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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167977
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1345 20060101AFI20231116BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
G02F1/1345
G02F1/1333
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079552
(22)【出願日】2022-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】520487808
【氏名又は名称】シャープディスプレイテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 裕昭
【テーマコード(参考)】
2H092
2H189
【Fターム(参考)】
2H092GA64
2H092HA04
2H092NA14
2H092PA06
2H092PA08
2H092PA09
2H189AA91
2H189AA92
2H189HA10
2H189LA14
2H189LA15
(57)【要約】
【課題】高度なEMC及びESDの対策を実現し、良好な表示品位を得る。
【解決手段】表示装置10は、画像が表示される表示面20Aを有する液晶パネル11と、液晶パネル11の表示面20Aに対して外側に位置し、表示面20Aと重畳して配され、透光性を有する導電膜35と、グランド電位とされて導電膜35に接続される接続部38と、を備え、導電膜35は、膜厚が1300Å以上で1800Å以下の範囲とされる。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像が表示される表示面を有する液晶パネルと、
前記液晶パネルの前記表示面に対して外側に位置し、前記表示面と重畳して配され、透光性を有する導電膜と、
グランド電位とされて前記導電膜に接続される接続部と、を備え、
前記導電膜は、膜厚が1300Å以上で1800Å以下の範囲とされる表示装置。
【請求項2】
前記導電膜は、膜厚が1300Å以上で1540Å以下の範囲とされる請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記導電膜は、膜厚が1500Åとされる請求項2記載の表示装置。
【請求項4】
前記液晶パネルは、前記表示面を有する第1基板と
前記第1基板の前記表示面とは反対側の面と対向して配される第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に配される液晶層と、を備える請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記導電膜は、前記第1基板の前記表示面上に設けられる請求項4記載の表示装置。
【請求項6】
前記第2基板には、第1方向に沿って延在し、前記第1方向と交差する第2方向に間隔を空けて並ぶ複数のゲート配線と、前記複数のゲート配線に対して順次に走査信号を供給するゲート回路部と、が設けられ、
前記導電膜は、前記複数のゲート配線及び前記ゲート回路部と重畳して配される請求項4記載の表示装置。
【請求項7】
前記第1基板の前記表示面と対向して配される保護基板を備え、
前記導電膜は、前記保護基板のうちの前記表示面との対向面または前記表示面とは反対側の面に設けられる請求項4記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表示装置の一例として下記特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1に記載の表示装置は、表示パネルと、表示パネルに対向配置され、表示パネルの表示面を被覆する表示カバーと、を備えている。表示カバーは、表示パネルからの光を透過する透過領域と、前記透過領域の外周部に設けられ、前記表示パネルからの光を遮断する遮光領域と、を有する。遮光領域には、表示カバーに設けられた第1遮光部材と、第1遮光部材の表面に設けられた透光性導電膜と、が積層されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6706053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1に記載の表示装置によれば、外部への電磁妨害対策が容易になる、とのことである。しかし、近年では、電磁妨害対策の要求が高度化しているのに加え、表示パネルに対して表示面の外側からESD(Electro Static Discharge)が印加された場合の対策も求められている。これらの要求水準を満たした上で良好な表示品位を得ることは困難であった。
【0005】
本明細書に記載の技術は、上記のような事情に基づいて完成されたものであって、高度なEMC(Electromagnetic Compatibility)及びESDの対策を実現し、良好な表示品位を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本明細書に記載の技術に関わる表示装置は、画像が表示される表示面を有する液晶パネルと、前記液晶パネルの前記表示面に対して外側に位置し、前記表示面と重畳して配され、透光性を有する導電膜と、グランド電位とされて前記導電膜に接続される接続部と、を備え、前記導電膜は、膜厚が1300Å以上で1800Å以下の範囲とされる。
【0007】
