(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167846
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】繊維強化複合材用繊維構造体及び繊維強化複合材
(51)【国際特許分類】
D03D 1/00 20060101AFI20231116BHJP
D03D 11/00 20060101ALI20231116BHJP
C08J 5/04 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
D03D1/00 A
D03D11/00 Z
C08J5/04 CER
C08J5/04 CES
C08J5/04 CEZ
C08J5/04 CFC
C08J5/04 CFD
C08J5/04 CFG
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079347
(22)【出願日】2022-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】荻原 誠司
【テーマコード(参考)】
4F072
4L048
【Fターム(参考)】
4F072AA04
4F072AA07
4F072AA08
4F072AB04
4F072AB06
4F072AB08
4F072AB09
4F072AB10
4F072AB28
4F072AB30
4F072AD04
4F072AD05
4F072AD08
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4F072AD37
4F072AD38
4F072AD41
4F072AD45
4F072AD52
4F072AG03
4F072AK05
4F072AL01
4L048AA02
4L048AA03
4L048AA05
4L048AA15
4L048AA24
4L048AA25
4L048AA34
4L048AA48
4L048AB06
4L048AB11
4L048AC09
4L048BA09
4L048CA00
4L048CA01
4L048DA41
4L048EB00
(57)【要約】
【課題】繊維強化複合材の低下強度を抑制できる繊維強化複合材用繊維構造体及び繊維強化複合材を提供する。
【解決手段】第3方向Zの第1端に位置する第2糸層22は、第1方向Xに隣り合う緯糸24の間において第2方向Yに延びるとともに、第2結合糸32と係合される第1補助糸25を有する。第3方向Zの第2端に位置する第2糸層22は、第1方向Xに隣り合う緯糸24の間において第2方向Yに延びるとともに、第1結合糸31と係合される第2補助糸26を有する。第1結合糸31、第2結合糸32、第1補助糸25、第2補助糸26の外径は、経糸23及び緯糸24の外径よりも小さい。第1補助糸25と第2補助糸26とは、第3方向Zに重なっている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に延びる第1強化繊維糸が前記第1方向に対して直交する方向である第2方向に複数配列された第1糸層と、前記第2方向に延びる第2強化繊維糸が前記第1方向に複数配列された第2糸層とが前記第1方向及び前記第2方向の両方に対して直交する方向である第3方向において積層されるとともに、前記第3方向における両端には前記第2糸層が位置する積層体と、
前記第2方向に隣り合う前記第1強化繊維糸の間に配置されるとともに、前記第3方向の第1端に位置する前記第2糸層の前記第2強化繊維糸に係合される第1結合糸と、
前記第2方向に隣り合う前記第1強化繊維糸の間に配置されるとともに、前記第3方向において前記第1端とは反対の端である第2端に位置する前記第2糸層の前記第2強化繊維糸に係合される第2結合糸と、
を備え、
前記第3方向の第1端に位置する前記第2糸層は、前記第1方向に隣り合う前記第2強化繊維糸の間において前記第2方向に延びるとともに、前記第2結合糸と係合される第1補助糸を有し、
前記第3方向の第2端に位置する前記第2糸層は、前記第1方向に隣り合う前記第2強化繊維糸の間において前記第2方向に延びるとともに、前記第1結合糸と係合される第2補助糸を有し、
前記第1結合糸、前記第2結合糸、前記第1補助糸、及び前記第2補助糸のそれぞれの外径は、前記第1強化繊維糸及び前記第2強化繊維糸のそれぞれの外径よりも小さく、
前記第1補助糸と前記第2補助糸とは、前記第3方向に重なっていることを特徴とする繊維強化複合材用繊維構造体。
【請求項2】
