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  • 特開-パーマ臭消臭用組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167955
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】パーマ臭消臭用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9794 20170101AFI20231116BHJP
   A61Q 5/04 20060101ALI20231116BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20231116BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20231116BHJP
   A61K 8/365 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
A61K8/9794
A61Q5/04
A61K8/86
A61K8/34
A61K8/365
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079522
(22)【出願日】2022-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】岡部 真也
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083AB012
4C083AB082
4C083AB332
4C083AC111
4C083AC122
4C083AC131
4C083AC132
4C083AC291
4C083AC301
4C083AC302
4C083AC542
4C083AC772
4C083AD041
4C083AD042
4C083BB53
4C083CC34
4C083DD06
4C083DD23
4C083DD27
4C083EE06
4C083EE21
4C083EE25
(57)【要約】
【課題】パーマの成形力を低下させることなく、パーマ臭を抑制できるパーマ臭消臭用組成物を提供する。
【解決手段】消臭成分としてヨクイニンエキスを含む、パーマ臭消臭用組成物。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
消臭成分としてヨクイニンエキスを含む、パーマ臭消臭用組成物。
【請求項2】
多価アルコール、ポリエチレン鎖を有する高分子、及びトリカルボン酸からなる群より選択される少なくとも1種である第2の成分を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記多価アルコールが、ソルビトール及び/又はイノシトールを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリエチレン鎖を有する高分子が、ポリエチレングリコールを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記トリカルボン酸が、クエン酸を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
前記ヨクイニンエキスと前記第2の成分との組成比(質量比)が、1:70~70:1である、請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の組成物を用いる、毛髪変形処理方法。
【請求項8】
請求項1に記載の組成物、
毛髪変形処理用第1剤、及び
毛髪変形処理用第2剤、
を含む、毛髪変形処理用キット。
【請求項9】
還元剤と、請求項1に記載の組成物とを含む、臭気低減型毛髪変形処理用第1剤。
【請求項10】
前記ヨクイニンエキスと存在する場合の前記第2の成分との合計の含有量が、0.01~10.0質量%である、請求項9に記載の臭気低減型毛髪変形処理用第1剤。
【請求項11】
酸化剤と、請求項1に記載の組成物とを含む、臭気低減型毛髪変形処理用第2剤。
【請求項12】
前記ヨクイニンエキスと存在する場合の前記第2の成分との合計の含有量が、0.01~10.0質量%である、請求項11に記載の臭気低減型毛髪変形処理用第2剤。
【請求項13】
請求項9若しくは10に記載の臭気低減型毛髪変形処理用第1剤、及び/又は
請求項11若しくは12に記載の臭気低減型毛髪変形処理用第2剤
を用いる、毛髪変形処理方法。
【請求項14】
請求項9又は10に記載の臭気低減型毛髪変形処理用第1剤と、
毛髪変形処理用第2剤又は請求項11又は12に記載の臭気低減型毛髪変形処理用第2剤と、
を含む、毛髪変形処理用キット。
【請求項15】
毛髪変形処理用第1剤又は請求項9又は10に記載の臭気低減型毛髪変形処理用第1剤と、
請求項11又は12に記載の臭気低減型毛髪変形処理用第2剤と、
を含む、毛髪変形処理用キット。
【請求項16】
