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特開2023-167884紫外線発光LED灯の設置シミュレーションシステム,その設置シミュレーション方法,コンピュータプログラム及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167884
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】紫外線発光LED灯の設置シミュレーションシステム,その設置シミュレーション方法,コンピュータプログラム及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/20 20200101AFI20231116BHJP
   G06F 30/13 20200101ALI20231116BHJP
【FI】
G06F30/20
G06F30/13
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079414
(22)【出願日】2022-05-13
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】507225540
【氏名又は名称】株式会社カネヒロデンシ
(74)【代理人】
【識別番号】100105175
【弁理士】
【氏名又は名称】山広 宗則
(74)【代理人】
【識別番号】100105197
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 牧子
(72)【発明者】
【氏名】兼森 雅弘
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146AA04
5B146AA09
5B146AA21
5B146CA01
5B146DC05
5B146DJ11
5B146DJ14
(57)【要約】
【課題】配光データを利用して紫外線発光LED灯を有効的に設置する。
【解決手段】室内空間100において設置される照明器具の照度に基づいた光の拡がり具合を示す配光(IES)データ25を利用して、前記室内空間に、除菌効果を有する紫外線を発光する紫外線発光LED灯10を設置するシミュレーションシステムであって、紫外線発光LED灯10に対応した配光(IES)データ25に一定の時間であるt秒(3600秒)を乗算した値を一定の時間(1時間)における時間光量値として記憶するメモリ手段21と、メモリ手段21に記憶された時間光量値に基づいて、室内空間100の一定の高さにおける複数の位置での時間光量値を、室内空間100の平面図にプロットした紫外線強度分布図を出力させる制御手段20を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内空間において設置される照明器具の照度に基づいた光の拡がり具合を示す配光(IES)データを利用して、前記室内空間に、除菌効果を有する紫外線を発光する紫外線発光LED灯を設置するシミュレーションシステムであって、
前記紫外線発光LED灯に対応した前記配光(IES)データに一定の時間であるt秒を乗算した値を前記一定の時間における時間光量値として記憶するメモリ手段と、
前記メモリ手段に記憶された前記時間光量値に基づいて、前記室内空間の一定の高さにおける複数の位置での前記時間光量値を、前記室内空間の平面図にプロットした紫外線強度分布図を出力させる制御手段を備えることを特徴とする紫外線発光LED灯の設置シミュレーションシステム。
【請求項2】
室内空間において設置される照明器具の照度に基づいた光の拡がり具合を示す配光(IES)データを利用して、前記室内空間に、除菌効果を有する紫外線を発光する紫外線発光LED灯を設置するシミュレーションシステムであって、
前記紫外線発光LED灯に対応した前記配光(IES)データに一定の時間であるt秒を乗算した値を前記一定の時間における時間光量値とする時間光量算出手段と、
前記時間光量値を記憶するメモリ手段と、
前記室内空間の一定の高さにおける前記時間光量値と予め設定された光量目標値を比較する比較手段と、
前記時間光量値が前記光量目標値以上になるように、紫外線発光LED灯の設置数及び設置位置を決定する設置決定手段を備えることを特徴とする紫外線発光LED灯の設置シミュレーションシステム。
【請求項3】
室内空間において設置される照明器具の照度に基づいた光の拡がり具合を示す配光(IES)データを利用して、前記室内空間に、除菌効果を有する紫外線を発光する紫外線発光LED灯を設置するシミュレーションシステムであって、