前記第1強化繊維糸及び前記第2強化繊維糸はそれぞれ、連続糸である請求項1に記載の繊維強化複合材用繊維構造体。
【請求項3】
前記第1強化繊維糸及び前記第2強化繊維糸はそれぞれ、断面形状が円形状の丸糸である請求項1に記載の繊維強化複合材用繊維構造体。
【請求項4】
前記第2方向に隣り合う前記第1強化繊維糸の間には、前記第1結合糸及び前記第2結合糸の両方が配置されている請求項1に記載の繊維強化複合材用繊維構造体。
【請求項5】
前記第1結合糸、前記第2結合糸、前記第1補助糸、及び前記第2補助糸はそれぞれ、断面形状が円形状の丸糸である請求項1に記載の繊維強化複合材用繊維構造体。
【請求項6】
繊維構造体がマトリックス中に複合化された繊維強化複合材であって、前記繊維構造体は請求項1に記載の繊維強化複合材用繊維構造体である繊維強化複合材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化複合材用繊維構造体及び繊維強化複合材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、繊維構造体がマトリックス中に複合化された繊維強化複合材が知られている。特許文献1には、積層体と、第1結合糸と、第2結合糸とを備える繊維構造体が開示されている。
【0003】
積層体は、第1方向に延びる第1糸が第1方向に対して直交する方向である第2方向に複数配列された第1糸層と、第2方向に延びる第2糸が第1方向に複数配列された第2糸層とを有している。積層体は、第1糸層と第2糸層とが第1方向及び第2方向の両方に対して直交する方向である第3方向に積層されることによって形成されている。積層体において、第3方向の両端には、第2糸層が配置されている。第1糸及び第2糸は、強化繊維糸である。
【0004】
第1結合糸及び第2結合糸はそれぞれ、第2方向に隣り合う第1糸の間に配置されている。第1結合糸及び第2結合糸はそれぞれ、第3方向の両端に位置する第2糸層の複数の第2糸に係合されている。これにより、第3方向に積層された第1糸層及び第2糸層が結合されている。第1結合糸及び第2結合糸のそれぞれの外径は、第1糸及び第2糸のそれぞれの外径よりも小さい。つまり、第1結合糸及び第2結合糸は、第1糸及び第2糸よりも細糸である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記繊維構造体のように、第2糸が強化繊維糸である場合、第2糸の表面の摩擦係数は比較的小さいため、第1結合糸及び第2結合糸に対して第2糸は滑りやすい。また、第1結合糸及び第2結合糸が第2糸よりも細糸である場合、第1結合糸及び第2結合糸による第2糸の拘束力は弱くなる。このため、第1結合糸の張力と第2結合糸の張力が異なっていると、第3方向の両端に位置する第2糸層において、張力が弱い方の結合糸に拘束されている第2糸が製織時に第1方向にずれることがある。第2糸が第1方向にずれると、第1方向に隣り合う第2糸の間に隙間が生じる。このように隙間が生じた繊維構造体を用いて繊維強化複合材を製造すると、隙間によって繊維強化複合材の強度が低下するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するための繊維強化複合材用繊維構造体は、第1方向に延びる第1強化繊維糸が前記第1方向に対して直交する方向である第2方向に複数配列された第1糸層と、前記第2方向に延びる第2強化繊維糸が前記第1方向に複数配列された第2糸層とが前記第1方向及び前記第2方向の両方に対して直交する方向である第3方向において積層されるとともに、前記第3方向における両端には前記第2糸層が位置する積層体と、前記第2方向に隣り合う前記第1強化繊維糸の間に配置されるとともに、前記第3方向の第1端に位置する前記第2糸層の前記第2強化繊維糸に係合される第1結合糸と、前記第2方向に隣り合う前記第1強化繊維糸の間に配置されるとともに、前記第3方向において前記第1端とは反対の端である第2端に位置する前記第2糸層の前記第2強化繊維糸に係合される第2結合糸と、を備え、前記第3方向の第1端に位置する前記第2糸層は、前記第1方向に隣り合う前記第2強化繊維糸の間において前記第2方向に延びるとともに、前記第2結合糸と係合される第1補助糸を有し、前記第3方向の第2端に位置する前記第2糸層は、前記第1方向に隣り合う前記第2強化繊維糸の間において前記第2方向に延びるとともに、前記第1結合糸と係合される第2補助糸を有し、前記第1結合糸、前記第2結合糸、前記第1補助糸、及び前記第2補助糸のそれぞれの外径は、前記第1強化繊維糸及び前記第2強化繊維糸のそれぞれの外径よりも小さく、前記第1補助糸と前記第2補助糸とは、前記第3方向に重なっていることを要旨とする。
