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特開2023-167907ゲート設備劣化診断装置およびゲート設備劣化診断方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167907
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】ゲート設備劣化診断装置およびゲート設備劣化診断方法
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/20 20060101AFI20231116BHJP
   G05B 23/02 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
E02B7/20 105
G05B23/02 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079450
(22)【出願日】2022-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 克也
【テーマコード(参考)】
2D019
3C223
【Fターム(参考)】
2D019AA43
2D019AA52
3C223BA03
3C223CC03
3C223DD03
3C223EB02
3C223FF13
3C223GG03
3C223HH02
3C223HH29
(57)【要約】
【課題】ゲートの開閉制御を高い精度で実行し、且つ、ゲートの過動作量の変化に基づいてゲート設備の経年劣化を診断すること
【解決手段】実施形態に係るゲート設備劣化診断装置であって、目標開度を含む操作指令を受信し、ゲートの動作方向が開方向または閉方向であるかを判定する動作方向判定部と、見込過動作量を記憶する記憶部と、動作方向の判定結果に応じた指示を駆動装置に出力し、ゲートの開度が目標開度から見込過動作量だけ手前であるときに停止指示を出力する制御指示部と、駆動停止後のゲートの開度、目標開度、および見込過動作量に基づいて過動作量を算出する過動作量算出部と、過動作量に基づいて、ゲート設備の劣化を判定するゲート設備劣化判定部と、ゲート設備が劣化していると判定された場合、放流操作装置にゲート設備が劣化していることを通知する通知制御部と、を備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標開度を含む操作指令を受信し、ゲートの動作方向が開方向または閉方向であるかを判定する動作方向判定部と、
前記ゲートの過去の開閉動作に基づいて生成された見込過動作量を記憶する記憶部と、
前記動作方向の判定結果に応じた指示を駆動装置に出力し、前記ゲートの開度が前記目標開度から前記見込過動作量だけ手前であるときに停止指示を出力する制御指示部と、
駆動停止後の前記ゲートの開度を取得し、前記駆動停止後のゲートの開度、前記目標開度、および前記見込過動作量に基づいて過動作量を算出する過動作量算出部と、
前記過動作量に基づいて、ゲート設備の劣化を判定するゲート設備劣化判定部と、
前記ゲート設備が劣化していると判定された場合、放流操作装置に前記ゲート設備が劣化していることを通知する通知制御部と、
を備える、ゲート設備劣化診断装置。
【請求項2】
前記ゲート設備劣化判定部は、前記過動作量が所定の閾値以上である場合に前記ゲート設備が劣化していると判定する、請求項1に記載のゲート設備劣化診断装置。
【請求項3】
前記ゲート設備劣化判定部は、前記過動作量が所定の期間に所定の回数だけ前記過動作量が所定の閾値以上となる場合に前記ゲート設備が劣化していると判定する、請求項1に記載のゲート設備劣化診断装置。
【請求項4】
前記ゲート設備劣化判定部は、前記過動作量のばらつきが所定の閾値以上となる場合に前記ゲート設備が劣化していると判定する、請求項1に記載のゲート設備劣化診断装置。
【請求項5】
前記通知は、前記目標開度、前記見込過動作量、前記ゲートの開度、前記過動作量を含む制御履歴データを含む、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のゲート設備劣化診断装置。
【請求項6】
前記通知は、前記目標開度、前記見込過動作量、前記ゲートの開度、前記過動作量を含む制御履歴データにアクセスするためのリンクを含む、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のゲート設備劣化診断装置。
【請求項7】
ゲート設備劣化診断装置のプロセッサが実行するゲート設備劣化診断方法であって、
目標開度を含む操作指令を受信することと、
ゲートの動作方向が開方向または閉方向であるかを判定することと、
前記ゲートの過去の開閉動作に基づいて生成された見込過動作量を記憶することと、
前記動作方向の判定結果に応じた指示を駆動装置に出力することと、
