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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167925
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6555 20140101AFI20231116BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20231116BHJP
   H01M 10/651 20140101ALI20231116BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20231116BHJP
   H01M 50/211 20210101ALI20231116BHJP
   H01M 10/6557 20140101ALI20231116BHJP
   H01M 50/289 20210101ALI20231116BHJP
   H01M 10/617 20140101ALI20231116BHJP
【FI】
H01M10/6555
H01M10/613
H01M10/651
H01M50/204 401H
H01M50/211
H01M10/6557
H01M50/289
H01M10/617
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079477
(22)【出願日】2022-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀 陽祐
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 達朗
(72)【発明者】
【氏名】青谷 幸一郎
【テーマコード(参考)】
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031HH08
5H031KK01
5H031KK08
5H040AA28
5H040AT04
5H040AT06
5H040CC25
5H040NN01
5H040NN03
(57)【要約】
【課題】温度が上昇する場所に関係なく、不均一な温度分布を解消することのできる電池モジュールを提供すること。
【解決手段】電池モジュールは、電池セル2と、放熱板3と、放熱板3と電池セル2との間に配置された弾性体4と、これらを加圧する加圧機構と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全固体電池または半固体電池の電池モジュールであって、
積層された複数の電池セルと、
隣接する前記電池セルの間に配置された放熱板と、
前記放熱板と前記電池セルとの間に配置された弾性体と、
前記複数の電池セル、前記放熱板及び前記弾性体を積層方向に圧縮するように加圧する加圧機構と、を備える、
電池モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の電池モジュールであって、
前記電池セルは、少なくとも充電状態においてリチウム金属又はリチウム合金を含む負極を有する、
電池モジュール。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電池モジュールであって、
積層方向に沿って見た場合に、前記放熱板の端部は、前記弾性体の端部よりも外側に位置している、
電池モジュール。
【請求項4】
請求項3に記載の電池モジュールであって、
前記放熱板及び前記弾性体は、それぞれ、長方形のシート状であり、
積層方向に沿って見た場合に、前記放熱板の端部から前記弾性体の端部までの距離は、長辺に沿う方向よりも、短辺に沿う方向の方が大きい、
電池モジュール。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の電池モジュールであって、更に、前記放熱板に接触するように配置された冷却部材を備える、
電池モジュール。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の電池モジュールであって、
前記放熱板は、冷媒が流れる冷媒流路を有している、
電池モジュール。
【請求項7】
請求項6に記載の電池モジュールであって、
更に、
前記電池セルを外部に電気的に接続する、一対のタブを有し、
前記一対のタブは、積層方向に沿って見た場合に前記電池セルを第1方向において挟むような位置に配置され、
前記冷媒流路は、積層方向に沿って見た場合に、前記第1方向に垂直な第2方向に沿って伸びている、
