(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167810
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】車両用のドアロック装置
(51)【国際特許分類】
E05B 79/18 20140101AFI20231116BHJP
E05B 81/72 20140101ALI20231116BHJP
【FI】
E05B79/18
E05B81/72
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079282
(22)【出願日】2022-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野々村 直人
【テーマコード(参考)】
2E250
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250CC30
2E250HH01
2E250JJ09
2E250JJ10
2E250KK02
2E250LL01
2E250MM03
2E250PP02
2E250QQ08
2E250RR13
2E250SS08
2E250VV01
(57)【要約】
【課題】キースイッチリンクのスムーズな移動を確保できる車両用のドアロック装置を提供すること。
【解決手段】車両用のドアロック装置10は、互いに平行でかつ対向する2つのガイド面237を備えるハウジング23と、キーシリンダ135の操作に応じて中立位置からアンロック位置およびロック位置に移動可能に構成される外部キーレバー32および内部キーレバー33と、一端部が内部キーレバー33に対して回転可能に連結されており、他端部に設けられる摺動部352が2つのガイド面237どうしの間に収容され、キーレバーの中立位置から前記アンロック位置およびロック位置への移動に伴って移動することによってキースイッチ31の状態を切り替えるキースイッチリンク35とを備え、キースイッチリンク35の摺動部352は略円形である。
【選択図】
図7A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられている車両ドアの開放を許容しないラッチ状態と前記車両ドアの開放を許容するアンラッチ状態とに切り替え可能に構成されるラッチ機構と、
前記第一方向に延伸し前記第一方向とは直角な第二方向に離間しているとともに互いに対向している2つのガイド面を備える筐体と、
前記筐体に対して第一位置と第二位置とに回転移動可能に支持され、前記第一位置に位置すると前記ラッチ機構が前記ラッチ状態から前記アンラッチ状態へ切り替わることを規制し、前記第二位置に位置すると前記ラッチ機構が前記ラッチ状態から前記アンラッチ状態に切り替わることを許容する第一部材と、
前記筐体に対して移動可能に支持され、第三位置に向かって弾性付勢されるとともに、手動操作によって前記第三位置から第四位置に移動することにより前記第二位置に位置する前記第一部材を前記第一位置に移動させ、手動操作によって前記第三位置から第五位置に移動することによって前記第一位置に位置する前記第一部材を前記第二位置に移動させる第二部材と、
前記第二部材が手動操作されたことを検出するための電気的なスイッチであってONとOFFとの状態を切り替え可能なキースイッチと、
一端部が前記第二部材に対して回転可能に連結され、他端部には前記2つのガイド面どうしの間に前記第一方向に移動可能に挿入されることよって前記筐体に対して第一方向に移動可能にガイドされる摺動部が設けられ、前記第二部材の前記第三位置から前記第四位置への移動、および前記第三位置から前記第五位置への移動に連動して前記筐体に対して移動することにより前記キースイッチのONとOFFとを切り替えるように構成される第三部材と、
を備え、
前記第三部材の前記摺動部は、前記第一方向および前記第二方向に直角な第三方向視において略円形である、
車両用のドアロック装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用のドアロック装置であって、
前記キースイッチは、前記第三部材に前記第三方向に重畳して配置される
車両用のドアロック装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用のドアロック装置であって、
前記キースイッチは、前記筐体とは別体の部材である支持部材に固定されており、
前記支持部材は、前記第三部材に前記第三方向に重畳して配置され、
前記第三部材は、前記支持部材により前記第三方向の移動が規制される、
車両用のドアロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のドアロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、キーシリンダの操作によってロック状態とアンロック状態とを切り替え可能に構成される車両用のドアロック装置が知られている。例えば、特許文献1には、キーシリンダの操作に連動して回転移動するレバー部材(特許文献1においては「内部キーレバー」と記される)、レバー部材の回転移動に連動してロック位置とアンロック位置とに移動可能なロックレバーおよびオープンリンクとを備える。そして、ロックレバーおよびオープンリンクがアンロック位置に位置するとアンロック状態になり、ロック位置に位置するとロック状態になるように構成される。
【0003】
さらに、特許文献1に記載の車両用のドアロック装置は、使用者によるロック状態とアンロック状態との切替操作を検出可能に構成される。具体的には、特許文献1に記載のドアロック装置は、レバー部材の移動に連動して上下方向に移動する検出用の部材(特許文献1においては「被検出リンク」と記される)と、この検出用の部材の移動によってONとOFFとが切り替わるように構成されるスイッチ(特許文献1においては「検出スイッチ」と記される)とを備える。そして、スイッチのONとOFFとの切替わりを検出することによって、レバー部材の移動(すなわち、使用者によるロック状態とアンロック状態との切替操作)を検出するように構成される。
【0004】
具体的には、特許文献1に記載の車両用のドアロック装置の前記検出用の部材は、上下方向に長い長尺棒状の形状を備える。そして、上端部は、筐体に設けられている上下方向に延伸する溝に嵌まり込んでいる。これにより、検出用の部材は、筐体に対して上下方向に移動可能にガイドされる。一方、検出用の部材の下端部には車両の前後方向に長い長孔が設けられており、レバー部材に設けられている突起部がこの長孔に挿入されている。これにより、レバー部材が回転すると検出用の部材が上下方向に移動し、検出用の部材の上下方向の移動によりスイッチのONとOFFとが切り替わる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【0006】
(発明が解決しようとする課題)
