(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167924
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
E02F 3/815 20060101AFI20231116BHJP
【FI】
E02F3/815 L
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079476
(22)【出願日】2022-05-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】519371839
【氏名又は名称】株式会社TMT
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】冨田 廣司
(57)【要約】
【課題】急勾配等の作業不適環境を道造しながら進行することができる作業車両を提供する。
【解決手段】前進後退可能な下部走行体1と、キャビン7が設けられた上部旋回体2と、下部走行体1の前端部に前方に延びる左右1対の下部アーム11とを有し、1対の下部アーム11は、この下部アーム11の先端に装着されたバックホータイプのバケット12と、下部アーム11を前後方向に伸縮させる伸縮シリンダ13と、下部アーム11の基端部を回動中心として上下方向に回動させる回動シリンダ14と、下部アーム11の基端部を回動中心として車幅方向に揺動させる揺動シリンダ15とを夫々有し、一方の下部アーム11の先端に装着されたバケット12と他方の下部アーム11の先端に装着されたバケット12とが夫々独立して動作可能に構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前進後退可能な下部走行体と、この下部走行体に旋回可能に支持され且つ作業機構とキャビンが設けられた上部旋回体とを備えた作業車両において、
前記下部走行体の車体前端部に車両前後方向前方に延びる左右1対の下部アームを有し、
前記1対の下部アームは、このアーム先端に装着されたバックホータイプのバケットと、前記アームを車両前後方向に伸縮させる伸縮手段と、前記下部アームの基端部を回動中心として上下方向に回動させる回動手段と、前記下部アームの基端部を回動中心として車幅方向に揺動させる揺動手段とを夫々有し、
一方のアーム先端に装着された前記バケットと他方のアーム先端に装着された前記バケットとが夫々独立して動作可能に構成されたことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記下部走行体の車体後端部に左右1対のアウトリガを設け、
地面に掘り込んだ前記バケットと前記アウトリガが協働して前記作業車両を支持することを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記揺動手段は、車幅方向最大揺動時、前記バケットが前記下部走行体の車幅方向外側部分よりも車幅方向外側に位置するように作動することを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項4】
前記上部旋回体を前記下部走行体に対して車両前後方向端部を回動中心として姿勢変更させる姿勢変更手段を有することを特徴とする請求項2に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前進後退可能な下部走行体と、この下部走行体に旋回可能に支持され且つ作業機構とキャビンが設けられた上部旋回体とを備えた作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、無限軌道等の走行機構を有する下部走行体と、作業者が搭乗するキャビン、エンジン、油圧ポンプ等の駆動源が付設された上部旋回体と、この旋回体に設けられた土木建設用作業機構とを備えた油圧ショベル型作業車両は知られている。
作業車両の下部走行体には、バケット等の作業機構により掘削作業を行った際、地面の整地、押土、埋め戻しを行うことを目的として、ブレード(排土板)を備えたドーザ機構が設けられている。
【0003】
特許文献1の土木建設機械の多目的ブレードは、下部走行体の前部に回動可能に支持された左右1対のアームと、これら1対のアームを上下方向に回動するアーム用油圧シリンダと、1対のアームの先端に回動自在に軸支された単一のブレードと、このブレードを上下方向に回転移動するブレード用油圧シリンダとを備えている。
