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  • 特開-掘削撹拌装置及び掘削撹拌方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167916
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】掘削撹拌装置及び掘削撹拌方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/12 20060101AFI20231116BHJP
【FI】
E02D3/12 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079460
(22)【出願日】2022-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】593010132
【氏名又は名称】株式会社テノックス九州
(74)【代理人】
【識別番号】100097179
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 一幸
(72)【発明者】
【氏名】碓井 博文
【テーマコード(参考)】
2D040
【Fターム(参考)】
2D040AB03
2D040CA01
2D040CB03
2D040GA01
2D040GA02
(57)【要約】
【課題】 地盤改良体の撹拌混合状況を、撹拌混合と並行してリアルタイムで正確に確認できる掘削撹拌装置を提供する。
【解決手段】 本装置は、所定濃度の水溶性蛍光染料を添加したセメントスラリーを地中に吐出する掘削撹拌装置であって、地中において鉛直軸を中心として回転する回転軸3と、回転軸3に軸着され土砂を掘削する掘削翼5と、地中において地盤改良体にブラックライトを照射する光源6と、光源6によりブラックライトを照射される地盤改良体を計測する計測器7とを備え、光源6と計測器7は、掘削翼5と一体的に昇降し、計測器7が出力するデータと所定閾値とを比較し、セメントスラリーの混合状態の可否を判定し、混合状態が可であるとき、掘削翼5を歩進させる制御部20を備える。
【選択図】 図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定濃度の水溶性蛍光染料を添加したセメントスラリーを地中に吐出する掘削撹拌装置であって、
地中において鉛直軸を中心として回転する回転軸と、
前記回転軸に軸着され土砂を掘削する掘削翼と、
地中において地盤改良体にブラックライトを照射する光源と、
前記光源によりブラックライトを照射される地盤改良体を計測する計測器とを備え、
前記光源と前記計測器は、前記掘削翼と一体的に昇降し、
前記計測器が出力するデータと所定閾値とを比較し、前記セメントスラリーの混合状態の可否を判定し、混合状態が可であるとき、前記掘削翼を歩進させる制御部を備えることを特徴とする掘削撹拌装置。
【請求項2】
前記計測器は、前記地盤改良体からの反射光を捉えるセンサである請求項1記載の掘削撹拌装置。
【請求項3】
前記計測器は、前記地盤改良体の画像を撮影するカメラである請求項1記載の掘削撹拌装置。
【請求項4】
前記ブラックライトの波長は、365乃至405ナノメートルである請求項1から4のいずれかに記載の掘削撹拌装置。
【請求項5】
請求項1に記載の掘削撹拌装置を用いる掘削撹拌方法であって、
セメントスラリーに所定濃度の水溶性蛍光染料を添加する第1工程と、
地中において前記掘削翼の深さにより定義される現位置において歩進して良いかどうかを示す歩進条件を満たすかどうか検討する第2工程と、
前記第2工程において、前記歩進条件が満たされる場合、前記掘削翼を歩進させ前記掘削翼を目的位置まで進める第3工程とを備え、
前記第2工程において、前記光源を点灯して前記地盤改良体を前記計測器により計測し、
前記計測器が出力するデータと所定閾値とを比較して、前記セメントスラリーの混合状態の可否を判定し、混合状態が可であるとき、前記歩進状態を満たすと判定することを特徴とする掘削撹拌方法。
【請求項6】
前記第2工程と前記第3工程とは、前記掘削翼の引き上げ時に行われる請求項5記載の掘削撹拌方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤中に地盤改良体を造成する際に地盤改良体の撹拌混合状況を、撹拌混合と並行してリアルタイムで正確に確認できる掘削撹拌装置及びその関連技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地盤改良工法として、地盤中にセメントスラリーを吐出して機械撹拌にて撹拌混合し、地盤中に地盤改良体を造成する深層混合処理工法などが知られている。地盤改良工法は、地盤を構成する土砂とセメントスラリーとを撹拌混合することで、地盤中に縦向き円柱状の地盤改良体を造成する。
