(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167936
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】手術支援システムおよび手術支援システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
A61B 34/35 20160101AFI20231116BHJP
A61B 34/20 20160101ALI20231116BHJP
【FI】
A61B34/35
A61B34/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079492
(22)【出願日】2022-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】514063179
【氏名又は名称】株式会社メディカロイド
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【弁理士】
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】一居 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】東條 剛史
(57)【要約】
【課題】操作者が状況に応じたロボットの姿勢に移行させることが可能な手術支援システムを提供する。
【解決手段】手術支援システム100は、手術支援ロボット1の現在の姿勢から第1の姿勢への移行が完了する前に、操作者による、第1の姿勢を調整するための可変制御パラメータhの調整の操作を受け付けるジョイスティック33bを備える。第1の姿勢は、可変制御パラメータhを含む複数の制御パラメータによって定義される。可変制御パラメータhは、ジョイスティック33bの操作によって所定の範囲内で変更可能である。制御装置130は、手術支援ロボット1を現在の姿勢から可変制御パラメータhの調整後の第1の姿勢に移行させる制御を行う。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術器具が取り付けられるロボット本体部と、
前記ロボット本体部を、現在の姿勢から第1の姿勢に移行させる制御を行う制御装置と、
前記ロボット本体部の前記現在の姿勢から前記第1の姿勢への移行が完了する前に、操作者による、前記第1の姿勢の調整の操作を受け付ける操作部と、を備え、
前記第1の姿勢は、可変制御パラメータを含む複数の制御パラメータによって定義され、
前記可変制御パラメータは、前記操作部の操作によって所定の範囲内で変更可能であり、
前記制御装置は、前記操作部の操作に基づいて、前記ロボット本体部を前記現在の姿勢から前記可変制御パラメータの調整後の前記第1の姿勢に移行させる制御を行う、手術支援システム。
【請求項2】
前記複数の制御パラメータは、固定制御パラメータを含む、請求項1に記載の手術支援システム。
【請求項3】
前記ロボット本体部は、関節を有し、
前記制御装置は、前記操作部により受け付けられた調整の操作に基づいて、前記制御パラメータとしての前記関節の回転角と、前記制御パラメータとしての前記ロボット本体部の座標とのうちの少なくとも一方を変化させる制御を行う、請求項2に記載の手術支援システム。
【請求項4】
前記操作部は、前記ロボット本体部が前記現在の姿勢から前記第1の姿勢に移行する際の、移行の開始から移行の完了までの間の任意の時点において、前記操作者による前記可変制御パラメータの調整の操作を受け付ける、請求項1に記載の手術支援システム。
【請求項5】
前記ロボット本体部は、
前記手術器具が取り付けられるロボットアームと、
前記ロボットアームを移動するロボットアーム移動部と、を含み、
前記制御装置は、前記ロボットアームおよび前記ロボットアーム移動部を、前記現在の姿勢から、前記可変制御パラメータの調整後の前記第1の姿勢に移行させる制御を行う、請求項1に記載の手術支援システム。
【請求項6】
前記操作部は、前記ロボット本体部の前記現在の姿勢から前記第1の姿勢への移行の開始時に、操作者による前記制御パラメータの調整の操作を受け付ける、請求項1に記載の手術支援システム。
【請求項7】
前記第1の姿勢は、
前記ロボット本体部を格納する際の格納姿勢と、
前記ロボット本体部を滅菌ドレープにより覆う際のドレープ姿勢と、
前記ロボット本体部を手術の開始前に待機させる際の待機姿勢と、
前記ロボット本体部を患者まで移動させる際のロールイン姿勢と、
前記ロボット本体部を清掃する際の清掃姿勢と、
前記ロボット本体部を搬送する際の搬送姿勢と、のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の手術支援システム。
【請求項8】
前記操作部は、
前記第1の姿勢における前記ロボット本体部の高さと、
前記第1の姿勢における前方への前記ロボット本体部の張り出しの量と、
前記第1の姿勢における左右方向への前記ロボット本体部の張り出しの量と、
前記第1の姿勢における左右方向への前記ロボット本体部の回転角度と、のうちの少なくとも1つの調整の操作を受け付ける、請求項1に記載の手術支援システム。
【請求項9】
前記操作部は、ジョイスティックを含み、
前記操作者により前記ジョイスティックが第1の方向に傾けられた場合に、前記可変制御パラメータの調整の操作が受け付けられ、
前記操作者により前記ジョイスティックが前記第1の方向に交差する第2の方向に傾けられた場合に、前記制御装置は、前記ロボット本体部を、前記現在の姿勢から、前記可変制御パラメータの調整後の前記第1の姿勢に移行させる制御を行う、請求項1に記載の手術支援システム。
【請求項10】
前記ジョイスティックは、前記第1の方向への傾きの大きさに応じた、前記可変制御パラメータの調整の操作を受け付ける、請求項9に記載の手術支援システム。
【請求項11】
前記ロボット本体部の姿勢の移行を許可または不許可とするイネーブルスイッチをさらに備え、
前記イネーブルスイッチによって前記ロボット本体部の姿勢の移行が許可されている状態で、前記操作者により前記ジョイスティックが前記第1の方向に傾けられた場合に、前記可変制御パラメータの調整の操作が受け付けられ、前記操作者により前記ジョイスティックが前記第2の方向に傾けられた場合に、前記制御装置は、前記ロボット本体部を、前記現在の姿勢から、前記可変制御パラメータの調整後の前記第1の姿勢に移行させる制御を行う、請求項9に記載の手術支援システム。
【請求項12】
手術器具が取り付けられるロボット本体部の現在の姿勢から第1の姿勢への移行が完了する前に、操作者による、前記第1の姿勢を調整するための、所定の範囲内で変更可能である可変制御パラメータの調整の操作を受け付けることと、
前記ロボット本体部を、前記現在の姿勢から前記可変制御パラメータの調整後の前記第1の姿勢に移行させることと、を備える、手術支援システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、手術支援システムおよび手術支援システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、手術器具が取り付けられるロボットアームを備えるロボットを用いた手術支援システムが知られている。たとえば、特許文献1には、ロボットアームが事前に確立された位置に移行される遠隔医療システムが開示されている。特許文献1では、タッチパッドに、ロボットアームを事前に確立された位置に移行させるためのボタンが含まれている。事前に確立された位置とは、しまい込み位置、ドレーピング位置、および、ドッキング位置などである。しまい込み位置とは、ロボットを片付ける際にロボットをコンパクトな状態にするロボットアームの位置である。ドレーピング位置とは、ロボットアームを滅菌ドレープにより覆うために適したロボットアームの位置である。ドッキング位置とは、ロボットアームをカニューレにドッキングさせるために適したロボットアームの位置である。タッチパッドのボタンが操作者に操作されることにより、ある位置から、操作されたボタンに対応する位置にロボットアームが自動的に移行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、事前に確立された位置が固定されているため、ロボットアームは、ある位置から予め決まった位置にしか移行できない。このときロボットアームの姿勢も予め決まった姿勢にしか移行できない。例えば、しまい込みを行う部屋の状況に応じて、できるだけロボットの設置面積を小さくするようにロボットアームを収納したい場合や設置面積は最小でなくてもよいがロボットの高さができるだけ低くなるようにロボットアームを収納したい場合がある。特許文献1では、操作者が状況に応じて移行後のロボットの位置や姿勢を調整することができないという問題点がある。
【0005】