また、特許文献2の上部旋回体を有する建設機械用ドーザ装置は、下部走行体の前部に回動可能に支持された左右1対のアームと、これら1対のアームを上下方向に回動するアーム用油圧シリンダと、1対のアームの先端に回動自在に軸支されたブレードと、ブレードをアームの長手方向に伸縮するブレード用油圧シリンダとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-257107号公報
【特許文献2】特開平8-120706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1,2のドーザ機構は、地面に対する整地機能に加え、ブレードにアウトリガの機能を付与することにより、別途アウトリガを追加することなく地面に対する設置領域を増加して、作業機構による作業を機体を安定化した状態で実行することができる。
しかし、特許文献1,2の作業車両では、前提として平地での作業を想定しているため、標高が高く且つ起伏が激しい地形であって作業には適していない環境(以下、便宜上、作業不適環境という)下において土木建設作業を行う場合、作業車両が目的地である作業場所まで到達することができず、最終的に作業機構による作業を実行することができない虞がある。
【0006】
通常、作業不適環境下において山林の樹木等を伐採作業するとき、作業機構のアーム先端に元々取付けられたアタッチメントを、伐倒、造材作業用アタッチメント(例えば、ハーベスタ)に取り換える。そして、このハーベスタが装着された作業車両は、作業車両自身で山間の斜面や起伏が激しい地形を車両が通れるように道造しながら目的の作業場所に向かう必要がある。一般に、油圧ショベルの登坂可能な傾斜角度は、15°~18°と言われており、作業場所に到達するまでの走行経路の勾配が上記傾斜角度範囲を超える場合、作業車両が、自己駆動力だけで作業場所まで登ることは困難である。
即ち、急勾配等の作業不適環境を道造しながら進行することは容易ではない。
【0007】
本発明の目的は、急勾配等の作業不適環境を道造しながら進行可能な作業車両等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、前進後退可能な下部走行体と、この下部走行体に旋回可能に支持され且つ作業機構とキャビンが設けられた上部旋回体とを備えた作業車両において、前記下部走行体の車体前端部に車両前後方向前方に延びる左右1対の下部アームを有し、前記1対の下部アームは、このアーム先端に装着されたバックホータイプのバケットと、前記アームを車両前後方向に伸縮させる伸縮手段と、前記下部アームの基端部を回動中心として上下方向に回動させる回動手段と、前記下部アームの基端部を回動中心として車幅方向に揺動させる揺動手段とを夫々有し、一方のアーム先端に装着された前記バケットと他方のアーム先端に装着された前記バケットとが夫々独立して動作可能に構成されたことを特徴としている。
【0009】
この作業車両では、前記下部走行体の車体前端部に車両前後方向前方に延びる左右1対の下部アームを有し、前記1対の下部アームは、このアーム先端に装着されたバックホータイプのバケットと、前記アームを車両前後方向に伸縮させる伸縮手段と、前記下部アームの基端部を回動中心として上下方向に回動させる回動手段と、前記下部アームの基端部を回動中心として車幅方向に揺動させる揺動手段とを夫々有するため、バケットを上下左右前後に動作させることができ、道造に伴う整地、押土、埋め戻しを行うことができる。一方のアーム先端に装着された前記バケットと他方のアーム先端に装着された前記バケットとが夫々独立して動作可能に構成されたため、各々のアーム先端に装着されたバケットで地面を掘り込むことができ、作業不適環境であっても下部走行体の駆動力と伸縮手段の合計の駆動力によって作業車両を登坂させることができる。また、地形の起伏に拘らずバケットが地面を掘り込むことができ、地面に掘り込んだバケットをアウトリガとして用いることにより機体を安定化した状態で作業機構による作業を実行することができる。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記下部走行体の車体後端部に左右1対のアウトリガを設け、地面に掘り込んだ前記バケットと前記アウトリガが協働して前記作業車両を支持することを特徴としている。この構成によれば、機体を一層安定化した状態で作業を実行することができる。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、前記揺動手段は、車幅方向最大揺動時、前記バケットが前記下部走行体の車幅方向外側部分よりも車幅方向外側に位置するように作動することを特徴としている。この構成によれば、作業車両(下部走行体)が通過可能な道幅を確保することができる。
