(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167858
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】アンカ決定装置、アンカ決定方法及びアンカ決定プログラム
(51)【国際特許分類】
G06N 99/00 20190101AFI20231116BHJP
G06Q 50/10 20120101ALI20231116BHJP
【FI】
G06N99/00 180
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079366
(22)【出願日】2022-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】澤谷 雪子
(72)【発明者】
【氏名】佐野 絢音
(72)【発明者】
【氏名】磯原 隆将
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC20
(57)【要約】
【課題】適切なアンカ値を効率的に決定できるアンカ決定装置、アンカ決定方法及びアンカ決定プログラムを提供すること。
【解決手段】アンカ決定装置1は、複数のアンカ値の候補と、当該候補それぞれに対するアンケート回答者による認知バイアスを含む回答値とのタプルを取得するデータ取得部13と、回答値を統計処理した代表値に基づいて、アンカ値の候補毎の評価値を算出する評価値算出部14と、評価値が最大又は最小となるアンカ値を選定して出力するアンカ決定部15と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンカ値の候補と、当該候補それぞれに対するアンケート回答者による認知バイアスを含む回答値とのタプルを取得するデータ取得部と、
前記回答値を統計処理した代表値に基づいて、前記アンカ値の候補毎の評価値を算出する評価値算出部と、
前記評価値が最大又は最小となるアンカ値を選定して出力するアンカ決定部と、を備えるアンカ決定装置。
【請求項2】
前記評価値算出部は、前記代表値そのものを前記評価値として算出する請求項1に記載のアンカ決定装置。
【請求項3】
前記評価値算出部は、前記代表値の、対応する前記アンカ値の候補からの相対値を、前記評価値として算出する請求項1に記載のアンカ決定装置。
【請求項4】
前記相対値は、前記代表値と対応する前記アンカ値の候補との差に応じた値である請求項3に記載のアンカ決定装置。
【請求項5】
前記相対値は、前記代表値と対応する前記アンカ値の候補との差の、前記アンカ値の候補に対する割合に応じた値である請求項4に記載のアンカ決定装置。
【請求項6】
前記評価値算出部は、複数種類の評価値を算出し、
前記アンカ決定部は、前記複数種類の評価値それぞれに基づいて選定した複数のアンカ値の間の範囲を出力する請求項1から請求項5のいずれかに記載のアンカ決定装置。
【請求項7】
前記アンカ値の候補それぞれに対して、当該候補の値を示したうえで正解値を質問するアンケートを作成するアンケート作成部と、
前記アンケートを、前記アンカ値の候補それぞれに対して異なる回答者群に提示し、前記タプルを回収するアンケート実施部と、を備える請求項1から請求項5のいずれかに記載のアンカ決定装置。
【請求項8】
前記アンカ決定部により出力されたアンカ値を含むメッセージを作成し、所定のタイミングでユーザに提示するメッセージ作成部を備える請求項1から請求項5のいずれかに記載のアンカ決定装置。
【請求項9】
複数のアンカ値の候補と、当該候補それぞれに対するアンケート回答者による認知バイアスを含む回答値とのタプルを取得するデータ取得ステップと、
前記回答値を統計処理した代表値に基づいて、前記アンカ値の候補毎の評価値を算出する評価値算出ステップと、
前記評価値が最大又は最小となるアンカ値を選定して出力するアンカ決定ステップと、をコンピュータが実行するアンカ決定方法。
【請求項10】
請求項1から請求項5のいずれかに記載のアンカ決定装置としてコンピュータを機能させるためのアンカ決定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンカリング効果を用いて注意喚起メッセージを作成するための装置、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、認知バイアスの一種としてアンカリング効果が知られている。アンカリング効果とは、情報量が限られている状況下において、先に与えられた数字等の情報を基に人が検討を始めることにより、この情報がその後の意思決定に影響を及ぼす傾向のこと指す。