前記ゲートの開度が前記目標開度から前記見込過動作量だけ手前であるときに停止指示を出力することと、
駆動停止後の前記ゲートの開度を取得することと
前記駆動停止後のゲートの開度、前記目標開度、および前記見込過動作量に基づいて過動作量を算出することと、
前記過動作量に基づいて、ゲート設備の劣化を判定することと、
前記ゲート設備が劣化していると判定された場合、放流操作装置に前記ゲート設備が劣化していることを通知することと、
を備える、ゲート設備劣化診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ゲート設備劣化診断装置およびゲート設備劣化診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダム管理用制御処理設備(以下、「ダムコン」という)システムは、ダムの運用管理を支援するシステムである。ダムコンシステムが担う機能のうちの1つとしてゲート設備に対して目標開度を設定し、目標開度になるようにゲート設備の開閉制御を行うというものがある。
【0003】
ダムコンシステムの運用を安全かつ適切に行うために、ゲート設備の開閉制御を高い精度で行うことが求められる。ゲート設備の特性により、ゲートの開閉を停止する停止指令出力後にゲート設備が惰性で動いてしまう。このような場合、制御終了後の開度と目標開度が一致せず制御異常が発報されてしまう。例えば、特許文献1では、実際のゲート制御の結果からゲート設備が惰性で動く量(以下、「過動作量」という)を求め、次の制御からは目標開度よりも過動作量だけ手前で停止指令を出力する方式を採用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-004154号公報
【特許文献2】特開2013-044650号公報
【特許文献3】特開2014-058776号公報
【特許文献4】特開2012-190171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ゲート設備の故障または経年劣化により過動作量が変化した場合、特許文献1で示した技術では、故障や経年劣化による過動作量の変化に合わせて自動制御してしまう。そのため、ダム管理者は、ゲート設備の故障や経年劣化を判断することができなくなるという問題がある。
【0006】
この発明の課題は、上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、ゲートの開閉制御を高い精度で実行し、且つ、ゲートの過動作量の変化に基づいてゲート設備の故障または経年劣化を診断し、ダム管理者に警告することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係るゲート設備劣化診断装置は、目標開度を含む操作指令を受信し、ゲートの動作方向が開方向または閉方向であるかを判定する動作方向判定部と、前記ゲートの過去の開閉動作に基づいて生成された見込過動作量を記憶する記憶部と、前記動作方向の判定結果に応じた指示を駆動装置に出力し、前記ゲートの開度が前記目標開度から前記見込過動作量だけ手前であるときに停止指示を出力する制御指示部と、駆動停止後の前記ゲートの開度を取得し、前記駆動停止後のゲートの開度、前記目標開度、および前記見込過動作量に基づいて過動作量を算出する過動作量算出部と、前記過動作量に基づいて、ゲート設備の劣化を判定するゲート設備劣化判定部と、前記ゲート設備が劣化していると判定された場合、放流操作装置に前記ゲート設備が劣化していることを通知する通知制御部と、を備えるものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態におけるダムコンシステムの概略構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、放流操作装置の機能ブロックの一例を示す図である。
図3図3は、自動系機側盤PLCの機能ブロックの一例を示す図である。
図4図4は、第1の実施形態の自動系機側盤PLCのゲート設備劣化診断処理手順の一例を示すフローチャートである。
図5図5は、制御データ記憶部に記憶された制御履歴データの一例を示す図である。
図6図6は、放流操作装置の出力装置にゲート設備が劣化したことを通知する一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながらゲート設備劣化診断装置およびゲート設備劣化診断方法について詳細に説明する。なお、以下の実施形態では、同一の番号を付した部分については同様の動作を行うものとして、重複する説明を省略する。例えば、複数の同一または類似の要素が存在する場合に、各要素を区別せずに説明するために共通の符号を用いることがあるし、各要素を区別して説明するために当該共通の符号に加えて枝番号を用いることもある。
【0010】
(構成)