【0012】
請求項4の発明は、請求項2の発明において、前記上部旋回体を前記下部走行体に対して車両前後方向端部を回動中心として姿勢変更させる姿勢変更手段を有することを特徴としている。この構成によれば、登坂時、作業者の着座姿勢を水平状態にすることができ、操作作業性を確保することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の作業車両によれば、先端にバケットが装着された1対の下部アームを独立作動可能に形成したことで、急勾配等の作業不適環境を道造しながら進行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図5】下部アームが車幅方向外側に揺動した状態を示す平面図である。
【
図6】キャビン姿勢を調整した状態を示す側面図である。
【
図7】下部アームが伸長した状態を示す側面図である。
【
図8】登坂時において上部旋回体が後向きに旋回した状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
以下の説明は、本発明を油圧ショベルに適用したものを例示したものであり、本発明、その適用物、或いは、その用途を制限するものではない。
【実施例0016】
以下、本発明の実施例1について
図1~
図9に基づいて説明する。
図1~
図3に示すように、油圧ショベルをベース車両とした作業車両Vは、左右1対のクローラ3を有する下部走行体1と、この下部走行体1の上部に旋回自在に支持され且つ作業者が搭乗可能な上部旋回体2とを備えている。
以下、上部旋回体2に搭乗した作業者から視て、前側を前方とし、左側を左方とし、上側を上方として説明する。
【0017】
まず、下部走行体1について説明する。
下部走行体1は、前進、後退、旋回可能な1対のクローラ3と、フレーム21の左右後端部の下部に設けられた左右1対のアウトリガ4と、フレーム21の後端部の上部に設けられたウインチ5と、下部走行体1の前部に配設されたドーザ機構10等を備えている。
1対のアウトリガ4は、油圧シリンダ4aと、ロッド4bを有している。作業車両Vの自立安定化を図るとき、ロッド4bを伸長してロッド4bの先端に設けられた脚部4cを地面に接地させる。作業終了後において走行開始するとき、ロッド4bを短縮して脚部4cと地面との接地を解除する。ウインチ5は、山頂で伐採した木材等をワイヤを用いて麓に搬送する状況等で使用される。
【0018】
次に、ドーザ機構10について説明する。
図1、
図2、
図4に示すように、ドーザ機構10は、前後方向に延びる左右1対の下部アーム11と、これら1対の下部アーム11の先端部(前端部)に夫々設けられた左右1対のバケット12とを備えている。
更に、このドーザ機構10は、下部アーム11を前後方向に伸縮させる油圧伸縮シリンダ13(伸縮手段)と、下部アーム11の基端部(後端部)を回動中心として下部アーム11を上下方向に回動させる油圧回動シリンダ14(回動手段)と、下部アーム11の基端部を回動中心として下部アーム11を左右方向に揺動させる油圧揺動シリンダ15(揺動手段)と、下部アーム11の先端部を回動中心としてバケット12を上下方向に回動させる油圧バケットシリンダ16等を有している。
【0019】
図4に示すように、左側の下部アーム11は、支持ブラケット6を介して下部走行体1の前端部に支持されている。この支持ブラケット6は、断面略コ字状に形成され、下部走行体1の前端部に溶接等により固着されている。
この支持ブラケット6は、上下に延びる支持軸6aを上下端部にて鉛直軸回りに回転自在に枢支している。
【0020】
右側の下部アーム11は、左側の下部アーム11と左右対称構造であるため、以下、主に左側の下部アーム11について説明する。また、左側の下部アーム11のシリンダ13,14,15,16と右側の下部アーム11のシリンダ13,14,15,16は、作業不適環境において進行及び作業できるように、各々独立して作動可能に構成されている。
尚、作業不適環境とは、標高が高く且つ起伏が激しい地形であって作業には適していない地形環境と定義される。
【0021】
図5~
図7に示すように、下部アーム11は、外筒部11aと、この外筒部11aよりも小径に形成された内筒部11bとを備えている。内筒部11bは、外筒部11aの内部に収容され、外筒部11aの内部を進退移動可能に構成されている。
図4に示すように、外筒部11aは、基端部が支持軸6aに対して水平ピンによりブラケットを介して軸支され、上下方向に回動自在に構成されている。この外筒部11aは、内部に伸縮シリンダ13が同軸上に収容されている。この伸縮シリンダ13は、その基端部が外筒部11aの基端側部分に上下方向に回動自在に軸支されている。
