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  • 特開-多重殻タンクの施工方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167843
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】多重殻タンクの施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04H 7/14 20060101AFI20231116BHJP
【FI】
E04H7/14
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079341
(22)【出願日】2022-05-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新見 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 実
(72)【発明者】
【氏名】門田 高明
(72)【発明者】
【氏名】山本 龍哉
(72)【発明者】
【氏名】佐野 遼
(72)【発明者】
【氏名】小西 浩之
(57)【要約】
【課題】
品質の向上が可能な多重殻タンクの施工方法を提供する。
【解決手段】
本開示の一態様に係る多重殻タンクの施工方法は、内槽と外槽とを備えた多重殻タンクの施工方法であって、前記外槽の下方部分を施工し、前記外槽の下方部分を施工した後に前記内槽を施工し、前記内槽を施工した後に前記外槽の上方部分を施工し、前記内槽を施工するにあたり、多数の金属プレートを互いに溶接することで、前記内槽の中心を通り鉛直方向に延びる中心軸の軸周り全周にわたって連続する複数の内槽ブロックを形成し、形成した前記複数の内槽ブロックを互いに溶接する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内槽と外槽とを備えた多重殻タンクの施工方法であって、
前記外槽の下方部分を施工し、
前記外槽の下方部分を施工した後に前記内槽を施工し、
前記内槽を施工した後に前記外槽の上方部分を施工し、
前記内槽を施工するにあたり、多数の金属プレートを互いに溶接することで、前記内槽の中心を通り鉛直方向に延びる中心軸の軸周り全周にわたって連続する複数の内槽ブロックを形成し、形成した前記複数の内槽ブロックを互いに溶接する、多重殻タンクの施工方法。
【請求項2】
前記複数の内槽ブロックを形成するのと並行して前記複数の内槽ブロックを互いに溶接する、請求項1に記載の多重殻タンクの施工方法。
【請求項3】
前記複数の内槽ブロックの形成は、それぞれ複数の金属プレートを互いに溶接することで複数の小ブロックを形成し、形成した小ブロックを互いに溶接することにより行う、請求項1に記載の多重殻タンクの施工方法。
【請求項4】
前記内槽の施工は、前記複数の内槽ブロックのうち少なくとも最も下方の内槽ブロックと前記外槽の下方部分との間に仮受け支柱を配置した状態で行う、請求項1に記載の多重殻タンクの施工方法。
【請求項5】
前記外槽の上方部分を施工するにあたり、多数の金属プレートを互いに溶接することで、前記外槽の中心を通り鉛直方向に延びる中心軸の軸周り全周にわたって連続する複数の上外槽ブロックを形成し、形成した前記複数の上外槽ブロックを互いに溶接する、請求項1に記載の多重殻タンクの施工方法。
【請求項6】
前記複数の上外槽ブロックをそれぞれ他の上外槽ブロックと溶接する前に焼鈍する、請求項5に記載の多重殻タンクの施工方法。
【請求項7】
前記多重殻タンクは環状に並んだ複数の支柱を含む脚部を備えており、
前記外槽の下方部分を施工するにあたり、多数の金属プレートを互いに溶接することで、前記外槽の下方部分のうち底部分を含む下外槽ブロックを形成し、形成した下外槽ブロックを前記複数の支柱で囲むように前記脚部を施工し、複数の金属プレートを互いに溶接することで前記外槽の下方部分のうち前記脚部の内側で前記複数の支柱に固定されるリング状のセンターリングを形成し、形成した前記センターリングに前記下外槽ブロックを溶接する、請求項1に記載の多重殻タンクの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、多重殻タンクの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内槽を備えた多重殻タンクの施工方法には、内槽を構成する金属プレートをつなぎ合わせて内槽全体を仮組みし、その状態で金属プレートを互いに溶接する工程が含まれている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭59-85076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の施工方法では、内槽の特に上方部分に位置する金属プレートを溶接するにあたり、作業者は無理な体勢で作業を行う必要があり、高い精度で溶接を行うのは難しかった。そのため、多重殻タンクの品質を向上させるのは容易ではなかった。
