(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167853
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】アセトン製造用触媒およびアセトンの製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 23/80 20060101AFI20231116BHJP
C07C 45/00 20060101ALI20231116BHJP
C07C 49/08 20060101ALI20231116BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20231116BHJP
【FI】
B01J23/80 Z
C07C45/00
C07C49/08 A
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079360
(22)【出願日】2022-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(72)【発明者】
【氏名】岡村 淳志
(72)【発明者】
【氏名】井形 直央
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169BB06A
4G169BB06B
4G169BC01A
4G169BC03B
4G169BC06B
4G169BC08A
4G169BC34A
4G169BC35A
4G169BC35B
4G169BC41A
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4G169BC51B
4G169BC65A
4G169BC66A
4G169BC66B
4G169BC69A
4G169CB19
4G169CB72
4G169DA06
4G169EA02X
4H006AA02
4H006AB84
4H006AC44
4H006BA02
4H006BA07
4H006BA10
4H006BA19
4H006BB61
4H006BC10
4H006BC18
4H006BE60
4H039CA62
(57)【要約】
【課題】長時間、高いアセトン収率を保持しながらアセトンを生産することが可能となるアセトン製造用触媒およびアセトンの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】周期律表4族、周期律表8族および周期律表12族の金属元素を含む、アセトン製造用触媒である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期律表4族、周期律表8族および周期律表12族の金属元素を含む、アセトン製造用触媒。
【請求項2】
ZnFe2O4を含有する請求項1に記載のアセトン製造用触媒。
【請求項3】
周期律表8族の金属元素1モルに対する周期律表4族の金属元素のモル数が0.2~1.0である請求項1又は2に記載のアセトン製造用触媒。
【請求項4】
周期律表8族の金属元素1モルに対する周期律表12族の金属元素のモル数が0.2~1.0である請求項1又は2に記載のアセトン製造用触媒。
【請求項5】
周期律表8族の金属元素1モルに対する、アルカリ金属、アルカリ土類金属およびランタノイド金属からなる群から選ばれる1種以上の金属元素のモル数の総量が0.02~1.0である請求項1又は2に記載のアセトン製造用触媒。
【請求項6】
周期律表4族、周期律表8族および周期律表12族の金属元素を含む触媒の存在下、エタノールと水を反応させる工程を含む、アセトンの製造方法。
【請求項7】
ZnFe2O4を含む触媒の存在下、エタノールと水を反応させる工程を含む、請求項6に記載のアセトンの製造方法。
【請求項8】
周期律表8族の金属元素1モルに対する周期律表4族の金属元素のモル数が0.2~1.0である触媒の存在下、エタノールと水を反応させる工程を含む、請求項6又は7に記載のアセトンの製造方法。
【請求項9】
周期律表8族の金属元素1モルに対する周期律表12族の金属元素のモル数が0.2~1.0である触媒の存在下、エタノールと水を反応させる工程を含む、請求項6又は7に記載のアセトンの製造方法。
【請求項10】
周期律表8族の金属元素1モルに対する、アルカリ金属、アルカリ土類金属およびランタノイド金属からなる群から選ばれる1種以上の金属元素のモル数の総量が0.02~1.0である触媒の存在下、エタノールと水を反応させる工程を含む、請求項6又は7に記載のアセトンの製造方法。
【請求項11】
エタノールと水を反応させる温度が、300℃~500℃である、請求項6又は7に記載のアセトンの製造方法。
【請求項12】
エタノールが、バイオマスを由来とするものである、請求項6又は7に記載のアセトンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アセトン製造用触媒およびアセトンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エタノールと水からのアセトン合成反応について、いくつかの報告がなされている。非特許文献1には、鉄と、亜鉛からなる触媒を用いた検討がなされている。特許文献1には、鉄と、ジルコニウムからなる触媒を用いた検討がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Journal of Catalysis、Vol.109、Page298-302、1988