【0003】
地盤改良工法では、地盤改良体の造成後に、改良材が正しく撹拌混合しているかどうか(特に、セメントスラリーの半径方向における分布状態)、造成した地盤改良体が設計通りの径になっているかどうかが問題となる。地盤改良体は、地中に存在するため、地上からその状態を確認するのは、容易ではない。
【0004】
通常は、造成した地盤改良体においてセメントスラリーが硬化した後、ボーリングマシンを使用して地上から地盤改良体のサンプルを採取するチェックボーリングで行い、地盤改良体の状態の確認が行われる。
【0005】
しかしながら、このようにすると、ボーリングマシンとともにその他多数の装置が必要になり、装置が大掛かりとなる。したがって、作業コストが高くなり、非常に手間がかかり、多大な時間を要する。
【0006】
このような状態に鑑み、特許文献1(特開2009-102892号公報)は、地盤中に地盤改良体を造成した後、改良材が硬化する前に、管ロッドに地盤中を撮影するカメラを取り付けたカメラ付きロッドを挿入し、カメラで撮影した地盤中の様子を地上のモニターに表示し、作業者がモニターを見て改良材があるか否かを目視で確認することで、地盤改良体を確認する方法を提案する。
【0007】
地中は暗く、モニターに表示される画像は、不鮮明となりやすく、作業者の判断が、正しく行えない場合が多い。
【0008】
一方、特許文献2(特許第6944605号公報)は、(1)改良前の地盤に改良前に撮影した映像と改良後に撮影した画像明度を比較する、もしくは、(2)過去に撮影した地盤の様子の既知の画像と比較することで、地盤改良体の状態を確認する方法を提案する。
【0009】
この方法によると、2つ以上の画像群を比較処理する必要があり、撮影後直ちに地盤改良体の状態を確認することができず、土の色(暗色)や照明の度合いにより、正確な判断が困難となりやすい。特に、(2)では、比較位置の違いにより、明るさや色味が変化しやすく、比較の精度が問題となる。
【0010】
更には、非特許文献1(日本建築センター「2018年版建築物のための改良地盤の設計及び品質管理指針」)には、撹拌状況検査においてフェノールフタレイン溶液を噴霧することでアルカリ反応(赤紫色)を観察する手法が記載されている。
【0011】
フェノールフタレインの変色は、pH>10.0のアルカリ性の条件からなり、セメントが入っている箇所において、フェノールフタレインが変色する点を原理として、セメントの混合状態を示すものである。
【0012】
しかしながら、地盤内において地盤改良体を構築する途中においてフェノールフタレインを噴霧し、観察することは、困難である。
【0013】
以上いずれの手法を用いても、地盤中に地盤改良体を造成する際に地盤改良体の撹拌混合状況を、撹拌混合と並行してリアルタイムで正確に確認することは困難である。
【特許文献1】特開2009-102892号公報
【特許文献2】特許第6944605号公報
【非特許文献1】日本建築センター「2018年版建築物のための改良地盤の設計及び品質管理指針」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで本発明は、地盤改良体の撹拌混合状況を、撹拌混合と並行してリアルタイムで正確に確認できる、掘削撹拌装置及び掘削撹拌方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
第1の発明に係る掘削撹拌装置は、所定濃度の水溶性蛍光染料を添加したセメントスラリーを地中に吐出する掘削撹拌装置であって、地中において鉛直軸を中心として回転する回転軸と、回転軸に軸着され土砂を掘削する掘削翼と、地中において地盤改良体にブラックライトを照射する光源と、光源によりブラックライトを照射される地盤改良体を計測する計測器とを備え、光源と計測器は、掘削翼と一体的に昇降し、計測器が出力するデータと所定閾値とを比較し、セメントスラリーの混合状態の可否を判定し、混合状態が可であるとき、掘削翼を歩進させる制御部を備える。
【0016】
ここで、以上の構成によれば、地盤改良体が未硬化の状態にある内に、計測器が計測するブラックライトの反射光に基づいて、混合状態の良否を決定できる。この際、ボーリングマシン等の大掛かりな装置を追加する必要はない。また、地中であっても、ブラックライトが照射された水溶性蛍光染料は円滑に発光し、状態を正しく認識できる。更には、複雑な処理や、外乱要素により、結果が不安定になることもない。
【0017】
ここで、計測器は、地盤改良体からの反射光を捉えるセンサであっても良いし、地盤改良体の画像を撮影するカメラであっても良い。
【0018】
