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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167951
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】複層塗膜製造方法および複層塗膜
(51)【国際特許分類】
   B05D 5/06 20060101AFI20231116BHJP
   B05D 1/36 20060101ALI20231116BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20231116BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20231116BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20231116BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
B05D5/06 101A
B05D1/36 B
B05D7/24 303C
B05D7/24 303J
B32B27/30 A
B32B27/40
B32B27/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079518
(22)【出願日】2022-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 陽介
(72)【発明者】
【氏名】古村 聡
(72)【発明者】
【氏名】山根 貴和
(72)【発明者】
【氏名】岡本 圭一
(72)【発明者】
【氏名】寺本 浩司
(72)【発明者】
【氏名】野中 隆治
【テーマコード(参考)】
4D075
4F100
【Fターム(参考)】
4D075AE06
4D075BB26Z
4D075BB89X
4D075CB04
4D075CB13
4D075DA06
4D075DB02
4D075DB05
4D075DC12
4D075DC18
4D075EA06
4D075EA10
4D075EA43
4D075EB22
4D075EB33
4D075EB35
4D075EB38
4D075EC01
4D075EC02
4D075EC11
4D075EC23
4D075EC33
4D075EC54
4F100AA21C
4F100AB03
4F100AB10C
4F100AK25D
4F100AK41B
4F100AK51A
4F100AK51D
4F100AK52A
4F100AL02A
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10D
4F100CA02A
4F100CA13C
4F100CC00A
4F100CC00B
4F100DE02C
4F100EH46
4F100EJ86
4F100HB00C
4F100JL10C
4F100JN01D
4F100JN21
4F100JN21C
4F100JN30
4F100JN30C
4F100YY00A
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】ハイライトで高い光沢度を有し、ハイライトからシェードまで全体に明度が高く、補修性に優れ、白い金属調の複層塗膜を形成する方法および複層塗膜を提供すること。
【解決手段】電着塗膜上に、直接、ベース塗料(X)、光輝性顔料分散体(Y)及び2液型クリヤー塗料(Z)を順次塗装してこれら3つの塗膜を同時に硬化させる複層塗膜の製造方法であって、光輝性顔料分散体(Y)が、アルミニウムフレーク顔料(A)、酸化チタン(B)、水酸基含有アクリル樹脂(C)、粘性調整剤(D)及び水を含有し、酸化チタン(B)の含有量が光輝性顔料分散体(Y)の全固形分中10~20質量%であって、アルミニウムフレーク顔料(A)及び酸化チタン(B)の配合割合が、アルミニウムフレーク顔料(A)/酸化チタン(B)の質量比で0.8~1.2である、複層塗膜製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程(1)~(4):
(1)電着塗膜上に、直接、ベース塗料(X)を塗装して、乾燥膜厚として20~35μmであり、明度L*45が85~95のベース塗膜を形成する工程、
(2)工程(1)で形成されたベース塗膜上に、光輝性顔料分散体(Y)を塗装して乾燥膜厚として0.01~1.0μmである光輝性塗膜を形成する工程、
(3)工程(2)で形成された光輝性塗膜上に、水酸基含有アクリル樹脂及びポリイソシアネート化合物を含有する2液型クリヤー塗料(Z)を塗装してクリヤー塗膜を形成する工程、及び、
(4)前記工程(1)~(3)で形成された、未硬化のベース塗膜、未硬化の光輝性塗膜及び未硬化のクリヤー塗膜を加熱することによって、これら3つの塗膜を同時に硬化させる工程、からなる複層塗膜の製造方法であって、
前記光輝性顔料分散体(Y)が、アルミニウムフレーク顔料(A)、酸化チタン(B)、水酸基含有アクリル樹脂(C)、粘性調整剤(D)及び水を含有し、
前記酸化チタン(B)の含有量が前記光輝性顔料分散体(Y)の全固形分中10~20質量%であって、
前記アルミニウムフレーク顔料(A)及び酸化チタン(B)の配合割合が、アルミニウムフレーク顔料(A)/酸化チタン(B)の質量比で、0.8~1.2であり、
前記複層塗膜の明度L*45が75~85の範囲内であり、60度鏡面光沢度が95~105の範囲内であり、且つフリップフロップ値が0.5~0.7の範囲内である、複層塗膜製造方法。
【請求項2】
電着塗膜と、ベース塗膜と、光輝性塗膜と、クリヤー塗膜とをこの順に備えた複層塗膜であって、
前記ベース塗膜は、膜厚が20~35μm、明度L*45が85~95であり、
前記光輝性塗膜は、アルミニウムフレーク顔料(A)及び酸化チタン(B)を含み、膜厚が0.01~1.0μmであり、
前記光輝性塗膜における酸化チタン(B)の含有量が10~20質量%、アルミニウムフレーク顔料(A)/酸化チタン(B)の質量比が0.8~1.2であり、
前記クリヤー塗膜は、水酸基含有アクリル樹脂及びポリイソシアネート化合物の硬化物を含み、
前記複層塗膜の明度L*45が75~85の範囲内であり、60度鏡面光沢度が95~105の範囲内であり、且つフリップフロップ値が0.5~0.7の範囲内である、複層塗膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複層塗膜製造方法および複層塗膜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
塗料を塗装する目的は、主に素材の保護及び美観の付与である。工業製品においては、その商品力を高める点から、美観、なかでも特に「質感」が重要である。消費者が求める工業製品の質感は多様なものであるが、近年、自動車外板、自動車部品、家電製品等の分野において、金属のような光沢感が求められている(以下、「金属調光沢」と表記する)。
【0003】
金属調光沢とは、鏡面のように表面に粒子感がなく、さらに、塗板に対して垂直に近い状態で見たとき(ハイライト)は光り輝く質感である。このような質感の中で、ハイライトの領域では明度が高く、塗膜を斜めから見たとき(シェード)の領域の明度は、ハイライトの領域と比較すると低いが、白さを知覚できる白い金属調の質感の要求がある。
【0004】
特許文献1には、金属メッキ面等が有する金属感外観をメッキ処理によらずに実現する積層塗膜を形成する方法として、被塗物上に、不透明の鱗片状顔料と、蒸着金属膜を粉砕して金属片とした光輝性顔料とを含む金属調塗料を塗布し、形成された金属調塗膜層の上に、クリヤー上塗り塗料を塗布する金属感外観積層塗膜の製造方法が記載されている。
【0005】
特許文献2には、アルミニウムフレーク顔料の光輝感を低下させずに、塗膜を斜めから見たとき(シェード部)に黒ずまず、鮮明な白さを発現する塗膜を得ることができる光輝性塗膜製造方法として、基材に、特定の形状のアルミニウムフレーク顔料を含有する光輝性ベース塗膜を形成した後、上記光輝性ベース塗膜上に有機樹脂微粒子を含む第1クリヤー塗膜を形成し、さらに第1クリヤー塗膜上に第2クリヤー塗膜を形成する光輝性塗膜製造方法が記載されている。