図1は、実施形態におけるダムコンシステムの概略構成の一例を示すブロック図である。
【0011】
ダムコンシステムは、放流操作装置1と、制御系LAN6に接続された入出力装置2と、遠方手動操作装置3と、機側盤4と、ゲート設備5と、を備える。
【0012】
放流操作装置1は、制御系LAN6および情報系LAN7に接続される。入出力装置2および遠方手動操作装置3は、一方で制御系LAN6に接続され、他方で機側盤4と接続される。機側盤4は、ゲート設備5と接続される。
【0013】
機側盤4は、例えばPLC(Programmable Logic Controller)として実現され、自動系機側盤PLC41および手動系機側盤PLC42を備える。また、ゲート設備5は、駆動装置51および開度計52等を備える。
【0014】
放流操作装置1は、例えば、二重化されており、産業用コンピュータ(Factory Automation PC:FA-PC)により実現される。放流操作装置1は、ダム貯水位等のダム管理に必要な情報の収集・表示を行うことができる。また、放流操作装置1は、操作員またはダム管理者の操作に応じて、起動指令、ゲートの開放指令、閉鎖指令、あるいは目標開度などの操作指令を、制御系LAN6を介して入出力装置2に出力する。例えば、ゲート設備5が自動制御されている場合、操作員からの目標開度の入力を受けると、目標開度を含む操作指令を入出力装置2に出力する。
【0015】
入出力装置2は、機側盤4の自動系機側盤PLC41と放流操作装置1との間を中継する。例えば、入出力装置2は、放流操作装置1から受信した操作指令を、機側盤4に送信する。また、入出力装置2は、機側盤4から受信した通知を放流操作装置1に送信する。
【0016】
遠方手動操作装置3は、機側盤4の手動系機側盤PLC42と放流操作装置1との間を中継する。また、ゲート設備5を手動制御する場合、操作員が遠方手動操作装置3の操作部から開/閉/停止操作を行い、遠方手動操作装置3は、これらの操作に従って手動系機側盤PLC42に開/閉/停止指令を出力する。
【0017】
自動系機側盤PLC41は、ゲート設備劣化診断装置として動作する。自動系機側盤PLC41は、入出力装置2から受信した操作指令に基づいて、ゲート設備5の駆動装置51への駆動指令を出力する。また、自動系機側盤PLC41は、開度計52からゲート設備5の開度について情報を受信する。
【0018】
手動系機側盤PLC42は、遠方手動操作装置3から受信した開/閉/停止指令に基づいて、駆動装置51への駆動指令を出力する。また、手動系機側盤PLC42は、開度計52からゲート設備5の開度について情報を受信する。
【0019】
ゲート設備5は、ダムに設置されるゲートおよびゲートに関連する設備であり、ダム貯留水の取水、放流、流量調節等を目的に設置される。
【0020】
駆動装置51は、機側盤4からの駆動指令に基づいて、ゲートを開ける、閉じる、または停止するための装置である。
【0021】
開度計52は、断続的または定期的にゲート開度を測定するための装置であり、測定された開度を機側盤4に出力する。
【0022】
図2は、放流操作装置1の機能ブロックの一例を示す図である。
図2に示すように、放流操作装置1は、制御部11、プログラム記憶部12、データ記憶部13、通信インタフェース14、および入出力インタフェース15を備えるコンピュータである。制御部11、プログラム記憶部12、データ記憶部13、通信インタフェース14、および入出力インタフェース15は、バスを介して互いに通信可能に接続されている。さらに通信インタフェース14は、制御系LAN6および情報系LAN7を介して他の装置と通信可能に接続される。また、入出力インタフェース15は、入力装置16および出力装置17と通信可能に接続される。
【0023】
制御部11は、放流操作装置1を制御する。制御部11は、中央処理ユニット(CPU:Central Processing Unit)等のハードウェアプロセッサを備える。例えば、制御部11は、様々なプログラムを実行することが可能な集積回路であっても良い。
【0024】
プログラム記憶部12は、記憶媒体として、例えば、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等の随時書込みおよび読出しが可能な不揮発性メモリと、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリとを組み合わせて使用することができる。プログラム記憶部12は、各種処理を実行するために必要なプログラムを格納している。すなわち、制御部11は、プログラム記憶部12に格納されたプログラムを読み出して実行することにより各種制御および動作を実現し得る。
【0025】
