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特開2023-167975交通状態判定装置、交通状態判定方法、コンピュータプログラム、学習モデル、及び機械学習方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167975
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】交通状態判定装置、交通状態判定方法、コンピュータプログラム、学習モデル、及び機械学習方法
(51)【国際特許分類】
   G06N 3/04 20230101AFI20231116BHJP
   G08G 1/01 20060101ALI20231116BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
G06N3/04
G08G1/01 A
G08G1/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079549
(22)【出願日】2022-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】504126112
【氏名又は名称】住友電工システムソリューション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大平 章太郎
(72)【発明者】
【氏名】白上 龍
(72)【発明者】
【氏名】前田 亮太
(72)【発明者】
【氏名】北原 稔也
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB05
5H181CC18
5H181DD02
5H181DD03
5H181EE03
5H181EE15
5H181JJ02
(57)【要約】
【課題】交通における異常状態を正確に検出する。
【解決手段】交通状態判定装置は、異常検知区域における交通状態を示す入力データから、前記異常検知区域における交通状態を示す出力データを生成する学習モデルと、前記入力データ及び前記出力データに基づいて、交通異常状態が発生しているか否かを判定する状態判定部と、を備え、前記学習モデルは、長・短期記憶エンコーダと、リピートベクタと、長・短期記憶デコーダと、を含むオートエンコーダである。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異常検知区域における交通状態を示す入力データから、前記異常検知区域における交通状態を示す出力データを生成する学習モデルと、
前記入力データ及び前記出力データに基づいて、交通異常状態が発生しているか否かを判定する状態判定部と、
を備え、
前記学習モデルは、
前記入力データを受け付け、特徴データを出力する長・短期記憶エンコーダと、
前記長・短期記憶エンコーダから出力される前記特徴データを受け付け、受け付けた前記特徴データを繰り返し出力するリピートベクタと、
前記リピートベクタから出力される前記特徴データを受け付け、受け付けた前記特徴データから前記入力データを復元する復元処理を行い、前記復元処理の結果として得られる前記出力データを出力する長・短期記憶デコーダと、
を含むオートエンコーダである、
交通状態判定装置。
【請求項2】
前記交通状態判定装置は、
第1異常検知区域における交通状態を示す第1入力データと、前記第1異常検知区域とは異なる第2異常検知区域における交通状態を示す第2入力データとを前記学習モデルに順次入力する入力部と、
前記第1入力データと前記学習モデルに前記第1入力データが入力された場合に得られる第1出力データとに基づいて前記状態判定部が前記第1異常検知区域において交通異常状態が発生したか否かを判定した結果である第1判定結果、及び、前記第2入力データと前記学習モデルに前記第2入力データが入力された場合に得られる第2出力データとに基づいて前記状態判定部が前記第2異常検知区域において交通異常状態が発生したか否かを判定した結果である第2判定結果に基づいて、前記第1異常検知区域及び前記第2異常検知区域に含まれる複数の区間のうち交通異常状態が発生している区間を特定する異常区間特定部と、
をさらに備える、
請求項1に記載の交通状態判定装置。
【請求項3】
前記第1異常検知区域の一部と前記第2異常検知区域の一部とは重複する、
請求項2に記載の交通状態判定装置。
【請求項4】
前記異常区間特定部は、前記第1判定結果が前記第1異常検知区域において交通異常状態が発生していることを示し、 前記第2判定結果が前記第2異常検知区域において交通異常状態が発生していることを示している場合に、前記第1異常検知区域と前記第2異常検知区域との重複区間を、交通異常状態が発生している区間として特定する、
請求項3に記載の交通状態判定装置。
【請求項5】
前記入力部は、前記異常検知区域における交通状態を示す交通状態情報に、統計情報を用いた前処理を施すことによって前記入力データを生成する、
請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の交通状態判定装置。
【請求項6】
前記統計情報は、過去の交通状態情報の平均値と、前記過去の交通状態情報の標準偏差とを含む、
請求項5に記載の交通状態判定装置。
【請求項7】
前記統計情報は、前記交通状態情報が取得された異常検知区域、日種、及び時間帯の少なくとも1つにおける過去の交通状態情報が統計処理された値である、
請求項5に記載の交通状態判定装置。
【請求項8】
前記交通状態情報は、前記異常検知区域における渋滞長、交通量、及び旅行時間の少なくとも1つを含む、
請求項5に記載の交通状態判定装置。
【請求項9】
前記状態判定部は、前記入力データと、前記出力データとの類似度に基づいて、前記交通異常状態が発生しているか否かを判定し、
前記類似度は、cos類似度、ユークリッド距離、動的時間伸縮、又はピアソンの相関係数である、
請求項1に記載の交通状態判定装置。
【請求項10】
学習モデルによって、異常検知区域における交通状態を示す入力データから、前記異常検知区域における交通状態を示す出力データを生成するステップと、
前記入力データ及び前記出力データに基づいて、交通異常状態が発生しているか否かを判定するステップと、
を含み、
前記学習モデルは、
前記入力データを受け付け、特徴データを出力する長・短期記憶エンコーダと、
前記長・短期記憶エンコーダから出力される前記特徴データを受け付け、受け付けた前記特徴データを繰り返し出力するリピートベクタと、
前記リピートベクタから出力される前記特徴データを受け付け、受け付けた前記特徴データから前記入力データを復元する復元処理を行い、前記復元処理の結果として得られる前記出力データを出力する長・短期記憶デコーダと、
を含むオートエンコーダである、
交通状態判定方法。
【請求項11】
コンピュータに交通状態を判定させるためのコンピュータプログラムであって、
前記コンピュータに、
学習モデルによって、異常検知区域における交通状態を示す入力データから、前記異常検知区域における交通状態を示す出力データを生成するステップと、
前記入力データ及び前記出力データに基づいて、交通異常状態が発生しているか否かを判定するステップと、
を実行させ、
前記学習モデルは、
前記入力データを受け付け、特徴データを出力する長・短期記憶エンコーダと、
