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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167932
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/00 20060101AFI20231116BHJP
   B23B 25/00 20060101ALN20231116BHJP
【FI】
B23Q11/00 S
B23B25/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079488
(22)【出願日】2022-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】二村 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】幸村 数善
【テーマコード(参考)】
3C045
【Fターム(参考)】
3C045HA02
(57)【要約】
【課題】ワークによる破損を防ぐことができる搬送装置を提供すること。
【解決手段】搬送装置は、工作機械におけるワークの加工位置に対して鉛直方向にて下方に配置されており、ワークの加工によって発生する切粉を機内から機外に搬送するコンベアベルトを有し、コンベアベルトは、切粉を機内から機外に搬送する搬送方向に直交する幅方向において、切粉を搬送する搬送面が水平面に対して傾斜した状態で配置される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械におけるワークの加工位置に対して鉛直方向にて下方に配置されており、前記ワークの加工によって発生する切粉を機内から機外に搬送するコンベアベルトを有し、
前記コンベアベルトは、
前記切粉を前記機内から前記機外に搬送する搬送方向に直交する幅方向において、前記切粉を搬送する搬送面が水平面に対して傾斜した状態で配置される、搬送装置。
【請求項2】
前記コンベアベルトは、前記搬送方向における前記搬送面の一部に鉛直方向に沿った最下部を備える、請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記コンベアベルトは、
前記機内側に配置された折り返し部を支持する第一回転軸が、前記第一回転軸に直交する水平軸の回りに回転されることによって前記水平面に対して傾斜した状態で配置される、請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記コンベアベルトは、
前記機外側に配置された折り返し部を支持する第二回転軸が、前記第一回転軸よりも鉛直方向にて上方に配置される、請求項3に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記コンベアベルトは、前記切粉を支持する支持板同士が複数のヒンジによって連結されたヒンジベルトである、請求項1に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記コンベアベルトの一部は、前記工作機械に設けられたクーラントタンクの内部に配置される、請求項1に記載の搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、特許文献1に開示された搬送装置が知られている。従来の搬送装置においては、カバーに収容されたコンベアベルト上を切粉搬送部とワーク搬送部とに分割する仕切り板を設けると共に、旋盤の切削領域の真下にて内部に揺動可能な振り分け板を有する案内枠を設けるようにしている。
【0003】
