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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167903
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】電動モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 29/08 20060101AFI20231116BHJP
【FI】
H02K29/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079440
(22)【出願日】2022-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】早田 聖基
【テーマコード(参考)】
5H019
【Fターム(参考)】
5H019BB01
5H019BB05
5H019BB15
5H019BB20
5H019BB22
5H019CC04
5H019DD01
(57)【要約】
【課題】アウタロータの回転位置を検出するための磁気センサの配置自由度を高めることができる電動モータを提供する。
【解決手段】アウタロータ4は、ステータコア17の外周面17aと径方向で対向する筒状のロータヨーク部25と、ロータヨーク部25の端部25b側から軸方向外側に向かって突出される複数の脚部26と、複数の脚部26におけるロータヨーク部25とは反対側端に接合され、ステータコア17の端面17bと軸方向で対向する底部27と、ロータヨーク部25の内周面25aに固定された複数のマグネット24と、を備える。複数のマグネット24の各々は、少なくとも底部27側の端部24aがロータヨーク部25の端部25bから突出され、周方向で隣り合う脚部26の間に介在されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルが巻回されたステータと、
前記ステータを覆うアウタロータと、
を備え、
前記アウタロータは、
前記ステータの外周面と径方向で対向する筒状のロータヨーク部と、
前記ロータヨーク部の軸方向一端側から軸方向外側に向かって突出される複数の脚部と、
前記複数の脚部における前記ロータヨーク部とは反対側端に接合され、前記ステータの軸方向端面と軸方向で対向する底部と、
前記ロータヨーク部の内周面に固定された複数のマグネットと、
を備え、
前記複数のマグネットの各々は、少なくとも前記底部側の端部が前記ロータヨーク部の前記軸方向一端から突出され、周方向で隣り合う前記脚部の間に介在されている
ことを特徴とする電動モータ。
【請求項2】
前記複数の脚部は、前記ロータヨーク部の内周面から突出されている
ことを特徴とする請求項1に記載の電動モータ。
【請求項3】
前記マグネットの内周面と前記ステータの外周面との間の距離をAとし、軸方向からみた前記マグネットの周方向側面と前記脚部の周方向側面との間の距離をBとしたとき、距離A及び距離Bは、
A<B
を満たす
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電動モータ。
【請求項4】
軸方向からみた前記マグネットの内周面と前記底部の外周縁との間の距離をCとし、前記マグネットの前記底部側の端部と前記ステータの前記底部側の軸方向端部との間の最短距離をDとしたとき、距離C及び距離Dは、
D<C
を満たす
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電動モータ。
【請求項5】
前記マグネットの磁束を検出する磁気センサを備え、
前記磁気センサは、前記アウタロータの前記底部よりも軸方向外側に配置され、かつ軸方向で前記マグネットの軸方向端部と対向配置されている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電動モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータに関する。
【背景技術】
【0002】
電動モータのうちのブラシレスモータは、コイルが巻回されたステータと、ステータに対して回転自在に設けられたロータと、を備える。ブラシレスモータの中には、ロータがステータの周囲を覆うように有底筒状に形成されたいわゆるアウタロータがある。ロータにおける円筒状のロータヨーク部(ヨーク)の内周面には、マグネットが設けられている。
このような構成のもと、コイルに通電を行うと、ステータに鎖交磁束が発生する。この鎖交磁束とマグネットとの間で磁気的な吸引力や反発力が生じ、ロータが継続的に回転する。
【0003】