前記長・短期記憶エンコーダから出力される前記特徴データを受け付け、受け付けた前記特徴データを繰り返し出力するリピートベクタと、
前記リピートベクタから出力される前記特徴データを受け付け、受け付けた前記特徴データから前記入力データを復元する復元処理を行い、前記復元処理の結果として得られる前記出力データを出力する長・短期記憶デコーダと、
を含むオートエンコーダである、
コンピュータプログラム。
【請求項12】
オートエンコーダによって構成される学習モデルであって、
コンピュータを、
異常検知区域における交通状態を示す入力データを受け付け、特徴データを出力する長・短期記憶エンコーダと、
前記長・短期記憶エンコーダから出力される前記特徴データを受け付け、受け付けた前記特徴データを繰り返し出力するリピートベクタと、
前記リピートベクタから出力される前記特徴データを受け付け、受け付けた前記特徴データから前記入力データを復元する復元処理を行い、前記復元処理の結果として得られる出力データを出力する長・短期記憶デコーダと、
として機能させるための、
学習モデル。
【請求項13】
異常検知区域における交通状態を判定するために用いられる学習モデルを生成するための機械学習方法であって、
学習前モデルに、交通状態を示すトレーニングデータを入力し、前記学習前モデルに前記トレーニングデータに近似した情報を出力させるステップを含み、
前記学習前モデルは、
前記トレーニングデータを受け付け、特徴データを出力する長・短期記憶エンコーダと、
前記長・短期記憶エンコーダから出力される前記特徴データを受け付け、受け付けた前記特徴データを繰り返し出力するリピートベクタと、
前記リピートベクタから出力される前記特徴データを受け付け、受け付けた前記特徴データから前記トレーニングデータを復元する復元処理を行い、前記復元処理の結果として得られる第1トレーニング出力データを出力する第1長・短期記憶デコーダと、
前記リピートベクタから出力される前記特徴データを受け付け、受け付けた前記特徴データから前記トレーニングデータを復元する復元処理を行い、前記復元処理の結果として得られる第2トレーニング出力データを出力する第2長・短期記憶デコーダと、
を含むオートエンコーダであり、
前記第1トレーニング出力データに含まれる要素の並び順が、前記トレーニングデータに含まれる要素の並び順と同一であり、
前記第2トレーニング出力データに含まれる要素の並び順が、前記トレーニングデータに含まれる要素の並び順と逆である、
機械学習方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、交通状態判定装置、交通状態判定方法、コンピュータプログラム、学習モデル、及び機械学習方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、異常交通流(事故等の突発事象によって交通容量の低下した交通流)を検出する検出装置が開示されている。特許文献1に開示される検出装置は、現在までの交通状態量データに基づいて現時点から所定時間後の交通状態量を予測し、交通状態量の予測値に基づいて異常交通流判定用上下閾値を設定し、所定時間後において検出された実際の交通状態量が上下閾値間の範囲外にあるか否かを判定し、範囲外にあるときに交通流が異常であると判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3-167742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された検出装置では、現時点から所定時間後の交通状態量を正確に予測できなければ、異常交通流判定用の閾値を適切に設定することができず、異常交通流の検出精度が低下する。さらに、事故等の突発事象の内容及び程度、突発事象発生時点における交通量、突発事象発生箇所の道路形状等によって、突発事象発生後の交通流は変化する。上記のような突発事象に関する様々な状況に応じて、適切な閾値を設定することは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る交通状態判定装置は、異常検知区域における交通状態を示す入力データから、前記異常検知区域における交通状態を示す出力データを生成する学習モデルと、前記入力データ及び前記出力データに基づいて、交通異常状態が発生しているか否かを判定する状態判定部と、を備え、前記学習モデルは、前記入力データを受け付け、特徴データを出力する長・短期記憶エンコーダと、前記長・短期記憶エンコーダから出力される前記特徴データを受け付け、受け付けた前記特徴データを繰り返し出力するリピートベクタと、前記リピートベクタから出力される前記特徴データを受け付け、受け付けた前記特徴データから前記入力データを復元する復元処理を行い、前記復元処理の結果として得られる前記出力データを出力する長・短期記憶デコーダと、を含むオートエンコーダである。
【0006】
本開示は、上記のような特徴的な構成を備える交通状態判定装置として実現することができるだけでなく、交通状態判定装置における特徴的な処理をステップとする交通状態判定方法として実現することができる。本開示は、コンピュータを通信制御装置として機能させるコンピュータプログラムとして実現したり、交通状態判定装置又は他の装置が実行する機械学習によって生成される、交通状態判定用の学習モデルとして実現したりすることができる。さらに、本開示は、交通状態判定装置の一部又は全部を半導体集積回路として実現したり、交通状態判定装置を含む交通状態判定システムとして実現したりすることができる。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、交通における異常状態を正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】交通信号制御システムの全体構成の一例を示す図である。
図2】異常検知区域の一例を説明するための図である。
図3】実施形態に係る交通状態判定装置の構成の一例を示すブロック図である。
図4】実施形態に係る学習モデルの構成の一例を示す模式図である。
図5】実施形態に係る交通状態判定装置の機能の一例を示す機能ブロック図である。
図6】統計情報の一例を説明する図である。
図7】cos類似度に対する前処理の式における定数項Δの影響を説明するための図である。
図8】閾値の設定の一例を説明するためのグラフである。
図9】異常区間の特定の一例を説明するための図である。
図10】実施形態に係る機械学習の一例を示す模式図である。
図11】実施形態に係る交通状態判定装置による交通状態判定処理の一例を示すフローチャートである。
図12】交通状態判定の実験結果を示すグラフである。
図13】実施形態に係る学習処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<本開示の実施形態の概要>
以下、本開示の実施形態の概要を列記して説明する。
【0010】