【0006】
特許文献3には、白色度が高く、緻密感に優れ、ハイライト(正反射光近傍)からシェード(斜め方向)への明度変化が緩やかで落ち着きがある塗膜を形成可能な塗膜製造方法として、L*a*b*表色系における明度L*が75~90の範囲内となるカラーベース塗膜、ハイライトにおける干渉色が異なる4種類の光干渉性顔料を含むメタリックベース塗膜、トップクリヤー塗膜を順次形成して得られる塗膜製造方法が記載されている。
【0007】
特許文献4には、ハイライトからシェードにかけて全体的に明度が高く、特に白い金属調光沢を付与でき、且つ付着性及び耐水性に優れる複層塗膜製造方法として、下記の工程(1)~(4):(1)被塗物上に、ベース塗料(X)を塗装してベース塗膜を形成する工程、(2)工程(1)で形成されたベース塗膜上に、光輝性顔料分散体(Y)を塗装して乾燥膜厚として0.01~5μmである光輝性塗膜を形成する工程、(3)工程(2)で形成された光輝性塗膜上に、クリヤー塗料(Z)を塗装してクリヤー塗膜を形成する工程、及び(4)工程(1)~(3)で形成された未硬化のベース塗膜、未硬化の光輝性塗膜及び未硬化のクリヤー塗膜を加熱することによって、これら3つの塗膜を同時に硬化させる工程、を含む複層塗膜の製造方法であって、光輝性顔料分散体(Y)が、アルミニウムフレーク顔料(A)、光散乱粒子(B)、水酸基含有アクリル樹脂(C)、及び水を含有する複層塗膜製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004-8931号公報
【特許文献2】特開2003-245603号公報
【特許文献3】特開2011-45805号公報
【特許文献4】国際公開第2019/065961号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載の技術は、金属調塗料における鱗片状顔料と光輝性顔料の濃度を高くすることによって、鱗片状顔料および光輝性顔料を塗膜面と平行に配向せしめ、金属調の塗膜を形成するものであるが、ハイライトからシェードに大きく明度変化し、シェードは黒くなるので、白い金属調の塗膜を得ることはできない。
【0010】
特許文献2に記載の方法によれば、アルミフレーク顔料を含む光輝性塗膜上に、有機樹脂微粒子を含む塗膜を積層させることによって、塗膜を斜めから見たとき(シェード部)に黒ずまずに、鮮明な白さを発現する光輝性塗膜が得られるが、有機樹脂微粒子が入射光を散乱させることによって、光輝性塗膜の輝度感が損なわれる問題点がある。
【0011】
特許文献3に記載の方法によれば、干渉色が異なる光干渉性顔料が複数種類含まれることで、緻密で白いホワイトパール塗色が得られるが、光干渉性フレークを使用するため、ハイライトの輝度が不足するとともに、ハイライトからシェードへの明度変化が大きいため、前述したような白い金属調の塗膜を得ることはできない。
【0012】
特許文献4に記載の方法により形成される複層塗膜は、「質感」には優れているが、塗装中、次工程への移動中、塗膜の加熱硬化中などにおいて、それぞれの塗膜面にゴミが付着したり、塗膜にヘコミが発生するなどして、意匠性を低下させることがあるため、優れた補修性も求められている。
【0013】
本発明は、ハイライトで高い光沢度を有し、ハイライトからシェードまで全体に明度が高く、補修性に優れた、白い金属調の複層塗膜およびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は以下の項に記載の主題を包含する。
項1.下記の工程(1)~(4):
(1)電着塗膜上に、直接、ベース塗料(X)を塗装して、乾燥膜厚として20~35μmであり、明度L*45が85~95のベース塗膜を形成する工程、
(2)工程(1)で形成されたベース塗膜上に、光輝性顔料分散体(Y)を塗装して乾燥膜厚として0.01~1.0μmである光輝性塗膜を形成する工程、
(3)工程(2)で形成された光輝性塗膜上に、水酸基含有アクリル樹脂及びポリイソシアネート化合物を含有する2液型クリヤー塗料(Z)を塗装してクリヤー塗膜を形成する工程、及び、
(4)前記工程(1)~(3)で形成された未硬化のベース塗膜、未硬化の光輝性塗膜及び未硬化のクリヤー塗膜を加熱することによって、これら3つの塗膜を同時に硬化させる工程、からなる複層塗膜の製造方法であって、
前記光輝性顔料分散体(Y)が、アルミニウムフレーク顔料(A)、酸化チタン(B)、水酸基含有アクリル樹脂(C)、粘性調整剤(D)及び水を含有し、
前記酸化チタン(B)の含有量が前記光輝性顔料分散体(Y)の全固形分中10~20質量%であって、
前記アルミニウムフレーク顔料(A)及び酸化チタン(B)の配合割合が、アルミニウムフレーク顔料(A)/酸化チタン(B)の質量比で、0.8~1.2であり、
前記複層塗膜の明度L*45が75~85の範囲内であり、60度鏡面光沢度が95~105の範囲内であり、且つフリップフロップ値が0.5~0.7の範囲内である、複層塗膜製造方法。
項2.電着塗膜と、ベース塗膜と、光輝性塗膜と、クリヤー塗膜とをこの順に備えた複層塗膜であって、
前記ベース塗膜は、膜厚が20~35μm、明度L*45が85~95であり、
前記光輝性塗膜は、アルミニウムフレーク顔料(A)及び酸化チタン(B)を含み、膜厚が0.01~1.0μmであり、
前記光輝性塗膜における酸化チタン(B)の含有量が10~20質量%、アルミニウムフレーク顔料(A)/酸化チタン(B)の質量比が0.8~1.2であり、
前記クリヤー塗膜は、水酸基含有アクリル樹脂及びポリイソシアネート化合物の硬化物を含み、
前記複層塗膜の明度L*45が75~85の範囲内であり、60度鏡面光沢度が95~105の範囲内であり、且つフリップフロップ値が0.5~0.7の範囲内である、複層塗膜。
【発明の効果】
【0015】
本発明によればハイライトで高い光沢度を有し、ハイライトからシェードまで全体に明度が高く、補修性に優れた、白い金属調の複層塗膜およびその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<複層塗膜製造方法>
本発明の複層塗膜製造方法は、下記の工程(1)~(4):
(1)電着塗膜上に、直接、ベース塗料(X)を塗装して、乾燥膜厚として20~35μmであり、明度L*45が85~95のベース塗膜を形成する工程、
(2)工程(1)で形成されたベース塗膜上に、光輝性顔料分散体(Y)を塗装して乾燥膜厚として0.01~1.0μmである光輝性塗膜を形成する工程、
(3)工程(2)で形成された光輝性塗膜上に、水酸基含有アクリル樹脂及びポリイソシアネート化合物を含有する2液型クリヤー塗料(Z)を塗装してクリヤー塗膜を形成する工程、及び、
(4)前記工程(1)~(3)で形成された未硬化のベース塗膜、未硬化の光輝性塗膜及び未硬化のクリヤー塗膜を加熱することによって、これら3つの塗膜を同時に硬化させる工程、からなる複層塗膜の製造方法であって、
光輝性顔料分散体(Y)が、アルミニウムフレーク顔料(A)、酸化チタン(B)、水酸基含有アクリル樹脂(C)、粘性調整剤(D)及び水を含有し、
酸化チタン(B)の含有量が光輝性顔料分散体(Y)の全固形分中10~20質量%であって、
アルミニウムフレーク顔料(A)及び酸化チタン(B)の配合割合が、アルミニウムフレーク顔料(A)/酸化チタン(B)の質量比で、0.8~1.2であり、
前記複層塗膜の明度L*45が75~85の範囲内であり、60度鏡面光沢度が95~105の範囲内であり、且つフリップフロップ値が0.5~0.7の範囲内である、複層塗膜製造方法である。
【0017】
工程(1)
本発明の工程(1)は、電着塗膜上に、直接、ベース塗料(X)を塗装して乾燥膜厚として20~35μmである明度L*45が85~95のベース塗膜を形成する工程である。
【0018】
電着塗膜
本発明の複層塗膜製造方法によれば、まず、鋼板等の被塗物上に、電着塗料を塗装し、加熱硬化させることにより、電着塗膜が形成される。
【0019】