特許文献1に記載の構成では、検出用の部材がその上端部を中心として振り子状に揺動することがある。そして、検出用の部材がこのように揺動すると、検出用の部材の上端部と筐体に設けられているガイド溝の内周面との接触状態が変化し(検出用の部材の上端部とガイド溝の内周面との相対角度が変化し)、その結果、検出用の部材のスムーズな上下動が妨げられるおそれがある。また、検出用の部材が前記のように揺動すると、検出用の部材の長孔の内周面にレバー部材の突起部が衝突して接触音(打音)が発生するおそれがある。このような接触音は、使用者に対して異音と感じられるおそれがある。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的の一つは、使用者によるロック状態とアンロック状態との切替操作を検出するための部材のスムーズな移動を確保できる車両用のドアロック装置を提供することである。
【0008】
(課題を解決するための手段)
上記目的を達成するため、本発明に係るドアロック装置は、
車両に設けられている車両ドアの開放を許容しないラッチ状態と前記車両ドアの開放を許容するアンラッチ状態とに切り替え可能に構成されるラッチ機構と、
前記第一方向に延伸し前記第一方向とは直角な第二方向に離間しているとともに互いに対向している2つのガイド面を備える筐体と、
前記筐体に対して第一位置と第二位置とに回転移動可能に支持され、前記第一位置に位置すると前記ラッチ機構が前記ラッチ状態から前記アンラッチ状態へ切り替わることを規制し、前記第二位置に位置すると前記ラッチ機構が前記ラッチ状態から前記アンラッチ状態に切り替わることを許容する第一部材と、
前記筐体に対して移動可能に支持され、第三位置に向かって弾性付勢されるとともに、手動操作によって前記第三位置から第四位置に移動することにより前記第二位置に位置する前記第一部材を前記第一位置に移動させ、手動操作によって前記第三位置から第五位置に移動することによって前記第一位置に位置する前記第一部材を前記第二位置に移動させる第二部材と、
前記第二部材が手動操作されたことを検出するための電気的なスイッチであってONとOFFとの状態を切り替え可能なキースイッチと、
一端部が前記第二部材に対して回転可能に連結され、他端部には前記2つのガイド面どうしの間に前記第一方向に移動可能に挿入されることよって前記筐体に対して第一方向に移動可能にガイドされる摺動部が設けられ、前記第二部材の前記第三位置から前記第四位置への移動、および前記第三位置から前記第五位置への移動に連動して前記筐体に対して移動することにより前記キースイッチのONとOFFとを切り替えるように構成される第三部材と、
を備え、
前記第三部材の前記摺動部は、前記第一方向および前記第二方向に直角な第三方向視において略円形である。
【0009】
本発明のように、第三部材(使用者によるロック状態とアンロック状態との切替操作を検出するための部材)の摺動部が略円形であると、第三部材が摺動部を中心として振り子状に揺動した場合であっても、摺動部と2つのガイド面との接触状態が変化しない。したがって、第三部材が前記のように揺動しても、第三部材の筐体に対する第一方向のスムーズな移動が妨げられない。また、本発明によれば、第三部材の下端部は第二部材に回転可能に連結されているため、車両用のドアロック装置に振動などが加わっても、第三部材と第二部材との間で接触音(打音、衝突音)が発生しないようにできる。
【0010】
前記キースイッチは、前記第三部材に前記第三方向に重畳して配置される、
という構成が適用できる。
【0011】
第三部材とキースイッチとが第三方向に重畳しない構成であると、第三部材とキースイッチとを第一方向または第二方向に並べて配置しなければならず、その結果、第三部材とキースイッチの配置スペースの第一方向寸法または第二方向寸法(第三方向視の寸法)が大きくなる。これに対して前記構成によれば、第三部材とキースイッチとの第三方向視における配置スペースを小さくできる。したがって、車両用のドアロック装置の小型化を図ること(または大型化を防止もしくは抑制すること)ができる。
【0012】
前記キースイッチは、前記筐体とは別体の部材である支持部材に固定されており、
前記支持部材は、前記第三部材に前記第三方向に重畳して配置され、
前記第三部材は、前記支持部材により前記第三方向の移動が規制される、
という構成が適用できる。
【0013】
このような構成によれば、第三部材の第三方向の移動を規制するための専用の部品を追加することなく、第三部材の第三方向の移動を規制できる。したがって、部品点数の増加を防止または抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】
図2は、車両用のドアロック装置の構成を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、車両用のドアロック装置の構成を示す分解斜視図である。
【
図4】
図4は、アクチュエータボディの筐体の内部に配置される各部材を示す斜視図である。
【
図5A】
図5Aは、外部キーレバー、内部キーレバー、アクティブレバー、アクティブレバーリンク、キースイッチリンク、およびキースイッチの構成および動作を示す図である。
【
図5B】
図5Bは、外部キーレバー、内部キーレバー、アクティブレバー、アクティブレバーリンク、キースイッチリンク、およびキースイッチの構成および動作を示す図である。
【
図6A】
図6Aは、外部キーレバー、内部キーレバー、アクティブレバー、アクティブレバーリンク、キースイッチリンク、およびキースイッチの構成および動作を示す図である。
【
図6B】
図6Bは、外部キーレバー、内部キーレバー、アクティブレバー、アクティブレバーリンク、キースイッチリンク、およびキースイッチの構成および動作を示す図である。
【
図7A】
図7Aは、キースイッチリンクの構成を示す斜視図である。
【
図7B】
図7Bは、キースイッチリンク、ガイド部、キースイッチ、および支持基板の構成を示す斜視図である。
【
図7C】
図7Cは、キースイッチリンクおよびキースイッチの動作を示す斜視図である。
【
図7D】
図7Dは、キースイッチリンクおよびキースイッチの動作を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。以下の説明において、車両用のドアロック装置の各方向は、車両(車体)の各方向を基準とする。各図においては、車両の前側を矢印Frで示し、車両の後側を矢印Rrで示し、車両の上方を矢印Upで示し、車両の下方を矢印Dwで示し、車両の車幅方向(左右方向)外側を矢印Outで示し、車両の車幅方向内側を矢印Inで示す。上下方向が本発明の第一方向の例であり、前後方向が本発明の第二方向の例であり、車幅方向が本発明の第三方向の例である。
【0016】
(車両ドア)
図1Aは、ドアロック装置10が適用された車両ドア11の側面図であり、車外側から見た図である。
図1Bは、ドアロック装置10が適用された車両ドア11の後端部近傍の断面図であり、
図1AのIB-IB矢視断面図である。
【0017】
車両ドア11は、車体12に対して開閉可能に取り付けられている。具体的には、車両ドア11は、その前端部が車体12に対して回転可能に連結されており、車体12に対して回転することにより閉位置と開位置とに移動可能である。閉位置は、車両ドア11が車体12に設けられている乗降用の開口部を塞ぐ位置であり、開位置は前記開口部を塞がない位置である。車両ドア11は、その下半部を構成するドア本体部13と、その上半部に設けられているドアサッシュ14とを備える。ドア本体部13は、アウターパネル131、インナーパネル132、およびトリム133を備える。アウターパネル131は、車両ドア11の外側面を構成する。インナーパネル132は、アウターパネル131の車内側に位置しており、アウターパネル131に固定されている。トリム133は、インナーパネル132の車内側に固定されており、ドア本体部13の内側面を構成する。
