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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167952
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】繊維強化材料
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/06 20060101AFI20231116BHJP
   D06M 17/00 20060101ALI20231116BHJP
   B32B 5/12 20060101ALN20231116BHJP
【FI】
B32B5/06
D06M17/00 H
D06M17/00 M
B32B5/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079519
(22)【出願日】2022-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000219749
【氏名又は名称】株式会社TISM
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山田 純
(72)【発明者】
【氏名】赤池 文敏
(72)【発明者】
【氏名】辻 博史
(72)【発明者】
【氏名】大橋 功
(72)【発明者】
【氏名】志摩 和彦
【テーマコード(参考)】
4F100
4L032
【Fターム(参考)】
4F100AG00A
4F100AK01B
4F100AR00A
4F100AR00B
4F100AT00
4F100BA03
4F100DG04B
4F100DG06B
4F100DG11A
4F100EC082
4F100EC08A
4F100EC08B
4F100EH902
4F100GB33
4F100GB81
4F100GB87
4F100JK01
4F100JK07
4L032AA08
4L032AB01
4L032AC01
4L032AC02
4L032DA00
4L032EA00
4L032EA06
(57)【要約】
【課題】厚みの異なる領域間における剛性の低下を抑制できる繊維強化材料を提供する。
【解決手段】本開示の一態様は、基材層と、基材層に縫合された第1繊維束で構成された第1繊維層と、を備える繊維強化材料である。第1繊維層は、第1ピッチで第1繊維束が縫合された第1領域と、第1ピッチとは異なる第2ピッチで第1繊維束が縫合された第2領域と、を有する。第1繊維束の少なくとも一部は、第1領域と第2領域とに跨って縫合される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、
前記基材層に縫合された第1繊維束で構成された第1繊維層と、
を備え、
前記第1繊維層は、
第1ピッチで前記第1繊維束が縫合された第1領域と、
前記第1ピッチとは異なる第2ピッチで前記第1繊維束が縫合された第2領域と、
を有し、
前記第1繊維束の少なくとも一部は、前記第1領域と前記第2領域とに跨って縫合される、繊維強化材料。
【請求項2】
請求項1に記載の繊維強化材料であって、
前記第1繊維束は、前記第1領域と前記第2領域との境界近傍において折り返された第1折り返し部を有する、繊維強化材料。
【請求項3】
請求項1に記載の繊維強化材料であって、
前記基材層に縫合された第2繊維束で構成されると共に、前記第1繊維層を被覆する第2繊維層をさらに備え、
前記第2繊維層は、
第3ピッチで前記第2繊維束が縫合された第3領域と、
前記第3ピッチとは異なる第4ピッチで前記第2繊維束が縫合された第4領域と、
を有し、
前記第3領域は、前記第1領域と重なり、
前記第4領域は、前記第2領域と重なり、
前記第2繊維束の少なくとも一部は、前記第3領域と前記第4領域とに跨って縫合される、繊維強化材料。
【請求項4】
請求項3に記載の繊維強化材料であって、
前記第1繊維束は、前記第1領域と前記第2領域との境界近傍において折り返された第1折り返し部を有し、
前記第2繊維束は、前記第3領域と前記第4領域との境界近傍において折り返された第2折り返し部を有し、
前記第1繊維束の前記第1折り返し部と、前記第2繊維束の前記第2折り返し部とは、前記基材層の厚み方向から視てずれた位置に配置される、繊維強化材料。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の繊維強化材料であって、