上記鋼板としては、自動車車体用鋼板、例えば、合金化溶融亜鉛めっき鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、冷延鋼板等を使用することができる。該鋼板は、表面に、リン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理等の表面処理が施されたものであってもよい。
【0020】
また、上記電着塗料としては、それ自体既知の電着塗料を使用でき、例えば、特開2003-306796号公報等に記載のものを使用でき、特にカチオン電着塗料を好適に使用することができる。
【0021】
ベース塗料(X)
上述の電着塗膜にベース塗料(X)を塗装して、ベース塗膜を形成することができる。
ベース塗膜は、下地の隠蔽性及び仕上がり性等の観点から、乾燥膜厚として20~35μmであり、好ましくは23~31μmである。
【0022】
また、ベース塗膜の明度L*45は、ハイライトで高い光沢度を有し、ハイライトからシェードまで全体に明度が高く、白い金属調の複層塗膜を形成する観点から、85~95であり、好ましくは87~92である。
【0023】
ここで、明度L*45は具体的には、塗膜に対して45度の角度から照射した光を正反射光に対して45度の角度で受光した分光反射率から計算されたL*a*b*表色系における明度L*を意味する。具体的には、多角度分光光度計「MA-68II」(商品名、ビデオジェットX-Rite社製)を使用して測定した数値として定義することができる。
【0024】
ベース塗料(X)としては、具体的には、ビヒクル形成樹脂、顔料ならびに有機溶剤及び/又は水等の溶媒を主成分とするそれ自体既知の熱硬化性塗料を使用することができる。
【0025】
ベース塗料(X)に使用されるビヒクル形成樹脂としては、熱硬化性樹脂、常温硬化性樹脂等が挙げられるが、耐水性、耐薬品性、耐候性等の観点から、熱硬化性樹脂であることが望ましい。ビヒクル形成樹脂としては基体樹脂と架橋剤を併用していることが好ましい。
【0026】
基体樹脂は、耐候性及び透明性等が良好である樹脂が好適であり、具体的には、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。
【0027】
上記アクリル樹脂としては、例えば、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸、水酸基、アミド基、メチロール基等の官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル、及びその他の(メタ)アクリル酸エステル、スチレン等を共重合して得られる樹脂を挙げることができる。
【0028】
ポリエステル樹脂としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの多価アルコールと、アジピン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸などの多価カルボン酸成分との縮合反応によって得られるポリエステル樹脂等を使用することができる。
【0029】
エポキシ樹脂としては、例えばエポキシ基と不飽和脂肪酸との反応によって、エポキシエステルを合成し、この不飽和基にα,β-不飽和酸を付加する方法や、エポキシエステルの水酸基と、フタル酸やトリメリット酸のような多塩基酸とをエステル化する方法等によって得られるエポキシエステル樹脂等が挙げられる。
【0030】
ウレタン樹脂としては、例えば上記アクリル樹脂、ポリエステル樹脂又はエポキシ樹脂にジイソシアネート化合物を反応させて高分子量化したものを挙げることができる。
【0031】
ベース塗料(X)としては、水性塗料、溶剤系塗料のいずれであってもよいが、塗料の低VOC化の観点から、水性塗料であることが望ましい。ベース塗料(X)が水性塗料である場合、上記基体樹脂は、樹脂を水溶性化もしくは水分散するのに十分な量の親水性基、例えばカルボキシル基、水酸基、メチロール基、アミノ基、スルホン酸基、ポリオキシエチレン結合等、最も一般的にはカルボキシル基を含有するものを使用し、該親水性基を中和してアルカリ塩とすることにより水溶性化もしくは水分散化することができる。その際の親水性基、例えばカルボキシル基の量は特に制限されず、水溶性化もしくは水分散化の程度に応じて任意に選択することができるが、一般には、酸価に基づいて約10mgKOH/g以上、好ましくは30~200mgKOH/gの範囲内とすることができる。また中和に用いるアルカリ性物質としては、例えば、水酸化ナトリウム、アミン化合物等を挙げることができる。
【0032】
また、上記樹脂の水分散化は、上記モノマー成分を界面活性剤や水溶性樹脂の存在下で乳化重合せしめることによっても行うことができる。さらに、上記樹脂を例えば乳化剤などの存在下で水中に分散することによっても得られる。この水分散化においては、基体樹脂中には前記親水性基を全く含んでいなくてもよく、あるいは上記水溶性樹脂よりも少なく含有することができる。
【0033】
前記架橋剤は、上記基体樹脂を加熱により架橋硬化させるためのものであり、例えばアミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物、エポキシ基含有化合物、カルボキシル基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物、ヒドラジド基含有化合物、セミカルバジド基含有化合物などが挙げられる。これらのうち、水酸基と反応し得るアミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物及びブロック化ポリイソシアネート化合物、カルボキシル基と反応し得るカルボジイミド基含有化合物が好ましい。上記架橋剤は、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0034】
具体的には、メラミン、ベンゾグアナミン、尿素等とホルムアルデヒドとの縮合もしくは共縮合又は、さらに低級1価アルコールでエーテル化する等によって得られるアミノ樹脂が好適に用いられる。また、ポリイソシアネート化合物もしくはブロックポリイソシアネート化合物も好適に使用できる。
【0035】
ベース塗料(X)における上記各成分の比率は、必要に応じて任意に選択することができるが、耐水性、仕上がり性等の観点から、基体樹脂及び架橋剤は、一般には、該両成分の合計質量に基づいて、基体樹脂が60~90質量%、特に70~85質量%、架橋剤が10~40質量%、特に15~30質量%の範囲内とすることが好ましい。
【0036】
前記顔料は、ベース塗料(X)により形成されるベース塗膜に色彩、下地隠蔽性を与えるものである。該顔料の種類や配合量を調整することによって、ベース塗料(X)によって得られる塗膜の明度L*45値を調整することができる。該顔料としては例えば、メタリック顔料、防錆顔料、着色顔料、体質顔料等を挙げることができ、なかでも着色顔料を使用することが好ましく、複層塗膜に白い金属調を付与する等の観点から、酸化チタン顔料を使用することがさらに好ましい。
【0037】
本発明のベース塗料(X)においては、さらに、下地の隠蔽性、所望の色彩等に応じて酸化チタン顔料以外の着色顔料を適宜の組合せで使用することができる。
ベース塗料(X)における顔料の配合量は、基体樹脂及び架橋剤の合計量100質量部を基準として、50~200質量部であることが好ましく、80~150質量部であることがさらに好ましい。
【0038】
ベース塗料(X)の塗装は、通常の方法に従って行なうことができ、ベース塗料(X)が水性塗料である場合には例えば、ベース塗料(X)に脱イオン水、必要に応じ増粘剤、消泡剤などの添加剤を加えて、固形分を30~70質量%程度、粘度を500~6000cps/6rpm(B型粘度計)に調整した後、前記被塗物面に、スプレー塗装、回転霧化塗装等により行うことができる。塗装の際、必要に応じて静電印加を行うこともできる。
【0039】
工程(2)
本発明の工程(2)は、工程(1)で形成されたベース塗膜上に、光輝性顔料分散体(Y)を塗装して乾燥膜厚として0.01~1.0μmである光輝性塗膜を形成する工程である。
【0040】
光輝性顔料分散体(Y)
上述のベース塗膜に光輝性顔料分散体(Y)を塗装して、光輝性塗膜を形成することができる。