【0018】
アウターパネル131の後端部近傍には、アウトサイドドアハンドル134およびキーシリンダ135が取り付けられている。アウトサイドドアハンドル134は、車両の使用者が手動操作可能な操作部材であり、車両ドア11に対して回転することにより初期位置と動作位置とに移動可能である。アウトサイドドアハンドル134は、図略の付勢部材により初期位置に向かって弾性付勢されており、使用者により操作されていない状態(外力が掛かっていない状態)では、付勢部材の付勢力によって初期位置に保持される。
【0019】
キーシリンダ135は、内筒(プラグと称されることもある)を備える。内筒は、中立位置に位置している状態で適合するキーを挿抜可能に構成されているとともに、適合するキーが挿入された状態で中立位置からアンロック位置およびロック位置に回転移動可能に構成される。アンロック位置は、中立位置から所定の方向に所定の角度回転した位置であり、ロック位置は中立位置から前記所定の方向とは反対方向に所定の角度回転した位置である。以下の説明では、挿入したキーを回転させることにより内筒を中立位置からアンロック位置に回転させる手動操作を「アンロック操作」と記し、内筒を中立位置からロック位置に回転させる手動操作を「ロック操作」と記す。内筒は、付勢部材によって中立位置に向けて常時弾性付勢されており、アンロック操作およびロック操作されていない状態(外力が掛かっていない状態)では中立位置に保持される。
【0020】
インナーパネル132には、インサイドドアハンドル136およびロックノブ137が取り付けられている。インサイドドアハンドル136は、車両の使用者が手動操作可能な操作部材であり、車両ドア11に対して回転することにより初期位置と動作位置とに回転移動可能に構成される。インサイドドアハンドル136は、図略の付勢部材によって初期位置に向けて弾性付勢されており、使用者により操作されていない状態(外力が掛かっていない状態)では初期位置に保持される。
【0021】
ロックノブ137は、使用者により手動操作可能な操作部材である。ロックノブ137は、例えばトリム133の上端近傍またはインサイドドアハンドル136の近傍に位置しており、例えば車両ドア11に対して上下方向に移動することにより、または車両ドア11に回転することにより、ロック位置とアンロック位置とに移動可能に構成されている。
【0022】
(ドアロック装置)
ドアロック装置10は、
図1Bに示すように、車両ドア11の内部空間(すなわち、アウターパネル131とインナーパネル132とに囲まれる空間)に配置されている。そして、ドアロック装置10は、インナーパネル132(すなわち車両ドア11)に固定されている。なお、ドアロック装置10の一部は、車両ドア11の後端部において車両ドア11の外部に露出している。
【0023】
図2はドアロック装置10の外観斜視図であり、
図3はドアロック装置10の分解斜視図である。
図2および
図3に示すように、ドアロック装置10は、噛合いボディ21とアクチュエータボディ22とを備える。
【0024】
噛合いボディ21は、ベース部材211、ベースプレート212、図略のサブプレート、ラッチ213、図略のポール、図略のリフトレバー、図略のラッチ復帰バネ、および図略のポール復帰バネを備える。ベース部材211、ベースプレート212、およびサブプレートは、噛合いボディ21の筐体である。ラッチ213、ポール、リフトレバー、ラッチ復帰バネ、およびポール復帰バネによりラッチ機構が構成される。ラッチ機構は、アンラッチ状態とラッチ状態とに切り替え可能に構成される。アンラッチ状態は、車両ドア11の閉位置から開位置への移動を許容する状態である。ラッチ状態は、車両ドア11の閉位置から開位置への移動を許容しない(移動を規制する)状態である。本実施形態では、ラッチ機構は、リフトレバーがラッチ係合位置に位置するとラッチ状態に保持され、ラッチ状態である場合にリフトレバーがラッチ係合位置からラッチ不係合位置に移動するとラッチ状態からアンラッチ状態に切り替わるように構成される。
【0025】
アクチュエータボディ22は、ハウジング23、カバー24、防水カバー25、オープンレバー26、オープンレバー復帰バネ27、オープンリンク28、アクティブレバー29、ターミナルサブアッシー30、外部キーレバー32、内部キーレバー33、アクティブレバーリンク34、キースイッチリンク35、アクチュエータ36、およびホイールギア37を備える。ターミナルサブアッシー30は、キースイッチ31および支持基板301を備える。
【0026】
アクチュエータボディ22は、車両の使用者等によるアウトサイドドアハンドル134およびインサイドドアハンドル136の少なくとも一方の操作(初期位置から作動位置への移動)によって、ラッチ状態にあるラッチ機構をアンラッチ状態に切替えることができるように構成される。
【0027】
ハウジング23およびカバー24はアクチュエータボディ22の筐体を形成する部材である。ハウジング23およびカバー24は樹脂材料により形成される。ハウジング23の内周面(本実施形態では車幅方向内側の面)には、キーレバー支持孔231、アクティブレバー支持軸232、ホイールギア支持軸233、および支持ボス234が設けられる。キーレバー支持孔231は、外部キーレバー32を回転可能に挿通するための孔であり、車幅方向に貫通する丸孔である。アクティブレバー支持軸232は、アクティブレバー29を回転可能に支持するための軸であり、車幅方向内側に向かって突出する円筒状の軸である。ホイールギア支持軸233は、ホイールギア37を回転可能に支持するための軸であり、車幅方向内側に向かって突出する円筒状の軸である。複数の支持ボス234は、ターミナルサブアッシー30を支持するためのボスであり、車幅方向内側に突出する柱状のボスである。なお、キーレバー支持孔231はハウジング23の下端部近傍に設けられ、複数の支持ボス234はハウジング23の上端部近傍(少なくともキーレバー支持孔231よりも上方)に設けられる。オープンレバー支持軸235は、オープンレバー26を回転可能に支持するための軸であり、ハウジング23の後側の外面に設けられ後側(ハウジング23の外部)に突出する円筒状の軸である。
【0028】
さらに、ハウジング23の内周面には、後述するキースイッチリンク35の摺動部352をガイドするための2本のガイド部236が設けられる(
図7A~
図7D参照)。2本のガイド部236は、略上下方向に延伸し前後方向に所定の距離をおいて離間する互いに平行な突起状の部分である。2本のガイド部236の互いに対向する面であるガイド面237が本発明の2つのガイド面の例である。
【0029】
防水カバー25は、ハウジング23およびカバー24の上方から内部に水等(例えば雨水)が浸入することを防止するための部材である。防水カバー25は、ハウジング23およびカバー24の上部を覆うように取り付けられる。
【0030】
