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特開2023-167933ダクト構造及びそれを備えた空気調和装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167933
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】ダクト構造及びそれを備えた空気調和装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 1/02 20190101AFI20231116BHJP
   F24F 13/02 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
F24F1/02 441B
F24F13/02 F
F24F13/02 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079489
(22)【出願日】2022-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】504027657
【氏名又は名称】株式会社イーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100165423
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 雅久
(72)【発明者】
【氏名】黒川 和哉
【テーマコード(参考)】
3L080
【Fターム(参考)】
3L080AA08
3L080AB07
3L080AC03
3L080AD02
(57)【要約】
【課題】取り付け取り外しが容易でエネルギー損失の少ない高効率な空調運転を可能とするダクト構造及びそれを備えた移動式の空気調和装置を提供する。
【解決手段】移動式の空気調和装置1に利用される排気用のダクト40を有し、ダクト40には、空気調和装置1に着脱自在に接続され空気調和装置1からの空気が流入する入口開口41と、入口開口41から流入した空気を上方に吹き出す出口開口42と、が形成されており、ダクト40は、空調対象空間を囲む壁面53に着脱自在に固定される。これにより、大がかりな改築工事を行うことなく、冷風と温風の混合が抑制される高効率な空調運転が可能となる。また、ダクト40は、換気扇54より下方の壁面53に着脱自在に固定されても良い。これにより、容易に取り付けられるダクト40と既設の換気扇54を利用して、空気調和に不要な空気を空調対象空間の外部に排出することができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動式の空気調和装置に利用される排気用のダクトを有し、
前記ダクトには、前記空気調和装置に着脱自在に接続され前記空気調和装置からの空気が流入する入口開口と、前記入口開口から流入した空気を吹き出す出口開口と、が形成されており、
前記出口開口は、前記ダクトの上面に形成され、
前記ダクトは、空調対象空間を囲む壁面に着脱自在に固定されることを特徴とするダクト構造。
【請求項2】
前記ダクトは、前記空調対象空間の空気を外部に排出する換気扇が設けられている壁の前記換気扇より下方の前記壁面に着脱自在に固定されることを特徴とする請求項1に記載のダクト構造。
【請求項3】
前記入口開口は、前記ダクトの前面下部に形成され、
前記ダクトは、背面が前記壁面に着脱自在に固定されることを特徴とする請求項2に記載のダクト構造。
【請求項4】
前記ダクトは、側面視平行四辺形状または台形状に形成されていることを特徴とする請求項3に記載のダクト構造。
【請求項5】
前記ダクトは、面ファスナまたは磁石によって前記壁面に固定されることを特徴とする請求項1に記載のダクト構造。
【請求項6】
前記空気調和装置は、利用側熱交換器及び利用側送風ファンが設けられた利用側ユニットと、熱源側熱交換器及び熱源側送風ファンが設けられた熱源側ユニットと、前記利用側ユニット及び前記熱源側ユニットが載置された架台と、を具備し、
前記入口開口は、前記熱源側ユニットの吹出口に接続されることを特徴とする請求項1に記載のダクト構造。
【請求項7】
前記ダクトは、前記入口開口の内周面が面ファスナまたは磁石によって、前記吹出口の周囲に設けられたダクト支持部の外周面に接続されることを特徴とする請求項6に記載のダクト構造。
【請求項8】