前記第1繊維層は、前記第1ピッチとは異なる第5ピッチで前記第1繊維束が縫合された第5領域をさらに有し、
前記第1繊維束の少なくとも一部は、前記第1領域と前記第5領域とに跨って縫合される、繊維強化材料。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の繊維強化材料であって、
前記第1繊維層は、前記第1ピッチよりも大きく、かつ、前記第2ピッチよりも小さい第6ピッチで前記第1繊維束が縫合された第6領域をさらに有し、
前記第6領域は、前記第1領域と前記第2領域とを連結するように配置され、
前記第1繊維束の少なくとも一部は、前記第1領域と、前記第6領域と、前記第2領域とに跨って縫合される、繊維強化材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、繊維強化材料に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆるテーラードファイバープレイスメント(TFP)によって基材へ繊維束を縫合した繊維強化材料が公知である(特許文献1参照)。この繊維強化材料では、繊維束の延伸方向及びピッチを任意に設計することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-15321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の繊維強化材料では、繊維束のピッチを変えることで形状及び厚みの調整が可能である。一方、1枚の基材上で厚みを変化させる場合、繊維束のピッチの異なる複数の領域を設ける必要がある。
【0005】
このようなピッチの異なる複数の領域が基材上に存在する場合、領域間で繊維束が途切れ、力の伝達経路が遮断される。その結果、繊維強化材料の剛性が局所的に低下するおそれがある。
【0006】
本開示の一局面は、厚みの異なる領域間における剛性の低下を抑制できる繊維強化材料を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、基材層(2)と、基材層(2)に縫合された第1繊維束(10)で構成された第1繊維層(3)と、を備える繊維強化材料(1)である。第1繊維層(3)は、第1ピッチで第1繊維束(10)が縫合された第1領域(31)と、第1ピッチとは異なる第2ピッチで第1繊維束(10)が縫合された第2領域(32)と、を有する。第1繊維束(10)の少なくとも一部は、第1領域(31)と第2領域(32)とに跨って縫合される。
【0008】
このような構成によれば、ピッチの異なる第1領域(31)と第2領域(32)とに跨って第1繊維束(10)が縫合されることで、これらの領域間での力の伝達経路が第1繊維束(10)によって形成される。そのため、厚みの異なる第1領域(31)及び第2領域(32)の間における剛性の低下を抑制できる。
【0009】
本開示の一態様では、第1繊維束(10)は、第1領域(31)と第2領域(32)との境界近傍において折り返された第1折り返し部(11)を有してもよい。このような構成によれば、第1繊維束(10)を第1領域(31)又は第2領域(32)内で切断せずにピッチを調整することができる。その結果、第1領域(31)及び第2領域(32)の間における剛性の低下抑制効果を高めることができる。
【0010】
本開示の一態様は、基材層(2)に縫合された第2繊維束(20)で構成されると共に、第1繊維層(3)を被覆する第2繊維層(4)をさらに備えてもよい。第2繊維層(4)は、第3ピッチで第2繊維束(20)が縫合された第3領域(41)と、第3ピッチとは異なる第4ピッチで第2繊維束(20)が縫合された第4領域(42)と、を有してもよい。第3領域(41)は、第1領域(31)と重なってもよい。第4領域(42)は、第2領域(32)と重なってもよい。第2繊維束(20)の少なくとも一部は、第3領域(41)と第4領域(42)とに跨って縫合されてもよい。このような構成によれば、繊維束を基材層(2)の厚み方向に重ねて配置しつつ、ピッチの異なる領域間(つまり、第1領域(31)と第2領域(32)との間、及び第3領域(41)と第4領域(42)との間)における剛性の低下抑制効果を高めることができる。
【0011】