(2)また、上記表示装置は、上記(1)に加え、前記導電膜は、膜厚が1300Å以上で1540Å以下の範囲とされてもよい。
【0008】
(3)また、上記表示装置は、上記(2)に加え、前記導電膜は、膜厚が1500Åとされてもよい。
【0009】
(4)また、上記表示装置は、上記(1)から上記(3)のいずれかに加え、前記液晶パネルは、前記表示面を有する第1基板と、前記第1基板の前記表示面とは反対側の面と対向して配される第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に配される液晶層と、を備えてもよい。
【0010】
(5)また、上記表示装置は、上記(4)に加え、前記導電膜は、前記第1基板の前記表示面上に設けられてもよい。
【0011】
(6)また、上記表示装置は、上記(4)または上記(5)に加え、前記第2基板には、第1方向に沿って延在し、前記第1方向と交差する第2方向に間隔を空けて並ぶ複数のゲート配線と、前記複数のゲート配線に対して順次に走査信号を供給するゲート回路部と、が設けられ、前記導電膜は、前記複数のゲート配線及び前記ゲート回路部と重畳して配されてもよい。
【0012】
(7)また、上記表示装置は、上記(4)から上記(6)のいずれかに加え、前記第1基板の前記表示面と対向して配される保護基板を備え、前記導電膜は、前記保護基板のうちの前記表示面との対向面または前記表示面とは反対側の面に設けられてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本明細書に記載の技術によれば、高度なEMC及びESDの対策を実現し、良好な表示品位を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態1に係る液晶表示装置に備わる液晶パネルの平面図
図2】液晶パネル全体の断面図
図3】アレイ基板の表示領域における画素配列を示す回路図
図4】液晶パネルの表示領域の断面図
図5】比較実験1に係る比較例1のノイズの測定結果を示すグラフ
図6】比較実験1に係る比較例2のノイズの測定結果を示すグラフ
図7】比較実験1に係る実施例1のノイズの測定結果を示すグラフ
図8】比較実験1に係る実施例2のノイズの測定結果を示すグラフ
図9】比較実験2に係る参考例、比較例1~4及び実施例1~4の輝度の測定結果を示すグラフ
図10】CIEによる1931年策定の色度図
図11】比較実験3に係る参考例、比較例1~4及び実施例1~4の色度の測定結果を示すグラフ
図12】比較実験3に係る実施例2,4の色度の測定結果を拡大して示すグラフ
図13】比較実験2,3に係る比較例1~4及び実施例1~4の実験結果を示す表
図14】実施形態2に係る液晶パネル全体の断面図
図15】実施形態3に係る液晶パネル全体の断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施形態1>
実施形態1を図1から図13によって説明する。液晶表示装置(表示装置)10について例示する。なお、各図面の一部にはX軸、Y軸及びZ軸を示しており、各軸方向が各図面で示した方向となるように描かれている。
【0016】
本実施形態に係る液晶表示装置10は、図1に示すように、横長の方形状をなしていて画像を表示可能な液晶パネル11と、液晶パネル11に対して表示に利用するための光を照射する外部光源であるバックライト装置(照明装置)と、を少なくとも備える。この液晶パネル11は、その短辺方向がY軸方向と、長辺方向がX軸方向と、板厚方向がZ軸方向と、それぞれ一致している。バックライト装置は、液晶パネル11に対して裏側(背面側)に配置され、例えば白色の光(白色光)を発する光源(例えばLEDなど)や光源からの光に光学作用を付与することで面状の光に変換する光学部材などを有する。本実施形態に係る液晶表示装置10は、例えば車載用であり、具体的にはカーナビゲーションシステム、インフォテインメントシステム、ヘッドアップディスプレイなどに用いられる。
【0017】
液晶パネル11は、図1に示すように、画面の中央側部分が、画像が表示される表示領域AAとされる。液晶パネル11は、画面における表示領域AAを取り囲む額縁状の外周側部分が、画像が表示されない非表示領域NAAとされる。なお、図1において一点鎖線により囲った範囲が表示領域AAである。アレイ基板21の非表示領域NAAには、表示領域AAをX軸方向について両側から挟み込む形で一対のゲート回路部14が設けられている。ゲート回路部14は、Y軸方向に沿って延在する帯状の範囲に設けられている。ゲート回路部14は、後述するゲート配線26に走査信号を供給するためのものであり、アレイ基板21にモノリシックに設けられている。ゲート回路部14は、走査信号を所定のタイミングで出力するシフトレジスタ回路や走査信号を増幅するためのバッファ回路などを有する。
【0018】
液晶パネル11は、一対の基板20,21を貼り合わせてなる。一対の基板20,21のうち表側(正面側)がCF基板(第1基板、対向基板)20とされ、裏側(背面側)がアレイ基板(第2基板、配線基板)21とされる。アレイ基板21は、長辺寸法がCF基板20の同寸法よりも大きくされており、長辺方向についての一方の端部がCF基板20に対して重なり合うことがない。アレイ基板21のうち、CF基板20と重なり合わない部分が、露出部21Aである。露出部21Aには、ドライバ12及びフレキシブル基板13が実装されている。ドライバ12は、内部に駆動回路を有するLSIチップからなり、フレキシブル基板13によって伝送される各種信号を処理する。フレキシブル基板13は、一端側がアレイ基板21に、他端側が外部のコントロール基板(信号供給源)に、それぞれ接続されている。コントロール基板から供給される各種信号は、フレキシブル基板13を介して液晶パネル11に伝送され、ドライバ12にて処理されてから、ソース配線27等に供給される。なお、ゲート回路部14には、フレキシブル基板13から直接的に、またはドライバ12を介して間接的に、各種信号が供給される。