【0022】
内筒部11bは、その基端部が伸縮シリンダ13のシリンダロッドの先端部に接続されている。この内筒部11bの先端部には、バケット12が水平軸回りに回動自在に軸支されている。このバケット12は、その開口が後方(作業者側に向かう方向)に向かう、所謂バックホー状態で装着されている。尚、バケット12の構成は、周知技術であるため、詳細な説明を省略する。
【0023】
内筒部11bの先端部において、バケット12の軸支部近傍に上方に張り出したブラケットが設置され、このブラケットにバケットシリンダ16の基端部が揺動可能に支持されている。バケットシリンダ16のシリンダロッドが短縮したとき、バケット12は上方に向かって回動(堀戻)し、バケットシリンダ16のシリンダロッドが伸長したとき、バケット12は下方に向かって回動(堀込)する。
【0024】
図4に示すように、外筒部11aの外周途中部には、上部に設けられた上部ブラケット11sと、右側部に設けられた右側部ブラケット11tとが設けられている。
上部ブラケット11sには、回動シリンダ14の先端から延びるシリンダロッド14aの先端部が連結され、右側部ブラケット11tには、揺動シリンダ15の先端から延びるシリンダロッド15aの先端部が連結されている。
【0025】
回動シリンダ14の基端部は、支持軸6aの上部に一体的に設けられたブラケット6bを介して鉛直方向に回動自在に軸支されている。回動シリンダ14のシリンダロッド14aが短縮したとき、下部アーム11が支持軸回りに上方に回動し、下部アーム11を水平状態よりも上方に傾斜した状態にすることができる。また、回動シリンダ14のシリンダロッド14aが伸長したとき、下部アーム11が支持軸回りに下方に回動し、下部アーム11を水平状態よりも下方に傾斜した状態にすることができ、シリンダロッド14aを所定長さ以上伸長させた場合、アーム先端に設置されたバケット12を地面に掘り込ませることができる。
【0026】
図2、
図4、
図5に示すように、揺動シリンダ15の基端部は、下部走行体1の前端部に設けられたブラケットを介して左右方向に回動自在に軸支されている。
揺動シリンダ15のシリンダロッド15aが短縮したとき、支持軸6aが車幅方向内側に回動し、下部アーム11が車幅方向内側に揺動して下部アーム11を前後方向に対して略平行にすることができる。また、揺動シリンダ15のシリンダロッド15aが伸長したとき、支持軸6aが車幅方向外側に回動し、下部アーム11が車幅方向外側に揺動して下部アーム11の先端に装着されたバケット12を下部走行体1の車幅方向外側端部よりも更に車幅方向外側に移動させることができる。
これにより、下部走行体1の走行時、経路の左右方向領域を左右のバケット12を用いて確実に整地することができる。
【0027】
次に、上部旋回体2について説明する。
図1~
図3に示すように、上部旋回体2は、作業車両Vを操作するために作業者が乗り込んで着座可能な略箱状のキャビン7と、このキャビン7を支持する姿勢変更機構20(姿勢変更手段)と、伐採等の作業を実行可能な作業機構30等を備えている。
尚、上部旋回体2の後側部分には、油圧発生源として図示しない油圧ポンプ及び油圧ポンプを駆動するエンジン等が配置されている。
【0028】
まず、姿勢変更機構20について説明する。
図1、
図3、
図6、
図7に示すように、姿勢変更機構20は、下部走行体1の上部に固定された格子状のフレーム21と、このフレーム21の前端部に軸支部を介して上下方向に回動自在に軸支されたフレーム部材であるベース22と、キャビン7を含むベース22を軸支部を回動中心として上下方向に回動させる左右1対の油圧キャビンシリンダ23と、ベース22に対して作業者が乗り込んだキャビン7を鉛直軸回りに旋回作動させるモータ24を有している。
【0029】
フレーム21は、前後方向に延びる左右1対のサイドメンバと、左右方向に延びる前側及び後側のクロスメンバを有している。1対のサイドメンバの前端部には、ベース22を回動自在に軸支する軸支部が形成され、1対のサイドメンバの後端下部には、アウトリガ4が夫々配設されている。前側クロスメンバの前部には、前述した左右1対の支持ブラケット6が等間隔になるよう配設され、後側クロスメンバの車幅方向中間部には、ウインチ5が搭載されている。尚、下部走行体1に設けられた1対の支持ブラケット6の間に別途補助用のウインチを設置しても良い。
【0030】
キャビンシリンダ23は、その先端部から伸長又は短縮するシリンダロッド23aを有している。このキャビンシリンダ23の基端部は、フレーム21のサイドメンバの途中部に上下回動自在に軸支されている。シリンダロッド23aの先端部は、ベース22の前後方向中間部に回動自在に軸支されている。