前記パーマ臭が、チオール化合物、アンモニア、及び/又はモノエタノールアミンに由来する臭いである、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物、請求項7に記載の方法、請求項8に記載のキット、請求項9又は10に記載の臭気低減型毛髪変形処理用第1剤、請求項11又は12に記載の臭気低減型毛髪変形処理用第2剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーマ臭消臭用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
パーマ剤(すなわち、「パーマネントウェーブ剤」)は、毛髪を変形して固定できる処理剤である一方で、施術中の特有の悪臭問題も知られている。このパーマ剤による特有の悪臭は、主にパーマ剤として使用されるチオール化合物、又はアンモニアやモノエタノールアミン等のアルカリ剤に由来するものである。以下では、このようなチオール化合物、アンモニア、及び/又はモノエタノールアミンに由来する臭いを、まとめて「パーマ臭」と称する。
【0003】
これまでに、このようなパーマ施術中のパーマ臭問題に対して、様々な抑制剤又は消臭剤が報告されている。
【0004】
例えば、特許文献1では、(A)銅イオン、亜鉛イオンから選ばれた少なくともI種の成分、並びに(B)アンモニア、アミン化合物から選ばれた少なくともI種の成分を配合してなる、チオール化合物用消臭剤が開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1のチオール化合物用消臭剤は、パーマ臭の抑制効果が十分ではない。
【0006】
一方、特許文献2及び特許文献3はそれぞれ、体臭を消臭するための消臭剤を開示しており、これらの消臭剤はいずれも、ヨクイニンエキスを含んでいる。なお、体臭成分としては、例えば、酢酸、イソ吉草酸、エナント酸、ベラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、及び2-ノネナール等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015-151393号公報
【特許文献2】特開2016-199487号公報
【特許文献3】特開2017-149697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
パーマ施術中において、パーマ臭の問題に対して、依然として改善する必要がある。
【0009】
本発明は、上記の事情を改善しようとするものであり、その目的は、パーマの成形力を低下させることなく、パーマ臭を抑制する組成物、すなわち、パーマ臭消臭用組成物を提供することである。
【0010】
また、本発明の他の目的は、本発明のパーマ臭消臭用組成物を含む、毛髪変形処理方法、毛髪変形処理用キット、臭気低減型毛髪変形処理用第1剤、及び臭気低減型毛髪変形処理用第2剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成する本発明は、以下のとおりである。
【0012】
〈態様1〉
消臭成分としてヨクイニンエキスを含む、パーマ臭消臭用組成物。
〈態様2〉
多価アルコール、ポリエチレン鎖を有する高分子、及びトリカルボン酸からなる群より選択される少なくとも1種である第2の成分を更に含む、態様1に記載の組成物。
〈態様3〉
前記多価アルコールが、ソルビトール及び/又はイノシトールを含む、態様2に記載の組成物。
〈態様4〉
前記ポリエチレン鎖を有する高分子が、ポリエチレングリコールを含む、態様2又は3に記載の組成物。
〈態様5〉
前記トリカルボン酸が、クエン酸を含む、態様2~4のいずれか一項に記載の組成物。
〈態様6〉
前記ヨクイニンエキスと前記第2の成分との組成比(質量比)が、1:50~50:1である、態様2~5のいずれか一項に記載の組成物。
〈態様7〉
態様1~6のいずれか一項に記載の組成物を用いる、毛髪変形処理方法。
〈態様8〉
態様1~6のいずれか一項に記載の組成物、
毛髪変形処理用第1剤、及び
毛髪変形処理用第2剤、
を含む、毛髪変形処理用キット。
〈態様9〉
還元剤と、態様1~6のいずれか一項に記載の組成物とを含む、臭気低減型毛髪変形処理用第1剤。
〈態様10〉
酸化剤と、態様1~6のいずれか一項に記載の組成物とを含む、臭気低減型毛髪変形処理用第2剤。
〈態様11〉
前記ヨクイニンエキスと存在する場合の前記第2の成分との合計の含有量が、0.01~10.0質量%である、態様9に記載の臭気低減型毛髪変形処理用第1剤、又は態様10に記載の臭気低減型毛髪変形処理用第2剤。
〈態様12〉
態様9若しくは11に記載の臭気低減型毛髪変形処理用第1剤、及び/又は
態様10若しくは11に記載の臭気低減型毛髪変形処理用第2剤
を用いる、毛髪変形処理方法。
〈態様13〉
態様9~12のいずれか一項に記載の臭気低減型毛髪変形処理用第1剤と、
毛髪変形処理用第2剤又は態様10~12のいずれか一項に記載の臭気低減型毛髪変形処理用第2剤と、
を含む、毛髪変形処理用キット。
〈態様14〉
毛髪変形処理用第1剤又は態様9~12のいずれか一項に記載の臭気低減型毛髪変形処理用第1剤と、