そして、切削加工時において、従来の搬送装置は、振り分け板を主軸側に倒すことによって開口する切粉搬送部に切粉を集め、コンベアベルトの循環走行によって後部の排出部から切粉箱に向けて切粉を排出する。又、切削加工後にワークがチャックから落とされる前には、従来の搬送装置は、振り分け板を反主軸側に倒すことによって開口するワーク搬送部に脱落したワークを載せ、コンベアベルトの循環走行によって後部の排出部からワーク収納箱に向けてワークを排出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-253906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の搬送装置においては、コンベアベルトにおいて分割されたワーク搬送部にワークを載せた場合には、ワークをワーク収納箱まで搬送することができる。しかし、従来の搬送装置においては、コンベアベルトにおいて分割された切粉搬送部にワークや工具等の脱落物が誤って脱落した場合には、排出部に向けて移動している脱落物が搬送装置の動作を阻害する可能性がある。
【0006】
この場合、正常な状態に搬送装置を復旧させるために、意図しない無駄な時間が必要になる。従って、誤って脱落物が搬送装置によって搬送される状況が生じた場合には、脱落物が搬送されないことが好ましい。
【0007】
本明細書は、ワークによる破損を防ぐことができる搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書は、工作機械におけるワークの加工位置に対して鉛直方向にて下方に配置されており、ワークの加工によって発生する切粉を機内から機外に搬送するコンベアベルトを有し、コンベアベルトは、切粉を機内から機外に搬送する搬送方向に直交する幅方向において、切粉を搬送する搬送面が水平面に対して傾斜した状態で配置される、搬送装置を開示する。
【0009】
本明細書では、出願当初の請求項5において、「請求項1に記載の搬送装置」を「請求項1-4の何れか一項に記載の搬送装置」に変更した技術的思想も開示されている。又、本明細書では、出願当初の請求項6において、「請求項1に記載の搬送装置」を「請求項1-5の何れか一項に記載の搬送装置」に変更した技術的思想も開示されている。
【0010】
これによれば、搬送装置においては、工作機械から誤ってワークや工具等を含む脱落物がコンベアベルトの搬送面に載った場合、脱落物は、コンベアベルトにおける傾斜した搬送面によって機外に向けて搬送されることなく、傾斜した搬送面上にて留まることができる。従って、脱落物が機外に向けて移動することにより、脱落物によって搬送装置の正常な動作が阻害されることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】加工システムの構成を説明するための側面図である。
図2図1の搬送装置の構成を説明するための側面図である。
図3図2のコンベアベルトの構成を説明するための上面図である。
図4図2のIV-IV断面を示す断面図である。
図5】コンベアベルトの最下部を説明するための図である。
図6】コンベアベルトの最下部を説明するための図である。
図7】第三変形例に係る搬送装置の構成を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.加工システム1の全体構成
加工システム1は、図1に示すように、ベース2に設けられた工作機械10を備える。ここで、工作機械10としては、例えば、マシニングセンタや複合加工機等、種々の工作機械を例示することができるが、本実施形態においては、工作機械10が切削加工を施す旋盤である場合を例示する。又、加工システム1は、工作機械10に切削加工前のワークWを搬入すると共に工作機械10から切削加工後のワークWを搬出する搬送ロボット20を備えている。更に、加工システム1は、工作機械10による加工に伴って発生する切粉等を機内から機外に搬出する搬送装置としてのチップコンベア30を備えている。
【0013】
ここで、以下の説明においては、例えば、図1に示すように、加工システム1に関する「鉛直方向」、「水平方向」及び「前後方向」の各々を、「X軸方向」、「Y軸方向」、及び、「Z軸方向」として扱うこととする。特に、以下の説明において、チップコンベア30に関する「鉛直方向」、「水平方向」及び「前後方向」については、図1に示すチップコンベア30(工作機械10)の正面側(Z軸方向にて前側であって図1において左側)から見た場合における「鉛直方向」、「水平方向」及び「前後方向」として扱うこととする。
【0014】
1-1.工作機械10