この開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、操作者が状況に応じて移行後のロボット本体部の姿勢を調整することが可能な手術支援システムおよび手術支援システムの制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、この開示の第1の局面による手術支援システムは、手術器具が取り付けられるロボット本体部と、ロボット本体部を、現在の姿勢から第1の姿勢に移行させる制御を行う制御装置と、ロボット本体部の現在の姿勢から第1の姿勢への移行が完了する前に、操作者による、第1の姿勢の調整の操作を受け付ける操作部と、を備え、第1の姿勢は、可変制御パラメータを含む複数の制御パラメータによって定義され、可変制御パラメータは、操作部の操作によって所定の範囲内で変更可能であり、制御装置は、操作部の操作に基づいて、ロボット本体部を現在の姿勢から可変制御パラメータの調整後の第1の姿勢に移行させる制御を行う。
【0007】
この開示の第1の局面による手術支援システムは、上記のように、ロボット本体部の現在の姿勢から第1の姿勢への移行が完了する前に、操作者による、第1の姿勢の調整の操作を受け付ける操作部、を備え、制御装置は、操作部の操作に基づいて、ロボット本体部を現在の姿勢から可変制御パラメータの調整後の第1の姿勢に移行させる制御を行う。これにより、ロボット本体部が第1の姿勢へ移行する際に、移行後の第1の姿勢を移行の完了前に調整することができる。このため、ロボット本体部を、操作者が状況に応じた姿勢に移行させることができる。
【0008】
この開示の第2の局面による手術支援システムの制御方法は、手術器具が取り付けられるロボット本体部の現在の姿勢から第1の姿勢への移行が完了する前に、操作者による、第1の姿勢を調整するための、所定の範囲内で変更可能である可変制御パラメータの調整の操作を受け付けることと、ロボット本体部を、現在の姿勢から可変制御パラメータの調整後の第1の姿勢に移行させることと、を備える。
【0009】
この開示の第2の局面による手術支援システムの制御方法では、上記のように、ロボット本体部の現在の姿勢から第1の姿勢への移行が完了する前に、操作者による、第1の姿勢を調整するための、所定の範囲内で変更可能である可変制御パラメータの調整の操作を受け付けることと、ロボット本体部を、現在の姿勢から可変制御パラメータの調整後の第1の姿勢に移行させることと、を備える。これにより、ロボット本体部が第1の姿勢への移行する際に、移行後の第1の姿勢を移行の完了前に調整することができる。このため、ロボット本体部を、操作者が状況に応じた姿勢に移行させることが可能な手術支援システムの制御方法を提供できる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、ロボット本体部を、操作者が状況に応じた姿勢に移行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態による手術支援システムの構成を示す図である。
【
図2】一実施形態による医療用台車の表示部を示す図である。
【
図3】一実施形態による医療用台車の構成を示す図である。
【
図4】一実施形態によるロボットアームの構成を示す図である。
【
図6】一実施形態によるアーム操作部の構成を示す斜視図である。
【
図7】ロボットアームの並進移動を説明するための図である。
【
図8】ロボットアームの回転移動を説明するための図である。
【
図9】一実施形態による手術支援ロボットの制御ブロック図である。
【
図10】一実施形態によるロボットアームの制御ブロック図である。
【
図11】一実施形態による医療用台車およびポジショナの制御ブロック図である。
【
図12】手術支援ロボットの現在の姿勢から第1の姿勢への移行を説明するための図である。
【
図13】制御パラメータを調整するジョイスティックを示す図である。
【
図14】格納姿勢における可変制御パラメータhが0の場合の手術支援ロボットを示す図である。
【
図15】格納姿勢における可変制御パラメータhが0.5の場合の手術支援ロボットを示す図である。
【
図16】格納姿勢における可変制御パラメータhが1の場合の手術支援ロボットを示す図である。
【
図17】ドレープ姿勢における可変制御パラメータhが0の場合の手術支援ロボットを示す図である。
【
図18】ドレープ姿勢における可変制御パラメータhが0.5の場合の手術支援ロボットを示す図である。
【
図19】ドレープ姿勢における可変制御パラメータhが1の場合の手術支援ロボットを示す図である。
【
図20】手術支援ロボットが現在の姿勢から第1の姿勢へ移行する際の制御パラメータを説明するための図である。
【
図21】ロボットアームの関節の回転角の制御パラメータを示す図である。
【
図22】ポジショナの位置の座標および関節の回転角の制御パラメータを示す図である。
【
図23】一実施形態による手術支援ロボットの制御方法を説明するためのフロー図である。
【
図24】一実施形態による医療用台車の術部の設定時の表示部を示す図である。
【
図25】一実施形態による医療用台車が患者に近づく際の表示部を示す図である。
【
図26】撮影部によって患者を撮影している状態を示す図である。
【
図27】表示部に映し出されたトロカールと印部との位置合わせ前の状態を示す図である。
【
図28】表示部に映し出されたトロカールと印部との位置合わせ後の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(手術支援システムの構成)
本実施形態による手術支援システム100の構成について説明する。手術支援システム100は、手術支援ロボット1と、遠隔操作装置2とを備えている。
【0013】
なお、本願明細書において、手術器具4の長手方向をZ方向とする。手術器具4の先端側をZ1側とし、手術器具4の基端側をZ2側とする。Z方向に直交する方向をX方向とする。X方向の一方側をX1側とし、他方側をX2側とする。Z方向およびX方向に直交する方向をY方向とする。Y方向の一方側をY1側とし、他方側をY2側とする。
【0014】
また、本願明細書において、入力装置33の表示部33aを操作する操作者から見た左右方向をXa方向とする。右方向を、Xa1方向とし、左方向を、Xa2方向とする。入力装置33の表示部33aを操作する操作者から見た前後方向をYa方向とする。前方向をYa1方向とし、後方向をYa2方向とする。手術支援ロボット1が配置される床面に対して垂直な方向をZa方向とする。上方向をZa1方向とし、下方向をZa2方向とする。
【0015】
図1に示すように、手術支援ロボット1は、手術室内に配置されている。遠隔操作装置2は、手術支援ロボット1から離間した位置に配置されている。医師などの操作者は、手術支援ロボット1に所望の動作を行わせるための指令を遠隔操作装置2に入力する。遠隔操作装置2は、入力された指令を手術支援ロボット1に送信する。手術支援ロボット1は、受信した指令に基づいて動作する。手術支援ロボット1は、滅菌された滅菌野である手術室内に配置されている。
【0016】
(手術支援ロボットの構成)
図1に示すように、手術支援ロボット1は、医療用台車3と、ポジショナ40と、アームベース50と、複数のロボットアーム60と、アーム操作部80と、を備えている。手術支援ロボット1は、ロボット本体部の一例である。ポジショナ40は、ロボットアーム移動部の一例である。
【0017】
図3に示すように、医療用台車3は、ポジショナ40を移動させる。医療用台車3は、入力装置33を含む。入力装置33は、主に施術前に手術の準備を行うために、ポジショナ40、アームベース50、および、複数のロボットアーム60の移動や姿勢の変更の操作を受け付ける。医療用台車3は、操作ハンドル34、
図9に示されるスタビライザ34cおよび電動シリンダ34dを含む。
【0018】
図2に示すように、入力装置33は、表示部33aを含む。表示部33aは、たとえば、液晶パネルである。表示部33aには、複数のロボットアーム60に対応する番号が表示されている。また、表示部33aには、複数のロボットアーム60の各々に取り付けられている手術器具4の種類が表示される。表示部33aには、後述するピボット位置PPが教示されたことを示すチェックマークCMが表示される。
【0019】
図3に示すように、台車ポジショナ操作部35が、医療用台車3の後方に台車ポジショナ操作支持部36により支持されており、台車ポジショナ操作部35が操作されることで、医療用台車3またはポジショナ40が移動される。台車ポジショナ操作部35は、入力装置33と、操作ハンドル34を含む。入力装置33は、表示部33aと、ジョイスティック33bと、イネーブルスイッチ33cと、を含む。ジョイスティック33bは、医療用台車3の入力装置33の近傍に配置されている。入力装置33に表示される動作モードを選択し、ジョイスティック33bを操作することによりポジショナ40が3次元的に移動される。ジョイスティック33bは、調整部および操作部の一例である。
【0020】
イネーブルスイッチ33cは、医療用台車3のジョイスティック33bの近傍に配置されている。イネーブルスイッチ33cは、ポジショナ40の移動を許可または不許可とする。そして、イネーブルスイッチ33cが押下されポジショナ40の移動が許可された状態でジョイスティック33bが操作されることにより、ポジショナ40が移動される。
【0021】
また、操作ハンドル34は、医療用台車3の表示部33aの近傍に配置されている。そして、操作ハンドル34は、看護師、技師などの操作者が把持するとともに回動することにより医療用台車3の移動を操作するスロットル34aを有する。具体的には、操作ハンドル34は、入力装置33の下方に配置されている。そして、スロットル34aが、手前側から奥側に回動されることにより、医療用台車3が前進する。また、スロットル34aが、奥側から手前側に回動されることにより、医療用台車3が後進する。また、スロットル34aの回動量に応じて医療用台車3の速度が変更される。また、操作ハンドル34は、R方向で示される左右に回動可能に構成されており、操作ハンドル34の回動とともに医療用台車3が回動する。