態様10~12のいずれか一項に記載の臭気低減型毛髪変形処理用第2剤と、
を含む、毛髪変形処理用キット。
〈態様15〉
前記パーマ臭が、チオール化合物、アンモニア、及び/又はモノエタノールアミンに由来する臭いである、態様1~6のいずれか一項に記載の組成物、態様7に記載の方法、態様8に記載のキット、態様9若しくは11に記載の臭気低減型毛髪変形処理用第1剤、態様10若しくは11に記載の臭気低減型毛髪変形処理用第2剤、態様12に記載の方法、又は態様13又は14に記載のキット。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、パーマの成形力を低下させることなく、パーマ臭を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、パーマ臭の消臭成分としてのヨクイニンエキスの消臭メカニズムを示すイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について詳述する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、発明の本旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0016】
《パーマ臭消臭用組成物》
本発明のパーマ臭消臭用組成物(以下では、単に「本発明の組成物」とも称する)は、消臭成分としてヨクイニンエキスを含む。
【0017】
本発明者の鋭意研究により、パーマ施術中に本発明の組成物をパーマ剤に配合すると、パーマの成形力を低下させることなく、パーマ臭が抑制されることが見出された。
【0018】
理論に限定されるものではないが、これは、例えば図1に示されているように、ヨクイニンエキスの成分が、パーマ臭の成分を物理的に吸着して、それによって、パーマ臭の立ち上がりを抑制していると推測される。
【0019】
ここで、パーマ臭は、例えばチオール化合物、アンモニア、及び/又はモノエタノールアミンに由来する臭いであってよい。
【0020】
なお、これまでに、ヨクイニンを体臭の消臭剤として使用すること(例えば、上述した特許文献2及び特許文献3)は知られていたが、パーマ臭に対してヨクイニンを消臭剤として使用することは考慮されていなかった。特に、ヨクイニンがパーマ臭を消臭できるかどうかは不明であり、更にヨクイニンの使用によって、パーマの成形に影響を与えるかどうかも不明であった。
【0021】
したがって、本発明は、パーマ消臭用の消臭成分として、ヨクイニンエキスを用いることを特徴とする。
【0022】
以下では、本発明の組成物について詳細に説明する。
【0023】
〈ヨクイニン〉
ヨクイニンは、イネ科の一年生草本であるハトムギの種皮を除いた種子、いわゆる生薬のヨクイニンである。なお、必ずしもハトムギに限定されるわけではなく、例えば原植物のジュズダマ、変種、同属種、その他近縁類の種子も使用できる。また、ヨクイニンの薬効として、例えば、抗炎症、血流促進、抗老化、ヒアルロン酸産生促進、抗男性ホルモン、抗酸化、育毛等が挙げられる。また、漢方では、利尿、消炎、鎮痛、排膿のため使用されてきた。
【0024】
ヨクイニンの主要成分は、デンプン(50~80%)、タンパク質(16~20%)、パルミチン酸、ステアリン酸、cis-8-ステアリン酸のグリセリド及びコイキノセリドといった脂肪油や脂肪酸、コイキサンA~Cといった酸性多糖であると知られている。
【0025】
本発明の組成物において、ヨクイニンエキスとしては、市販のものを使用してもよく、ヨクイニンから抽出して得られるものを使用してよい。また、ヨクイニンを抽出する方法は、特に限定されず、例えば以下の方法を用いてよい。
【0026】
(ヨクイニンエキス)
ヨクイニンは長さ約6mm、幅約5mmの卵形であるので、好ましくは粉末状に加工してから、溶媒を使用して抽出する。なお、ヨクイニンを粉末とした市販のヨクイニン末を使用してもよい。
【0027】
抽出溶媒としては、特に限定されず、例えば、水、エタノール、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、1,2-ペンタンジオール及び1,3-プロパンジオールからなる群より選ばれる1種又は2種以上の溶媒を用いてよい。また、抽出溶媒の濃度は、特に限定されず、例えば、エタノール濃度が30~99.9%、50~99.9%、50~90%、又は60~80%のエタノール水溶液であってよい。また、抽出時の溶媒の使用量は、特に限定されず、例えば、質量比で被抽出物(ヨクイニンエキス)の10~500倍量、10~100倍量、又は15~50倍量であってよい。
【0028】
また、抽出温度は、特に限定されず、例えば、0~150℃、20~100℃、又は25~80℃の温度範囲であってよい。
【0029】
また、抽出して得らえたヨクイニンエキスに対して、ヨクイニン特有の臭みを適宜な吸着剤によって除去処理してもよい。例えば、ヨクイニンエキスに吸着剤を添加、攪拌し吸着後、ろ過操作により吸着剤を回収するバッチ方法、また、吸着剤を充填したカラムを用いて連続処理により吸着処理を行なうカラム方法等によって、ヨクイニン特有の臭みを除去してよい。