本実施形態において、工作機械10は、加工の対象物であるワークWを回転させて切削加工を施す旋盤である。このため、工作機械10は、可動ヘッド11、主軸台12、刃物台13、刃物台移動装置14、加工室15、走行室16、クーラント供給装置17、エアブロー装置18、及び、制御装置19を有している。
【0015】
可動ヘッド11は、複数の車輪11aを介してベース2に設けられたレール(図示省略)上をZ軸方向(前後方向)に沿って移動する。主軸台12は、ワークWを回転可能に保持するものである。主軸台12は、Z軸方向に沿って水平に配置された主軸12aを回転可能に支持する。主軸12aの先端部には、ワークWを把持するチャック12bが設けられる。主軸12aは、回転伝達機構12cを介してサーボモータ12dによって回転駆動される。
【0016】
刃物台13は、切削工具13aを保持し、切削工具13aに送り運動を与える装置である。刃物台13は、所謂、タレット型の刃物台であり、ワークWを切削する複数の切削工具13aが装着される工具保持部13bを有している。又、刃物台13は、工具保持部13bを回転可能に支持すると共に、切削工具13aによる所定の切削位置(後述する加工位置C)に位置決め固定可能である回転駆動部13cを有している。
【0017】
刃物台移動装置14は、刃物台13ひいては切削工具13aをZ軸方向(前後方向)及びZ軸方向に直交するX軸方向(上下方向)に沿って移動させる装置である。刃物台移動装置14は、刃物台13をZ軸方向に沿って移動させるZ軸駆動装置14aと、刃物台13をX軸方向に沿って移動させるX軸駆動装置14bと、を有している。
【0018】
Z軸駆動装置14aは、可動ヘッド11に設けられたコラムに対してZ軸方向に沿って摺動可能に取り付けられたZ軸スライダ14a1と、Z軸スライダ14a1を移動させるためのサーボモータ14a2とを有している。X軸駆動装置14bは、Z軸スライダ14a1に対してX軸方向に沿って摺動可能に取り付けられたX軸スライダ14b1と、X軸スライダ14b1を移動させるためのサーボモータ14a2とを有している。
【0019】
加工室15は、切削工具13aがワークWに切削加工を施す加工位置Cを含む空間であり、チャック12b(主軸12aの一部)、刃物台13(切削工具13a、工具保持部13b及び回転駆動部13c)を収容する。走行室16は、加工室15の入出口を含み、全面パネル3によって区画された空間である。走行室16の内部において、搬送ロボット20は、Y軸方向に沿って走行して切削加工前又は切削加工後のワークWを搬送する。
【0020】
クーラント供給装置17は、切削工具13aによるワークWの切削点を含む加工位置Cに清掃及び冷却用のクーラント液を供給する。このため、クーラント供給装置17は、クーラントタンク17a、ポンプ17b及びクーラント配管17cを備える。
【0021】
クーラントタンク17aは、Z軸方向にて、工作機械10の前方から後方に向けて配置されている。具体的に、クーラントタンク17aの前方側は、図1に示すように、X軸方向にて加工位置Cを含む加工室15の下方に配置されている。
【0022】
そして、クーラントタンク17aは、加工室15と連通する連通路17a1を介して切削加工に伴って発生する切粉を加工室15(機内)からクーラント液と共に回収し、切粉等を除去したクーラント液を貯留する。ここで、クーラントタンク17aの内部には、搬送装置としてのチップコンベア30の一部が配置され、後述するように、クーラントタンク17aに回収された切粉はチップコンベア30によって機外に搬出されて切粉回収箱Dに回収される。
【0023】
ポンプ17bは、クーラントタンク17aからクーラント液を汲み上げてクーラント配管17cに吐出する。クーラント配管17cは、加工室15まで延びており、切削工具13a及び加工位置C(切削点)にクーラント液を吹き付けて供給する。
【0024】
エアブロー装置18は、切削加工前又は切削加工中の切削工具13a及びワークWに正圧エアを吹き付ける。このため、エアブロー装置18は、例えば、工場エア配管(図示省略)に接続されて加工室15まで延びており、図示省略の切替弁が開状態のときに切削工具13a及び加工位置C(切削点)に正圧エアを吹き付けて供給する。
【0025】
制御装置19は、CPU、ROM、RAM、各種インターフェース(何れも図示省略)を有するコンピュータ装置を主要構成部品とするものである。制御装置19は、回転駆動部13cや刃物台移動装置14、クーラント供給装置17、搬送ロボット20、チップコンベア30等の作動を制御する。
