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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167918
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】柱構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/24 20060101AFI20231116BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
E04B1/24 P
E04B1/58 503H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079467
(22)【出願日】2022-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】魚住 奈緒美
(72)【発明者】
【氏名】池内 邦江
(72)【発明者】
【氏名】佐分利 和宏
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA03
2E125AB16
2E125AG41
2E125AG49
2E125BB02
2E125CA05
(57)【要約】
【課題】高い軸力や大きい曲げモーメントが発生する柱の長さを中間部で調整することのできる柱構造を提供する。
【解決手段】上側柱材2と、下側柱材3と、上側柱材2と下側柱材3とを着脱自在に接合する中間部接合手段4とを備え、中間部接合手段4を、上側柱材2と下側柱材3とを突き合せた状態で上側柱材2と下側柱材3とを接合自在に構成すると共に、上側柱材及び下側柱材と同等以上の有効断面を有して柱延長寸法Lに対応する柱延長部5を上側柱材2と下側柱材3との間に介在させた状態で、上側柱材2と下側柱材3とを接合自在に構成する。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の建築後に長さを中間部で調整可能な柱構造であって、
上側柱材と、下側柱材と、前記上側柱材と前記下側柱材とを着脱自在に接合する中間部接合手段とを備え、
前記中間部接合手段は、前記上側柱材と前記下側柱材とを突き合せた状態で前記上側柱材と前記下側柱材とを接合自在に構成されていると共に、上側柱材及び下側柱材と同等以上の有効断面を有して柱延長寸法に対応する柱延長部を前記上側柱材と前記下側柱材との間に介在させた状態で、前記上側柱材と前記下側柱材とを接合自在に構成されている柱構造。
【請求項2】
前記中間部接合手段が、前記上側柱材の下端部に形成される上側フランジと、前記下側柱材の上端部に形成されて前記上側フランジとボルト接合可能な下側フランジとを備え、
前記柱延長部が、上端部に前記上側フランジにボルト接合可能な上側中間フランジを備え、且つ、下端部に前記下側フランジにボルト接合可能な下側中間フランジを備えた中間柱材にて構成されている請求項1に記載の柱構造。
【請求項3】
前記中間部接合手段が、初期接合プレートと延長接合プレートとを備え、
前記初期接合プレートは、前記上側柱材の外面にボルト接合される上側板部と前記下側柱材の外面にボルト接合される下側板部とを有し、
前記延長接合プレートは、前記上側板部と前記下側板部とに加えて前記上側板部と前記下側板部との間に前記柱延長部としての中間板部を有して、前記上側板部と前記下側板部との間隔が前記初期接合プレートよりも大きく構成されている請求項1に記載の柱構造。
【請求項4】
前記中間部接合手段が、前記上側柱材の外面に突設される上側エレクションピースと、前記下側柱材の外面に突設される下側エレクションピースと、初期接合プレートと、延長接合プレートとを備え、
前記柱延長部が、外面に中間エレクションピースを有する中間柱材にて構成され、
前記初期接合プレートは、前記上側エレクションピースにボルト接合される上側板部と前記下側エレクションピースにボルト接合される下側板部とを有し、