【0008】
第3方向の第1端に位置する第2糸層において、第1方向に隣り合う第2強化繊維糸の間には、外径が第2強化繊維糸の外径よりも小さい第1補助糸が設けられている。このため、第1補助糸の位置に第2強化繊維糸が設けられている場合と比較して、第1方向に隣り合う第2強化繊維糸の間隔が狭くなる。また、第3方向の第2端に位置する第2糸層において、第1方向に隣り合う第2強化繊維糸の間には、外径が第2強化繊維糸の外径よりも小さい第2補助糸が設けられている。このため、第2補助糸の位置に第2強化繊維糸が設けられている場合と比較して、第1方向に隣り合う第2強化繊維糸の間隔が狭くなる。
【0009】
これにより、第1結合糸において第2補助糸を両側から挟み込む部分の関係は平行に近付くため、第2補助糸は第1方向にずれにくくなる。また、第1結合糸において第2補助糸を両側から挟み込む部分の関係が平行に近付くと、第2強化繊維糸を両側から挟み込む部分の関係も平行に近付く。したがって、第3方向の第1端に位置する第2糸層の第2強化繊維糸も第1方向にずれにくくなる。
【0010】
同様に、第2結合糸において第1補助糸を両側から挟み込む部分の関係は平行に近付くため、第1補助糸は第1方向にずれにくくなる。また、第2結合糸において第1補助糸を両側から挟み込む部分の関係が平行に近付くと、第2強化繊維糸を両側から挟み込む部分の関係も平行に近付く。したがって、第3方向の第2端に位置する第2糸層の第2強化繊維糸も第1方向にずれにくくなる。
【0011】
よって、第3方向の両端に位置する第2糸層において、第1方向に隣り合う第2強化繊維糸の間に隙間が生じにくくなる。その結果、繊維強化複合材用繊維構造体を用いて製造された繊維強化複合材の強度低下を抑制できる。
【0012】
上記繊維強化複合材用繊維構造体において、前記第1強化繊維糸及び前記第2強化繊維糸はそれぞれ、連続糸であってもよい。
上記構成では、第1強化繊維糸及び第2強化繊維糸がそれぞれ紡績糸である場合と比較して、繊維強化複合材の強度が向上する。
【0013】
上記繊維強化複合材用繊維構造体において、前記第1強化繊維糸及び前記第2強化繊維糸はそれぞれ、断面形状が円形状の丸糸であってもよい。
上記構成では、第1強化繊維糸及び第2強化繊維糸が、断面形状が楕円形状の扁平糸である場合に必要となる特殊な給糸装置が不要であるため、製織時に通常の給糸装置を使用することができる。
【0014】
上記繊維強化複合材用繊維構造体において、前記第2方向に隣り合う前記第1強化繊維糸の間には、前記第1結合糸及び前記第2結合糸の両方が配置されていてもよい。
上記構成では、第1結合糸と第2結合糸とが第2方向において第1強化繊維糸を介して交互に配置されている場合と比較して、第3方向の両端に位置する第2糸層における第2強化繊維糸のずれをより規制できる。
【0015】
上記繊維強化複合材用繊維構造体において、前記第1結合糸、前記第2結合糸、前記第1補助糸、及び前記第2補助糸はそれぞれ、断面形状が円形状の丸糸であってもよい。
上記構成では、第1結合糸、第2結合糸、第1補助糸、及び第2補助糸がそれぞれ、断面形状が楕円形状の扁平糸である場合と比較して、繊維強化複合材における第1強化繊維糸及び第2強化繊維糸の割合を上げることができる。
【0016】
上記問題点を解決するための繊維強化複合材は、繊維構造体がマトリックス中に複合化された繊維強化複合材であって、前記繊維構造体は請求項1に記載の繊維強化複合材用繊維構造体であることを要旨とする。
【0017】
第3方向の第1端に位置する第2糸層において、第1方向に隣り合う第2強化繊維糸の間には、外径が第2強化繊維糸の外径よりも小さい第1補助糸が設けられている。このため、第1補助糸の位置に第2強化繊維糸が設けられている場合と比較して、第1方向に隣り合う第2強化繊維糸の間隔が狭くなる。また、第3方向の第2端に位置する第2糸層において、第1方向に隣り合う第2強化繊維糸の間には、外径が第2強化繊維糸の外径よりも小さい第2補助糸が設けられている。このため、第2補助糸の位置に第2強化繊維糸が設けられている場合と比較して、第1方向に隣り合う第2強化繊維糸の間隔が狭くなる。
【0018】
これにより、第1結合糸において第2補助糸を両側から挟み込む部分の関係は平行に近付くため、第2補助糸は第1方向にずれにくくなる。また、第1結合糸において第2補助糸を両側から挟み込む部分の関係が平行に近付くと、第2強化繊維糸を両側から挟み込む部分の関係も平行に近付く。したがって、第3方向の第1端に位置する第2糸層の第2強化繊維糸も第1方向にずれにくくなる。
【0019】