電池モジュール。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の電池モジュールであって、
前記放熱板は、放熱能力が変化し得るように構成されており、
前記電池モジュールは、更に、前記電池モジュールの面圧を測定する面圧測定機構を備え、
前記測定された面圧に基づいて、前記放熱板の放熱能力が制御されるように構成されている、
電池モジュール。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の電池モジュールであって、
更に、
前記電池セルを外部に電気的に接続する、タブを有し、
前記放熱板は、前記タブに近い位置において厚く、前記タブに遠い位置において薄い、
電池モジュール。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の電池モジュールであって、
更に、
前記電池セルを外部に電気的に接続するタブを有し、
積層方向に沿って見た場合に、前記放熱板は、前記タブに近い位置において幅が大きく、タブから離れた位置において幅が小さくなるような形状を有している、
電池モジュール。
【請求項11】
請求項1又は2に記載の電池モジュールであって、
前記弾性体は、多孔質体である、
電池モジュール。
【請求項12】
請求項1又は2に記載の電池モジュールであって、
前記弾性体は、12.5μm以上の算術平均粗さRaを有する、
電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
積層された複数の電池セルを有する電池モジュールが知られている。電池モジュールは充電に伴い発熱する場合がある。充電に伴う発熱量は場所によって異なる場合があり、その結果、電池モジュール内に温度差が生じる場合がある。電池モジュール内で温度差が生じた場合、劣化進行度に違いが生じ、電池モジュールの寿命や信頼性が低下する場合がある。
【0003】
上記に関連して、特許文献1(特開2013-004255号公報)には、強電タブ付近への電流集中により強電タブ近傍の温度が強電タブより離れた部位より上昇する傾向を有する電池であっても、発電要素面内の不均一な温度分布を解消して均一化し得る電池を提供することが開示されている。また、特許文献1には、略薄板状の発電要素と電池外装体とを交互に積層した電池において、発電要素への充電または放電の少なくとも一方を行わせるための強電タブを発電要素の周縁部に備え、電池外装体には強電タブに近づくほど積層方向に相対的に厚くなる冷却層を有し、かつ冷却層を含んだ電池外装体の積層方向の厚さが電池外装体の面内で一定であるようにすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-004255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された発明は、強電タブ近傍の温度が強電タブより離れた部位より上昇することを前提としている。しかしながら、電池モジュールの温度は、常に強電タブ近傍において高くなるとは限らない。そこで、本発明の目的は、温度が上昇する場所に関係なく、不均一な温度分布を解消することのできる電池モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電池モジュールは、全固体電池または半固体電池の電池モジュールである。この電池モジュールは、積層された複数の電池セルと、隣接する電池セルの間に配置された放熱板と、放熱板と電池セルとの間に配置された弾性体と、複数のセル、放熱板及び弾性体を圧縮するように加圧する、加圧機構とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、温度が上昇する場所に関係なく、不均一な温度分布を解消することのできる電池モジュールが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1の実施形態に係る電池モジュールを示す概略断面図である。
図2図2は、電池セルを示す概略断面図と、電池セルを積層方向に沿って見た時の図である。
図3図3は、第1の実施形態の作用を示す模式図である。
図4図4は、第2の実施形態における電池セルを積層方向に沿って見た図である。
図5図5は、第3の実施形態に係る電池モジュールを示す概略図である。
図6図6は、第4の実施形態に係る電池モジュールの機能ブロック図である。
図7図7は、第5の実施形態に係る電池モジュールの一部を示す概略図である。
図8図8は、第5の実施形態の変形例に係る電池モジュールの電池セル2を積層方向に沿って見た場合の模式図である。
図9図9は、第6の実施形態に係る電池モジュールの電池セルを示す概略図である。