(1) 本実施形態に係る交通状態判定装置は、異常検知区域における交通状態を示す入力データから、前記異常検知区域における交通状態を示す出力データを生成する学習モデルと、前記入力データ及び前記出力データに基づいて、交通異常状態が発生しているか否かを判定する状態判定部と、を備え、前記学習モデルは、前記入力データを受け付け、特徴データを出力する長・短期記憶エンコーダと、前記長・短期記憶エンコーダから出力される前記特徴データを受け付け、受け付けた前記特徴データを繰り返し出力するリピートベクタと、前記リピートベクタから出力される前記特徴データを受け付け、受け付けた前記特徴データから前記入力データを復元する復元処理を行い、前記復元処理の結果として得られる前記出力データを出力する長・短期記憶デコーダと、を含むオートエンコーダである。長・短期記憶(以下、「LSTM」ともいう)は、長期記憶を可能とした再帰型ニューラルネットワーク(RNN)の一種である。オートエンコーダは、入力データから特徴量を抽出(エンコード)し、入力データと同一の出力データを得るように復元(デコード)する。学習モデルが長・短期記憶エンコーダと、リピートベクタと、長・短期記憶デコーダとを含むオートエンコーダ(以下、「LSTM-AE」ともいう)であるため、時系列データである入力データの全体を反映し、入力データを高精度に復元した出力データを得ることができる。突発事象が発生したときの交通異常状態を反映した入力データは、正常な交通状態における入力データとは異なる傾向を示す。学習モデルは、このような交通異常状態を反映した入力データを正確に復元せず、入力データとは異なる出力データを生成する。したがって、入力データと出力データとに基づいて、交通状態が正常か異常かを正確に判定することができる。
【0011】
(2) 上記(1)において、前記交通状態判定装置は、第1異常検知区域における交通状態を示す第1入力データと、前記第1異常検知区域とは異なる第2異常検知区域における交通状態を示す第2入力データとを前記学習モデルに順次入力する入力部と、前記第1入力データと前記学習モデルに前記第1入力データが入力された場合に得られる第1出力データとに基づいて前記状態判定部が前記第1異常検知区域において交通異常状態が発生したか否かを判定した結果である第1判定結果、及び、前記第2入力データと前記学習モデルに前記第2入力データが入力された場合に得られる第2出力データとに基づいて前記状態判定部が前記第2異常検知区域において交通異常状態が発生したか否かを判定した結果である第2判定結果に基づいて、前記第1異常検知区域及び前記第2異常検知区域に含まれる複数の区間のうち交通異常状態が発生している区間を特定する異常区間特定部と、をさらに備えてもよい。これにより、異常検知区域よりも小さい区間単位で交通異常状態が発生している箇所を特定することができる。
【0012】
(3) 上記(2)において、前記第1異常検知区域の一部と前記第2異常検知区域の一部とは重複してもよい。これにより、第1異常検知区域と第2異常検知区域とを含む道路の連続した範囲において、交通状態を判定することができる。
【0013】
(4) 上記(3)において、前記異常区間特定部は、前記第1判定結果が前記第1異常検知区域において交通異常状態が発生していることを示し、前記第2判定結果が前記第2異常検知区域において交通異常状態が発生していることを示している場合に、前記第1異常検知区域と前記第2異常検知区域との重複区間を、交通異常状態が発生している区間として特定してもよい。これにより、第1異常検知区域及び第2異常検知区域の両方において交通異常状態が発生していると判定された場合、第1異常検知区域と第2異常検知区域との重複区間において交通異常状態が発生している可能性が高い。よって、交通異常状態が発生している可能性が高い区間を特定することができる。
【0014】
(5) 上記(2)から(4)のいずれか1つにおいて、前記入力部は、前記異常検知区域における交通状態を示す交通状態情報に、統計情報を用いた前処理を施すことによって前記入力データを生成してもよい。これにより、適切な前処理によって、異常検知区域における交通状態を正確に判定することができる。
【0015】
(6) 上記(5)において、前記統計情報は、過去の交通状態情報の平均値と、前記過去の交通状態情報の標準偏差とを含んでもよい。これにより、過去の交通状態を反映して交通状態の判定を行うことができる。
【0016】
(7) 上記(5)又は(6)において、前記統計情報は、前記交通状態情報が取得された異常検知区域、日種、及び時間帯の少なくとも1つにおける過去の交通状態情報が統計処理された値であってもよい。これにより、異常検知区域、日種、及び時間帯の少なくとも1つの過去の交通状態を反映して交通状態の判定を行うことができる。
【0017】
(8) 上記(5)から(7)のいずれか1つにおいて、前記交通状態情報は、前記異常検知区域における渋滞長、交通量、及び旅行時間の少なくとも1つを含んでもよい。渋滞長、交通量、及び旅行時間によって正確に交通状態を示すことができる。したがって、このような入力データを用いることによって交通異常状態を正確に検出することができる。
【0018】
(9) 上記(1)から(8)のいずれか1つにおいて、前記状態判定部は、前記入力データと、前記出力データとの類似度に基づいて、前記交通異常状態が発生しているか否かを判定し、前記類似度は、cos類似度、ユークリッド距離、動的時間伸縮、又はピアソンの相関係数であってもよい。これにより、交通状態の判定を正確に行うことができる。
【0019】
(10) 本実施形態に係る交通状態判定方法は、学習モデルによって、異常検知区域における交通状態を示す入力データから、前記異常検知区域における交通状態を示す出力データを生成するステップと、前記入力データ及び前記出力データに基づいて、交通異常状態が発生しているか否かを判定するステップと、を含み、前記学習モデルは、前記入力データを受け付け、特徴データを出力する長・短期記憶エンコーダと、前記長・短期記憶エンコーダから出力される前記特徴データを受け付け、受け付けた前記特徴データを繰り返し出力するリピートベクタと、前記リピートベクタから出力される前記特徴データを受け付け、受け付けた前記特徴データから前記入力データを復元する復元処理を行い、前記復元処理の結果として得られる前記出力データを出力する長・短期記憶デコーダと、を含むオートエンコーダである。突発事象が発生したときの交通異常状態を反映した入力データは、正常な交通状態における入力データとは異なる傾向を示す。学習モデルは、このような交通異常状態を反映した入力データを正確に復元せず、入力データとは異なる出力データを生成する。したがって、入力データと出力データとに基づいて、交通状態が正常か異常かを正確に判定することができる。
【0020】
(11) 本実施形態に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに交通状態を判定させるためのコンピュータプログラムであって、前記コンピュータに、学習モデルによって、異常検知区域における交通状態を示す入力データから、前記異常検知区域における交通状態を示す出力データを生成するステップと、前記入力データ及び前記出力データに基づいて、交通異常状態が発生しているか否かを判定するステップと、を実行させ、前記学習モデルは、前記入力データを受け付け、特徴データを出力する長・短期記憶エンコーダと、前記長・短期記憶エンコーダから出力される前記特徴データを受け付け、受け付けた前記特徴データを繰り返し出力するリピートベクタと、前記リピートベクタから出力される前記特徴データを受け付け、受け付けた前記特徴データから前記入力データを復元する復元処理を行い、前記復元処理の結果として得られる前記出力データを出力する長・短期記憶デコーダと、を含むオートエンコーダである。突発事象が発生したときの交通異常状態を反映した入力データは、正常な交通状態における入力データとは異なる傾向を示す。学習モデルは、このような交通異常状態を反映した入力データを正確に復元せず、入力データとは異なる出力データを生成する。したがって、入力データと出力データとに基づいて、交通状態が正常か異常かを正確に判定することができる。