【0041】
光輝性塗膜は、ハイライトで高い光沢度を有し、ハイライトからシェードまで全体に明度が高く補修性に優れた白い金属調の複層塗膜を形成する観点から、乾燥膜厚として0.01~1.0μmであり、好ましくは0.1~0.8μmである。
【0042】
光輝性顔料分散体(Y)は、アルミニウムフレーク顔料(A)、酸化チタン(B)、水酸基含有アクリル樹脂(C)、粘性調整剤(D)及び水を含有する。
【0043】
アルミニウムフレーク顔料(A)
前記アルミニウムフレーク顔料(A)は、一般にアルミニウムをボールミル又はアトライターミル中で粉砕媒液の存在下、粉砕助剤を用いて粉砕、摩砕して製造される。該アルミニウムフレーク顔料(A)の製造工程における粉砕助剤としては、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸等の高級脂肪酸のほか、脂肪族アミン、脂肪族アミド、脂肪族アルコールが使用される。上記粉砕媒液としてはミネラルスピリットなどの脂肪族系炭化水素が使用される。
【0044】
上記アルミニウムフレーク顔料(A)は、平均粒子径が1~100μmの範囲内のものを使用することが好ましく、より好ましくは平均粒子径が5~50μmの範囲内、特に好ましくは7~30μmの範囲内のものである。厚さは0.01~2.0μmの範囲内のものを使用することが好ましく、特に好ましくは0.02~1.0μmの範囲内のものである。
【0045】
光輝性顔料分散体(Y)におけるアルミニウムフレーク顔料(A)の含有量は、ハイライトで高い光沢度を有し、ハイライトからシェードまで全体に明度が高く補修性に優れた白い金属調の複層塗膜を形成する観点から、光輝性顔料分散体(Y)の全固形分中1~30質量%であることが好ましく、5~20質量%であることがさらに好ましい。
【0046】
酸化チタン(B)
光輝性顔料分散体(Y)における酸化チタン(B)の含有量は、光輝性顔料分散体(Y)の全固形分中10~20質量%であり、好適には12~18質量%である。
酸化チタン(B)の含有量が上記範囲内であることにより、ハイライトで高い光沢度を有し、ハイライトからシェードまで全体に明度が高く補修性に優れた白い金属調の複層塗膜を形成することができる。
【0047】
また、光輝性顔料分散体(Y)におけるアルミニウムフレーク顔料(A)及び酸化チタン(B)の配合割合は、アルミニウムフレーク顔料(A)/酸化チタン(B)の質量比で、0.8~1.2であり、好適には0.85~1.15である。
【0048】
アルミニウムフレーク顔料(A)及び酸化チタン(B)の配合割合が上記範囲内であることにより、ハイライトで高い光沢度を有し、ハイライトからシェードまで全体に明度が高く補修性に優れた白い金属調の複層塗膜を形成することができる。
【0049】
水酸基含有アクリル樹脂(C)
水酸基含有アクリル樹脂(C)は、1分子中に少なくとも1個の水酸基を有するアクリル樹脂である。水酸基含有アクリル樹脂(C)は、従来から水性塗料に使用されているそれ自体既知の水溶性又は水分散性の水酸基含有アクリル樹脂を使用することができる。水酸基含有アクリル樹脂(C)は、例えば、水酸基含有重合性不飽和モノマー及び該水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーを、それ自体既知の方法、例えば、溶液重合などの方法により、共重合せしめることによって製造することができる。
【0050】
水酸基含有重合性不飽和モノマーは、1分子中に水酸基及び重合性不飽和結合をそれぞれ1個以上有する化合物であり、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート及びポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のグリコールとアクリル酸又はメタクリル酸とのモノエステル化物;上記多価アルコールとアクリル酸又はメタクリル酸とのモノエステル化物にε-カプロラクトンを開環重合した化合物などが挙げられる。
【0051】
水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーは、水酸基含有アクリル樹脂に望まれる特性に応じて適宜選択して使用することができる。該モノマーの具体例を以下に列挙する。これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0052】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」はアクリレート又はメタクリレートを意味する。「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。また、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル又はメタクリロイルを意味する。また、「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミド又はメタクリルアミドを意味する。
(i) アルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート:例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等。
(ii) イソボルニル基を有する重合性不飽和モノマー:イソボルニル(メタ)アクリレート等。
(iii) アダマンチル基を有する重合性不飽和モノマー:アダマンチル(メタ)アクリレート等。
(iv) トリシクロデセニル基を有する重合性不飽和モノマー:トリシクロデセニル(メタ)アクリレート等。
(v) 芳香環含有重合性不飽和モノマー:ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等。
(vi) アルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー:ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等。
(vii) フッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー:パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等。
(viii) マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー。
(ix) ビニル化合物:N-ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等。
(x) カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー:(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート等。
(xi) 含窒素重合性不飽和モノマー:(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン化合物との付加物等。
(xii) 重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー:アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等。
(xiii) エポキシ基含有重合性不飽和モノマー:グリシジル(メタ)アクリレート、β-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等。
(xiv) 分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート。
(xv) スルホン酸基を有する重合性不飽和モノマー:2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-スルホエチル(メタ)アクリレート、アリルスルホン酸、4-スチレンスルホン酸等;これらスルホン酸のナトリウム塩及びアンモニウム塩等。