前記紫外線発光LED灯に対応した前記配光(IES)データに一定の時間であるt秒を乗算した値を前記一定の時間における時間光量値として記憶し、
前記室内空間の一定の高さにおける前記時間光量値が予め設定された光量目標値以上になるように、紫外線発光LED灯の設置数及び設置位置を決定することを特徴とする紫外線発光LED灯の設置シミュレーション方法。
【請求項4】
室内空間において設置される照明器具の照度に基づいた光の拡がり具合を示す配光(IES)データを利用して、前記室内空間に、除菌効果を有する紫外線を発光する紫外線発光LED灯を設置するシミュレーションシステムであって、
前記紫外線発光LED灯に対応した前記配光(IES)データに時間であるt秒を乗算した値を時間光量値として保存し、
前記室内空間の一定の高さにおける前記時間光量値が予め設定された光量目標値以上になるように、前記室内空間に設置された紫外線発光LED灯の点灯時間を決定することを特徴とする紫外線発光LED灯の設置シミュレーション方法。
【請求項5】
室内空間において設置される照明器具の照度に基づいた光の拡がり具合を示す配光(IES)データを利用して、前記室内空間に、除菌効果を有する紫外線を発光する紫外線発光LED灯を設置するシミュレーションシステムであって、
前記紫外線発光LED灯に対応した前記配光(IES)データに時間であるt秒を乗算した値を時間光量値として保存し、
前記室内空間の一定の高さにおける前記時間光量値が予め設定された光量目標値以上になるように、紫外線発光LED灯の設置数,設置位置及び点灯時間を決定することを特徴とする紫外線発光LED灯の設置シミュレーション方法。
【請求項6】
室内空間において設置される照明器具の照度に基づいた光の拡がり具合を示す配光(IES)データを利用して、前記室内空間に、除菌効果を有する紫外線を発光しかつ点灯出力が可変の紫外線発光LED灯を設置するシミュレーションシステムであって、
前記紫外線発光LED灯に対応した前記配光(IES)データに時間であるt秒を乗算した値を時間光量値として保存し、
前記室内空間の一定の高さにおける前記時間光量値が予め設定された光量目標値以上になるように、前記室内空間に設置された紫外線発光LED灯の点灯出力を決定することを特徴とする紫外線発光LED灯の設置シミュレーション方法。
【請求項7】
室内空間において設置される照明器具の照度に基づいた光の拡がり具合を示す配光(IES)データを利用して、前記室内空間に、除菌効果を有する紫外線を発光しかつ点灯出力が可変の紫外線発光LED灯を設置するシミュレーションシステムであって、
前記紫外線発光LED灯に対応した前記配光(IES)データに時間であるt秒を乗算した値を時間光量値として保存し、
前記室内空間の一定の高さにおける前記時間光量値が予め設定された光量目標値以上になるように、紫外線発光LED灯の設置数,設置位置及び点灯出力を決定することを特徴とする紫外線発光LED灯の設置シミュレーション方法。
【請求項8】
請求項3乃至7のうちいずれか一つに記載の紫外線発光LED灯の設置シミュレーション方法としてコンピュータを機能させるためのコンピュータプログラム。
【請求項9】
請求項8に記載のコンピュータプログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除菌効果を有する紫外線を発光する紫外線発光LED灯の設置シミュレーションシステム及びその紫外線発光LED灯の設置シミュレーション方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
室内空間に照明を設置する場合、照明の種類も多種多様であることから照明器具の配光特性を三次元的に保存し、この配光(IES)データを利用した照度シミュレーションが行われている。
配光データは、例えばパナソニック株式会社や東芝ライテック株式会社などから公開されていてダウンロードできるようになっている。
【0003】
しかし、配光データを利用した従来の照度シミュレーションは、瞬時の光量を測るものであるので、照射時間を考慮して時間光量を予想するものではない。
また、目標値に対して必要時間を割り出すようものではない。
【0004】
一方、ウィルスなどに強く除菌効果を有する紫外線を発光する紫外線発光LED灯が知られていて、新型コロナウィルスの世界的流行にともない注目されている。
【0005】
しかしながら、紫外線発光LED灯は各社から様々なものが市販されてはいるものの、室内空間にどのように配置すべきか具体的に決定する方法は知られていない。
また、その配置を、配光データを利用してシミュレーションするといった発想も存在しない。
【0006】