同様に、第2結合糸において第1補助糸を両側から挟み込む部分の関係は平行に近付くため、第1補助糸は第1方向にずれにくくなる。また、第2結合糸において第1補助糸を両側から挟み込む部分の関係が平行に近付くと、第2強化繊維糸を両側から挟み込む部分の関係も平行に近付く。したがって、第3方向の第2端に位置する第2糸層の第2強化繊維糸も第1方向にずれにくくなる。
【0020】
よって、第3方向の両端に位置する第2糸層において、第1方向に隣り合う第2強化繊維糸の間に隙間が生じにくくなる。その結果、繊維強化複合材用繊維構造体がマトリックス中に複合化された繊維強化複合材の強度低下を抑制できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、繊維強化複合材の強度低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施形態における繊維強化複合材を示す斜視図である。
【
図2】実施形態における繊維構造体を示す斜視図である。
【
図3】実施形態における繊維構造体を示す断面図である。
【
図4】実施形態における繊維構造体を示す断面図である。
【
図5】変更例における繊維構造体を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、繊維強化複合材用繊維構造体及び繊維強化複合材を具体化した一実施形態を
図1~
図4にしたがって説明する。繊維強化複合材用繊維構造体とは、繊維強化複合材に用いられる繊維構造体である。以下では、「繊維強化複合材用繊維構造体」を単に「繊維構造体」という。
【0024】
図1に示すように、繊維強化複合材10は、繊維構造体11がマトリックス12中に複合化されることによって形成されている。繊維構造体11は、繊維強化複合材10の強化基材である。マトリックス12は、例えば、熱硬化性樹脂のエポキシ樹脂である。
【0025】
図2に示すように、繊維構造体11は、積層体20と、複数の第1結合糸31と、複数の第2結合糸32とを備えている。
<積層体>
積層体20は、1つ以上の第1糸層21と、2つ以上の第2糸層22とを有している。本実施形態の繊維構造体11は、2つの第1糸層21と2つの第2糸層22とを有している。
【0026】
第1糸層21は、第1強化繊維糸としての経糸23を有している。経糸23は、第1方向Xに沿って直線状に延びている。経糸23は、第1方向Xに対して直交する方向である第2方向Yに複数配列されている。つまり、第1糸層21は、第1方向Xに延びる経糸23が第2方向Yに複数配列されることによって形成されている。第2糸層22は、第2強化繊維糸としての緯糸24を有している。緯糸24は、第2方向Yに沿って直線状に延びている。緯糸24は、第1方向Xに複数配列されている。
【0027】
積層体20は、第1糸層21と第2糸層22とが、第1方向X及び第2方向Yの両方に対して直交する方向である第3方向Zに積層されることによって形成されている。積層体20における第3方向Zの両端には、第2糸層22が配置されている。本実施形態の積層体20は、第3方向Zの第1端から第1端とは反対に位置する第2端に向かって、第2糸層22、第1糸層21、第1糸層21、第2糸層22がこの順に積層されることによって形成されている。したがって、本実施形態の積層体20が有する2つの第2糸層22は、第3方向Zの両端に位置する第2糸層22である。
【0028】
第2方向Yにおいて隣り合う経糸23の間隔は、各第1糸層21で同じである。積層体20において、第2方向Yにおける経糸23の位置は、各第1糸層21で同じである。したがって、各第1糸層21の経糸23は、第3方向Zに重なっている。また、第1方向Xにおいて隣り合う緯糸24の間隔は、各第2糸層22で同じである。積層体20において、第1方向Xにおける緯糸24の位置は、各第2糸層22で同じである。したがって、各第2糸層22の緯糸24は、第3方向Zに重なっている。
【0029】
第3方向Zの第1端に位置する第2糸層22は、複数の緯糸24に加えて複数の第1補助糸25を有している。各第1補助糸25は、第2方向Yに沿って直線状に延びている。複数の第1補助糸25は、第1方向Xに配列されている。第1補助糸25は、第1方向Xにおいて隣り合う緯糸24の間に配置されている。つまり、第3方向Zの第1端に位置する第2糸層22は、第2方向Yに延びる緯糸24と第1補助糸25とが第1方向Xにおいて交互に配列されることによって形成されている。
【0030】