ここで、ブラシレスモータでは、コイルへの通電タイミングを制御するためにロータのマグネットにおける磁束の変化を検出し、ロータの回転位置を検出する場合がある。この際、アウタロータでは、ロータの開口部側にホールIC等の磁気センサを設ける。このように構成することで、マグネットの軸方向端部と磁気センサとを軸方向で対向させ、磁気センサによってマグネットの磁束を検出するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-222464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の従来技術のように、アウタロータの回転位置を検出する場合、磁気センサを配置できる箇所が制約されてしまうという課題があった。
【0006】
そこで、本発明は、アウタロータの回転位置を検出するための磁気センサの配置自由度を高めることができる電動モータを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の第1態様では、電動モータは、コイルが巻回されたステータと、前記ステータを覆うアウタロータと、を備え、前記アウタロータは、前記ステータの外周面と径方向で対向する筒状のロータヨーク部と、前記ロータヨーク部の軸方向一端側から軸方向外側に向かって突出される複数の脚部と、前記複数の脚部における前記ロータヨーク部とは反対側端に接合され、前記ステータの軸方向端面と軸方向で対向する底部と、前記ロータヨーク部の内周面に固定された複数のマグネットと、を備え、前記複数のマグネットの各々は、少なくとも前記底部側の端部が前記ロータヨーク部の前記軸方向一端から突出され、周方向で隣り合う前記脚部の間に介在されている。
【0008】
このように構成することで、アウタロータの底部側に、マグネットの軸方向端部を突出させることができる。このため、アウタロータの開口部側(底部とは反対側)でマグネットと磁気センサとを軸方向で対向配置できるだけでなく、アウタロータの底部側でマグネットと磁気センサとを軸方向で対向配置できる。よって、磁気センサの配置自由度を高めることが可能な電動モータを提供できる。
【0009】
本発明の第2態様では、第1態様の電動モータにおいて、前記複数の脚部は、前記ロータヨーク部の内周面から突出されている。
【0010】
このように構成することで、ロータヨーク部の軸方向一端から脚部が突出する場合と比較して、この脚部の位置を径方向内側にオフセットできる。この結果、脚部よりもマグネットの軸方向一端を突出させやすくできる。この分、マグネットの軸方向一端に磁気センサを近接配置できる。このため、磁気センサによるマグネットの磁束検出精度を高めることができる。
【0011】
本発明の第3態様では、第1態様又は第2態様の電動モータにおいて、前記マグネットの内周面と前記ステータの外周面との間の距離をAとし、軸方向からみた前記マグネットの周方向側面と前記脚部の周方向側面との間の距離をBとしたとき、距離A及び距離Bは、A<Bを満たす。
【0012】
このように構成することで、マグネットの軸方向端部から脚部に磁束が漏出してしまうことを抑制でき、マグネットの磁束をできる限りアウタロータの回転トルクに寄与させることができる。このため、アウタロータの底部側にマグネットを突出させた場合であっても電動モータのモータ特性が低減してしまうことを防止できる。
【0013】
本発明の第4態様では、第1態様から第3態様のいずれか1項の電動モータにおいて、軸方向からみた前記マグネットの内周面と前記底部の外周縁との間の距離をCとし、前記マグネットの前記底部側の端部と前記ステータの前記底部側の軸方向端部との間の最短距離をDとしたとき、距離C及び距離Dは、D<Cを満たす。
【0014】
このように構成することで、マグネットの軸方向端部から底部に磁束が漏出してしまうことを抑制でき、マグネットの磁束をできる限りアウタロータの回転トルクに寄与させることができる。このため、アウタロータの底部側にマグネットを突出させた場合であっても電動モータのモータ特性が低減してしまうことを防止できる。
【0015】
本発明の第5態様では、第1態様から第4態様のいずれか1項の電動モータにおいて、前記マグネットの磁束を検出する磁気センサを備え、前記磁気センサは、前記アウタロータの前記底部よりも軸方向外側に配置され、かつ軸方向で前記マグネットの軸方向端部と対向配置されている。
【0016】
このように、アウタロータの底部よりも軸方向外側に磁気センサを設けた場合であっても、磁気センサによってマグネットの磁束を検出でき、アウタロータの回転位置を検出できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、磁気センサの配置自由度を高めることが可能な電動モータを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態における電動モータの回転軸線方向に沿う断面図である。