【0022】
また、医療用台車3の操作ハンドル34に、医療用台車3の移動を許可または不許可とするイネーブルスイッチ34bが配置されている。そして、イネーブルスイッチ34bが押下され医療用台車3の移動が許可された状態で操作ハンドル34のスロットル34aが操作されることにより、医療用台車3が移動される。
【0023】
図1に示すように、ポジショナ40は、たとえば、7軸多関節ロボットからなる。ポジショナ40は、医療用台車3上に配置されている。ポジショナ40は、アームベース50の位置を調整する。ポジショナ40は、アームベース50の位置を3次元に移動させる。
【0024】
ポジショナ40は、ベース部41と、ベース部41に連結された複数のリンク部42とを含む。複数のリンク部42同士は、関節43により連結されている。
【0025】
アームベース50は、ポジショナ40の先端に取り付けられている。複数のロボットアーム60は、各々のロボットアーム60の基端が、アームベース50に取り付けられている。複数のロボットアーム60は、折り畳まれた収納姿勢をとることが可能である。アームベース50と、複数のロボットアーム60とは、滅菌ドレープにより覆われて使用される。また、ロボットアーム60は、手術器具4を支持する。
【0026】
アームベース50には、
図9に示される、ステータスインジケータ53およびアームステータスインジケータ54が配置されている。ステータスインジケータ53は、手術支援システム100の状態を表示する。アームステータスインジケータ54は、ロボットアーム60の状態を表示する。
【0027】
ロボットアーム60は、複数配置されている。具体的には、4つのロボットアーム60a、60b、60cおよび60dが配置されている。ロボットアーム60a、60b、60cおよび60dは、互いに同様の構成を有する。
【0028】
図4に示すように、ロボットアーム60は、アーム部61と、第1リンク部72と、第2リンク部73と、並進移動機構部70とを含む。ロボットアーム60は、回転軸線としてのJT1、JT2、JT3、JT4、JT5、JT6およびJT7軸線と、直動軸線としてのJT8軸線とを有する。JT1からJT7までの軸線は、アーム部61の関節64の回転軸線である。また、JT7軸線は、第1リンク部72の回転軸線である。JT8軸線は、並進移動機構部70が、第2リンク部73を第1リンク部72に対してZ方向に沿って相対的に移動させる直動軸線である。アーム部61は、ベース部62、リンク部63、および関節64を含む。
【0029】
アーム部61は、7軸多関節ロボットアームからなる。第1リンク部72は、アーム部61の先端に配置されている。第2リンク部73には、後述するアーム操作部80が取り付けられる。並進移動機構部70は、第1リンク部72と第2リンク部73との間に配置されている。第2リンク部73には、手術器具4を保持するホルダ71が配置されている。
【0030】
複数のロボットアーム60の各々の先端には、手術器具4が取り付けられている。手術器具4は、たとえば、取り換え可能なインストゥルメント、手術部位の画像を取り込むための内視鏡6および後述するピボット位置PPを教示するためのピボット位置教示器具7などを含む。インストゥルメントとしての手術器具4は、被駆動ユニット4aと鉗子4bとシャフト4cとを含む。
【0031】
図1に示すように、複数のロボットアーム60のうちの一つの、たとえば、ロボットアーム60cの先端には内視鏡6が取り付けられ、残りの、たとえば、ロボットアーム60a、60bおよび60dの先端には、内視鏡6以外の手術器具4が取り付けられる。内視鏡6は、互いに隣り合うように配置されている4つのロボットアーム60のうちの、中央に配置される2つのロボットアーム60bおよび60cのうちのいずれかに取り付けられる。
【0032】
(インストゥルメントの構成)
図5に示すように、インストゥルメントの先端には、たとえば、鉗子4bが設けられている。インストゥルメントの先端には、鉗子4b以外に、関節を有する器具として、ハサミ、グラスパー、ニードルホルダ、マイクロジセクター、ステーブルアプライヤー、タッカー、吸引洗浄ツール、スネアワイヤ、および、クリップアプライヤーなどが配置される。インストゥルメントの先端には、関節を有しない器具として、切断刃、焼灼プローブ、洗浄器、カテーテル、および、吸引オリフィスなどが配置される。
【0033】
鉗子4bは、第1支持体4eと、第2支持体4fとを含む。第1支持体4eは、ジョー部材104aおよび104bの基端側をJT11軸線周りに回転可能に支持する。第2支持体4fは、第1支持体4eの基端側をJT10軸線周りに回転可能に支持する。シャフト4cは、JT9軸線周りに回動する。ジョー部材104aおよびジョー部材104bは、JT12軸線周りに開閉する。
【0034】
(アーム操作部の構成)
図6に示すように、アーム操作部80は、ロボットアーム60に取り付けられており、ロボットアーム60を操作する。具体的には、アーム操作部80は、第2リンク部73に取り付けられている。
【0035】
アーム操作部80は、イネーブルスイッチ81と、ジョイスティック82と、リニアスイッチ83と、モード切替ボタン84と、モードインジケータ84aと、ピボットボタン85と、アジャストメントボタン86と、を含む。
【0036】
イネーブルスイッチ81は、ジョイスティック82およびリニアスイッチ83によるロボットアーム60の移動を許可または不許可とする。看護師、助手などの操作者によりアーム操作部80が把持された状態で、イネーブルスイッチ81が押下されることにより、ロボットアーム60による手術器具4の移動が許可される。
【0037】
ジョイスティック82は、ロボットアーム60による手術器具4の移動を操作するための操作具である。ジョイスティック82は、ロボットアーム60の移動方向および移動速度を操作する。ジョイスティック82が倒された方向および倒された角度に応じて、ロボットアーム60が移動される。
【0038】
リニアスイッチ83は、手術器具4の長手方向であるZ方向に手術器具4を移動させるためのスイッチである。リニアスイッチ83は、手術器具4を患者Pに挿入する方向に移動させるリニアスイッチ83aと、手術器具4を患者Pから離間するに方向に移動させるリニアスイッチ83bとを含む。リニアスイッチ83aとリニアスイッチ83bとは、共に、押しボタンスイッチからなる。
【0039】
モード切替ボタン84は、手術器具4を
図7に示す並進移動させるモードと
図8に示す回転移動させるモードとを切り替えるための押しボタンスイッチである。
図7に示すように、ロボットアーム60を並進移動させるモードでは、手術器具4の先端4dが、X-Y平面上において移動するように、ロボットアーム60が移動される。
図8に示すように、ロボットアーム60を回転移動させるモードでは、ピボット位置PPが記憶部32に記憶されていない時は、鉗子4bを中心に回転移動し、ピボット位置PPが記憶部32に記憶されている時は、ピボット位置PPを支点として手術器具4が回転移動するように、ロボットアーム60が移動される。なお、手術器具4のシャフト4cがトロカールTに挿入された状態で、手術器具4が回転移動される。モード切替ボタン84は、アーム操作部80のZ方向側の面に配置されている。
【0040】
モードインジケータ84aは、切り替えられたモードを表示する。モードインジケータ84aの点灯は、回転移動モードを表し、消灯は、並進移動モードを表す。また、モードインジケータ84aは、ピボット位置PPが教示されたことを表示するピボット位置インジケータを兼ねている。モードインジケータ84aは、アーム操作部80のZ方向側の面に配置されている。
【0041】
ピボットボタン85は、ロボットアーム60に取り付けられた手術器具4の移動の支点となるピボット位置PPを教示するための押しボタンスイッチである。
【0042】
アジャストメントボタン86は、ロボットアーム60の位置を最適化するためのボタンである。内視鏡6が取り付けられたロボットアーム60に対するピボット位置PPの教示後、アジャストメントボタン86が押下されることにより、他のロボットアーム60およびアームベース50の位置が最適化される。
【0043】
(遠隔操作装置)
図1に示すように、遠隔操作装置2は、たとえば、手術室の中または手術室の外に配置されている。遠隔操作装置2は、アーム121および操作ハンドル21を含む操作部120と、フットペダル22と、タッチパネル23と、モニタ24と、支持アーム25と、支持バー26とを含む。操作部120は、医師などの操作者が指令を入力するための操作用のハンドルを構成する。
【0044】
操作部120は、手術器具4を操作するためのハンドルである。また、操作部120は、手術器具4に対する操作量を受け付ける。操作部120は、医師などの操作者から見て、左側に配置され、操作者の左手により操作される操作部120と、右側に配置され、操作者の右手により操作される操作部120と、を含んでいる。操作部120Lおよび操作部120Rは、各々、操作ハンドル21Lおよび操作ハンドル21Rを含む。