オープンレバー26は、ハウジング23に対してオープンレバー支持軸235を介して回転可能に支持されており、回転することによって初期位置と作動位置とに移動可能である。オープンレバー26は、アウトサイドドアハンドル134とロッドやワイヤーなどを介して連結されている。そして、オープンレバー26は、アウトサイドドアハンドル134が初期位置から作動位置に移動すると、初期位置から作動位置に移動するように構成される。また、オープンレバー26は、インサイドドアハンドル136が操作された場合(初期位置から作動位置に移動した場合)にも、インサイドドアハンドル136の移動に連動して初期位置から作動位置に移動するように構成される。なお、オープンレバー26は、オープンレバー復帰バネ27によって初期位置に向かって常時弾性付勢されており、オープンレバー復帰バネ27による付勢力以外の外力が掛かっていない場合(すなわち、アウトサイドドアハンドル134とインサイドドアハンドル136が操作されていない場合)には、初期位置に保持される。
【0031】
オープンリンク28は、オープンレバー26に対して回転可能に支持されており、オープンレバー26に対して回転することによりアンロック位置とロック位置とに移動可能である。また、オープンリンク28は、アンロック位置とロック位置のそれぞれに位置する状態で、オープンレバー26とともに初期位置と作動位置とに移動するように構成される。
【0032】
オープンリンク28のアンロック位置は、オープンレバー26とともに初期位置から作動位置に移動した場合に、オープンリンク28がリフトレバーに当接してリフトレバーを押し、リフトレバー(およびポール)をラッチ係合位置からラッチ不係合位置に移動させることができる位置である。オープンリンク28のロック位置は、オープンレバー26とともに初期位置から作動位置に移動した場合に、オープンリンク28がリフトレバーに当接しない位置である。オープンリンク28がロック位置に位置する場合には、オープンレバー26およびオープンリンク28が初期位置から作動位置に移動しても、リフトレバー(およびポール)はラッチ係合位置からラッチ不係合位置に移動しない(ラッチ係合位置に保持される)。なお、オープンリンク28は、オープンリンク付勢バネによって、アンロック位置に向かって常時弾性付勢されている。
【0033】
オープンリンク28がアンロック位置に位置する状態が、ドアロック装置10のアンロック状態であり、オープンリンク28がロック位置に位置する状態が、ドアロック装置10のロック状態である。前記のとおり、アウトサイドドアハンドル134およびインサイドドアハンドル136が操作されると(初期位置から作動位置に移動すると)、オープンレバー26は初期位置から作動位置へ移動する。この際、ドアロック装置10がアンロック状態であると、オープンリンク28はアンロック位置に位置する状態でオープンレバー26とともに初期位置から作動位置へ移動する。そして、オープンリンク28は、リフトレバーに係合してリフトレバーを押し、リフトレバーはラッチ係合位置からラッチ不係合位置へ移動する。このため、ラッチ機構はラッチ状態からアンラッチ状態に切り替わり、車両ドア11の閉位置から開位置への移動が許容される。一方、ドアロック装置10がロック状態であると、オープンリンク28はロック位置に位置する状態でオープンレバー26とともに初期位置から作動位置へ移動する。この場合には、オープンリンク28はリフトレバーに係合しないから、リフトレバーはラッチ係合位置から移動しない。このため、ラッチ機構はラッチ状態からアンラッチ状態に切り替わらない。このため、ラッチ機構はラッチ状態からアンラッチ状態に切り替わらず、車両ドア11の閉位置から開位置への移動は許容されない。
【0034】
このように、ドアロック装置10のアンロック状態は、アウトサイドドアハンドル134およびインサイドドアハンドル136の少なくとも一方が操作されるとラッチ状態にあるラッチ機構がアンラッチ状態に切り替わる状態(換言すると、ラッチ機構のラッチ状態からアンラッチ状態への切替わりを許容する状態)である。ロック状態は、アウトサイドドアハンドル134およびインサイドドアハンドル136が操作されてもラッチ状態にあるラッチ機構がアンラッチ状態に切り替わらない状態(換言すると、ラッチ機構のラッチ状態からアンラッチ状態への切替わりを許容しない状態)である。
【0035】
アクティブレバー29、外部キーレバー32、内部キーレバー33、およびアクティブレバーリンク34は、使用者等によるキーシリンダ135の操作によってドアロック装置10をアンロック状態とロック状態とに切り替え可能に構成される。キースイッチリンク35およびキースイッチ31は、キーシリンダ135へのアンロック操作およびロック操作を検出可能に構成される。
【0036】
ここで、
図4、
図5A~
図6Bを参照して、アクティブレバー29、外部キーレバー32、内部キーレバー33、アクティブレバーリンク34、キースイッチリンク35、およびキースイッチ31の構成および動作について説明する。
図4は、アクチュエータボディ22の筐体の内部に配置されている部材の構成を示す斜視図である。
図5A~
図6Bは、アクティブレバー29、外部キーレバー32、内部キーレバー33、アクティブレバーリンク34、キースイッチリンク35、およびキースイッチ31の構成および動作を示す図である。なお、
図5Aは、ドアロック装置10がアンロック状態であり、キーシリンダ135の内筒が中立位置に位置する状態を示す図である。
図5Bは、
図5Aに示す状態から、キーシリンダ135の内筒がロック位置に移動した場合(ロック操作がされた場合)の状態を示す図である。
図6Aは、ドアロック装置10がロック状態であり、キーシリンダ135の内筒が中立位置に位置する状態を示す図である。
図6Bは、
図6Aに示す状態から、キーシリンダ135の内筒がアンロック位置に移動した場合(アンロック操作がされた場合)の状態を示す図である。
【0037】
アクティブレバー29は、本発明の第一部材の例である。アクティブレバー29には、第一係合部291と第二係合部292と連結孔293が設けられる。第一係合部291は、後側に向かって突出する突起状の部分であり、オープンリンク28に係脱自在に構成される。第二係合部292は上側に向かって開口する凹部(切り欠き状の部分)であり、後述するホイールギア37に設けられる係合部371を係脱自在(挿抜自在)に構成される。連結孔293は、アクティブレバーリンク34を回転可能に連結するための孔であり、車幅方向に貫通する丸孔である。
【0038】
アクティブレバー29は、ハウジング23に対してアクティブレバー支持軸232を介して回転(揺動)可能に取り付けられており、ハウジング23に対して回転することによりロック位置(
図5Bおよび
図6A参照)とアンロック位置(
図5Aおよび
図6B参照)とに移動可能である。アクティブレバー29のロック位置が本発明の第一部材の第一位置の例であり、アンロック位置が本発明の第一部材の第二位置の例である。ロック位置はハウジング23に対する回転移動可能な範囲の一端の位置であり、アンロック位置はロック位置と反対側の端の位置である。なお、
図5A~
図6Bにおいては、アクティブレバー29のロック位置は、アンロック位置から反時計回り方向に所定の角度回転した位置である。アクティブレバー29は、節度スプリング38によって、ロック位置とアンロック位置との中間の位置であるターンオーバー点よりもロック位置に近い側に位置する場合にはロック位置に向かって弾性付勢され、ターンオーバー点よりもアンロック位置に近い側に位置する場合にはアンロック位置に向かって弾性付勢される。このため、アクティブレバー29は、節度スプリング38以外の外力が掛かっていない状態では、ロック位置とアンロック位置とのいずれかの位置に保持される。
【0039】