【0019】
液晶パネル11は、図2に示すように、画像が表示される表示面20Aを有するCF基板20と、CF基板20の表示面20Aとは反対側の面と対向して配されるアレイ基板21と、CF基板20とアレイ基板21との間に配される液晶層22と、を備える。表示面20Aは、CF基板20の両板面のうちの外側(使用者側)を向いた板面、つまり液晶層22側とは反対側の面である。CF基板20とアレイ基板21との間には、液晶層22の厚み分程度の間隔(セルギャップ)が空けられている。液晶層22は、電界印加に伴って光学特性が変化する物質である液晶分子を含む。液晶層22は、一対の基板20,21間の内部空間を取り囲むシール部15によって封止されている。シール部15は、非表示領域NAAに配されるとともに両基板20,21間の内部空間を全周にわたって取り囲むよう方形の枠状(無端環状)に形成されている。CF基板20及びアレイ基板21は、いずれも透光性に優れたガラス材料からなる。CF基板20及びアレイ基板21の内面(液晶層22側の面)には、各種の膜がフォトリソグラフィ法等により積層形成されている。なお、両基板20,21の外面側(液晶層22側とは反対側の面)には、それぞれ偏光板16,16′が貼り付けられている。つまり、CF基板20の表示面20Aの外側には、表側の偏光板16が貼り付けられている。
【0020】
アレイ基板21の表示領域AAにおける内面側には、図3に示すように、格子状をなす複数本ずつのゲート配線(走査配線)26及びソース配線(画像配線)27が配されている。ゲート配線26は、ソース配線27よりも下層側に位置する金属膜からなる。ソース配線27は、ゲート配線26よりも上層側に位置する金属膜からなる。ゲート配線26及びソース配線27の交差部位付近には、TFT(薄膜トランジスタ)23及び画素電極24が設けられている。ゲート配線26は、表示領域AAを横断する形で概ねX軸方向(第1方向)に沿って延在し、各TFT23のゲート電極23Aに接続される。ソース配線27は、表示領域AAを縦断する形で概ねY軸方向に沿って延在し、各TFT23のソース電極23Bに接続される。ゲート配線26は、複数がY軸方向(第1方向と交差する第2方向)に間隔を空けて並んで配される。複数のゲート配線26には、上記したゲート回路部14から走査信号が、図3の上段側から順に供給されるようになっている。ソース配線27は、複数がX軸方向に間隔を空けて配される。TFT23及び画素電極24は、X軸方向及びY軸方向に沿って規則的に並んでマトリクス状(行列状)に平面配置されている。画素電極24は、ソース配線27よりも上層側に位置する透明電極膜からなる。画素電極24は、TFT23のドレイン電極23Cに接続されている。TFT23は、上記したゲート電極23A、ソース電極23B及びドレイン電極23Cに加えて、チャネル部23Dを有する。チャネル部23Dは、ソース電極23Bとドレイン電極23Cとに接続される。そして、TFT23は、ゲート配線26に供給される走査信号に基づいて駆動されると、ソース配線27に供給される画像信号(データ信号)に基づいた電位に画素電極24を充電する。
【0021】
アレイ基板21の表示領域AAにおける内面側には、図4に示すように、共通電極25と、ゲート絶縁膜28と、第1層間絶縁膜29と、第2層間絶縁膜30と、が設けられている。共通電極25は、複数の画素電極24の上層側に配されている。共通電極25は、画素電極24よりも上層に位置する透明電極膜からなる。共通電極25は、全ての画素電極24と重畳するよう、アレイ基板21の面内のほぼ全域にわたってベタ状に形成されている。共通電極25のうち、複数の画素電極24に対して重畳する部分には、それぞれ複数ずつのスリットが開口形成されている。共通電極25には、共通電位(基準電位)とされる共通電位信号が供給されている。TFT23の駆動に伴って画素電極24がソース配線27に伝送される画像信号に基づく電位に充電されると、画素電極24と共通電極25との間には電位差が生じる。すると、共通電極25におけるスリットの開口縁と画素電極24との間には、アレイ基板21の板面に沿う成分に加えて、アレイ基板21の板面に対する法線方向の成分を含むフリンジ電界(斜め電界)が生じる。従って、このフリンジ電界を利用することで液晶層22に含まれる液晶分子の配向状態を制御することができ、この液晶分子の配向状態に基づいて所定の表示がなされる。つまり、本実施形態に係る液晶パネル11は、動作モードがFFS(Fringe Field Switching)モードとされている。ゲート絶縁膜28は、ゲート配線26を構成する金属膜と、ソース配線27を構成する金属膜と、の間に介在し、これらを絶縁状態に保つ。第1層間絶縁膜29は、ソース配線27を構成する金属膜と、画素電極24を構成する透明電極膜と、の間に介在し、これらを絶縁状態に保つ。第2層間絶縁膜30は、画素電極24を構成する透明電極膜と、共通電極25を構成する透明電極膜と、の間に介在し、これらを絶縁状態に保つ。
【0022】