【0045】
モニタ24は、内視鏡6によって取り込まれた画像を表示するためのスコープ型表示装置である。支持アーム25は、モニタ24の高さを医師などの操作者の顔の高さに合わせるようにモニタ24を支持する。タッチパネル23は、支持バー26に配置されている。モニタ24近傍に設けられたセンサにより操作者の頭部を検知することにより手術支援ロボット1は遠隔操作装置2による操作が可能になる。操作者は、モニタ24により患部を視認しながら、操作部120およびフットペダル22を操作する。これにより、遠隔操作装置2に指令が入力される。遠隔操作装置2に入力された指令は、手術支援ロボット1に送信される。
【0046】
(制御系の構成)
図9に示すように、手術支援システム100は、制御装置130と、アーム制御部31aと、ポジショナ制御部31bと、操作制御部110と、を備えている。
【0047】
制御装置130は、医療用台車3の内部においてアーム制御部31aおよびポジショナ制御部31bと通信するように配置され、手術支援システム100の全体を制御する。具体的には、制御装置130は、アーム制御部31a、ポジショナ制御部31b、および、操作制御部110の各々と通信し、制御する。制御装置130と、アーム制御部31a、ポジショナ制御部31b、および、操作制御部110とは、LANなどによって接続されている。制御装置130は、医療用台車3の内部に配置されている。
【0048】
アーム制御部31aは、複数のロボットアーム60ごとに配置されている。すなわち、医療用台車3の内部には、複数のロボットアーム60の数に対応した複数のアーム制御部31aが配置されている。
【0049】
図9に示すように、入力装置33は、制御装置130にLANなどによって接続されている。ステータスインジケータ53、アームステータスインジケータ54、操作ハンドル34、スロットル34a、ジョイスティック33b、スタビライザ34cおよび電動シリンダ34dと、ポジショナ制御部31bとは、配線145によって、互いの情報を共有可能な通信ネットワークによりシリアル通信接続されている。なお、
図9では、1つの配線145に、ステータスインジケータ53、アームステータスインジケータ54などの全てが接続されているように記載されているが、実際には、ステータスインジケータ53、アームステータスインジケータ54、操作ハンドル34、スロットル34a、ジョイスティック33b、スタビライザ34cおよび電動シリンダ34dごとに、配線145が配置されている。
【0050】
図10に示すように、アーム部61には、複数の関節64に対応するように、複数のサーボモータM1と、エンコーダE1と、減速機とが設けられている。エンコーダE1は、サーボモータM1の回転角を検出する。減速機は、サーボモータM1の回転を減速させてトルクを増大させる。医療用台車3の内部には、サーボモータM1を制御するためのサーボ制御部C1がアーム制御部31aに隣接して配置されている。また、サーボ制御部C1には、サーボモータM1の回転角を検出するためのエンコーダE1が電気的に接続されている。
【0051】
アーム部61の関節64と、ポジショナ40の関節43の各々には、ブレーキBRKが搭載されている。また、医療用台車3の前輪と、アームベース50および並進移動機構部70にもブレーキBRKが搭載されている。アーム制御部31aからアーム部61の関節64と並進移動機構部70とに搭載された各ブレーキBRKへ制御信号が各々一方通行で送信される。制御信号は、ブレーキBRKをオンオフする信号である。ブレーキBRKをオンする信号は、ブレーキBRKが効いている状態を保持する信号を含む。ポジショナ制御部31bから、ポジショナ40の関節43とアームベース50とに搭載された各ブレーキBRKへの制御信号についても同様である。アームベース50と、アーム部61と、並進移動機構部70とは、起動時に全てのブレーキBRKが解除され、重力に抗するようにサーボモータSMが駆動されることにより、ロボットアーム60の姿勢とアームベース50の姿勢とが維持される。手術支援システム100にエラーが発生した際には、アームベース50と、アーム部61と、並進移動機構部70とに搭載されたブレーキBRKがオンされる。手術支援システム100のエラーが解除されると、アームベース50と、アーム部61と、並進移動機構部70とに搭載されたブレーキBRKはオフされる。手術支援システム100のシャットダウン操作によって、アームベース50と、アーム部61と、並進移動機構部70とに搭載されたブレーキBRKはオンされる。また、医療用台車3の前輪は、常にブレーキBRKがオンされており、医療用台車3のイネーブルスイッチ34bが押下されている間だけブレーキBRKが解除される。また、ポジショナ40の各関節43は、常にブレーキBRKがオンされており、医療用台車3のイネーブルスイッチ33cが押下されている間だけブレーキBRKが解除される。
【0052】
第2リンク部73には、手術器具4の被駆動ユニット4aに配置された被駆動部材を回転させるためのサーボモータM2と、エンコーダE2と、減速機とが配置されている。エンコーダE2は、サーボモータM2の回転角を検出する。減速機は、サーボモータM2の回転を減速させてトルクを増大させる。また、医療用台車3には、手術器具4を駆動するサーボモータM2を制御するためのサーボ制御部C2が配置されている。サーボ制御部C2には、サーボモータM2の回転角を検出するためのエンコーダE2が電気的に接続されている。なお、サーボモータM2、エンコーダE2およびサーボ制御部C2は、各々複数配置されている。
【0053】
並進移動機構部70には、手術器具4を並進移動させるためのサーボモータM3と、エンコーダE3と、減速機とが設けられている。エンコーダE3は、サーボモータM3の回転角を検出する。減速機は、サーボモータM3の回転を減速させてトルクを増大させる。また、医療用台車3には、手術器具4を並進移動するサーボモータM3を制御するためのサーボ制御部C3が配置されている。サーボ制御部C3には、サーボモータM3の回転角を検出するためのエンコーダE3が電気的に接続されている。
【0054】
図11に示すように、ポジショナ40には、ポジショナ40の複数の関節43に対応するように、複数のサーボモータM4と、エンコーダE4と、減速機とが設けられている。エンコーダE4は、サーボモータM4の回転角を検出するように構成されている。減速機は、サーボモータM4の回転を減速させてトルクを増大させるように構成されている。
【0055】
医療用台車3は、車輪を備えており、駆動輪としての前輪と、操作ハンドル34によって操舵される後輪とを有する。なお、後輪は、前輪よりも操作ハンドル34に近い側に配置されている。また、医療用台車3には、医療用台車3の複数の前輪の各々を駆動するサーボモータM5と、エンコーダE5と、減速機とブレーキが配置されている。減速機は、サーボモータM5の回転を減速させてトルクを増大させるように構成されている。また、医療用台車3の操作ハンドル34には、
図3に示すポテンショメータP1が配置されており、スロットル34aの捻りに応じてポテンショメータP1で検出した回転角に基づき、前輪のサーボモータM5は駆動される。また、医療用台車3の後輪は、双輪形式であり、操作ハンドル34の左右の回動に基づき、後輪は操舵される。また、医療用台車3の操作ハンドル34には、
図3に示すポテンショメータP2が回動軸に配置されており、医療用台車3の後輪には、サーボモータM5aとエンコーダE5aと減速機が配置されている。減速機は、サーボモータM5aの回転を減速させてトルクを増大させるように構成されている。操作ハンドル34の左右の回動に応じてポテンショメータP2で検出した回転角に基づき、サーボモータM5aは駆動される。すなわち、操作ハンドル34の左右の回動による後輪の操舵は、サーボモータM5aによりパワーアシストされるように構成されている。
【0056】
医療用台車3は、前輪が駆動されることにより、前後方向に移動する。また、医療用台車3の操作ハンドル34が回動されることにより、後輪が操舵されて、医療用台車3が左右方向に回動する。
【0057】
図11に示すように、医療用台車3には、ポジショナ40を移動するサーボモータM4を制御するためのサーボ制御部C4が配置されている。また、サーボ制御部C4には、サーボモータM4の回転角を検出するためのエンコーダE4が電気的に接続されている。また、医療用台車3には、医療用台車3の前輪を駆動するサーボモータM5を制御するためのサーボ制御部C5が配置されている。サーボ制御部C5には、サーボモータM5の回転角を検出するためのエンコーダE5が電気的に接続されている。医療用台車3には、医療用台車3の後輪の操舵をパワーアシストするサーボモータM5aを制御するためのサーボ制御部C5aが配置されている。サーボ制御部C5aには、サーボモータM5aの回転角を検出するためのエンコーダE5aが電気的に接続されている。
【0058】
図9に示すように、制御装置130は、アーム操作部80に受け付けられた操作に基づいてロボットアーム60を制御する。たとえば、制御装置130は、アーム操作部80のジョイスティック82に受け付けられた操作に基づいてロボットアーム60を制御する。具体的には、アーム制御部31aは、ジョイスティック82から入力された入力信号を制御装置130に出力する。制御装置130は受け取った入力信号と、エンコーダE1により検出された回転角とに基づいて位置指令を生成するとともに、アーム制御部31aを介して、位置指令をサーボ制御部C1に出力する。サーボ制御部C1は、アーム制御部31aから入力された位置指令と、エンコーダE1により検出された回転角とに基づいて、電流指令を生成するとともに、電流指令をサーボモータM1に出力する。これにより、ジョイスティック82に入力された動作指令に沿うように、ロボットアーム60が移動される。