図2】本発明の実施形態における電動モータの分解斜視図である。
図3】本発明の実施形態におけるステータ及びアウタロータを軸方向でカバー側からみた平面図である。
図4】本発明の実施形態におけるロータコア及びマグネットの斜視図である。
図5】本発明の実施形態におけるマグネットの有効磁束の量を比較したグラフである。
図6】本発明の実施形態における距離Bによるマグネットの有効磁束の変化を示すグラフである。
図7】本発明の実施形態における距離Dによるマグネットの有効磁束の変化を示すグラフである。
図8】本発明の実施形態の変形例におけるアウタロータの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
<電動モータ>
図1は、電動モータ1の回転軸線C方向に沿う断面図である。図2は、電動モータ1の分解斜視図である。
図1図2に示すように、電動モータ1は、いわゆるアウタロータ型のブラシレスモータである。電動モータ1は、モータケース2と、モータケース2内に収納されたステータ3、アウタロータ4、及び回転位置検出装置5と、を備える。回転軸線Cとは、アウタロータ4の回転軸線をいう。以下の説明では、回転軸線C方向を単に軸方向と称する。アウタロータ4の回転方向を、周方向と称する。軸方向及び周方向に直交するアウタロータ4の径方向を、単に径方向と称する。
【0021】
<モータケース>
モータケース2は、有底円筒状のケース本体6と、ケース本体6の開口部6aを閉塞するカバー7と、を備える。ケース本体6の底部6bには、径方向中央に、開口部6aに向かって突出するステータ台座8が一体成形されている。このステータ台座8に、ステータ3が載置されている。ステータ台座8の径方向中央には、軸方向に貫通する第1シャフト挿通孔9が形成されている。第1シャフト挿通孔9の開口部6a側には、第1軸受収納凹部10が形成されている。第1軸受収納凹部10に、アウタロータ4を回転自在に支持するための第1軸受11が設けられている。第1軸受11としては、例えば玉軸受が用いられる。
【0022】
カバー7は、円板状のカバー本体12と、カバー本体12の外周縁からケース本体6側に向かって延出された円筒状の嵌合部13と、が一体成形されたものである。嵌合部13が、ケース本体6の開口部6aに嵌合される。これにより、カバー7によってケース本体6の開口部6aが閉塞される。カバー本体12の径方向中央には、軸方向に貫通する第2シャフト挿通孔14が形成されている。
【0023】
第2シャフト挿通孔14は、第1シャフト挿通孔9と同軸上に配置されている。第2シャフト挿通孔14のケース本体6側には、第2軸受収納凹部15が形成されている。第2軸受収納凹部15に、アウタロータ4を回転自在に支持するための第2軸受16が設けられている。第2軸受16も第1軸受11と同様に、例えば玉軸受が用いられる。
【0024】
<ステータ>
ステータ3は、ステータコア17とステータコア17に巻回されたコイル18と、を備える。ステータコア17は、磁性鋼板を複数枚積層してなる。ステータコア17は、円環状のコア本体19と、コア本体19の外周面から径方向外側に向かって放射状に形成された複数(例えば、本実施形態では12個)のティース20と、を備える。コア本体19が、ケース本体6のステータ台座8上に載置される。
【0025】
コア本体19には、周方向に等間隔で複数(例えば、本実施形態では3個)のボルト挿通孔21が形成されている。これらボルト挿通孔21に、ケース本体6の開口部6a側からボルト30が挿通される。これらボルト30をステータ台座8に締結することにより、ケース本体6内にステータコア17が固定される。
【0026】
ティース20は、径方向外側端が周方向に延びるように、軸方向からみてT字状に形成されている。ティース20における径方向外側の端面20aが、ステータコア17(ステータ3)の外周面17aを構成している。各ティース20に、それぞれコイル18が巻回される。コイル18の端末部は、図示しない制御部に電気的に接続されている。制御部は、図示しない外部電源に接続されている。制御部によって、各コイル18への通電制御が行われる。
【0027】
<アウタロータ>
図3は、ステータ3及びアウタロータ4を軸方向でカバー7側からみた平面図である。図4は、ロータコア23及びマグネット24の斜視図である。
図1から図4に示すように、アウタロータ4は、モータケース2に第1軸受11及び第2軸受16を介して回転自在に支持されたロータシャフト22と、モータケース2内に収納され、ロータシャフト22に固定されたロータコア23と、ロータコア23に固定された複数(例えば、本実施形態では10個)のマグネット24と、を備える。
【0028】