【0003】
例えば、非特許文献1では、誤った数値によるニュースを用いてアンカリング効果の検証が行われている。数百人の市民を対象とした実験の結果、提示されたニュースが疑われ、誤報が訂正された場合であっても、最初に見たニュースの不正確な数字に意識が偏ったままであることが示されている。
【0004】
また、特許文献1では、ソフトウェア開発においてプロジェクトの工程を管理する際に、工数の見積り精度を高めるために、価格が小さくなる方向に歪む傾向(過小傾向)がある場合には、入力される提案価格が適正な値になるように、上方向、すなわち価格が大きくなる方向に入力を誘導するための参考値を算出する仕組みが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Stubenvoll, Marlis & Matthes, Jorg. (2021). Why Retractions of Numerical Misinformation Fail: The Anchoring Effect of Inaccurate Numbers in the News. Journalism & Mass Communication Quarterly.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、アンカリング効果を狙って提示する数値は、試行錯誤的に決定されることが多く、どの数値が最も効果が高いかを判断することは難しかった。
【0008】
本発明は、適切なアンカ値を効率的に決定できるアンカ決定装置、アンカ決定方法及びアンカ決定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るアンカ決定装置は、複数のアンカ値の候補と、当該候補それぞれに対するアンケート回答者による認知バイアスを含む回答値とのタプルを取得するデータ取得部と、前記回答値を統計処理した代表値に基づいて、前記アンカ値の候補毎の評価値を算出する評価値算出部と、前記評価値が最大又は最小となるアンカ値を選定して出力するアンカ決定部と、を備える。
【0010】
前記評価値算出部は、前記代表値そのものを前記評価値として算出してもよい。
【0011】
前記評価値算出部は、前記代表値の、対応する前記アンカ値の候補からの相対値を、前記評価値として算出してもよい。
【0012】
前記相対値は、前記代表値と対応する前記アンカ値の候補との差に応じた値であってもよい。
【0013】
前記相対値は、前記代表値と対応する前記アンカ値の候補との差の、前記アンカ値の候補に対する割合に応じた値であってもよい。
【0014】
前記評価値算出部は、複数種類の評価値を算出し、前記アンカ決定部は、前記複数種類の評価値それぞれに基づいて選定した複数のアンカ値の間の範囲を出力してもよい。
【0015】
前記アンカ決定装置は、前記アンカ値の候補それぞれに対して、当該候補の値を示したうえで正解値を質問するアンケートを作成するアンケート作成部と、前記アンケートを、前記アンカ値の候補それぞれに対して異なる回答者群に提示し、前記タプルを回収するアンケート実施部と、を備えてもよい。
【0016】
前記アンカ決定装置は、前記アンカ決定部により出力されたアンカ値を含むメッセージを作成し、所定のタイミングでユーザに提示するメッセージ作成部を備えてもよい。
【0017】
本発明に係るアンカ決定方法は、複数のアンカ値の候補と、当該候補それぞれに対するアンケート回答者による認知バイアスを含む回答値とのタプルを取得するデータ取得ステップと、前記回答値を統計処理した代表値に基づいて、前記アンカ値の候補毎の評価値を算出する評価値算出ステップと、前記評価値が最大又は最小となるアンカ値を選定して出力するアンカ決定ステップと、をコンピュータが実行する。
【0018】
本発明に係るアンカ決定プログラムは、前記アンカ決定装置としてコンピュータを機能させるためのものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、適切なアンカ値を効率的に決定できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施形態におけるメッセージの提示例を示す図である。
【