【0021】
(12) 本実施形態に係る学習モデルは、オートエンコーダによって構成される学習モデルであって、コンピュータを、異常検知区域における交通状態を示す入力データを受け付け、特徴データを出力する長・短期記憶エンコーダと、前記長・短期記憶エンコーダから出力される前記特徴データを受け付け、受け付けた前記特徴データを繰り返し出力するリピートベクタと、前記リピートベクタから出力される前記特徴データを受け付け、受け付けた前記特徴データから前記入力データを復元する復元処理を行い、前記復元処理の結果として得られる出力データを出力する長・短期記憶デコーダと、として機能させる。突発事象が発生したときの交通異常状態を反映した入力データは、正常な交通状態における入力データとは異なる傾向を示す。学習モデルは、このような交通異常状態を反映した入力データを正確に復元せず、入力データとは異なる出力データを生成する。したがって、入力データと出力データとに基づいて、交通状態が正常か異常かを正確に判定することができる。
【0022】
(13) 本実施形態に係る機械学習方法は、異常検知区域における交通状態を判定するために用いられる学習モデルを生成するための機械学習方法であって、学習前モデルに、交通状態を示すトレーニングデータを入力し、前記学習前モデルに前記トレーニングデータに近似した情報を出力させるステップを含み、前記学習前モデルは、前記トレーニングデータを受け付け、特徴データを出力する長・短期記憶エンコーダと、前記長・短期記憶エンコーダから出力される前記特徴データを受け付け、受け付けた前記特徴データを繰り返し出力するリピートベクタと、前記リピートベクタから出力される前記特徴データを受け付け、受け付けた前記特徴データから前記トレーニングデータを復元する復元処理を行い、前記復元処理の結果として得られる第1トレーニング出力データを出力する第1長・短期記憶デコーダと、前記リピートベクタから出力される前記特徴データを受け付け、受け付けた前記特徴データから前記トレーニングデータを復元する復元処理を行い、前記復元処理の結果として得られる第2トレーニング出力データを出力する第2長・短期記憶デコーダと、を含むオートエンコーダであり、前記第1トレーニング出力データに含まれる要素の並び順が、前記トレーニングデータに含まれる要素の並び順と同一であり、前記第2トレーニング出力データに含まれる要素の並び順が、前記トレーニングデータに含まれる要素の並び順と逆である。交通量の時系列データは、自己相関性が高い。LSTMは、トレーニングデータを復元するように訓練される。しかし、自己相関性が高い時系列データで訓練されると、LSTMは自己相関性を利用して直前の値を予測値とし、単純にトレーニングデータそのままのデータを出力するように訓練される。このような自己相関性の利用を抑制するために、学習前モデルは第2長・短期記憶デコーダを含む。第2長・短期記憶デコーダは、トレーニングデータとは逆順の第2トレーニング出力データを生成する。これにより、直前の値を繰り返すことが抑制され、正確に入力データを復元する学習モデルを構築することができる。
【0023】
<本開示の実施形態の詳細>
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態の詳細を説明する。なお、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0024】
[1.交通信号制御システム]
図1は、交通信号制御システムの全体構成の一例を示す図である。
図1中、交通信号制御システム1は、複数の信号灯器2、複数の交通信号制御機4、交通情報データベース6(以下、「データベース」を「DB」ともいう)、路側センサ8、及び交通状態判定装置10を含む。
【0025】
図1中、信号灯器2及び交通信号制御機4は、複数の交差点Ci(i=1~12)のそれぞれに設置されている。
なお、図1では、図示を簡略化するために、各交差点Ciに信号灯器2を1つだけ示しているが、実際には互いに交差する道路の上り下り用として4つの信号灯器2が設置される。
【0026】
交通情報DB6及び交通状態判定装置10は、交通管制センター等に設置される。
交通信号制御機4及び交通情報DB6は、5G(第5世代移動通信システム)等の移動通信システムによる無線通信が可能であり、互いに無線通信することで、相互に情報の授受が可能とされている。
【0027】
交通信号制御機4は、信号灯器2の灯色制御(信号制御)を行う。
【0028】
路側センサ8は、例えば、直下を走行する車両5を超音波感知する車両感知器や、インダクタンス変化で車両5を感知するループコイル、あるいはカメラの画像を画像処理して交通量や車両速度を計測する画像感知器等により構成される。
路側センサ8は、対象の交差点Ciから延びる各方路の上流側に設置され、当該交差点Ciに流入する車両台数(流入交通量)、車両速度、上流側の交差点からの旅行時間、渋滞長を計測する。ここで、渋滞とは、車両の過度集中、道路工事、事故等により道路上における車両の交通がとどこおり、速度がおおむね20km/h以下になっている状態をいう。渋滞長とは、渋滞の先頭から末尾までの車列の長さをいう。旅行時間とは、ある区間を旅行するのに要した時間をいい、停止時間及び遅れ時間を含む。交通量とは、単位時間内の通過台数をいう。旅行時間は、上流側の交差点において車両が検出された時刻から、対象の交差点Ciにおいて当該車両が検出された時刻までの時間に基づいて計測される。車両速度が所定値以下の車両が連続して感知された場合に渋滞が発生していると判断される。
【0029】
路側センサ8は、有線又は無線による通信回線を介して、対象の交差点Ciに設置されている交通信号制御機4に接続されている。路側センサ8は、通信回線を通じて、計測結果を交通信号制御機4へ与える。計測結果は、交通信号制御機4によって信号灯器2の灯色制御に用いられる他、交通信号制御機4によって交通情報DB6へ転送される。
なお、計測結果には、交差点Ciに流入する交通量、車両速度、旅行時間等が含まれる。路側センサ8は旅行時間及び渋滞長を計測しなくてもよい。例えば、交通管制センターに設置された装置(交通情報DB6等)が各路側センサ8による車両の検出時刻を取得し、旅行時間を算出してもよい。当該装置が、各路側センサ8によって検出された車両速度を取得し、渋滞の判定及び渋滞長の算出を行ってもよい。
【0030】
交通情報DB6及び交通状態判定装置10は、LAN(Local Area Network)等によって互いに通信可能に接続される。交通情報DB6は、交通状態を示す交通状態情報を記憶する。交通状態情報は、交通量、渋滞長、及び旅行時間を含む。交通状態情報は、時系列データである。すなわち、交通状態情報は、一定の時間間隔で計測された交通量、渋滞長、及び旅行時間それぞれの時系列データを含む。
【0031】
交通状態判定装置10は、交通情報DB6に記憶された交通状態情報に基づいて、異常検知区域毎の交通状態を判定する。図2は、異常検知区域の一例を説明するための図である。交通状態判定装置10による交通状態の判定対象の道路(以下、「対象経路」という)は、複数の単位区間を含んでいる。単位区間は、一定程度の長さを有する区間である。図2の例では、単位区間1~単位区間7の7つの単位区間によって対象経路が構成されている。