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の通り、エタノールと水からアセトンを製造する方法はいくつか知られているが、長時間高収率で安定的にアセトンを製造するには改善の余地がある。
【0006】
特許文献1で開示されているように鉄とジルコニウムのみからなる触媒を用いた場合、触媒活性が低いために、500℃以下で反応を行うとアセトン収率が低く、500℃を超える温度で反応を行うと触媒が急速に劣化する。
【0007】
非特許文献1で開示されているように鉄と亜鉛のみからなる触媒を用いた場合、反応温度400℃でエタノール転化率90%以上となるが、アセトン選択率が低く、結果的にアセトン収率が50%程度と低くなる。
【0008】
本発明は、これら事情を鑑みてなされたものであり、エタノールと水からのアセトン製造において、長時間安定的に高いアセトン収率でアセトンを生産することができるアセトン製造用触媒及びアセトンの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明に想到した。すなわち、本開示の触媒は、周期律表4族、周期律表8族および周期律表12族の金属元素を含む、アセトン製造用触媒である。
【発明の効果】
【0010】
本開示は、高収率かつ長時間安定的にアセトンを製造するアセトン製造用触媒及びアセトンの製造方法を提供することを目的とする。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示を詳細に説明する。なお、以下において記載する本開示の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本開示の好ましい形態である。なお、本明細書において、範囲を示す「X~Y」は、「X以上Y以下」を意味する。
【0012】
[本開示のアセトン製造用触媒]
<触媒>
本開示の触媒には、周期律表4族に属する金属元素、周期律表8族に属する金属元素および周期律表12族に属する金属元素を含む。
【0013】
本開示の触媒に含まれる周期律表4族の金属元素として、チタン、ジルコニウム、ハフニウムが好ましく、より好ましくは、ジルコニウムである。本開示の触媒に含まれる周期律表8族の金属元素として、鉄、ルテニウム、オスミウムが好ましく、より好ましくは、鉄である。本開示の触媒に含まれる周期律表12族の金属元素として、亜鉛、カドミウム、水銀が好ましく、より好ましくは、亜鉛である。本開示の触媒は、さらに好ましくは、鉄と、亜鉛と、ジルコニウムを含む。
【0014】
本開示の触媒をX線光電子分光(XPS)分析で測定した周期律表4族に属する金属元素の表面組成は、本開示の触媒全体の周期律表4族に属する金属元素、周期律表8族に属する金属元素および周期律表12族に属する金属元素の総量に対して、5~50モル%であることが好ましく、より好ましくは10~40モル%であり、さらに好ましくは15~30モル%である。
【0015】
本開示の触媒をX線光電子分光(XPS)分析で測定した周期律表8族に属する金属元素の表面組成は、本開示の触媒全体の周期律表4族に属する金属元素、周期律表8族に属する金属元素および周期律表12族に属する金属元素の総量に対して、30~90モル%であることが好ましく、より好ましくは40~80モル%であり、さらに好ましくは45~75モル%である。
【0016】
本開示の触媒をX線光電子分光(XPS)分析で測定した周期律表12族に属する金属元素の表面組成は、本開示の触媒全体の周期律表4族に属する金属元素、周期律表8族に属する金属元素および周期律表12族に属する金属元素の総量に対して、2~60モル%であることが好ましく、より好ましくは5~40モル%であり、さらに好ましくは10~30モル%である。
【0017】
X線光電子分光(XPS)の測定条件は特に限定されないが、例えば、以下の条件で測定することができる。
測定装置:Quantera SXM(ULVAC-PHI社製)
X線出力(Al-Kα):15kV、20W、ビーム径100μm
X線照射時間:200ms/scan、scan回数 20回
【0018】
本開示の触媒の表面組成を上記範囲にすることで、エタノールと水とを反応させる工程において、副生する炭化物による触媒表面の被覆が抑制され、触媒の耐久性が向上する傾向にある。
【0019】
本開示の触媒は特に限定されず、その他の金属元素を含んでいてもよい。その他の金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウムなどの周期律表1族の属する金属元素(以下、アルカリ金属という場合もある);マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどの周期律表2族に属する金属元素(以下、アルカリ土類金属という場合もある);スカンジウム、イットリウム、セリウムなどの周期律表3族に属する金属元素;バナジウム、ニオブ、タンタルなどの周期律表5族に属する金属元素;クロム、モリブデン、タングステンなどの周期律表6族に属する金属元素;マンガン、テクネチウム、レニウム等の周期律表7族に属する金属元素;コバルト、ロジウム、イリジウム等の周期律表9族に属する金属元素;ニッケル、パラジウム、白金等の周期律表10族に属する金属元素;銅、銀、金等の周期律表11族に属する元素;アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム等の周期律表13族に属する金属元素;スズ、鉛等の周期律表14族に属する金属元素等が挙げられる。