前記延長接合プレートは、前記上側板部と前記下側板部とに加えて前記上側板部と前記下側板部との間に前記中間エレクションピースとボルト接合可能な中間板部を有している請求項1に記載の柱構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の建築後に長さを中間部で調整可能な柱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、不同沈下に対する修正のために長さを中間部で調整可能な柱構造が示されている。この柱構造は、鋼管製の上側柱材(上側の柱母材42)、鋼管製の下側柱材(下側の柱母材41)、及び上側柱材と下側柱材との間に介在する鋼管製の中間体7や修正ピース13を備えている。そして、上下の柱材と中間体7は鋸刃状の端面どうしが嵌合するように構成されており、柱長さを延長させる場合は、上側柱材と下側柱材とを離間させた後、中間体7を回転させ、これによって中間体7と柱材との端面間に形成された周方向の隙間の一部に修正ピース13を設置し、その修正ピース13をプレート14を利用して上側柱材及び下側柱材に固定させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09-273171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上側柱材と下側柱材とを最も接近させた状態では、これらの柱材の間に中間体7が介在していると共にボルト接合が行われていないので、高い軸力や大きい曲げモーメントに対応することができなかった。
また、中間部を延長させた場合では、嵌合部に多くの隙間が生じると共に、修正ピースを固定するためのプレート14には柱の軸力や曲げモーメントを伝達するための十分な強度がなく、柱の軸力や曲げモーメントを伝達するための有効断面が小さくなるので、この場合も、高い軸力や大きい曲げモーメントに対応することができなかった。
よって、上記従来の技術では、高い軸力や大きい曲げモーメントが発生する柱に適用することができないという問題があった。
【0005】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、高い軸力や大きい曲げモーメントが発生する柱の長さを中間部で調整することのできる柱構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1特徴構成は、建物の建築後に長さを中間部で調整可能な柱構造であって、
上側柱材と、下側柱材と、前記上側柱材と前記下側柱材とを着脱自在に接合する中間部接合手段とを備え、
前記中間部接合手段は、前記上側柱材と前記下側柱材とを突き合せた状態で前記上側柱材と前記下側柱材とを接合自在に構成されていると共に、上側柱材及び下側柱材と同等以上の有効断面を有して柱延長寸法に対応する柱延長部を前記上側柱材と前記下側柱材との間に介在させた状態で、前記上側柱材と前記下側柱材とを接合自在に構成されている点にある。
【0007】
本構成によれば、上側柱材と下側柱材との間に柱延長部を介在させた状態で上側柱材と下側柱材とをボルト接合することで、柱延長部に応じた柱延長寸法だけ柱長さを延長させることができる。また、このように柱長さを延長する前では、突き合せた状態で上側柱材と下側柱材とを接合することができるため、高い軸力や大きい曲げモーメントに対応することができながら、柱長さを延長した後でも、上側柱材と下側柱材との間に介在している柱延長部が、上側柱材及び下側柱材と同等以上の有効断面を有しているため、高い軸力や大きい曲げモーメントに対応することができる。
よって、高い軸力や大きい曲げモーメントが発生する柱の長さを中間部で調整することのできる柱構造を提供することができる。
【0008】
本発明の第2特徴構成は、前記中間部接合手段が、前記上側柱材の下端部に形成される上側フランジと、前記下側柱材の上端部に形成されて前記上側フランジとボルト接合可能な下側フランジとを備え、
前記柱延長部が、上端部に前記上側フランジにボルト接合可能な上側中間フランジを備え、且つ、下端部に前記下側フランジにボルト接合可能な下側中間フランジを備えた中間柱材にて構成されている点にある。
【0009】
本構成によれば、上側柱材の上側フランジと下側柱材の下側フランジとを直接ボルト接合することで、突き合せた状態で上側柱材と下側柱材とをボルト接合することができる。また、上側柱材と下側柱材とを離間させてこれらの間に柱延長部としての中間柱材を追加設置した状態で、上側柱材の上側フランジと中間柱材の上側中間フランジとをボルト接合すると共に下側柱材の下側フランジと中間柱材の下側中間フランジとをボルト接合することで、柱延長部に応じた柱延長寸法だけ柱長さを延長させることができる。そして、このようにボルト接合する場合は、上側柱材と下側柱材との間に中間柱材が設置されているため、安定性が高い状態でボルト接合できる。
【0010】
本発明の第3特徴構成は、前記中間部接合手段が、初期接合プレートと延長接合プレートとを備え、