前記ダクトは、合成樹脂製のシート材または合成繊維から成る織布若しくは不織布から形成されていることを特徴とする請求項1に記載のダクト構造。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8の何れか1項に記載のダクト構造が設けられることを特徴とする空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和装置のダクト構造及びそのダクト構造が設けられた空気調和装置に関し、特に、利用側ユニットと熱源側ユニットが一体的に設けられた移動可能な空気調和装置のダクト構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷凍サイクルを利用する空気調和装置であって、移動自在な一つの架台上に利用側ユニットと熱源側ユニットが設けられた移動式の空気調和装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、室内熱交換器と、該室内熱交換器を流れる空気を室内に送り出す室内送風ファンと、を有する室内ユニットと、室内熱交換器に冷媒循環可能に接続された室外熱交換器と、該室外熱交換器を流れる空気を送り出す室外送風ファンと、を有する室外ユニットと、移動可能に車輪を有し室内熱交換器の吸込口と室外熱交換器の吸込口とが対向するように室内ユニットと室外ユニットが載置された架台と、を具備する空気調和機が開示されている。
【0004】
この種の空気調和装置は、通常の空気調和機を設置することが難しい大空間、例えば、工場、作業場、物流倉庫、体育館等において、作業者等の近傍に冷風や温風を送って作業空間を効率良く冷房または暖房するスポット空調等に利用される。
【0005】
また例えば、特許文献2には、この種の空気調和装置に接続される風導管接続構造であって、室外に載置された空気調和機で冷却または加熱された空気を室内に導く給気ダクトと、室内の空気を空気調和機に導く還気ダクトと、給気ダクトが接続される給気口と還気ダクトが接続される還気口とが形成された風導管接続板と、を具備し、風導管接続板が、室内につながる開口部に取り外し自在に載置される風導管接続構造が開示されている。
【0006】
このような構成により、室外に載置された空気調和機によって冷却または加熱された空気を、給気ダクト及び還気ダクトを介して効率良く室内に循環させることができる。よって、屋外に利用側ユニットと熱源側ユニットが一体的に置かれた移送式の空気調和装置であっても、室内ユニットが室内に設置され室外ユニットが屋外に設置された一般的な空気調和機のように、高効率な循環冷房または循環暖房を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2021-11984号公報
【特許文献2】特開2021-173444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記した従来技術の移動式の空気調和装置では、既設の空調対象空間への設置を容易にすると共に、冷房または暖房の効率を更に向上させるために改善すべき点があった。
【0009】
具体的には、特許文献1に開示された空気調和機は、例えば工場等の大空間における冷房運転において、利用側ユニットとしての室内ユニットから利用者等に向かって冷風を強力に吹き付ける優れた性能を有する。しかしながら、室内ユニットと一体的に設けられた熱源側ユニットとしての室外ユニットからは、凝縮器となる室外熱交換器で冷媒に加熱された温風が室内に吹き出されることになる。
【0010】
そのため、効率良く冷房運転を行うためには、室外ユニットから吹き出される温風を冷房対象から離れた室外等に送り出す使い方が求められる。しかしながら、空気調和装置の排気を空調対象空間の外部に送り出すことは容易ではない。
【0011】
具体的には、空調対象空間を構成する建築物等には、空気調和装置からの排気を室外等に排出するための排気口や空調ダクト等が設けられていないことがある。空調ダクト等を備えていない空調対象空間で移動式の空気調和装置の排気を外部に排出するためには、空調対象空間を構成する建築物等に、新たに排気口や排気用のダクト、ファン等を設ける必要がある。
【0012】
しかしながら、既設の建築物等に新たに空調ダクト等を設けるための改築等は容易ではない。また例えば、賃貸の物流倉庫等が空調対象空間である場合には、壁面、躯体等の改造、変更等が認められないこともある。そのため、既設の壁等を変形することなく高効率な空調運転を可能とする構成が求められていた。
【0013】