【0059】
制御装置130は、アーム操作部80のリニアスイッチ83からの入力信号に基づいてロボットアーム60を制御する。具体的には、アーム制御部31aは、リニアスイッチ83から入力された入力信号を制御装置130に出力する。制御装置130は受け取った入力信号と、エンコーダE1またはE3により検出された回転角とに基づいて位置指令を生成するとともに、アーム制御部31aを介して、位置指令をサーボ制御部C1またはC3に出力する。サーボ制御部C1またはC3は、アーム制御部31aから入力された位置指令と、エンコーダE1またはE3により検出された回転角とに基づいて、電流指令を生成するとともに、電流指令をサーボモータM1またはM3に出力する。これにより、リニアスイッチ83に入力された動作指令に沿うように、ロボットアーム60が移動される。
【0060】
ポジショナ制御部31bは、医療用台車3に配置されている。ポジショナ制御部31bは、ポジショナ40および医療用台車3を制御する。ポジショナ40には、ポジショナ40の複数の関節43に対応するように、サーボモータSMと、エンコーダENと、減速機とが配置されている。ポジショナ40のサーボモータSMを制御するサーボ制御部SCは、医療用台車3に配置されている。医療用台車3には、医療用台車3の複数の前輪の各々を駆動するサーボモータSMと、エンコーダENと、減速機と、サーボ制御部SCと、ブレーキとが配置されている。
【0061】
操作制御部110は、遠隔操作装置2の本体に配置されている。操作制御部110は、操作部120を制御する。操作制御部110は、左手用の操作部120と右手用の操作部120との各々に対応するように配置されている。操作部120には、操作部120の複数の関節に対応するように、サーボモータSMと、エンコーダENと、減速機とが配置されている。操作部120のサーボモータSMを制御するサーボ制御部SCは、操作制御部110に隣接して遠隔操作装置2の本体に配置されている。
【0062】
(手術支援ロボットの姿勢の移行)
本実施形態では、
図12に示すように、制御装置130は、ロボット本体部を、現在の姿勢から第1の姿勢に移行させる制御を行う。第1の姿勢は、後述する可変制御パラメータhを含む複数の制御パラメータによって定義される。可変制御パラメータhは、ジョイスティック33bの操作によって所定の範囲内で変更可能である。また、複数の制御パラメータは、固定制御パラメータを含む。第1の姿勢は、格納姿勢と、ドレープ姿勢と、待機姿勢と、ロールイン姿勢と、清掃姿勢と、搬送姿勢と、のうちの少なくとも1つを含む。本実施形態では、第1の姿勢は、上記の全ての姿勢を含む。格納姿勢とは、手術支援ロボット1を格納する際の姿勢である。ドレープ姿勢とは、手術支援ロボット1を滅菌ドレープにより覆う際の姿勢である。待機姿勢とは、手術支援ロボット1を手術の開始前に待機させる際の姿勢である。ロールイン姿勢とは、手術支援ロボット1を患者Pまで移動させる際の姿勢である。清掃姿勢とは、手術支援ロボット1を清掃する際の姿勢である。搬送姿勢とは、手術支援ロボット1を搬送する際の姿勢である。
【0063】
図13に示すように、入力装置33の表示部33aに、上記の第1の姿勢の各々に移行させるためのボタン33dが表示される。看護師、技師などの操作者が表示部33aのボタン33dを押下することにより、制御装置130は、押下されたボタン33dに対応する第1の姿勢に移行させる制御を行う。具体的には、操作者が表示部33aにボタン33dを押下した後、イネーブルスイッチ33cが押下された状態で、ジョイスティック33bが、Xa1方向に傾けられることにより、手術支援ロボット1が、現在の姿勢から第1の姿勢に移行される。Xa1方向は、第2の方向の一例である。
【0064】
本実施形態では、ジョイスティック33bは、手術支援ロボット1の現在の姿勢から第1の姿勢への移行が完了する前に、操作者による、第1の姿勢を調整するための可変制御パラメータhの調整の操作を受け付ける。第1の姿勢の調整は、第1の姿勢における手術支援ロボット1の高さHと、第1の姿勢における前方への手術支援ロボット1の張り出しの量と、第1の姿勢における左右方向への手術支援ロボット1の張り出しの量と、第1の姿勢における左右方向への手術支援ロボット1の回転角度と、のうちの少なくとも1つ調整を含む。本実施形態では、第1の姿勢の調整は、上記の調整の全てを含む。
【0065】
手術支援ロボット1の高さHとは、Za方向における手術支援ロボット1の高さHを意味する。前方への手術支援ロボット1の張り出しの量とは、Ya1方向への手術支援ロボット1の突出量を意味する。左右方向への手術支援ロボット1の張り出しの量とは、Xa1方向またはXa2方向への手術支援ロボット1の突出量を意味する。左右方向への手術支援ロボット1の回転角度とは、Za方向に沿った軸線周りの手術支援ロボット1の回転角度を意味する。
【0066】
本実施形態では、制御装置130は、ロボットアーム60およびポジショナ40を、現在の姿勢から、可変制御パラメータhの調整後の第1の姿勢に移行させる制御を行う。すなわち、ロボットアーム60およびポジショナ40の両方に対して、姿勢が調整される。
【0067】
図14、
図15および
図16では、手術支援ロボット1の格納姿勢が示されている。
図14、
図15および
図16の順に、手術支援ロボット1の高さHが高くなる。
図14は、高さHの調整が行われない状態の手術支援ロボット1が示されている。
図15および
図16は、高さHの調整が行われた状態の手術支援ロボット1が示されている。
図14では、手術支援ロボット1の高さHが小さくなる一方、手術支援ロボット1の前後方向の張り出し量が大きくなる。
図16では、手術支援ロボット1の高さHが大きくなる一方、手術支援ロボット1の前後方向の張り出し量が小さくなる。
【0068】
図17、
図18および
図19では、手術支援ロボット1のドレープ姿勢が示されている。
図17、
図18および
図19の順に、手術支援ロボット1の高さHが高くなる。
図17は、高さHの調整が行われない状態の手術支援ロボット1が示されている。
図18および
図19は、高さHの調整が行われた状態の手術支援ロボット1が示されている。
図17では、手術支援ロボット1の高さHが小さくなるので、操作者によるアームベース50を滅菌ドレープに覆う作業が容易になる。
図19では、手術支援ロボット1の高さHが大きくなるとともに、隣り合うロボットアーム60同士の間隔が大きくなる。これにより。操作者によるロボットアーム60を滅菌ドレープに覆う作業が容易になる。なお、アームベース50に配置される4つのロボットアーム60のうちの中央のロボットアーム60bおよびロボットアーム60cは、アームベース50に固定されている。両端に配置されるロボットアーム60aおよびロボットアーム60dは、それぞれ直線移動でき、ロボットアーム60同士の間隔を調整できる。アームベース50は、サーボモータSM、エンコーダEN、減速機、サーボ制御部SC、および、ブレーキBRKを有しており、サーボモータSMの駆動力をベルトとプーリとに伝達することにより、ロボットアーム60同士の間隔を調整できる。なお、サーボ制御部SCは、医療用台車3に配置されている。
【0069】
本実施形態では、
図20に示すように、制御装置130は、ジョイスティック33bにより第1の姿勢の調整の操作が受け付けられた場合、手術支援ロボット1を現在の姿勢から可変制御パラメータhの調整後の第1の姿勢に移行させる制御を行う。
図20において、hは、第1の姿勢の調整のための制御パラメータを示す。h=0の場合は、第1の姿勢の調整が行われていないことを意味する。sは、手術支援ロボット1の姿勢の移行の進行度を示す。s=0は、手術支援ロボット1の移行前の時点を意味する。s=1は、手術支援ロボット1の移行の完了の時点を意味する。つまり、s=0の時点の手術支援ロボット1の姿勢は、現在の姿勢である。s=1の時点の手術支援ロボット1の姿勢は、第1の姿勢である。
【0070】
本実施形態では、ジョイスティック33bは、手術支援ロボット1が現在の姿勢から第1の姿勢に移行する移行の開始から移行の完了までの間の任意の時点において、操作者による可変制御パラメータhの調整の操作を受け付ける。すなわち、ジョイスティック33bは、s=0からs=1までのいずれの時点においても、操作者による可変制御パラメータhの調整の操作を受け付ける。つまり、ジョイスティック33bは、s=0からs=1までの途中でも、可変制御パラメータhの調整の操作を受け付ける。
図12に示すように、手術支援ロボット1が現在の姿勢から第1の姿勢に移行する間の途中の姿勢は、可変制御パラメータhと進行度sとによって決まる。
【0071】
本実施形態では、ジョイスティック33bは、手術支援ロボット1の現在の姿勢から第1の姿勢への移行の開始時に、操作者による可変制御パラメータhの調整の操作を受け付ける。すなわち、ジョイスティック33bは、s=0の時点における現在の姿勢の調整の操作を受け付ける。現在の姿勢が調整された後、手術支援ロボット1が第1の姿勢へ移行される。