また、配光データを利用した照明装置に関する発明も開示されている(例えば、特許文献1参照)が、配光データを利用して紫外線発光LED灯の配置をシミュレーションするものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6-68708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の目的とするところは、配光データを利用して紫外線発光LED灯を有効的に設置することのできる紫外線発光LED灯の設置シミュレーションシステム,その設置シミュレーション方法,コンピュータプログラム及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の紫外線発光LED灯の設置シミュレーションシステムは、室内空間(100)において設置される照明器具の照度に基づいた光の拡がり具合を示す配光(IES)データ(25)を利用して、前記室内空間に、除菌効果を有する紫外線を発光する紫外線発光LED灯(10)を設置するシミュレーションシステムであって、
前記紫外線発光LED灯(10)に対応した前記配光(IES)データ(25)に一定の時間であるt秒(3600秒)を乗算した値を前記一定の時間(1時間)における時間光量値として記憶するメモリ手段(21)と、
前記メモリ手段(21)に記憶された前記時間光量値に基づいて、前記室内空間(100)の一定の高さにおける複数の位置での前記時間光量値を、前記室内空間(100)の平面図にプロットした紫外線強度分布図を出力させる制御手段(20)を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、室内空間(100)において設置される照明器具の照度に基づいた光の拡がり具合を示す配光(IES)データ(25)を利用して、前記室内空間(100)に、除菌効果を有する紫外線を発光する紫外線発光LED灯(10)を設置するシミュレーションシステムであって、
前記紫外線発光LED灯(10)に対応した前記配光(IES)データ(25)に一定の時間であるt秒(3600秒)を乗算した値を前記一定の時間(1時間)における時間光量値とする時間光量算出手段(20)と、
前記時間光量値を記憶するメモリ手段(21)と、
前記室内空間(100)の一定の高さにおける前記時間光量値と予め設定された光量目標値を比較する比較手段(20)と、
(前記一定の時間を経過したときの)前記時間光量値が前記光量目標値以上になるように、紫外線発光LED灯(10)の設置数及び設置位置を決定する設置決定手段(20)を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の紫外線発光LED灯の設置シミュレーション方法は、室内空間(100)において設置される照明器具の照度に基づいた光の拡がり具合を示す配光(IES)データ(25)を利用して、前記室内空間(100)に、除菌効果を有する紫外線を発光する紫外線発光LED灯(10)を設置するシミュレーションシステムであって、
前記紫外線発光LED灯(10)に対応した前記配光(IES)データ(25)に一定の時間であるt秒を乗算した値を前記一定の時間における時間光量値として記憶し、
前記室内空間(100)の一定の高さにおける前記時間光量値が予め設定された光量目標値以上になるように、紫外線発光LED灯(10)の設置数及び設置位置を決定することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、室内空間(100)において設置される照明器具の照度に基づいた光の拡がり具合を示す配光(IES)データ(25)を利用して、前記室内空間(100)に、除菌効果を有する紫外線を発光する紫外線発光LED灯(10)を設置するシミュレーションシステムであって、
前記紫外線発光LED灯(10)に対応した前記配光(IES)データ(25)に時間であるt秒を乗算した値を時間光量値として保存し、
前記室内空間(100)の一定の高さにおける前記時間光量値が予め設定された光量目標値以上になるように、前記室内空間に設置された紫外線発光LED灯(10)の点灯時間を決定することを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、室内空間(100)において設置される照明器具の照度に基づいた光の拡がり具合を示す配光(IES)データ(25)を利用して、前記室内空間(100)に、除菌効果を有する紫外線を発光する紫外線発光LED灯(10)を設置するシミュレーションシステムであって、