(xvi) リン酸基を有する重合性不飽和モノマー:アシッドホスホオキシエチル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシプロピル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシポリ(オキシエチレン)グリコール(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシポリ(オキシプロピレン)グリコール(メタ)アクリレート等。
(xvii) 紫外線吸収性官能基を有する重合性不飽和モノマー:2-ヒドロキシ-4(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(3-アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-(3-アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2-[2-ヒドロキシ-5-[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール等。
(xviii) 光安定性重合性不飽和モノマー:4-(メタ)アクリロイルオキシ1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-シアノ-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-(メタ)アクリロイル-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-(メタ)アクリロイル-4-シアノ-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-クロトノイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-クロトノイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-クロトノイル-4-クロトノイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等。
(xix) カルボニル基を有する重合性不飽和モノマー:アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ホルミルスチロール、4~7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)等。
(xx) 酸無水物基を有する重合性不飽和モノマー:無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等。
【0053】
水酸基含有アクリル樹脂(C)は水酸基価が10~150mgKOH/gであることが好ましく、50~100mgKOH/gであることがより好ましい。酸価は150mgKOH/g以下であることが好ましく、145mgKOH/g以下であることがより好ましい。重量平均分子量は1000~100000であることが好ましく、2000~60000であることがより好ましい。
【0054】
なお、本明細書において、水酸基含有アクリル樹脂(C)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した保持時間(保持容量)を、同一条件で測定した分子量既知の標準ポリスチレンの保持時間(保持容量)によりポリスチレンの分子量に換算して求めた値である。具体的には、ゲルパーミエーションクロマトグラフ装置として、「HLC-8120GPC」(商品名、東ソー社製)を使用し、カラムとして、「TSKgel G4000HXL」、「TSKgel G3000HXL」、「TSKgel G2500HXL」及び「TSKgel G2000HXL」(商品名、いずれも東ソー社製)の計4本を使用し、検出器として、示差屈折率計を使用し、移動相:テトラヒドロフラン、測定温度:40℃、流速:1mL/minの条件下で測定することができる。
【0055】
光輝性顔料分散体(Y)における水酸基含有アクリル樹脂(C)の含有量は、ハイライトで高い光沢度を有し、ハイライトからシェードまで全体に明度が高く補修性に優れた白い金属調の複層塗膜を形成する観点から、光輝性顔料分散体(Y)の全固形分中0.5~10質量%であることが好ましく、1~5質量%であることがさらに好ましい。
【0056】
粘性調整剤(D)
光輝性顔料分散体(Y)における粘性調整剤(D)としては、既知のものを使用できるが、例えば、シリカ系微粉末、鉱物系粘性調整剤、硫酸バリウム微粒化粉末、ポリアミド系粘性調整剤、有機樹脂微粒子粘性調整剤、ジウレア系粘性調整剤、ウレタン会合型粘性調整剤、アクリル膨潤型であるポリアクリル酸系粘性調整剤、セルロース系粘性調整剤等を挙げることができる。なかでも金属調光沢に優れた塗膜を得る観点から特に、鉱物系粘性調整剤、ポリアクリル酸系粘性調整剤、セルロース系粘性調整剤を使用することが好ましい。
【0057】
鉱物系粘性調整剤としては、その結晶構造が2:1型構造を有する膨潤性層状ケイ酸塩が挙げられる。具体的には、天然又は合成のモンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチブンサイト、バイデライト、ノントロナイト、ベントナイト、ラポナイト等のスメクタイト族粘土鉱物や、Na型テトラシリシックフッ素雲母、Li型テトラシリシックフッ素雲母、Na塩型フッ素テニオライト、Li型フッ素テニオライト等の膨潤性雲母族粘土鉱物及びバーミキュライト、又はこれらの置換体や誘導体、或いはこれらの混合物が挙げられる。
【0058】
ポリアクリル酸系粘性調整剤としては、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体等を挙げることができる。
【0059】
該ポリアクリル酸系粘性調整剤の市販品として、例えば、ダウケミカル社製の「プライマルASE-60」、「プライマルTT615」、「プライマルRM5」(以上、商品名)、サンノプコ社製の「SNシックナー613」、「SNシックナー618」、「SNシックナー630」、「SNシックナー634」、「SNシックナー636」(以上、商品名)等が挙げられる。ポリアクリル酸系粘性調整剤の固形分酸価としては、30~300mgKOH/g、好ましくは80~280mgKOH/gの範囲内のものを使用することができる。
【0060】
セルロース系粘性調整剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドリキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びメチルセルロース、セルロースナノファイバーゲル等が挙げられる。
【0061】
これらの粘性調整剤はそれぞれ単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0062】
光輝性顔料分散体(Y)における粘性調整剤(D)の含有量は、ハイライトで高い光沢度を有した複層塗膜を形成する観点から、光輝性顔料分散体(Y)の全固形分中5~30質量%であることが好ましく、10~25質量%であることがさらに好ましい。
【0063】
その他の成分
光輝性顔料分散体(Y)は、さらに必要に応じて、水酸基含有アクリル樹脂(C)以外の樹脂、有機溶剤、顔料分散剤、沈降防止剤、消泡剤、紫外線吸収剤、表面調整剤等を含有してもよい。
【0064】
上記水酸基含有アクリル樹脂(C)以外の樹脂としては、水酸基を含有しないアクリル樹脂、水酸基を含有してもよいポリエステル樹脂、水酸基を含有してもよいアルキド樹脂、水酸基を含有してもよいウレタン樹脂などが挙げられ、なかでも、水酸基含有ポリエステル樹脂を含有することが好ましい。
【0065】
光輝性顔料分散体(Y)が、水酸基含有ポリエステル樹脂を含有する場合、その含有量は、光輝性顔料分散体(Y)の全固形分中10~60質量%であることが好ましく、20~50質量%であることがさらに好ましい。
【0066】
光輝性顔料分散体(Y)の塗装