【0005】
本開示は、品質の向上が可能な多重殻タンクの施工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る多重殻タンクの施工方法は、内槽と外槽とを備えた多重殻タンクの施工方法であって、前記外槽の下方部分を施工し、前記外槽の下方部分を施工した後に前記内槽を施工し、前記内槽を施工した後に前記外槽の上方部分を施工し、前記内槽を施工するにあたり、多数の金属プレートを互いに溶接することで、前記内槽の中心を通り鉛直方向に延びる中心軸の軸周り全周にわたって連続する複数の内槽ブロックを形成し、形成した前記複数の内槽ブロックを互いに溶接する。
【発明の効果】
【0007】
この施工方法によれば、品質の向上が可能な多重殻タンクの施工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、多重殻タンクの施工方法のフロー図である。
図2図2は、外槽の下方部分及び脚部の施工手順を示した図である。
図3図3は、内槽の施工手順を示した図である。
図4図4は、外槽の上方部分の施工手順を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る多重殻タンク100の施工方法のフロー図である。また、図2図4は、多重殻タンク100を構成する各部分の施工手順を示した図である。
【0010】
まず、本実施形態の多重殻タンク100の全体構造について簡単に説明する。図4のうち(b)は、完成状態の多重殻タンク100を示している。図4の(b)に示すように、本実施形態の多重殻タンク100は、球形のタンクであって、地上に設置される。また、図4の(a)に示すように、本実施形態の多重殻タンク100は、貯蔵物に直接触れる内槽10と、内槽10を覆う外槽20と、内槽10及び外槽20を支持する脚部30と、を備えている。なお、本実施形態の多重殻タンク100は液化水素を貯蔵する。ただし、多重殻タンク100は、液化水素以外の貯蔵物を貯蔵してもよい。
【0011】
続いて、本実施形態に係る多重殻タンク100の施工方法について説明する。本実施形態に係る多重殻タンク100の施工方法は、はじめに外槽20の下方部分(南半球部分)及び脚部30を施工し(図2)、その後に内槽10を施工し(図3)、その後に外槽20の上方部分(北半球部分)を施工する(図4)。以下、本実施形態に係る多重殻タンク100の施工方法について詳細に説明する。
【0012】
図1に示すように、本実施形態に係る多重殻タンク100の施工方法では、はじめに、外槽20の下方部分を施工するにあたり、下外槽ブロック21を形成する(ステップS1)。図2の(a)では、下外槽ブロック21を図示している。下外槽ブロック21は、外槽20の下方部分のうち底部分を含むブロックである。本実施形態の下外槽ブロック21は、外槽20の底部分に相当する円盤状のボトムクラウン22と、リング状のロアリング23とを有している。このボトムクラウン22とロアリング23を溶接することで下外槽ブロック21を形成することができる。
【0013】
ボトムクラウン22は、湾曲する複数の金属プレート24を互いに溶接することで形成されている。同様に、ロアリング23も湾曲する多数の金属プレート25を互いに溶接することで形成されている。なお、複数(例えば、2枚又は3枚)の金属プレート25を互いに溶接することで複数の小ブロックを形成し、形成した小ブロックを互いに溶接することでロアリング23を形成してもよい。また、下外槽ブロック21を形成した後は、下外槽ブロック21を焼鈍する。なお、外槽20を構成する金属プレートの板厚や鋼種によっては外槽20について焼鈍が不要の場合もあるが、本実施形態では外槽20について焼鈍を実施する。また、本実施形態では内槽10について焼鈍を実施しないが、内槽10について焼鈍を実施してもよい。
【0014】