第3方向Zの第2端に位置する第2糸層22は、複数の緯糸24に加えて複数の第2補助糸26を有している。各第2補助糸26は、第2方向Yに沿って直線状に延びている。複数の第2補助糸26は、第1方向Xに配列されている。第2補助糸26は、第1方向Xにおいて隣り合う緯糸24の間に配置されている。つまり、第3方向Zの第2端に位置する第2糸層22は、第2方向Yに延びる緯糸24と第2補助糸26とが第1方向Xにおいて交互に配列されることによって形成されている。
【0031】
第3方向Zの第1端に位置する第2糸層22において第1方向Xに隣り合う第1補助糸25の間隔は、第3方向Zの第2端に位置する第2糸層22において第1方向Xに隣り合う第2補助糸26の間隔と同じである。積層体20において、第1方向Xにおける第1補助糸25の位置は、第1方向Xにおける第2補助糸26の位置と同じである。したがって、第1補助糸25と第2補助糸26とは、第3方向Zに重なっている。
【0032】
<第1結合糸>
複数の第1結合糸31は、第2方向Yに配列されている。第1結合糸31は、第2方向Yに隣り合う経糸23の間に配置されている。
【0033】
図3に示すように、第1結合糸31は、複数の第1緯糸係合部31aと、複数の第1補助糸係合部31bと、複数の第1接続部31cとを有している。第1緯糸係合部31aは、第3方向Zの第1端に位置する第2糸層22の緯糸24に係合される部分である。第1緯糸係合部31aは、第3方向Zの第1端に位置する第2糸層22の緯糸24の外側を通るように第1結合糸31が折り返されることによって形成されている。第1補助糸係合部31bは、第3方向Zの第2端に位置する第2糸層22の第2補助糸26に係合される部分である。第1補助糸係合部31bは、第3方向Zの第2端に位置する第2糸層22の第2補助糸26の外側を通るように第1結合糸31が折り返されることによって形成されている。第1接続部31cは、第1緯糸係合部31aと第1補助糸係合部31bとを接続する部分である。第1接続部31cは、第1方向Xに隣り合う緯糸24と補助糸25,26との間において第3方向Zに延びている。第1結合糸31において、第1緯糸係合部31aと第1補助糸係合部31bとは、第1接続部31cを介して交互に繰り返されている。第1結合糸31は、第3方向Zの第1端に位置する第2糸層22の複数の緯糸24に係合されるとともに、第3方向Zの第2位置に位置する第2糸層22の複数の第2補助糸26に係合されている。
【0034】
<第2結合糸>
図2に示すように、複数の第2結合糸32は、第2方向Yに配列されている。第2結合糸32は、第2方向Yに隣り合う経糸23の間に配置されている。本実施形態では、第2方向Yに隣り合う経糸23の間には、第1結合糸31及び第2結合糸32の両方が配置されている。
【0035】
図4に示すように、第2結合糸32は、複数の第2緯糸係合部32aと、複数の第2補助糸係合部32bと、複数の第2接続部32cとを有している。第2緯糸係合部32aは、第3方向Zの第2端に位置する第2糸層22の緯糸24に係合される部分である。第2緯糸係合部32aは、第3方向Zの第2端に位置する第2糸層22の緯糸24の外側を通るように第2結合糸32が折り返されることによって形成されている。第2補助糸係合部32bは、第3方向Zの第1端に位置する第2糸層22の第1補助糸25に係合される部分である。第2補助糸係合部32bは、第3方向Zの第1端に位置する第2糸層22の第1補助糸25の外側を通るように第2結合糸32が折り返されることによって形成されている。第2接続部32cは、第2緯糸係合部32aと第2補助糸係合部32bとを接続する部分である。第2接続部32cは、第1方向Xに隣り合う緯糸24と補助糸25,26との間において第3方向Zに延びている。第2結合糸32において、第2緯糸係合部32aと第2補助糸係合部32bとは、第2接続部32cを介して交互に繰り返されている。第2結合糸32は、第3方向Zの第2端に位置する第2糸層22の複数の緯糸24に係合されるとともに、第3方向Zの第1位置に位置する第2糸層22の複数の第1補助糸25に係合されている。
【0036】
第3方向Zの第1端に位置する第2糸層22と、第3方向Zの第2端に位置する第2糸層22とは、第1結合糸31及び第2結合糸32によって結合されている。これにより、第3方向Zの第1端に位置する第2糸層22と第3方向Zの第2端に位置する第2糸層22との間に位置する糸層である2つの第1糸層21も結合されている。つまり、第1結合糸31及び第2結合糸32は、積層体20を構成する第1糸層21及び第2糸層22を結合している。
【0037】
<各糸の詳細>
経糸23及び緯糸24はそれぞれ、強化繊維糸である。本実施形態の強化繊維は、炭素繊維である。本実施形態の経糸23及び緯糸24は、連続糸である。本実施形態の経糸23及び緯糸24は、断面形状が楕円形状の扁平糸である。本実施形態では、経糸23及び緯糸24のそれぞれに用いられる糸は、同じ糸である。