また、特許文献2に開示された風導管接続構造を採用することにより、利用側ユニットと熱源側ユニットが一体的に設けられた空気調和装置であっても、室内ユニットが屋外に設置される一般的な空気調和機のように効率的な空調運転を行うことができる。
【0014】
即ち、室外ユニットの室外熱交換器で冷媒と熱交換した空気を室内に入れることなく、室内ユニットの室内熱交換器で冷却または加熱された空気を給気ダクト及び還気ダクトを介して空調対象空間に循環させて効率的な空調運転を行うことができる。
【0015】
しかしながら、このような風導管接続構造は、給気ダクト、還気ダクト、風導管接続板等の部材が必要であると共に、これら部材の組み立て作業が必要である。また、風導管接続板等を空調対象空間の開口部等に取り付ける作業及び取り外す作業等も必要である。よって、部品数が少なく移動や設置等の作業を更に容易にできる構成が求められていた。
【0016】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、取り付け取り外しが容易で、移動式の空気調和装置で発生する冷房運転または暖房運転の排熱空気を効率良く送り出すことができ、エネルギー損失の少ない高効率な空調運転を可能とするダクト構造及びそのダクト構造を備えた空気調和装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明のダクト構造は、移動式の空気調和装置に利用される排気用のダクトを有し、前記ダクトには、前記空気調和装置に着脱自在に接続され前記空気調和装置からの空気が流入する入口開口と、前記入口開口から流入した空気を吹き出す出口開口と、が形成されており、前記出口開口は、前記ダクトの上面に形成され、前記ダクトは、空調対象空間を囲む壁面に着脱自在に固定されることを特徴とする。
また、本発明の空気調和装置は、前記ダクト構造を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明のダクト構造は、移動式の空気調和装置に利用される排気用のダクトを有し、前記ダクトには、前記空気調和装置に着脱自在に接続され前記空気調和装置からの空気が流入する入口開口と、前記入口開口から流入した空気を吹き出す出口開口と、が形成されており、前記出口開口は、前記ダクトの上面に形成され、前記ダクトは、空調対象空間を囲む壁面に着脱自在に固定される。このような構成により、大がかりな改築工事を行うことなく、取り付け取り外しが可能なダクトを既設の壁面に固定し、空気調和装置から吹き出される空気調和に不要な空気を空調対象から離れた空調対象空間の上方に送り出すことができる。よって、空気調和装置から吹き出される冷風と温風の混合が抑制される高効率な空調運転が可能となる。
【0019】
また、本発明のダクト構造によれば、前記ダクトは、前記空調対象空間の空気を外部に排出する換気扇が設けられている壁の前記換気扇より下方の前記壁面に着脱自在に固定されても良い。これにより、空調対象空間を構成する建築物の壁等に新たな排気口等を形成する改築工事を行うことなく、容易に取り付けられるダクトと既設の換気扇を利用して、空気調和装置から吹き出される空気調和に不要な空気を空調対象空間の外部に排出することができる。
【0020】
具体的には、空調対象空間の内部に配設された移動式の空気調和装置が冷房運転に利用される場合、凝縮する冷媒からの排熱を含む高温の空気は、多くが空調対象の近くに戻されることなく、排気ダクト及び換気扇を介して空調対象空間の外部に排出される。よって、高効率な冷房運転を行うことができる。
【0021】
また、空調対象空間内の空気調和装置が暖房運転に利用される場合には、蒸発する冷媒に熱を奪われた低温の空気は、多くが空調対象の近くに戻されることなく、排気ダクト及び換気扇を介して空調対象空間の外部に排出される。よって、高効率な暖房運転を行うことができる。
【0022】
また、本発明のダクト構造によれば、前記入口開口は、前記ダクトの前面下部に形成され、前記ダクトは、背面が前記壁面に着脱自在に固定されても良い。これにより、空調対象空間を形成する壁面にダクトの背面を固定し、ダクトの前面下部に空気調和装置の空調運転に不要な空気を吹き出す吹出口を接続することができる。よって、冷暖房に必要な空気のみを空調対象に向けて効率良く吹き付けることができる。
【0023】
また、本発明のダクト構造によれば、前記ダクトは、側面視平行四辺形状または台形状に形成されても良い。これにより、入口開口から出口開口に向かって空気抵抗が小さく効率的に空気を流すことができる好適な風路が得られる。よって、高効率な空調運転を行うことができる。