続いて、脚部30を施工する(ステップS2)。図2の(b)では、脚部30を図示している。図2の(b)に示すように、本実施形態の脚部30は環状に並んだ複数の支柱31を有している。下外槽ブロック21を囲むようにして支柱31を配置し、隣り合う支柱31を接続部材32で接続することで、脚部30を施工することができる。なお、接続部材32の形状及び支柱31に対する位置は、図2の(b)に示す限りではなく、特に限定されない。
【0015】
続いて、センターリング26を形成する(ステップS3)。図2の(c)では、センターリング26を図示している。センターリング26は、リング状であって脚部30の内側に位置し、各支柱31に固定されている。複数の金属プレート27を互いに溶接し、これらの金属プレート27のうちの一部を支柱31に溶接することで、センターリング26を形成することができる。なお、複数(例えば、2枚又は3枚)の金属プレート27を互いに溶接することで複数の小ブロックを形成し、形成した小ブロックを互いに溶接することでセンターリング26を形成してもよい。また、複数の金属プレート27を互いに溶接した各小ブロックは支柱31と固定する前に一旦焼鈍を行い、各小ブロックを互いに溶接してセンターリング26を形成した後、焼鈍されていない小ブロック同士の溶接部を局部焼鈍する。
【0016】
続いて、センターリング26に下外槽ブロック21を溶接する(ステップS4)。具体的には、図2の(d)に示すように、下外槽ブロック21を上方に持ち上げて、下外槽ブロック21の上端とセンターリング26の下端を溶接する。その後、下外槽ブロック21とセンターリング26の溶接部を局部焼鈍する。これにより、外槽20の下方部分の施工が完了する。
【0017】
続いて、内槽10を施工するにあたり、内槽ブロック11~14を形成する(ステップS5)。図3の(a)~(d)では、それぞれ第1~4内槽ブロック11~14を図示している。各内槽ブロック11~14は、内槽10を上下方向に4つに分割したときの内槽10を構成する各部分に相当する。第1内槽ブロック11は最も下方に位置する部分であり、第2内槽ブロック12は第1内槽ブロック11の上方に隣接する部分であり、第3内槽ブロック13は第2内槽ブロック12の上方に隣接する部分であり、第4内槽ブロック14は第3内槽ブロック13の上方に隣接し最も上方に位置する部分である。
【0018】
また、第1、4内槽ブロック11、14はボウル状であり、第2、3内槽ブロック12、13はリング状である。いずれの内槽ブロック11~14も、内槽10の中心を通り鉛直方向に延びる中心軸の軸周り全周にわたって連続する形状を有している。
【0019】
図3の(a)で示すように、第1内槽ブロック11は、内槽10の底部分に相当するボトムクラウン41と、リング状のロアリング42とを有している。このボトムクラウン41とロアリング42を溶接することで第1内槽ブロック11を形成することができる。ボトムクラウン41は、湾曲する複数の金属プレート43を互いに溶接することで形成されている。また、ロアリング42も湾曲する多数の金属プレート44を互いに溶接することで形成されている。なお、複数(例えば、2枚又は3枚)の金属プレート44を互いに溶接することで複数の小ブロックを形成し、形成した小ブロックを互いに溶接することでロアリング42を形成してもよい。
【0020】
図3の(b)で示すように、第2内槽ブロック12は、湾曲する複数の金属プレート45を有している。これらの金属プレート45を互いに溶接することで第2内槽ブロック12を形成することができる。なお、複数(例えば、2枚又は3枚)の金属プレート45を互いに溶接することで複数の小ブロックを形成し、形成した小ブロックを互いに溶接することで第2内槽ブロック12を形成してもよい。
【0021】
図3の(c)で示すように、第3内槽ブロック13は、湾曲する複数の金属プレート46を有している。これらの金属プレート46を互いに溶接することで第3内槽ブロック13を形成することができる。なお、複数(例えば、2枚又は3枚)の金属プレート46を互いに溶接することで複数の小ブロックを形成し、形成した小ブロックを互いに溶接することで第3内槽ブロック13を形成してもよい。
【0022】
図3の(d)で示すように、第4内槽ブロック14は、内槽10の頂部に相当するトップクラウン47と、リング状のアッパ―リング48とを有している。このトップクラウン47とアッパ―リング48を溶接することで第4内槽ブロック14を形成することができる。トップクラウン47は、湾曲する複数の金属プレート49を互いに溶接することで形成されている。また、アッパ―リング48も湾曲する多数の金属プレート50を互いに溶接することで形成されている。なお、複数(例えば、2枚又は3枚)の金属プレート50を互いに溶接することで複数の小ブロックを形成し、形成した小ブロックを互いに溶接することでアッパ―リング48を形成してもよい。