アクティブレバー29が節度スプリング38の付勢力によってロック位置に保持されると、オープンリンク28はアクティブレバー29の第一係合部291に押された状態に保持されることにより、ロック位置に保持される。アクティブレバー29がロック位置からアンロック位置に移動すると、オープンリンク28はオープンリンク付勢バネの付勢力によってロック位置からアンロック位置に移動する。このように、アクティブレバー29がアンロック位置に位置するとドアロック装置10はアンロック状態に保持され、アクティブレバー29がロック位置に位置するとドアロック装置10はロック状態に保持される。そして、アクティブレバー29をアンロック位置とロック位置とに移動させることにより、ドアロック装置10をアンロック状態とロック状態とに切り替えることができる。
【0040】
内部キーレバー33は本発明の第二部材の例である。なお、外部キーレバー32および内部キーレバー33が本発明の第二部材の例である、ということもできる。外部キーレバー32および内部キーレバー33は、互いに連結されているとともに、ハウジング23に対して回転可能に支持されており、ハウジング23に対して一体的に回転可能に構成される。具体的には、外部キーレバー32は略円柱状の軸部321を備え、この軸部321がハウジング23の外側からキーレバー支持孔231に挿通されることにより、ハウジング23に対して回転可能に支持される。内部キーレバー33は、外部キーレバー32の軸部321の先端部(ハウジング23の内周側に位置する側の端部)に、外部キーレバー32と一体的に回転するように連結されている。
【0041】
外部キーレバー32および内部キーレバー33は、回転することにより中立位置とアンロック位置とロック位置とに移動可能である。内部キーレバー33(および内部キーレバー33)の中立位置が本発明の第二部材の第三位置の例であり、アンロック位置が本発明の第二部材の第四位置の例であり、ロック位置が本発明の第二部材の第五位置の例である。外部キーレバー32および内部キーレバー33の中立位置は、ハウジング23に対する回転可能な範囲の中間(略中央)の位置である(
図5Aおよび
図6A参照)。外部キーレバー32および内部キーレバー33のアンロック位置は、中立位置から所定の方向(
図5A~
図6Bにおいては時計回り方向)に所定の角度回転した位置である(
図6B参照)。外部キーレバー32および内部キーレバー33のロック位置は、中立位置から前記所定の方向とは反対方向(
図5A~
図6Bにおいては反時計回り方向)に所定の角度回転した位置である(
図5B参照)。より具体的には、外部キーレバー32および内部キーレバー33のアンロック位置は、その回転中心よりも前側の部分(前後方向に関して後述する第一連結孔331および第二連結孔332が設けられる側の部分)が中立位置よりも上昇した位置である。また、外部キーレバー32および内部キーレバー33のロック位置は、回転中心よりも前側の部分が中立位置よりも下降した位置である。
【0042】
外部キーレバー32はハウジング23およびカバー24の外部においてキーシリンダ135の内筒と連結されている。そして、キーシリンダ135が中立位置に位置すると外部キーレバー32および内部キーレバー33も中立位置に位置し、キーシリンダ135の内筒がアンロック位置に移動すると外部キーレバー32および内部キーレバー33もアンロック位置に移動し、キーシリンダ135の内筒がロック位置に移動すると外部キーレバー32および内部キーレバー33もロック位置に移動する。
【0043】
内部キーレバー33には、第一連結孔331と第二連結孔332が設けられる。第一連結孔331は、キースイッチリンク35を連結するための孔であり、車幅方向に貫通する丸孔である。第二連結孔332は、アクティブレバーリンク34を連結するための孔であり、車幅方向に貫通し、内部キーレバー33の回転中心と中心とする円弧状の長孔である。なお、第一連結孔331および第二連結孔332は、内部キーレバー33がアンロック位置に位置すると中立位置に位置する場合よりも上方に位置し、内部キーレバー33がロック位置に位置すると中立位置に位置する場合よりも下方に位置する。なお、第二連結孔332の延伸方向(内部キーレバー33の回転中心を中心とする円の周方向)に関し、内部キーレバー33が中立位置からアンロック位置に移動する場合の移動方向前側を「アンロック側」と記し、内部キーレバー33が中立位置からロック位置に移動する場合の移動方向前側を「ロック側」と記す。本実施形態では、上側がアンロック側であり、下側がロック側である。
【0044】
アクティブレバーリンク34は長尺棒状の形状を備える。アクティブレバーリンク34の長尺方向の両端部のそれぞれには、車幅方向内側に突出する円柱状(または円板状)の第一連結ボス341および第二連結ボス342が設けられている。そして、第一連結ボス341が内部キーレバー33の第二連結孔332に挿入されており、第二連結ボス342がアクティブレバー29に設けられている連結孔293に挿入されている(
図4参照)。このように、内部キーレバー33とアクティブレバー29とは、アクティブレバーリンク34によって連結されている。なお、第二連結ボス342は、アクティブレバー29に対して回転可能であるが、アクティブレバー29に対して前後方向および上下方向には移動できない。また、内部キーレバー33の第二連結孔332は円弧状の長孔であるため、第一連結ボス341は、内部キーレバー33に対して回転可能であるとともに、第二連結孔332の内部をその延伸方向に移動可能である。
【0045】
図5Aに示すように、アクティブレバー29がアンロック位置に位置し、外部キーレバー32および内部キーレバー33が中立位置に位置すると、第一連結ボス341は第二連結孔332のアンロック側の端部近傍に位置する。この状態でキーシリンダ135の内筒が中立位置からロック位置に移動すると、内部キーレバー33の第二連結孔332のアンロック側の端部の内周面が第一連結ボス341に接触して第一連結ボス341を押し下げる。このため、アクティブレバーリンク34は内部キーレバー33によって下方に引っ張られ、その結果、アクティブレバー29は図中反時計回り方向に回転してアンロック位置からロック位置へ移動する。その後、外部キーレバー32および内部キーレバー33が中立位置に戻ると、ドアロック装置10は
図6Aに示す状態になる。
【0046】
図6Aに示すように、アクティブレバー29がロック位置に位置し、外部キーレバー32および内部キーレバー33が中立位置に位置する場合、第一連結ボス341は第二連結孔332のロック側の端部近傍に位置する。この状態でキーシリンダ135の内筒が中立位置からアンロック位置に移動すると、第二連結孔332のロック側の端部の内周面が第一連結ボス341に接触して第一連結ボス341を押し上げる。このため、アクティブレバーリンク34は内部キーレバー33によって押し上げられ、その結果、アクティブレバー29は図中時計回り方向に回転してロック位置からアンロック位置へ移動する。その後、外部キーレバー32および内部キーレバー33が中立位置に戻ると、ドアロック装置10は
図5Aに示す状態になる。
【0047】
このように、ドアロック装置10は、キーシリンダ135に対するアンロック操作およびロック操作により、アンロック状態とロック状態とに切り替え可能に構成される。
【0048】