図10図10は、第7の実施形態に係る電池モジュールの電池セルを示す概略図である。
図11図11は、第8の実施形態における弾性体を示す模式図である。
図12図12は、第9の実施形態における弾性体を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(1)第1の実施形態
以下、図面を参照しつつ、本発明の第1の実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る電池モジュール1を示す概略断面図である。なお、本実施形態に係る電池モジュール1は、全体としては概ね平板状である。しかし、図1においては、説明の便宜上、厚さ方向に引き伸ばした状態の電池モジュール1が示されている。
【0010】
電池モジュール1は、全固体電池の電池モジュールである。全固体電池とは、充放電が可能な二次電池であり、電解質として固体電解質が使用された電池である。全固体電池は、充電に伴い、膨張する。
【0011】
図1に示されるように、電池モジュール1は、複数の電池セル2、複数の放熱板3及び複数の弾性体4を有している。複数の電池セル2は積層されている。各放熱板3及び各弾性体4は、隣接する電池セル2の間に配置されている。各放熱板3は、2枚の弾性体4により挟まれている。すなわち、弾性体4は、放熱板3と電池セル2との間に配置されている。なお、最下部に配置された電池セル2の下面と、最上部に配置された電池セル2の上面にも、それぞれ、弾性体4により挟まれた放熱板3が配置されている。
【0012】
電池モジュール1には、更に、加圧機構として、一対の加圧板5と、ゴムバンド6(加圧用弾性部材)とが設けられている。一対の加圧板5は、複数の電池セル2、複数の放熱板3及び複数の弾性体4により構成される積層体を上下から挟むように配置されている。ゴムバンド6は、一対の加圧板5を圧縮するように配置されている。このような構成により、積層体が圧縮されるように加圧されている。
【0013】
図2は、電池セル2を示す概略断面図と、電池セル2を積層方向に沿って見た時の図である。なお、図2には、放熱板3及び弾性体4についても描かれている。図2に示されるように、電池セル2、放熱板3、及び弾性体4は、いずれもシート状である。なお、電池セル2の厚みは概ね一定であるが、周縁部においては、外側に向かって徐々に薄くなっている。電池セル2の両端には、一対のタブ7(例えば、正極タブ及び負極タブ)が配置されている。タブ7は、電池セル2を外部の装置に電気的に接続するために設けられている。
【0014】
弾性体4は、積層方向に沿って見た場合に、電池セル2に概ね対応する大きさを有している。より詳細には、弾性体4の形状は、電池セル2のうち、周縁部(外側に向かって厚みが減少している部分)を除いた部分の形状に概ね一致している。
【0015】
放熱板3は、積層方向に沿って見た場合に、弾性体4よりも大きい形状を有している。具体的には、積層方向に沿って見た場合に、放熱板3の端部は、弾性体4の端部よりも外側に位置している。その結果、放熱板3の端部は、浮いた状態になっている。
【0016】
上述の構成を有していることにより、温度が上昇した場所に関係なく、不均一な温度分布を解消することができる。以下に、この点について説明する。
【0017】
図3は、本実施形態の作用を示す模式図である。充電時には、電池セル2が発熱する。図3(a)に示されるように、ある電池セル2において、タブ7に近い部分の発熱量が大きくなり、高温になったとする。全固体電池では、温度が高い部分ほど、充電反応が進行しやすく、膨張しやすい。そのため、図3(b)(矢印参照)に示されるように、高温部分(タブ7の近傍)ほど、電池セル2の厚みが増加しやすく、弾性体4が圧縮されやすい。弾性体4が圧縮されると、電池セル2と放熱板3との間の距離が小さくなり、電池セル2から放熱板3への熱伝導量が増加する。また、電池セル2の厚みが増加する結果、電池セル2と弾性体4との間の面圧と、弾性体4と放熱板3との間の面圧とが、いずれも大きくなる。面圧が大きいと、部材間の接触熱抵抗が小さくなる。この観点からも、電池セル2から放熱板3への熱伝導量が増加する。従って、図3(c)に示されるように、電池セル2における高温部分ほど、放熱板3を介した放熱量が大きくなる。これにより、不均一な温度分布が解消される。なお、図3においては、タブ7の近傍が高温となっている例が挙げられているが、タブ7から離れた部分の温度が高温になったとしても、高温部分の放熱量が大きくなるから、不均一な温度分布が解消される。すなわち、温度が上昇する場所に関係なく、不均一な温度分布を解消することができる。
【0018】