【0023】
続いて、第1~4内槽ブロック11~14を互いに溶接する(ステップS6)。本実施形態では、図3の(a)で示すように、第1内槽ブロック11を、外槽20の下方部分の内側に配置する。このとき、第1内槽ブロック11と外槽20の下方部分との間に図外の仮受け支柱を配置し、第1内槽ブロック11と外槽20との隙間を確保する。その後、第1内槽ブロック11の上端と第2内槽ブロック12の下端を溶接し(図3の(b))、第2内槽ブロック12の上端と第3内槽ブロック13の下端を溶接し(図3の(c))、第3内槽ブロック13の上端と第4内槽ブロック14の下端を溶接する(図3の(d))。これにより、内槽10の施工が完了する。なお、内槽10を施工した後は、内槽10と外槽20の間に配置したロッドにより内槽10の荷重を外槽20へ預けて、仮受け支柱を取り外す。
【0024】
なお、各内槽ブロック11~14を互いに溶接する工程は、全ての内槽ブロック11~14を形成する工程を行った後に行ってもよい。また、各内槽ブロック11~14を形成する工程と各内槽ブロック11~14を互いに溶接する工程を並行に行ってもよい。これらの工程を並行に行った場合、多重殻タンク100の施工期間を短縮することができる。さらに、各内槽ブロック11~14を形成する工程と各内槽ブロック11~14を互いに溶接する工程を交互に行ってもよい。例えば、第1内槽ブロック11と第2内槽ブロック12を溶接した後に、第3内槽ブロック13を形成してもよい。この場合、第2内槽ブロック12の直径を測定し、その測定結果に基づいて第3内槽ブロック13の直径を調整しながら第3内槽ブロック13を形成してもよい。
【0025】
続いて、外槽20の上方部分を施工するにあたり、上外槽ブロック61、62を形成する(ステップS7)。図4の(a)、(b)では、それぞれ第1、2上外槽ブロック61、62を図示している。各上外槽ブロック61、62は、外槽20の上方部分を上下方向に2つに分割したときの各部分に相当する。第1上外槽ブロック61は前述したセンターリング26の上方に隣接する部分であり、第2上外槽ブロック62は第1上外槽ブロック61の上方に隣接する部分である。また、第1上外槽ブロック61はリング状であり、第2上外槽ブロック62はボウル状である。いずれの上外槽ブロック61、62も、外槽20の中心を通り鉛直方向に延びる中心軸の軸周り全周にわたって連続する形状を有している。
【0026】
図4の(a)で示すように、第1上外槽ブロック61は、湾曲する複数の金属プレート63を有している。これらの金属プレート63を互いに溶接することで第1上外槽ブロック61を形成することができる。なお、複数(例えば、2枚又は3枚)の金属プレート63を互いに溶接することで複数の小ブロックを形成し、形成した小ブロックを互いに溶接することで第1上外槽ブロック61を形成してもよい。また、第1上外槽ブロック61を形成した後は、第1上外槽ブロック61を焼鈍する。
【0027】
図4の(b)で示すように、第2上外槽ブロック62は、外槽20の頂部に相当するトップクラウン64と、リング状のアッパ―リング65とを有している。このトップクラウン64とアッパ―リング65を溶接することで第2上外槽ブロック62を形成することができる。トップクラウン64は、湾曲する複数の金属プレート66を互いに溶接することで形成されている。また、アッパ―リング65も湾曲する多数の金属プレート67を互いに溶接することで形成されている。なお、複数(例えば、2枚又は3枚)の金属プレート67を互いに溶接することで複数の小ブロックを形成し、形成した小ブロックを互いに溶接することでアッパ―リング65を形成してもよい。また、第2上外槽ブロック62を形成した後は、第2上外槽ブロック62を焼鈍する。
【0028】
続いて、第1、2上外槽ブロック61、62を互いに溶接する(ステップS8)。本実施形態では、はじめに第1上外槽ブロック61の下端と外槽20のセンターリング26の上端を溶接し(図4の(a))、第1上外槽ブロック61の上端と第2上外槽ブロック62の下端を溶接する(図4の(b))。その後、第1上外槽ブロック61と第2上外槽ブロック62の溶接部を局部焼鈍する。これにより、外槽20の上方部分の施工は完了する。同時に、外槽20の上方部分の施工が完了し、多重殻タンク100の施工が完了する。以上が本実施形態に係る多重殻タンク100の施工方法である。