前記紫外線発光LED灯(10)に対応した前記配光(IES)データ(25)に時間であるt秒を乗算した値を時間光量値として保存し、
前記室内空間(100)の一定の高さにおける前記時間光量値が予め設定された光量目標値以上になるように、紫外線発光LED灯(10)の設置数,設置位置及び点灯時間を決定することを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、室内空間(100)において設置される照明器具の照度に基づいた光の拡がり具合を示す配光(IES)データ(25)を利用して、前記室内空間(100)に、除菌効果を有する紫外線を発光しかつ点灯出力が可変の紫外線発光LED灯(10)を設置するシミュレーションシステムであって、
前記紫外線発光LED灯(10)に対応した前記配光(IES)データ(25)に時間であるt秒を乗算した値を時間光量値として保存し、
前記室内空間(100)の一定の高さにおける前記時間光量値が予め設定された光量目標値以上になるように、前記室内空間(100)に設置された紫外線発光LED灯(10)の点灯出力を決定することを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、室内空間(100)において設置される照明器具の照度に基づいた光の拡がり具合を示す配光(IES)データ(25)を利用して、前記室内空間(100)に、除菌効果を有する紫外線を発光しかつ点灯出力が可変の紫外線発光LED灯(10)を設置するシミュレーションシステムであって、
前記紫外線発光LED灯(10)に対応した前記配光(IES)データ(25)に時間であるt秒を乗算した値を時間光量値として保存し、
前記室内空間(100)の一定の高さにおける前記時間光量値が予め設定された光量目標値以上になるように、紫外線発光LED灯(10)の設置数,設置位置及び点灯出力を決定することを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、請求項3乃至7のうちいずれか一つに記載の紫外線発光LED灯(10)の設置シミュレーション方法としてコンピュータを機能させるためのコンピュータプログラムである。
【0017】
また、本発明は、請求項8に記載のコンピュータプログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【0018】
なお、上記括弧内の記号は、図面および後述する発明を実施するための形態に掲載された対応要素または対応事項を示す。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、室内空間において設置される照明器具の照度に基づいた光の拡がり具合を示す配光(IES)データを利用して、前記室内空間に、除菌効果を有する紫外線を発光する紫外線発光LED灯を設置するシミュレーションシステムであり、既に存在する配光(IES)データを利用するものであるので簡易的である。
そして、紫外線発光LED灯に対応した前記配光(IES)データに一定の時間であるt秒を乗算した値を一定の時間における時間光量値として記憶し、その値に基づいて、室内空間の一定の高さにおける複数の位置での時間光量値を、室内空間の平面図にプロットした紫外線強度分布図を出力するようにしたので、視覚的に瞬時に理解でき、紫外線発光LED灯を設置して、新型コロナウィルスなどのウィルスや細菌を不活性化させるために有効的に利用することができる。
【0020】
また本発明によれば、作成された紫外線強度分布図により、室内空間おいて紫外線発光LED灯の設置数や設置場所,あるいは、点灯時間や点灯出力を様々変化させてシミュレーションし、新型コロナウィルスなどのウィルスや細菌を不活性化を図るため、利用者の所望のとおりに紫外線発光LED灯を設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係る紫外線発光LED灯の外観斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る紫外線発光LED灯の設置シミュレーションシステムの電気的構成を示すブロック図である。
図3】本発明の実施形態に係る紫外線発光LED灯の設置シミュレーションシステムを示すフローチャートである。
図4】本発明の実施形態に係る紫外線発光LED灯の設置シミュレーションシステムを示す紫外線強度分布図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図面を参照して、本発明の実施形態に係る紫外線発光LED灯の設置シミュレーションシステムについて説明する。