前記初期接合プレートは、前記上側柱材の外面にボルト接合される上側板部と前記下側柱材の外面にボルト接合される下側板部とを有し、
前記延長接合プレートは、前記上側板部と前記下側板部とに加えて前記上側板部と前記下側板部との間に前記柱延長部としての中間板部を有して、前記上側板部と前記下側板部との間隔が前記初期接合プレートよりも大きく構成されている点にある。
【0011】
本構成によれば、初期接合プレートの上側板部を上側柱材の外面にボルト接合し、初期接合プレートの下側板部を下側柱材の外面にボルト接合することで、突き合せた状態で上側柱材と下側柱材とをボルト接合することができる。また、上側柱材と下側柱材とを離間させた状態で、延長接合プレートの上側板部を上側柱材の外面にボルト接合し、延長接合プレートの下側板部を下側柱材の外面にボルト接合することで、中間板部に応じた柱延長寸法だけ柱長さを延長させることができる。そして、中間部接合手段は初期接合プレートと延長接合プレートとボルト等で構成できるため、中間部接合手段がシンプルな構成となり容易に製作できる。
【0012】
本発明の第4特徴構成は、前記中間部接合手段が、前記上側柱材の外面に突設される上側エレクションピースと、前記下側柱材の外面に突設される下側エレクションピースと、初期接合プレートと、延長接合プレートとを備え、
前記柱延長部が、外面に中間エレクションピースを有する中間柱材にて構成され、
前記初期接合プレートは、前記上側エレクションピースにボルト接合される上側板部と前記下側エレクションピースにボルト接合される下側板部とを有し、
前記延長接合プレートは、前記上側板部と前記下側板部とに加えて前記上側板部と前記下側板部との間に前記中間エレクションピースとボルト接合可能な中間板部を有している点にある。
【0013】
本構成によれば、初期接合プレートの上側板部を上側柱材の上側エレクションピースにボルト接合し、初期接合プレートの下側板部を下側柱材の下側エレクションピースにボルト接合することで、突き合せた状態で上側柱材と下側柱材とをボルト接合することができる。また、上側柱材と下側柱材とを離間させてこれらの間に柱延長部としての中間柱材を追加設置し、延長接合プレートの上側板部を上側柱材の上側エレクションピースにボルト接合し、延長接合プレートの下側板部を下側柱材の下側エレクションピースにボルト接合すると共に、延長接合プレートの中間板部を中間柱材の中間エレクションピースにボルト接合することで、中間柱材に応じた柱延長寸法だけ柱長さを延長させることができる。そして、このようにボルト接合する場合は、上側柱材と下側柱材との間に中間柱材が設置されているため、安定性が高い状態でボルト接合できる。更に、エレクションピースを利用して柱の長さ方向に直交する方向からボルト接合するため、ボルトに引張力が発生せず、ボルトのせん断耐力にて接合強度をより確実に確保することができる。また、施工時の安定性も優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態における上側柱材と下側柱材とを接近状態とした柱構造の図
図2】第1実施形態における上側柱材と下側柱材とを介在状態とした柱構造の図
図3】第2実施形態における上側柱材と下側柱材とを接近状態とした柱構造の図
図4】第2実施形態における上側柱材と下側柱材とを介在状態とした柱構造の図
図5】第3実施形態における上側柱材と下側柱材とを接近状態とした柱構造の図
図6】第3実施形態における上側柱材と下側柱材とを介在状態とした柱構造の図
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔第1実施形態〕
本発明に係る柱構造の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
図1及び図2に示す柱構造1は、建物の建築後に長さを中間部1Aで調整可能に構成されている。図1に示す柱構造1は、建物の建築後において中間部1Aの長さを調整する前の状態を示しており、図2に示す柱構造1は、建物の建築後において中間部1Aの長さを長くするように調整した後の状態を示している。
【0016】
図1及び図2に示すように、柱構造1は、上側柱材2と、下側柱材3と、上側柱材2と下側柱材3とを着脱自在にボルト接合する中間部接合手段4とを備えている。
中間部接合手段4は、図1に示すように、上側柱材2と下側柱材3とを突き合せた状態(以下、接近状態と称する場合がある)で上側柱材2と下側柱材3とを接合自在に構成されている。また、中間部接合手段4は、図2に示すように、柱延長寸法Lに対応する柱延長部5を上側柱材2と下側柱材3との間に介在させた状態(以下、介在状態と称する場合がある)で、上側柱材2と下側柱材3とを接合自在に構成されている。