図2】実施形態におけるメッセージ提示システムによる処理の流れを例示する図である。
【
図3】実施形態におけるアンカ決定装置の機能構成を示す図である。
【
図4】実施形態におけるアンカ値の候補それぞれに対して効果値及び効果効率を算出した結果を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態の一例について説明する。
本実施形態のアンカ決定方法は、アンカリング効果を用いて、例えば、セキュリティ対策の実施促進を目的とした注意喚起メッセージを提示するシステムに適用される。
このメッセージ提示システムは、ユーザに対してセキュリティ対策を促すための介入・説得メッセージにおいて、アンカリング効果を利用する際に、対策実施に寄与する最適なアンカ値を推定し決定することで、介入効果の高いメッセージを効率的に作成する。
【0022】
図1は、本実施形態におけるメッセージの提示例を示す図である。
ここでは、Webブラウザ又はメーラ等のフィッシング詐欺に遭遇する可能性のあるツールのアドオン機能として注意喚起メッセージが提示されることとする。
例えば、図のように、生涯でフィッシング詐欺の被害に遭うユーザの割合として、実際とは異なるアンカ値(50%)が提示されることで、目にしたユーザは、アンカリング効果による高い数値に意識が偏ることとなる。
【0023】
図2は、本実施形態におけるメッセージ提示システムによる処理の流れを例示する図である。
アンカリングを実施したい評価者による各種情報を受けたアンカ決定装置が、複数のアンカ値の候補に対するアンカリング効果の評価を行った上で、適切なアンカ値を決定し、評価者へ提示する。評価者は、Webブラウザ等のツールで適切なメッセージを出力させるため、ツールのアドオン機能へ、決定されたアンカ値を反映させる。
あるいは、アドオン機能に対して、決定されたアンカ値が自動的に反映され、メッセージが作成されてもよい。
【0024】
図3は、本実施形態におけるアンカ決定装置1の機能構成を示す図である。
アンカ決定装置1は、制御部10及び記憶部20の他、各種データの入出力デバイス及び通信デバイス等を備えた情報処理装置(コンピュータ)である。
【0025】
制御部10は、アンカ決定装置1の全体を制御する部分であり、記憶部20に記憶された各種プログラムを適宜読み出して実行することにより、後述の各機能部として動作し、本実施形態における各機能を実現する。制御部10は、CPUであってよい。
【0026】
記憶部20は、ハードウェア群をアンカ決定装置1として機能させるための各種プログラム、及び各種データ等の記憶領域であり、ROM、RAM、フラッシュメモリ又はハードディスクドライブ(HDD)等であってよい。
具体的には、記憶部20は、本実施形態の各機能を制御部10に実行させるためのプログラム(アンカ決定プログラム)の他、各種のデータベース等を記憶する。
【0027】
制御部10は、アンケート作成部11と、アンケート実施部12と、データ取得部13と、評価値算出部14と、アンカ決定部15と、メッセージ作成部16とを備える。
なお、アンケート作成部11、アンケート実施部12、及びメッセージ作成部16は、前述のように評価者の手により実施されてもよい。
【0028】
アンケート作成部11は、アンカ値の候補それぞれに対して、候補の値を示したうえで正解値を質問するアンケート(質問紙)を作成する。
アンケートを作成する前に、まず、評価者は、メッセージに含まれる要素として「時間枠」、「攻撃」、「アンカ属性」、「アンカ値」を、例えば次のように指定する。
・時間枠:生涯(他に、「一年間」等)
・攻撃:フィッシング詐欺(他に、「ウィルス感染」等)
・アンカ属性:%(他に、「人」等)
・アンカ値N:1、10、20、50、80、90、99
【0029】
なお、アンカ値Nは、メッセージに用いる値の候補であり、評価者によって複数の値が予め設定される。
アンケート作成部11は、評価者によって指定された情報に基づき、アンカ値の候補の数だけ、例えば、次のようにアンケートを作成する。
・質問1:生涯にフィッシング詐欺の被害に遭うユーザは1%より多いと思いますか。少ないと思いますか。あなたの考える値を答えてください。
・質問2:生涯にフィッシング詐欺の被害に遭うユーザは10%より多いと思いますか。少ないと思いますか。あなたの考える値を答えてください。
・質問3:生涯にフィッシング詐欺の被害に遭うユーザは20%より多いと思いますか。少ないと思いますか。あなたの考える値を答えてください。