本開示の一態様では、第1繊維束(10)は、第1領域(31)と第2領域(32)との境界近傍において折り返された第1折り返し部(11)を有してもよい。第2繊維束(20)は、第3領域(41)と第4領域(42)との境界近傍において折り返された第2折り返し部(21)を有してもよい。第1繊維束(10)の第1折り返し部(11)と、第2繊維束(20)の第2折り返し部(21)とは、基材層(2)の厚み方向から視てずれた位置に配置されてもよい。このような構成によれば、第1繊維束(10)及び第2繊維束(20)を切断せずにピッチを調整することができる。また、第1繊維束(10)の折り返し点と第2繊維束(20)の折り返し点とが重ならないように配置されることで、繊維強化材料(1)の厚みを段階的に変化させることができる。
【0012】
本開示の一態様では、第1繊維層(3)は、第1ピッチとは異なる第5ピッチで第1繊維束(10)が縫合された第5領域(35)をさらに有してもよい。第1繊維束(10)の少なくとも一部は、第1領域(31)と第5領域(35)とに跨って縫合されてもよい。このような構成によれば、1本の第1繊維束(10)によって、第1領域(31)と隣接する複数の領域(32,35)とを連続的に形成することができる。
【0013】
本開示の一態様では、第1繊維層(3)は、第1ピッチよりも大きく、かつ、第2ピッチよりも小さい第6ピッチで第1繊維束(10)が縫合された第6領域(36)をさらに有してもよい。第6領域(36)は、第1領域(31)と第2領域(32)とを連結するように配置されてもよい。第1繊維束(10)の少なくとも一部は、第1領域(31)と、第6領域(36)と、第2領域(32)とに跨って縫合されてもよい。このような構成によれば、第1領域(31)と第2領域(32)との間において、繊維強化材料(1)の厚みを段階的に変化させることができる。そのため、第1領域(31)と第2領域(32)との間の領域における応力集中を抑制できると共に、繊維強化材料(1)の形状の設計自由度を高められる。
【0014】
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施形態における繊維強化材料の用途の一例を示す模式図である。
図2図2は、実施形態における繊維強化材料の各層の構造を示す模式的な斜視図である。
図3図3は、図2の繊維強化材料における基材及び第1繊維層の模式的な部分拡大平面図である。
図4図4Aは、図2の繊維強化材料における第1繊維層の模式的な部分拡大平面図であり、図4Bは、図2の繊維強化材料における第2繊維層の模式的な部分拡大図である。
図5図5は、図3とは異なる実施形態における基材及び第1繊維層の模式的な部分拡大平面図である。
図6図6は、図3とは異なる実施形態における基材及び第1繊維層の模式的な部分拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1に示す繊維強化材料1は、シート状の中間基材(つまりプリフォーム)である。繊維強化材料1は、例えば乗物用シート100の外皮部分に用いられる。
【0017】
図2に示すように、繊維強化材料1は、基材層2と、第1繊維層3と、第2繊維層4とを備える。つまり、繊維強化材料1は、多層構造のシートである。なお、図2には、基材層2、第1繊維層3及び第2繊維層4を分離して図示しているが、第1繊維層3及び第2繊維層4は、実際には基材層2に縫合されている。また、繊維強化材料1は、3層以上の繊維層を備えてもよい。さらに、繊維強化材料1は、基材層2、第1繊維層3及び第2繊維層4に含侵された樹脂を有してもよい。
【0018】
<基材層>
基材層2は、繊維束が縫合可能なものであれば、特に限定されない。基材層2としては、例えば、ガラスクロス等の繊維集合体(つまり、織物、不織布、又は編物)が使用できる。
【0019】
<第1繊維層>
図3に示すように、第1繊維層3は、基材層2に縫合された第1繊維束10で構成されている。
【0020】
第1繊維束10は、一定の長さを有する複数の連続繊維を束ねたものである。第1繊維束10を構成する繊維としては、炭素、ガラス、金属等で形成された無機繊維、及び樹脂で形成された有機繊維が使用できる。
【0021】
第1繊維束10は、複数の繊維が引き揃えられることのみで構成されてもよい。また、第1繊維束10において、補助糸によって複数の繊維が結束されてもよく、接着剤等によって複数の繊維が結着されてもよい。第1繊維束10は、撚りを有してもよいし、撚りを有しなくてもよい。