なお、本実施形態において使用される電池セル2は、充電時に膨張するように構成されたものであればよく、特に限定されない。例えば、電池セル2としては、正極集電体、正極、固体電解質層、負極、及び負極集電体がこの順で積層された積層構造を有するものを用いることができる。電池セル2は、この積層構造に加えて、更に、積層構造を封止する外装材(ラミネートフィルム)を含んでいてもよい。
【0019】
好ましい一態様では、電池セル2は、少なくとも充電状態においてリチウム金属又はリチウム合金を含む負極を有する。このような負極を有する電池セル2では、充電時に負極にリチウム金属又はリチウム合金が析出(あるいは吸蔵)する。この際、高温部ほど、負極におけるリチウム析出量が大きくなり、電池セル2が膨張しやすい。よって、図3に示した作用が働きやすく、不均一な温度分布が解消されやすくなる。
【0020】
なお、上述の「少なくとも充電状態においてリチウム金属又はリチウム合金を含む」とは、放電状態では負極にリチウムが含まれていてもいなくてもよいことを意味する。例えば、放電状態では負極側にリチウムが存在せず、充電した際に正極側から負極側にリチウムが移動し、負極集電体上にリチウムが析出するように構成された電池セル2も、本実施形態において好適に使用できる。
【0021】
「少なくとも充電状態においてリチウム金属又はリチウム合金を含む負極」を構成する材料としては、充電時にリチウムイオンを吸蔵し、放電時にリチウムイオンを放出できる材料を用いることができる。このような材料として、例えば、単体金属、ケイ素材料(シリコン)、スズ材料、または、ケイ素やスズを含む化合物(酸化物、窒化物、他の金属との合金)を有する材料などを挙げることができる。これらの材料は、グラファイト等の炭素系材料を負極として使用した場合に比べて、充電時に膨張しやすい。よって、図3に示した作用が働きやすい。
【0022】
なお、電池セル2の厚みは、特に限定されないが、例えば3~30mm、好ましくは5~20mmである。
【0023】
また、放熱板3の材質は特に限定されないが、例えば、アルミ及び銅等の金属を用いることができる。各放熱板3の厚みは、例えば0.3~3mm、好ましくは0.5~2mmである。
【0024】
弾性体4としては、例えば、ヤング率が10MPa以下の材料を用いることができる。弾性体4のヤング率は、好ましくは、0.1~10MPaである。弾性体4としては、例えば、シリコンゴム等のゴム製のシートを用いることができる。弾性体4の厚みは、例えば0.3~3mm、好ましくは0.5~2mmである。また、弾性体は、熱伝導性を付与された弾性体を用いるのが好ましい。酸化アルミニウム、グラファイト、酸化ベリリウム、亜鉛華、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウムなどの熱伝導性充填材を弾性体に含有させることで、弾性体に熱伝導性を付与することができる。また、熱伝導性を付与された弾性体として、信越化学製の放熱性シリコーンなどを使用することができる。
【0025】
以上、第1の実施形態について説明した。以下に、本実施形態の構成と効果の関係について要約する。
【0026】
本実施形態に係る電池モジュール1は、全固体電池の電池モジュール1であり、積層された複数の電池セル2と、放熱板3と、弾性体4と、加圧機構とを備える。放熱板3は、隣接する電池セル2の間に配置されている。弾性体4は、放熱板3と電池セル2との間に配置されている。加圧機構は、複数の電池セル2、放熱板3及び弾性体4を積層方向に圧縮するように加圧するように構成されている。このような構成を採用することにより、高温となった部分では、電池セル2の膨張により、弾性体4が圧縮される。その結果、放熱板3を介した放熱が促進され、電池セル2の温度が低下しやすくなる。従って、不均一な温度分布が解消される。
【0027】
好ましい一態様において、電池セル2は、少なくとも充電状態においてリチウム金属又はリチウム合金を含む負極を有する。このような電池セル2では、充電時に、高温部ほど負極におけるリチウムの析出量が大きくなりやすく、電池セル2の厚みが増加しやすい。高温部において弾性体4が圧縮されやすく、放熱量が大きくなりやすいから、不均一な温度分布がより解消されやすい。
【0028】
なお、本実施形態では、電池モジュール1が全固体電池を構成するものである場合について説明した。ただし、電池モジュール1は、半固体電池を構成するものであってもよい。半固体電池とは、ゲル状の電解質を使用した二次電池である。半固体電池も、充電時に膨張する場合がある。従って、本実施形態を半固体電池に適用した場合であっても、発熱量が大きくなる場所に関係なく、不均一な温度分布を解消することができる。
【0029】
(2)第2の実施形態