【0030】
(ヨクイニンエキスの有効量)
本発明において、パーマ臭の消臭成分としてのヨクイニンエキスの有効量は、パーマ臭を低減できる程度の量であれば、特に限定されず、使用するパーマ剤の種類や量に合わせて適宜調整してよい。以下では、一例として、市販のヨクイニンエキス(例えば、丸善製薬社製のヨクイニン抽出液-J)の有効量を示すが、本発明を限定する目的ではない。
【0031】
例えば、パーマ臭の源となる化合物の量(2以上の化合物である場合にはその合計量)1.0質量部に対して、ヨクイニンエキスの有効量として、例えば0.0001質量部以上、0.0005質量部以上、0.001質量部以上、0.002質量部以上、0.003質量部以上、0.004質量部以上、0.005質量部以上、0.006質量部以上、0.007質量部以上、0.008質量部以上、0.009質量部以上、0.01質量部以上、0.02質量部以上、0.03質量部以上、0.04質量部以上、0.05質量部以上、0.06質量部以上、0.07質量部以上、0.08質量部以上、0.09質量部以上、0.1質量部以上、0.2質量部以上、0.3質量部以上、0.4質量部以上、0.5質量部以上、0.6質量部以上、0.7質量部以上、0.8質量部以上、0.9質量部以上、1.0質量部以上、1.1質量部以上、1.2質量部以上、1.3質量部以上、1.4質量部以上、又は1.5質量部以上であってよい。また、ヨクイニンエキスの有効量の上限値は、特に限定されないが、例えばパーマの成形への影響を抑える観点からは、パーマ臭の源となる化合物の量1.0質量部に対して、例えば5.0質量部以下、4.0質量部以下、3.0質量部以下、2.0質量部以下、1.0質量部以下、又は0.5質量部以下であってよい。
【0032】
〈その他の成分〉
本発明の組成物は、ヨクイニンエキスの他にその他の成分を更に含んでよい。
【0033】
例えば、本発明の組成物は、第2の成分を更に含み、ここで、第2の成分は、多価アルコール、ポリエチレン鎖を有する高分子、及びトリカルボン酸からなる群より選択される少なくとも1種であってよい。
【0034】
本発明者の鋭意研究によって、本発明の組成物がこのような第2の成分を含むことによって、ヨクイニンエキスのパーマ臭の抑制効果を高めることが見出された。言い換えれば、このような第2の成分は、パーマ臭消臭のための補助消臭成分として機能を有し、消臭成分としてのヨクイニンエキスと併用することによって、相乗効果をもたらすことが見出された。
【0035】
そして、本発明者の更なる鋭意研究によって、このような第2の成分の中では、水酸基を多数有するものをヨクイニンエキスと併用する場合には、より高いパーマ臭消臭効果が得られることが見出された。理論には限定されるものではないが、これは、パーマ剤が、第2の成分中の水酸基との親和性によって、揮発しにくくなり、そしてそれと同時にヨクイニンエキスの消臭作用が働いているため、ヨクイニンエキス単独の場合よりも高い消臭効果を得ると推測される。
【0036】
本発明の組成物が第2の成分を含む場合において、ヨクイニンエキスと第2の成分との組成比(質量比)は、特に限定されず、例えば(ヨクイニンエキス:第2の成分)、1:70~70:1、1:60~60:1、又は1:50~50:1であってよく、更には、1:40~40:1、1:30~30:1、1:20~20:1、1:15~15:1、1:10~10:1、1:5~5:1、1:2~2:1、又は1:1であってよい。
【0037】
(多価アルコール)
本発明において、多価アルコールとは、分子内に2個以上の水酸基(-OH基)をもつアルコールを指す。また、本発明において、多価アルコールは、例えば糖アルコールを含んでよく、より具体的には、例えば、ソルビトール及び/又はイノシトールを含んでよい。
【0038】
(ポリエチレン鎖を有する高分子)
本発明において、ポリエチレン鎖を有する高分子は、例えばポリエチレングリコールを含んでよい。また、ポリエチレングリコールの重合度は、特に限定されず、例えば4以上、6以上、8以上、12以上、又は20以上であってよく、また、300以下、200以下、150以下、100以下、75以下、40以下、32以下、20以下、又は12以下であってよい。
【0039】
(トリカルボン酸)
本発明において、トリカルボン酸とは、カルボキシル基(-COOH基)を3つ有するものを指し、また、脂肪族のトリカルボン酸であってもよく、芳香族のトリカルボン酸であってもよい。より具体的には、トリカルボン酸は、例えばクエン酸を含んでよい。
【0040】
上述した第2成分のうち、例えば、パーマ剤に対するpHの影響が少ない観点やヨクイニンとの相乗効果を向上させる観点からは、本発明の組成物は、第2の成分として、ポリエチレン鎖を有する高分子及び多価アルコールを更に含むことが好ましく、ポリエチレン鎖を有する高分子を更に含むことがより好ましい。
【0041】
《臭気低減型毛髪変形処理用第1剤》
本発明はまた、臭気低減型毛髪変形処理用第1剤(以下では、単に「本発明の第1剤」とも称する)を提供する。
【0042】
本発明の第1剤は、還元剤と、上述した本発明の組成物とを含む。