【0022】
第1繊維束10は、基材層2に対し縫糸(図示省略)によって縫合されている。縫糸は、第1繊維束10の延伸方向(つまり繊維束を構成する繊維の配向方向)と交差する向きに第1繊維束10に掛け渡される。縫糸としては、例えば、樹脂繊維で構成されたマルチフィラメントが使用される。
【0023】
第1繊維層3は、一本の連続した第1繊維束10で構成されてもよいし、複数の第1繊維束10で構成されてもよい。第1繊維層3を構成する複数の第1繊維束10の太さは、同じあってもよいし、異なっていてもよい。
【0024】
第1繊維束10は、延伸方向と直交する方向(つまり径方向)に一定の間隔(つまりピッチ)で配置された複数の列を構成するように基材層2に縫合されている。第1繊維束10のピッチが小さい領域では、第1繊維束10が密に配置されることで、第1繊維層3の厚みが大きくなる。逆に、第1繊維束10のピッチが大きい領域では、第1繊維束10が疎に配置されることで、第1繊維層3の厚みが小さくなる。
【0025】
第1繊維層3は、ピッチ及び形状の少なくとも一方が異なる複数の領域を有する。図3では、第1ピッチで第1繊維束10が縫合された第1領域31と、第1ピッチとは異なる第2ピッチで第1繊維束10が縫合された第2領域32とが図示されている。第2ピッチは、第1ピッチよりも大きい。そのため、第2領域32の厚みは、第1領域31の厚みよりも小さい。
【0026】
第1領域31と第2領域32とは第1繊維束10の延伸方向において隣接して配置されている。第1繊維束10の少なくとも一部は、第1領域31と第2領域32とに跨って縫合されている。つまり、1本の連続した第1繊維束10に、第1領域31を構成する部位と、第2領域32を構成する部位とが含まれている。
【0027】
具体的には、第1領域31及び第2領域32は、共通する1本の連続した第1繊維束10によって構成されている。また、第1繊維束10は、第1領域31と第2領域32との境界近傍において折り返された複数の第1折り返し部11を有する。
【0028】
第1折り返し部11は、第1領域31から第2領域32に向かう第1繊維束10が、第2領域32から離れる方向に折り返すように屈曲している部位である。第1折り返し部11によって、第1領域31における第1繊維束10の並列数と、第2領域32における第1繊維束10の並列数との差が調整される。そのため、第1領域31と第2領域32との境界において、並列数を調整するために第1繊維束10を切断する必要がなくなる。
【0029】
なお、図3では、第1領域31の内部(具体的には第1領域31の連結端部)に2つの第1折り返し部11が設けられているが、1つのみの第1折り返し部11が設けられてもよいし、3つ以上の第1折り返し部11が設けられてもよい。また、図4Aに示すように、第1折り返し部11は、第2領域32の内部に設けられてもよい。
【0030】
<第2繊維層>
図4Bに示す第2繊維層4は、基材層2に縫合された第2繊維束20で構成されている。第2繊維層4は、第1繊維層3を被覆している。第2繊維層4は、基材層2の厚み方向において第1繊維層3に重なるように、基材層2に対し縫糸(図示省略)によって縫合されている。
【0031】
第2繊維束20は、第1繊維束10と同様に、一定の長さを有する複数の連続繊維を束ねたものである。第2繊維束20の材質、径、長さ等は、第1繊維束10と同じであってもよいし、第1繊維束10と異なってもよい。
【0032】
第2繊維束20は、延伸方向と直交する方向に一定の間隔で配置された複数の列を構成するように基材層2に縫合されている。第2繊維層4は、ピッチ及び形状の少なくとも一方が異なる複数の領域を有する。
【0033】
図4Bでは、第3ピッチで第2繊維束20が縫合された第3領域41と、第3ピッチとは異なる第4ピッチで第2繊維束20が縫合された第4領域42とが図示されている。第4ピッチは、第3ピッチよりも大きい。そのため、第4領域42の厚みは、第3領域41の厚みよりも小さい。
【0034】
第3領域41と第4領域42とは第2繊維束20の延伸方向において隣接して配置されている。第2繊維束20の少なくとも一部は、第3領域41と第4領域42とに跨って縫合されている。つまり、1本の連続した第2繊維束20に、第3領域41を構成する部位と、第4領域42を構成する部位とが含まれている。
【0035】