光輝性顔料分散体(Y)は、前述の成分を混合分散せしめることによって調製され、塗装時の固形分含有率を、光輝性顔料分散体(Y)に基づいて、0.1~7質量%、好ましくは1~5質量%に調整しておくことが好ましい。
【0067】
光輝性顔料分散体(Y)の粘度は、温度20℃においてB型粘度計で測定する60rpmで1分後の粘度(本明細書では「B60値」ということがある)が30~1000mPa・sであることが好適である。このとき、使用する粘度計は、「LVDV-I」(商品名、BROOKFIELD社製、B型粘度計)である。
【0068】
光輝性顔料分散体(Y)は、静電塗装、エアスプレー、エアレススプレーなどの方法で塗装することができる。本発明の複層塗膜製造方法においては、特に回転霧化式の静電塗装が好ましい。
【0069】
工程(3)
本発明の工程(3)は、工程(2)で形成された光輝性塗膜上に、水酸基含有アクリル樹脂及びポリイソシアネート化合物を含有する2液型クリヤー塗料(Z)を塗装してクリヤー塗膜を形成する工程である。
【0070】
2液型クリヤー塗料(Z)
2液型クリヤー塗料(Z)は、水酸基含有アクリル樹脂及びポリイソシアネート化合物を含有する。
【0071】
上記水酸基含有アクリル樹脂は、例えば、水酸基含有重合性不飽和モノマー及び該水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーを、それ自体既知の方法、例えば、有機溶媒中での溶液重合法、水中でのエマルション重合法等の方法により共重合せしめることによって製造することができる。
【0072】
上記水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、前記水酸基含有アクリル樹脂(C)の説明欄に記載した水酸基含有重合性不飽和モノマーを使用することができる。
【0073】
また、上記水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーとしては、上記水酸基含有アクリル樹脂(C)の説明欄に記載した水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーを使用することができる。
【0074】
前記ポリイソシアネート化合物は、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物であって、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、該ポリイソシアネートの誘導体などを挙げることができる。
【0075】
上記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-又は2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトヘキサン酸メチル(慣用名:リジンジイソシアネート)などの脂肪族ジイソシアネート;2,6-ジイソシアナトヘキサン酸2-イソシアナトエチル、1,6-ジイソシアナト-3-イソシアナトメチルヘキサン、1,4,8-トリイソシアナトオクタン、1,6,11-トリイソシアナトウンデカン、1,8-ジイソシアナト-4-イソシアナトメチルオクタン、1,3,6-トリイソシアナトヘキサン、2,5,7-トリメチル-1,8-ジイソシアナト-5-イソシアナトメチルオクタンなどの脂肪族トリイソシアネートなどを挙げることができる。
【0076】
前記脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、4-メチル-1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート(慣用名:水添TDI)、2-メチル-1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-もしくは1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(慣用名:水添キシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物、メチレンビス(4,1-シクロヘキサンジイル)ジイソシアネート(慣用名:水添MDI)、ノルボルナンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート;1,3,5-トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5-トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2-(3-イソシアナトプロピル)-2,5-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2-(3-イソシアナトプロピル)-2,6-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3-(3-イソシアナトプロピル)-2,5-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-3-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-3-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)-ヘプタン、6-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタンなどの脂環族トリイソシアネートなどを挙げることができる。
【0077】
前記芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、メチレンビス(4,1-フェニレン)ジイソシアネート(慣用名:MDI)、1,3-もしくは1,4-キシリレンジイソシアネート又はその混合物、ω,ω’-ジイソシアナト-1,4-ジエチルベンゼン、1,3-又は1,4-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物などの芳香脂肪族ジイソシアネート;1,3,5-トリイソシアナトメチルベンゼンなどの芳香脂肪族トリイソシアネートなどを挙げることができる。
【0078】
前記芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート(慣用名:2,4-TDI)もしくは2,6-トリレンジイソシアネート(慣用名:2,6-TDI)もしくはその混合物、4,4’-トルイジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;トリフェニルメタン-4,4’,4”-トリイソシアネート、1,3,5-トリイソシアナトベンゼン、2,4,6-トリイソシアナトトルエンなどの芳香族トリイソシアネート;4,4’-ジフェニルメタン-2,2’,5,5’-テトライソシアネートなどの芳香族テトライソシアネートなどを挙げることができる。
【0079】
また、前記ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネートのダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、オキサジアジントリオン、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)、クルードTDIなどを挙げることができる。
【0080】
上記ポリイソシアネート及びその誘導体は、それぞれ単独で用いてもよく又は2種以上併用してもよい。
【0081】
本発明における、水酸基含有アクリル樹脂の水酸基とポリイソシアネート化合物のイソシアネート基の当量比(OH/NCO)は、塗膜の硬化性及び耐擦り傷性等の観点から、0.5~2.0の範囲内であることが好ましく、0.8~1.5の範囲内であることがさらに好ましい。
【0082】
クリヤー塗料(Z)には、さらに必要に応じて、水や有機溶剤等の溶媒、硬化触媒、消泡剤、紫外線吸収剤等の添加剤を適宜配合することができる。
【0083】