【0026】
2.チップコンベア30の概要
本実施形態のチップコンベア30は、図2に示すように、工作機械10におけるワークWの加工位置Cに対してX軸方向にて下方に配置されている。そして、チップコンベア30は、ワークWの加工によって発生する切粉を機内である加工室15から機外である切粉回収箱Dに搬送するコンベアベルトとしてのヒンジベルト31を有している。
【0027】
ここで、チップコンベア30の一部は、クーラントタンク17aの内部に配置されており、ヒンジベルト31が加工室15に対して下方に配置されている。このため、チップコンベア30においては、加工室15から脱落したワークWや切削工具13a等の脱落物が連通路17a1を介してヒンジベルト31にまで到達する場合がある。
【0028】
そして、工作機械10から脱落した脱落物がヒンジベルト31まで到達した場合には、ヒンジベルト31は、循環走行することにより、脱落物を切粉と共に切粉回収箱Dに向けて搬送することができる。ところが、ヒンジベルト31が循環走行して切粉と共に脱落物を切粉回収箱Dに向けて搬送してしまうと、脱落物が後述するカバー37と衝突してカバー37を破損したり、脱落物がヒンジベルト31とカバー37との間に引っ掛かったりして、チップコンベア30の正常な動作が阻害される可能性がある。
【0029】
そして、チップコンベア30の正常な動作が阻害された場合には、チップコンベア30を停止させざるを得ない状況が生じ得る。従って、意図せず工作機械10から切粉以外の脱落物がチップコンベア30まで到達した場合には、切粉を回収するためにヒンジベルト31を循環走行させつつも、脱落物を移動させない(搬送しない)ことにより、チップコンベア30を継続して正常に動作させることができる。
【0030】
そこで、本実施形態のチップコンベア30においては、ヒンジベルト31は、切粉を加工室15から切粉回収箱Dに搬送する搬送方向Hに直交する幅方向即ちY軸方向において、切粉を搬送する搬送面31aがY軸方向及びZ軸方向を含む水平面Snに対して傾斜した状態で配置される。これにより、仮に、ワークWや切削工具13a等の脱落物が加工室15から脱落して搬送面31aに到達した場合には、切粉よりも重い脱落物は、優先的にX軸方向にて搬送面31aにおける低い位置に移動することができる。
【0031】
そして、ヒンジベルト31が循環走行していても、切粉よりも重い脱落物は、移動した先の低い位置にて留まるようになる。つまり、搬送面31aを水平面Shに対して傾斜した状態で配置することにより、チップコンベア30は、脱落物を搬送面31aの低い位置から移動させることなく、切粉を回収するためにヒンジベルト31の循環走行を正常に継続することができる。尚、本実施形態においては、切粉よりも重い脱落物がワークWである場合を例示して説明する。
【0032】
2-1.チップコンベア30の構成の詳細
上述したように、チップコンベア30は、コンベアベルトとしてのヒンジベルト31を備えている。又、チップコンベア30は、サイドチェーン32と、第一回転軸としての従動スプロケット33と、第二回転軸としての駆動スプロケット34と、仕切板35と、サイドウィング36と、を備える。更に、チップコンベア30は、ヒンジベルト31、サイドチェーン32、従動スプロケット33、駆動スプロケット34、仕切板35、及び、サイドウィング36を収容するカバー37を備えている。
【0033】
ヒンジベルト31は、図2に示すように、無端環状に形成されており、一部がクーラントタンク17aの内部に設けられた状態で循環走行する。ヒンジベルト31は、図3に示すように、切粉を支持する支持板であるヒンジプレート311同士が連結されて形成される。具体的に、ヒンジベルト31は、ヒンジプレート311同士が一対のローラチェーンからなるサイドチェーン32の間で、連結部である複数のヒンジパイプ312に挿入されたベルトピン313によって蝶番(ヒンジ)方式で連結されて形成されている。尚、ヒンジパイプ312は、ヒンジベルト31の表裏両面に突出する出っ張りになる。
【0034】