【0020】
本開示の触媒に含まれる、その他金属元素は1種であっても、2種以上であってもよい。
【0021】
本開示に含まれるその他金属元素としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ランタノイド金属が好ましく、より好ましくは、アルカリ金属、アルカリ土類金属であり、さらに好ましくはアルカリ金属である。本開示に含まれるアルカリ金属として、好ましくは、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウムであり、より好ましくは、カリウム、セシウムである。
【0022】
本開示の触媒に含まれるその他金属元素は、周期律表8族の金属元素1モルに対し、0.01~1.0モルであることが好ましく、より好ましくは0.02~0.2モルであり、さらに好ましくは0.03~0.1モルである。上記範囲にすることで、アセトン収率が向上する傾向にある。
【0023】
本開示の触媒に含まれる金属元素の状態は特に限定されず、例えば、前記金属元素を含む金属酸化物、前記金属元素を含む担体、前記金属元素を担持した担体などが挙げられる。金属酸化物を担体に担持してもよい。金属酸化物は、複合金属酸化物であっても良い。
【0024】
本発明で用いられる触媒の形態としては触媒粉体を単独で成形したものであってもよく、シリカ、アルミナ、シリカ―アルミナ、ゼオライト、シリカ―カルシア、ジルコニア、チタニア、セリア、マグネシア、ステアタイト、コージェライト、シリカ―マグネシア、シリカ―マグネシア―アルミナ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ステンレス、珪藻土、などの担体に担持して担持物としたものでもよい。
【0025】
本発明で用いられる触媒および担体の形状としては特に制限されないが、球状、ペレット状、ハニカム状、リング状、粒状のものが挙げられる。本発明で用いられる触媒の寸法としては、特に制限されないが、該触媒の粒径が、1mm~12mmであるのが好ましく、3mm~10mmであるのがより好ましい。なお、触媒が触媒粉体を成形して得られる場合は、上記の平均粒径を有するように触媒を成形すればよい。また、触媒粉体を担体に担持させて得られる場合は、目標とする粒径よりも0.5~1.0mm小さい担体を用いて、担持時間を調節することにより、目標とする粒径を有する触媒を得ることができる。ここで、触媒の粒径とは、球状の触媒の場合はその直径を、その他の形状の場合は、触媒の外接球の直径を指すものとする。触媒の平均粒径が上記範囲であることにより、触媒の反応管への充填が容易になり、かつ触媒層の圧力損失を低下させることができるため、送風機の電力費の低下など省エネルギー化を達成できる。なお、触媒の平均粒径は、任意にサンプリングした100個の触媒の粒径をノギスで測定し、平均値を計算することで測定できる。
【0026】
触媒層に充填する触媒の形状は同一でも、あるいは異なっていても良いが、同一形状の触媒を充填するのが好ましい。
【0027】
本開示の触媒に含まれる各元素の状態は特に限定されない。各種金属を単一に含む化合物として含まれていても良く、複数の金属元素を含む複合金属酸化物の元素として含まれていてもよく、担体として含まれていてもよい。
【0028】
本開示の触媒は、周期律表8族の金属元素鉄1モルに対し、周期律表12族の金属元素は0.1~1.0モルであることが好ましく、より好ましくは0.2~0.8モルであり、さらに好ましくは0.25~0.75モルである。上記モル範囲とすることで、良好なアセトン収率が得られる。
【0029】
本開示の触媒は、周期律表8族の金属元素1モルに対し、周期律表4族の金属元素は0.1~1.0モルであることが好ましく、より好ましくは0.2~0.8モルであり、さらに好ましくは0.25~0.75モルである。上記モル範囲とすることで、良好な耐久性を発現できる。
【0030】
本開示の触媒は、周期律表8族の金属元素1モルに対し、周期律表1族の金属元素は、0.01~1.0モルであることが好ましく、より好ましくは0.02~0.2モルであり、さらに好ましくは0.03~0.1モルである。上記モル範囲とすることで、良好なアセトン収率が得られる。
【0031】
本開示の触媒は、周期律表8族の金属元素1モルに対し、周期律表2族の金属元素が、0.01~1.0モルであることが好ましく、より好ましくは0.02~0.2モルであり、さらに好ましくは0.03~0.1モルである。上記モル範囲にすることで、良好なアセトン収率が得られる。
【0032】
<アセトン製造用触媒の好ましい形態の例示>
本開示のアセトン製造用触媒の好ましい形態として、以下の(1)~(5)が例示される。
(1)周期律表4族、周期律表8族および周期律表12族の金属元素を含む、アセトン製造用触媒。
(2)ZnFe2O4を含有する前記(1)に記載のアセトン製造用触媒。
(3)周期律表8族の金属元素1モルに対する周期律表4族の金属元素のモル数が0.2~1.0である前記(1)又は(2)に記載のアセトン製造用触媒。
(4)周期律表8族の金属元素1モルに対する周期律表12族の金属元素のモル数が0.2~1.0である前記(1)~(3)に記載のアセトン製造用触媒。
(5)周期律表8族の金属元素1モルに対する、アルカリ金属および/又はアルカリ土類金属の金属成分のモル数が0.02~1.0である前記(1)~(4)に記載のアセトン製造用触媒。
【0033】
<触媒の製造方法>