【0043】
還元剤は、毛髪組織のジスルフィド結合(S-S結合)を還元して切断させる働きを有する。還元剤としては、特に限定されないが、チオール化合物、より具体的には、チオグリコール酸又はその塩(アンモニウム塩、又はモノエタノールアミン塩)等が挙げられる。
【0044】
本発明の第1剤において、還元剤の含有量は、特に限定されず、例えば本発明の第1剤の全量に対して、0.01~30質量%であってよい。
【0045】
また、本発明の第1剤は、上記の還元剤の他に、アルカリ剤を更に含んでよい。アルカリ剤としては、例えばアンモニア又はモノエタノールアミン等が挙げられる。アンモニアとしては、主に28%のアンモニア水が用いられる。
【0046】
本発明の第1剤において、アルカリ剤の含有量は、特に限定されず、例えば本発明の第1剤の全量に対して、0.001~20質量%、0.005~20質量%、又は0.01~20質量%であってよい。
【0047】
本発明の第1剤において、ヨクイニンエキス含有量、又は上述した第2の成分が存在する場合のヨクイニンエキスと第2の成分との合計の含有量は、本発明の効果を発揮できる限り特に限定されない。例えば、ヨクイニンエキス含有量、又は第2の成分が存在する場合のヨクイニンエキスと第2の成分との合計の含有量は、本発明の第1剤の全量に対して、0.01質量%以上、0.05質量%以上、0.10質量%以上、0.20質量%以上、0.30質量%以上、0.40質量%以上、0.50質量%以上、0.60質量%以上、0.70質量%以上、0.80質量%以上、0.90質量%以上、1.0質量%以上、1.5質量%以上、2.0質量%以上、2.5質量%以上、又は3.0質量%以上であってよく、また10.0質量%以下、9.0質量%以下、8.0質量%以下、7.0質量%以下、6.0質量%以下、5.0質量%以下、4.0質量%以下、又は3.0質量%以下であってよい。
【0048】
本発明の第1剤は、上述した成分のほか、例えば界面活性剤、安定化剤、油分、又は香料等を更に含んでよいが、これらに限定されない。
【0049】
また、本発明の第1剤のpH値は、特に限定されず、例えば3.0~10の範囲で、用いる還元剤の種類に合わせて適宜調整してよい。なお、pH値の調整はアルカリ剤によって行ってよい。
【0050】
また、本発明の第1剤の形態は、特に限定されず、例えば液体状、クリーム状、又はフォーム状であってよい。液体状の場合には、溶媒として水等を用いてよい。
【0051】
《臭気低減型毛髪変形処理用第2剤》
本発明はまた、臭気低減型毛髪変形処理用第2剤(以下では、単に「本発明の第2剤」とも称する)を提供する。
【0052】
本発明の第2剤は、酸化剤と、上述した本発明の組成物とを含む。
【0053】
酸化剤は、上述した還元剤によって切断された毛髪組織のジスルフィド結合を酸化して再形成させる働きを有する。酸化剤としては、特に限定されず、例えば、臭素酸ナトリウム、又は過酸化水素等が挙げられる。
【0054】
本発明の第2剤において、酸化剤の含有量は、特に限定されず、例えば本発明の第1剤の全量に対して、0.01~30質量%であってよい。
【0055】
本発明の第2剤において、ヨクイニンエキス含有量、又は第2の成分が存在する場合のヨクイニンエキスと第2の成分との合計の含有量は、本発明の効果を発揮できる限り特に限定されない。例えば、ヨクイニンエキス含有量、又は第2の成分が存在する場合のヨクイニンエキスと第2の成分との合計の含有量は、本発明の第2剤の全量に対して、0.01質量%以上、0.05質量%以上、0.10質量%以上、0.20質量%以上、0.30質量%以上、0.40質量%以上、0.50質量%以上、0.60質量%以上、0.70質量%以上、0.80質量%以上、0.90質量%以上、1.0質量%以上、1.5質量%以上、2.0質量%以上、2.5質量%以上、又は3.0質量%以上であってよく、また10.0質量%以下、9.0質量%以下、8.0質量%以下、7.0質量%以下、6.0質量%以下、5.0質量%以下、4.0質量%以下、又は3.0質量%以下であってよい。
【0056】
本発明の第2剤は、上述した成分のほか、例えばpH緩衝剤、界面活性剤、油分、又は香料等を更に含んでよいが、これらに限定されない。
【0057】
また、本発明の第2剤のpH値は、特に限定されず、例えば3.0~10の範囲で、用いる還元剤の種類に合わせて適宜調整してよい。
【0058】
また、本発明の第2剤の形態は、特に限定されず、例えば液体状、クリーム状、又はフォーム状であってよい。液体状の場合には、溶媒として水等を用いてよい。
【0059】
《毛髪変形処理方法》
本発明はまた、毛髪変形処理方法を提供し、より具体的には、上述した本発明の組成物を用いる毛髪変形処理方法を提供する。
【0060】
本発明の毛髪変形処理方法は、本発明の組成物を用いて本発明の効果を発揮できれば特に限定されず、例えば後述する方法(i)~(v)のいずれかであってよいが、これらに限定されない。
【0061】
なお、本発明の毛髪変形処理方法をより容易に理解するために、従来のパーマ処理方法に本発明の組成物を適用する場合の方法を、本発明の毛髪変形処理方法の例として説明する。