データ記憶部13は、記憶媒体として、例えば、HDD、メモリカード等の随時書込みおよび読出しが可能な不揮発性メモリと、RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリとを組み合わせて使用したストレージである。データ記憶部13は、制御部11がプログラムを実行して各種処理を行う過程で取得および生成されたデータを記憶するために用いられる。
【0026】
通信インタフェース14は、1つ以上の有線または無線の通信モジュールを含む。例えば、通信インタフェース14は、制御系LAN6および情報系LAN7を介して外部の装置と有線または無線接続する通信モジュールを含む。例えば、通信インタフェース14は、入出力装置2等の外部の装置と有線接続する有線通信モジュールを含んでも良い。すなわち、通信インタフェース14は、制御部11の制御の下、外部の装置との間で通信を行い、各種情報を送受信することができるものであれば一般的な通信インタフェースで良い。
【0027】
入出力インタフェース15は、入力装置16および出力装置17等と接続される。入出力インタフェース15は、入力装置16および出力装置17との間で情報の送受信を可能にするインタフェースである。入出力インタフェース15は、通信インタフェース14と一体であってもよい。例えば、放流操作装置1と、入力装置16または出力装置17の少なくとも1つとは、近距離無線技術等を使用して無線接続されており、当該近距離無線技術を用いて各種情報の送受信を実行してもよい。
【0028】
入力装置16は、例えば、操作員またはダム管理者が放流操作装置1に対して各種指示を入力するためのキーボードやポインティングデバイス等を含む。また、入力装置16は、プログラム記憶部12またはデータ記憶部13に格納するべきデータを、USBメモリ等のメモリ媒体から読み出すためのリーダや、そのようなデータをディスク媒体から読み出すためのディスク装置を含んでも良い。
【0029】
出力装置17は、放流操作装置1から操作員またはダム管理者に提示するべき出力データを表示するディスプレイや、それを印刷するプリンタ等を含む。
【0030】
図3は、自動系機側盤PLC41の機能ブロックの一例を示す図である。
図3に示すように、自動系機側盤PLC41は、制御部411、プログラム記憶部412、データ記憶部413、通信インタフェース414、および入出力インタフェース415を備えるコンピュータである。制御部411、プログラム記憶部412、データ記憶部413、通信インタフェース414、および入出力インタフェース415は、バスを介して互いに通信可能に接続されている。さらに通信インタフェース414は、制御系LAN6および情報系LAN7を介して他の装置と通信可能に接続される。また、入出力インタフェース415は、入力装置416および出力装置417と通信可能に接続される。
【0031】
制御部411は、自動系機側盤PLC41を制御する。制御部411は、中央処理ユニット(CPU:Central Processing Unit)等のハードウェアプロセッサを備える。例えば、制御部411は、様々なプログラムを実行することが可能な集積回路であっても良い。
【0032】
プログラム記憶部412は、記憶媒体として、例えば、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等の随時書込みおよび読出しが可能な不揮発性メモリと、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリとを組み合わせて使用することができる。プログラム記憶部412は、各種処理を実行するために必要なプログラムを格納している。すなわち、制御部411は、プログラム記憶部412に格納されたプログラムを読み出して実行することにより各種制御および動作を実現し得る。
【0033】
データ記憶部413は、記憶媒体として、例えば、HDD、メモリカード等の随時書込みおよび読出しが可能な不揮発性メモリと、RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリとを組み合わせて使用したストレージである。データ記憶部413は、制御部411がプログラムを実行して各種処理を行う過程で取得および生成されたデータを記憶するために用いられる。
【0034】
通信インタフェース414は、1つ以上の有線または無線の通信モジュールを含む。例えば、通信インタフェース414は、制御系LAN6および情報系LAN7を介して外部の装置と有線または無線接続する通信モジュールを含む。例えば、通信インタフェース414は、入出力装置2等の外部の装置と有線接続する有線通信モジュールを含んでも良い。すなわち、通信インタフェース414は、制御部411の制御の下、外部の装置との間で通信を行い、各種情報を送受信することができるものであれば一般的な通信インタフェースで良い。
【0035】