本開示の触媒について、その製法は特に制限はなく、例えば、含浸法、沈殿法、共沈法などによって製造することができる。より好ましくは、共沈法である。触媒構成成分である金属元素が均一に高分散された共沈物(触媒前駆体という場合もある)を取得することができ、結果、優れた性能を有する触媒の製造が可能となるため好ましい。製造した触媒中における各触媒成分の組成は蛍光X線分析(XRF)により分析することができる。共沈法は、各種触媒原料を水に加えて沈殿物を得る工程、共沈物をろ過する工程、取得した共沈物を乾燥する工程、焼成する工程を含んでいてもよい。溶液中の金属元素の量は適宜変更することができる。
【0034】
[本開示のアセトン製造方法]
本開示の製造方法では、触媒存在下で、エタノールと水を反応させる工程を含む(以下、反応工程という場合もある)。
【0035】
<エタノールと水との反応>
本開示のアセトン製造方法は、反応工程において、原料であるエタノールと水とを触媒と接触させることにより、アセトン、水素および二酸化炭素を含む反応生成物を得ることができる。
【0036】
本開示のアセトン製造方法は、特に限定されず、バッチ式、連続式のいずれでもよいが、生産性の観点から連続式が好ましい。
【0037】
本開示のアセトン製造方法は、気相反応が好ましい。気相反応による反応形式としては、固定床、移動床、流動床などが挙げられるが、より簡便な固定床形式が好ましい。
本開示のアセトン製造方法が固定床形式である場合、原料ガスはガス状のエタノールとガス状の水(水蒸気という場合もある)を混合してから反応器へ供給して触媒と接触させても良く、ガス状のエタノールと水蒸気を別々に反応器へ供給して触媒と接触させてもよい。
【0038】
本開示のアセトン製造方法が、気相接触反応である場合、通常の単流通法でも、あるいはリサイクル法であっても良い。
【0039】
ガス状のエタノールは、例えば、気化装置にて、液体のエタノールを加熱することにより得られる。ガス状の水は、例えば、気化装置にて、水を加熱することにより得られる。
原料ガスには、窒素やヘリウム等の不活性ガスを含んでいても良い。ここで原料ガスとは、反応器へ供給するガス全てを含む。
【0040】
原料ガスに含まれるエタノール濃度は、3~66モル%であることが好ましく、より好ましくは5~50モル%である。原料ガスに含まれるエタノールに対する水のモル比率は、0.5~10であることが好ましく、1~5であることがより好ましい。
原料ガスに用いるエタノールは、特に限定されない。エチレンの水和反応により得られるエタノールや、バイオマス原料、例えば、サトウキビ等の糖質系、穀物等のでんぷん系、草木などのセルロース系などを原料にしたバイオエタノールなどが挙げられる。
【0041】
原料ガスに用いるエタノールには、バイオエタノールが含まれていることが好ましい。エタノール100質量%に含まれるバイオエタノールの含有量は、好ましくは50質量%以上であり、よりしくは75質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上である。
【0042】
本開示のアセトン製造方法における反応圧力は、減圧、常圧、加圧のいずれでも実施できるが、0.07MPa~0.2MPaであることが好ましく、より好ましくは0.1MPa~0.15MPaである。
【0043】
本開示の製造方法における反応温度は250~600℃が好ましく、より好ましくは300~500℃であり、さらに好ましくは330~450℃である。
【0044】
本開示のアセトン製造方法では、空間速度は、100~10000h‐1であることが好ましく、より好ましくは300~8000h‐1であり、さらに好ましくは、500~6000h‐1である。
【0045】
<その他行程>
(精製工程)
エタノールと水とを触媒と接触させた後の反応生成物には、アセトン、水素、二酸化炭素だけでなく、原料であるエタノールや水を有してもよい。反応生成物に含まれるアセトンは、反応生成物100モル%に対し、2モル%以上であることが好ましく、より好ましくは4モル%以上であり、さらに好ましくは8モル%以上である。
【0046】
本開示のアセトン製造方法において、反応生成物から、公知の方法により、精製されたアセトン(精製アセトンという場合もある)を取得する工程を含んでいても良い。例えば、気液分離や蒸留などが挙げられる。気液分離は公知の方法により、例えば、反応生成物から水素や二酸化炭素などの気体とアセトンを主体とする液体混合物に分離することができる。蒸留は公知の方法により、アセトンを含む液体混合物から精製したアセトンを得ることができる。精製アセトンに含まれるアセトンの含有量は、精製アセトン100質量%に対し、90質量%以上であることが好ましく、より好ましくは、95質量%以上であり、さらに好ましくは98質量%以上である。
【0047】
(触媒再生工程)
本開示のアセトン製造方法において、触媒の活性に変化が見られた場合は、触媒を再生する工程を含んでいてもよい。再生する方法は特に限定されないが、酸素などの酸化性ガスと高温で接触させることにより再生することができる。例えば、原料ガスを固定床形式の反応器に供給して行った場合、原料ガスを酸化性ガスに変更して行ってもよく、反応器から触媒を抜き出して行ってもよい。
【0048】
<アセトンの製造方法の好ましい形態の例示>
本開示のアセトン製造用触媒の好ましい形態として、以下の(6)~(12)が例示される。
(6)周期律表4族、周期律表8族および周期律表12族の金属元素を含む触媒の存在下、エタノールと水を反応させる工程を含む、アセトンの製造方法。