【0029】
<変形例>
上記の実施形態では、多重殻タンク100が二重殻タンクである場合について説明したが、多重殻タンク100は三重殻タンクであってもよい。つまり、多重殻タンク100は、内槽10及び外槽20に加えて、内槽10と外槽20の間に位置する中間槽を備えていてもよい。この場合、外槽20の下方部分、中間槽の下方部分、内槽10、中間槽の上方部分、外槽20の上方部分の順で施工すればよい。
【0030】
また、上記の実施形態では、多重殻タンク100が球形の場合について説明したが、多重殻タンク100は楕円体形や角形など球形以外の形状を有していてもよい。
【0031】
また、上記の実施形態では、4つの内槽ブロック11~14を互いに溶接することで内槽10を施工したが、4つよりも少ない又は4つよりも多い内槽ブロックを互いに溶接することで内槽10を施工してもよい。同様に、上記の実施形態では、2つの上外槽ブロック61、62を互いに溶接することで外槽20の上方部分を施工する場合について説明したが、2つよりも多い上外槽ブロックを互いに溶接することで外槽20の上方部分を施工してもよい。さらに、上記の実施形態では、1つの下外槽ブロック21をセンターリング26に溶接することで、外槽20の下方部分を施工したが、複数の下外槽ブロックとセンターリング26を互いに溶接することで、外槽20の下方部分を施工してもよい。
【0032】
<まとめ>
本開示(1)は、内槽と外槽とを備えた多重殻タンクの施工方法であって、前記外槽の下方部分を施工し、前記外槽の下方部分を施工した後に前記内槽を施工し、前記内槽を施工した後に前記外槽の上方部分を施工し、前記内槽を施工するにあたり、多数の金属プレートを互いに溶接することで、前記内槽の中心を通り鉛直方向に延びる中心軸の軸周り全周にわたって連続する複数の内槽ブロックを形成し、形成した前記複数の内槽ブロックを互いに溶接している、多重殻タンクの施工方法である。
【0033】
この施工方法によれば、従来のように内槽を仮組みした後に金属プレートを互いに溶接するのではなく、内槽を仮組みしていない状態で金属プレートを互いに溶接することができる。そのため、溶接の作業者が無理な体勢で作業を行う必要がなくなり、場合によっては自動溶接装置で金属プレートの溶接が可能になる。そのため、多重殻タンクの品質を向上させることができる。
【0034】
本開示(2)は、前記複数の内槽ブロックを形成するのと並行して前記複数の内槽ブロックを互いに溶接する、本開示(1)の多重殻タンクの施工方法である。
【0035】
この施工方法によれば、施工期間を短縮することができる。
【0036】
本開示(3)は、前記複数の内槽ブロックの形成は、それぞれ複数の金属プレートを互いに溶接することで複数の小ブロックを形成し、形成した小ブロックを互いに溶接することにより行う、本開示(1)又は(2)の多重殻タンクの施工方法である。
【0037】
この施工方法によれば、小さいブロック単位での作業が増えるため、より効率よく内槽を施工することができる。
【0038】
本開示(4)は、前記内槽の施工は、前記複数の内槽ブロックのうち少なくとも最も下方の内槽ブロックと前記外槽の下方部分との間に仮受け支柱を配置した状態で行う、本開示(1)乃至(3)のうちいずれかの多重殻タンクの施工方法である。
【0039】
この施工方法によれば、外槽との間に隙間を確保しつつ内槽を施工することができる。
【0040】
本開示(5)は、前記外槽の上方部分を施工するにあたり、多数の金属プレートを互いに溶接することで、前記外槽の中心を通り鉛直方向に延びる中心軸の軸周り全周にわたって連続する複数の上外槽ブロックを形成し、形成した前記複数の上外槽ブロックを互いに溶接する、本開示(1)乃至(4)のうちいずれかの多重殻タンクの施工方法である。
【0041】
この施工方法によれば、外槽の上方部分を仮組みした後に金属プレートを互いに溶接するのではなく、外槽の上方部分を仮組みしていない状態で金属プレートを互いに溶接することができる。そのため、溶接業者が容易となり、場合によっては自動溶接装置で金属プレートの溶接が可能になる。そのため、多重殻タンクの品質が向上する。
【0042】
本開示(6)は、前記複数の上外槽ブロックをそれぞれ他の上外槽ブロックと溶接する前に焼鈍する、本開示(5)の多重殻タンクの施工方法である。
【0043】