液晶パネル11を構成するCF基板20におけるアレイ基板21と対向する内面側の表示領域AAには、図4に示すように、青色(B)、緑色(G)及び赤色(R)を呈する3色のカラーフィルタ31が設けられている。互いに異なる色を呈する複数のカラーフィルタ31は、ゲート配線26の延在方向(X軸方向)に隣り合うよう並んで配される。互いに異なる色を呈する複数のカラーフィルタ31は、ソース配線27の延在方向(概ねY軸方向)に沿って延在している。このように、互いに異なる色を呈する複数のカラーフィルタ31は、全体としてストライプ状に配列されている。これらのカラーフィルタ31は、アレイ基板21側の各画素電極24と平面に視て重畳する配置とされている。この液晶パネル11においては、X軸方向に沿って並ぶR,G,Bのカラーフィルタ31と、各カラーフィルタ31と対向する3つの画素電極24と、が3色の画素をそれぞれ構成している。そして、この液晶パネル11においては、X軸方向に沿って隣り合うR,G,Bの3色の画素によって所定の階調のカラー表示を可能な表示画素が構成されている。また、CF基板20には、互いに異なる色を呈する複数のカラーフィルタ31を仕切るよう、ブラックマトリクス32が設けられている。ブラックマトリクス32は、平面に視て格子状をなしており、複数ずつのゲート配線26及びソース配線27と重畳する。カラーフィルタ31の上層側(液晶層22側)には、平坦化のためにCF基板20のほぼ全域にわたってベタ状に配されるオーバーコート膜33が設けられている。なお、両基板20,21のうち、液晶層22に接する最内面(最上層)には、液晶層22に含まれる液晶分子を配向させるための配向膜34がそれぞれ形成されている。
【0023】
液晶パネル11には、図1図2及び図4に示すように、CF基板20の表示面20Aに対して外側に位置し、表示面20Aと重畳して配される導電膜35が設けられている。導電膜35は、CF基板20における外側の面、つまり表示面20A上に設けられている。導電膜35は、CF基板20における表示面20Aのほぼ全域にわたってベタ状に形成され、CF基板20と表側の偏光板16との間に介在している。導電膜35は、透明電極材料(例えばITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)等)からなる透明電極膜である。導電膜35は、画素電極24や共通電極25と同じ透明電極材料により構成されてもよい。導電膜35は、表側の偏光板16に対して重畳する中央側部分と、表側の偏光板16とは非重畳とされて表側の偏光板16を外周側から取り囲む外周側部分と、を含む。導電膜35の中央側部分は、表示領域AAの全域に対して重畳する。導電膜35の中央側部分は、表示領域AAに加えて非表示領域NAAに位置するゲート回路部14に対しても平面に視て重畳する。従って、導電膜35の中央側部分は、ゲート回路部14から引き出されて表示領域AAを横切る複数のゲート配線26に対して平面に視て重畳する。導電膜35の外周側部分は、表側の偏光板16により覆われることがなく、外部に露出している。
【0024】
アレイ基板21の露出部21A(非表示領域NAA)には、図1及び図2に示すように、グランド接続されることで、グランド電位に保たれるグランド電極(グランドパッド部)36が設けられている。グランド電極36は、ゲート配線26やソース配線27を構成する金属膜からなる。グランド電極36には、アレイ基板20に接続されるフレキシブル基板13等によってグランド電位が供給されている。グランド電極36は、露出部21AにおいてX軸方向について間隔を空けて2つが並んで配されている。具体的には、グランド電極36は、露出部21AにおけるX軸方向についての両端位置付近に配され、間にドライバ12を挟む配置とされる。各グランド電極は、露出部21AにおいてY軸方向についてCF基板20に隣り合う位置にそれぞれ配されている。CF基板20及びアレイ基板21の露出部21Aには、両者20,21Aに跨がる形で導電ペースト部37が設けられている。導電ペースト部37は、CF基板20の表示面20A上に配されて導電膜35に接続される部分(第1接続部)と、アレイ基板21の露出部21A上に配されてグランド電極36に接続される部分(第2接続部)と、を有する。導電ペースト部37は、銀ペーストなどの金属材料を含む導電ペーストからなり、形成時における形状自由度が高くなっている。従って、導電ペースト部37は、導電膜35とグランド電極36との間に存在するCF基板20の厚み分の段差を容易に超えることができ、接続信頼性が優れたものとなっている。導電ペースト部37は、X軸方向について間隔を空けた位置に2つが並んで配されており、各グランド電極36と同じ配置となっている。これらグランド電極36及び導電ペースト部37が、導電膜35に接続されて導電膜35にグランド電位を供給する接続部38を構成している。導電膜35は、グランド電位とされる接続部38に接続され、CF基板20の表示面20Aに対して外側に位置し、表示面20Aと重畳して配されているので、電磁波を遮蔽することができる。
【0025】
ところで、近年では、EMC(Electromagnetic Compatibility)対策の要求が高度化しているのに加え、液晶パネル11に対して表示面20Aの外側からESD(Electro Static Discharge)が印加された場合の対策も求められている。これらの要求水準を満たした上で良好な表示品位を得ることを目的として、本実施形態に係る導電膜35は、膜厚が1300Å以上で1800Å以下の範囲とされる。仮に、導電膜35の膜厚が1300Åに満たないと、電磁波を十分に遮蔽することができず、近年求められる高度なEMC及びESDの対策を実現できないおそれがある。一方、仮に、導電膜35の膜厚が1800Åを超えると、導電膜35に起因する透過光量の減少が著しくなり、表示品位に悪影響が及ぶおそれがある。その点、導電膜35の膜厚が1300Å以上で1800Å以下の範囲とされていれば、電磁波を十分に遮蔽することができるとともに、導電膜35の透過光量を十分に確保することができる。例えば、CF基板20に対して表示面20Aの外側からESDが印加された場合でも、導電膜35による遮蔽効果が十分に発揮されるので、ESDに起因して両基板20,21の内部に電荷がチャージされ難くなる。これにより、液晶層22に含まれる液晶分子に配向乱れが生じ難くなり、良好な表示品位が得られる。それに加え、表示面20A上に設けられた導電膜35により表示面20Aに帯電が生じ難くなる。これにより、液晶層22に含まれる液晶分子に配向乱れがより生じ難くなり、優れた表示品位が得られる。さらには、複数のゲート配線26及びゲート回路部14からは、走査信号の供給に伴って所定の周期の電磁波が発生するものの、その電磁波を、導電膜35によって良好に遮蔽することができる。以上により、近年求められる高度なEMC及びESDの対策が実現され、良好な表示品位が得られる。特に、本実施形態のように、車載用の液晶表示装置10においては、より高度なEMC及びESDの対策が求められる傾向にあることから、有用である。