【0017】
柱延長部5は、上側柱材2及び下側柱材3と同等以上の有効断面を有している。有効断面とは、柱の軸力や曲げモーメントを伝達するための部材の断面である。
【0018】
柱構造1は、中間部1Aにおいて上側柱材2と下側柱材3とに分割されており、建物の建築時は、図1に示すように、接近状態の上側柱材2と下側柱材3とを中間部接合手段4によってボルト接合されている。そして、建物の建築後に柱構造1の中間部1Aの長さの調整が必要になった場合には、図2に示すように、上側柱材2と下側柱材3との間に柱延長部5を介在させて介在状態とし、この介在状態の上側柱材2と下側柱材3とを中間部接合手段4によってボルト接合することで、柱構造1の中間部1Aの長さを長くするように調整可能となっている。
建物には柱構造1が複数備えられており、地盤沈下が生じた際に、夫々の箇所の沈下量に応じて夫々の柱構造1の中間部1Aの長さを長くすることで、建物全体として不同沈下に対応することが可能となっている。
【0019】
次に、第1実施形態の柱構造1の詳細構造について説明を加える。
上側柱材2及び下側柱材3は、角形鋼管によって構成されている。上側柱材2の下端にはフランジ材が溶接によって接合されていることで、上側柱材2の下端に上側フランジ8が形成されている。また、下側柱材3の上端にはフランジ材が溶接によって接合されていることで、下側柱材3の上端に下側フランジ9が形成されている。下側フランジ9は、上側フランジ8とボルト接合可能に構成されている。
【0020】
柱構造1の中間部接合手段4には、上側柱材2の下端部に形成される上側フランジ8と、下側柱材3の上端部に形成されて上側フランジ8とボルト接合可能な下側フランジ9とが備えられている。
上側柱材2と下側柱材3との間に介在させる柱延長部5は、中間柱材12にて構成されており、中間柱材12には、上端部に上側フランジ8にボルト接合可能な上側中間フランジ10が備えられ、下端部に下側フランジ9にボルト接合可能な下側中間フランジ11が備えられている。
【0021】
中間柱材12は、角形鋼管によって構成されている。また、中間柱材12の上端にはフランジ材が溶接によって接合されていることで、中間柱材12の上端に上側中間フランジ10が形成されている。また、中間柱材12の下端にフランジ材が溶接によって接合されていることで、中間柱材12の下端に下側中間フランジ11が形成されている。上側中間フランジ10は、上側フランジ8とボルト接合可能に構成されており、下側中間フランジ11は、下側フランジ9とボルト接合可能に構成されている。
中間柱材12は、柱構造1の中間部1Aを長くするように調整する際に、柱延長寸法Lに応じた長さのものが製造されて用意される。
【0022】
上側フランジ8、下側フランジ9、上側中間フランジ10、及び下側中間フランジ11の夫々には、ボルト18を挿通するための孔が形成されており、これら上側フランジ8、下側フランジ9、上側中間フランジ10、及び下側中間フランジ11の夫々は、フランジ継手とされている。また、本実施形態では、上側フランジ8、下側フランジ9、上側中間フランジ10、及び下側中間フランジ11の夫々に対してリブ19が備えられており、これら上側フランジ8、下側フランジ9、上側中間フランジ10、及び下側中間フランジ11の夫々は、リブ付きフランジ継手とされている。
【0023】
図1に示すように、上側柱材2と下側柱材3とが最も接近している接近状態では、上側柱材2の上側フランジ8と下側柱材3の下側フランジ9とがボルト接合されており、上側柱材2と下側柱材3とが中間部接合手段4によって直接にボルト接合されている。
また、図2に示すように、上側柱材2と下側柱材3との間に中間柱材12が介在している介在状態では、上側柱材2の上側フランジ8と中間柱材12の上側中間フランジ10とがボルト接合されると共に、下側柱材3の下側フランジ9と中間柱材12の下側中間フランジ11とがボルト接合されており、上側柱材2と下側柱材3との間に中間柱材12を介した状態で上側柱材2と下側柱材3とが中間部接合手段4によってボルト接合されている。
そして、介在状態では、上側柱材2と下側柱材3との間に中間柱材12が介在しているため、柱構造1の中間部1Aは、中間柱材12の長さである柱延長寸法Lだけ長くなっている。
【0024】
中間柱材12は、上側柱材2及び下側柱材3と同等以上の有効断面を有している。