これは、最近のコロナ禍にともないコロナを不活性化する機能を有する紫外線発光LED灯10を、配光(IES)データ25を利用して室内空間100にどのように配置したら有効的であるかを検討するシミュレーションシステムである。
【0023】
紫外線発光LED灯10は、図1に示すようにドーム型のLED灯で天井に設置したり、机上や床面や壁面に設置したりできるようになっている。
紫外線発光LED灯10は、1.1Wの消費電力で365nmの波長の紫外線を放射する。365nmの波長の紫外線は、UV-A(315~400nm)で長波長紫外線の領域に属し、人体への影響は小さいが強い殺菌力を有している。これにより、紫外線発光LED灯10を一定時間照射することで新型コロナウィルスを効果的に除菌することができる。
【0024】
実験した結果、365nmの波長の紫外線を照射したとき、80mJ/cm2の量で新型コロナウィルスを50%不活性化することが確認された。すなわち、50%不活性化とは、新型コロナウィルスの数を示す感染値(PFU/0.1mL)を半分(50%)に除菌することでそれには80mJ/cm2の量の365nmの波長の紫外線が必要であることが確認された。
また、新型コロナウィルスを90%不活性化するには、同じく実験の結果、300mJ/cm2の量の365nmの波長の紫外線が必要であることが確認された。90%不活性化とは、新型コロナウィルスの数を示す感染値(PFU/0.1mL)を10%にするように、90%除菌することである。
【0025】
この実施形態に係る紫外線発光LED灯の設置シミュレーションシステムの電気的構成は、図2に示すように、制御部20と、記憶部(メモリ)21と、入力用のキーボードやマウス等からなる入力部22と、出力用のディスプレイやプリンタからなる出力部23を備えている。
制御部20は、制御プログラムに従ってシステム全体を制御するものであり、CPUからなる。
記憶部21は、ROMやRAMといった記憶媒体からなる。
なお、記憶部21として、HDD等の他の記憶媒体が、主に又は補助的に用いられてもよい。
制御部20には、配光(IES)データ25が取り込まれるようになっている。
【0026】
次に、図3に示すフローチャートを参照して、本発明の実施形態に係る紫外線発光LED灯10の設置シミュレーションシステムについて説明する。
【0027】
まず、図2に示した制御部20は、配光(IES)データ25を取得する(ステップS1:以下、「ステップ」という語を省略する)。配光(IES)データ25は、パナソニック株式会社など各社、照明器具メーカーが提供しているが、本実施形態では、ドイツ製の「DIALUX」という照度計算ソフト(フリーソフト)をダウンロードすることによって取得する。
【0028】
次に、配光(IES)データ25を利用し、例えば図4に示したような室内空間100(3.68m×5.05mの広さを想定した)において、所定位置に紫外線発光LED灯10を配置する(S2)。
ここでは、図4に示すように、室内空間100の天井において8個の紫外線発光LED灯10(10a,10b,10c,10d,10e,10f,10g,10h)を配置した。なお、紫外線発光LED灯10の個数や設置場合は限定されるものではなく様々のパターンが考えられる。例えば、1つの紫外線発光LED灯10を設置する場合であってもよい。
【0029】
次に、制御部20は、各位置の照度に時間を乗算して時間光量値を算出する(S3)。つまり、配光(IES)データ25では紫外線発光LED灯10を室内空間(100)に設置した場合の床面からの一定の高さにおける照度が、光束(lm(ルーメン):単位時間当たりの光の量)として表示されるので、ここでは各位置の照度に時間(ここでは1時間:3600秒)を乗算した時間光量値を算出したものである。時間については、1時間以外にすることも可能である。また、一定の高さとは、人間の目線の位置として例えば床面からの高さ1.3mと規定した。なお、これにかえて一定の高さを床面(0m)や他の高さにすることもできる。
【0030】
そして乗算した時間光量値を記憶部21で記憶して(S4)、時間光量値に基づいて、図4に示すような紫外線強度分布図を作成して(S5)、その内容をパソコンのディスプレイに表示したりプリントアウトしたりする(S6)。
ここでは、床面からの高さ1.3mにおける紫外線強度分布図を示し、110,220,330,440,550mJ/cm2/H(1時間)と等しい強度位置を曲線で結んで分布を示した。
【0031】
このように作成された紫外線強度分布図を使用して、紫外線発光LED灯10の設置数や設置場所,あるいは、既に設置された紫外線発光LED灯10の点灯時間や点灯出力を様々に変えつつ新型コロナウィルスを効果的に不活性化させるためのシミュレーションを実行することができる。