入出力インタフェース415は、入力装置416および出力装置417等と接続される。入出力インタフェース415は、入力装置416および出力装置417との間で情報の送受信を可能にするインタフェースである。入出力インタフェース415は、通信インタフェース414と一体であってもよい。例えば、自動系機側盤PLC41と、入力装置416または出力装置417の少なくとも1つとは、近距離無線技術等を使用して無線接続されており、当該近距離無線技術を用いて各種情報の送受信を実行してもよい。
【0036】
入力装置416は、例えば、操作員またはダム管理者が自動系機側盤PLC41に対して各種指示を入力するためのキーボードやポインティングデバイス等を含む。また、入力装置416は、プログラム記憶部412またはデータ記憶部413に格納するべきデータを、USBメモリ等のメモリ媒体から読み出すためのリーダや、そのようなデータをディスク媒体から読み出すためのディスク装置を含んでも良い。
【0037】
出力装置417は、自動系機側盤PLC41から操作員またはダム管理者に提示するべき出力データを表示するディスプレイや、それを印刷するプリンタ等を含む。
【0038】
また、データ記憶部413は、制御データ記憶部4131を備える。制御データ記憶部4131は、後述する制御部411でゲート設備5を制御した際の制御履歴データを記憶するために用いられる。制御履歴データは、例えば、何回目の制御であるか、操作指令を受信して制御を開始した日時、制御前の開度D、目標開度D、見込過動作量D、制御後の開度D、および過動作量D等を含む。ここで、見込過動作量Dは、ゲートの過去の開閉動作に基づいて生成された量であり、駆動装置51が停止指令を受信してからゲートがどれだけ動くかを見込んだ量である。
【0039】
さらに、制御部411は、動作方向判定部4111、指令制御部4112、開度判定部4113、過動作量算出部4114、ゲート劣化判定部4115、見込過動作量更新部4116、通知制御部4117をさらに備える。
【0040】
動作方向判定部4111は、放流操作装置1から、目標開度Dを含む操作指令を受信する受信部としても機能する。動作方向判定部4111は、開度計52から現在の開度、すなわち、制御前の開度Dを取得する。そして、動作方向判定部4111は、ゲートの制御前の開度Dと目標開度Dとを比較して、ゲートの動作方向が開方向である、または閉方向であるかを判定する。そして、動作方向判定部4111は、判定結果を指令制御部4112に出力する。さらに、動作方向判定部4111は、操作指令を受信したことを示す信号を開度判定部4113に出力してよい。また、動作方向判定部4111は、ゲート設備5の制御が何度目であるか、操作指令を受信した日時、制御前の開度D、目標開度Dを制御データ記憶部4131に記憶させてよい。
【0041】
指令制御部4112は、ゲートの動作方向が開方向という判定結果である、すなわちゲートを上昇させる必要がある場合、開指令(駆動指令)を生成し、生成した開指令を駆動装置51に出力する。一方、ゲートの動作方向が閉方向という判定結果である、すなわちゲートを下降させる必要がある場合、指令制御部4112は、閉指令(駆動指令)を生成し、生成した閉指令を駆動装置51に出力する。また、指令制御部4112は、後述する開度判定部4113から停止信号を受信するまで、所定の間隔で駆動装置51に開指令または閉指令を出力してよい。当該信号を受信した指令制御部4112は、駆動装置51に停止指令を出力する。
【0042】
開度判定部4113は、開度計52からゲートの現在の開度Dを受信する。例えば、指令制御部4112が開指令または閉指令を駆動装置51に出力した後、開度判定部4113は、所定の周期でゲートの現在の開度Dが目標開度Dから見込過動作量Dだけ手前まで到達したかどうかを判定する。ここで、開度判定部4113は、見込過動作量Dを制御データ記憶部4131から取得してよい。また、目標開度Dから見込過動作量Dだけ手前に到達した場合、開度判定部4113は、目標開度Dに到達し、ゲートを停止する必要があることを示す停止信号を指令制御部4112に出力する。
【0043】
過動作量算出部4114は、停止指令が駆動装置51に出力されてゲートの駆動が停止した後、開度計52から現在のゲートの開度D、すなわち制御後のゲートの開度Dを取得する。そして、過動作量算出部4114は、制御後のゲートの開度D、目標開度D、および見込過動作量Dに基づいて、今回の制御における過動作量Dを算出する。そして、過動作量算出部4114は、算出した過動作量Dをゲート劣化判定部4115に出力する。また、過動作量算出部4114は、ゲートの制御後の開度Dおよび過動作量Dを制御データ記憶部4131に記憶させてよい。
【0044】
ゲート劣化判定部4115は、算出された過動作量Dと閾値Dを比較し、ゲート設備5が劣化しているかどうかを判定する。比較の結果、ゲート設備5が劣化していると判定した場合、判定結果を通知制御部4117に出力する。一方、比較の結果、ゲート設備5が劣化していないと判定した場合、判定結果を見込過動作量更新部4116に出力する。
【0045】