【0032】
異常検知区域は、対象経路の一部の区域であり、複数の単位区間を含む。図2の例では、1つの異常検知区域は、3つの単位区間によって構成されている。具体的には、異常検知区域Aは単位区間1、単位区間2、及び単位区間3を含み、異常検知区域Bは単位区間2、単位区間3、及び単位区間4を含み、異常検知区域Cは単位区間3、単位区間4、及び単位区間5を含み、異常検知区域Dは単位区間4、単位区間5、及び単位区間6を含み、異常検知区域Eは単位区間5、単位区間6、及び単位区間7を含む。このように、複数の異常検知区域は、互いに重複した区間を有する。例えば、異常検知区域Aと異常検知区域Bとは単位区間2及び単位区間3において重複し(単位区間2及び単位区間3を共有し)、異常検知区域Bと異常検知区域Cとは単位区間3及び単位区間4において重複し(単位区間3及び単位区間4を共有し)、異常検知区域Aと異常検知区域Cとは単位区間3において重複する(単位区間3を共有する)。
【0033】
[2.交通状態判定装置の構成]
図3は、本実施形態に係る交通状態判定装置10の構成の一例を示すブロック図である。
【0034】
交通状態判定装置10は、プロセッサ101と、不揮発性メモリ102と、揮発性メモリ103と、入出力インタフェース104とを備える。
【0035】
揮発性メモリ103は、例えばSRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性メモリである。不揮発性メモリ102は、例えばフラッシュメモリ、ハードディスク、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリである。不揮発性メモリ102には、コンピュータプログラムである交通状態判定プログラム105及び交通状態判定プログラム105の実行に使用されるデータが格納される。交通状態判定装置10の各機能は、交通状態判定プログラム105がプロセッサ101によって実行されることで実現される。交通状態判定プログラム105は、フラッシュメモリ、ROM、CD-ROMなどの記録媒体に記憶させることができる。
【0036】
交通状態判定プログラム105は、学習モデル106を含む。さらに、不揮発性メモリ102には、訓練プログラム107が記憶される。訓練プログラム107は、機械学習用のコンピュータプログラムであり、機械学習によって学習モデル106を構築することができる。
【0037】
不揮発性メモリ102には、複数の統計情報108が記憶されている。統計情報108は、交通状態判定プログラム105によって使用される。
【0038】
プロセッサ101は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。ただし、プロセッサ101は、CPUに限られない。プロセッサ101は、GPU(Graphics Processing Unit)であってもよい。具体的な一例では、プロセッサ101は、マルチコアGPUである。プロセッサ101は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)であってもよいし、ゲートアレイ、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスであってもよい。この場合、ASIC又はプログラマブルロジックデバイスは、交通状態判定プログラム105と同様の処理を実行可能に構成される。
【0039】
入出力インタフェース104は、例えばイーサネットインタフェース(「イーサネット」は登録商標)を含み、交通情報DB6に接続されている。さらに入出力インタフェース104は、液晶ディスプレイ等の表示装置109に接続されており、映像信号を表示装置109に出力することができる。
【0040】
[3.学習モデル]
学習モデル106は、プロセッサ101によって実行可能なコンピュータプログラムであり、交通状態の判定に用いられる。
【0041】
図4は、本実施形態に係る学習モデルの構成の一例を示す模式図である。学習モデル106は、ニューラルネットワークの1つであるオートエンコーダである。さらに具体的には、学習モデル106は、入力層111と、長・短期記憶エンコーダ(以下、「LSTMエンコーダ」という)112と、リピートベクタ113と、第1長・短期記憶デコーダ(以下、「第1LSTMデコーダ」という)114Aと、第2長・短期記憶デコーダ(以下、「第2LSTMデコーダ」という)114Bと、第1出力層115Aと、第2出力層115Bとを含むLSTM-AEである。LSTMエンコーダ112、リピートベクタ113、第1LSTMデコーダ114A及び第2LSTMデコーダ114Bによって、中間層が構成される。
【0042】
入力層111は、入力データx(t)を受け付ける。入力データx(t)は、交通状態情報に基づく時系列データである。本実施形態では、入力データx(t)は、交通状態情報である交通量xp(t)に前処理が施されることによって生成される。入力データx(t)の生成については後述する。入力層111は、受け付けた入力データx(t)に含まれる要素を時系列で出力する。
【0043】
LSTMエンコーダ112、第1LSTMデコーダ114A及び第2LSTMデコーダ114Bは、LSTMユニットによって構成される。LSTMユニットは、RNNの一種であり、セルと、入力ゲートと、出力ゲートと、忘却ゲートとを含む。セルは、記憶部であり、セル状態と呼ばれる値C(t)を有する。LSTMユニットは、時系列データのある時刻tでの入力値X(t)の入力を受け付け、出力値H(t)を出力する。LSTMユニットには、前回の出力値H(t-1)がフィードバックされる。忘却ゲートは、シグモイド層を含み、X(t)及びH(t-1)に基づいて前回のセル状態C(t-1)から除去(忘却)する要素を決定する。入力ゲートは、シグモイド層及びtanh層を含み、新たなセル状態C(t)において前回のセル状態C(t)から更新する要素を決定する。出力ゲートは、シグモイド層を含み、今回のセル状態C(t)のどの要素を出力値H(t)とするかを決定する。
【0044】
LSTMエンコーダ112は、入力層111から出力された時系列データである入力データx(t)を受け付け、時系列データである特徴データh(t)を出力する。特徴データh(t)は、交通量の特徴を示すデータである。
【0045】
リピートベクタ113は、LSTMエンコーダ112から出力される特徴データh(t)を受け付け、特徴データh(t)を繰り返し出力する。リピートベクタ113によって、入力層111に入力される入力データx(t)の要素数と、第1出力層115A及び第2出力層115Bから出力される出力データy(t)の要素数とが一致する。
【0046】
第1LSTMデコーダ114Aは、リピートベクタ113から出力された特徴データh(t)を受け付け、時系列データである第1出力データy(t)を出力する。第1LSTMデコーダ114Aは、入力データx(t)の復元を行い、復元結果として第1出力データy(t)を生成する。すなわち、復元が正常であれば、第1出力データy(t)は入力データx(t)に近似する。
【0047】