【0038】
本実施形態の第1結合糸31及び第2結合糸32はそれぞれ、フェノキシ樹脂製の糸である。本実施形態の第1結合糸31及び第2結合糸32は、紡績糸である。本実施形態の第1結合糸31及び第2結合糸32は、断面形状が円形状の丸糸である。第1結合糸31及び第2結合糸32のそれぞれの外径は、経糸23及び緯糸24のそれぞれの外径よりも小さい。つまり、第1結合糸31及び第2結合糸32は、経糸23及び緯糸24よりも細糸である。
【0039】
本実施形態の第1補助糸25は、紡績糸である。本実施形態の第1補助糸25は、断面形状が円形状の丸糸である。第1補助糸25の外径は、経糸23及び緯糸24のそれぞれの外径よりも小さい。詳しくは、第1補助糸25の外径は、経糸23及び緯糸24のそれぞれの短径よりも小さい。つまり、第1補助糸25は、経糸23及び緯糸24よりも細糸である。
【0040】
第1補助糸25の外径は、第2結合糸32の外径以下であるのが好ましい。「第1補助糸25の外径が第2結合糸32の外径以下である」は、第1補助糸25の外径が第2結合糸32の外径と同じである場合と、第1補助糸25の外径が第2結合糸32の外径よりも小さい場合とを含んでいる。本実施形態の第1補助糸25の外径は、第2結合糸32の外径と同じである。
【0041】
第1補助糸25の材質は、第2結合糸32の材質と同等であるのが好ましい。「第1補助糸25の材質が第2結合糸32の材質と同等である」は、第1補助糸25の材質が第2結合糸32の材質と同じである場合を含んでいる。また、「第1補助糸25の材質が第2結合糸32の材質と同等である」は、第1補助糸25及び第2結合糸32の材質が同じである場合の第2結合糸32に対する第1補助糸25の摩擦係数が変化しない範囲で、第1補助糸25の材質が第2結合糸32の材質と若干異なっている場合も含んでいる。本実施形態の第1補助糸25は、フェノキシ樹脂製の糸である。したがって、本実施形態では、第1補助糸25の材質は、第2結合糸32の材質と同じである。
【0042】
本実施形態の第2補助糸26は、紡績糸である。本実施形態の第2補助糸26は、断面形状が円形状の丸糸である。第2補助糸26の外径は、経糸23及び緯糸24のそれぞれの外径よりも小さい。詳しくは、第2補助糸26の外径は、経糸23及び緯糸24のそれぞれの短径よりも小さい。つまり、第2補助糸26は、経糸23及び緯糸24よりも細糸である。
【0043】
第2補助糸26の外径は、第1結合糸31の外径以下であるのが好ましい。「第2補助糸26の外径が第1結合糸31の外径以下である」は、第2補助糸26の外径が第1結合糸31の外径と同じである場合と、第2補助糸26の外径が第1結合糸31の外径よりも小さい場合とを含んでいる。本実施形態の第2補助糸26の外径は、第1結合糸31の外径と同じである。
【0044】
第2補助糸26の材質は、第1結合糸31の材質と同等であるのが好ましい。「第2補助糸26の材質が第1結合糸31の材質と同等である」は、第2補助糸26の材質が第1結合糸31の材質と同じである場合を含んでいる。また、「第2補助糸26の材質が第1結合糸31の材質と同等である」は、第2補助糸26及び第1結合糸31の材質が同じである場合の第1結合糸31に対する第2補助糸26の摩擦係数が変化しない範囲で、第2補助糸26の材質が第1結合糸31の材質と若干異なっている場合も含んでいる。本実施形態の第2補助糸26は、フェノキシ樹脂製の糸である。したがって、本実施形態では、第2補助糸26の材質は、第1結合糸31の材質と同じである。
【0045】
本実施形態では、第1補助糸25、第2補助糸26、第1結合糸31、及び第2結合糸32のそれぞれに用いられる糸は、同じ糸である。
[本実施形態の作用及び効果]
本実施形態の作用及び効果を説明する。
【0046】
(1)第3方向Zの第1端に位置する第2糸層22において、第1方向Xに隣り合う緯糸24の間には、外径が緯糸24の外径よりも小さい第1補助糸25が設けられている。このため、第1補助糸25の位置に緯糸24が設けられている場合と比較して、第1方向Xに隣り合う緯糸24の間隔が狭くなる。また、第3方向Zの第2端に位置する第2糸層22において、第1方向Xに隣り合う緯糸24の間には、外径が緯糸24の外径よりも小さい第2補助糸26が設けられている。このため、第2補助糸26の位置に緯糸24が設けられている場合と比較して、第1方向Xに隣り合う緯糸24の間隔が狭くなる。
【0047】