【0072】
本実施形態では、
図21および
図22に示すように、可変制御パラメータhは、手術支援ロボット1の姿勢を定義する複数の制御パラメータに含まれている。ジョイスティック33bは、操作者による操作に基づいて、手術支援ロボット1の姿勢を定義する複数の制御パラメータに含まれる可変制御パラメータhを調整する。具体的には、本実施形態では、制御装置130は、ジョイスティック33bにより受け付けられた調整の操作に基づいて、制御パラメータとしてのポジショナ40の関節43およびロボットアーム60の関節64の回転角と、制御パラメータとしての手術支援ロボット1の座標とのうちの少なくとも一方を変化させる制御を行う。
図21に示すように、たとえば、ロボットアーム60のJT1からJT8までの軸線に対応するサーボモータSMの回転角が、第1の姿勢毎に規定されている。
図21において、ω1からω8は、固定制御パラメータである。可変制御パラメータhは、所定の範囲内で変更可能である。たとえば、可変制御パラメータhの上限は、1であり、下限は、0である。ジョイスティック33bは、可変制御パラメータhの上限と下限との間において、可変制御パラメータhの調整を受け付ける。αおよびβは定数である。すなわち、
図21に示される例では、JT2およびJT7の軸線に対応するロボットアーム60の関節64は、ジョイスティック33bにより受け付けられた調整の操作に基づいて、回転角が変化される。これにより、ジョイスティック33bにより受け付けられた調整の操作に基づいて、ロボットアーム60の第1の姿勢が調整される。
【0073】
図22に示す例では、ポジショナ40の座標および回転角が、第1の姿勢毎に規定されている。RXは、X軸周りの回転角、RYは、Y軸周りの回転角、および、RZは、Z軸周りの回転角である。J7は、アームベース50を支持するポジショナ40の先端部の回転軸線である。J8およびJ9は、アームベース50に対するロボットアーム60の回転軸線である。
図22において、x、y、z、rx、ry、rz、ω17、ω18およびω19は、固定制御パラメータである。
図22に示す例では、Z軸の座標に、上限と下限とを有する制御パラメータであるhが含まれている。なお、γは、定数ある。すなわち、
図22に示される例では、ポジショナ40のZ軸方向の位置は、ジョイスティック33bにより受け付けられた調整の操作に基づいて、変化される。これにより、ジョイスティック33bにより受け付けられた調整の操作に基づいて、第1の姿勢における手術支援ロボット1の高さHが調整される。
【0074】
本実施形態では、
図13に示すように、操作者によりジョイスティック33bが操作されることにより、可変制御パラメータhの調整の操作が受け付けられる。具体的には、操作者によりジョイスティック33bがYa方向に傾けられた場合に、可変制御パラメータhの調整の操作が受け付けられる。操作者によりジョイスティック33bがYa方向に交差するXa1方向に傾けられた場合に、制御装置130は、手術支援ロボット1を、現在の姿勢から、可変制御パラメータhの調整後の第1の姿勢に移行させる制御を行う。たとえば、ジョイスティック33bがYa1方向に傾けられた場合、可変制御パラメータhの値が増加する。ジョイスティック33bがYa2方向に傾けられた場合、可変制御パラメータhの値が減少する。ジョイスティック33bがXa1方向に傾けられた場合、進行度sの値が増加する。Ya方向は、第1の方向の一例である。
【0075】
本実施形態では、ジョイスティック33bは、Ya方向への傾きの大きさに応じた、第1の姿勢の調整の操作を受け付ける。すなわち、ジョイスティック33bのYa1方向への傾きが大きくなるに従って、可変制御パラメータhの値の増加が速くなる。ジョイスティック33bのYa2方向への傾きが大きくなるに従って、可変制御パラメータhの値の減少が速くなる。また、ジョイスティック33bのXa1方向への傾きが大きくなるに従って、進行度sの値の増加が速くなる。
【0076】
本実施形態では、イネーブルスイッチ33cによって手術支援ロボット1の姿勢の移行が許可されている状態で、操作者によりジョイスティック33bがYa方向に傾けられた場合に、可変制御パラメータhの調整の操作が受け付けられる。また、イネーブルスイッチ33cによって手術支援ロボット1の姿勢の移行が許可されている状態で、操作者によりジョイスティック33bがXa1方向に傾けられた場合に、制御装置130は、手術支援ロボット1を、現在の姿勢から、第1の姿勢に移行させる制御を行う。すなわち、操作者によりイネーブルスイッチ33cが押下されている状態で、ジョイスティック33bの操作が受け付けられる。
【0077】
(手術支援システムの制御方法)
次に、手術支援システム100の制御方法について説明する。なお、手術台5に載置された患者Pの体表面Sには、予め4つのトロカールT4が配置されている。また、ロボットアーム60には、手術器具4は取り付けられていない。また、以下では、手術支援ロボット1がロールイン姿勢に移行する際に、ジョイスティック33bにより可変制御パラメータhの調整が受け付けられる例について説明する。
【0078】
図23に示すように、ステップS1において、手術支援ロボット1の位置決めの準備が行われる。具体的には、
図24に示すように、表示部33aのタッチパネルにおいて、腹部などの術部と、患者Pに対する手術支援ロボット1の挿入方向とが選択される。
【0079】
次に、ステップS2において、
図24に示すように、表示部33aに表示されているロールインのボタンが押下される。これにより、ロールインモードが設定され、手術支援ロボット1がロールイン姿勢をとるようにアームベース50およびロボットアーム60の移動動作を制御する。ロールイン姿勢は、手術支援ロボット1の移動によってロボットアーム60が患者Pの上方に位置付けられたときに、患者Pと干渉しないように各ロボットアーム60が折畳まれた姿勢であり、アームベース50に設けられた撮影部51が鉛直下方を撮影できるようにポジショナ40によってアームベース50が配置された姿勢であり、且つ、ステップS1で選択された術部の情報と挿入方向の情報に基づいて各ロボットアーム60の配列方向が対応するようにポジショナ40によってアームベース50が配置された姿勢である。即ち、表示部33aに表示されているロールインのボタンが押下されロールインモードに移行後、イネーブルスイッチ33cが押下されポジショナ40の移動が許可された状態でジョイスティック33bが操作されることにより、制御装置130は、自動的に手術支援ロボット1がロールイン姿勢をとるようにポジショナ40および各ロボットアーム60を移動させる。
【0080】
ここで、本実施形態では、手術支援ロボット1の現在の姿勢から第1の姿勢への移行が完了する前に、操作者による可変制御パラメータhの調整の操作が受け付けられる。たとえば、手術支援ロボット1がs=0の現在の姿勢の状態で、操作者によりジョイスティック33bがYa1方向に傾けられた場合に、可変制御パラメータhの値が大きくされる。次に、操作者によりジョイスティック33bがXa1方向に傾けられることにより、手術支援ロボット1が現在の姿勢からロールイン姿勢に移行される。その結果、ロールイン姿勢に移行後の手術支援ロボット1の高さHは、第1の姿勢の調整が行われない場合に比べて大きくなる。
【0081】
次に、ステップS3において、
図25に示すように、ロボットアーム60の移動動作後、表示部33aの画面が、撮影部51によって撮影される画像に切り替わる。そして、
図25に示すように、操作者は、アームベース50に設けられる撮影部51により、手術台5と手術台5に載置された患者Pが撮影されるように医療用台車3を手術台5に近づける。具体的には、看護師、技師などの操作者は、表示部33aに表示された画像を見ながら、操作ハンドル34を操作して、医療用台車3を患者Pの近傍まで移動させる。これにより、撮影部51の真下にトロカールTが配置される。そして、
図27に示すように、表示部33a上において、略円形状の第1印部MK1の内部にトロカールTが配置された状態となる。また、
図28に示すように、表示部33a上において、略円形状の第1印部MK1の内部に、1つのトロカールTが配置された状態で、残りのトロカールTが、第2印部MK2の第1線部L1または第2線部L2上に沿って配置されるように、操作者は、ジョイスティック33bによりポジショナ40を操作する。
【0082】
次に、ステップS4において、制御装置130は、表示部33a上のアーム準備のボタンが押下されることに基づいて、複数のロボットアーム60をセットアップ姿勢に移行させる。なお、セットアップ姿勢とは、各ロボットアーム60が折畳まれたロールイン姿勢とは異なり、複数のロボットアーム60の各々に
図29に示す内視鏡6または
図30に示すピボット位置教示器具7を取り付け易いように、互いのロボットアーム60同士の間隔が広げられた姿勢を意味する。なお、ピボット位置教示器具7とは、ピボット位置PPの教示の際に、インストゥルメントが取り付けられるロボットアーム60の先端に、インストゥルメントの代わりに取り付けられる器具である。その後、操作者は、複数のロボットアーム60の各々に内視鏡6またはピボット位置教示器具7を取り付ける。
【0083】