本実施形態において、ヒンジベルト31は、図2に示すように、X軸方向にて上側が切粉を載せて切粉回収箱Dに切粉を搬送する搬送面31aとなり、X軸方向にて下側が加工室15の下方に向けて戻る戻り面31bとなる。又、本実施形態において、ヒンジベルト31は、図2に示すように、従動スプロケット33によって支持される折り返し部31cから搬送面31aの搬送方向Hに沿って徐々にX軸方向にて上方に向けて傾斜するように配置される。即ち、ヒンジベルト31の全体において、折り返し部31cがX軸方向にて低い位置に配置される。
【0035】
尚、本実施形態においては図示を省略するが、ヒンジベルト31の外周面に、例えば、数個置きにクリート(横桟)を設けることもできる。クリートを設けることにより、ヒンジベルト31が切粉を搬送する際に、クーラントタンク17a内において補足した切粉を支えて機外に搬送することができる。
【0036】
サイドチェーン32は、図3に示すように、リングプレート321とローラ322とからなる。ローラ322は、ベルトピン313に嵌入されている。サイドチェーン32は、従動スプロケット33及び駆動スプロケット34に架け渡されると共に、図4に示すように、案内レール38によって案内されるようになっている。
【0037】
従動スプロケット33は、クーラントタンク17aの連通路17a1側、即ち、工作機械10の機内側に配置されている。従動スプロケット33は、図4に示すように、サイドチェーン32に歯合し、回転軸Ltの回りに回転してヒンジベルト31の機内側の折り返し部31cを支持するものである。従動スプロケット33は、回転軸Ltに直交するZ軸方向、即ち、水平軸の回りにおいて、Z軸方向及びY軸方向(搬送方向Hに直交する幅方向に対応)を含む水平面Shに対して角度θだけ回転されて配置される。これにより、従動スプロケット33は、水平面Shに対して角度θだけ傾斜した状態で配置される。
【0038】
従って、従動スプロケット33によって支持されるヒンジベルト31は、少なくとも、従動スプロケット33の近傍における搬送面31aが水平面Shに対して角度θだけ傾斜した状態で配置される。ここで、本実施形態において、ヒンジベルト31は、図2に示すように、従動スプロケット33によって支持される折り返し部31cから搬送方向Hに沿って離間した中間位置31dにて、搬送面31aが水平面Shと平行となる。即ち、ヒンジベルト31は、搬送方向Hに沿った折り返し部31cから中間位置31dまでの間の搬送面31aが水平面Shに対して捩れた状態で配置される。
【0039】
駆動スプロケット34は、図2に示すように、切粉を回収する切粉回収箱D側、即ち、工作機械10の機外側に配置され、図示を省略する駆動源(例えば、電動モータ)及び減速機構等と連結されている。駆動スプロケット34は、サイドチェーン32に歯合して、ヒンジベルト31の機外側の折り返し部31eを支持し、ヒンジベルト31を搬送方向Hに沿って移動させるものである。ここで、駆動スプロケット34は、従動スプロケット33よりもX軸方向にて上方に配置される。従って、ヒンジベルト31は、中間位置31dと折り返し部31eとの間でX軸方向にて上方に立ち上がるように配置される。
【0040】
仕切板35は、循環走行するヒンジベルト31の搬送面31aと戻り面31bとの間に配置される。サイドウィング36は、図4に示すように、ヒンジプレート311の各々の幅方向における両側端に固定される。サイドウィング36は、隣接するサイドウィング36同士が重なり合って、ヒンジベルト31の従動スプロケット33による折り返し部31cで反転するように屈曲走行しても隙間が空かないようになっている。
【0041】
カバー37は、図2に示すように、クーラントタンク17aの連通路17a1を介してクーラント液と共に回収される切粉等を受け入れる開口部371と、回収した切粉を切粉回収箱Dに排出する排出部372とを有する。又、カバー37は、ヒンジベルト31を循環走行可能に収容する。このため、カバー37は、水平面Shに対して角度θだけ傾斜した状態で配置される従動スプロケット33を収容すると共に、従動スプロケット33よりもX軸方向にて上方となるように駆動スプロケット34を収容する。
【0042】
2-2.チップコンベア30の動作