・質問4:生涯にフィッシング詐欺の被害に遭うユーザは50%より多いと思いますか。少ないと思いますか。あなたの考える値を答えてください。
・質問5:生涯にフィッシング詐欺の被害に遭うユーザは80%より多いと思いますか。少ないと思いますか。あなたの考える値を答えてください。
・質問6:生涯にフィッシング詐欺の被害に遭うユーザは90%より多いと思いますか。少ないと思いますか。あなたの考える値を答えてください。
・質問7:生涯にフィッシング詐欺の被害に遭うユーザは99%より多いと思いますか。少ないと思いますか。あなたの考える値を答えてください。
【0030】
同様に、例えば、「一年間」、「ウィルス感染」、「人」が指定された場合には、
・質問:一年間にウィルス感染の被害に遭うユーザは10万人より多いと思いますか。少ないと思いますか。あなたの考える値を答えてください。
のようにアンケートが作成される。
【0031】
アンケート実施部12は、アンケート作成部11により作成されたアンケートを、アンカ値の候補それぞれに対して異なる回答者群に提示し、回答を回収する。
回答者群は、それぞれが他のアンカ値に影響されないように、アンカ値の候補の数だけ用意される。
【0032】
データ取得部13は、複数のアンカ値の候補と、候補それぞれに対するアンケート回答者による認知バイアスを含む回答値とのタプルを取得する。
前述のように、アンケート作成部11及びアンケート実施部12は必須ではなく、タプルの状態で既に得られている場合は、これがデータ取得部13への入力となる。
【0033】
評価値算出部14は、データ取得部13が取得した回答値を統計処理した代表値に基づいて、アンカ値の候補毎の評価値を算出する。
このとき、評価値算出部14は、代表値そのものを評価値として算出してもよいし、代表値と対応するアンカ値の候補との相対値を評価値として算出してもよい。
【0034】
相対値は、例えば、代表値と対応するアンカ値の候補との差、又は差に応じた値であってよい。あるいは、相対値は、代表値と対応するアンカ値の候補との差の、アンカ値の候補に対する割合、又は割合に応じた値であってもよい。
【0035】
具体的には、評価値算出部14は、データ取得部13で得られたタプルを用いて、次の計算を行う。
効果値XN:アンカ値Nを含む質問に対する複数の回答の代表値(平均値、中央値、最頻値)。この評価値は、回答者が持つ認知バイアスの絶対値を表しており、XNが大きいほど、回答者の持つ被害の認識が高いことを示す。
【0036】
効果効率YN:XNとアンカ値との距離を示す相対値であり、例えばYN=XN-Nと算出される。この値が高いほど、Nに対する見積もりが高まることを示し、回答者の持つ被害の認知の上昇値を表す。
また、例えばYN=(XN-N)/Nとし、回答者の持つ被害の認知の上昇率を表してもよい。
【0037】
アンカ決定部15は、評価値算出部14により算出された評価値(XN又はYN)が最大又は最小となるアンカ値、すなわちアンカリング効果の高いアンカ値を選定して出力する。
ここで、評価値算出部14は、複数種類の評価値を算出し、アンカ決定部15は、複数種類の評価値それぞれに基づいて選定した複数のアンカ値の間の範囲、又は範囲内の代表値(例えば、中央値、加重平均値等)を出力してもよい。
【0038】
図4は、本実施形態におけるアンカ値の候補それぞれに対して効果値X
N及び効果効率Y
Nを算出した結果を例示する図である。
この例では、アンカ値の候補1、10、20、50、80、90、99に対して算出された、効果値X
N及び効果効率Y
Nを折れ線グラフで示している。
【0039】
アンカ決定部15は、このグラフの特徴に基づいて、アンカリング効果の高いアンカ値を決定する。例えば、XNが最大となるNの値(=80)、YNが最大となるNの値(=20)、又はこれらの間(20~80)のいずれか、あるいは複数が選定される。
【0040】
メッセージ作成部16は、アンカ決定部15により出力されたアンカ値を含むメッセージを作成し、所定のタイミングでユーザに提示する。
例えば、評価者は、アンカ決定部15が出力した結果をもとに、Webブラウザのアドオン機能等にメッセージを反映する。
【0041】
なお、メッセージの出力は、ユーザが馴化しないよう適切なタイミングで行われることが好ましく、例えば、ホワイトリストに記載のないURLにアクセスした場合に表示される等、適宜のロジックに従う。
【0042】