次に、ステップS5において、アーム操作部80によりロボットアーム60が操作されることにより、ロボットアーム60の先端側に取り付けられた内視鏡6またはピボット位置教示器具7の先端が、患者Pの体表面Sに挿入されたトロカールTの挿入位置に対応する位置まで移動された状態で、ピボットボタン85が押下されることにより、制御装置130は、ピボット位置PPを記憶部32に記憶させる。ピボット位置PPは、1つの座標として記憶され、ピボット位置PPの設定は、手術器具4の方向を設定するものではない。
【0084】
[本実施形態の効果]
手術支援ロボット1の現在の姿勢から第1の姿勢への移行が完了する前に、操作者による、第1の姿勢を調整するための可変制御パラメータhの調整の操作を受け付けるジョイスティック33bが配置されている。制御装置130は、手術支援ロボット1を現在の姿勢から可変制御パラメータhの調整後の第1の姿勢に移行させる制御を行う。これにより、手術支援ロボット1が第1の姿勢へ移行する際に、移行後の第1の姿勢を移行の完了前に調整することができる。このため、手術支援ロボット1を、操作者が状況に応じた姿勢に移行させることができる。
【0085】
複数の制御パラメータは、固定制御パラメータを含む。これにより、固定制御パラメータによって定義される基準の姿勢から、可変制御パラメータhを変化させることにより、手術支援ロボット1の姿勢を可変にすることができる。
【0086】
制御装置130は、ジョイスティック33bにより受け付けられた調整の操作に基づいて、制御パラメータとしてのポジショナ40の関節43およびロボットアーム60の関節64の回転角と、制御パラメータとしての手術支援ロボット1の座標とのうちの少なくとも一方を変化させる制御を行う。これにより、ポジショナ40の関節43およびロボットアーム60の関節64の回転角と、手術支援ロボット1の座標とのうちの少なくとも一方を変化させることにより、容易に、第1の姿勢を調整できる。
【0087】
ジョイスティック33bは、手術支援ロボット1が現在の姿勢から第1の姿勢に移行する際の、移行の開始から移行の完了までの間の任意の時点において、操作者による可変制御パラメータhの調整の操作を受け付ける。これにより、移行の開始から移行の完了までの間の任意の時点において可変制御パラメータhの調整の操作が受け付けられるので、操作者は、手術支援ロボット1の姿勢の移行の状態を見ながらリアルタイムで可変制御パラメータhを調整できる。
【0088】
制御装置130は、ロボットアーム60およびポジショナ40を、現在の姿勢から、可変制御パラメータhの調整後の第1の姿勢に移行させる制御を行う。これにより、操作者は、ロボットアーム60とポジショナ40とを含む手術支援ロボット1の姿勢を調整できる。
【0089】
ジョイスティック33bは、手術支援ロボット1の現在の姿勢から第1の姿勢への移行の開始時に、操作者による制御パラメータの調整の操作を受け付ける。これにより、操作者は、手術支援ロボット1が静止している移行の開始時に可変制御パラメータhを調整できるので、可変制御パラメータhを容易に調整できる。
【0090】
第1の姿勢は、手術支援ロボット1を格納する際の格納姿勢と、手術支援ロボット1を滅菌ドレープにより覆う際のドレープ姿勢と、手術支援ロボット1を手術の開始前に待機させる際の待機姿勢と、手術支援ロボット1を患者Pまで移動させる際のロールイン姿勢と、手術支援ロボット1を清掃する際の清掃姿勢と、手術支援ロボット1を搬送する際の搬送姿勢と、のうちの少なくとも1つを含む。これにより、操作者は、格納姿勢と、ドレープ姿勢と、待機姿勢と、ロールイン姿勢と、清掃姿勢と、搬送姿勢と、のうちの少なくとも1つを、操作者が状況に応じて調整できる。
【0091】
ジョイスティック33bは、第1の姿勢における手術支援ロボット1の高さHと、第1の姿勢における前方への手術支援ロボット1の張り出しの量と、第1の姿勢における左右方向への手術支援ロボット1の張り出しの量と、第1の姿勢における左右方向への手術支援ロボット1の回転角度と、のうちの少なくとも1つの調整の操作を受け付ける。これにより、操作者は、手術支援ロボット1の、高さHと、張り出しの量と、回転角度とのうちの少なくとも1つを、操作者が調整できる。
【0092】
操作者によりジョイスティック33bがYa方向に傾けられた場合に、可変制御パラメータhの調整の操作が受け付けられ、操作者によりジョイスティック33bがYa方向に交差するXa1方向に傾けられた場合に、制御装置130は、手術支援ロボット1を、現在の姿勢から、可変制御パラメータhの調整後の第1の姿勢に移行させる制御を行う。これにより、1つのジョイスティック33bによって、可変制御パラメータhの調整の操作と、第1の姿勢への移行の操作とを行うことができる。そのため、可変制御パラメータhの調整の操作と、第1の姿勢への移行の操作とを、別個の操作部によって行う場合と比較して、手術支援システム100の構成を簡略できる。
【0093】
ジョイスティック33bは、Ya方向への傾きの大きさに応じた、可変制御パラメータhの調整の操作を受け付ける。これにより、操作者は、ジョイスティック33bの傾け量を変化させるだけで、容易に、可変制御パラメータhの調整量を変更できる。
【0094】
イネーブルスイッチ33cによって手術支援ロボット1の姿勢の移行が許可されている状態で、操作者によりジョイスティック33bがYa方向に傾けられた場合に、可変制御パラメータhの調整の操作が受け付けられ、操作者によりジョイスティック33bがXa1方向に傾けられた場合に、制御装置130は、手術支援ロボット1を、現在の姿勢から、可変制御パラメータhの調整後の第1の姿勢に移行させる制御を行う。これにより、操作者の意図していない状態で、可変制御パラメータhの調整が受け付けられることをイネーブルスイッチ33cにより抑制できる。
【0095】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更または変形例が含まれる。
【0096】
上記実施形態では、ジョイスティック33bは、手術支援ロボット1の姿勢の移行の開始から移行の完了までの間の任意の時点において、操作者による可変制御パラメータhの調整の操作を受け付ける例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、ジョイスティック33bは、手術支援ロボット1の姿勢の移行の開始から移行の完了までの間の、予め定められた期間内のみにおいて可変制御パラメータhの調整の操作を受け付けてもよい。
【0097】
上記実施形態では、ロボットアーム60とポジショナ40とを含む手術支援ロボット1の第1の姿勢を調整する例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、ロボットアーム60の姿勢のみ、または、ポジショナ40の姿勢のみが調整されてもよい。
【0098】
上記実施形態では、格納姿勢、ドレープ姿勢、待機姿勢、ロールイン姿勢、清掃姿勢および搬送姿勢が調整される例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、格納姿勢、ドレープ姿勢、待機姿勢、ロールイン姿勢、清掃姿勢および搬送姿勢のうちの一部の姿勢のみが調整されてもよい。また、手術支援ロボット1の上記の姿勢以外の姿勢が調整されてもよい。
【0099】
上記実施形態では、可変制御パラメータhが、0から1までの範囲で変更される例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、可変制御パラメータhが、0から1までの範囲以外の範囲で変更されてもよい。
【0100】
上記実施形態では、ジョイスティック33bの操作によって変更される制御パラメータが、hのみである例を示したが、本開示はこれに限られない。ジョイスティック33bの操作によって変更される制御パラメータが複数あってもよい。
【0101】
上記実施形態では、ジョイスティック33bがYa方向に傾けられることにより、可変制御パラメータhの調整の操作が受け付けられる例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、ジョイスティック33bがZ方向に沿った軸線周りに回転されることにより、可変制御パラメータhの調整の操作が受け付けられてもよい。
【0102】
上記実施形態では、ジョイスティック33bの操作により、可変制御パラメータhの調整の操作が受け付けられる例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、押しボタン、スロットル、液晶パネルからの入力、スライドスイッチ、マウス、リモコンなどの操作により、可変制御パラメータhの調整の操作が受け付けられてもよい。
【0103】
上記実施形態では、制御装置130は、手術支援ロボット1を、可変制御パラメータhの調整後の第1の姿勢に移行させる制御を行う例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、操作者による可変制御パラメータhの調整後の第1の姿勢が記憶部32に登録されてもよい。操作者によって、表示部33aの第1の姿勢を登録するためのボタンが押下されることにより、可変制御パラメータhの調整後の第1の姿勢が記憶部32に登録される。そして、制御装置130は、記憶部32に登録されている第1の姿勢が操作者により選択された場合、手術支援ロボット1を、現在の姿勢から、記憶部32に登録されている第1の姿勢に移行させる制御を行う。これにより、可変制御パラメータhの調整後の第1の姿勢が登録されるので、2回目以降の第1の姿勢への移行の際に、操作者がジョイスティック33bを操作することなく、手術支援ロボット1を可変制御パラメータhの調整後の第1の姿勢に移行させることができる。その結果、2回目以降の第1の姿勢への移行の際の、操作者の負担を軽減できる。