次に、チップコンベア30の動作を説明する。チップコンベア30は、駆動スプロケット34の駆動により、ヒンジベルト31が搬送方向H(本例においては、図2において時計回り)に循環走行する。ここで、ヒンジベルト31は、一部、より詳しくは、従動スプロケット33によって支持されている機内側の折り返し部31cを含む部分がクーラントタンク17aの内部に配置されている。このため、ヒンジベルト31は、クーラントタンク17aの内部に貯留されているクーラント液を撹拌しながら循環走行する。
【0043】
この状態において、工作機械10による切削加工が行われると、切削により発生した切粉を含むクーラント液が連通路17a1を介してクーラントタンク17aの内部に進入する。これにより、切粉を含むクーラント液は、開口部371を介して、チップコンベア30の内部に進入する。
【0044】
チップコンベア30において、クーラント液に含まれる大きな切粉は、ヒンジベルト31のヒンジプレート311の搬送面31aに載ったり搬送面31aに付着したりする。これにより、切粉は、ヒンジベルト31が搬送方向Hに移動することにより、駆動スプロケット34によって支持された折り返し部31eまで搬送される。そして、搬送された切粉は、排出部372から自由落下して、切粉回収箱Dによって回収される。
【0045】
又、チップコンベア30において、クーラント液に含まれる小さな(細かな)切粉は、例えば、ヒンジベルト31の循環走行に伴うクーラント液の搬送方向Hに沿った流れによってヒンジベルト31と共に移動し、ヒンジベルト31の立ち上がりに伴ってヒンジプレート311に補足される。そして、小さい切粉は、折り返し部31eまで搬送され、その後、排出部372から自由落下して、切粉回収箱Dによって回収される。
【0046】
尚、小さい切粉は、排出部372から自由落下しない場合、戻り面31bに付着した状態でクーラントタンク17aに戻る。この場合、小さい切粉が貯留されているクーラント液に混合した状態では、図示しないフィルタによる濾過によって小さい切粉を分離回収することができる。或いは、小さい切粉がヒンジプレート311上にてある程度の大きさ及び重さになるまで凝集した後には、排出部372から自由落下するため、切粉回収箱Dに回収することができる。
【0047】
ところで、工作機械10においては、搬送ロボット20が切削加工前のワークWを加工室15の内部のチャック12bに対して搬入する。又、工作機械10においては、搬送ロボット20が切削加工後のワークWをチャック12bから加工室15の外部に搬出する。この場合、例えば、ワークWの段替えや、ワークWの素材変更、搬送ロボット20の動作位置のずれ等が生じると、搬送ロボット20による着脱ミスや、チャック12bによるチャックミスが生じやすくなる。そして、着脱ミスやチャックミスが生じた場合、切粉よりも重いワークWが加工室15の内部にて脱落し、連通路17a1を介して、クーラントタンク17a内に配置したチップコンベア30に到達する場合がある。この場合、チップコンベア30の動作停止を回避するためには、上述したように、ワークWを移動させないことが肝要となる。
【0048】
チップコンベア30は、ワークWが誤って進入した場合であっても、ヒンジベルト31の循環走行に伴ってワークWを排出部372に向けて搬送することを防止できる。以下、この点について、詳細に説明する。
【0049】
上述したように、チップコンベア30においては、従動スプロケット33側、即ち、機内側の折り返し部31cが低い位置に配置される。そして、折り返し部31cを支持している従動スプロケット33は、水平面Shに対して角度θだけ回転されて配置される。これにより、図5及び図6に示すように、ヒンジベルト31においては、折り返し部31cにてX軸方向にて水平面Shよりも下方に位置する側が最下部Pとなる。
【0050】
最下部Pが形成されている状態では、例えば、搬送ロボット20によるワークWの着脱ミスが生じてワークWが連通路17a1を介してクーラントタンク17aに脱落した場合、ワークWは、クーラントタンク17aの内部に配置された開口部371からヒンジベルト31の搬送面31aに到達する。到達したワークWは、搬送面31aの傾斜に沿って、図5及び図6に示すように、最下部Pまで移動する。最下部Pは、ヒンジベルト31の搬送面31aにおいて最も低い位置である。このため、移動したワークWは、最下部Pに安定して留まるようになる。