ロータシャフト22が、各軸受11,16に回転自在に支持されている。ロータシャフト22は、各軸受11,16を介してモータケース2の各シャフト挿通孔9,14に挿通されている。ロータシャフト22の軸方向両端は、各シャフト挿通孔9,14を介して軸方向外側に向かって突出されている。
【0029】
ロータコア23は、有底筒状に形成されている。ロータコア23は、ステータコア17の外周面17aを径方向外側から覆う円筒状のロータヨーク部25と、ロータヨーク部25の内周面25aにおけるカバー7側端からこのカバー7のカバー本体12に向かって突出される複数(例えば、本実施形態では10個)の脚部26と、各脚部26のロータヨーク部25とは反対側端に接合された円板状の底部27と、を備える。
【0030】
ロータヨーク部25の内周面25aは、ステータコア17の外周面17aと径方向で対向している。ロータヨーク部25の軸方向の長さは、ステータコア17の軸方向の長さと同一である。
脚部26は、ロータヨーク部25の内周面25aからカバー7のカバー本体12に向かいつつ、径方向内側に向かって円弧状に延びている。各脚部26は、周方向に等間隔で配置されている。ロータヨーク部25の内周面25aから脚部26が突出されているので、ロータヨーク部25におけるカバー7側の端部25bは、一部が脚部26に覆われることなく、全周に渡って露出されている。
【0031】
脚部26のロータヨーク部25とは反対側端に、底部27の外周縁27aが接合されている。脚部26の底部27側の端部は、底部27に向かうに従って周方向の幅が漸次広くなるように形成されている。これにより、脚部26と底部27との接合部には、これら脚部26と底部27とが滑らかに連絡されるように円弧部26aが形成される。円弧部26aによって、脚部26と底部27との接合部に、局所的に応力が作用してしまうことを抑制できる。
【0032】
底部27は、ステータコア17におけるカバー7側の端面17bと軸方向で対向している。ロータヨーク部25と底部27とを脚部26によって連結することにより、ロータヨーク部25と底部27との間には、周方向で隣り合う脚部26の間に、開口部23aが形成された形になる。
【0033】
底部27の径方向中央には、貫通孔27bが形成されている。貫通孔27bに、ロータシャフト22が圧入、又は挿通されている。これにより、貫通孔27bにロータシャフト22を挿通する場合、例えば底部27とロータシャフト22とが溶接等により接合される。これにより、ロータシャフト22とロータコア23とが一体化される。ロータシャフト22にロータコア23を固定した状態で、ロータヨーク部25におけるカバー7側の端部25bとステータコア17におけるカバー7側の端面17bとは、同一平面上に位置される。
【0034】
マグネット24は、ロータヨーク部25の内周面25aに例えば接着剤等により固定される。これにより、ロータヨーク部25はマグネット24の磁路として機能する。マグネット24は、微小隙間を介してステータコア17の外周面17aと径方向で対向している。
マグネット24は、周方向に等間隔で配置されている。より詳しくは、マグネット24は、軸方向からみて周方向で隣り合う脚部26の間の周方向中央に配置されている。
【0035】
マグネット24における軸方向の両端部24a,24bは、ロータヨーク部25における軸方向の両端部25b,25cから突出している。マグネット24と脚部26との個数が同数であるので、開口部23aごとにマグネット24が存在している。このような構成のもと、マグネット24におけるカバー7側(ロータコア23の底部27側)の端部24aは、対応するロータコア23の開口部23aに挿通されている。換言すれば、マグネット24におけるカバー7側(ロータコア23の底部27側)の端部24aは、周方向で隣り合う脚部26の間に介在されている。
【0036】
ここで、マグネット24におけるカバー7側(ロータコア23の底部27側)の端部24aとロータヨーク部25におけるカバー7側の端部25bとの間の距離をEとし、マグネット24におけるケース本体6側の端部24bとロータヨーク部25におけるケース本体6の底部6b側の端部25cとの間の距離をFとしたとき、距離E及び距離Fは、
E>F ・・・(1)
を満たす。
【0037】
マグネット24の内周面24cとステータコア17の外周面17aとの間の距離をAとし、軸方向からみたマグネット24の周方向側面24dと脚部26の周方向側面26bとの間の距離をBとしたとき、距離A及び距離Bは、
A<B ・・・(2)
を満たす。
【0038】
軸方向からみたマグネット24の内周面24cと底部27の外周縁27aとの間の距離をCとし、マグネット24におけるカバー7側の端部24aとステータコア17におけるカバー7側の端面17bとの間の最短距離をDとしたとき、距離C及び距離Dは、
D<C ・・・(3)
を満たす。
【0039】
<回転位置検出装置>