(7)ZnFe2O4を含む触媒の存在下、エタノールと水を反応させる工程を含む、前記(6)に記載のアセトンの製造方法。
(8)周期律表8族の金属元素1モルに対する周期律表4族の金属元素のモル数が0.2~1.0である触媒の存在下、エタノールと水を反応させる工程を含む、前記(6)又は(7)に記載のアセトンの製造方法。
(9)周期律表8族の金属元素1モルに対する周期律表12族の金属元素のモル数が0.2~1.0である触媒の存在下、エタノールと水を反応させる工程を含む、前記(6)~(8)に記載のアセトンの製造方法。
(10)周期律表8族の金属元素1モルに対する、アルカリ金属、アルカリ土類金属およびランタノイド金属からなる群から選ばれる1種以上の金属元素のモル数の総量が0.02~1.0である触媒の存在下、エタノールと水を反応させる工程を含む、前記(6)~(9)に記載のアセトンの製造方法。
(11)エタノールと水を反応させる温度が、300℃~500℃である、前記(6)~(10)に記載のアセトンの製造方法。
(12)エタノールが、バイオマスを由来とするものである、前記(6)~(11)に記載のアセトンの製造方法。
【0049】
[本開示のアセトンの製造装置]
製造装置として好ましくは、固定床型の反応器である。原料ガスを得るための気化装置を連結していてもよい。製造装置の材質としては、特に限定されるものではないが、好ましくは、ステンレス鋼が挙げられる。ステンレス鋼の代表例としては、オーステナイト系ステンレス鋼、例えば日本工業規格(以下、JISとも表す)のSUS304、SUS304L、SUS316およびSUS316L;フェライト系ステンレス鋼、例えば、JISのSUS405,SUS401LおよびSUS430;マルテンサイト系ステンレス鋼、例えば、JISのSUS403、SUS410、SUS416およびSUS431等を挙げることができる。
【0050】
[本開示のアセトンの用途]
本開示のアセトンについて、使用する用途は特に限定されないが、イソプロピルアルコールの製造原料用途に公的に用いることができる。本開示のアセトンは、例えば公知の方法により水素化することにより、イソプロピルアルコールを製造することが可能である。
【実施例0051】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合しうる範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0052】
(実施例1)
硝酸亜鉛六水和物629g、酸化硝酸ジルコニウム二水和物562g、硝酸鉄九水和物1700g、28重量%のアンモニア水1600gを純水3800gに加え、20h攪拌し、出発原料混合液を得た。得られた出発原料混合液をドラムドライヤーで乾燥した後、得られた乾燥物を粉砕して150μm以下に篩分けし、触媒前駆体粉体を得た。得られた触媒前駆体粉体を空気雰囲気下、450℃で4h焼成して触媒粉体を得た。得られた触媒粉体500gと、ヒドロキシエチルセルロース5g、水100gを押出成形機に入れ、直径6mm×長さ6mmの円柱状に成形し焼成前触媒成形体を得た。得られた焼成前触媒成形体を空気雰囲気下、450℃で4h焼成して触媒(1)を得た。得られた触媒(1)の金属元素組成はFe1.0Zr0.5Zn0.5であった。
触媒(1)によるアセトン製造は、SUS316製U字型反応器を用いて行った(外径25.6mm、内径21.6mm)。触媒(1)140gをSUS製U字型反応管に充填した。触媒(1)を充填した反応管を溶融塩バスに設置し、窒素を2.6L/min.(0℃、1気圧換算)で供給し、溶融塩バスを375℃まで昇温し、30min.保持した。その後、窒素、エタノール、水を、それぞれ、2.6L/min.(0℃、1気圧換算)、0.52L/min.(0℃、1気圧換算)、2.1L/min.(0℃、1気圧換算)で供給し、反応を行った。反応は1000時間連続で実施し、反応時間の経過に伴うエタノール転化率、アセトン収率を測定した。結果を表1に示した。
ここで、エタノール転化率、アセトン収率は、式(1)、(2)のように算出した。
(式1)
エタノール転化率=100-100×反応器出口のエタノール流速/反応器入口のエタノール流速
(式2)
アセトン収率=100×反応器出口のアセトン流速×3/(反応器入口のエタノール流速×2)
エタノールと水からのアセトン合成反応は以下反応式(3)で表される。
(式3)
2C2H5OH+H2O→CH3COCH3+CO2+4H2
式(2)でのアセトン収率は、反応器入口に供給されたエタノールに含まれる全炭素に対する生成アセトン中の炭素量で評価したものである。したがって、アセトン収率の最大値は75%となる。
反応器出口ガスは、氷水浴に配置した純水入りの吸収瓶に導入して水により捕集された成分をガスクロマトグラフで定量した。純水入りの吸収瓶で捕集されなかった成分については、吸収瓶出口ガスをガスクロマトグラフに導入して定量した。これら分析値から反応器出口ガスに含まれる各成分の流速を算出し、上記式(1)、(2)によりエタノール転化率及びアセトン収率を求めた。
【0053】
(実施例2)
硝酸亜鉛六水和物629g、酸化硝酸ジルコニウム二水和物112g、硝酸鉄九水和物1700g、28重量%のアンモニア水1330gを純水3800gに加え、20h攪拌し、出発原料混合液を得た。得られた出発原料混合液をドラムドライヤーで乾燥した後、得られた乾燥物を粉砕して150μm以下に篩分けし、触媒前駆体粉体を得た。得られた触媒前駆体粉体を空気雰囲気下、450℃で4h焼成して触媒粉体を得た。得られた触媒粉体500gと、ヒドロキシエチルセルロース5g、水100gを押出成形機に入れ、直径6mm×長さ6mmの円柱状に成形し焼成前触媒成形体を得た。得られた焼成前触媒成形体を空気雰囲気下、450℃で4h焼成して触媒(2)を得た。得られた参考触媒(2)の金属元素組成はFe1.0Zr0.1Zn0.5であった。