【0026】
導電膜35は、膜厚が1300Å以上で1540Å以下の範囲とされる。仮に、導電膜35の膜厚が1540Åを超えると、導電膜35が非設置の場合との比較において、導電膜35の透過光に係る色度の変化が著しくなり、表示面20Aに表示される画像において色度シフトが生じるおそれがある。その点、導電膜35の膜厚が1540Å以下とされているので、導電膜35が非設置の場合との比較において、導電膜35の透過光に係る色度の変化が抑制される。これにより、表示面20Aに表示される画像において色度シフトが生じ難くなり、より良好な表示品位が得られる。さらには、導電膜35は、膜厚が1500Åとされる。このようにすれば、導電膜35による電磁波の遮蔽効果が十分に得られ、導電膜35の透過光量を十分に確保でき、導電膜35に起因する色度の変化を十分に抑制することができ、バランスに優れる。
【0027】
導電膜35の膜厚と、電磁波の遮蔽性能と、の関係についての知見を得るため、下記の比較実験1を行った。比較実験1では、FFSモードの液晶パネル11の表示面20A上に設けられた導電膜35の膜厚を異ならせた比較例1,2及び実施例1,2を用いた。比較例1,2及び実施例1,2に係る液晶パネル11は、導電膜35の膜厚を除いては、本段落以前に説明した液晶パネル11と同じ構成である。比較例1は、導電膜35の膜厚が150Åとされる。比較例2は、導電膜35の膜厚が1000Åとされる。実施例1は、導電膜35の膜厚が1300Åとされる。実施例2は、導電膜35の膜厚が1500Åとされる。比較実験1では、これら比較例1,2及び実施例1,2に係る液晶パネル11の表示面20Aに画像を表示させた状態で、液晶パネル11から発生する電磁波、つまりノイズをRE(Radiated Emission)測定した。RE測定の規格としては、RE310を用いた。
【0028】
比較実験1の実験結果は、図5から図8に示される通りである。図5は、比較例1のノイズの測定結果を示すグラフである。図6は、比較例2のノイズの測定結果を示すグラフである。図7は、実施例1のノイズの測定結果を示すグラフである。図8は、実施例2のノイズの測定結果を示すグラフである。図5から図8の横軸は、周波数であり、その単位は「MHz」である。図5から図8の横軸には、少なくとも日本でのラジオのAM放送(中波帯)の周波数帯域(526.5kHz~1606.5kHz)が含まれる。図5から図8の縦軸は、電界強度(ノイズレベル)であり、その単位は「dBμV/m」である。図5から図8には、測定されたAV(Average:平均値)及びQP(Quase Peak:準尖頭値)の各波形がそれぞれ記されている。AVは、検波したノイズの平均値である。QPは、検波したノイズのピーク値と平均値との中間値である。AVの波形は、QPの波形に比べて変動が大きくて電界強度が概して低い。AV及びQPの各波形には、所定の周期でノイズ(電界強度が局所的に高くなる箇所)が発生する。比較実験1では、ノイズが発生する周期は、44.8kHz程度である。このノイズが発生する周期は、諸条件(液晶パネル11の駆動周波数、解像度等)に応じて変動し得る。また、図5から図8には、基準値である12dBと、許容限度値である30dBと、が太線にてそれぞれ記されている。
【0029】
比較実験1の実験結果について説明する。図5によれば、比較例1のAVのノイズの電界強度は、AM放送の周波数帯域の全域にわたって基準値(12dB)を超えている。比較例1のQPのノイズの電界強度は、0.55MHz付近で許容限度値(30dB)を大きく超え、1.6MHz付近で許容限度値を度々超えている。また、比較例1のQPのノイズの電界強度は、1MHzに満たない周波数でも複数回にわたって許容限度値に達している。このため、比較例1では、十分な電磁波の遮蔽性能が得られない、と言える。なお、比較例1に係る導電膜35の膜厚は、150Åであり、一般的なFFSモードの液晶パネルにおいて、表示面に蓄積される電荷を逃がすために表示面上に設けられる導電膜の膜厚と同じ程度である。図6によれば、比較例2のAVのノイズの電界強度は、比較例1と同様に、AM放送の周波数帯域の全域にわたって基準値を超えている。比較例2のQPのノイズの電界強度は、許容限度値を大きく超えることはないものの、0.55MHz付近で許容限度値に達し、1.6MHz付近でも許容限度値に達している。このため、比較例2は、比較例1よりは改善されているものの、十分な電磁波の遮蔽性能が得られているとは言えない。
【0030】
これに対し、図7によれば、実施例1のAVのノイズの電界強度は、0.7MHz以下の周波数帯域では基準値(12dB)に達することがなく、0.7MHzを超える周波数帯域では基準値に達したり超えたりする。図8によれば、実施例2のAVのノイズの電界強度は、1.3MHz以下の周波数帯域では基準値に達することがなく、1.3MHzを超える周波数帯域では基準値に達したり超えたりする。そして、図7及び図8によれば、実施例1,2のQPのノイズの電界強度は、いずれもAM放送の周波数帯域の全域にわたって許容限度値(30dB)に達することがない。従って、実施例1,2は、いずれも十分な電磁波の遮蔽性能が得られると言える。特に、実施例2は、実施例1に比べると、より広い周波数帯域においてAVのノイズの電界強度が基準値に達することがないので、より良好な電磁波の遮蔽性能が得られると言える。このような比較実験1の実験結果に基づくと、十分な電磁波の遮蔽性能を得るには、導電膜35の膜厚が1300Å以上とされるのが好ましいことが分かった。