見込過動作量更新部4116は、過動作量Dを見込過動作量Dとして更新する。見込過動作量更新部4116は、更新した見込過動作量Dを制御データ記憶部4131に記憶させる。
【0046】
通知制御部4117は、ゲート設備5が劣化しているという判定結果を受信した際、入出力装置2を通じて、放流操作装置1にゲート劣化通知を送信する。放流操作装置1は、ゲート劣化通知の受信に応じて、出力装置17にゲート設備の修理または点検を行うように表示させる情報を出力することになる。
【0047】
(動作)
図4は、第1の実施形態の自動系機側盤PLC41のゲート設備劣化診断処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0048】
自動系機側盤PLC41の制御部411がプログラム記憶部412に格納されたプログラムを読み出して実行することにより、このフローチャートの動作が実現される。
【0049】
このフローチャートは、操作員またはダム管理者が放流操作装置1に対して目標開度Dを入力する、または放流操作装置1が自動的に目標開度Dを設定し、そして、放流操作装置1が、入出力装置2を通じて、当該目標開度Dを含む操作指令を自動系機側盤PLC41に送信することにより開始する。
【0050】
ステップST101で、動作方向判定部4111は、ゲートの動作方向を判定する。動作方向判定部4111は、通信インタフェース414を通じて、操作指令を受信する。さらに、動作方向判定部4111は、開度計52からゲートの現在の開度D、すなわち制御前の開度Dを取得する。そして、動作方向判定部4111は、制御前の開度Dと目標開度Dとを比較して、ゲートの動作方向を判定する。
【0051】
例えば、制御前の開度D<目標開度Dである場合、動作方向判定部4111は、ゲートを開ける、すなわち開方向の制御が必要であると判定する。そして、処理は、ステップST102に進む。
【0052】
一方、例えば、制御前の開度D>目標開度Dである場合、動作方向判定部4111は、ゲートを閉じる、すなわち閉方向の制御が必要であると判定する。そして、処理は、ステップST105に進む。
【0053】
また、動作方向判定部4111は、操作指令を受信したことを示す信号を開度判定部4113に出力する。さらに、動作方向判定部4111は、ゲート設備5の制御が何度目であるか、操作指令を受信した日時、制御前の開度D、目標開度Dを制御データ記憶部4131に記憶させる。
【0054】
ステップST102で、指令制御部4112は、開指令を駆動装置51に出力する。データに対して開方向の制御が必要であると判定した動作方向判定部4111は、指令制御部4112にゲートを開ける、すなわちゲートを上昇させる必要があることを示す判定結果を出力する。判定結果を受信した指令制御部4112は、駆動装置51がゲートを開けるための開指令を駆動装置51に出力する。
【0055】
ステップST103で、開度判定部4113は、現在の開度D≧目標開度D-見込過動作量Dであるかを判定する。動作方向判定部4111から信号を受信した開度判定部4113は、開度計52からゲートの現在の開度Dを受信する。さらに、開度判定部4113は、制御データ記憶部4131に記憶された目標開度Dを取得する。そして、開度判定部4113は、現在の開度D≧目標開度D-見込過動作量Dであるかを判定する。すなわち、開度判定部4113は、開度Dが目標開度Dから見込過動作量Dだけ手前になったかを判定する。
【0056】
現在の開度Dが目標開度D-見込過動作量D以上になった場合、開度判定部4113は、ゲートの開動作を停止するための停止信号を指令制御部4112に出力する。そして、処理は、ステップST108に進む。
【0057】
一方、現在の開度Dが目標開度D-見込過動作量D未満である場合、処理は、ステップST104に進む。
【0058】
ステップST104で、指令制御部4112は、所定の時間Tだけ待機する。開度判定部4113から停止信号を受信しない場合、指令制御部4112は、所定の時間Tだけ待機する。ここで、Tは、例えば200msであるが、任意の時間であって良い。そして、処理は、ステップST102に戻る。ステップST102で、指令制御部4112は、開指令を駆動装置51に再度出力することになる。
【0059】
ステップST105で、指令制御部4112は、閉指令を駆動装置51に出力する。ステップST101で、ゲートに対して閉方向の制御が必要であると判定した動作方向判定部4111は、指令制御部4112にゲートを閉める、すなわちゲートを下降させる必要があることを示す判定結果を出力する。判定結果を受信した指令制御部4112は、駆動装置51がゲートを閉めるための閉指令を駆動装置51に出力する。
【0060】
ステップST106で、開度判定部4113は、現在の開度D≦目標開度D+見込過動作量Dであるかを判定する。開度判定部4113は、開度計52からゲートの現在の開度Dを受信する。さらに、開度判定部4113は、制御データ記憶部4131に記憶された目標開度Dを取得する。