触媒(2)によるアセトン製造を、実施例1記載と同様の方法で実施した。反応は1000時間連続で実施し、反応時間の経過に伴うエタノール転化率、アセトン収率を測定した。結果を表1に示した。
【0054】
(実施例3)
硝酸亜鉛六水和物629g、酸化硝酸ジルコニウム二水和物225g、硝酸鉄九水和物1700g、28重量%のアンモニア水1380gを純水3800gに加え、20h攪拌し、出発原料混合液を得た。得られた出発原料混合液をドラムドライヤーで乾燥した後、得られた乾燥物を粉砕して150μm以下に篩分けし、触媒前駆体粉体を得た。得られた触媒前駆体粉体を空気雰囲気下、450℃で4h焼成して触媒粉体を得た。得られた触媒粉体500gと、ヒドロキシエチルセルロース5g、水100gを押出成形機に入れ、直径6mm×長さ6mmの円柱状に成形し焼成前触媒成形体を得た。得られた焼成前触媒成形体を空気雰囲気下、450℃で4h焼成して触媒(3)を得た。得られた触媒(3)の金属元素組成はFe1.0Zr0.2Zn0.5であった。
触媒(2)によるアセトン製造を、実施例1記載と同様の方法で実施した。反応は1000時間連続で実施し、反応時間の経過に伴うエタノール転化率、アセトン収率を測定した。結果を表1に示した。
【0055】
(実施例4)
硝酸亜鉛六水和物629g、酸化硝酸ジルコニウム二水和物1124g、硝酸鉄九水和物1700g、28重量%のアンモニア水1790gを純水3800gに加え、20h攪拌し、出発原料混合液を得た。得られた出発原料混合液をドラムドライヤーで乾燥した後、得られた乾燥物を粉砕して150μm以下に篩分けし、触媒前駆体粉体を得た。得られた触媒前駆体粉体を空気雰囲気下、450℃で4h焼成して触媒粉体を得た。得られた触媒粉体500gと、ヒドロキシエチルセルロース5g、水100gを押出成形機に入れ、直径6mm×長さ6mmの円柱状に成形し焼成前触媒成形体を得た。得られた焼成前触媒成形体を空気雰囲気下、450℃で4h焼成して触媒(4)を得た。得られた触媒(4)の金属元素組成はFe1.0Zr1.0Zn0.5であった。
触媒(4)によるアセトン製造を、実施例1記載と同様の方法で実施した。反応は1000時間連続で実施し、反応時間の経過に伴うエタノール転化率、アセトン収率を測定した。結果を表1に示した。
【0056】
(実施例5)
硝酸亜鉛六水和物629g、酸化硝酸ジルコニウム二水和物1349g、硝酸鉄九水和物1700g、28重量%のアンモニア水1893gを純水3800gに加え、20h攪拌し、出発原料混合液を得た。得られた出発原料混合液をドラムドライヤーで乾燥した後、得られた乾燥物を粉砕して150μm以下に篩分けし、触媒前駆体粉体を得た。得られた触媒前駆体粉体を空気雰囲気下、450℃で4h焼成して触媒粉体を得た。得られた触媒粉体500gと、ヒドロキシエチルセルロース5g、水100gを押出成形機に入れ、直径6mm×長さ6mmの円柱状に成形し焼成前触媒成形体を得た。得られた焼成前触媒成形体を空気雰囲気下、450℃で4h焼成して触媒(5)を得た。得られた参考触媒(5)の金属元素組成はFe1.0Zr1.2Zn0.5であった。
参考触媒(5)によるアセトン製造を、実施例1記載と同様の方法で実施した。反応は1000時間連続で実施し、反応時間の経過に伴うエタノール転化率、アセトン収率を測定した。結果を表1に示した。
【0057】
(実施例6)
硝酸亜鉛六水和物126g、酸化硝酸ジルコニウム二水和物562g、硝酸鉄九水和物1700g、28重量%のアンモニア水1125gを純水3800gに加え、20h攪拌し、出発原料混合液を得た。得られた出発原料混合液をドラムドライヤーで乾燥した後、得られた乾燥物を粉砕して150μm以下に篩分けし、触媒前駆体粉体を得た。得られた触媒前駆体粉体を空気雰囲気下、450℃で4h焼成して触媒粉体を得た。得られた触媒粉体500gと、ヒドロキシエチルセルロース5g、水100gを押出成形機に入れ、直径6mm×長さ6mmの円柱状に成形し焼成前触媒成形体を得た。得られた焼成前触媒成形体を空気雰囲気下、450℃で4h焼成して触媒(6)を得た。得られた参考触媒(6)の金属元素組成はFe1.0Zr0.5Zn0.1であった。
参考触媒(6)によるアセトン製造を、実施例1記載と同様の方法で実施した。反応は1000時間連続で実施し、反応時間の経過に伴うエタノール転化率、アセトン収率を測定した。結果を表1に示した。
【0058】
(実施例7)
硝酸亜鉛六水和物251g、酸化硝酸ジルコニウム二水和物562g、硝酸鉄九水和物1700g、28重量%のアンモニア水1228gを純水3800gに加え、20h攪拌し、出発原料混合液を得た。得られた出発原料混合液をドラムドライヤーで乾燥した後、得られた乾燥物を粉砕して150μm以下に篩分けし、触媒前駆体粉体を得た。得られた触媒前駆体粉体を空気雰囲気下、450℃で4h焼成して触媒粉体を得た。得られた触媒粉体500gと、ヒドロキシエチルセルロース5g、水100gを押出成形機に入れ、直径6mm×長さ6mmの円柱状に成形し焼成前触媒成形体を得た。得られた焼成前触媒成形体を空気雰囲気下、450℃で4h焼成して触媒(7)を得た。得られた触媒(7)の金属元素組成はFe1.0Zr0.5Zn0.2であった。