【0024】
また、本発明のダクト構造によれば、前記ダクトは、面ファスナまたは磁石によって前記壁面に固定されても良い。これにより、ダクトの取り付け取り外しが容易であると共に、既設の壁面でダクトをしっかりと支持することができる。
【0025】
また、本発明のダクト構造によれば、前記空気調和装置は、利用側熱交換器及び利用側送風ファンが設けられた利用側ユニットと、熱源側熱交換器及び熱源側送風ファンが設けられた熱源側ユニットと、前記利用側ユニット及び前記熱源側ユニットが載置された架台と、を具備し、前記入口開口は、前記熱源側ユニットの吹出口に接続されても良い。このような構成により、空気調和装置の移動、設置及びダクトの取り付け取り外し作業を効率良く行うことができる。そして、空調対象空間の内部に配設された空気調和装置は、熱源側熱交換器から放熱された高温の排気側空気または吸熱された低温の排気側空気を、ダクト及び換気扇等を介して空調対象空間の外部に排出することができる。よって、エネルギー損失の少ない高効率な空調運転を行うことができる。
【0026】
また、本発明のダクト構造によれば、前記ダクトは、前記入口開口の内周面が面ファスナまたは磁石によって、前記吹出口の周囲に設けられたダクト支持部の外周面に接続されても良い。これにより、空気調和装置にダクトを取り付ける作業及び取り外す作業を容易に行うことができると共に、風圧でダクトが剥がされないようにダクトを強固に支持することができる。
【0027】
また、本発明のダクト構造によれば、前記ダクトは、合成樹脂製のシート材または合成繊維から成る織布若しくは不織布から形成されても良い。これにより、取り付け取り外し、搬送及び保管が容易で、且つ高性能なダクトが得られる。
【0028】
また、本発明の空気調和装置は、前記ダクト構造が設けられることを特徴とする。これにより、空気調和装置から吹き出される排気を空調対象空間の外部に効率良く排出することができ、高効率な空調運転を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施形態に係る空気調和装置の概略構成を示す側面図である。
図2】本発明の実施形態に係る空気調和装置の設置状態を示す側面図である。
図3】本発明の実施形態に係る空気調和装置の本体の概略構成を示す側面図である。
図4】本発明の実施形態に係る空気調和装置のダクトの概略構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態に係るダクト構造を備えた空気調和装置1を図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る空気調和装置1の概略構成を示す側面図である。図1に示すように、空気調和装置1は、利用側ユニット10と熱源側ユニット20が架台30の上に一体的に設けられた移動可能な強力スポットエアコンであり、熱源側ユニット20に接続されるダクト40を備えている。
【0031】
空気調和装置1は、通常のパッケージエアコン等の空気調和機を設置することが難しい大空間を冷房または暖房可能な装置であり、例えば、物流倉庫、工場、作業場、体育館等の空気調和に利用される。
【0032】
図2は、空気調和装置1の設置状態を示す側面図である。図2に示すように、空気調和装置1は、例えば、空調対象空間となる物流倉庫等の室内50において床面59上に移動自在に載置される。具体的には、空気調和装置1の本体2は、利用者の操作によって床面59上を容易に移動することができる。そして、本体2は、熱源側ユニット20の吹出口26が室外51側を向くよう、即ち吹出口26が壁52側を向くよう、壁52の前方に設置される。
【0033】
空気調和装置1は、着脱自在なダクト40を介して建物の壁面53等に接続される。詳しくは、空気調和装置1は、換気扇54が設けられている壁52に設けられ、換気扇54より下方の壁面53に着脱自在に固定される。
【0034】
換気扇54は、壁52に形成された開口に設けられ空調対象空間の空気を室外51に排出するものである。換気扇54の形態については特に限定されるものではない。例えば、換気扇54は、図示しない排気用ダクト等を介して室外51につながり室外51に空気を排出する構成でも良い。また、換気扇54は、空調対象空間の空気を室外51に排出する構成であれば、送風ファン等を有しない換気口等でも良い。
【0035】
ダクト40は、熱源側ユニット20から吹き出される冷房または暖房に不要な空気を空調対象空間の上部に排出する排気ダクトである。詳しくは、ダクト40は、熱源側ユニット20から吹き出される冷暖房に不要な空気を換気扇54の近傍に排出する排気ダクトである。ダクト40を流れた冷暖房に不要な空気は、換気扇54を介して室外51に排出されることになる。