これにより、第1結合糸31において第2補助糸26を両側から挟み込む第1接続部31cの関係は平行に近付くため、第2補助糸26は第1方向Xにずれにくくなる。また、第1結合糸31において第2補助糸26を両側から挟み込む第1接続部31cの関係が平行に近付くと、緯糸24を両側から挟み込む第1接続部31cの関係も平行に近付く。したがって、第3方向Zの第1端に位置する第2糸層22の緯糸24も第1方向Xにずれにくくなる。
【0048】
同様に、第2結合糸32において第1補助糸25を両側から挟み込む第2接続部32cの関係は平行に近付くため、第1補助糸25は第1方向Xにずれにくくなる。また、第1補助糸25を両側から挟み込む第2接続部32cの関係が平行に近付くと、緯糸24を両側から挟み込む第2接続部32cの関係も平行に近付く。したがって、第3方向Zの第2端に位置する第2糸層22の緯糸24も第1方向Xにずれにくくなる。
【0049】
よって、第3方向Zの両端に位置する第2糸層22において、第1方向Xに隣り合う緯糸24の間に隙間が生じにくくなる。その結果、繊維構造体11を用いて製造した繊維強化複合材10の強度低下を抑制できる。
【0050】
(2)第1補助糸25と第2補助糸26とは、第3方向Zに重なっている。これにより、第3方向Zの第1端に位置する第2糸層22の緯糸24と、第3方向Zの第2端に位置する第2糸層22の緯糸24も、第3方向Zに重なりやすくなる。よって、繊維強化複合材10の性能を設計した性能に近づけることができる。
【0051】
(3)経糸23及び緯糸24はそれぞれ、連続糸である。したがって、経糸23及び緯糸24がそれぞれ紡績糸である場合と比較して、繊維強化複合材10の強度が向上する。
(4)第2方向Yに隣り合う経糸23の間には、第1結合糸31及び第2結合糸32の両方が配置されている。したがって、第1結合糸31と第2結合糸32とが第2方向Yにおいて経糸23を介して交互に配置されている場合と比較して、第3方向Zの両端に位置する第2糸層22における緯糸24のずれをより規制できる。
【0052】
(5)第1結合糸31、第2結合糸32、第1補助糸25、及び第2補助糸26はそれぞれ、丸糸である。このため、第1結合糸31、第2結合糸32、第1補助糸25、及び第2補助糸26がそれぞれ扁平糸である場合と比較して、繊維強化複合材10における経糸23及び緯糸24の割合を上げることができる。
【0053】
(6)第1補助糸25の材質は、第2結合糸32の材質と同等である。したがって、第1補助糸25の材質が第2結合糸32の材質と異なっている場合と比較して、第1補助糸25のずれをより規制できる。また、第2補助糸26の材質は、第1結合糸31の材質と同等である。したがって、第2補助糸26の材質が第1結合糸31の材質と異なっている場合と比較して、第2補助糸26のずれをより規制できる。
【0054】
(7)第1補助糸25の外径は、第2結合糸32の外径以下である。したがって、第1補助糸25の外径が第2結合糸32の外径よりも大きい場合と比較して、第1補助糸25のずれをより規制できる。また、第2補助糸26の外径は、第1結合糸31の外径以下である。したがって、第2補助糸26の外径が第1結合糸31の外径よりも大きい場合と比較して、第2補助糸26のずれをより規制できる。
【0055】
(8)複数の第1補助糸25は、第3方向Zの第1端に位置する第2糸層22内に配置されている。このため、第3方向Zの第1端に位置する第2糸層22において、第1方向Xに隣り合う緯糸24の隙間を小さくすることができる。よって、第3方向Zの第1端に位置する第2糸層22の緯糸24のずれをより規制できる。また、複数の第2補助糸26は、第3方向Zの第2端に位置する第2糸層22内に配置されている。この場合、第3方向Zの第2端に位置する第2糸層22において、第1方向Xに隣り合う緯糸24の隙間を小さくすることができる。よって、第3方向Zの第1端に位置する第2糸層22の緯糸24のずれをより規制できる。
【0056】
(9)経糸23及び緯糸24のそれぞれに用いられる糸は、同じ糸である。また、第1補助糸25、第2補助糸26、第1結合糸31、及び第2結合糸32のそれぞれに用いられる糸は、同じ糸である。したがって、2種類の糸を用意するだけで、繊維構造体11を製造することができる。
【0057】
[変更例]
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施できる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
【0058】
○ 経糸23及び緯糸24はそれぞれ、強化繊維糸であれば、紡績糸であってもよい。
○ 経糸23及び緯糸24はそれぞれ、強化繊維糸であれば、扁平糸でなくてもよい。