触媒(7)によるアセトン製造を、実施例1記載と同様の方法で実施した。反応は1000時間連続で実施し、反応時間の経過に伴うエタノール転化率、アセトン収率を測定した。結果を表1に示した。
【0059】
(実施例8)
硝酸亜鉛六水和物1257g、酸化硝酸ジルコニウム二水和物562g、硝酸鉄九水和物1700g、28重量%のアンモニア水2046gを純水3800gに加え、20h攪拌し、出発原料混合液を得た。得られた出発原料混合液をドラムドライヤーで乾燥した後、得られた乾燥物を粉砕して150μm以下に篩分けし、触媒前駆体粉体を得た。得られた触媒前駆体粉体を空気雰囲気下、450℃で4h焼成して触媒粉体を得た。得られた触媒粉体500gと、ヒドロキシエチルセルロース5g、水100gを押出成形機に入れ、直径6mm×長さ6mmの円柱状に成形し焼成前触媒成形体を得た。得られた焼成前触媒成形体を空気雰囲気下、450℃で4h焼成して触媒(8)を得た。得られた触媒(8)の金属元素組成はFe1.0Zr0.5Zn1.0であった。
触媒(8)によるアセトン製造を、実施例1記載と同様の方法で実施した。反応は1000時間連続で実施し、反応時間の経過に伴うエタノール転化率、アセトン収率を測定した。結果を表1に示した。
【0060】
(実施例9)
硝酸亜鉛六水和物1508g、酸化硝酸ジルコニウム二水和物562g、硝酸鉄九水和物1700g、28重量%のアンモニア水2251gを純水3800gに加え、20h攪拌し、出発原料混合液を得た。得られた出発原料混合液をドラムドライヤーで乾燥した後、得られた乾燥物を粉砕して150μm以下に篩分けし、触媒前駆体粉体を得た。得られた触媒前駆体粉体を空気雰囲気下、450℃で4h焼成して触媒粉体を得た。得られた触媒粉体500gと、ヒドロキシエチルセルロース5g、水100gを押出成形機に入れ、直径6mm×長さ6mmの円柱状に成形し焼成前触媒成形体を得た。得られた焼成前触媒成形体を空気雰囲気下、450℃で4h焼成して触媒(9)を得た。得られた参考触媒(9)の金属元素組成はFe1.0Zr0.5Zn1.2であった。
参考触媒(9)によるアセトン製造を、実施例1記載と同様の方法で実施した。反応は1000時間連続で実施し、反応時間の経過に伴うエタノール転化率、アセトン収率を測定した。結果を表1に示した。
【0061】
(実施例10)
硝酸亜鉛六水和物629g、酸化硝酸ジルコニウム二水和物562g、硝酸鉄九水和物1700g、硝酸セシウム8.2g、28重量%のアンモニア水1537gを純水3800gに加え、20h攪拌し、出発原料混合液を得た。得られた出発原料混合液をドラムドライヤーで乾燥した後、得られた乾燥物を粉砕して150μm以下に篩分けし、触媒前駆体粉体を得た。得られた触媒前駆体粉体を空気雰囲気下、450℃で4h焼成して触媒粉体を得た。得られた触媒粉体500gと、ヒドロキシエチルセルロース5g、水100gを押出成形機に入れ、直径6mm×長さ6mmの円柱状に成形し焼成前触媒成形体を得た。得られた焼成前触媒成形体を空気雰囲気下、450℃で4h焼成して触媒(10)を得た。得られた触媒(10)の金属元素組成はFe1.0Zr0.5Zn0.5Cs0.01であった。
触媒(10)によるアセトン製造を、実施例1記載と同様の方法で実施した。反応は1000時間連続で実施し、反応時間の経過に伴うエタノール転化率、アセトン収率を測定した。結果を表1に示した。
【0062】
(実施例11)
硝酸亜鉛六水和物629g、酸化硝酸ジルコニウム二水和物562g、硝酸鉄九水和物1700g、硝酸セシウム16.4g、28重量%のアンモニア水1540gを純水3800gに加え、20h攪拌し、出発原料混合液を得た。得られた出発原料混合液をドラムドライヤーで乾燥した後、得られた乾燥物を粉砕して150μm以下に篩分けし、触媒前駆体粉体を得た。得られた触媒前駆体粉体を空気雰囲気下、450℃で4h焼成して触媒粉体を得た。得られた触媒粉体500gと、ヒドロキシエチルセルロース5g、水100gを押出成形機に入れ、直径6mm×長さ6mmの円柱状に成形し焼成前触媒成形体を得た。得られた焼成前触媒成形体を空気雰囲気下、450℃で4h焼成して触媒(11)を得た。得られた触媒(11)の金属元素組成はFe1.0Zr0.5Zn0.5Cs0.02であった。
触媒(11)によるアセトン製造を、実施例1記載と同様の方法で実施した。反応は1000時間連続で実施し、反応時間の経過に伴うエタノール転化率、アセトン収率を測定した。結果を表1に示した。
【0063】
(実施例12)
硝酸亜鉛六水和物629g、酸化硝酸ジルコニウム二水和物562g、硝酸鉄九水和物1700g、硝酸セシウム32.8g、28重量%のアンモニア水1545gを純水3800gに加え、20h攪拌し、出発原料混合液を得た。得られた出発原料混合液をドラムドライヤーで乾燥した後、得られた乾燥物を粉砕して150μm以下に篩分けし、触媒前駆体粉体を得た。得られた触媒前駆体粉体を空気雰囲気下、450℃で4h焼成して触媒粉体を得た。得られた触媒粉体500gと、ヒドロキシエチルセルロース5g、水100gを押出成形機に入れ、直径6mm×長さ6mmの円柱状に成形し焼成前触媒成形体を得た。得られた焼成前触媒成形体を空気雰囲気下、450℃で4h焼成して触媒(12)を得た。得られた触媒(12)の金属元素組成はFe1.0Zr0.5Zn0.5Cs0.04であった。
触媒(12)によるアセトン製造を、実施例1記載と同様の方法で実施した。反応は1000時間連続で実施し、反応時間の経過に伴うエタノール転化率、アセトン収率を測定した。結果を表1に示した。