本実施形態では、上側柱材2及び下側柱材3の有効断面を、最も断面積が小さい箇所の断面としており、上側柱材2及び下側柱材3の角形鋼管によって構成されている部分の断面としている。
また、中間柱材12の有効断面を、中間柱材12における最も断面積が小さい箇所の断面としており、中間柱材12の角形鋼管によって構成されている部分の断面としている。
上側柱材2及び下側柱材3の角形鋼管と中間柱材12の角形鋼管とは同じものが使用されており、中間柱材12の有効断面は、上側柱材2及び下側柱材3の有効断面と同じとなっている。
【0025】
柱構造1の中間部1Aの長さを調整して長くする場合は、次の手順で行われる。
図1に示すように、柱構造1の中間部1Aの長さを調整する前は、上側柱材2と下側柱材3とは最も接近した接近状態となっており、上側柱材2の上側フランジ8と下側柱材3の下側フランジ9とが直接にボルト接合されている。
この状態から、上側柱材2の上側フランジ8と下側柱材3の下側フランジ9とのボルト18による接合を外した後、上側柱材2に接合されている梁等をジャッキアップによって持ち上げることで上側柱材2を上方側に移動させて上側柱材2と下側柱材3とを柱延長寸法L以上離間させる。その後、上側柱材2と下側柱材3との間に中間柱材12を設置させた後、上側柱材2が中間柱材12に接触するまでジャッキダウンして降下させて上側柱材2と下側柱材3との間隔を柱延長寸法Lとする。
このように上側柱材2と下側柱材3との間に中間柱材12を介在させた介在状態で、図2に示すように、上側柱材2の上側フランジ8と中間柱材12の上側中間フランジ10とをボルト接合させ、下側柱材3の下側フランジ9と中間柱材12の下側中間フランジ11とをボルト接合させる。
【0026】
上述のように本実施形態の柱構造1は、図2に示すように、上側柱材2と下側柱材3とを離間させてこれらの間に柱延長部5としての中間柱材12を追加設置した状態で、上側柱材2の上側フランジ8と中間柱材12の上側中間フランジ10とをボルト接合すると共に下側柱材3の下側フランジ9と中間柱材12の下側中間フランジ11とをボルト接合することで、柱延長部5に応じた柱延長寸法Lだけ柱長さを延長させることができるようになっている。そして、このようにボルト接合する場合は、上側柱材2と下側柱材3との間に中間柱材12が設置されているため、安定性が高い状態でボルト接合できる。
【0027】
〔第2実施形態〕
次に、本発明に係る柱構造1の第2実施形態を図面に基づいて説明する。
第2実施形態の柱構造1について説明するにあたり、第1実施形態の柱構造1と異なる構成について主に説明し、同じ構成については説明を省略する。
【0028】
図3及び図4に示すように、柱構造1の中間部接合手段4は、初期接合プレート21(図3参照)と延長接合プレート22(図4参照)とを備えている。
初期接合プレート21は、上側柱材2の外面にボルト接合される上側板部23と下側柱材3の外面にボルト接合される下側板部24とを有している。
延長接合プレート22は、上側板部23と下側板部24とに加えて上側板部23と下側板部24との間に柱延長部5としての中間板部25を有して、上側板部23と下側板部24との間隔が初期接合プレート21よりも大きく構成されている。
【0029】
上側柱材2及び下側柱材3は、第1実施形態と同様に角形鋼管によって構成されているが、上側柱材2の下端部や下側柱材3の上端部にはフランジやリブは備えられていない。
初期接合プレート21及び延長接合プレート22の夫々は、鋼板等の板材によって構成されており、上側柱材2や下側柱材3の4つの外面の夫々に接合するために中間部接合手段4に4枚ずつ備えられている。
【0030】
初期接合プレート21の上側板部23や延長接合プレート22の上側板部23には、ボルト挿通用の孔が備えられており、これらの上側板部23は、同様にボルト挿通用の孔が備えられている上側柱材2の下端部にボルト接合可能に構成されている。
また、初期接合プレート21の下側板部24や延長接合プレート22の下側板部24には、ボルト挿通用の孔が備えられており、これらの下側板部24は、同様にボルト挿通用の孔が備えられている下側柱材3の上端部にボルト接合可能に構成されている。
なお、本実施形態のボルト接合では、ワンサイドボルトを好適に用いることができるが、例えば、上側柱材2や下側柱材3のボルト挿通用の孔の裏側に予め溶接等でナットを固定しておくことで、ワンサイドボルト以外の通常のボルトを用いることもできる。
【0031】