【0031】
次に、導電膜35の膜厚と、透光性能と、の関係についての知見を得るため、下記の比較実験2を行った。比較実験2では、FFSモードの液晶パネル11の表示面20A上に設けられた導電膜35の膜厚を異ならせた比較例1~4及び実施例1~4を用いた。このうち、比較例1,2及び実施例1,2は、比較実験1にて説明した通りである。比較例3,4及び実施例3,4に係る液晶パネル11は、導電膜35の膜厚を除いては、比較例1,2及び実施例1,2に係る液晶パネル11と同じ構成である。比較例3は、導電膜35の膜厚が1100Åとされる。比較例4は、導電膜35の膜厚が1200Åとされる。実施例3は、導電膜35の膜厚が1400Åとされる。実施例4は、導電膜35の膜厚が1600Åとされる。また、比較実験2では、FFSモードの液晶パネル11の表示面20A上に導電膜35を非形成とした参考例を用いた。参考例は、導電膜35の膜厚が0Åである。比較実験2では、これら参考例、比較例1~4及び実施例1~4に係る液晶パネル11の表示領域AAに白表示(最大階調表示)させた状態で、表示面20Aの出射光の輝度を測定した。輝度の測定に際しては、例えば分光測色計等が用いられる。
【0032】
比較実験2の実験結果は、図9に示される通りである。図9は、参考例、比較例1~4及び実施例1~4の輝度の測定結果を示すグラフである。図9の横軸は、導電膜35の膜厚であり、その単位は「Å」である。図9の縦軸は、参考例の輝度を基準(100%)とした第1相対輝度であり、その単位は「%」である。図9には、参考例、比較例1~4及び実施例1~4の輝度の測定結果に基づく近似曲線が破線により記されている。なお、比較実験2の実験結果(第1相対輝度と、次述する第2相対輝度と、を含む)は、後述する比較実験3の実験結果と共に図13に示される表にも記されている。
【0033】
比較実験2の実験結果について説明する。まず、測定結果である第1相対輝度の数値を列挙すると、比較例1が99.3%であり、比較例2が91.5%であり、比較例3が93.4%であり、比較例4が95.2%であり、実施例1が96.4%であり、実施例2が97.8%であり、実施例3が97.6%であり、実施例4が98.0%である。図9によれば、第1相対輝度の数値は、導電膜35が非形成とされる参考例が第1ピーク(100%、最大値)であり、近似曲線に示されるように、周期的に変化する。具体的には、導電膜35の膜厚が0Åから大きくなると、第1相対輝度の数値が次第に減少し、700Å付近にてボトム(最小値)となる。導電膜35の膜厚が700Åから大きくなると、第1相対輝度の数値が増加に転じ、1600Å付近にて第1ピークよりは低い第2ピーク(98.0%程度)となる。導電膜35の膜厚が1600Åから大きくなると、第1相対輝度の数値が再び減少に転じる。また、比較例1の輝度を基準(100%)とした第2相対輝度の数値を列挙すると、比較例1が100%であり、比較例2が92.1%であり、比較例3が94.0%であり、比較例4が95.9%であり、実施例1が97.1%であり、実施例2が98.5%であり、実施例3が98.3%であり、実施例4が98.7%である。
【0034】
以上のような比較実験2の実験結果を、比較実験1の実験結果と併せて考えると、十分な電磁波の遮蔽性能を担保しつつ、良好な透光性能を得るには、少なくとも導電膜35の膜厚が1300Å以上であることが必要とされる。しかしながら、比較実験2の実験結果によれば、導電膜35の膜厚が1600Åを超えると、再び第1相対輝度が減少する傾向にあることから、導電膜35の膜厚の上限値を定める必要がある。導電膜35の膜厚が1300Åの場合、つまり実施例1の測定結果である第1相対輝度の数値:96.4%(第2相対輝度の数値:97.1%)を基準値とすると、基準値と一致する第1相対輝度が得られる導電膜35の膜厚の上限値は、1830Å付近となる。まとめると、導電膜35の膜厚が1300Å以上の範囲において、図9にて一点鎖線で図示される基準値(96.4%)と、図9にて破線で図示される測定結果の近似曲線と、の2つの交点が、基準値と一致する第1相対輝度が得られる導電膜35の膜厚の下限値(1300Å)及び上限値(1830Å)となる。このような比較実験2の実験結果に基づくと、十分な電磁波の遮蔽性能を担保し、良好な透光性能(高い輝度)を得るには、導電膜35の膜厚が、図9で矢線にて示される1300Å以上で1830Å以下の範囲とされるのが好ましいことが分かった。
【0035】
次に、導電膜35の膜厚と、色度シフトと、の関係についての知見を得るため、下記の比較実験3を行った。比較実験3では、FFSモードの液晶パネル11の表示面20A上に設けられた導電膜35の膜厚を異ならせた比較例1~4及び実施例1~4と、FFSモードの液晶パネル11の表示面20A上に導電膜35を非形成とした参考例と、を用いた。参考例、比較例1~4及び実施例1~4に係る液晶パネル11は、比較実験1,2にて説明した通りである。比較実験3では、これら参考例、比較例1~4及び実施例1~4に係る液晶パネル11の表示領域AAに白表示(最大階調表示)させた状態で、表示面20Aの出射光の色度を測定した。なお、参考例、比較例1~4及び実施例1~4に係る液晶パネル11には、共通の検査用バックライト装置を用いて表示のための光を照射した。色度の測定に際しては、例えば分光測色計等が用いられる。測定された色度は、CIE(Commission Internationale de l'Eclairage:国際照明委員会)1931色度図の色度座標値であるx値及びy値により表される。参考のため、CIEによる1931年策定の色度図を図10に示す。図10の横軸のx軸及び縦軸のy軸がそれぞれ色度座標値であるx値及びy値を示す。