図1図2に示すように、回転位置検出装置5は、カバー本体12の内面12aに設けられており、ロータコア23と軸方向で対向している。回転位置検出装置5は、エポキシ樹脂等により形成されたセンサ基板31と、センサ基板31に実装された磁気センサ32と、を備える。
【0040】
センサ基板31が、カバー本体12の内面12aに設けられている。センサ基板31は、軸方向からみてロータヨーク部25に沿うように円弧状に形成されている。センサ基板31は、軸方向からみてマグネット24の端部24aと重なる位置に配置されている。センサ基板31は、図示しない制御部に電気的に接続されている。
センサ基板31のマグネット24側の面に、磁気センサ32が実装されている。磁気センサ32は、マグネット24の端部24aと軸方向で対向している。磁気センサ32は例えばホールIC等で構成されており、マグネット24の磁束の変化を検出する。
【0041】
<電動モータの動作>
次に、電動モータ1の動作について説明する。
制御部を介して外部電源(いずれも図示しない)の電力がコイル18に供給されると、ステータ3の各ティース20に鎖交磁束が生じる。この鎖交磁束とアウタロータ4のマグネット24との間で磁気的な吸引力や反発力が生じ、アウタロータ4が回転される。アウタロータ4が回転すると、磁気センサ32によってマグネット24の磁束の変化が検出される。この検出結果は信号として図示しない制御部に出力される。制御部は、回転位置検出装置5からの出力信号に基づいてアウタロータ4の回転位置を算出する。これにより、コイル18への通電タイミングを制御することで、アウタロータ4が継続的に回転される。
【0042】
このように、ロータコア23をロータヨーク部25と複数の脚部26と底部27とにより構成することで、ロータコア23に開口部23aを形成している。この開口部23aにマグネット24の端部24aを挿通することにより、カバー7側に配置(ロータコア23の底部27側)に回転位置検出装置5を配置可能としている。
【0043】
ここで、マグネット24における軸方向の両端部24a,24bは、ロータヨーク部25における軸方向の両端部25b,25cから突出している。すなわち、ステータ3におけるティース20の軸方向両端からマグネット24における軸方向の両端部24a,24bが軸方向外側に突出している。これにより、アウタロータ4の有効磁束量を増大できる。この結果、ステータ3に形成された鎖交磁束を、アウタロータ4の回転力に効率的に寄与させることができ、電動モータ1を高トルク化できる。
【0044】
ところで、前述した通り、ロータヨーク部25は、マグネット24の磁路として機能している。このため、ロータヨーク部25の軸方向の長さは、マグネット24の軸方向の長さ分だけ存在するのが理想である。
【0045】
図5は、マグネット24の外周面全体がロータヨーク部25に覆われている場合(以下、バックヨークありと称する)と、本実施形態のようにロータヨーク部25における軸方向の両端部25b,25cからマグネット24における軸方向の両端部24a,24bが突出されている場合(以下、バックヨークなしと称する)とのマグネット24の有効磁束[μWb]の量を比較したグラフである。
図5に示すように、バックヨークありは、バックヨークなしと比較してマグネット24の有効磁束の量が多くなることが確認できる。
【0046】
しかしながら、本実施形態では敢えてバックヨークなしとし、ロータコア23の底部27側に回転位置検出装置5を配置する構成としている。
ロータコア23の底部27側に回転位置検出装置5を配置するにあたって、マグネット24におけるカバー7側の端部24aとロータヨーク部25におけるカバー7側の端部25bとの間の距離E、及びマグネット24におけるケース本体6側の端部24bとロータヨーク部25におけるケース本体6の底部6b側の端部25cとの間の距離Fは、上記式(1)を満たすようにしている。このため、できる限り磁気センサ32にマグネット24の端部24aを接近させることができる。よって、回転位置検出装置5による検出結果の精度を高めることができる。
【0047】
バックヨークなしによるマグネット24の有効磁束量の減少の対策として、マグネット24の内周面24cとステータコア17の外周面17aとの間の距離A、及び軸方向からみたマグネット24の周方向側面24dと脚部26の周方向側面26bとの間の距離Bは、上記式(2)を満たしている。このため、ロータコア23の開口部23aにマグネット24の端部24aを挿通しつつも脚部26へのマグネット24の磁束が漏出してしまうことが抑制される。すなわち、上記式(2)を満たすことによりマグネット24の磁束が積極的にティース20側へと流れる。これにより、マグネット24の有効磁束の量が増大される。
【0048】
図6は、縦軸をマグネット24の有効磁束[μWb]の量とし、横軸を距離Bとしたときのマグネット24の有効磁束の変化を示すグラフである。