延長接合プレート22は、上側板部23と下側板部24との間に中間板部25を有しており、この中間板部25の長さは柱延長寸法Lに応じた長さとなっている。そのため、延長接合プレート22の上側板部23と下側板部24との間隔は、初期接合プレート21の上側板部23と下側板部24との間隔より、中間板部25を有する分(柱延長寸法L)だけ広くなっている。
【0032】
図3に示すように、上側柱材2と下側柱材3とが最も接近している接近状態では、上側柱材2の下端部の外面に初期接合プレート21の上側板部23がボルト接合されていると共に、下側柱材3の上端部の外面に初期接合プレート21の下側板部24がボルト接合されており、初期接合プレート21を介する状態で上側柱材2と下側柱材3とが中間部接合手段4によって接合されている。
また、図4に示すように、上側柱材2と下側柱材3との間に中間板部25が介在している介在状態では、上側柱材2の下端部の外面に延長接合プレート22の上側板部23がボルト接合されていると共に、下側柱材3の上端部の外面に延長接合プレート22の下側板部24がボルト接合されており、延長接合プレート22を介する状態で上側柱材2と下側柱材3とが中間部接合手段4によって接合されている。
そして、介在状態では、上側柱材2と下側柱材3との間に延長接合プレート22が有する中間板部25が介在しているため、柱構造1の中間部1Aは、接近状態と比べて中間板部25の長さである柱延長寸法Lだけ長くなっている。
【0033】
中間板部25は、上側柱材2及び下側柱材3と同等以上の有効断面を有している。
本実施形態では、中間部接合手段4には4枚の延長接合プレート22が備えられており、中間板部25の有効断面を、4枚の延長接合プレート22に備えられている4つの中間板部25の有効断面の合計としている。また、中間板部25は柱長さ方向において何れの箇所においても幅及び厚さが同じとなっている。
中間板部25の幅は、上側柱材2及び下側柱材3の辺の長さから丸みを帯びている角部を除いた寸法とされているため上側柱材2及び下側柱材3の辺の長さより短く、中間板部25は上側柱材2及び下側柱材3と同じ材質で構成されているが、中間板部25の厚みが上側柱材2及び下側柱材3より厚いため、中間柱材12の有効断面は、上側柱材2及び下側柱材3の有効断面と同じとなっている。
【0034】
柱構造1の中間部1Aの長さを調整して長くする場合は、次の手順で行われる。
図3に示すように、柱構造1の中間部1Aの長さを調整する前は、上側柱材2と下側柱材3とは最も接近した接近状態となっており、上側柱材2と下側柱材3とが初期接合プレート21を用いてボルト接合されている。
この状態から、初期接合プレート21の上側柱材2の外面及び下側柱材3の外面に対するボルト18による接合を外した後、上側柱材2に接合されている梁等をジャッキアップによって持ち上げることで上側柱材2を上方側に移動させて上側柱材2と下側柱材3とを柱延長寸法L離間させる。
このように上側柱材2と下側柱材3とを柱延長寸法L離間させた状態で、図4に示すように、上側柱材2の外面に延長接合プレート22の上側板部23をボルト接合させ、下側柱材3の外面に延長接合プレート22の下側板部24をボルト接合させることで、上側柱材2と下側柱材3との間に中間柱材12を介在させた介在状態とする。
【0035】
上述のように本実施形態の柱構造1は、図4に示すように、上側柱材2と下側柱材3とを離間させた状態で、延長接合プレート22の上側板部23を上側柱材2の外面にボルト接合し、延長接合プレート22の下側板部24を下側柱材3の外面にボルト接合することで、中間板部25に応じた柱延長寸法Lだけ柱長さを延長させることができるようになっている。そして、中間部接合手段4は初期接合プレート21と延長接合プレート22とボルト等で構成できるため、中間部接合手段4が簡素な構成となり容易に製作できる。
【0036】
〔第3実施形態〕
次に、本発明に係る柱構造1の第3実施形態を図面に基づいて説明する。
第3実施形態の柱構造1について説明するにあたり、第1実施形態の柱構造1と異なる構成について主に説明し、同じ構成については説明を省略する。
【0037】
図5及び図6に示すように、柱構造1の中間部接合手段4は、上側柱材2の外面に突設される上側エレクションピース28と、下側柱材3の外面に突設される下側エレクションピース29と、初期接合プレート21と、延長接合プレート22とを備えている。
柱延長部5は、外面に中間エレクションピース30を有する中間柱材12にて構成されている。
初期接合プレート21は、上側エレクションピース28にボルト接合される上側板部23と下側エレクションピース29にボルト接合される下側板部24とを有している。