具体的には、第3領域41及び第4領域42は、共通する1本の連続した第2繊維束20によって構成されている。また、第2繊維束20は、第3領域41と第4領域42との境界近傍において折り返された複数の第2折り返し部21を有する。
【0036】
第2折り返し部21は、第3領域41から第4領域42に向かう第2繊維束20が、第4領域42から離れる方向に折り返すように屈曲している部位である。第2折り返し部21によって、第3領域41における第2繊維束20の並列数と、第4領域42における第2繊維束20の並列数との差が調整される。
【0037】
図4Bでは、第2繊維束20は、第3領域41の内部に配置された1つの第2折り返し部21と、第4領域42の内部に配置された1つの第2折り返し部21とを有している。ただし、第2折り返し部21の位置はこれらに限定されない。
【0038】
第3領域41は、基材層2の厚み方向において第1繊維層3の第1領域31と重なっている。つまり、第3領域41は、第1領域31を覆うように基材層2に縫合されている。第4領域42は、基材層2の厚み方向において第1繊維層3の第2領域32と重なっている。つまり、第4領域42は、第2領域32を覆うように基材層2に縫合されている。
【0039】
第1繊維束10の第1折り返し部11(図3又は図4A参照)と、第2繊維束20の第2折り返し部21とは、基材層2の厚み方向から視てずれた位置に配置されている。具体的には、第1折り返し部11と第2折り返し部21とは、第1繊維束10及び第2繊維束20の並列方向(図4Bの略上下方向)と、第1繊維束10及び第2繊維束20の延伸方向(図4Bの略左右方向)との双方においてずれた位置に配置されている。
【0040】
また、第1繊維束10及び第2繊維束20の並列方向においては、基材層2の厚み方向から視て複数の第1折り返し部11と複数の第2折り返し部21とが交互に配置されている。
【0041】
<変形例>
図5に示すように、第1繊維層3は、第1ピッチとは異なる第5ピッチで第1繊維束10が縫合された第5領域35を有してもよい。
【0042】
第5領域35は、第1領域31と第1繊維束10の延伸方向において隣接している。また、第5領域35は、第2領域32と第1繊維束10の並列方向において隣接している。第5領域35の第5ピッチは、第1領域31の第1ピッチよりも大きい。第5領域35は、第2領域32とは異なる厚み、形状又は材質を有する。第5領域35の第5ピッチは、第2領域32の第2ピッチと同じであってもよい。
【0043】
第1繊維束10の少なくとも一部は、第1領域31と第2領域32とに跨って縫合されると共に、第1領域31と第5領域35とに跨って縫合されている。つまり、第1繊維束10には、第1領域31を構成する部位と第2領域32を構成する部位とを含む繊維束と、第1領域31を構成する部位と第5領域35を構成する部位とを含む繊維束とが含まれている。
【0044】
このような構成によって、1本の第1繊維束10によって、第1領域31と隣接する複数の領域32,35とを連続的に形成することができる。なお、図5に示す構造は、第2繊維層4にも適用可能である。
【0045】
また、図6に示すように、第1繊維層3は、第6ピッチで第1繊維束10が縫合された第6領域36を有してもよい。第6領域36は、第1領域31と第2領域32とを連結するように配置されている。
【0046】
具体的には、第6領域36は、第1繊維束10の延伸方向において第1領域31と第2領域32との間に配置されている。第6領域36の第6ピッチは、第1領域31の第1ピッチよりも大きく、かつ、第2領域32の第2ピッチよりも小さい。
【0047】
第1繊維束10の少なくとも一部は、第1領域31と、第6領域36と、第2領域32とに跨って縫合されている。つまり、1本の連続した第1繊維束10に、第1領域31を構成する部位と、第6領域36を構成する部位と、第2領域32を構成する部位とが含まれている。
【0048】
図6の例では、第1繊維束10は、第1領域31の連結端部に設けられた第1折り返し部11と、第6領域36の連結端部に設けられた第1折り返し部11と、第2領域32の内部に設けられた第1折り返し部11とを有する。
【0049】
第6領域36によって、第1領域31と第2領域32との間において、繊維強化材料1の厚みを段階的に変化させることができる。そのため、第1領域31と第2領域32との間の領域における応力集中を抑制できると共に、繊維強化材料1の形状の設計自由度を高められる。なお、図6に示す構造は、第2繊維層4にも適用可能である。