この施工方法によれば、比較的小単位で焼鈍が行われるため、効率よく焼鈍を行うことができる。
【0044】
本開示(7)は、前記多重殻タンクは環状に並んだ複数の支柱を含む脚部を備えており、前記外槽の下方部分を施工するにあたり、多数の金属プレートを互いに溶接することで、前記外槽の下方部分のうち底部分を含む下外槽ブロックを形成し、形成した下外槽ブロックを前記複数の支柱で囲むように前記脚部を施工し、複数の金属プレートを互いに溶接することで前記外槽の下方部分のうち前記脚部の内側で前記複数の支柱に固定されるリング状のセンターリングを形成し、形成した前記センターリングに前記下外槽ブロックを溶接する、本開示(1)乃至(6)のうちいずれかの多重殻タンクの施工方法である。
【0045】
この施工方法によれば、外槽の下方部分を仮組みした後に金属プレートを互いに溶接するのではなく、外槽の下方部分を仮組みしていない状態で金属プレートを互いに溶接することができる。そのため、溶接作業が容易となり、場合によっては自動溶接装置で金属プレートの溶接が可能になる。そのため、多重殻タンクの品質を向上させることができる。
【符号の説明】
【0046】
10 内槽
11 第1内槽ブロック
12 第2内槽ブロック
13 第3内槽ブロック
14 第4内槽ブロック
20 外槽
21 下外槽ブロック
24、25、27、43~50、63~67 金属プレート
26 センターリング
30 脚部
31 支柱
61 第1上外槽ブロック
62 第2上外槽ブロック
100 多重殻タンク
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2022-07-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内槽と外槽とを備えた多重殻タンクの施工方法であって、
前記外槽の下方部分を施工し、
前記外槽の下方部分を施工した後に前記内槽を施工し、
前記内槽を施工した後に前記外槽の上方部分を施工し、
前記内槽を施工するにあたり、多数の金属プレートを互いに溶接することで、前記内槽の中心を通り鉛直方向に延びる中心軸の軸周り全周にわたって連続する複数の内槽ブロックを形成し、形成した前記複数の内槽ブロックを互いに溶接し、
前記複数の内槽ブロックは、第1内槽ブロック、第2内槽ブロック、及び、第3内槽ブロックを含み、第3内槽ブロックを前記外槽の内側に相当するエリア以外で形成するのと並行して前記第1内槽ブロックと前記第2内槽ブロックを前記外槽の内側に相当するエリアで互いに溶接する、多重殻タンクの施工方法。
【請求項2】
前記複数の内槽ブロックの形成は、それぞれ複数の金属プレートを互いに溶接することで複数の小ブロックを形成し、形成した小ブロックを互いに溶接することにより行う、請求項1に記載の多重殻タンクの施工方法。
【請求項3】
前記内槽の施工は、前記複数の内槽ブロックのうち少なくとも最も下方の内槽ブロックと前記外槽の下方部分との間に仮受け支柱を配置した状態で行う、請求項1に記載の多重殻タンクの施工方法。
【請求項4】
前記外槽の上方部分を施工するにあたり、多数の金属プレートを互いに溶接することで、前記外槽の中心を通り鉛直方向に延びる中心軸の軸周り全周にわたって連続する複数の上外槽ブロックを形成し、形成した前記複数の上外槽ブロックを互いに溶接する、請求項1に記載の多重殻タンクの施工方法。
【請求項5】
前記複数の上外槽ブロックをそれぞれ他の上外槽ブロックと溶接する前に焼鈍する、請求項4に記載の多重殻タンクの施工方法。
【請求項6】
内槽と外槽とを備えた多重殻タンクの施工方法であって、
前記外槽の下方部分を施工し、
前記外槽の下方部分を施工した後に前記内槽を施工し、
前記内槽を施工した後に前記外槽の上方部分を施工し、
前記内槽を施工するにあたり、多数の金属プレートを互いに溶接することで、前記内槽の中心を通り鉛直方向に延びる中心軸の軸周り全周にわたって連続する複数の内槽ブロックを形成し、形成した前記複数の内槽ブロックを互いに溶接し、
前記多重殻タンクは環状に並んだ複数の支柱を含む脚部を備えており、
前記外槽の下方部分を施工するにあたり、多数の金属プレートを互いに溶接することで、前記外槽の下方部分のうち底部分を含む下外槽ブロックを形成し、形成した下外槽ブロックを前記複数の支柱で囲むように前記脚部を施工し、複数の金属プレートを互いに溶接することで前記外槽の下方部分のうち前記脚部の内側で前記複数の支柱に固定されるリング状のセンターリングを形成し、形成した前記センターリングに前記下外槽ブロックを溶接する多重殻タンクの施工方法。