第2LSTMデコーダ114Bは、リピートベクタ113から出力された特徴データh(t)を受け付け、時系列データである第2出力データy_inv(t)を出力する。第2LSTMデコーダ114Bは、入力データx(t)の復元を行い、復元結果として第2出力データy_inv(t)を生成する。ただし、第2出力データy_inv(t)は、第1出力データy(t)の逆順のデータである。つまり、第1出力データy(t)に含まれる要素の並び順は、入力データx(t)に含まれる要素の並び順と同一であり、第2出力データy_inv(t)に含まれる要素の並び順は、入力データx(t)に含まれる要素の並び順と逆である。
【0048】
第1出力層115Aは、第1LSTMデコーダ114Aからの第1出力データy(t)を受け付け、第1出力データy(t)を出力する。第2出力層115Bは、第2LSTMデコーダ114Bからの第2出力データy_inv(t)を受け付け、第2出力データy_inv(t)を出力する。第1出力層115A及び第2出力層115Bのそれぞれは、Denseである。
【0049】
学習モデル106は、後述する訓練処理によって構築される。
【0050】
[4.交通状態判定装置の機能]
図5は、本実施形態に係る交通状態判定装置10の機能の一例を示す機能ブロック図である。交通状態判定装置10は、入力部121、選択部122、状態判定部123、異常区間特定部124、及び映像信号出力部125の各機能を有する。
【0051】
交通情報DB6には、単位区間毎の渋滞長、交通量、及び旅行時間を含む交通状態情報が蓄積される。入力部121は、交通状態の判定対象の異常検知区域における最新の一定期間の交通量情報を交通情報DB6から受け付ける。交通量情報には、例えば、計測された時刻を示す時刻情報(タイムスタンプ)が含まれる。
【0052】
入力部121は、受け付けた交通量xp(t)に対して前処理を施し、入力データx(t)を出力する。前処理は、統計情報を用いた処理である。具体的な一例では、前処理は、交通量xp(t)に対して式(1)を適用する処理である。
【数1】

ただし、μ(t)は過去の交通量(例えば、対象経路の過去の交通量)の平均値であり、σ(t)は過去の交通量の標準偏差であり、Δは定数である。
【0053】
統計情報108は、交通量の平均値μ(t)と、交通量の標準偏差σ(t)とを含む。統計情報108は、交通状態情報が取得された異常検知区域、日種、及び時間帯の少なくとも1つにおける過去の交通状態情報が統計処理された値である。具体的な一例では、統計情報108は、異常検知区域毎、日種毎、及び時間帯毎に不揮発性メモリ102に格納される。図6は、統計情報の一例を説明する図である。交通状態は、朝及び夕方、夜間、昼間等の時間帯によって交通状態は異なる傾向を示す。このような時間帯に応じた交通状態の傾向に対応するため、統計情報108は、複数の時間帯毎に設けられる。具体的には、1時間の各時間帯に対応して統計情報108が設けられる。平日、土曜日、日曜日・祝日等の日種によって交通状態は異なる傾向を示す。このような日種に応じた交通状態の傾向に対応するため、統計情報108はさらに、複数の日種毎に設けられる。具体的には、平日、土曜日、及び日曜日・祝日の各日種に対応して統計情報108が設けられる。つまり、平日の各時間帯に対応して1つずつの統計情報108が設けられ、土曜日の各時間帯に対応して1つずつの統計情報108が設けられ、日曜日及び祝日の各時間帯に対応して1つずつの統計情報108が設けられる。さらに、異常検知区域毎に、図6のような日種毎、時間帯毎の統計情報108が設けられる。
【0054】
図5に戻り、選択部122は、交通状態の判定対象の異常検知区域、日種、及び時間帯に対応した統計情報108を選択する。入力部121は、選択部122によって選択された統計情報108に含まれる平均値μ(t)及び標準偏差σ(t)を用いて、式(1)により交通量情報xs(t)に前処理を施す。これにより、入力データx(t)が生成される。
【0055】
入力部121は、生成された入力データx(t)を学習モデル106に入力する。学習モデル106は、入力データx(t)から特徴データh(t)を生成し、特徴データh(t)から第1出力データy(t)及び第2出力データy_inv(t)を生成する。学習モデル106は、生成された第1出力データy(t)及び第2出力データy_inv(t)を出力する。
【0056】
入力データx(t)及び第1出力データy(t)は、状態判定部123に与えられる。状態判定部123は、入力データx(t)及び出力データy(t)に基づいて、交通状態を判定する。すなわち、状態判定部123は、異常検知区域において、交通異常状態が発生しているか否かを判定する。
【0057】
状態判定部123は、入力データx(t)と出力データy(t)との類似度を算出する。具体的な一例では、状態判定部123は、類似度として、入力データx(t)と出力データy(t)とのcos類似度を算出する。2つのベクトルq,dのcos類似度は、式(2)によって与えられる。
【数2】

ただし、Vはベクトルq,dの要素数である。
【0058】
cos類似度は、比較する2つのベクトルのなす角度に応じた値になる。すなわち、入力データx(t)と出力データy(t)とのなす角度が小さいほどcos類似度は大きくなり、入力データx(t)と出力データy(t)とのなす角度が大きいほどcos類似度は小さくなる。
【0059】
式(1)のΔの大きさは、cos類似度に影響する。式(1)においてΔを設けることで、交通状態が異常と判定された場合のcos類似度の分散を小さくすることができる。図7は、cos類似度に対する前処理の式における定数項Δの影響を説明するための図である。ベクトルa(1,1)とベクトルb(0,1)とのcos類似度cos(a,b)は、とベクトルaとベクトルbとのなす角度θ1に応じて定まる。ここで、cos(a+Δ,b+Δ)(ただし、Δ>0)を考える。例えば、Δ=5とすると、ベクトルa+Δは(6,6)であり、ベクトルb+Δは(5,6)である。ベクトルa+Δとベクトルb+Δとのなす角度θ2は、θ1より小さい。したがって、cos(a+Δ,b+Δ)>cos(a,b)となる。このように、Δを適切に設定することにより、比較する2つのベクトルのなす角度を小さくすることができ、誤検知を抑制することができる。
【0060】
次に、閾値の設定について説明する。図8は、閾値の設定の一例を説明するためのグラフである。閾値の設定には、交通状態が正常であるか、異常であるかが既知の状態において、交通状態の判定を複数行った結果がサンプルとして用いられる。各サンプルには、交通異常状態であるか、交通異常状態ではない(交通状態が正常である)かのラベルが付されている。交通状態の異常のラベルが付されたサンプルにおいて、交通状態が異常と判定されてない場合、交通状態の異常が未検知であるという。交通状態の正常のラベルが付されたサンプルにおいて、交通状態が異常と判定された場合、交通状態の異常が誤検知であるという。図8において、縦軸は再現率を示し、横軸は適合率を示す。再現率は、1-未検知率である。未検知率は、交通状態の異常の全サンプル数に対する、異常未検知のサンプル数の比率である。適合率は、1-誤検知率である。誤検知率は、交通状態の正常の全サンプル数に対する、異常誤検知のサンプル数の比率である。
【0061】
図8における曲線Gは、閾値を変化させたときに、各閾値における再現率及び適合率をプロットして得られる。すなわち、この曲線G上の各位置は閾値を示す。閾値Thは、曲線Gにおいて、再現率及び適合率が(1,1)の点との距離が最も小さい位置に設定される。
【0062】