【0036】
ダクト40は、略四角柱状の形態を成し、前面43の下部が空気調和装置1の本体2に着脱自在に接続され、背面44が空調対象空間となる物流倉庫等の壁面53に着脱自在に接続される。ダクト40の上面47は、空気が排出される出口開口42が形成されている。熱源側ユニット20の吹出口26から吹き出される空気は、ダクト40を通過して出口開口42から空調対象空間の上部に吹き出され、換気扇54に吸引されて室外51に排出される。
【0037】
図3は、空気調和装置1の本体2の概略構成を示す側面図である。図3を参照して、利用側ユニット10は、利用側の空気を冷却または加熱して供給する装置である。利用側ユニット10は、一般的なパッケージエアコンの室内機に相当する構成を有する。
【0038】
具体的には、利用側ユニット10は、金属板材等から形成された略箱状の筐体である利用側ハウジングとしてのハウジング11を有し、ハウジング11の内部に冷凍サイクルを構成する部品である利用側熱交換器12と利用側送風ファン13が設けられている。
【0039】
熱源側ユニット20は、排気側の空気に対して放熱または吸熱する装置である。熱源側ユニット20は、一般的なパッケージエアコンの室外機に相当する構成を有する。
【0040】
具体的には、熱源側ユニット20は、金属板材等から形成された略箱状の筐体である利用側ハウジングとしてのハウジング21を有し、ハウジング21の内部に冷凍サイクルを構成する部品である熱源側熱交換器22と熱源側送風ファン23が設けられている。
【0041】
利用側ユニット10の利用側熱交換器12は、冷媒配管28を介して熱源側ユニット20の熱源側熱交換器22に連結されている。詳しくは、利用側熱交換器12及び熱源側熱交換器22は、低圧の冷媒を圧縮して高圧にする図示しない圧縮機、高圧の冷媒を膨張させて低圧にする図示しない膨張弁、冷媒配管28及びその他の図示しない冷媒配管等を介して接続されており、蒸気圧縮式の冷凍サイクル回路を構成している。冷凍サイクルで用いられる冷媒は、例えば、HFC冷媒等である。
【0042】
利用側ユニット10には、空気を吸引する吸込口15と、空気を吹き出す吹出口16が形成されている。吸込口15の内側には、ハウジング11の外部から吸い込まれた空気と冷媒との間で熱交換を行う利用側熱交換器12が設けられている。これにより、例えば、冷房運転の際には、利用側熱交換器12が蒸発器となり、ハウジング11の外部から吸い込まれた空気は、利用側熱交換器12内で蒸発する冷媒によって冷却される。
【0043】
吹出口16の内側には、利用側熱交換器12と熱交換したハウジング11内の空気を外側に吹き出す利用側送風ファン13が設けられている。利用側送風ファン13は、例えば、プロペラファン等であり、図示しないモータによって回転駆動される。
【0044】
本実施形態に係る空気調和装置1では、特に強力な利用側送風ファン13が装着されている。具体的には、利用側送風ファン13は、吹出口16から風速8m/sで空気を吹き出す強力な送風能力を有している。これにより、室内50(図2参照)において直進性の強い強風を、吹出口16から遠くまで届けることができ、広い室内50を効率良く冷房または暖房することができる。
【0045】
吹出口16には、利用側送風ファン13によって送られる空気の流れ方向を調整するための風向ガイド14が設けられている。風向ガイド14は、利用側送風ファン13の外周を囲む、例えば、略円筒状の形態を成す外周部を有する。風向ガイド14の外周部に囲まれた内部は吹出口16につながる開口となっており、そこには空気の流れを調整する図示しない可変式の風向調整板が設けられても良い。
【0046】
熱源側ユニット20には、空気を吸引する吸込口25と、空気を吹き出す吹出口26が形成されている。吸込口25の内側には、外部から吸い込まれた空気と冷媒との間で熱交換を行う熱源側熱交換器22が設けられている。これにより、例えば、冷房運転の際には、熱源側熱交換器22内の冷媒は、吸込口25から流入する空気によって冷却される。換言すれば、吸込口25から吸い込まれた空気は、熱源側熱交換器22内の冷媒と熱交換して加熱される。
【0047】
吹出口26の内側には、熱源側熱交換器22と熱交換したハウジング21内の空気を外側に吹き出す熱源側送風ファン23が設けられている。熱源側送風ファン23は、例えば、プロペラファン等であり、図示しないモータによって回転駆動される。熱源側送風ファン23は、例えば、上下に2つ設けられている。