【0031】
これにより、シリンダロッド23aが短縮したとき、ベース22がフレーム21に着座し、キャビン7を地面に対して水平状態にしている(
図1参照)。
また、シリンダロッド23aが伸長したとき、ベース22の後部がフレーム21から離隔し、キャビン7を地面に対して傾斜状態にしている(
図6、
図7参照)。
尚、シリンダロッド23aは、キャビン7の姿勢調整時、キャビン7を地面に対して傾斜状態にする一方、絶対座標系において、作業者が略水平状態になるように制御される。
【0032】
モータ24は、キャビン7を搭載すると共に、ベース22の上部に固定されている。
このモータ24は、左右何れの方向にも180°旋回可能に構成されている。
図8に示すように、モータ24は、作業者の略水平状態を確保するようにシリンダロッド23aが伸長作動した後、作業者の操作に基づきキャビン7を進行方向反対側に旋回させることができる。また、キャビン7を旋回状態にした後、作業機構30による作業を実行することも可能である。
【0033】
次に、作業機構30について説明する。
図1に示すように、作業機構30は、上部旋回体2に揺動可能に支持されたブーム31と、このブーム31の先端に揺動可能に軸支されたアーム32と、このアーム32の先端に着脱自在に装着されたハーベスタ33等により構成されている。
ハーベスタ33は、伐倒、造材等の作業を実行可能な作業用アタッチメントである。
尚、実行する作業の種類に応じて、バケット、カッター、破砕機等から作業に適した作業用アタッチメントが選択され、選択された作業用アタッチメントがアーム32の先端に装着されている。
【0034】
アーム32は、ブームシリンダ34によって揺動されたブーム31の先端にアーム揺動軸を軸心として揺動可能に軸支されている。一端をブーム31に固定され且つ他端をアーム32の後端に固定されたアームシリンダ35が伸長したとき、アーム32はアーム揺動軸を軸心として反時計回りに揺動回転するよう構成されている。
一端をアーム32に固定されたバケットシリンダ36の他端は、ハーベスタ33の前端他側部分に一端を揺動可能に軸支されたHリンクとアーム32の先端近傍に一端を揺動可能に軸支されたサイドリンクとの夫々の他端に連結されている。
バケットシリンダ36が伸長したとき、ハーベスタ33は反時計回りに揺動動作するよう構成されている。
【0035】
次に、
図9のフローチャートに基づいて、作業車両Vが行う登坂制御処理手順について説明する。尚、Si(i=1,2…)は、各処理のためのステップを示している。
また、作業車両Vは、作業完了直後の状態、具体的には、下部アーム11が最も短縮且つ下方回動状態、バケット12が下方回動して堀込状態、アウトリガ4が接地状態、姿勢変更機構20が未作動である状態を初期状態とする。
【0036】
先ず、各種センサ等の情報を読み込む(S1)。
次に、S2にて、登坂制御を開始したか否かを判定する。
S2の判定の結果、登坂制御を開始した場合、作業者の搭乗姿勢が走行環境状態に適していないため、S3に移行する。S2の判定の結果、登坂制御を開始していない場合、作業車両Vは登坂していないため、終了する。
【0037】
本実施形態では、作業車両Vが勾配センサ(図示略)を有し、例えば、検出された傾斜角度が30°以上で且つ作業車両Vが前進移動するとき、登坂制御開始を判定する。
傾斜角度が30°以上の経路を進行する場合、クローラ3の駆動力だけで作業車両Vを登坂させることは技術的に難しい。そこで、傾斜角度が30°以上を、作業不適環境を判定する判定条件の1つとしている。
【0038】
S3では、作業者の操作快適性を確保するため、キャビンシリンダ23を用いてキャビン7をアップさせて作業者の姿勢を略水平状態に調整する(
図6参照)。
次に、バケットシリンダ16によってバケット12を堀戻操作し(S4)、回動シリンダ14によって下部アーム11を上昇移動させた後(S5)、伸縮シリンダ13によって下部アーム11を前方に延ばす(S6)(
図7参照)。
左右のバケット12は、地形を含む作業環境により堀込状態が異なっていることから、左右のバケットシリンダ16は、左右のバケット12を夫々独立して動作制御する。同様に、左右の回動シリンダ14、及び左右の伸縮シリンダ13についても、夫々独立して動作制御されている。
【0039】
S6では、下部アーム11を伸長すると共に、道造処理を行うことが可能である。
道造処理を行う場合、周囲状況に基づき、左側下部アーム11又は右側下部アーム11又は左右両側の下部アーム11の揺動シリンダ15を用いてバケット12を下部走行体1の車幅方向外側端部よりも更に車幅方向外側に移動させる揺動動作を繰り返し実行する。