例えば、
図5に示すように、経糸23及び緯糸24はそれぞれ、丸糸であってもよい。この場合、経糸23及び緯糸24が扁平糸である場合に必要となる特殊な給糸装置が不要であるため、製織時に通常の給糸装置を使用することができる。なお、通常の給糸装置とは、例えば、レピア織機のカラーセレクタ装置やエアジェット織機のメインノズルのことを指す。
【0059】
なお、経糸23の断面形状と緯糸24の断面形状は異なっていてもよい。また、経糸23及び緯糸24の断面形状は、楕円形状や円形状に限定されない。
○ 第2方向Yに隣り合う経糸23の間には、第1結合糸31及び第2結合糸32の両方が配置されていなくてもよい。例えば、第1結合糸31と第2結合糸32とは、第2方向Yにおいて経糸23を介して交互に配置されていてもよい。
【0060】
○ 第1結合糸31及び第2結合糸32はそれぞれ、丸糸でなくてもよい。例えば、第1結合糸31及び第2結合糸32はそれぞれ、扁平糸であってもよい。なお、第1結合糸31の断面形状と第2結合糸32の断面形状は異なっていてもよい。また、第1結合糸31及び第2結合糸32の断面形状は、円形状や楕円形状に限定されない。
【0061】
○ 第1補助糸25の外径は、経糸23及び緯糸24のそれぞれの外径よりも小さければ、第2結合糸32の外径よりも大きくてもよい。
○ 第2補助糸26の外径は、経糸23及び緯糸24のそれぞれの外径よりも小さければ、第1結合糸31の外径よりも大きくてもよい。
【0062】
○ 第1補助糸25及び第2補助糸26はそれぞれ、丸糸でなくてもよい。例えば、第1補助糸25及び第2補助糸26はそれぞれ、扁平糸であってもよい。なお、第1補助糸25の断面形状と第2補助糸26の断面形状は異なっていてもよい。また、第1補助糸25及び第2補助糸26の断面形状は、円形状や楕円形状に限定されない。
【0063】
○ マトリックス12は、エポキシ樹脂に限定されない。マトリックス12は、例えば、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂などの他の熱硬化性樹脂であってもよい。また、マトリックス12は、例えば、ポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド樹脂、ABS樹脂等といった熱可塑性樹脂であってもよい。
【0064】
○ 強化繊維は、炭素繊維に限定されない。強化繊維は、ガラス繊維、炭化ケイ素系セラミック繊維、アラミド繊維、超高分子量ポリエチレン繊維等であってもよい。
○ 第1結合糸31、第2結合糸32、第1補助糸25、及び第2補助糸26の材質は、フェノキシ樹脂に限定さない。第1結合糸31、第2結合糸32、第1補助糸25、及び第2補助糸26の材質は、例えば、ナイロンであってもよい。
【0065】
○ 第1補助糸25の材質は、第2結合糸32の材質と同等でなくてもよい。
○ 第2補助糸26の材質は、第1結合糸31の材質と同等でなくてもよい。
○ 積層体20は、1つ以上の第1糸層21と2つ以上の第2糸層22とから形成されていれば、2つの第1糸層21と2つの第2糸層22とから形成されていなくてもよい。ただし、積層体20の第3方向Zの両端には、第2糸層22が位置しているものとする。
【0066】
例えば、積層体20は、2つの第1糸層21と3つの第2糸層22とが第3方向Zにおいて交互に積層されたものであってもよい。この場合、積層体20は、第3方向Zの両端に位置する第2糸層22の他に、第3方向Zにおいて第1糸層21の間に位置する第2糸層22を有する。第3方向Zにおいて第1糸層21の間に位置する第2糸層22は、複数の補助糸25を有していなくてもよい。つまり、第3方向Zにおいて第1糸層21の間に位置する第2糸層22は、複数の緯糸24のみによって形成されていればよい。
【0067】
○ 第1方向Xにおける補助糸25,26の間隔を変更することによって、第1方向Xにおける緯糸24の間隔を調整することができる。具体的には、第1方向Xにおける補助糸25,26の間隔を広げることによって、第1方向Xにおける緯糸24の間隔を広げることができる。第1方向Xにおける補助糸25,26の間隔を狭めることによって、第1方向Xにおける緯糸24の間隔を狭めることができる。
【符号の説明】
【0068】
10…繊維強化複合材、11…繊維強化複合材用繊維構造体としての繊維構造体、12…マトリックス、20…積層体、21…第1糸層、22…第2糸層、23…第1強化繊維糸としての経糸、24…第2強化繊維糸としての緯糸、25…第1補助糸、26…第2補助糸、31…第1結合糸、32…第2結合糸、X…第1方向、Y…第2方向、Z…第3方向。