【0051】
ところで、ヒンジベルト31の搬送面31aは、駆動スプロケット34による駆動により、搬送方向Hに沿って循環走行している。このため、最下部Pに留まっているワークWも、搬送面31aとの摩擦や突出したヒンジパイプ312との衝突等によって、切粉と共に搬送方向Hに沿って搬送されようとする。
【0052】
しかし、最下部Pに留まっているワークWの重量は、切粉の重量に比べて極めて大きい。このため、最下部Pに留まっているワークWには重力に起因する慣性が作用し、ワークWを傾斜に抗して移動させる際には慣性よりも大きな運動量が必要となる。又、少なくとも最下部Pを含む折り返し部31cはクーラント液に浸漬されているため、最下部Pに留まっているワークWは、クーラント液中に存在している。このため、ワークWを搬送する際には、ワークWの移動に対するクーラント液の抵抗も作用する。
【0053】
従って、最下部Pに留まっているワークWは、慣性及び抵抗が作用するため、ヒンジベルト31の循環走行によって移動させることが難しい状態になる。即ち、チップコンベア30の搬送面31aまで到達し、一旦、最下部Pにまで移動したワークWは、作業者が人為的にワークWを取り出すまで、最下部Pに留まり続ける可能性が極めて高い。これにより、ワークWが搬送方向Hに沿って移動することを防止し、ワークWとカバー37との衝突や、ヒンジベルト31の搬送面31aとカバー37との間にワークWが引っ掛かることが生じることを防止できる。
【0054】
以上の説明からも理解できるように、搬送装置としてのチップコンベア30は、工作機械10におけるワークWの加工位置Cに対して鉛直方向にて下方に配置されており、ワークWの加工によって発生する切粉を機内から機外に搬送するコンベアベルトとしてのヒンジベルト31を有し、ヒンジベルト31は、切粉を機内から機外に搬送する搬送方向Hに直交する幅方向において、切粉を搬送する搬送面31aが水平面Shに対して傾斜した状態で配置される。
【0055】
これによれば、チップコンベア30においては、誤って工作機械10から脱落したワークW(或いは、切削工具13a等の脱落物)がヒンジベルト31の搬送面31aに載った場合、ワークWや切削工具13a等は、ヒンジベルト31における傾斜した搬送面31aによって機外に向けて搬送されることなく、傾斜した搬送面31a上にて留まることができる。従って、脱落したワークW等が機外に向けて移動することにより、チップコンベア30の正常な動作が阻害されることを防ぐことができる。その結果、チップコンベア30においては、正常な状態に復旧させるための時間が不要になり、継続してチップコンベア30を正常に作動させることができるため、工作機械10による生産性の悪化を防止することもできる。
【0056】
又、チップコンベア30は、搬送面31aを水平面Shに対して傾けることのみで、誤って工作機械10から脱落したワークW(或いは、切削工具13a等の脱落物)を搬送することを防止できる。従って、搬送装置であるチップコンベア30に別途部品、例えば、チップコンベア30の搬送面31aへのワークW等の脱落物の進入を防止するネットや柵等を設ける必要がなく、簡素且つ安価にチップコンベア30が破損することを防止することができる。
【0057】
3.変形例
3-1.第一変形例
上述した実施形態においては、ヒンジベルト31の従動スプロケット33によって支持される折り返し部31cが水平面Shに対して角度θだけ回転され、ヒンジベルト31の中間位置31dにおいて搬送面31aが水平面Shと平行となるように構成した。即ち、上述した実施形態におけるヒンジベルト31は、折り返し部31cから中間位置31dまでの間がZ軸方向に沿った軸線を中心として角度θだけ捩れるように構成した。これに代えて、例えば、折り返し部31cから中間位置31dまでの区間において、搬送面31aを水平面Shに対して角度θだけ傾いた状態(即ち、捩れていない状態)で配置することも可能である。
【0058】
この場合、折り返し部31cから中間位置31dまでの区間において、水平面ShよりもX軸方向にて下方に位置する側の端部の全体が最下部Pに相当する。これにより、例えば、複数のワークW(或いは、切削工具13a等の脱落物)が誤って脱落した場合であっても、複数のワークW等が搬送方向Hに延在する最下部Pに留まり続ける。従って、第一変形例の場合においても、上述した実施形態と同様の効果が得られる。