【0062】
従来のパーマ処理方法として、還元剤を含む毛髪変形処理用第1剤、及び酸化剤を含む毛髪変形処理用第2剤によって行われる。より具体的には、まず、毛髪組織のジスルフィド結合(S-S結合)を毛髪変形処理用第1剤によって還元・切断されて、システイン残基(-SH)が形成される。次に、毛髪変形処理用第2剤を用いて、先に切断されたジスルフィド結合を再形成する。そして最後に、水洗等の後処理を行い、毛髪変形処理が完了する。
【0063】
ここで、毛髪変形処理用第1剤と、毛髪変形処理用第2剤との使用割合は、特に限定されず、例えば、毛髪変形処理用第1剤と毛髪変形処理用第2剤との質量比(毛髪変形処理用第1剤:毛髪変形処理用第2剤)は、1:5~5:1、又は1:2~2:1であってよく、更には1:1であってよい。また、毛髪変形処理用第1剤及び毛髪変形処理用第2剤のそれぞれの処理時間は、特に限定されず、例えば、1分以上、5分以上、10分以上、又は15分以上、また1時間以下、又は45分以下の範囲で適宜調整してよい。
【0064】
従来の毛髪変形処理用第1剤は、一般的に、チオール化合物等還元剤、及びアンモニアやモノエタノールアミン等のアルカリ剤を含む。このため、従来の毛髪変形処理用第1剤を用いて、毛髪を処理すると、特有のパーマ臭が発生してしまう問題が生じてしまう。
【0065】
〈方法(i)~(iii) 本発明の組成物を用いる方法〉
方法(i)~(iii)は、本発明の組成物を用いる方法であり、より具体的には、例えば上述した従来のパーマ処理方法に本発明の組成物を用いる方法である。
【0066】
(方法(i))
方法(i)は、従来の毛髪処理方法において、本発明の組成物を従来の毛髪変形処理用第1剤に配合してから処理を行う方法である。
【0067】
この場合では、毛髪処理の前又は直前に、本発明の組成物を従来の毛髪変形処理用第1剤に配合してよい。ここで、本発明の組成物の配合量は、特に限定されず、例えば上述したヨクイニンエキスの有効量の範囲内になるように、適宜に調整してよい。
【0068】
(方法(ii))
方法(ii)は、従来の毛髪処理方法において、本発明の組成物を従来の毛髪変形処理用第2剤に配合してから処理を行う方法である。
【0069】
この場合では、毛髪処理の前又は直前に、本発明の組成物を従来の毛髪変形処理用第2剤に配合してよい。ここで、本発明の組成物の配合量は、特に限定されず、例えば上述したヨクイニンエキスの有効量の範囲内になるように、適宜に調整してよい。
【0070】
(方法(iii))
方法(iii)は、従来の毛髪処理方法において、従来の毛髪変形処理用第1剤で毛髪を処理した後に、本発明の組成物を毛髪に適用してから、従来の毛髪変形処理用第2剤で毛髪を処理する方法である、
【0071】
この場合には、従来の毛髪変形処理用第1剤での処理と、本発明の組成物での処理と、従来の毛髪変形処理用第2剤での処理とは、継続して行ってもよく、例えば水洗等の処理を適宜加えてもよい。また、本発明の組成物の処理時間は、特に限定されず、例えば5分以上、8分以上、10分以上、又は15分以上であってもよく、また1時間以下、30分以下、20分以下、又は10分以下であってもよい。
【0072】
また、本発明の組成物の使用量としては、特に限定されず、例えば上述したヨクイニンエキスの有効量の範囲内になるように、適宜に調整してよい。
【0073】
〈方法(iv) 本発明の第1剤を用いる方法〉
方法(iv)は、例えば、従来の毛髪処理方法に対して、従来の毛髪変形処理用第1剤の代わりに、本発明の第1剤を用いる方法である。この場合では、毛髪変形処理用第2剤としては、特に限定されず、例えば上述した従来の毛髪変形処理用第2剤を用いてもよく、又は従来の毛髪変形処理用第2剤の代わりに、本発明の第2剤を用いてもよい。
【0074】
〈方法(v) 本発明の第2剤を用いる方法〉
【0075】
方法(v)は、例えば、従来の毛髪処理方法に対して、従来の毛髪変形処理用第2剤の代わりに、本発明の第2剤を用いる方法である。この場合では、毛髪変形処理用第1剤としては、特に限定されず、例えば上述した従来の毛髪変形処理用第1剤を用いてもよく、又は従来の毛髪変形処理用第1剤の代わりに、本発明の第1剤を用いてもよい。
【0076】
《毛髪変形処理用キット》
本発明はまた、毛髪変形処理用キットを提供する。
【0077】
本発明の毛髪変形処理用キットは、例えば以下のキット(i)~(iv)のいずれかであってよいが、これらに限定されない。
【0078】
〈キット(i)〉
本発明の毛髪変形処理用キット(i)は、上述した本発明の組成物、毛髪変形処理用第1剤、及び毛髪変形処理用第2剤、を含むキットであってよい。ここで、毛髪変形処理用第1剤及び毛髪変形処理用第2剤は、それぞれ従来の毛髪変形処理用第1剤及び毛髪変形処理用第2剤であってよいが、それらに限定されるものではない。
【0079】
〈キット(ii)〉
本発明の毛髪変形処理用キット(ii)は、本発明の第1剤と、毛髪変形処理用第2剤と、を含むキットであってよい。ここで、毛髪変形処理用第2剤は、従来の毛髪変形処理用第2剤であってよいが、それらに限定されるものではない。
〈キット(iii)〉