アクチュエータ36は、ホイールギア37の回転動力源である。アクチュエータ36には、正逆両方向の回転動力を出力可能な電動モータが適用できる。そして、アクチュエータ36は、図略のドアロック装置10の制御装置により制御されることにより、回転動力を出力する。アクチュエータ36の出力軸にはウォームが取り付けられている。ホイールギア37は、ホイールギア支持軸233を介してハウジング23に対して回転可能に支持される。ホイールギア37はアクチュエータ36のウォームと噛み合っており、アクチュエータ36の出力する回転動力によって正逆両方向に回転可能である。ホイールギア37には係合部371が設けられる。ホイールギア37の係合部371は、ホイールギア37の回転中心線方向(車幅方向外側)に突出しアクティブレバー29の第二係合部292に挿抜自在な突起状の構成を備える。そして、ホイールギア37がアクチュエータ36の駆動力によって所定の方向に回転すると、ホイールギア37の係合部371がアクティブレバー29の第二係合部292の内周面を押し、アクティブレバー29をロック位置からアンロック位置へ移動させる。一方、ホイールギア37がアクチュエータ36の駆動力によって前記所定の方向とは反対方向に回転すると、ホイールギア37の係合部371がアクティブレバー29の第二係合部292の内周面を押し、アクティブレバー29をアンロック位置からロック位置へ移動させる。
【0049】
アクティブレバー29は、図略のワイヤーなどの連結部材によって車両ドア11に設けられているロックノブ137と連結されている。そして、ロックノブ137が手動操作さされることによりアンロック位置からロック位置に移動すると、その移動が連結部材を介してアクティブレバー29に伝達され、アクティブレバー29はアンロック位置からロック位置へ移動する。同様に、ロックノブ137が手動操作さされることによりロック位置からアンロック位置に移動すると、その移動が連結部材を介してアクティブレバー29に伝達され、アクティブレバー29はロック位置からアンロック位置へ移動する。
【0050】
このように、車両用のドアロック装置10は、アクチュエータ36の駆動力および車両ドア11に設けられるロックノブ137の手動操作によっても、ロック状態とアンロック状態とを切り替え可能に構成される。
【0051】
ターミナルサブアッシー30は、キースイッチ31と、キースイッチ31が実装された支持基板301とを備えるサブアッシーである。なお、支持基板301には、キースイッチ31以外の部材が実装されていてもよい。例えば、支持基板301には、アクティブレバー29の位置を検出するためのスイッチなどの他のスイッチ302、並びに、キースイッチ31および他のスイッチ302とターミナルサブアッシー30の外部とを電気的に接続するための配線金具303が実装されていてもよい。
【0052】
キースイッチ31は、キーシリンダ135の操作を検出するための電気的なスイッチである。キースイッチ31は、振り子状に揺動可能なレバー311を備え、レバー311の位置に応じてOFFとONとの状態が切り替わる(OFF状態とON状態とが切り替わる)ように構成される。具体的には、レバー311が揺動可能な範囲の中央およびその近傍に位置する場合には第一状態(例えばOFF状態)となり、レバー311が揺動可能な範囲の一端およびその近傍に位置する場合には第二状態(例えばON状態)となり、レバー311が揺動可能な範囲の他方の端部およびその近傍に位置する場合には第三状態(例えば第二状態とは異なるON状態)となるように構成される。なお、キースイッチ31は図略のドアロック装置10の制御装置に接続される。そして、図略のドアロック装置10の制御装置は、キースイッチ31の状態を検出できる。また、レバー311は、第一状態の位置に向かって常時弾性付勢されており、レバー311に外力が掛かっていない状態では、キースイッチ31は第一状態に保持される。支持基板301は、電気的な絶縁性を有する平板状の部材である。例えば、支持基板301は樹脂材料により形成される。なお、支持基板301の具体的な構成は特に限定されるものではない。そして、ターミナルサブアッシー30は、ハウジング23に設けられる支持ボス234を介してハウジング23に取り付けられる。
【0053】
キースイッチリンク35は、本発明の第三部材の例である。キースイッチリンク35は、キースイッチ31の状態を切り替えるための長尺棒状の部材である。キースイッチリンク35は、例えば樹脂材料からなり射出成形によって製造される。キースイッチリンク35は、長尺方向が上下方向に略平行な向きで配置される。キースイッチリンク35は、本体部351と、本体部351の上端部に設けられる摺動部352と、本体部351の上端部近傍であって摺動部352の下側に設けられる支持部353と、支持部353に設けられるスイッチ操作レバー354と、本体部351の下端部に設けられる連結ボス355と、を備える。
【0054】
本体部351は、厚さ寸法(車幅方向寸法)よりも幅寸法(前後方向寸法)の方が大きい板状の部分である。連結ボス355は、本体部351の下端部から車幅方向内側に突出する円筒状(または円柱状)の部分であり、内部キーレバー33の第一連結孔331に車幅方向外側から挿入される。このため、キースイッチリンク35は、内部キーレバー33に対して下端部を中心として回転可能である。なお、内部キーレバー33の第一連結孔331は丸孔であるため、キースイッチリンク35は第一連結孔331(連結ボス355)を中心として内部キーレバー33に対して回転可能(振り子状に揺動可能)であるが、キースイッチリンク35の連結ボス355は内部キーレバー33に対して上下方向および前後方向には移動できない。
【0055】
ここで、キースイッチリンク35の摺動部352および支持部353の構成および動作について、
図7A~
図7Dを参照して説明する。
図7Aは、キースイッチリンク35の上端部およびその近傍の構成とガイド部236との位置関係を示す図である。
図7Bは、キースイッチリンク35の上端部およびその近傍の構成とキースイッチ31との位置関係を示す図である。
図7Cおよび
図7Dは、キースイッチリンク35およびキースイッチ31の動作を示す図である。
【0056】
図7Aに示すように、摺動部352は車幅方向視において略円形の形状を備える板状の部分である。また、摺動部352は、キースイッチリンク35の本体部351および支持部353の車幅方向外側の面よりも車幅方向外側に突出している(
図4も参照)。そして、摺動部352は2本のガイド部236どうしの間に挿入され、かつ挿入された状態で2本のガイド部236の延伸方向(本実施形態では上下方向)に移動可能である。たとえば、摺動部352の外径は、2本のガイド部236の対向する面(本発明の2つのガイド面237)どうしの距離と略同じか、またはそれよりもわずかに小さい寸法である。
【0057】
支持部353は、本体部351から前後方向に延伸する平板状の部分である。支持部353の前後方向寸法は、2本のガイド部236どうしの間隔よりも大きい。支持部353は2本のガイド部236の突出方向の先端部(車幅方向内側の端部)よりも車幅方向内側に位置しており、2本のガイド部236どうしの間に入り込んでいない。また、支持部353は、車幅方向視においてガイド部236に重畳している。このため、キースイッチリンク35の支持部353および本体部351は、2本のガイド部236と干渉することなく、摺動部352を中心として振り子状に揺動できる。
【0058】