ブラックライトの波長は、365乃至405ナノメートルであることが好ましい。こうすれば、光源を容易に確保できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、掘削撹拌が行われる地中において、未硬化の地盤改良体の撹拌混合状況を、掘削撹拌と並行してリアルタイムで正確に確認しながら、地盤改良体を構築できる。よって、撮影状況の如何や、土の色、照明の度合い等による、悪影響を受けずに、地盤改良体の状況を掘削の現位置で実施でき、実用上の効果が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施の形態における地盤改良装置の側面図、図2(a)は、同掘削撹拌装置の概略ブロック図、図2(b)は、同掘削撹拌装置の一部拡大断面図、図3は、同掘削撹拌装置の平面図である。
【0021】
図1に示すように、この地盤改良装置は、地面G上を走行するベースマシン1と、ベースマシン1の前方に配置され、作動時には、垂直に起立するリーダ2と、リーダ2に昇降自在に指示される、モータなどのアクチュエータを備える駆動部10と、駆動部10により回転力を付与され、地中において鉛直軸を中心に水平回転する回転軸3と、回転軸3の下端部に取り付けられる撹拌ヘッド4とを備える。
【0022】
また、駆動部10を制御する制御部20は、ベースマシン1内に収納されている。
【0023】
図2(a)は、図1に示した地盤改良装置のうち、掘削撹拌装置に該当する部分を取り出して表記したものである。制御部20は、駆動部10へ制御信号S1を出力し、駆動部10の動作状態を制御する。また、制御部20は、駆動部10の動作を示す状態量(例えば、回転速度、駆動電流、回転への抵抗値等)を含む計測信号S2を入力し動作状態を把握する。
【0024】
回転軸3の先端部に取り付けられる撹拌ヘッド4には、次の要素が備えられる。まず、撹拌ヘッド4の下端部には、地中を掘削する爪5aを有し、土砂を掘削する掘削翼5が設けられ、この掘削翼5は、回転軸3に軸着される。また、図2(b)に拡大して示すように、掘削翼5の上面5bであって、回転軸3の中心から半径rだけ離れた位置(図3も参照。)には、掘削翼5の一部を穿設して、上方に開口する収容室5cが開設されている。
【0025】
収容室5cの内部には、それぞれ上向きに、光源6と計測器7とのペアが収納される。なお、収納室5cは、下向きに開口するように構成しても良い。光源6は、地中において地盤改良体にブラックライト(波長:365乃至405ナノメートル)を照射する蛍光灯、白熱電球、水銀灯、LEDのいずれのタイプでも良いが、LEDが小型で使用しやすい。計測器7は、光源6によりブラックライトが照射される地盤改良体を計測する、蛍光光度計などのセンサ又は撮像素子を備えるカメラのいずれであっても良い。なお、発光率については、図5図6を用いて後述する。
【0026】
更に、収容室5cの開口部には、透明又は半透明の保護カバー8が取り付けられることにより、収納室5cは封止され、光源6及び計測器7は、周囲の土砂やスラリーなどが付着しないように保護される。保護カバー8は、アクリル等の樹脂板又は強化ガラスの板により好適に構成できる。したがって、光源6と計測器7とは、掘削翼5と一体的に昇降する。
【0027】
図2(a)に示すように、撹拌ヘッド4には、掘削翼5の上方に、撹拌翼12や供回り防止翼11を設けるのが望ましいが、これらは必須ではなく、省略してもよい。ここで、撹拌ヘッド4が下降する際(引き下げ時)には、掘削翼5が先行し、その後に撹拌翼12や供回り防止翼11が続くことになる。逆に、撹拌ヘッド4が上昇する際(引き上げ時)には、撹拌翼12や供回り防止翼11が先行し、最後に掘削翼5が続くことになる。
【0028】
次に、図4を参照しながら、制御部20の詳細を説明する。図4は、本発明の一実施の形態における制御部のブロックである。まず、光源6、計測器7、駆動部10等については、既に述べたとおりである。
【0029】
制御部20のうち、記憶部24は、図7のフローチャートに沿った動作を実現するための制御プログラムや、一時的に記憶すべき各データを保存するためのメモリやハードディスク等のストレージからなる。
【0030】
制御部本体21は、プロセッサ等からなり、記憶部24に記憶された制御プログラムを実行し、周辺要素を制御する。
【0031】
モニタ23は、動作状態をユーザに表示するディスプレイである。
【0032】
状態量計測部25は、駆動部10から受信する計測信号S2に基づき、所定の状態量(深度、回転速度、回転角、駆動電流、回転への抵抗値等)を計測し、記憶部24に格納する。
【0033】
制御信号生成部27は、駆動部10に出力すべき制御信号S1を生成し、記憶部24に格納する。
【0034】
インターフェイス22は、制御部本体21に制御されて、制御信号S1、計測信号S2を駆動部10へ入出力し、また、光源6を点灯/消灯させ、計測器7から計測値(計測信号)を入力する。