【0061】
そして、開度判定部4113は、現在の開度D≦目標開度D+見込過動作量Dであるかを判定する。すなわち、開度判定部4113は、開度Dが目標開度Dから見込過動作量Dだけ手前になったかを判定する。
【0062】
現在の開度Dが目標開度D-見込過動作量D以下になった場合、開度判定部4113は、ゲートの閉動作を停止するための停止信号を指令制御部4112に出力する。そして、処理は、ステップST108に進む。
【0063】
一方、現在の開度Dが目標開度D-見込過動作量Dを超える場合、処理は、ステップST107に進む。
【0064】
ステップST107で、指令制御部4112は、所定の時間Tだけ待機する。開度判定部4113から停止信号を受信しない場合、指令制御部4112は、所定の時間Tだけ待機する。ここで、Tは、例えば200msであるが、任意の時間であって良い。そして、処理は、ステップST105に戻る。ステップST105で、指令制御部4112は、閉指令を駆動装置51に再度出力することになる。
【0065】
ステップST108で、指令制御部4112は、停止指令を駆動装置51に出力する。開度判定部4113から停止信号を受信した指令制御部4112は、駆動装置51に停止指令を出力する。
【0066】
ステップST109で、指令制御部4112は、ゲートが停止するまで待機する。例えば、指令制御部4112は、開度計52からゲートの現在の開度Dを継続的または定期的に受信し、ゲートが完全に停止した、すなわち駆動停止したかを確認してもよい。そして、駆動が完全に停止したことを確認し後、指令制御部4112は、過動作量算出部4114に駆動が停止したことを示す信号を出力してよい。
【0067】
ステップST110で、過動作量算出部4114は、過動作量Dを算出する。過動作量算出部4114は、開度計52から現在のゲートの開度D、すなわち制御後のゲートの開度Dを取得し、制御後のゲートの開度D(すなわち、現在のゲートの開度D)、目標開度D、および見込過動作量Dに基づいて過動作量Dを算出する。
【0068】
例えば、指令制御部4112が開指令を駆動装置51に出力していた場合、過動作量算出部4114は、過動作量D=制御後のゲートの開度D-目標開度D+見込過動作量Dとして算出する。
【0069】
逆に、指令制御部4112が閉指令を駆動装置51に出力していた場合、過動作量算出部4114は、過動作量D=目標開度D+見込過動作量D-制御後のゲートの開度D(すなわち、現在のゲートの開度D)として算出する。過動作量算出部4114は、算出した過動作量Dをゲート劣化判定部4115に出力する。
【0070】
さらに、過動作量算出部4114は、ゲートの制御後の開度Dおよび過動作量Dを制御データ記憶部4131に記憶させてよい。
【0071】
ステップST111で、ゲート劣化判定部4115は、過動作量Dと閾値Dを比較してゲートが劣化しているかどうかを判定する。ゲート劣化判定部4115は、制御データ記憶部4131に記憶された閾値Dを取得し、受信した過動作量Dと比較する。
【0072】
例えば、過動作量Dが閾値D以上であるかどうかを判定する。過動作量Dが閾値Dより小さいと判定した場合、処理は、ステップST112に進む。
【0073】
一方、過動作量Dが閾値D以上であると判定した場合、処理は、ステップST113に進む。
【0074】
ここで、ステップST111では、ゲート劣化判定部4115は、過動作量Dが閾値D以上であるかどうかに応じて、劣化しているかどうかを判定する例を説明しているが、これに限られない。
【0075】
例えば、ゲート劣化判定部4115は、所定の期間に過動作量Dが閾値Dを越えたり超えなかったりを繰り返す場合にゲート設備5が劣化していると判定しても良い。例えば、ゲート劣化判定部4115は、所定の期間の間に所定の回数だけ過動作量Dが閾値D以上となる場合にゲート設備5が劣化していると判定しても良い。あるいは、ゲート劣化判定部4115は、過動作量Dのばらつき、例えば、分散または標準偏差等が所定の閾値以上となる場合にゲート設備5が劣化していると判定しても良い。
【0076】
ステップST112で、見込過動作量更新部4116は、見込過動作量Dを過動作量Dに更新する。ステップST111で過動作量Dが閾値Dより小さいと判定した場合、ゲート劣化判定部4115は、ゲート設備5が劣化していないと判定する。そして、ゲート劣化判定部4115は、過動作量Dを見込過動作量更新部4116に出力する。
【0077】
見込過動作量更新部4116は、制御データ記憶部4131に記憶された見込過動作量Dを取得し、見込過動作量Dを過動作量Dの値に更新し、更新された見込過動作量Dを制御データ記憶部4131に記憶させる。ここで、見込過動作量Dは、次回のゲートの制御の際に使用するように記憶されてよい。
【0078】