続いて、第2の実施形態について説明する。本実施形態では、第1の実施形態に対して、放熱板3の形状が工夫されている。なお、第1の実施形態と同様の構成を採用することができる点については、説明を省略する。
【0030】
図4は、本実施形態における電池セル2を積層方向に沿って見た図である。図4に示されるように、放熱板3及び弾性体4は、それぞれ、長方形のシート状である。なお、電池セル2も、概ね、長方形のシート状である。これらは、長辺方向を揃えて重ねられている。一対のタブ7は、長辺方向における電池セル2の両端に配置されている。
【0031】
第1の実施形態と同様に、放熱板3の端部は、積層方向に沿って見た場合に、弾性体4の端部よりも外側に位置している。ここで、本実施形態では、弾性体4の端部から放熱板3の端部までの距離が、長辺に沿う方向よりも、短辺に沿う方向において大きくなっている。具体的には、図4に示されるように、短辺方向における放熱板3の端部と弾性体4との間の距離(a1)が、長辺方向に沿うそれ(距離a2)よりも大きくなっている。
【0032】
上述のような構成によれば、電池セル2から放熱板に伝わった熱が、短辺に沿う方向から電池セル2の外部にまで伝わりやすくなる。短距離で熱が電池セル2の外部にまで伝わるから、冷却効果が大きくなる。その結果、不均一な温度分布の解消速度が速くなる。
【0033】
なお、本実施形態において、短辺方向における放熱板3の端部は、電池セル2の端部よりも外側に位置していることが好ましい。このような構成を採用することにより、放熱板3に伝わった熱が、外部により伝わりやすくなる。
【0034】
(3)第3の実施形態
続いて、第3の実施形態について説明する。なお、既述の実施形態と同様の構成を採用できる部分については、説明を省略する。
【0035】
図5は、本実施形態に係る電池モジュール1を示す概略図である。本実施形態では、電池モジュール1が、更に、冷却部材8を備えている。冷却部材8は、複数の放熱板3を冷却するために設けられている。冷却部材8は、複数の放熱板3に接触するように配置されている。冷却部材8は、電池モジュール1の厚み方向に伸びる部分と、厚み方向に垂直な方向に伸びる部分とを有している。垂直な方向に伸びる部分は、厚み方向に伸びる部分の両端部に接続されている。冷却部材8は、厚み方向に伸びる部分において、複数の放熱板3に接触している。なお、冷却部材8としては、例えば、銅やアルミなどの金属製の部材を用いることができる。
【0036】
このような構成を採用することにより、放熱板3を介した放熱量が大きくなる。よって、電池モジュール1における不均一な温度分布を、より速やかに解消することができる。
【0037】
なお、本実施形態において、冷却部材8は、好ましくは、冷媒が流れる流路(図示せず)を有する。冷媒は、例えば、図示しないポンプ等によって、流路を循環させられる。このような構成を採用すれば、放熱量を更に高めることができ、不均一な温度分布を更に速やかに解消できる。
【0038】
(4)第4の実施形態
続いて、第4の実施形態について説明する。本実施形態は、第3の実施形態の変形例である。第3の実施形態と同様の構成を採用できる部分については、説明を省略する。
【0039】
本実施形態では、第3の実施形態と同様に、電池モジュール1が、冷却部材8を備えている。また、冷却部材8には、冷媒が流れる冷媒流路が設けられている。更に、その冷媒流路には、ポンプなどの流量調整機構(図示せず)が接続されており、冷媒の流量が制御できるようになっている。すなわち、冷媒の流量を制御することにより、放熱板3の放熱能力を変化させることが可能になっている。
【0040】
ここで、図6に、本実施形態に係る電池モジュール1の機能ブロック図を示す。図6に示されるように、電池モジュール1は、更に、面圧測定機構10と、制御機構11とを有する。面圧測定機構10は、電池モジュール1の面圧を測定し、面圧データを生成するように構成されている。制御機構11は、面圧データに基づいて、放熱板3の放熱能力を制御するように構成されている。具体的には、制御機構11は、ポンプ12を制御することによって冷媒の流量を制御し、これによって放熱板3の放熱能力を制御する。
【0041】
既述の通り、高温部では電池セル2が膨張しやすいから、電池モジュール1の面圧は、電池モジュール1の温度を反映している。従って、面圧を測定することにより、電池モジュール1の状態(温度)に応じて、放熱板3の放熱能力を制御することができる。例えば、制御機構11は、測定された面圧が予め定められた値よりも高い場合に、放熱板3の放熱能力を増加させるように構成される。これにより、電池モジュール1が高温になった場合に、電池モジュール1が冷却されやすくなる。電池モジュール1が高温である場合には、電池モジュール1内における温度差も大きくなりやすい。従って、高温時に放熱能力を増加させることにより、不均一な温度分布が解消されやすくなる。