本発明の毛髪変形処理用キット(iii)は、毛髪変形処理用第1剤と、本発明の第2剤と、を含むキットであってよい。ここで、毛髪変形処理用第1剤は、従来の毛髪変形処理用第2剤であってよいが、それらに限定されるものではない。
〈キット(iv)〉
本発明の毛髪変形処理用キット(iv)は、本発明の第1剤と、本発明の第2剤と、を含むキットであってよい。
【0080】
また、本発明の毛髪変形処理用キットは、更に使用説明書を含んでよい。使用説明書とは、キット内に書類の形態で添付されている一般的な使用説明書以外に、例えば、キットを収容する包装容器、又は毛髪変形処理用第1剤等を注入するチューブ等の包装容器に対して使用説明文が印字された状態のものも包含することができる。
【0081】
また、使用説明書における使用説明として、特に限定されず、例えば、上述した本発明の毛髪変性処理方法の説明等が挙げられる。
【実施例0082】
以下に実施例を挙げて、本発明について更に詳しく説明を行うが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0083】
《実施例1及び比較例1~11》
実施例1及び比較例1~11では、表1に示す組成に合わせて、試験用添加成分が3.0質量%になるように、試験用添加成分をチオール化合物及びアンモニアを含む溶液(以下、この溶液を「基準溶液1」とする)に配合して、実施例1及び比較例1~11のそれぞれの毛髪変形処理用第1剤を調製した。
【0084】
なお、この基準溶液1は、通常の毛髪変形処理用第1剤に相当する。また、実施例1及び比較例1~11のそれぞれの試験用添加成分の詳細は表2に示す。
【0085】
【表1】
【0086】
調製された実施例及び比較例の各毛髪変形処理用第1剤に対して、以下の臭い評価基準にしたがい、(a)チオグリコール酸に由来するチオール化合物臭及び(b)アンモニア臭の程度を評価した。なお、この場合の比較対象として基準溶液1を用いた。それぞれの評価結果は表2に示す。
【0087】
(臭い評価基準)
各毛髪変形処理用第1剤の入った容器のそれぞれの瓶香を嗅いで、比較対象と比較した:
・臭いが全く抑制されていなかった場合を「1」とし;
・臭いがあまり抑制されていなかった場合を「2」とし;
・臭いがほぼ抑制されていた場合を「3」とし;
・臭いが完全に抑制されていた場合を「4」とした。
【0088】
【表2】
【0089】
表2から明らかなように、ヨクイニンエキスを試験用添加成分として用いた実施例1は、(a)チオグリコール酸に由来するチオール化合物臭及び(b)アンモニア臭をほぼ抑制したことが分かった。
【0090】
これに対して、比較例1~11は、いずれも(a)チオグリコール酸に由来するチオール化合物臭及び(b)アンモニア臭の抑制効果が得られなかった。
【0091】
《実施例2~6》
実施例2~6では、実施例1のヨクイニンエキスに加えて、表3に示す各試験用添加成分を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2~6のそれぞれの毛髪変形処理用第1剤を調製した。なお、実施例2~6の各試験用添加成分において、それぞれヨクイニンエキスと第2の成分との質量比は1:1であった。
【0092】
調製された実施例2~6の各毛髪変形処理用第1剤に対して、上記の臭い評価基準にしたがい、(a)チオグリコール酸に由来するチオール化合物臭及び(b)アンモニア臭の程度を評価した。それぞれの評価結果は表3に示す。
【0093】
【表3】
【0094】
表3から明らかなように、ヨクイニンエキス及び第2の成分を含む実施例2~6は、(a)チオグリコール酸に由来するチオール化合物臭又は(b)アンモニア臭の抑制効果が実施例1と同程度の場合もあるが、これら両方臭い評価結果の合計点数がいずれも実施例1の場合よりも高いことが分かった。
【0095】
また、表2に示されているように、第2の成分を単独使用する場合(すなわち、比較例1~5の場合)には、臭いがあまり抑制されていなかったのに対して、ヨクイニンエキスと第2の成分とを併用した実施例2~6は、ヨクイニンエキスを単独使用した実施例1に比べて臭い抑制効果が更に高くなることが分かった。これは、ヨクイニンエキスと第2の成分との併用による相乗効果であると考えられる。
【0096】
《実施例7及び比較例12》
実施例7及び比較例12では、表4に示す組成に合わせて、試験用添加成分が3.0質量%になるように、試験用添加成分をチオール化合物及びモノエタノールアミンを含む溶液(以下、この溶液を「基準溶液2」とする)に配合して、実施例7及び比較例12のそれぞれの毛髪変形処理用第1剤を調製した。
【0097】
なお、この基準溶液2は、通常の毛髪変形処理用第1剤に相当する。また、実施例7及び比較例12のそれぞれの試験用添加成分の詳細は表5に示す。
【0098】
【表4】
【0099】
調製された実施例及び比較例の各毛髪変形処理用第1剤に対して、上記の臭い評価基準にしたがい、(c)チオグリコール酸アンモニウムに由来するチオール化合物臭及び(d)モノエタノールアミン臭の程度を評価した。なお、この場合の比較対象として基準溶液2を用いた。それぞれの評価結果は表5に示す。
