁とは、果物・果実を破砕して搾汁したり、あるいは裏ごししたりする等して得られる液体成分をいう。また、果汁には、当該液体成分を濃縮したものや、これらの希釈還元物も含まれてもよく、パルプ分を含むもの、または、ろ過や遠心分離等の処理によりパルプ分を除去したものあってもよい。
また、果汁は、ストレート果汁、濃縮果汁、濃縮還元果汁等いずれであってもよい。
【0029】
上記の酸味料としては、例えば、クエン酸、アジピン酸、グルコン酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、リンゴ酸、フィチン酸、アスコルビン酸、リン酸またはそれらの塩類等の中から選ばれる1種または2種以上が挙げられる。
【0030】
上記の香料としては、天然香料および合成香料が挙げられ、好ましくは、柑橘類果実風味を呈する香料、その他果実風味を呈する香料が挙げられる。柑橘類としては、上述した柑橘類を想起させるものであれば特に限定されない。
【0031】
上記の増粘安定剤としては、アラビアガム、キサンタンガム、タマリンドガム、グアーガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、カラヤガム、ガティガム、タラガム、寒天、およびゼラチンの中から選ばれる1種または2種以上が挙げられる。
本実施形態において、増粘安定剤の含有量は、0.02w/v%未満であることが好ましく、0.01w/v%以下であることがより好ましく、飲料用組成物は、増粘安定剤を含有しないことがさらに好ましい。これにより、高アルコール度数であってもシャーベット状の飲料用組成物が得られやすくなり、シャリシャリ感と良好な甘味のバランスを向上できる。
【0032】
[エキス分]
本実施形態の飲料用組成物は、良好な食感と甘味のバランスを得る点から、エキス分が9.0w/v%以下であることが好ましく、8.5w/v%以下であることがより好ましく、7.0w/v%以下であることがさらに好ましい。
一方、エキス分の下限値は特に限定されないが、飲料の良好な香味を保持する点から、0.5w/v%以上であることが好ましく、1.0w/v%以上であることがより好ましい。
エキス分とは、温度十五度の時において原容量百立方センチメートル中に含有する不揮発性成分のグラム数をいう。
なお、アルコール飲料のエキス分は、例えば、日本国の国税庁所定分析法に準拠して比重(日本酒度)及びアルコール度を測定して算出することができる。
【0033】
[容器]
本実施形態の飲料用組成物は、加熱殺菌され、容器に詰められ密閉された状態で流通、販売される。容器詰めされることで、保存・流通がしやすくなる。
容器としては、飲料を密閉できるものであれば、その材料、形状等は特に限定されないが、例えば、以下のものを用いることができる。
【0034】
容器を構成する材料としては、容器の外側からもみほぐしをしやすくする点、凍結による膨張・変形に追従できる点などから、可撓性を有する材料であることが好ましい。可撓性を有する材料としては、例えば、紙、合成樹脂フィルム(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等)、およびアルミ等の単体もしくはこれらの複合材料または積層材料等が挙げられる。
また、容器の形状としては、たとえば、ボトル、カップ、および袋等が挙げられるが、取扱い性などの点から、小袋(パウチ)状、袋状であることが好ましい。また、容器は蓋つきであってもよく、蓋無しの使い切りタイプであってもよい。蓋つきの場合は、ねじ式、シール式であってもよく、キャップ状、栓状の蓋であってもよい。
なかでも、もみほぐしやすさ、凍結による膨張・変形に対する追従性および強度、取扱性等の観点から、容器は合成樹脂およびアルミ箔を備えた袋状であることが好ましい。
【0035】
容器の容量としては、特に限定されないが、もみほぐしやすさ、取扱い性等の点から、好ましくは100mL~800mL、より好ましくは150mL~500mLである。また、凍結後シャーベット状飲料として飲み切る点からは、100mL~300mLがより好ましい。
【0036】
容器詰めされた飲料用組成物は、必要に応じて、加熱滅菌処理される。加熱殺菌の方法は特に限定されず、通常のプレート式殺菌、チューブラー式殺菌、レトルト殺菌等の方法を採用することができる。
【0037】
<容器詰めシャーベット状飲料用組成物の製造方法>
本実施形態の容器詰めシャーベット状飲料用組成物の製造方法は、
アルコール、グリセロール、および糖類を混合し、前記グリセロールの含有量をa(w/v%)とし、前記糖類の含有量をb(w/v%)、前記アルコール濃度をc(v/v%)としたとき、以下の関係式(1)~(3)を満たすようにシャーベット状飲料用組成物を調製する工程と、
10≦c≦19 (1)
0.5≦a≦10 (2)
0<b≦a (3)
前記シャーベット状飲料用組成物を容器詰めする工程と、を含む。