【0048】
また、吹出口26には、熱源側送風ファン23によって送られる空気の吹き出し方向を調整するための風向ガイド24が設けられても良い。風向ガイド24は、熱源側送風ファン23の外周を囲むような、例えば、略四角形状の形態を成す外枠部を有し、金属板材料や樹脂製板材料等から形成されている。風向ガイド24は、上下に分けて2つ設けられた熱源側送風ファン23に対応して、例えば、上下に一対設けられている。
【0049】
風向ガイド24の外周には、ダクト40(図2参照)を接続するためのダクト支持部として、面ファスナ27が設けられている。面ファスナ27は、例えば、雄面を有し、ダクト40の入口開口41の内周面に設けられた面ファスナ48(図4参照)に着脱自在に接合される。
【0050】
架台30は、利用側ユニット10及び熱源側ユニット20を一体的に支える台である。架台30は、例えば、山形鋼、溝形鋼、その他の鋼材等から形成されている。架台30の下部には、外周が上面視で略矩形枠状の形態を成すベース31が形成されている。熱源側ユニット20は、ベース31の上部に固定されている。
【0051】
架台30には、利用側ユニット10を設置する利用側ユニット設置台32が形成されている。利用側ユニット設置台32は、利用側ユニット10の底部を熱源側ユニット20の底部よりも高い位置で支持できるよう、ベース31の上部から上方に突出するよう形成されている。
【0052】
ベース31の上部に利用側ユニット設置台32が設けられることにより、利用側ユニット10は熱源側ユニット20よりも高い位置に固定される。これにより、利用側ユニット10の吹出口16の位置が高くなり、空調用の冷風や温風を必要とする作業空間等に対して広く効率的に空気を吹き流すことができる。
【0053】
また、利用側ユニット10が利用側ユニット設置台32の上部に設けられ、利用側ユニット10の上面部と、熱源側ユニット20の上面部とは、略同じ高さになっている。そして、利用側ユニット10の上部と熱源側ユニット20の上部とは、連結部材33によって連結固定されている。この連結部材33によって、利用側ユニット10の上部と熱源側ユニット20の上部が支持され、搬送時や使用時の振動等による空気調和装置1の変形が抑えられる。
【0054】
利用側ユニット10及び熱源側ユニット20の下方には、図示しないドレンパンが設けられても良い。ドレンパンは、利用側ユニット10の利用側熱交換器12または熱源側ユニット20の熱源側熱交換器22に付着して滴下する水分を受け止めて図示しない配水管に排水するための部材である。ドレンパンが設けられることにより、利用側熱交換器12または熱源側熱交換器22から滴下する水分を集めて好適に排水することができ、作業空間等に水分が飛散することを防止することができる。
【0055】
ベース31の下部の角部近傍には、車輪34が設けられている。車輪34は、例えば、ゴム車輪等を有するキャスタであり、一方の端辺側が所定の一方向に向かって移動可能な固定車、他方の端辺側が方向変更可能な自在車であっても良い。車輪34が設けられることにより、架台30は、利用側ユニット10及び熱源側ユニット20を一体的に支持した状態で移動可能に構成される。
【0056】
利用側ユニット10と熱源側ユニット20は、それぞれが空気を吸引する吸込口15と吸込口25を対向させるように架台30上に設けられている。即ち、利用側ユニット10と熱源側ユニット20は、利用側熱交換器12側と熱源側熱交換器22側が対向するよう配設されている。
【0057】
換言すれば、利用側ユニット10と熱源側ユニット20は、それぞれが逆方向に空気を吹き出すよう、利用側ユニット10の吹出口16と熱源側ユニット20の吹出口26とが逆方向を向くよう背中合わせに配設されている。
【0058】
上記のように、吹出口16と吹出口26が逆方向に空気を吹き出すよう、吸込口15と吸込口25を対向させて、利用側ユニット10と熱源側ユニット20が背中合わせに配設されることにより、物流倉庫や大規模工場、体育館等に対する効率的な空気調和が実現する。
【0059】
即ち、利用側ユニット10の吹出口16から、冷却または加熱された空気を空調対象の室内50に効率良く強力に吹き出すことができる。そして、利用側ユニット10の吹出口16に対して反対側を向く熱源側ユニット20の吹出口26から、空調運転に不要な空気を、ダクト40及び換気扇54(図2参照)を介して室外51(図2参照)に吐き出すことができる。
【0060】