【0042】
好ましい一態様において、面圧測定機構10は、電池モジュール1における複数の位置について面圧を測定し、その結果(すなわち面圧分布)を示すデータを、面圧データとして生成する。制御機構11は、面圧分布に基づいて、放熱板3の放熱能力を制御する。例えば、面圧の最大値と最小値の差が予め定められた値よりも大きい場合に、制御機構11は、放熱板3の放熱能力を増加させる。これにより、電池モジュール1に大きな温度差が生じている場合に、電池モジュール1が冷却されやすくなり、温度差が解消されやすくなる。あるいは、制御機構11は、面圧分布の標準偏差等に基づき、放熱板3の放熱能力を制御するように構成されていてもよい。
【0043】
なお、面圧測定機構10は、例えば、公知の面圧測定フィルム等を用いることにより、実現することができる。例えば、隣接する電池セル2の間に面圧測定フィルムを配置することによって、電池セル2間の面圧を電池モジュール1の面圧として測定することができる。
【0044】
また、制御機構11は、マイクロプロセッサ等によって実現することができる。なお、本実施形態では、電池モジュール1が制御機構11を備えている場合について説明したが、制御機構11は電池モジュール1とは別に設けられていてもよい。すなわち、電池モジュール1の外部に設けられたコンピュータ等により、放熱板3の放熱能力が制御されてもよい。
【0045】
以上説明したように、本実施形態においては、放熱板3が、放熱能力が変化し得るように構成されている。そして、電池モジュール1が、電池モジュール1の面圧を測定する面圧測定機構10を備えており、測定された面圧に基づいて、放熱板3の放熱能力が制御される。このような構成により、電池モジュール1の状態に応じて、放熱能力を変化させることが可能となる。
【0046】
また、面圧測定機構10が「面圧分布」を測定し、面圧分布に基づいて制御機構11が放熱能力を制御するように構成されていれば、電池モジュール1に大きな温度差が生じた場合に、放熱能力を増加させることができる。よって、不均一な温度分布がより解消されやすくなる。
【0047】
(5)第5の実施形態
続いて、第5の実施形態について説明する。なお、既述の実施形態と同様の構成を採用できる部分については、説明を省略する。
【0048】
図7は、本実施形態に係る電池モジュール1の一部を示す概略図である。図7には、更に、放熱板3部分の構成が拡大して示されている。図7に示されるように、放熱板3には、冷媒流路9が設けられている。冷媒流路9は、その中を冷媒(冷却水等)が流れるように構成されている。例えば、冷媒流路9は、図示しないポンプ等に接続されている。これにより、冷媒流路9内で冷媒が循環させることができる。
【0049】
本実施形態によれば、放熱板3に冷媒流路9が設けられているため、放熱板3による放熱量がより増加する。よって、不均一な温度分布をより速やかに解消することができる。
【0050】
続いて、本実施形態の変形例について説明する。図8は、本変形例に係る電池モジュール1の電池セル2を積層方向に沿って見た場合の模式図である。図8には、冷媒流路9を流れる冷媒の向きが、併せて示されている。
【0051】
図8に示されるように、電池セル2の両端には、一対のタブ7が設けられている。一対のタブ7は、電池セル2を第1方向において挟むような位置に配置されている。冷媒流路9は、積層方向に沿って見た場合に、第1方向に垂直な第2方向に沿って伸びている。
【0052】
電池セル2において、タブ7の近傍では、電流が集中するから高温になりやすい。仮に、冷媒が第1方向に沿って流れる場合、冷媒は、2か所の高温部(両端のタブ近傍)を通過することになる。最初の高温部を通過した際に、冷媒の冷却能力が失われやすい。そのため、最初の高温部よりも、2番目の高温部の方が、冷却されにくい。すなわち、2か所の高温部の間で、放熱量に差が生じやすい。これに対して、本変形例によれば、2か所の高温部は、均等に冷却される。従って、放熱量に差が生じず、電池セル2に温度差が生じにくい。
【0053】
以上、第5の実施形態について説明した。なお、本実施形態においても、冷媒流路9を流れる冷媒の流量を、ポンプ等により調整することができる。すなわち、放熱板3は、放熱能力が変化し得るように構成されていてもよい。そして、第4の実施形態と同様に、面圧測定機構10及び制御機構11を設け、面圧に応じて、放熱板3の放熱能力が制御されてもよい。
【0054】
(6)第6の実施形態
続いて、第6の実施形態について説明する。なお、既述の実施形態と同様の構成を採用できる部分については、説明を省略する。