これにより、シャリシャリ感を得つつも、良好な甘味が得られる容器詰めシャーベット状飲料用組成物が得られる。
混合方法は特に限定されず公知の方法を用いることができる。また、容器詰め方法も特に限定されず公知の方法を用いることができる。
なお、飲料用組成物に含まれる各成分およびその含有量等は上記飲料用組成物と同様である。
【0038】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0039】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0040】
(1)容器詰め飲料用組成物の準備
飲料用組成物の原料として、醸造用アルコール、果糖ぶどう糖液糖、クエン酸(無水)、クエン酸三ナトリウム、グリセロール、香料(柑橘系フレーバー)、増粘安定剤(キサンタンガム)を準備した。
表1~4に記載の値となるように各原料を混合して飲料用組成物を調製し、その後、150mlを可撓性を有するパウチ袋5袋に充填して密封し、容器詰めした。
【0041】
(2)飲料用組成物の物性
・酸度:飲料用組成物100ml中に含まれる酸量をクエン酸に換算した場合のグラム数(無水クエン酸g/100ml)をJAS規格の酸度測定法で定められた方法に基づき測定し、算出した。
【0042】
(3)官能評価
(3-1)容器詰め飲料用組成物を-24℃で24時間保存し、凍結させた後、訓練した識別能力のある技術者による官能試験を実施した。
具体的には、5名の技術者が各容器詰め飲料用組成物を容器の外側から手でもみほぐし、「もみほぐし感」について以下の基準にしたがい5段階評価を行い、その平均値を算出した。続けて、容器から飲料用組成物を取り出し、炭酸水で2倍に希釈して飲用し、「食感」、「甘味の質」について以下の基準にしたがい5段階評価を行い、その平均値を算出した。さらに、「もみほぐし感」、「食感」、「甘味の質」のバランスについて、以下の評価基準にしたがい2段階で評価し、「総合評価」とした。
【0043】
・評価基準「もみほぐし感」
5:完全に凍結していて、もみほぐし困難(もみほぐし感が得られない)
4:シャリシャリとした凍結でもみほぐし可能(良好なもみほぐし感がある)
3:半凍結状態、押してもシャリッとした音がしない(もみほぐし感がある)
2:わずかにのみ凍結しており、液体に近い(ほとんどもみほぐし感がない)
1:未凍結の液体状態(まったくもみほぐし感がない)
【0044】
・評価基準「食感」(シャリシャリ感の有無)
5:硬すぎて食べにくい(シャリシャリ感がえられなかった)
4:シャリシャリとした食感があった
3:ややシャリシャリ感があった
2:液体に近い状態でほとんど食感がない(シャリシャリ感がえられなかった)
1:液体状態で食感がない(シャリシャリ感がえられなかった)
【0045】
・評価基準「甘味の質」
5:後に残りべたつく甘味
4:やや後に残りべたつく甘味
3:わずかに後に残りべたつく甘味
2:ほとんど後に残らない甘味
1:後に残らない甘味
【0046】
・評価基準「総合評価」
良:「もみほぐし感」、「食感」、「甘味の質」の評点が全て3.0以上5.0未満
不良:「もみほぐし感」、「食感」、「甘味の質」の評点のうち少なくともいずれか一つが3.0未満、または5.0以上
【0047】
(3-2)総合評価の結果
表2~7の「総合評価」について、横軸をアルコール濃度(c)とし、縦軸をグリセロールと糖類の合計含有量(a+b)とし、「総合評価」のうち少なくとも一つ以上が「良」である点を「○」とし、「総合評価」が全て「不良」である点を「×」としてプロットした結果を
図1のグラフに表した。
図1のグラフ中、2本の直線は、式(4)中「8-0.4(a+b)≦c」と「c≦32.5-1.5(a+b)」をそれぞれ示す。
【0048】
(4)実施例および比較例
[実験1]増粘安定剤の有無
表1に示す値となるように、各原料を混合し、上記(1)の通りにして容器詰め飲料用組成物を得た。得られた容器詰め飲料用組成物について、上記(2)~(3)の測定および官能評価を行った。結果を表1に示す。
【0049】
【0050】
[実験2]グリセロール濃度の変動
表2~3に示す値となるように、各原料を混合し、上記(1)の通りにして容器詰め飲料用組成物を得た。得られた容器詰め飲料用組成物について、上記(2)~(3)の測定および官能評価を行った。結果を表2~3にそれぞれ示す。
【0051】
【0052】
【0053】
[実験3]アルコール濃度と、グリセロール濃度と糖類濃度の和との関係
表4~7に示す値となるように、各原料を混合し、上記(1)の通りにして容器詰め飲料用組成物を得た。得られた容器詰め飲料用組成物について、上記(2)~(3)の測定および官能評価を行った。結果を表4~7にそれぞれ示す。
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】