【0100】
【表5】
【0101】
表5から明らかなように、ヨクイニンエキスを試験用添加成分として用いた実施例7は、(c)チオグリコール酸アンモニウムに由来するチオール化合物臭及び(d)モノエタノールアミン臭をほぼ抑制したことが分かった。
【0102】
これに対して、比較例12は、c)チオグリコール酸アンモニウムに由来するチオール化合物臭及び(d)モノエタノールアミン臭の抑制効果が得られなかった。
【0103】
《実施例8》
実施例8では、消臭成分としてヨクイニンエキスを含む組成物を用いる場合の、パーマの成形力への影響を調べた。
【0104】
具体的には、表6に示す組成に合わせて、ヨクイニンエキスが3.0質量%になるように、ヨクイニンエキスを基準溶液3に配合して、実施例8の毛髪変形処理用第1剤(すなわち、臭気低減型毛髪変形処理用第1剤)を調製した。なお、この基準溶液3は、通常の毛髪変形処理用第1剤に相当する。
【0105】
そして、ロッドに巻いた毛束2つに、それぞれ基準溶液3及び実施例8の毛髪変形処理用第1剤を塗布し、15分放置した。その後水洗し、6.0質量%臭素酸ナトリウム液を塗布し、15分放置後、再度水洗した。水洗後の毛束のウェーブのかかり度合いを確認し、実施例8の場合と基準溶液3の場合のそれぞれのかかりの度合いを比較した。
【0106】
より具体的には、ウェーブパーマ処理した毛束のかかりの度合いの比較は、毛束のウェーブの山の数を用いて比較した。山の数が多い方がかかりの性能が高く、そして少ないほどかかりの性能は低いと判断できる。比較結果は、表6に示す。
【0107】
【表6】
【0108】
表6から明らかなように、毛束のウェーブの山の数は、消臭成分としてヨクイニンエキスを含む実施例8の場合とヨクイニンエキス未配合の基準溶液3を用いた場合とは、同じであった。この結果からは、消臭成分としてのヨクイニンエキスの配合によるパーマの成形力への影響はないことが分かった。
【0109】
《実施例9及び比較例13》
実施例9及び比較例13では、表7に示す組成に合わせて、試験用添加成分を3.0質量%になるように、チオール化合物及びアンモニアを含む溶液(以下、この溶液を「基準溶液4」とする)に配合して、実施例9及び比較例13のそれぞれの毛髪変形処理用第1剤を調製した。なお、この基準溶液4は、通常の毛髪変形処理用第1剤に相当する。
【0110】
調製された実施例9及び比較例13の毛髪変形処理用第1剤、並びに基準溶液4をそれぞれ用いて、毛髪に対して変形処理を行った。
【0111】
より具体的には、ロッドで巻いた毛束3つに、それぞれ、実施例9の毛髪変形処理用第1剤、比較例13の毛髪変形処理用第1剤、及び基準溶液4を塗布して、15分間放置した。
【0112】
この際、放置中の各毛束の処理中の臭い(すなわち、反応臭)を、上述した臭い評価基準にしたがい、評価を行った。なお、比較対象として基準溶液4で処理した毛束を用いた。
【0113】
その後、各毛束を水洗して、6.0質量%の臭素酸ナトリウム溶液を塗布して、15分間放置後再度水洗した。水洗後の各毛束に対して、それぞれの処理後の臭い(すなわち、残臭)を、上述した臭い評価基準にしたがい、評価を行った。なお、比較対象として基準溶液4で処理した毛束を用いた。
【0114】
【表7】
【0115】
表7から明らかなように、消臭成分としてヨクイニンエキスを用いた実施例9は、処理中及び処理後のいずれの過程においても、反応臭及び残臭を抑制できることが分かった。
【0116】
これに対して、硫酸銅を用いた比較例13の場合は、反応臭及び残臭の抑制効果はないうえに、その硫酸銅自体の悪臭も感じてしまった。
【0117】
《実施例10》
実施例10では、消臭成分としてヨクイニンエキスを含む組成物を毛髪変形処理用第2剤に配合した場合の、パーマ臭の抑制効果及びパーマの成形力への影響を調べた。
【0118】
具体的には、表8に示す組成に合わせて、ヨクイニンエキスが3.0質量%になるように、ヨクイニンエキスを基準溶液6に配合して、実施例10の毛髪変形処理用第2剤(すなわち、臭気低減型毛髪変形処理用第2剤)を調製した。なお、この基準溶液6は、通常の毛髪変形処理用第2剤に相当する。
【0119】
また、毛髪変形処理用第1剤として、表8に示されている基準溶液5を用いた。
【0120】
ロッドに巻いた毛束2つに、それぞれ基準溶液5を塗布し、15分放置した。その後水洗し、それぞれ実施例10の毛髪変形処理用第2剤及び基準溶液6を塗布し、15分放置後、再度水洗した。
【0121】
処理後の各毛束に対して、それぞれの処理後の臭い(すなわち、残臭)を、上述した臭い評価基準にしたがい、評価を行った。なお、実施例10の比較対象として、基準溶液5と基準溶液6とを併用して処理した毛束を用いた。評価結果は、表8に示す。
【0122】
また、処理後の各毛束のウェーブのかかり度合いとして、ウェーブの山の数を比較した。比較結果は、表8に示す。
【0123】
【表8】
【0124】
表8から明らかなように、消臭成分としてヨクイニンエキスを含む組成物を毛髪変形処理用第2剤に配合した実施例10は、パーマ臭の抑制効果があり、かつパーマの成形力への影響がないことが分かった。
図1