【0050】
<繊維強化材料の製造方法>
次に、繊維強化材料1の製造方法について説明する。繊維強化材料の製造方法は、第1繊維層形成工程と、第2繊維層形成工程とを備える。
【0051】
<第1繊維形成工程>
本工程では、基材層2に第1繊維束10を縫合することで、第1領域31及び第2領域32を含む第1繊維層3を形成する。
【0052】
本工程では、互いに厚みの異なる第1領域31及び第2領域32を設定した上で、少なくとも1本の連続した第1繊維束10が第1領域31と第2領域32とを跨るように(つまり、第1領域31と第2領域32との境界と交差するように)、第1繊維束10の縫合を行う。また、必要に応じて第1折り返し部11を設ける。
【0053】
<第2繊維形成工程>
本工程では、第1繊維層3が形成された基材層2に第2繊維束20を縫合することで、第3領域41及び第4領域42を含む第2繊維層4を形成する。
【0054】
本工程では、互いに厚みの異なる第3領域41及び第4領域42を設定した上で、少なくとも1本の連続した第2繊維束20が第3領域41と第4領域42とを跨るように(つまり、第3領域41と第4領域42との境界と交差するように)、第2繊維束20の縫合を行う。また、必要に応じて第2折り返し部21を設ける。
【0055】
なお、各繊維層の形成後、例えばエポキシ樹脂等のマトリックス樹脂を基材層2及び各繊維層に含侵させてもよい。
【0056】
[1-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)ピッチの異なる第1領域31と第2領域32とに跨って第1繊維束10が縫合されることで、これらの領域間での力の伝達経路が第1繊維束10によって形成される。そのため、厚みの異なる第1領域31及び第2領域32の間における剛性の低下を抑制できる。
【0057】
また、ピッチの異なる複数の領域に対し、連続的に第1繊維束10を縫合することができるため、縫合工程における工数が低減できる。その結果、繊維強化材料1の生産性が高められる。さらに、ピッチの異なる領域間において繊維束が存在しない隙間が低減されるため、繊維強化材料1を意匠材として使用した際の意匠性が向上する。
【0058】
(1b)第1繊維束10が第1折り返し部11を有することで、第1繊維束10を第1領域31又は第2領域32内で切断せずにピッチを調整することができる。その結果、第1領域31及び第2領域32の間における剛性の低下抑制効果を高めることができる。
【0059】
(1c)第2繊維束20が第3領域41と第4領域42とに跨って縫合されることで、繊維束を基材層2の厚み方向に重ねて配置しつつ、ピッチの異なる領域間(つまり、第1領域31と第2領域32との間、及び第3領域41と第4領域42との間)における剛性の低下抑制効果を高めることができる。
【0060】
(1d)第2繊維束20が第2折り返し部21を有することで、第2繊維束20を切断せずにピッチを調整することができる。また、第1繊維束10の折り返し点と第2繊維束20の折り返し点とが重ならないように配置されることで、繊維強化材料1の厚みを段階的に変化させることができる。
【0061】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0062】
(2a)上記実施形態の繊維強化材料において、第1繊維束は必ずしも第1折り返し部を有しなくてもよい。例えば、第1繊維束が切断されることで、第1領域における第1繊維束の並列数と、第2領域における第1繊維束の並列数との差が吸収されてもよい。第2繊維束についても同様である。
【0063】
(2b)上記実施形態の繊維強化材料は、必ずしも複数の繊維層を備えなくてもよい。つまり、繊維強化材料は、単一の繊維層を備えてもよい。また、上記実施形態の繊維層における各領域の配置パターンは一例である。
【0064】
(2c)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0065】
1…繊維強化材料、2…基材層、3…第1繊維層、4…第2繊維層、
10…第1繊維束、11…第1折り返し部、20…第2繊維束、
21…第2折り返し部、31…第1領域、32…第2領域、35…第5領域、
36…第6領域、41…第3領域、42…第4領域、100…乗物用シート。
図1
図2
図3
図4
図5
図6