クリヤー塗料(Z)の形態は特に制限されるものではないが、通常、有機溶剤型の塗料組成物として使用される。この場合に使用する有機溶剤としては、各種の塗料用有機溶剤、例えば、芳香族又は脂肪族炭化水素系溶剤;エステル系溶剤;ケトン系溶剤;エーテル系溶剤等が使用できる。使用する有機溶剤は、水酸基含有樹脂等の調製時に用いたものをそのまま用いてもよいし、更に適宜加えてもよい。
【0084】
クリヤー塗料(Z)の固形分濃度は、30~70質量%程度が好ましく、40~60質量%程度の範囲内であるのがより好ましい。
【0085】
クリヤー塗料(Z)の塗装は、特に限定されず、例えば、エアスプレー、エアレススプレー、回転霧化塗装、カーテンコート塗装などの塗装方法により行なうことができる。これらの塗装方法は、必要に応じて、静電印加してもよい。これらのうち静電印加による回転霧化塗装が好ましい。クリヤー塗料(Z)の塗布量は、通常、硬化膜厚として、10~50μm程度となる量とするのが好ましい。
【0086】
また、クリヤー塗料(Z)の塗装にあたっては、クリヤー塗料(Z)の粘度を、塗装方法に適した粘度範囲、例えば、静電印加による回転霧化塗装においては、20℃でフォードカップNo.4粘度計による測定で、15~60秒程度の粘度範囲となるように、有機溶剤等の溶媒を用いて、適宜、調整しておくことが好ましい。
【0087】
工程(4)
本発明の工程(4)は、工程(1)~(3)で形成された未硬化のベース塗膜、未硬化の光輝性塗膜及び未硬化のクリヤー塗膜を加熱することによって、これら3つの塗膜を同時に硬化させる工程である。
【0088】
上記加熱は公知の手段により行うことができ、例えば、熱風炉、電気炉、赤外線誘導加熱炉等の乾燥炉を適用できる。加熱温度は70~150℃、好ましくは80~140℃の範囲内にあることが適している。加熱時間は、特に制限されるものではないが、10~40分間、好ましくは20~30分間の範囲内であるのが好適である。
【0089】
<複層塗膜>
本発明の製造方法により形成される複層塗膜は、電着塗膜と、ベース塗膜と、光輝性塗膜と、クリヤー塗膜とをこの順に備えた複層塗膜であって、
前記ベース塗膜は、膜厚が20~35μm、明度L*45が85~95であり、
前記光輝性塗膜は、アルミニウムフレーク顔料(A)及び酸化チタン(B)を含み、膜厚が0.01~1.0μmであり、
前記光輝性塗膜における酸化チタン(B)の含有量が10~20質量%、アルミニウムフレーク顔料(A)/酸化チタン(B)の質量比が0.8~1.2であり、
前記クリヤー塗膜は、水酸基含有アクリル樹脂及びポリイソシアネート化合物の硬化物を含み、
前記複層塗膜の明度L*45が75~85の範囲内であり、60度鏡面光沢度が95~105の範囲内であり、且つフリップフロップ値が0.5~0.7の範囲内である、複層塗膜である。
【0090】
本発明の製造方法により形成される複層塗膜は、明度L*45が75~85の範囲内であり、60度鏡面光沢度が95~105の範囲内であり、且つフリップフロップ値が0.5~0.7の範囲内であり、補修性に優れる。すなわち本発明の製造方法によれば、ハイライトで高い光沢度を有し、ハイライトからシェードまで全体に明度が高く、補修性に優れた、白い金属調の複層塗膜を得ることができる。
【0091】
上記60度鏡面光沢度とは、物体表面からの鏡面反射と基準面(屈折率1.567のガラス)からの鏡面反射光との比を意味し、JIS-Z8741に定義された数値である。具体的には、測定試料面に規定された入射角で規定の開き角の光束を入射し、鏡面反射方向に反射する規定の開き角の光束を受光器で測るもので、いわゆる光沢計を使用して測定される数値である。本明細書においては、光沢計(micro-TRI-gloss、BYK-Gardner社製)を用いて測定した60度鏡面光沢度(60°グロス)として定義するものとする。
【0092】
前記フリップフロップ値とは、観察角度による明度変化の大きさを示す数値である。具体的には、多角度分光測色計「MA-68II」(商品名、ビデオジェットX-Rite社製)を用いて、塗膜に対して45度の角度から照射した光を、正反射光に対して受光角15度及び受光角45度の分光反射率を測定し、分光反射率から計算されたXYZ表色系におけるY値(それぞれY15、Y45とする)を計算し、下記の式によって求めた数値として定義するものとする。
フリップフロップ値(FF値)=2×(Y15-Y45)/(Y15+Y45)
【実施例0093】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものである。
【0094】
水酸基含有アクリル樹脂(C)の製造
製造例1
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器にプロピレングリコールモノプロピルエーテル35部を仕込み85℃に昇温後、メチルメタクリレート30部、2-エチルヘキシルアクリレート20部、n-ブチルアクリレート29部、2-ヒドロキシエチルアクリレート15部、アクリル酸6部、プロピレングリコールモノプロピルエーテル15部及び2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)2.3部の混合物を4時間かけて滴下し、滴下終了後1時間熟成した。その後さらにプロピレングリコールモノプロピルエーテル10部及び2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)1部の混合物を1時間かけて滴下し、滴下終了後1時間熟成した。さらにジエタノールアミン7.4部を加え、固形分55%の水酸基含有アクリル樹脂溶液(C-1)を得た。得られた水酸基含有アクリル樹脂は酸価が47mgKOH/g、水酸基価が72mgKOH/g、重量平均分子量が58,000であった。
【0095】
水酸基含有ポリエステル樹脂(R)の製造
製造例2
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器及び水分離器を備えた反応容器に、トリメチロールプロパン109部、1,6-ヘキサンジオール141部、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物126部及びアジピン酸120部を仕込み、160℃から230℃迄3時間かけて昇温させた後、230℃で4時間縮合反応させた。次いで、得られた縮合反応生成物に、カルボキシル基を導入するために、無水トリメリット酸38.3部を加えて、170℃で30分間反応させた後、2-エチル-1-ヘキサノールで希釈し、固形分70%の水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(R-1)を得た。得られた水酸基含有ポリエステル樹脂は、酸価が46mgKOH/g、水酸基価が150mgKOH/g、数平均分子量が1400であった。
【0096】
酸化チタン顔料分散液(P)の製造
製造例3
撹拌混合容器に、水酸基含有アクリル樹脂溶液(C-1)3.6部(固形分2部)、「JR-903」(商品名、ルチル型酸化チタン顔料、テイカ社製)15部及び蒸留水15.4部を入れ、均一に混合し、更に、2-(ジメチルアミノ)エタノールを添加して、pH7.5に調整した。得られた混合物を225ml容の樹脂性のビンに入れ、1.5mm径のジルコニアビーズ130部を投入して密栓し、振とう型ペイントコンディショナーを使用して120分分散した。分散後100メッシュの金網濾過を行なってジルコニアビーズを除去して、固形分50%の酸化チタン顔料分散液(P-1)を得た。
【0097】
製造例4~7
表1に記載の配合とする以外は全て製造例3と同様にして酸化チタン顔料分散液(P-2)~(P-5)を得た。
【0098】
【表1】
【0099】
光輝性顔料分散体(Y)の製造
製造例8
蒸留水2425部、「アルペースト EMERAL EMR-B6360」(商品名、ノンリーフィングアルミ、東洋アルミニウム社製、平均粒子径D50:10.3μm、厚さ:0.19μm、アルミニウム含有量47%、表面がシリカ処理されている)31.9部(固形分15部)、酸化チタン顔料分散液(P-1)34部(固形分17部)、「Acrysol ASE-60」(ポリアクリル酸系粘性調整剤、ダウケミカル社製、固形分:28%)53.6部(固形分15部)、「レオクリスタ」(商品名、セルロース系粘性調整剤、第一工業製薬社製、固形分2%)250部(固形分5部)、水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(R-1)57部(固形分40部)及び「BYK348」(商品名、BYK社製、シリコーン系表面調整剤、不揮発分:100質量%)8部(固形分8部)を配合して攪拌混合し、固形分含有率3.5質量%の光輝性顔料分散体(Y-1)を調製した。