図6に示すように、距離Bは、0.6mm前後とすることが望ましい。マグネット24の有効磁束の量を十分確保しつつ脚部26の剛性も確保できるからである。距離Bが1.4mm以上となると殆どマグネット24の有効磁束の変化が確認できなくなる。このため、距離Bを1.4mm以上とすることは、マグネット24の有効磁束及びロータコア23の剛性の観点から望ましくない。
【0049】
また、軸方向からみたマグネット24の内周面24cと底部27の外周縁27aとの間の距離C、及びマグネット24におけるカバー7側の端部24aとステータコア17におけるカバー7側の端面17bとの間の最短距離Dは、上記式(3)を満たしている。このため、ロータコア23の開口部23aにマグネット24の端部24aを挿通しつつも底部27へのマグネット24の磁束が漏出してしまうことが抑制される。すなわち、上記式(3)を満たすことによりマグネット24の磁束が積極的にティース20側へと流れる。これにより、マグネット24の有効磁束の量が増大される。
【0050】
図7は、縦軸をマグネット24の有効磁束[μWb]の量とし、横軸を距離Dとしたときのマグネット24の有効磁束の変化を示すグラフである。
図7に示すように、距離Dは、4mm前後とすることが望ましい。マグネット24の有効磁束の量を十分確保しつつ脚部26の剛性も確保できるからである。距離Dが5mm以上となると殆どマグネット24の有効磁束の変化が確認できなくなる。このため、距離Dを5mm以上とすることは、マグネット24の有効磁束及びロータコア23の剛性の観点から望ましくない。
【0051】
このように、上述の実施形態では、ロータヨーク部25におけるカバー7側の端部25bからマグネット24におけるカバー7側の端部24aが突出されている。そして、マグネット24の端部24aは、ロータコア23の開口部23aに挿通されている。換言すれば、マグネット24の端部24aは、周方向で隣り合う脚部26の間に介在されている。このため、ロータコア23の底部27側にマグネット24の端部24aを突出させることができる。
【0052】
この結果、ロータコア23の開口部23a側でマグネット24と磁気センサ32とを軸方向で対向配置できるだけでなく、ロータコア23の底部27側でマグネット24と磁気センサ32とを軸方向で対向配置できる。よって、磁気センサ32の配置自由度を高めることが可能な電動モータ1を提供できる。
【0053】
しかも、ロータコア23の脚部26は、ロータヨーク部25の内周面25aから突出されている。このため、ロータヨーク部25の端部25bから脚部26が突出される場合と比較して、この脚部26の位置を径方向内側にオフセットできる。この結果、脚部26よりもマグネット24の端部24aを突出させやすくできる。この分、マグネット24の端部24aに磁気センサ32を近接配置できる。よって、磁気センサ32によるマグネット24の磁束検出精度を高めることができる。
【0054】
さらに、脚部26は、ロータヨーク部25の内周面25aからカバー7のカバー本体12に向かいつつ、径方向内側に向かって円弧状に延びている。脚部26が円弧状になっている分、脚部26よりもマグネット24の端部24aをさらに突出させやすくできる。
【0055】
マグネット24の内周面24cとステータコア17の外周面17aとの間の距離A、及び軸方向からみたマグネット24の周方向側面24dと脚部26の周方向側面26bとの間の距離Bは、上記式(2)を満たす。このため、ロータコア23の開口部23aにマグネット24の端部24aを挿通しつつも脚部26へのマグネット24の磁束が漏出してしまうことを抑制できる。
【0056】
この結果、マグネット24の有効磁束の量が増大され、マグネット24の磁束をできる限りアウタロータ4の回転トルクに寄与させることができる。よって、ロータコア23の底部27側にマグネット24の端部24aを突出させた場合であっても電動モータ1のモータ特性が低減してしまうことを防止できる。
【0057】
軸方向からみたマグネット24の内周面24cと底部27の外周縁27aとの間の距離C、及びマグネット24におけるカバー7側の端部24aとステータコア17におけるカバー7側の端面17bとの間の最短距離Dは、上記式(3)を満たす。このため、ロータコア23の開口部23aにマグネット24の端部24aを挿通しつつも底部27へのマグネット24の磁束が漏出してしまうことを抑制できる。
【0058】
この結果、マグネット24の有効磁束の量が増大され、マグネット24の磁束をさらにできる限りアウタロータ4の回転トルクに寄与させることができる。よって、ロータコア23の底部27側にマグネット24の端部24aを突出させた場合であっても電動モータ1のモータ特性が低減してしまうことをさらに防止できる。
【0059】