図4は、空気調和装置1のダクト40の概略構成を示す斜視図である。図2及び図4を参照して、ダクト40は、略四角柱状の形態を成し、前面43の下部に入口開口41が形成され、上面47の略全体に出口開口42が形成されている。
【0061】
入口開口41は、空気調和装置1の熱源側ユニット20からの空気が流入する開口である。入口開口41には、熱源側ユニット20の吹出口26が着脱自在に接続される。出口開口42は、入口開口41からダクト40に流入した空気が吹き出される開口である。
【0062】
ダクト40は、合成樹脂製のシート材または合成繊維から成る織布若しくは不織布等から形成されている。これにより、取り付け取り外し、搬送及び保管が容易で高性能なダクト40が得られる。
【0063】
また、ダクト40は、わずかに通気性を有する素材から形成されても良い。これにより、例えば、暖房運転時のようにダクト40に冷風が流される場合、ダクト40表面の結露を防止することができる。
【0064】
図3及び図4を参照して、入口開口41の内周面近傍には、ダクト40を空気調和装置1に接続するための支持部材として面ファスナ48が設けられている。面ファスナ48は、例えば、内周面に雌面を有し、熱源側ユニット20に設けられた面ファスナ27の外周面に着脱自在に接合される。
【0065】
このような構成により、空気調和装置1の本体2に対してダクト40の取り付け取り外し作業を容易に効率良く行うことができる。また、空気調和装置1の本体2とダクト40は、熱源側送風ファン23から送られる空気の圧力によって外れないようにしっかりと固定される。
【0066】
図2及び図4を参照して、ダクト40の背面44近傍は、室内50を囲む壁面53にダクト40を固定するための支持部材として面ファスナ49が設けられている。詳しくは、面ファスナ49は、背面44の左右両辺部近傍に、背面44の辺部に沿って略上下方向に延在するよう左右一対設けられている。そして、壁面53には、ダクト支持部として面ファスナ55が設けられている。
【0067】
ダクト40に設けられた面ファスナ49は、例えば外周面に雌面を有し、壁面53に設けられた面ファスナ55は、例えば内周面に雄面を有する。このような構成により、ダクト40を壁面53に取り付ける作業及び取り外す作業が容易である。また、ダクト40が壁面53から剥がれることがないように、ダクト40と壁面53をしっかりと接続することができる。
【0068】
このように空気調和装置1は、空調対象空間を形成する壁面53にダクト40の背面44を固定することができ、ダクト40の前面43の下部に空調運転に不要な空気を吹き出す吹出口26を接続することができる。よって、空気調和装置1は、熱源側ユニット20の吹出口26から吹き出される冷暖房に不要な空気を室内50の上方に送り、利用側ユニット10の吹出口16から吹き出される冷暖房に必要な空気のみを空調対象に向けて効率良く吹き付けることができる。
【0069】
図2ないし図4を参照して、室内50に配設された空気調和装置1では、熱源側熱交換器22からの放熱によって高温になった排気側空気または吸熱によって低温になった排気側空気は、ダクト40を介して換気扇54の近傍に送られる。そして、ダクト40から吹き出される排気側空気は、換気扇54を介して室外51に排出される。よって、空気調和装置1は、エネルギー損失の少ない高効率な空調運転を行うことができる。
【0070】
なお、ダクト40の接続は、前述の面ファスナ27、48、49、55による接続に代えて、磁力を利用した接続方法が採用されても良い。具体的には、ダクト40の入口開口41の内周面には、面ファスナ48に代えて、ネオジムその他の磁石を含む支持部材が設けられ、熱源側ユニット20の風向ガイド24の外周面には、面ファスナ27に代えて、磁性体が設けられても良い。
【0071】
また、ダクト40の背面44の例えば左右両辺部近傍には、面ファスナ49に代えて、ネオジム等の磁石を含む支持部材が設けられ、壁面53には、面ファスナ55に代えて、磁性体が設けられても良い。また、磁石と磁性体の取り付け対象は、上記の逆でも良い。このような構成によっても、ダクト40と壁面53は外れないように強く固定されると共に、ダクト40と壁面53の接続作業は容易である。
【0072】
図2に示すように、ダクト40は、側面視略平行四辺形状に形成されている。即ちダクト40の左右両方の側面45は、それぞれ略平行四辺形状の形態を成し、底面46及び上面47は、それぞれ略長方形状であって背面44側に向かって上昇するよう傾斜している。ここで、底面46の傾斜角θは、約20から70度、好ましくは、30から60度、更に好ましくは、40度から50度である。