【0055】
図9は、本実施形態に係る電池モジュール1の電池セル2を示す概略図である。本実施形態では、放熱板3の形状が工夫されている。具体的には、電池セル2の両端に、一対のタブ7が設けられている。そして、放熱板3は、タブ7に近い位置において厚く、タブ7に遠い位置において薄くなるような形状を有している。
【0056】
タブ7に近い位置では、電池セル2の発熱量が大きくなりやすい。従って、タブ7に近い位置ほど放熱板3の厚みを大きくすることによって、高温になりやすい部分の放熱能力を高めることができる。これにより、不均一な温度分布がより解消されやすくなる。
【0057】
なお、放熱板3において、最も厚い部分の厚みは、最も薄い部分の厚みに対して、例えば1.1倍以上、好ましくは1.3~5倍、より好ましくは1.5~3倍である。
【0058】
また、放熱板3の平均厚みは、例えば0.3~3mm、好ましくは0.5~2mmである。
【0059】
(7)第7の実施形態
続いて、第7の実施形態について説明する。なお、既述の実施形態と同様の構成を採用できる部分については、説明を省略する。
【0060】
図10は、本実施形態に係る電池モジュール1の電池セル2部分を示す概略図であり、積層方向から電池モジュール1を見た時の図である。本実施形態においても、第6の実施形態と同様に、放熱板3の形状が工夫されている。ただし、厚みではなく、積層方向から見た場合の形状が工夫されている。
【0061】
具体的には、第1方向における電池セル2の両端に、一対のタブ7が配置されている。そして、放熱板3は、タブ7に近い位置ほどその幅が大きく、タブ7から離れた位置ほどその幅が小さくなるような形状を有している。ここでいう幅とは、第1方向に直交する第2方向に沿う幅のことである。
【0062】
本実施形態によれば、タブ7に近い部分ほど、放熱板3の幅が広いから、放熱板3の放熱能力が大きくなる。従って、不均一な温度分布がより解消されやすい。
【0063】
なお、放熱板3において、最も広い部分の幅は、最も狭い部分の幅に対して、例えば1.1倍以上、好ましくは1.1~2倍、より好ましくは1.2~1.5倍である。
【0064】
(8)第8の実施形態
続いて、第8の実施形態について説明する。なお、既述の実施形態と同様の構成を採用できる部分については、説明を省略する。
【0065】
本実施形態では、弾性体4の構成が工夫されている。図11は、本実施形態における弾性体4を示す模式図である。本実施形態では、弾性体4として、多孔質体が使用される。本実施形態では、電池セル2が膨張して面圧が増加した場合に、弾性体4の内部の空孔が潰れる。その結果、弾性体4の熱伝導度が大きく上昇する。空孔が存在している結果、緻密な弾性体4を使用した場合に比べて、面圧の増加前後における熱伝導度の差が大きくなる。従って、不均一な温度分布がより解消されやすくなる。
【0066】
なお、弾性体4の材質としては特に限定されない。例えば、シリコンスポンジ等を弾性体4として用いることができる。
【0067】
(9)第9の実施形態
続いて、第9の実施形態について説明する。なお、既述の実施形態と同様の構成を採用できる部分については、説明を省略する。
【0068】
本実施形態では、第8の実施形態と同様に、弾性体4の構成が工夫されている。図12は、本実施形態における弾性体4を示す模式図である。本実施形態では、弾性体4として、表面粗さが粗い部材が用いられる。具体的には、弾性体4として、算術平均粗さRaが12.5μm以上の部材が使用される。
【0069】
本実施形態では、弾性体4の表面粗さが比較的大きいから、電池セル2が膨張して面圧が増加した場合に、弾性体4と電池セル2との接触面積が大きく増加する。その結果、電池セル2と弾性体4との間の熱伝導量も、大きく増加する。弾性体4の表面が平坦である場合に比べて、面圧の増加前後における熱伝導度の差が大きくなる。従って、不均一な温度分布がより解消されやすくなる。
【0070】
なお、弾性体4の算術平均粗さRaは、12.5μm以上であればよいが、好ましくは12.5~50.0μmである。
【0071】
以上、本発明について第1~第9の実施形態について説明した。なお、これらの実施形態は互いに独立するものではなく、矛盾の無い範囲内で組み合わせて使用できることも可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 電池モジュール、2 電池セル、3 放熱板、4 弾性体、5 加圧板、6 ゴムバンド、7 タブ、8 冷却部材、9 冷媒流路、10 面圧測定機構、11 制御機構、12 ポンプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12