上記の電動モータ1は、ロータコア23の底部27よりも軸方向外側に磁気センサ32を配置している。このように構成した場合でも、マグネット24と磁気センサ32とを軸方向で対向配置させてアウタロータ4の回転位置を検出できる。
【0060】
電動モータ1の回転位置検出装置5の配置自由度を高めることができるので、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標7「全ての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」、及び目標9「強靭(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの促進を図る」に貢献することが可能となる。
【0061】
[変形例]
本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の実施形態では、モータケース2は、有底円筒状のケース本体6と、ケース本体6の開口部6aを閉塞するカバー7と、を備える場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、モータケース2は、ステータ3、アウタロータ4、及び回転位置検出装置5を収納できる形状であればよい。
【0062】
上述の実施形態では、ロータヨーク部25におけるケース本体6の底部6b側の端部25cからマグネット24におけるケース本体6側の端部24bが突出されている場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、ロータヨーク部25の端部25cからマグネット24の端部24bが突出されていなくてもよい。少なくともロータヨーク部25におけるカバー7側の端部25bからマグネット24におけるカバー7側の端部24aが突出されていればよい。
【0063】
上述の実施形態では、マグネット24と脚部26との個数が同数である場合について説明した。開口部23aごとに、マグネット24が存在している場合について説明した。そして、マグネット24におけるカバー7側(ロータコア23の底部27側)の端部24aは、対応するロータコア23の開口部23aに挿通されている場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、マグネット24と脚部26との個数でなくてもよい。周方向で隣り合う脚部26の間に、マグネット24におけるカバー7側(ロータコア23の底部27側)の端部24aが介在されていればよい。
【0064】
図8は、実施形態の変形例におけるアウタロータ4の斜視図である。
上述の実施形態では、マグネット24の内周面24cとステータコア17の外周面17aとの間の距離A、及び軸方向からみたマグネット24の周方向側面24dと脚部26の周方向側面26bとの間の距離Bは、上記式(2)を満たす場合について説明した。軸方向からみたマグネット24の内周面24cと底部27の外周縁27aとの間の距離C、及びマグネット24におけるカバー7側の端部24aとステータコア17におけるカバー7側の端面17bとの間の最短距離Dは、上記式(3)を満たす場合について説明した。すなわち、ロータコア23に形成された開口部23aとマグネット24との間には、隙間が形成されている場合について説明した。
【0065】
しかしながらこれに限られるものではなく、図8に示すように、ロータコア23の開口部23aの形状を、マグネット24の形状に対応するように形成してもよい。そして、開口部23aに隙間なくマグネット24が挿通されるようにしてもよい。このように構成した場合であっても、電動モータ1は、ロータコア23の底部27側でマグネット24と磁気センサ32とを軸方向で対向配置させてアウタロータ4の回転位置を検出できる。
【符号の説明】
【0066】
1…電動モータ、2…モータケース、3…ステータ、4…アウタロータ、5…回転位置検出装置、6…ケース本体、6a…開口部、6b…底部、7…カバー、8…ステータ台座、9…第1シャフト挿通孔、10…第1軸受収納凹部、11…第1軸受、12…カバー本体、12a…内面、13…嵌合部、14…第2シャフト挿通孔、15…第2軸受収納凹部、16…第2軸受、17…ステータコア、17a…外周面、17b…端面(ステータの軸方向端面)、18…コイル、19…コア本体、20…ティース、20a…端面、21…ボルト挿通孔、22…ロータシャフト、23…ロータコア、23a…開口部、24…マグネット、24a…端部、24b…端部、24c…内周面、24d…周方向側面、25…ロータヨーク部、25a…内周面、25b…端部(ロータヨーク部の軸方向一端)、25c…端部、26…脚部、26a…円弧部、26b…周方向側面、27…底部、27a…外周縁、27b…貫通孔、30…ボルト、31…センサ基板、32…磁気センサ
図1
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図8