ステップST113で、通知制御部4117は、ゲート劣化を放流操作装置1に通知する。ステップST111で過動作量Dが閾値D以上であると判定した場合、ゲート劣化判定部4115は、ゲート設備5が劣化していると判定する。
【0079】
そして、ゲート劣化判定部4115は、通知制御部4117にゲート設備5が劣化していることを示す情報を出力する。通知制御部4117は、制御データ記憶部4131に記憶された制御履歴データを取得する。
【0080】
そして、通知制御部4117は、通信インタフェース414および入出力装置2を通じて、制御履歴データを含むゲート劣化情報を放流操作装置1に通知する。また、通知は、制御履歴データそのものを含むのではなく、制御履歴データにアクセスするためのリンクを含んでもよい。
【0081】
図5は、制御データ記憶部4131に記憶された制御履歴データの一例を示す図である。
図5に示すように、制御履歴データは、操作指令を受信した回数、および制御指示を受信し、制御した日時、制御前の開度D、目標開度D、制御時の見込過動作量D、制御後の開度D、過動作量D等を含む。例えば、1回目の操作指令を受信した日時は、2022年2月14の12時である。そして、指示を受信した際ゲートは、完全に閉じており、目標開度Dが10cmであり、制御時の見込過動作量Dが0cmである。
【0082】
そして、図4のフローチャートを参照して説明したゲート設備劣化診断処理を実行した結果、ゲートの開度Dが11cmとなり、過動作量Dが+1cmでとなる、すなわち、次回の見込過動作量Dが1cmとなることを示している。
【0083】
また、図5では、目標開度Dが徐々に増えていく、すなわち、指令制御部4112が開指令を駆動装置51に出力する例を示している。
【0084】
例えば、閾値Dが3cmであるとする場合、1~8回目の制御指示までの過動作量Dは、閾値未満となるため、図4で説明したように、見込過動作量更新部4116が見込過動作量Dを更新することになる。一方、9回目の制御指示の後の過動作量Dが閾値Dと同じになるため、通知制御部4117が放流操作装置1にゲート設備5が劣化したことを通知することになる。
【0085】
図6は、放流操作装置1の出力装置17にゲート設備5が劣化したことを通知する一例を示す。また、図6の例でも閾値Dは、3cmであるとする。
図6に示すように、201で、操作員が目標開度D等を放流操作装置1の入力装置16に入力する。
【0086】
202で、放流操作装置1の制御部11は、通信インタフェース14および入出力装置2を通じて、目標開度D等を含む操作指令を自動系機側盤PLC41に送信する。
【0087】
203および204で、図4のフローチャートで説明したゲート設備劣化診断処理を実行する。その結果、ゲート設備5が劣化していると判定されるとする。
【0088】
205で、通知制御部4117は、通信インタフェース414および入出力装置2を通じて、ゲート設備5が劣化していることを示す通知を放流操作装置1に送信する。
【0089】
206で、当該通知を受信した制御部11は、ディスプレイである出力装置17に「ゲートの過動作量が3cmになりました。ゲート設備の劣化が考えられますので、修理・点検を実施して下さい」というメッセージを表示させる。また、制御部11は、ディスプレイに、通知に含まれる制御履歴データを表示させる、または制御履歴データ表示させるためのリンクを表示させてもよい。
【0090】
(実施形態の作用効果)
以上説明した実施形態によれば、ゲートの開閉制御を高い精度で実行し、且つ、ゲートの過動作量の変化に基づいてゲート設備5の経年劣化または故障を診断し、ダム管理者に警告することが可能となる。
【0091】
[他の実施形態]
なお、この発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、ゲート劣化判定部4115は、上で説明したゲート設備劣化判定方法に限られず、任意の方法でゲート設備5の劣化を判定して良い。
【0092】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0093】
1…放流操作装置
11…制御部
12…プログラム記憶部
13…データ記憶部
14…通信インタフェース
15…入出力インタフェース
16…入力装置
17…出力装置
2…入出力装置
3…遠方手動操作装置
4…機側盤
41…自動系機側盤PLC
411…制御部
4111…動作方向判定部
4112…指令制御部
4113…開度判定部
4114…過動作量算出部
4115…ゲート劣化判定部
4116…見込過動作量更新部
4117…通知制御部
412…プログラム記憶部
413…データ記憶部
4131…制御データ記憶部
414…通信インタフェース
415…入出力インタフェース
416…入力装置
417…出力装置
42…手動系機側盤PLC
5…ゲート設備
51…駆動装置
52…開度計
6…制御系LAN
7…情報系LAN
図1
図2
図3
図4
図5
図6