【0059】
3-2.第二変形例
上述した実施形態及び第一変形例においては、ヒンジベルト31の搬送面31aが搬送方向Hに沿ってX軸方向にて上方に向けて傾くように配置する、即ち、従動スプロケット33によって支持される折り返し部31cが低くなるように傾斜して配置した。しかし、ヒンジベルト31の配置については、例えば、折り返し部31cと中間位置31dとが水平面Shに対して平行となる、即ち、搬送面31aが搬送方向Hに沿って水平となるように(即ち、傾斜することなく)配置することも可能である。
【0060】
第二変形例の場合においても、ヒンジベルト31の従動スプロケット33によって支持される折り返し部31cが水平面Shに対して角度θだけ回転されることにより、折り返し部31cの水平面Shに対して下方となる側が最下部Pとなる。従って、第二変形例の場合においても、脱落したワークW(或いは、切削工具13a等の脱落物)は最下部Pに留まり続けるため、上述した実施形態と同様の効果が得られる。
【0061】
3-3.第三変形例
上述した実施形態、第一変形例及び第二変形例においては、搬送装置としてのチップコンベア30は、コンベアベルトとして、金属製のヒンジベルト31を用いるようにした。しかしながら、搬送装置は、図7に示すように、必要に応じて、コンベアベルトとして、ゴム製のゴムベルト41を用いることも可能である。
【0062】
この場合、ゴムベルト41は、機内(加工室15)側の折り返し部が、上述した従動スプロケット33に代えて、水平面Shに対して角度θだけ傾いた回転軸Ltを有する従動ローラ42によって支持される。又、この場合、上述したサイドウィング36に代えて、ゴムベルト41の幅方向における両端部に接するように一対の側壁43が設けられる。尚、側壁43は、ゴムベルト41と共に移動することなく、例えば、クーラントタンク17aの内部等に固定される。
【0063】
第三変形例の場合においても、搬送装置は、水平面ShよりもX軸方向にて下方に位置する側のゴムベルト41の端部にて最下部Pを有する。これにより、ワークW(或いは、切削工具13a等の脱落物)が誤って脱落した場合であっても、ワークW等がゴムベルト41上の最下部Pに留まり続ける。従って、第三変形例の場合においても、ワークW等を最下部Pに留めた状態で、ゴムベルト41の循環走行によって切粉を機内(加工室15)から機外(切粉回収箱D)に搬送することができるため、上述した実施形態、第一変形例及び第二変形例と同様の効果が得られる。
【0064】
3-4.その他の変形例
上述した実施形態及び各変形例においては、チップコンベア30の一部をクーラントタンク17aの内部に配置するようにした。しかしながら、チップコンベア30を、加工位置Cの下方においてクーラントタンク17aとは別に配置することも勿論可能である。この場合においても、チップコンベア30は、ヒンジベルト31の循環走行により、切粉を切粉回収箱Dに搬送することができるため、上述した実施形態及び各変形例と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0065】
10…工作機械、12a…主軸、12b…チャック、13…刃物台、13a…切削工具、15…加工室(機内)、17…クーラント供給装置、17a…クーラントタンク、17a1…連通路、20…搬送ロボット、30…チップコンベア(搬送装置)、31…ヒンジベルト31(コンベアベルト)、31a…搬送面、31b…戻り面、31c…折り返し部、31d…中間位置、31e…折り返し部、311…ヒンジプレート、312…ヒンジパイプ、313…ベルトピン、32…サイドチェーン、33…従動スプロケット(第一回転軸)、34…駆動スプロケット(第二回転軸)、35…仕切板、36…サイドウィング、37…カバー、371…開口部、372…排出部、38…案内レール、41…ゴムベルト(コンベアベルト)、42…従動ローラ(第一回転軸)、43…側壁、W…ワーク、C…加工位置、H…搬送方向、Lt…回転軸(第一回転軸)、Sh…水平面、P…最下部、D…切粉回収箱(機外)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7