【0035】
次に、発光率演算部26が演算する発光率について、図5及び図6を参照しながら、説明する。
【0036】
既に、図3を参照しながら、説明したように、光源6及び計測器7を収容する収容室5cは、回転軸3の中心から半径rだけ離れた位置にあり、その幅をtとすると、収納室5cの軌跡15は、図6(a)に示すようになる。図6(a)において、中心Oは、回転軸3の中心と一致する。
【0037】
ここで、発光率とは、光源6により照射されるブラックライトが当たる面積を100(%)として、光が反射する面積の割合(%)であり、計測器7の計測値に基づいて決定される。本形態において、発光率は、スラリーと土砂との混合度合いを表現する指標である。勿論、発光率が100(%)に近いほど、良好な混合度合いとなっていることが示される。
【0038】
収容室5cが一周する距離L(=2πr)に対して、計測器7が反射光を捉えた距離をlとすると、
発光率=(l/L)*100(%) (1)
【0039】
収容室5cが一周する角度(2πラジアン)に対して、計測器7が反射光を捉えた角度をθ(ラジアン)とすると、
発光率=(θ/2π)*100(%) (2)
【0040】
以上の式(1)、(2)のうち、いずれを使用しても良いし、更には、これらと等価な他の式を使用しても良い。
【0041】
いずれの式を使用するとしても、図6(a)の状態を直線に展開し、計測器7が反射光を捉えた状態にはハッチングを付し、計測器7が反射光を捉えなかった状態にはハッチングを付さないようにすると、発光率が100(%)であれば、図6(b)に示すように、全長にハッチングを付した状態となる。
【0042】
一方、発光率が50(%)であれば、図6(c)に示すような状態となる。ここでは、理解を容易にするために、ハッチングを付した状態とハッチングを付していない状態とが、それぞれ連続するように示してある。しかしながら、計測器7が反射光を捉えた状態と計測器7が反射光を捉えなかった状態とは、通常ランダムに入れ替わるものと考えられる。よって、このように、ハッチングを付した状態とハッチングを付していない状態とがランダムに発生する場合であっても、本願発明の保護範囲に属すると言う点が理解されねばならない。
【0043】
図5に示すように、針貫入による強度の変動係数(=標準偏差/平均値)を縦軸に取り、発光率(%)を横軸に取ると、発光率(%)が最大値(100(%))に近づくにつれ、変動係数が低下するという関係がある。
【0044】
本実施の形態では、発光率(%)の良否を決定する閾値として、TH=80(%)を採用する。言うまでもなく、この数値は、単なる例にすぎず、より高い閾値を用いる場合であっても、本願発明の保護範囲に属する点が理解されねばならない。
【0045】
因みに、発光率がこの閾値TH=80(%)と一致する場合を図6(c)と同じ要領で図示すると、図6(d)に示すようになる。ここでも上述したのと同様に、ハッチングを付した状態とハッチングを付していない状態とがランダムに発生する場合であっても、本願発明の保護範囲に属すると言う点が理解されねばならない。
【0046】
次に、図7及び図8を参照しながら、本実施の形態における掘削撹拌装置の動作や、同装置の運転管理方法について、説明する。
【0047】
まず、図7のステップ1に示すように、セメントスラリーを、通常通り用意する。セメントの種類の選択も通常通り行って差し支えなく、ここでは特段の制限はない。
【0048】
次に、図7のステップ2に示すように、スラリーに水溶性蛍光染料を添付する。この点は、常法とは異なる。水溶性蛍光染料としては、ユウロピウムを微量添加したフッ化ホウ素酸ストロンチウム(SrB4O7F:Eu2+、ピーク波長は368-371ナノメートル)、鉛を微量添加したケイ化バリウム(BaSi2O5:Pb+、ピーク波長は350-353ナノメートル)、フローレッセン、硫酸キニーネ等が、好適に使用できる。
【0049】
より具体的には、蛍光漏洩検査剤として市販されているもの(例えば、マークテック株式会社製、スーパーグロー蛍光漏洩検査剤DF-300(商標)等)を使用すれば足り、水に対する蛍光染料の濃度は、0.05~20(%)とすればよい。なお、セメントの種類によって、水溶性蛍光染料を変更する必要は、通常ない。
【0050】
次に、図7ステップ3及び図8(a)に示すように、掘削撹拌装置の撹拌ヘッド4を地面Gに近い、初期位置にセットし、駆動部10の作動を開始し、回転軸3を回転させる。こうして、初期深さH1まで掘削翼5を至らせる。
【0051】
次に、図7のステップ4及び図8(b)に示すように、初期深さH1から下方において、スラリーを掘削翼5の根元から吐出すると共に、撹拌ヘッド4による、掘削混合を行う。ここで、上述したように、通常と異なり、スラリーには、水溶性蛍光染料が添加されているから、構築される地盤改良体にも、同様に、水溶性蛍光染料が混合することとなる。