ここでは、紫外線発光LED灯10の点灯時間を1時間とした場合に、新型コロナウィルスを効果的に不活性化させるための紫外線発光LED灯10の設置数や設置場所を決定するシミュレーションを以下のステップ7~10に示す。
【0032】
ステップ7において、制御部20は、室内空間100の床面からの所定高さ、ここでは高さ1.3mにおける光量の目標値を取得してその値をレジスタZに入力する(S7)。
光量目標値Zとしては、前述したように、365nmの波長の紫外線を照射したとき、80mJ/cm2の量で新型コロナウィルスを50%不活性化することが確認されたことから、80mJ/cm2とした。
【0033】
次に、制御部20は、作成された紫外線強度分布図に基づいて、高さ1.3mにおける紫外線強度の平均値を算出し、この平均紫外線強度の値をレジスタAに入力する(S8)。
【0034】
そして、制御部20は、レジスタAの値とレジスタZの値を比較する(S9)。
その結果、レジスタAの値がレジスタZの値以上になると処理を終了するが、レジスタAの値がレジスタZの値よりも小さいと条件を変更した後(S10)、ステップ3に戻り、ステップ3以降の処理を、レジスタAの値がレジスタZの値以上になるまで繰り返す。
【0035】
図4に示した紫外線強度分布図においては、高さ1.3mにおける紫外線強度の平均値Aを算出すると、262mJ/cm2/H(1時間)であり、これは、光量目標値Zである80mJ/cm2より大きいので、少なくとも、室内空間100の天井において8個の紫外線発光LED灯10(10a,10b,10c,10d,10e,10f,10g,10h)を図4に示すように配置して1時間点灯させると新型コロナウィルスを50%以下に不活性化させることがわかる。
【0036】
なお、ステップ9で、紫外線強度の平均値Aが光量目標値Z未満であると、条件を変更、すなわち、紫外線発光LED灯10の設置数や設置位置を変えて、配光(IES)データに基づいて時間光量値を算出した後、平均紫外線強度を算出してこの値が光量目標値Z以上になるまで行う。これによれば、平均紫外線強度Aが光量目標値Zである80mJ/cm2に近づくように紫外線発光LED灯10の設置数や設置位置を決定することができる。
ここでは、紫外線発光LED灯10の設置数を8個としたが出力の大きいものを使用してその数を減らすことも可能であるし、出力が可変の紫外線発光LED灯10を使用して出力を様々変えるようにしてもよい。
【0037】
また、80mJ/cm2に近づくように紫外線発光LED灯10の点灯時間をシミュレーションで決定してもよい。ここでは、光量目標値Zである80mJ/cm2を262mJ/cm2/H(1時間)で除算すると、0.31時間であるので、8個の紫外線発光LED灯10(10a,10b,10c,10d,10e,10f,10g,10h)を図4に示すように配置して0.31時間点灯させると新型コロナウィルスを50%以下に不活性化させることがわかる。
【0038】
また、ここでは、新型コロナウィルスを50%不活性化することを基準にしたが、上述したように、新型コロナウィルスを90%不活性化するようにしてもよいし、様々なバリエーションにすることもできる。
また、紫外線発光LED灯10を天井に設置した場合を示したが、机上や床面や壁面に設置したり、これらを組合せるようにしてもよい。さらに、紫外線発光LED灯10として出力の異なるものを使用してもよい。
【0039】
なお、本発明の実施形態の制御部20による処理を実行するプログラムは、記憶部21のROMに予め記憶させるようにしている。これにかえて、FD(フレキシブルディスク),CD-ROM,DVD,光磁気ディスクなどの記録媒体に記録したものを利用者に提供し、ハードディスクや記憶部21のRAMにインストールさせるようにしてもよい。また、インターネットなどの通信回線を利用してプログラム自体をハードディスクやRAMにインストールさせるようにしてもよい。
【0040】
以上のように構成された紫外線発光LED灯100の設置シミュレーション方法によれば、新型コロナウィルスを不活性化させるために、配光データを利用して紫外線発光LED灯10を有効的に設置することができる。
すなわち、室内空間100において紫外線発光LED灯10の設置数や設置場所,あるいは、点灯時間や点灯出力を様々変化させてシミュレーションし、利用者の所望のとおりにすることを簡易に行うことができる。
【符号の説明】
【0041】
10 紫外線発光LED灯
20 制御部
21 メモリ
22 入力部
23 出力部
25 配光(IES)データ
100 室内空間
図1
図2
図3
図4