支持部353の後辺近傍であって、車幅方向視において2本のガイド部236の外側に位置する部分には、車幅方向内側に突出する突起状の2本のスイッチ操作レバー354が、上下方向に離間して設けられる。2本のスイッチ操作レバー354は、それらの間にキースイッチ31のレバー311を遊挿可能に構成される。
【0059】
そして、
図7Bに示すように、ターミナルサブアッシー30は、2本のガイド部236およびキースイッチリンク35の車幅方向内側に配置される。なお、
図7Bに示すように、車幅方向視において、キースイッチ31のレバー311は支持基板301から後側に突出しており、キースイッチリンク35の2本のスイッチ操作レバー354どうしの間に位置する。なお、キースイッチ31は、例えばレバー311が上昇した場合に第一状態から第二状態に切り替わり、レバー311が下降した場合に第一状態から第三状態に切り替わる向きで配置される。
【0060】
このように、キースイッチリンク35の支持部353は、2本のガイド部236と支持基板301とに挟まれる。このため、キースイッチリンク35の車幅方向の移動が支持基板301により規制されるから、摺動部352が2本のガイド部236から抜け出ることが防止される。
【0061】
そして、
図7Cに示すように、外部キーレバー32および内部キーレバー33が中立位置からアンロック位置に移動すると、キースイッチリンク35が上昇し、2本のうちの下側のスイッチ操作レバー354がキースイッチ31のレバー311を押し上げる。このため、キースイッチ31は第一状態から第二状態に切り替わる。また、
図7Dに示すように、外部キーレバー32および内部キーレバー33が中立位置からロック位置に移動すると、キースイッチリンク35が下降し、2本のうちの上側のスイッチ操作レバー354がキースイッチ31のレバー311を押し下げる。このため、キースイッチ31は第一状態から第三状態に切り替わる。このように、キースイッチ31およびキースイッチリンク35により、キーシリンダ135の操作(中立位置からアンロック位置への回転、および中立位置からロック位置への回転)を検出できる。
【0062】
本実施形態のように、キースイッチリンク35の下端部が内部キーレバー33に対して回転可能であるが平行移動不可能に連結される構成であると、内部キーレバー33の回転に伴うキースイッチリンク35の下端部の移動軌跡は、内部キーレバー33の回転中心を中心とする円弧になる。一方、キースイッチリンク35の上端部の摺動部352は、2本のガイド部236の間に挿入されている(2つのガイド面237どうしの間に位置する)ため、2本のガイド部236の延伸方向に移動可能であるが、2本のガイド部236の延伸方向に直角な方向には移動できない(ただし、クリアランス分は移動できる)。このため、キースイッチリンク35は、内部キーレバー33の回転に伴って上下方向に移動する際に、上端部の摺動部352を中心として振り子状に揺動する。換言すると、キースイッチリンク35の長尺方向と2本のガイド部236の延伸方向とがなす角度が変化する。
【0063】
しかしながら、摺動部352は車幅方向視において略円形(少なくとも、摺動部352の外周のうちのガイドに接触する部分は略円形)である。このため、キースイッチリンク35の長尺方向と2本のガイド部236の延伸方向とがなす角度が変化しても、摺動部352の外周と2本のガイド部236との接触状態は変化しない。したがって、キースイッチリンク35が前記のように揺動しても、キースイッチリンク35の2本のガイド部236に対する上下方向のスムーズな移動が妨げられない。
【0064】
また、キースイッチリンク35の下端部の連結ボス355は、内部キーレバー33の第一連結孔331に、回転可能であるが平行移動不可能に挿入される。そして、キースイッチリンク35の連結ボス355は内部キーレバー33の第一連結孔331の内周面に接触した状態に保持される。このため、ドアロック装置10が振動などした場合であっても、キースイッチリンク35と内部期レバーとの間で接触音(打音、衝突音)が発生しないようにできる。このため、使用者に異音と感じられるような音が発生しないようにできる。
【0065】
また、支持基板301は、キースイッチリンク35の一部(より具体的には2つの摺動部352および支持部353が設けられる部分およびその近傍)および2本のガイド部236に重畳する。このため、キースイッチリンク35の摺動部352は、支持基板301により、2本のガイド部236の間から抜け出ることが防止される。また、支持基板301により摺動部352が抜け出ないように保持する構成であると、摺動部352が抜け出ることを防止するために別の部材を配置しなくてもよい。このため、部品点数および組付け工数の増加を防止することができる。
【0066】
さらに、支持基板301がキースイッチリンク35の一部に重畳する構成であると、車両用のドアロック装置10の車幅方向視の寸法の拡大を防止または抑制できる。すなわち、キースイッチリンク35とキースイッチ31とが車幅方向に重畳しない構成であると、キースイッチリンク35とキースイッチ31とを前後方向または上下方向に並べて配置しなければならず、その結果、キースイッチリンク35およびキースイッチ31の配置スペースの前後方向寸法または上下方向寸法が大きくなる。これに対して本実施形態によれば、キースイッチリンク35とキースイッチ31との車幅方向視における配置スペースを小さくできる。したがって、ドアロック装置10の小型化を図ること(または大型化を防止もしくは抑制すること)ができる。
【0067】
また、本実施形態に係るドアロック装置によれば、キーシリンダ135に対するロック操作を検出することにより、次のような動作を実現できる。ドアロック装置10がロック状態である場合にキーシリンダ135に対してアンロック操作が行われると、アンロック操作が行われたキーシリンダ135に連結されているドアロック装置10はロック状態からアンロック状態に切り替わる。なお、ドアロック装置10の制御装置は、キースイッチ31の状態を取得することにより、キーシリンダ135に対するアンロック操作を検出できる。その後、ドアロック装置10の制御装置は、再度キーシリンダ135に対するアンロック操作を検出すると、アンロック操作が行われたキーシリンダ135に連結されているドアロック装置10以外の他のドアロック装置10のアクチュエータ36を駆動し、他のドアロック装置10をロック状態からアンロック状態に切り替える。
【0068】
このような動作によれば、1回目のアンロック操作では、前記他のドアロック装置10はロック状態に保持されるから、防犯性の向上を図ることができる。
【0069】
また、本実施形態では、キースイッチ31と外部キーレバー32および内部キーレバー33とが上下方向に離れている。そしてこのような構成であっても、キースイッチリンク35によって内部キーレバー33の移動(すなわち、キーシリンダ135に対するアンロック操作およびロック操作)を検出できる。このため、例えば、防水のためにターミナルサブアッシー30をハウジング23およびカバー24の上端部およびその近傍に配置し、ターミナルサブアッシー30に比較して水濡れが許容される外部キーレバー32および内部キーレバー33をハウジング23およびカバー24の下端部およびその近傍に配置することにより、ターミナルサブアッシー30の水濡れを防止または抑制しつつ、キースイッチリンク35のスムーズな移動を確保できる。
【0070】