【0052】
この状態を、図7のステップ5及び図8(c)に示すように、目的深さH2(構築すべき地盤改良体の最低部)に至るまで、継続する。
【0053】
掘削翼5が目的深さH2まで至ったら、図7のステップ6及び図8(d)に示すように、回転軸3の昇降動作を、「引き下げ」から「引き上げ」に切り替える。
【0054】
そうして、現位置において、光源6を点灯させ、計測器7による計測を行う。回転軸3が一周した際、発光率演算部26が求めた発光率R(%)と、記憶部24に記憶されている閾値TH(本例では、80(%))とを、制御部本体21が比較する。この際、上述した式(1)、(2)のいずれを用いても良く、更には、これらと等価な式を用いても良い。
【0055】
図7のステップ8において、発光率Rが閾値THより下回れば、制御部本体21は、歩進条件が満たされないとして、掘削ヘッド4を引き上げず現位置を維持する。従来技術では、このようなチェックが働いておらず、混合が本来的には不十分な場合にも、漫然と掘削ヘッド4を歩進させていたと言うことができる。本発明によれば、混合が不十分な場合に、歩進を停止し混合を更に継続すること(この操作は合理的である)により、構築される地盤改良体の品質向上に資することができる。
【0056】
図7のステップ8において、発光率Rが閾値TH以上であれば、制御部本体21は、歩進条件が満たされるとして、掘削ヘッド4を引き上げ現位置を歩進させる。
【0057】
勿論、以上において、発光率Rが閾値TH以下であれば、制御部本体21は、歩進条件が満たされないとする場合や、発光率Rが閾値THを超えれば、制御部本体21は、歩進条件が満たされるとする場合など、当業者に周知な比較の置換を行っても、本願発明の保護範囲に属する点が理解されねばならない。
【0058】
このように引き上げ時において、掘削ヘッド4の現位置における混合が良好に行えているという事実を、現場そのものにおいて、発光率を用いて正確に確認しながら、地盤改良体を構築でき、本願発明の実用上の効果は、大なるものと言うことができる。加えて、発光率の計測、比較等により、引き上げ作業がいたずらに遅延することもない。一方、従来技術では、地盤改良の作業と同時並行的に、混合度合いの品質保証を行うことは、事実上不可能と言わざるを得ない。
【0059】
この状態を、図8(e)~図8(g)に示すように、初期深さH1まで継続し(図7のステップ9、10)、最終的には、図7のステップ11及び図8(h)に示すように、地上復帰動作を行う。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】本発明の一実施の形態における地盤改良装置の側面図
図2】(a)本発明の一実施の形態における掘削撹拌装置の概略ブロック図 (b)本発明の一実施の形態における掘削撹拌装置の一部拡大断面図
図3】本発明の一実施の形態における掘削撹拌装置の平面図
図4】本発明の一実施の形態における制御部のブロック図
図5】本発明の一実施の形態における発光率と変動係数の関係を示すグラフ
図6】(a)本発明の一実施の形態における光源及び計測器の軌道を示すグラフ (b)本発明の一実施の形態における発光率100%を示す展開図 (c)本発明の一実施の形態における発光率50%を示す展開図 (d)本発明の一実施の形態における発光率80%を示す展開図
図7】本発明の一実施の形態における地盤改良装置の運転管理動作を示すフローチャート
図8】(a)本発明の一実施の形態における掘削撹拌装置による工程説明図 (b)本発明の一実施の形態における掘削撹拌装置による工程説明図 (c)本発明の一実施の形態における掘削撹拌装置による工程説明図 (d)本発明の一実施の形態における掘削撹拌装置による工程説明図 (e)本発明の一実施の形態における掘削撹拌装置による工程説明図 (f)本発明の一実施の形態における掘削撹拌装置による工程説明図 (g)本発明の一実施の形態における掘削撹拌装置による工程説明図 (h)本発明の一実施の形態における掘削撹拌装置による工程説明図 (i)本発明の一実施の形態における掘削撹拌装置による工程説明図
【符号の説明】
【0061】
1 ベースマシン
2 リーダ
3 回転軸
4 撹拌ヘッド
5 掘削翼
5a 爪
5b 上面
5c 収容室
6 光源
7 計測器
8 保護カバー
10 駆動部
11 供回り防止翼
12 撹拌翼
15 軌道
20 制御部
21 制御部本体
22 インターフェイス
23 モニタ
24 記憶部
25 状態量計測部
26 発光率演算部
27 制御信号生成部
G 地面
S1 制御信号
S2 計測信号
t 幅
r 半径
θ 角
H1 初期深さ
H2 目的深さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8