【0073】
このように底面46が背面44側、即ち壁面53側、に向かって上昇するよう好適な傾斜角θで傾斜していることにより、入口開口41から出口開口42に向かって空気抵抗が小さくダクト40内の空気の流れが良好になる。即ち、吹出口26から壁面53に向かって吹き出される空気は、底面46に好適にガイドされて流れの向きを変え、ダクト40内を上昇する。よって、効率の良い排気が可能となる。
【0074】
また、ダクト40の上面47も底面46と略平行に背面44側、即ち壁面53側、が高くなるよう傾斜している。出口開口42は、室内50側が低く、壁面53側が高くなるよう傾斜角θと略同等の角度で傾斜するよう形成されている。
【0075】
出口開口42がこのような形態であることにより、室内50の空気と、ダクト40の出口開口42から吹き出される空気と、を好適に合流させて換気扇54で吸引して室外51に排出することができる。よって、ダクト40が設けられた空気調和装置1による高効率な空気調和が可能となる。
【0076】
なお、ダクト40は、側面視略台形状に形成されても良い。即ちダクト40の側面45は、略台形状の形態を成し、底面46及び上面47がそれぞれ好適な傾斜角度で形成される。これにより、入口開口41からダクト40内に流入し出口開口42を経て換気扇54に吸引される空気の流れと、室内50の上部から直接的に換気扇54に吸引される空気の流れと、を好適にすることができ、高効率な空気調和運転を行うことができる。
【0077】
以上説明の如く、本実施形態に係る移動式の空気調和装置1のダクト構造は、着脱自在に接続される排気用のダクト40を有する。具体的には、ダクト40には、空気調和装置1の本体2に着脱自在に接続され熱源側ユニット20からの空気が流入する入口開口41と、入口開口41から流入した空気を上方に吹き出す出口開口42と、が形成されている。そして、ダクト40は、空調対象空間である室内50を囲む壁面53に着脱自在に固定される。
【0078】
このような構成により、大がかりな改築工事を行うことなく、容易な作業で取り付け取り外しが可能なダクト40を既設の壁面53に固定し、空気調和運転の高効率化を図ることができる。具体的には、空気調和装置1の熱源側ユニット20から吹き出される空気調和に不要な空気を空調対象から離れた室内50の上方に送り出すことができる。よって、空気調和装置1から吹き出される冷風と温風の混合が抑制される高効率な空調運転が可能となる。
【0079】
また、ダクト40は、室内50の空気を室外51に排出する換気扇54が設けられている壁52の換気扇54より下方の壁面53に着脱自在に固定されても良い。これにより、空調対象空間を構成する建築物の壁52等に新たな排気口等を形成する改築工事を行うことなく、容易に取り付けられるダクト40と既設の換気扇54を利用して、空気調和装置1から吹き出される空気調和に不要な空気を室外51に効率良く排出することができる。
【0080】
具体的には、室内50に配設された移動式の空気調和装置1が冷房運転に利用される場合、凝縮する冷媒からの排熱を含む高温の空気は、多くが空調対象の近くに戻されることなく、ダクト40及び換気扇54を介して室外51に排出される。よって、空気調和装置1は、高効率な冷房運転を行うことができる。
【0081】
また、室内50の空気調和装置1が暖房運転に利用される場合には、蒸発する冷媒に熱を奪われた低温の空気は、多くが空調対象の近くに戻されることなく、ダクト40及び換気扇54を介して室外51に排出される。よって、空気調和装置1は、高効率な暖房運転を行うことができる。
【0082】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更実施が可能である。
【符号の説明】
【0083】
1 空気調和装置
2 本体
10 利用側ユニット
11 ハウジング
12 利用側熱交換器
13 利用側送風ファン
14 風向ガイド
15 吸込口
16 吹出口
20 熱源側ユニット
21 ハウジング
22 熱源側熱交換器
23 熱源側送風ファン
24 風向ガイド
25 吸込口
26 吹出口
27 面ファスナ
28 冷媒配管
30 架台
31 ベース
32 利用側ユニット設置台
33 連結部材
34 車輪
40 ダクト
41 入口開口
42 出口開口
43 前面
44 背面
45 側面
46 底面
47 上面
48 面ファスナ
49 面ファスナ
50 室内
51 室外
52 壁
53 壁面
54 換気扇
55 面ファスナ
59 床面
θ 傾斜角
図1
図2
図3
図4