また、道造処理の際、左側バケットシリンダ16と右側バケットシリンダ16は、周囲状況に基づき異なる動作を行う。
【0040】
S7では、回動シリンダ14により接地するまで下部アーム11を下降移動させる。
次に、バケットシリンダ16によってバケット12を堀込操作し(S8)、ロッド4bの短縮作動によりアウトリガ4の脚部4cの接地を解除した後(S9)、作業車両Vの前進移動に同期して下部アーム11を短縮する(S10)。
S11では、下部アーム11の短縮が終了して最短寸法になったか否か判定する。
S11の判定の結果、下部アーム11の短縮が終了した場合、S12に移行する。
S11の判定の結果、下部アーム11の短縮が終了していない場合、S10にリターンして登坂を継続する。尚、上記最短寸法は、制御上、実行可能な値に調整されている。
【0041】
S12では、ロッド4bの伸長作動によりアウトリガ4の脚部4cを接地させて、S13に移行する。S13では、登坂制御が終了したか否かを判定する。
S13の判定の結果、登坂制御が終了した場合、キャビンシリンダ23によりキャビン7をダウンさせて作業者の姿勢を初期状態に戻し(S14)、終了する。
S13の判定の結果、登坂制御が終了していない場合、S4にリターンする。
伐倒、造材作業を行う場合、S14の終了後に作業が行われる。
【0042】
次に、本発明の実施形態による作業車両Vの作用効果について説明する。
この作業車両Vによれば、下部走行体1の前端部に前方に延びる左右1対の下部アーム11を有し、1対の下部アーム11は、この下部アーム11の先端に装着されたバックホータイプのバケット12と、下部アーム11を前後方向に伸縮させる伸縮シリンダ13と、下部アーム11の基端部を回動中心として上下方向に回動させる回動シリンダ14と、下部アーム11の基端部を回動中心として車幅方向に揺動させる揺動シリンダ15とを夫々有するため、バケット12を上下左右前後に動作させることができ、道造に伴う整地、押土、埋め戻しを行うことができる。
一方の下部アーム11の先端に装着されたバケット12と他方の下部アーム11の先端に装着されたバケット12とが夫々独立して動作可能に構成されたため、各々の下部アーム11の先端に装着されたバケット12で地面を掘り込むことができ、作業不適環境であっても下部走行体1の駆動力と伸縮シリンダ13の駆動力によって作業車両Vを登坂させることができる。また、地形の起伏に拘らずバケット12が地面を掘り込むことができ、地面に掘り込んだバケット12をアウトリガとして用いることにより機体を安定化した状態で作業機構30による作業を実行することができる。
【0043】
下部走行体1の後端部に左右1対のアウトリガ5を設け、地面に掘り込んだバケット12とアウトリガ5が協働して作業車両Vを支持するため、機体を一層安定化した状態で作業を実行することができる。
【0044】
揺動シリンダ15は、車幅方向最大揺動時、バケット12が下部走行体1の車幅方向外側部分よりも車幅方向外側に位置するように作動するため、作業車両Vが通過可能な道幅を確保することができる。
【0045】
上部旋回体2を下部走行体1に対して車両前後方向端部を回動中心として姿勢変更させる姿勢変更機構20を有するため、登坂時、作業者の着座姿勢を水平状態にすることができ、操作作業性を確保することができる。
【0046】
次に、前記実施形態を部分的に変更した変形例について説明する。
1〕前記実施形態においては、作業アタッチメントとして伐採等を行うハーベスタの例を説明したが、作業内容によってアーム32の先端に装着される作業アタッチメントは取り替え可能であり、バケット、カッター、破砕機等を取り付けることが可能である。
【0047】
2〕前記実施形態においては、左右1対の下部アーム11の例を説明したが、少なくとも複数の下部アームを備え、各下部アームが独立作動可能であれば、本発明の効果を奏することができる。
【0048】
3〕前記実施形態においては、傾斜角度が30°以上で且つ作業車両Vが前進移動するとき、登坂制御開始を判定した例を説明したが、別途、登坂制御スイッチを設け、作業者の判断により、作業者がオンオフ操作しても良い。また、傾斜角度が35°以上の場合、作業車両Vによる登坂が現時点の技術水準的に難しいため、作業者に対して報知するように構成しても良い。
【0049】
4〕その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施形態に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態も包含するものである。