延長接合プレート22は、上側板部23と下側板部24とに加えて上側板部23と下側板部24との間に中間エレクションピース30とボルト接合可能な中間板部25を有している。
【0038】
上側エレクションピース28は、縦姿勢で且つ柱長さ方向に沿う姿勢で上側柱材2の外面に溶接によって接合されており、上側柱材2の4つの外面の夫々に備えられている。下側エレクションピース29は、縦姿勢で且つ柱長さ方向に沿う姿勢で下側柱材3の外面に溶接によって接合されており、下側柱材3の4つの外面の夫々に備えられている。中間エレクションピース30は、縦姿勢で且つ柱長さ方向に沿う姿勢で中間柱材12の外面に溶接によって接合されており、中間柱材12の4つの外面の夫々に備えられている。
【0039】
初期接合プレート21の上側板部23や延長接合プレート22の上側板部23は、上側柱材2の下端部の外面に突設された上側エレクションピース28にボルト接合される。初期接合プレート21の下側板部24や延長接合プレート22の下側板部24は、下側柱材3の上端部の外面に突設された下側エレクションピース29にボルト接合される。
このように、本実施形態では、上側板部23は、上側柱材2の下端部の外面ではなく、上側柱材2の外面に接合されている上側エレクションピース28にボルト接合可能に構成されている。また、下側板部24は、下側柱材3の上端部の外面ではなく、下側柱材3の外面に接合されている下側エレクションピース29にボルト接合可能に構成されている。
そして、延長接合プレート22の中間板部25は、中間柱材12の外面に突設された中間エレクションピース30にボルト接合可能に構成されている。
中間柱材12や延長接合プレート22は、柱構造1の中間部1Aを延長する際に、柱延長寸法Lに応じた長さのものが用意される。
【0040】
初期接合プレート21は、上側エレクションピース28及び下側エレクションピース29を挟むようにエレクションピースの両側にボルト接合されており、1組の上側エレクションピース28及び下側エレクションピース29に対して2枚ボルト接合されている。そのため、柱構造1の中間部接合手段4には、8枚の初期接合プレート21が備えられている。尚、上側エレクションピース28及び下側エレクションピース29に対してボルト接合される2枚の初期接合プレート21は、断面形状をコ字状として一体に構成してもよい。
また、延長接合プレート22も同様に、1組の上側エレクションピース28、下側エレクションピース29、及び中間エレクションピース30に対して2枚ボルト接合されており、柱構造1の中間部接合手段4には、8枚の延長接合プレート22が備えられている。
【0041】
本実施形態では、第1実施形態と同様に、上側柱材2の下端に上側フランジ8が備えられ、下側柱材3の上端に下側フランジ9が備えられ、中間柱材12の上端に上側中間フランジ10が備えられ、中間柱材12の下端に下側中間フランジ11が備えられている。しかし、これら上側フランジ8、下側フランジ9、上側中間フランジ10、及び下側中間フランジ11にはボルト挿通用の孔が備えられておらず、ボルト接合には利用されていない。
【0042】
図5に示すように、上側柱材2と下側柱材3とが最も接近している接近状態では、上側柱材2の上側エレクションピース28に初期接合プレート21の上側板部23がボルト接合されると共に、下側柱材3の下側エレクションピース29に初期接合プレート21の下側板部24がボルト接合されており、初期接合プレート21を介する状態で上側柱材2と下側柱材3とが中間部接合手段4によって接合されている。
また、図6に示すように、上側柱材2と下側柱材3との間に中間柱材12が介在している介在状態では、上側柱材2の上側エレクションピース28に延長接合プレート22の上側板部23がボルト接合されると共に、下側柱材3の下側エレクションピース29に延長接合プレート22の下側板部24がボルト接合され、更に、中間柱材12の中間エレクションピース30に延長接合プレート22の中間板部25がボルト接合されており、上側柱材2と下側柱材3との間に中間柱材12を介した状態で上側柱材2と下側柱材3とが中間部接合手段4によってボルト接合されている。
そして、介在状態では、上側柱材2と下側柱材3との間に中間柱材12が介在しているため、柱構造1の中間部1Aは、接近状態と比べて中間柱材12の長さである柱延長寸法Lだけ長くなっている。
【0043】
柱構造1の中間部1Aの長さを調整して長くする場合は、次の手順で行われる。