【0064】
(実施例13)
硝酸亜鉛六水和物629g、酸化硝酸ジルコニウム二水和物562g、硝酸鉄九水和物1700g、硝酸セシウム164g、28重量%のアンモニア水1586gを純水3800gに加え、20h攪拌し、出発原料混合液を得た。得られた出発原料混合液をドラムドライヤーで乾燥した後、得られた乾燥物を粉砕して150μm以下に篩分けし、触媒前駆体粉体を得た。得られた触媒前駆体粉体を空気雰囲気下、450℃で4h焼成して触媒粉体を得た。得られた触媒粉体500gと、ヒドロキシエチルセルロース5g、水100gを押出成形機に入れ、直径6mm×長さ6mmの円柱状に成形し焼成前触媒成形体を得た。得られた焼成前触媒成形体を空気雰囲気下、450℃で4h焼成して触媒(13)を得た。得られた触媒(13)の金属元素組成はFe1.0Zr0.5Zn0.5Cs0.2であった。
触媒(13)によるアセトン製造を、実施例1記載と同様の方法で実施した。反応は1000時間連続で実施し、反応時間の経過に伴うエタノール転化率、アセトン収率を測定した。結果を表1に示した。
【0065】
(実施例14)
硝酸亜鉛六水和物629g、酸化硝酸ジルコニウム二水和物562g、硝酸鉄九水和物1700g、硝酸カリウム4.3g、28重量%のアンモニア水1537gを純水3800gに加え、20h攪拌し、出発原料混合液を得た。得られた出発原料混合液をドラムドライヤーで乾燥した後、得られた乾燥物を粉砕して150μm以下に篩分けし、触媒前駆体粉体を得た。得られた触媒前駆体粉体を空気雰囲気下、450℃で4h焼成して触媒粉体を得た。得られた触媒粉体500gと、ヒドロキシエチルセルロース5g、水100gを押出成形機に入れ、直径6mm×長さ6mmの円柱状に成形し焼成前触媒成形体を得た。得られた焼成前触媒成形体を空気雰囲気下、450℃で4h焼成して触媒(14)を得た。得られた触媒(14)の金属元素組成はFe1.0Zr0.5Zn0.5K0.01であった。
触媒(14)によるアセトン製造を、実施例1記載と同様の方法で実施した。反応は1000時間連続で実施し、反応時間の経過に伴うエタノール転化率、アセトン収率を測定した。結果を表1に示した。
【0066】
(実施例15)
硝酸亜鉛六水和物629g、酸化硝酸ジルコニウム二水和物562g、硝酸鉄九水和物1700g、硝酸カリウム213g、28重量%のアンモニア水1663gを純水3800gに加え、20h攪拌し、出発原料混合液を得た。得られた出発原料混合液をドラムドライヤーで乾燥した後、得られた乾燥物を粉砕して150μm以下に篩分けし、触媒前駆体粉体を得た。得られた触媒前駆体粉体を空気雰囲気下、450℃で4h焼成して触媒粉体を得た。得られた触媒粉体500gと、ヒドロキシエチルセルロース5g、水100gを押出成形機に入れ、直径6mm×長さ6mmの円柱状に成形し焼成前触媒成形体を得た。得られた焼成前触媒成形体を空気雰囲気下、450℃で4h焼成して触媒(15)を得た。得られた触媒(15)の金属元素組成はFe1.0Zr0.5Zn0.5K0.5であった。
触媒(15)によるアセトン製造を、実施例1記載と同様の方法で実施した。反応は1000時間連続で実施し、反応時間の経過に伴うエタノール転化率、アセトン収率を測定した。結果を表1に示した。
【0067】
(実施例16)
硝酸亜鉛六水和物629g、酸化硝酸ジルコニウム二水和物562g、硝酸鉄九水和物1700g、硝酸カリウム425g、28重量%のアンモニア水1790gを純水3800gに加え、20h攪拌し、出発原料混合液を得た。得られた出発原料混合液をドラムドライヤーで乾燥した後、得られた乾燥物を粉砕して150μm以下に篩分けし、触媒前駆体粉体を得た。得られた触媒前駆体粉体を空気雰囲気下、450℃で4h焼成して触媒粉体を得た。得られた触媒粉体500gと、ヒドロキシエチルセルロース5g、水100gを押出成形機に入れ、直径6mm×長さ6mmの円柱状に成形し焼成前触媒成形体を得た。得られた焼成前触媒成形体を空気雰囲気下、450℃で4h焼成して参考触媒(16)を得た。得られた触媒(16)の金属元素組成はFe1.0Zr0.5Zn0.5K1.0であった。
参考触媒(16)によるアセトン製造を、実施例1記載と同様の方法で実施した。反応は1000時間連続で実施し、反応時間の経過に伴うエタノール転化率、アセトン収率を測定した。結果を表1に示した。
【0068】
(比較例1)
硝酸亜鉛六水和物553g、硝酸アルミニウム九水和物727g、硝酸鉄九水和物1700g、28重量%のアンモニア水1280gを純水2660gに加え、20h攪拌し、出発原料混合液を得た。得られた出発原料混合液をドラムドライヤーで乾燥した後、得られた乾燥物を粉砕して150μm以下に篩分けし、触媒前駆体粉体を得た。得られた触媒前駆体粉体を空気雰囲気下、450℃で4h焼成して触媒粉体を得た。得られた触媒粉体500gと、ヒドロキシエチルセルロース5g、水100gを押出成形機に入れ、直径6mm×長さ6mmの円柱状に成形し焼成前触媒成形体を得た。得られた焼成前触媒成形体を空気雰囲気下、450℃で4h焼成して触媒(17)を得た。得られた触媒(17)の金属元素組成はFe1.0Al0.1Zn0.4であった。
触媒(17)によるアセトン製造を、実施例1記載と同様の方法で実施した。反応は1000時間連続で実施し、反応時間の経過に伴うエタノール転化率、アセトン収率を測定した。結果を表1に示した。
【0069】
【0070】
表1からわかるように、触媒の経時劣化が抑制され、高いアセトン収率を保持しながら長時間反応できていることがわかる。