また、アンロック操作およびロック操作によるキーシリンダ135の内筒の動きは、外部キーレバー32および内部キーレバー33とアクティブレバーリンク34とを介してアクティブレバー29に伝達される。このため、このような構成によれば、ドアロック装置10とキーシリンダ135との相対的な位置の自由度を高めることができる。
【0071】
なお、アクチュエータ36の駆動力およびロックノブ137の手動操作によりアクティブレバー29が移動した場合には、内部キーレバー33は移動しない。このためキースイッチ31の状態は変化しない。具体的には、
図5Aに示すようにドアロック装置10がアンロック状態であると、第一連結ボス341と第二連結孔332のロック側の端部の内周面とは、所定の距離をおいて離間している。この状態でアクティブレバー29がアンロック位置から
図6Aに示すロック位置に移動すると、アクティブレバーリンク34はアクティブレバー29に押され、アクティブレバーリンク34の第一連結ボス341は第二連結孔332の内部をロック側に向かって移動する。この際、第一連結ボス341は第二連結孔332のロック側の端部の内周面と接触しないから、内部キーレバー33は中立位置から移動しない。したがって、キースイッチ31は第一状態に保持される。
【0072】
同様に、
図6Aに示す状態でアクティブレバー29がアンロック位置から
図5Aに示すアンロック位置に移動すると、アクティブレバーリンク34はアクティブレバー29に引かれ、第一連結ボス341は第二連結孔332の内部をアンロック側に向かって移動する。この際、第一連結ボス341は第二連結孔332のアンロック側の端部の内周面と接触しないから、内部キーレバー33は中立位置から移動しない。したがって、キースイッチ31は第一状態に保持される。
【0073】
ここで、ラッチ機構の構成例について簡単に説明する。前記のとおり、ラッチ機構は、ラッチ213、ポール、リフトレバー、ラッチ復帰バネ、およびポール復帰バネを備える。
【0074】
ラッチ213は、フルラッチ爪、ハーフラッチ爪、よびストライカ保持溝を備える。フルラッチ爪とハーフラッチ爪は、ラッチ213の回転中心から半径方向外側に向かって延伸する板状の構成を有している。ストライカ保持溝は、車体12に設けられているストライカ111を挿抜可能な溝であり、フルラッチ爪とハーフラッチ爪との間に設けられている。
【0075】
ラッチ213は、噛合いボディ21の筐体に対して、回転可能に支持されており、回転することによってラッチ位置とアンラッチ位置とに移動可能である。ラッチ213のラッチ位置は、車両ドア11が閉位置に位置する場合にストライカ111を保持する位置(換言すると、ラッチ213とストライカ111との係合を解除できない位置)である。車両ドア11が閉位置に位置する場合にラッチ213がラッチ位置に保持されると、車両ドア11の閉位置から開位置への移動が許容されない。ラッチ213のアンラッチ位置は、車体12に設けられているストライカ111とラッチ213とが係脱自在な位置(ストライカ111がストライカ保持溝に挿抜自在な位置)である。車両ドア11が閉位置に位置する場合にラッチ213がアンラッチ位置からラッチ位置に移動すると、車両ドア11の閉位置から開位置への移動が許容される。なお、ラッチ213は、ラッチ復帰バネによって、アンラッチ位置に向けて常時弾性付勢されている。
【0076】
ポールおよびリフトレバーは、ドアロック装置10の筐体に回転可能に支持されている。ポールおよびリフトレバーは、互いに係合しており、一体となって回転するように構成されている。そして、ポールおよびリフトレバーは、回転することによってラッチ係合位置とラッチ不係合位置とに移動可能である。ポールおよびリフトレバーのラッチ係合位置は、ポールがラッチに係合することによってラッチ213をラッチ位置に保持する位置(ラッチ213がラッチ位置からアンラッチ位置への移動を規制する位置)である。ポールおよびリフトレバーのラッチ不係合位置は、ラッチ213の回転移動軌跡の外部の位置であり、ラッチ213がラッチ位置からアンラッチ位置への移動を許容する位置である。ポールおよびリフトレバーは、ポール復帰バネによって、ラッチ係合位置に向かって常時弾性付勢されている。
【0077】
車両ドア11が閉位置に位置し、ラッチ213がラッチ位置に位置するときにポールおよびリフトレバーがラッチ係合位置に位置すると、ポールがラッチ213に係合する。これにより、ポールはラッチ213をラッチ位置に保持する。このため、車両ドア11は閉位置に保持される(換言すると、開位置への移動が規制される)。ラッチ機構のこの状態がラッチ状態である。車両ドア11が閉位置に位置し、かつラッチ機構がラッチ状態である場合に、ポールおよびリフトレバーがポール復帰バネの付勢力に抗してラッチ係合位置からラッチ不係合位置に移動すると、ポールはラッチ213のフルラッチ爪およびハーフラッチ爪の移動軌跡の外部に位置する。そして、ラッチ213はラッチ復帰バネの付勢力によってラッチ位置からアンラッチ位置に移動し、ラッチ213はストライカ111を保持しない状態(係脱自在な状態)になる。このため、車両ドア11の開位置への移動が許容される。ラッチ機構のこの状態が、アンラッチ状態である。
【0078】
ラッチ機構がアンラッチ状態である場合に車両ドア11が開位置から閉位置に向かって移動すると、ラッチ213がストライカ111に押されてアンラッチ位置からラッチ位置に向かって移動する。この際、ラッチ213はポールをラッチ213の回転軌跡の外に押し出す(ラッチ係合位置からラッチ不係合位置に移動させる)ことによって、アンラッチ位置からラッチ位置に移動できる。そして、車両ドア11が閉位置に到達すると、ラッチ213はラッチ位置に到達し、ポールおよびリフトレバーはポール復帰バネの付勢力によってラッチ係合位置に保持される。したがって、ラッチ機構はアンラッチ状態からラッチ状態に切り替わる。
【0079】
このように、ラッチ機構は、車両ドア11が閉位置に位置するときにポールおよびリフトレバーが一体的にラッチ係合位置からラッチ不係合位置に回転移動することによって、ラッチ状態からアンラッチ状態に切り替わるように構成される。なお、ラッチ機構は、リフトレバーがラッチ係合位置からラッチ不係合位置に移動することによりラッチ状態からアンラッチ状態に切り替わるように構成されればよく、具体的な構成は前記構成例に限定されない。ラッチ機構には、公知の各種構成が適用できる。
【0080】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されない。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲において改変が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0081】
10…車両用のドアロック装置、11…車両ドア、12…車体、135…キーシリンダ、21…噛合いボディ、22…アクチュエータボディ、29…アクティブレバー、31…キースイッチ、32…外部キーレバー、33…内部キーレバー、35…キースイッチリンク、236…ハウジングのガイド部、237…ハウジングのガイド面、331…内部キーレバーの第一連結孔、332…内部キーレバーの第二連結孔、351…キースイッチリンクの本体部、352…キースイッチリンクの摺動部、353…キースイッチリンクの支持部、354…スイッチ操作レバー