図5に戻り、状態判定部123は、算出されたcos類似度と閾値とを比較し、cos類似度が閾値を超えれば交通状態が異常である、すなわち、交通異常状態が発生していると判定し、cos類似度が閾値以下であれば交通状態が正常である、すなわち、交通異常状態が発生していないと判定する。
【0063】
異常区間特定部124は、交通異常状態が発生していると判定された異常検知区域において、交通異常状態が発生している単位区間を特定する。具体的には、異常区間特定部124は、複数の異常検知区域において交通異常状態が発生していると判定された場合に、交通異常状態が発生していると判定された複数の異常検知区域に基づいて、交通異常状態が発生している単位区間(以下、「異常区間」ともいう)を特定する。
【0064】
例えば、入力部121が、第1異常検知区域における交通状態を示す第1入力データと、第1異常検知区域とは異なる第2異常検知区域における交通状態を示す第2入力データとを学習モデル106に順次入力した場合、状態判定部123は、第1入力データと、学習モデル106に第1入力データが入力された場合に得られる第1出力データとに基づいて、第1異常検知区域において交通異常状態が発生したか否かを判定し、第2入力データと学習モデル106に第2入力データが入力された場合に得られる第2出力データとに基づいて第2異常検知区域において交通異常状態が発生したか否かを判定する。異常区間特定部124は、第1異常検知区域において交通異常状態が発生したか否かの判定結果である第1判定結果と、第2異常検知区域において交通異常状態が発生したか否かの判定結果である第2判定結果とに基づいて、第1異常検知区域及び第2異常検知区域に含まれる複数の単位区間のうち異常区間を特定する。
【0065】
さらに具体的には、第1異常検知区域の一部と第2異常検知区域の一部とは重複しており、第1判定結果が第1異常検知区域において交通異常状態が発生していることを示し、第2判定結果が第2異常検知区域において交通異常状態が発生していることを示している場合に、異常区間特定部124は、第1異常検知区域と第2異常検知区域との重複区間を、異常区間として特定する。
【0066】
図9は、異常区間の特定の一例を説明するための図である。図9において、斜線のハッチングは、交通異常状態が発生していると判定された異常検知区域を示し、格子模様のハッチングは、異常区間として特定された単位区間を示す。図9の例では、異常検知区域B、C及びDのそれぞれにおいて、交通異常状態が発生していると判定されている。異常検知区域B、C及びDは、単位区間4において重複しており、単位区間4が異常区間として特定される。
【0067】
図5に戻り、映像信号出力部125は、交通異常状態の判定結果を示す映像信号を出力する。具体的な一例では、映像信号出力部125は、異常区間特定部124によって特定された異常区間を示す映像信号を出力する。映像信号は表示装置109に与えられ、異常区間が表示装置109によって表示される。例えば、映像信号出力部125は、異常区間が特定の色で示されたマップを表示装置109に表示させたり、異常区間の区間IDを表示装置109に表示させたりすることができる。
【0068】
[5.学習機能]
次に、学習モデル106を作成する学習機能について説明する。学習機能は、訓練プログラム107によって実現される。
【0069】
交通状態判定装置10等の訓練プログラム107を実行する装置は、学習モデル106を作成するために、交通情報DB6から交通量の時系列データを多数受信する。例えばユーザが、取得された交通量データから、異常なデータを取り除く。すなわち取得された交通量データから、正常な交通状態を示すデータが選別される(スクリーニング)。
【0070】
スクリーニング後の交通量データには前処理が施され、上記の入力データと同様のデータ形式のトレーニングデータを多数含むトレーニングデータセットが作成される。
【0071】
トレーニングデータセットをLSTM-AEに入力することで、学習モデル106が作成される。すなわち、訓練プログラム107を実行する装置は、トレーニングデータセットを用いて機械学習を実行し、学習モデル106を構築(再構築)する。
【0072】
図10は、本実施形態に係る機械学習の一例を示す模式図である。訓練プログラム107を実行する装置は、LSTM-AEにトレーニングデータセットを与え、教師なし機械学習を実行する。LSTM-AEは、入力層と、LSTMエンコーダと、リピートベクタと、第1LSTMデコーダと、第2LSTMデコーダと、第1出力層と、第2出力層とを含む。すなわち、学習前のLSTM-AEは、学習モデル106と同様の構成(ただし、LSTMエンコーダと、第1LSTMデコーダと、第2LSTMデコーダとは学習前の状態)を有する。
【0073】
教師なし機械学習では、トレーニングデータが入力としてLSTM-AEに与えられ、入力と等しい出力が得られるように、すなわち、入力データと第1出力データとが等しく、且つ、入力データと、要素の並び順を逆とした第2出力データとが等しくなるように、重み(結合荷重)が調整される。このような機械学習は、複数のトレーニングデータを用いて繰り返し行われる。機械学習によって、LSTM-AEの結合荷重が設定され、学習モデル106が構築される。
【0074】
[6.交通状態判定処理]
図11は、本実施形態に係る交通状態判定装置10による交通状態判定処理の一例を示すフローチャートである。図11に示される交通状態判定処理は、学習モデル106のランタイムにおける処理である。
【0075】
交通状態判定処理が開始すると、プロセッサ101は、判定対象とする異常検知区域(以下、「対象区域」ともいう)を選択する(ステップS101)。次に交通状態判定装置10は、交通情報DB6から対象区域の交通状態情報を受信する(ステップS102)。
【0076】
プロセッサ101は、不揮発性メモリ102に記憶された統計情報108の中から、受信された交通状態情報を、対象区域、日種、及び時間帯に対応する統計情報108を選択する(ステップS103)。プロセッサ101は、選択された統計情報108を用いて、交通状態情報に対して前処理を施す(ステップS104)。これにより、入力データが生成される。
【0077】
プロセッサ101は、学習モデル106に、入力データを入力する(ステップS105)。学習モデル106は、入力データから特徴量を抽出(エンコード)し、入力データを復元(デコード)した出力データを生成する。
【0078】
プロセッサ101は、入力データと出力データとのcos類似度を算出する(ステップS106)。さらにプロセッサ101は、cos類似度と閾値とを比較し、cos類似度が閾値を超えるか否かを判定する(ステップS107)。
【0079】
プロセッサ101は、cos類似度が閾値より大きい場合(ステップS107においてYES)、プロセッサ101は交通状態を正常と判定する(ステップS108)。cos類似度が閾値以下である場合(ステップS107においてYES)、プロセッサ101は交通状態を異常と判定する(ステップS109)。
【0080】
プロセッサ101は、全ての異常検知区域が選択済みであるか否かを判定する(ステップS110)。未選択の異常検知区域が残っている場合(ステップS110においてNO)、プロセッサ101は、ステップS101に戻り、新たな異常検知区域を選択し、ステップS102以降を実行する。
【0081】