【0036】
比較実験3の実験結果は、図11から図13に示される通りである。図11は、参考例、比較例1~4及び実施例1~4の色度の測定結果を示すグラフである。図12は、実施例2,4の色度の測定結果を拡大して示すグラフである。図11及び図12の横軸のx軸及び縦軸のy軸がそれぞれ色度座標値であるx値及びy値を示す。図12には、導電膜35の膜厚が増すのに伴って色度がシフトする向きが、矢線にて示されている。図12及び図13には、色度の許容範囲が網掛け状にして示されている。図13は、比較実験3の実験結果と、比較実験2の実験結果と、を併せて示す表である。図13には、比較例1~4及び実施例1~4の色度(x値及びy値)と、第1相対輝度と、第2相対輝度と、比較例1を基準とした比較例1~4及び実施例1~4の色度のシフト量(Δx値及びΔy値)と、が記されている。図13に示されるΔx値は、比較例1~4及び実施例1~4のx値から比較例1のx値を差し引いた差分である。図13に示されるΔy値は、比較例1~4及び実施例1~4のy値から比較例1のy値を差し引いた差分である。なお、第1相対輝度及び第2相対輝度は、既述した比較実験2の実験結果である。
【0037】
比較実験3の実験結果について説明する。図11によれば、導電膜35の膜厚を増すと、比較例1~4及び実施例1~4の色度は、参考例を起点として渦を巻くようにしてシフトするのが分かる。比較例1~4及び実施例1~4の色度の中には、シフト量が大きすぎるものが含まれている。比較実験3では、この色度のシフト量に係る基準として、比較例1を採用している。比較例1は、既述した通り、表示面に蓄積される電荷を逃がすために表示面上に設けられる導電膜を備える一般的なFFSモードの液晶パネルの同等品であると言える。このことから、導電膜35の膜厚を150Åよりも大きくしたとき、比較例1に近似した色度を維持することができれば、色度に関して、一般的なFFSモードの液晶パネルと遜色ない良好な表示品位を確保できることになる。比較実験3では、比較例1を基準とした色度のシフト量の許容範囲を、x値が「±0.005」、y値が「±0.005」、としている。従って、図13に示されたΔx値が「±0.005」の範囲となり、Δy値が「±0.005」の範囲となれば、色度のシフト量が許容範囲に収まっていると言える。具体的には、この許容範囲には、実施例1~3が収まっており、比較例1~4及び実施例4が収まっていない。従って、少なくとも実施例1~3は、色度に関して、一般的なFFSモードの液晶パネルと遜色ない表示品位が得られる。実施例1は、Δx値が「-0.005」であり、色度のシフト量が許容範囲の下限値となっていることから、実施例1よりも導電膜35の膜厚が小さくなると、色度のシフト量が許容範囲外になる可能性が高い。従って、実施例1の導電膜35の膜厚である1300Åが、色度のシフト量が許容範囲に収まる導電膜35の膜厚の下限値である、と言える。
【0038】
色度のシフト量が許容範囲に収まる導電膜35の膜厚の上限値について図12を用いて詳細に検討する。図12には、実施例2,4の実験結果に加え、実施例2,4の各色度を結ぶ補助線が記されている。この補助線は、実施例2,4の各色度の間に存在することが想定される色度を補完する近似直線である。また、図12には、上記した許容範囲のうちのy値の上限値である0.335(0.330+0.005)を示す補助線が記されている。上記した近似直線と、許容範囲のうちのy値の上限値に係る補助線と、の交点に係る色度は(0.3142,0.335)である。この交点に係る色度のx値に基づいて、色度のシフト量が許容範囲に収まる導電膜35の膜厚の上限値を算出することができる。算出方法を説明すると、まず、実施例2,4の導電膜35の膜厚の差が、「100Å」であるのに対し、実施例2の色度のx値(0.313)と、実施例4の色度のx値(0.316)と、の差分が、「0.003」である。これに対し、実施例2の色度のx値(0.313)と、上記した交点に係る色度のx値(0.3142)と、の差分が、「0.0012」である。従って、実施例2の導電膜35の膜厚と、交点に係る導電膜35の膜厚と、の差を「ΔT」とすると、数式「ΔT=(0.0012・100)/0.003」によりΔTが求められる。ΔTは、「40Å」になる。従って、上記した交点に係る導電膜35の膜厚は、「1540Å」になり、この数値が、色度のシフト量が許容範囲に収まる導電膜35の膜厚の上限値である、と言える。以上により、導電膜35の膜厚は、1300Å以上で1540Å以下の範囲であれば、色度に関して、一般的なFFSモードの液晶パネルと遜色ない良好な表示品位が得られる。
【0039】
以上説明したように本実施形態の液晶表示装置(表示装置)10は、画像が表示される表示面20Aを有する液晶パネル(表示パネル)11と、液晶パネル11の表示面20Aに対して外側に位置し、表示面20Aと重畳して配され、透光性を有する導電膜35と、グランド電位とされて導電膜35に接続される接続部38と、を備え、導電膜35は、膜厚が1300Å以上で1800Å以下の範囲とされる。
【0040】