本実施形態によれば、アンカ決定装置1は、特にセキュリティ対策を促す場面において、ある攻撃被害発生状況の認識を問うアンカ値を含んだ質問紙に対するユーザの回答を得る。このとき、異なるユーザ群に対し、異なるアンカ値を示すことで、群間で被害発生状況の自己認識の回答の違いが得られる。
したがって、アンカ決定装置1は、被害発生状況に対し認識している数値の絶対値、及び/又はアンカ値からの乖離値(相対値)を解析することにより、被害発生の認識が高くなると期待される適切なアンカ値を、試行錯誤的手法によらず効率的に決定できる。このアンカ値を攻撃被害が予想されるシステムにおいて提示される説得メッセージとして利用することで、介入効果の高いセキュリティ対策への注意喚起を行うことができる。
【0043】
ここで、被害発生状況に対し認識している数値の絶対値は、回答の代表値そのものであってよく、アンカ決定装置1は、最も絶対値が大きくなるアンカ値を容易に算出できる。
また、アンカ決定装置1は、相対値としての差(上昇値)又は割合(上昇率)を用いても、容易な計算により適切なアンカ値を決定できる。
さらに、アンカ決定装置1は、複数の評価手法を併用することにより、適切なアンカ値の範囲、又はその代表値等を出力してもよく、これにより信頼性の向上が期待できる。
【0044】
なお、通常のアンカリングでは、「生涯にフィッシング詐欺の被害に遭うユーザは10%です」のような確定的な表現を用いるため、アンカ値は真の値とすべきであり、仮にダミーの値をアンカ値として用いた場合、注意喚起そのものの信頼性が低下するおそれがある。一方、本実施形態の質問形式のメッセージの場合、アンカ値を提示してユーザに考えてもらうので、真の値を用いる必要がなく、同様の懸念は発生しない。
【0045】
アンカ決定装置1は、入力パラメータに基づいてアンケートを作成、及び実施することにより、人手によるデータ収集の処理負荷、及びエラーが低減される。このとき、例えば、ブラウザのアドオン機能として、所定のタイミングでアンケートが実施され、管理サーバ(アンカ決定装置1)にデータ送信されてもよい。
また、アンカ決定装置1は、ユーザに提示するメッセージを自動作成してもよく、これにより、システムが効率化される。
【0046】
前述の実施形態により、例えば、ユーザのセキュリティ対策実施を促進できることから、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【0047】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限るものではない。また、前述した実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0048】
前述の実施形態では、セキュリティ対策の実施を促進させるための注意喚起を目的としたメッセージにおいて、被害発生状況(被害発生確率又は件数等)に対してアンカリング効果を用いたが、適用対象はこれに限られない。
例えば、ショッピング又はホテルの予約等のWebサイトにおいて、「〇人(△%の人)が見ています」といったレコメンドの効果を高めるメッセージにおいて、本実施形態と同様のメッセージを出力することでアンカリング効果の効率的な向上が見込める。
【0049】
また、前述の実施形態では、アンカ値よりも高い値へのアンカリング効果を例示したが、適用対象に応じて低い値へのアンカリング効果も同様に期待できる。この場合、前述の効果値は低いほど、効果効率はマイナスの値が大きいほど、アンカリング効果が高いため、アンカ決定部15は、評価値が最小となるアンカ値を選定する。
【0050】
アンカ決定装置1によるアンカ決定装置方法は、ソフトウェアにより実現される。ソフトウェアによって実現される場合には、このソフトウェアを構成するプログラムが、情報処理装置(コンピュータ)にインストールされる。また、これらのプログラムは、CD-ROMのようなリムーバブルメディアに記録されてユーザに配布されてもよいし、ネットワークを介してユーザのコンピュータにダウンロードされることにより配布されてもよい。さらに、これらのプログラムは、ダウンロードされることなくネットワークを介したWebサービスとしてユーザのコンピュータに提供されてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 アンカ決定装置
10 制御部
11 アンケート作成部
12 アンケート実施部
13 データ取得部
14 評価値算出部
15 アンカ決定部
16 メッセージ作成部
20 記憶部