全ての異常検知区域が選択済みである場合(ステップS110においてYES)、プロセッサ101は、交通異常状態が発生していると判定された異常検知区域において重複している単位区間を、異常区間として特定する(ステップS111)。プロセッサ101は、交通状態の判定結果を表示装置109に表示させる(ステップS112)。以上で、交通状態判定処理が終了する。
【0082】
発明者は、本実施形態に係る交通状態判定装置を試作し、その性能を評価する実験を行った。図12は、交通状態判定の実験結果を示すグラフである。図12において、縦軸は1-cos類似度を示し、横軸は時刻を示す。このグラフでは、見やすさのために、縦軸をcos類似度ではなく1-cos類似度としている。実験では、17時14分に人身事故が登録された1日の24時間分の交通量の時系列データが用いられた。実験では、0時から17時8分までは1-cos類似度が閾値Thより大きく、交通状態が正常と判定された。17時8分から19時過ぎまでは、1-cos類似度が閾値Th以下であり、交通状態が異常と判定された。人身事故によって異常渋滞が発生したと考えられるが、この人身事故が登録される17時14分より前の17時8分に、交通異常が検出されている。このように、実験の結果、本実施形態に係る交通状態判定方法が、良好な性能を有することが確認された。
【0083】
[7.学習処理]
図13は、本実施形態に係る学習処理の一例を示すフローチャートである。図13に示される学習処理は、学習モデル106のトレーニングタイムにおける処理である。
【0084】
学習処理が開始すると、交通状態判定装置10は、過去の交通状態情報を交通情報DB6から受信する(ステップS201)。
【0085】
プロセッサ101は、取得された交通状態情報から異常なデータを除去する(ステップS202)。さらに、プロセッサ101は、異常なデータが除去された交通状態情報に対して前処理を施す(ステップS203)。これにより、交通量の時系列データに前処理が施されたトレーニングデータを多数含むトレーニングデータセットが作成される。前処理には、例えば、トレーニングに使用される交通状態情報に対応する異常検知区域、日種、及び時間帯の統計情報が用いられる。
【0086】
プロセッサ101は、トレーニングデータセットをLSTM-AEに与え、機械学習を実行する(ステップS204)。これによって、学習モデル106が構築される。以上で、学習処理が終了する。
【0087】
[8.変形例]
上記の実施形態では、異常検知区域、日種毎及び時間帯毎に統計情報108を設けたが、これに限定されない。例えば、異常検知区域のみに応じて統計情報108を設けてもよいし、日種のみに応じて統計情報108を設けてもよいし、時間帯のみに応じて統計情報108を設けてもよい。さらに、全ての異常検知区域、日種及び時間帯に対応する1つの統計情報108を設けてもよい。
【0088】
上記の実施形態では、使用する統計情報108を変えることによって、異常検知区域、日種毎及び時間帯の差異に合わせた交通状態の判定を行う構成としたが、これに限定されない。異常検知区域、日種毎又は時間帯毎に学習モデル106を構築してもよい。この場合、交通状態の判定対象の異常検知区域、日種、及び時間帯の少なくとも1つに対応した学習モデル106を選択し、選択された学習モデル106を用いて交通状態の判定を行うことができる。
【0089】
上記の実施形態では、交通量の時系列データを用いて交通状態の判定を行ったが、これに限定されない。渋滞長又は旅行時間を用いて交通状態の判定を行ってもよいし、交通量、渋滞長、及び旅行時間の2つ以上を用いて交通状態の判定を行ってもよい。
【0090】
上記の実施形態では、学習モデル106の入力データと出力データとの類似度としてcos類似度を算出したが、これに限定されない。学習モデル106の入力データと出力データとの類似度として、ユークリッド距離、DTM(動的時間伸縮)、又はピアソンの相関係数を算出してもよい。
【0091】
上記の実施形態では、学習モデル106が第1LSTMデコーダ114A及び第2LSTMデコーダ114Bを含んだが、これに限定されない。第1LSTMデコーダ114A及び第2LSTMデコーダ114Bのいずれか1つのみを学習モデル106が含んでもよい。すなわち、学習モデル106は、入力層111と、LSTMエンコーダ112と、リピートベクタ113と、第1LSTMデコーダ114Aと、第1出力層115Aとによって構成されてもよいし、入力層111と、LSTMエンコーダ112と、リピートベクタ113と、第2LSTMデコーダ114Bと、第2出力層115Bとによって構成されてもよい。ただし、学習モデル106が第2LSTMデコーダ114B及び第2出力層115Bを含む場合、第2出力層115Bからの出力データの要素を逆順に並べ直し、cos類似度を算出する必要がある。さらに、学習前のLSTM-AEは、入力層と、LSTMエンコーダと、リピートベクタと、第1LSTMデコーダと、第1出力層と、第2LSTMデコーダと、第2出力層とを含むことが必要である。つまり、LSTM-AEを機械学習させた上で、学習モデルから第2LSTMデコーダ114B及び第2出力層115Bを削除したり、第1LSTMデコーダ114A及び第1出力層115Aを削除したりすればよい。
【0092】
交通状態判定装置10が、交通状態判定処理と、学習処理とを実行する構成に限られない。例えば、学習処理は、交通状態判定装置10とは異なる装置によって実行されてもよい。この場合、学習処理を実行した装置によって構築された学習モデル106又はその複製が、交通状態判定装置10又は他の装置の不揮発性メモリに書き込まれてもよい。これにより、学習処理の実行環境を有しない装置に、学習モデル106を提供することができる。
【0093】
交通状態情報に含まれる渋滞長、交通量、及び旅行時間は、路側センサ8によって計測される構成としたが、これに限定されない。例えば、車両に設けられたセンサによって車速、車両の位置などを検出し、これらの検出データを含むプローブ情報を通信によって取得し、取得されたプローブ情報に基づいて、渋滞長、交通量、及び旅行時間等が算出されてもよい。
【0094】
[9.補記]
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的ではない。本発明の権利範囲は、上述の実施形態ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及びその範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0095】
1 交通信号制御システム
2 信号灯器
4 交通信号制御機
5 車両
6 交通情報データベース(交通情報DB)
8 路側センサ
10 交通状態判定装置
101 プロセッサ
102 不揮発性メモリ
103 揮発性メモリ
104 入出力インタフェース(I/O)
105 交通状態判定プログラム
106 学習モデル
107 訓練プログラム
108 統計情報
109 表示装置
111 入力層
112 長・短期記憶エンコーダ(LSTMエンコーダ)
113 リピートベクタ
114A 第1長・短期記憶デコーダ(第1LSTMデコーダ)
114B 第2長・短期記憶デコーダ(第2LSTMデコーダ)
115A 第1出力層
115B 第2出力層
121 入力部
122 選択部
123 状態判定部
124 異常区間特定部
125 映像信号出力部
θ1,θ2 角度
図1
図2
図3
図4
図5
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