【0104】
上記実施形態では、制御装置130は、手術支援ロボット1を、可変制御パラメータhの調整後の第1の姿勢に移行させる制御を行う例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、可変制御パラメータhの調整後の第1の姿勢に移行する際に、制御装置130は、ポジショナ40の関節43およびロボットアーム60の関節64の軸速度の制限値を超えない範囲で、第1の姿勢に移行させてもよい。具体的には、制御装置130は、可変制御パラメータhの調整後の第1の姿勢に移行する際に、手術支援ロボット1の並進移動成分および回転成分に対してスケーリングを行い、スケーリングを行った後の並進移動成分および回転成分に対して逆運動学計算を行うことにより、ポジショナ40の関節43およびロボットアーム60の関節64の回転角を算出する。なお、スケーリングとは、操作者がジョイスティック33bを移動させる移動量よりも、手術支援ロボット1の移動量が小さくなるように調整することを意味する。
【0105】
また、上記実施形態では、ロボットアーム60が4つ設けられている例を示したが、本開示はこれに限られない。本開示では、ロボットアーム60の数は、少なくとも1つ以上設けられていれば他の任意の数であってもよい。
【0106】
また、上記実施形態では、アーム部61およびポジショナ40が7軸多関節ロボットから構成されている例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、アーム部61およびポジショナ40が7軸多関節ロボット以外の軸構成の多関節ロボットなどから構成されていてもよい。7軸多関節ロボット以外の軸構成とは、例えば、6軸や8軸である。
【0107】
また、上記実施形態では、手術支援ロボット1が、医療用台車3と、ポジショナ40と、アームベース50とを備えている例を示したが、本開示はこれに限らない。たとえば、医療用台車3と、ポジショナ40と、アームベース50は必ずしも必要なく、手術支援ロボット1が、ロボットアーム60だけで構成されてもよい。
【0108】
本明細書で開示する要素の機能は、開示された機能を実行するよう構成またはプログラムされた汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、従来の回路、および/または、それらの組み合わせ、を含む回路または処理回路を使用して実行できる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路または回路と見なされる。本開示において、回路、ユニット、または手段は、列挙された機能を実行するハードウェアであるか、または、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されているハードウェアであってもよいし、あるいは、列挙された機能を実行するようにプログラムまたは構成されているその他の既知のハードウェアであってもよい。ハードウェアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、回路、手段、またはユニットはハードウェアとソフトウェアの組み合わせであり、ソフトウェアはハードウェアおよび/またはプロセッサの構成に使用される。
【0109】
[態様]
上記した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0110】
(項目1)
手術器具が取り付けられるロボット本体部と、
前記ロボット本体部を、現在の姿勢から第1の姿勢に移行させる制御を行う制御装置と、
前記ロボット本体部の前記現在の姿勢から前記第1の姿勢への移行が完了する前に、操作者による、前記第1の姿勢の調整の操作を受け付ける操作部と、を備え、
前記第1の姿勢は、可変制御パラメータを含む複数の制御パラメータによって定義され、
前記可変制御パラメータは、前記操作部の操作によって所定の範囲内で変更可能であり、
前記制御装置は、前記操作部の操作に基づいて、前記ロボット本体部を前記現在の姿勢から前記可変制御パラメータの調整後の前記第1の姿勢に移行させる制御を行う、手術支援システム。
【0111】
(項目2)
前記複数の制御パラメータは、固定制御パラメータを含む、項目1に記載の手術支援システム。
【0112】
(項目3)
前記ロボット本体部は、関節を有し、
前記制御装置は、前記操作部により受け付けられた調整の操作に基づいて、前記制御パラメータとしての前記関節の回転角と、前記制御パラメータとしての前記ロボット本体部の座標とのうちの少なくとも一方を変化させる制御を行う、項目2に記載の手術支援システム。
【0113】
(項目4)
前記操作部は、前記ロボット本体部が前記現在の姿勢から前記第1の姿勢に移行する際の、移行の開始から移行の完了までの間の任意の時点において、前記操作者による前記可変制御パラメータの調整の操作を受け付ける、項目1から項目3までのいずれか1項に記載の手術支援システム。
【0114】
(項目5)
前記ロボット本体部は、
前記手術器具が取り付けられるロボットアームと、
前記ロボットアームを移動するロボットアーム移動部と、を含み、
前記制御装置は、前記ロボットアームおよび前記ロボットアーム移動部を、前記現在の姿勢から、前記可変制御パラメータの調整後の前記第1の姿勢に移行させる制御を行う、項目1から項目4までのいずれか1項に記載の手術支援システム。
【0115】
(項目6)
前記操作部は、前記ロボット本体部の前記現在の姿勢から前記第1の姿勢への移行の開始時に、操作者による前記制御パラメータの調整の操作を受け付ける、項目1から項目5までのいずれか1項に記載の手術支援システム。
【0116】
(項目7)
前記第1の姿勢は、
前記ロボット本体部を格納する際の格納姿勢と、
前記ロボット本体部を滅菌ドレープにより覆う際のドレープ姿勢と、
前記ロボット本体部を手術の開始前に待機させる際の待機姿勢と、
前記ロボット本体部を患者まで移動させる際のロールイン姿勢と、
前記ロボット本体部を清掃する際の清掃姿勢と、
前記ロボット本体部を搬送する際の搬送姿勢と、のうちの少なくとも1つを含む、項目1から項目6までのいずれか1項に記載の手術支援システム。
【0117】
(項目8)
前記操作部は、
前記第1の姿勢における前記ロボット本体部の高さと、
前記第1の姿勢における前方への前記ロボット本体部の張り出しの量と、
前記第1の姿勢における左右方向への前記ロボット本体部の張り出しの量と、
前記第1の姿勢における左右方向への前記ロボット本体部の回転角度と、のうちの少なくとも1つの調整の操作を受け付ける、項目1から項目7までのいずれか1項に記載の手術支援システム。
【0118】
(項目9)
前記操作部は、ジョイスティックを含み、
前記操作者により前記ジョイスティックが第1の方向に傾けられた場合に、前記可変制御パラメータの調整の操作が受け付けられ、
前記操作者により前記ジョイスティックが前記第1の方向に交差する第2の方向に傾けられた場合に、前記制御装置は、前記ロボット本体部を、前記現在の姿勢から、前記可変制御パラメータの調整後の前記第1の姿勢に移行させる制御を行う、項目1から項目8までのいずれか1項に記載の手術支援システム。
【0119】
(項目10)
前記ジョイスティックは、前記第1の方向への傾きの大きさに応じた、前記可変制御パラメータの調整の操作を受け付ける、項目9に記載の手術支援システム。
【0120】
(項目11)
前記ロボット本体部の姿勢の移行を許可または不許可とするイネーブルスイッチをさらに備え、
前記イネーブルスイッチによって前記ロボット本体部の姿勢の移行が許可されている状態で、前記操作者により前記ジョイスティックが前記第1の方向に傾けられた場合に、前記可変制御パラメータの調整の操作が受け付けられ、前記操作者により前記ジョイスティックが前記第2の方向に傾けられた場合に、前記制御装置は、前記ロボット本体部を、前記現在の姿勢から、前記可変制御パラメータの調整後の前記第1の姿勢に移行させる制御を行う、項目9または項目10に記載の手術支援システム。
【0121】
(項目12)
手術器具が取り付けられるロボット本体部の現在の姿勢から第1の姿勢への移行が完了する前に、操作者による、前記第1の姿勢を調整するための、所定の範囲内で変更可能である可変制御パラメータの調整の操作を受け付けることと、
前記ロボット本体部を、前記現在の姿勢から前記可変制御パラメータの調整後の前記第1の姿勢に移行させることと、を備える、手術支援システムの制御方法。
【符号の説明】
【0122】
1 手術支援ロボット(ロボット本体部)
4 手術器具
32 記憶部
33b ジョイスティック(操作部)
33c イネーブルスイッチ
40 ポジショナ(ロボットアーム移動部)
43 関節
60 ロボットアーム
64 関節
100 手術支援システム
130 制御装置
h 可変制御パラメータ
H 高さ
P 患者
Xa1 第2の方向
Ya 第1の方向