図5に示すように、柱構造1の中間部1Aの長さを調整する前は、上側柱材2と下側柱材3とは最も接近した接近状態となっており、上側柱材2と下側柱材3とが初期接合プレート21を用いてボルト接合されている。
この状態から、初期接合プレート21の上側エレクションピース28及び下側エレクションピース29に対するボルト18による接合を外した後、上側柱材2に接合されている梁等をジャッキアップによって持ち上げることで上側柱材2を上方側に移動させて上側柱材2と下側柱材3とを柱延長寸法L以上離間させる。その後、上側柱材2と下側柱材3との間に中間柱材12を設置させた後、上側柱材2が中間柱材12に接触するまでジャッキダウンして降下させて上側柱材2と下側柱材3との間隔を柱延長寸法Lとする。
このように上側柱材2と下側柱材3との間に中間柱材12を介在させた介在状態で、図6に示すように、上側柱材2の上側エレクションピース28に延長接合プレート22の上側板部23をボルト接合させると共に、下側柱材3の下側エレクションピース29に延長接合プレート22の下側板部24をボルト接合させ、更に、中間柱材12の中間エレクションピース30に延長接合プレート22の中間板部25をボルト接合することで、上側柱材2と下側柱材3との間に中間柱材12を介在させた介在状態とする。
【0044】
上述のように本実施形態の柱構造1は、図6に示すように、上側柱材2と下側柱材3とを離間させてこれらの間に柱延長部5としての中間柱材12を追加設置し、延長接合プレート22の上側板部23を上側柱材2の上側エレクションピース28にボルト接合し、延長接合プレート22の下側板部24を下側柱材3の下側エレクションピース29にボルト接合すると共に、延長接合プレート22の中間板部25を中間柱材12の中間エレクションピース30にボルト接合することで、中間柱材12に応じた柱延長寸法Lだけ柱長さを延長させることができるようになっている。そして、このようにボルト接合する場合は、上側柱材2と下側柱材3との間に中間柱材12が設置されているため、安定性が高い状態でボルト接合できる。更に、エレクションピースを利用したボルト接合であるため、板曲げが発生せず、ボルトに引っ張り力が発生しないようにできる。
【0045】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0046】
(1)上記実施形態では、建物を建築後において柱構造1の中間部1Aの長さを長くする際に、柱延長寸法Lに対応する長さの柱延長部5を製造して用意する例を説明した。しかし、このような構成に限定されない。例えば、柱延長部5として中間柱材12を用いる場合に、長さが異なる複数種類の中間柱材12を予め用意しておき、沈下量に応じた長さの中間柱材12を使用する、又は、柱延長部5として中間板部25を用いる場合に、中間板部25の長さが異なる複数種類の延長接合プレート22を予め用意しておき、沈下量に応じた長さの延長接合プレート22を使用するようにしてもよい。
【0047】
(2)上記実施形態では、上側柱材2と下側柱材3とを角形鋼管によって構成する例を説明した。しかし、このような構成に限定されない。例えば、上側柱材2と下側柱材3とを円形鋼管やH形鋼、クロスH形鋼によって構成してもよい。
【0048】
(3)上記実施形態では、柱構造1の各接合箇所にボルトを用いる場合を例に示したが、これと併せて又はこれに代えて溶接等のボルト以外の接合手段を用いるようにしてもよい。
【0049】
(4)上記実施形態では、上側柱材2と下側柱材3とを突き合せた状態では、上側柱材2と下側柱材3とを当接させたが、上側柱材2と下側柱材3とを突き合せた状態で、上側柱材2と下側柱材3との間にフィラー等の介在物を介在させてもよい。
【0050】
(5)上記実施形態では、柱延長部5の有効断面を、上側柱材2及び下側柱材3の有効断面と同じとする構成を例として説明した。しかし、このような構成に限定されない。柱延長部5の有効断面は、上側柱材2及び下側柱材3の有効断面と同等以上であればよく、例えば、柱延長部5が、上側柱材2及び下側柱材3より大きな有効断面を有していてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 柱構造
1A 中間部
2 上側柱材
3 下側柱材
4 中間部接合手段
5 柱延長部
8 上側フランジ
9 下側フランジ
10 上側中間フランジ
11 下側中間フランジ
21 初期接合プレート
22 延長接合プレート
25 中間板部
28 上側エレクションピース
29 下側エレクションピース
30 中間エレクションピース
L 柱延長寸法
図1
図2
図3
図4
図5
図6