【0100】
製造例9~16
表2に記載の配合とする以外は全て製造例8と同様にして光輝性顔料分散体(Y-2)~(Y-9)を得た。
なお、表2における光輝性分散体(Y)の全固形分中の酸化チタン(B)の含有量は、光輝性塗膜における酸化チタン(B)の含有量と同値である。
【0101】
【表2】
【0102】
被塗物の作製
脱脂及びりん酸亜鉛処理した鋼板(JISG3141、大きさ400mm×300mm×0.8mm)にカチオン電着塗料「エレクロンGT-10」(商品名:関西ペイント社製、エポキシ樹脂ポリアミン系カチオン樹脂に架橋剤としてブロックポリイソシアネート化合物を使用したもの)を硬化塗膜に基づいて膜厚が20μmになるように電着塗装し、170℃で20分加熱して架橋硬化させ、電着塗膜を形成せしめ、被塗物とした。
【0103】
試験板の作成
実施例1
工程(1):被塗物上に、ベース塗料(X-1)「WP-580Z N-9.0」(商品名、関西ペイント社製、ポリエステル樹脂系水性中塗り塗料、得られる塗膜のL*45値:90)を回転霧化型のベル型塗装機を用いて、硬化膜厚27μmになるように静電塗装し、3分間放置し、ベース塗膜を形成した。
工程(2):次いで、ベース塗膜上に、前述のように作成した光輝性顔料分散体(Y-1)を、ABB社製ロボットベルを用いて、ブース温度23℃、湿度68%の条件で、乾燥塗膜として、0.5μmとなるように塗装した。3分間放置し、その後、80℃にて3分間プレヒートし、光輝性塗膜を形成した。
工程(3):次いで、光輝性塗膜上に、クリヤー塗料(Z-1)「KINO6510」(商品名、関西ペイント株式会社製、水酸基/イソシアネート基硬化型アクリル樹脂・ウレタン樹脂系2液型有機溶剤型塗料)を、ABB社製ロボットベルを用いて、ブース温度23℃、湿度68%の条件で乾燥塗膜として、30μmとなるように塗装しクリヤー塗膜を形成した。
工程(4):次いで、室温にて7分間放置した後に、熱風循環式乾燥炉内を使用して、140℃で30分間加熱し、複層塗膜を同時に乾燥せしめて試験板とした。
ここで、乾燥塗膜の膜厚は、下記式から算出した。以下の実施例についても同様である。
x=(sc*10000)/(S*sg)
x:膜厚[μm]
sc:塗着固形分[g]
S:塗着固形分の評価面積[cm
sg:塗膜比重[g/cm]。
【0104】
実施例2~9、比較例1~8
表3または表4に記載の塗料及び膜厚とする以外は全て実施例1と同様にして試験板を得た。
なお、表中のベース塗料(X-2)は以下の通りである。
(X-2):「WP-522H N-8.0」(商品名、関西ペイント社製、ポリエステル樹脂系水性中塗り塗料、得られる塗膜のL*45値:80)。
【0105】
塗膜評価
上記のようにして得られた各試験板について、以下の方法で塗膜を評価し、表3および表4にその結果を示した。
【0106】
明度L*45
多角度分光光度計「MA-68II」(商品名、ビデオジェットX-Rite社製)を用いて測定した分光反射率から計算して得られた数値を使用した。
【0107】
60°鏡面光沢度
光沢計「micro-TRI-gloss」(商品名、BYK-Gardner社製)を用いて測定した。
【0108】
フリップフロップ値
多角度分光光度計「MA-68II」(商品名、ビデオジェットX-Rite社製)を用いて、塗膜に対して45度の角度から照射した光を、正反射光に対して受光角15度及び受光角45度の分光反射率を測定し、分光反射率から計算されたXYZ表色系におけるY値(それぞれY15、Y45とする)を計算し、下記の式によって算出した。
フリップフロップ値(FF値)=2×(Y15-Y45)/(Y15+Y45)
【0109】
補修性
上記のようにして得られた各試験板の複層塗膜面を、半径約2cmの円状に、円状の中心部の電着塗膜の表面が露出されるまで、#600耐水研磨紙及び#1200耐水研磨紙で研磨除去した。
次いで、研磨部を中心に、半径約15cmの円状に、「レタンPGエコ ボカシレベリング剤」(商品名、関西ペイント社製、有機溶剤型塗料組成物)をエアスプレーで3μmとなるように塗装し、1分間放置した。
次いで、研磨部を中心に、半径約10cmの円状に、「レタンPGハイブリッドエコ 531ホワイトベース」(商品名、関西ペイント社製、水酸基/イソシアネート硬化の有機溶剤型塗料組成物)をエアスプレーで40μmとなるように塗装し、5分間放置した。
次いで、研磨部を中心に、半径約15cmの円状に、「レタンPGハイブリッドエコ 832 シルキーフラッシュMベース」(商品名、関西ペイント社製、水酸基/イソシアネート硬化の有機溶剤型塗料組成物)をエアスプレーで1μmとなるように塗装し、2分間放置した。
次いで、研磨部を中心に、半径約20cmの円状に、「レタンPGエコ HSクリヤー」(商品名、関西ペイント社製、水酸基/イソシアネート硬化の有機溶剤型塗料組成物)をエアスプレーで40μmとなるように塗装し、5分間放置した後に、熱風循環式乾燥炉内を使用して、60℃で8分間加熱し、補修性の評価を行った。
評価は、塗膜の研磨除去を行なった部分と行なわなかった部分の外観を下記基準により行った。◎及び〇を合格とする。
◎:塗膜の研磨除去を行なった部分と行なわなかった部分で、差が認められない。
〇:塗膜の研磨除去を行なった部分と行なわなかった部分で、わずかに差が認められるが、実用上問題ない。
×:塗膜の研磨除去を行なった部分と行なわなかった部分で、はっきりとした差がある。
【0110】
【表3】
【0111】
【表4】
【0112】
上記結果より、実施例1~9の製造方法によれば、明度、60°鏡面光沢度、フリップフロップ値、および補修性のいずれも良好な結果が得られたことから、ハイライトで高い光沢度を有し、ハイライトからシェードまで全体に明度が高く、補修性に優れた複層塗膜が形成できた。また、高い明度、高い60°鏡面光沢度を有することから、白い金属調の複層塗膜が形成できた。
ベース塗膜の膜厚が薄い比較例1の製造方法では、複層塗膜の明度が低下した。
ベース塗膜の膜厚が厚い比較例2の製造方法では、複層塗膜の60°鏡面光沢度およびフリップフロップ値が低下した。
ベース塗膜の明度が小さい比較例3の製造方法では、複層塗膜の明度およびフリップフロップ値が低下した。
光輝性顔料分散体(Y)におけるアルミニウムフレーク顔料(A)及び酸化チタン(B)の配合割合が特定範囲よりも大きい比較例4の製造方法では、複層塗膜のフリップフロップ値が過剰であり、かつ補修性が低下した。
光輝性顔料分散体(Y)におけるアルミニウムフレーク顔料(A)及び酸化チタン(B)の配合割合が特定範囲よりも小さい比較例5の製造方法では、複層塗膜のフリップフロップ値が低下した。
光輝性顔料分散体(Y)における酸化チタン(B)の配合量が特定範囲よりも大きい比較例6の製造方法では、複層塗膜の補修性が低下した。
光輝性顔料分散体(Y)における酸化チタン(B)の配合量が特定範囲よりも小さい比較例7の製造方法では、複層塗膜のフリップフロップ値が低下した。
光輝性塗膜の膜厚が大きい比較例8の製造方法では、複層塗膜の明度が小さく、60°鏡面光沢度およびフリップフロップ値が過剰であり、補修性が低下した。
【0113】
以上、本発明の実施形態及び実施例について具体的に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
例えば、上述の実施形態及び実施例において挙げた構成、方法、工程、形状、材料及び数値などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料及び数値などを用いてもよい。
また、上述の実施形態の構成、方法、工程、形状、材料及び数値などは、本発明の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。