液晶パネル11の表示面20Aに表示された画像は、透光性を有する導電膜35を通して表示面20Aの外側から使用者により視認される。導電膜35は、グランド電位とされる接続部38に接続され、液晶パネル11の表示面20Aに対して外側に位置し、表示面20Aと重畳して配されているので、電磁波を遮蔽することができる。ここで、仮に、導電膜35の膜厚が1300Åに満たないと、電磁波を十分に遮蔽することができず、近年求められる高度なEMC(Electromagnetic Compatibility)及びESD(Electro Static Discharge)の対策を実現できないおそれがある。一方、仮に、導電膜35の膜厚が1800Åを超えると、導電膜35に起因する透過光量の減少が著しくなり、表示品位に悪影響が及ぶおそれがある。その点、導電膜35の膜厚が1300Å以上で1800Å以下の範囲とされていれば、電磁波を十分に遮蔽することができるとともに、導電膜35の透過光量を十分に確保することができる。これにより、近年求められる高度なEMC及びESDの対策が実現され、良好な表示品位が得られる。
【0041】
また、導電膜35は、膜厚が1300Å以上で1540Å以下の範囲とされる。仮に、導電膜35の膜厚が1540Åを超えると、導電膜35が非設置の場合との比較において、導電膜35の透過光に係る色度の変化が著しくなり、表示面20Aに表示される画像において色度シフトが生じるおそれがある。その点、導電膜35の膜厚が1540Å以下とされているので、導電膜35が非設置の場合との比較において、導電膜35の透過光に係る色度の変化が抑制される。これにより、表示面20Aに表示される画像に色シフトが生じ難くなり、より良好な表示品位が得られる。
【0042】
また、導電膜35は、膜厚が1500Åとされる。このようにすれば、導電膜35による電磁波の遮蔽効果が十分に得られ、導電膜35の透過光量を十分に確保でき、導電膜35に起因する色度の変化を十分に抑制することができ、バランスに優れる。
【0043】
また、液晶パネル11は、表示面20Aを有するCF基板(第1基板)20と、CF基板20の表示面20Aとは反対側の面と対向して配されるアレイ基板(第2基板)21と、CF基板20とアレイ基板21との間に配される液晶層22と、を備える。このようにすれば、液晶パネルに対して表示面20Aの外側からESDが印加された場合でも、導電膜35による遮蔽効果が十分に発揮されるので、ESDに起因して両基板20,21の内部に電荷がチャージされ難くなる。これにより、液晶層22に含まれる液晶分子に配向乱れが生じ難くなり、良好な表示品位が得られる。
【0044】
また、導電膜35は、CF基板20の表示面20A上に設けられる。このようにすれば、表示面20A上に設けられた導電膜35により表示面20Aに帯電が生じ難くなる。これにより、液晶層22に含まれる液晶分子に配向乱れがより生じ難くなり、優れた表示品位が得られる。
【0045】
また、アレイ基板21には、第1方向に沿って延在し、第1方向と交差する第2方向に間隔を空けて並ぶ複数のゲート配線26と、複数のゲート配線26に対して順次に走査信号を供給するゲート回路部14と、が設けられ、導電膜35は、複数のゲート配線26及びゲート回路部14と重畳して配される。複数のゲート配線26及びゲート回路部14からは、走査信号の供給に伴って所定の周期の電磁波が発生する。これに対し、導電膜35は、複数のゲート配線26及びゲート回路部14と重畳して配されているので、複数のゲート配線26及びゲート回路部14から発生する電磁波を導電膜35によって良好に遮蔽することができる。
【0046】
<実施形態2>
実施形態2を図14によって説明する。この実施形態2では、保護基板39を追加し、液晶パネル111の表示モードを変更した場合を示す。なお、上記した実施形態1と同様の構造、作用及び効果について重複する説明は省略する。
【0047】
本実施形態に係る液晶表示装置110は、図14に示すように、CF基板120の表示面120Aと対向して配される保護基板39を備える。保護基板39は、例えば強化ガラス製とされる。保護基板39は、CF基板120に対して表側、つまり表示面120Aの外側に配されている。保護基板39は、CF基板120との間に表側の偏光板116を挟み込む配置とされる。保護基板39は、接着層40を介してCF基板120に対して貼り付けられている。保護基板39は、平面に視た大きさがアレイ基板121と同等かそれ以上とされており、液晶パネル111の全体を表側から覆っている。一方、液晶パネル111は、表示モードがVA(Vertical Alignment)モードとされる。従って、液晶パネル111を構成するアレイ基板121側に画素電極が、CF基板120側に対向電極が、それぞれ設けられている。対向電極は、全ての画素電極24と重畳するよう、CF基板120の面内のほぼ全域にわたってベタ状に形成されている。対向電極には、基準電位とされる基準電位信号が供給されている。従って、TFTの駆動に伴って充電された画素電極と、液晶層を挟んで対向する対向電極と、の間には、電位差が生じ、その電位差によって液晶分子の配向を制御することが可能とされる。
【0048】
このようなVAモードの液晶パネル111においては、CF基板120の内面に対向電極が設けられているので、実施形態1にて説明したFFSモードの液晶パネル11に比べると、表示面120Aに帯電が生じ難い傾向にある。一方、近年求められる高度なEMC及びESDの対策を実現するため、本実施形態に係る保護基板39には、導電膜135が設けられている。導電膜135は、保護基板39の表側(表示面120Aとは反対側)の面に設けられている。導電膜135は、保護基板39の表側の面のほぼ全域にわたってベタ状に形成されている。従って、導電膜135は、表示面120Aに対して外側に位置し、表示面120Aと重畳して配されている、と言える。導電膜135の膜厚は、実施形態1と同様に、1300Å以上で1800Å以下の範囲とされる。
【0049】
保護基板39の表側の面上には、導電テープ(接続部)41が取り付けられている。導電テープ41は、グランド接続されることで、グランド電位に保たれている。導電テープ41は、保護基板39の表側の面上にて導電膜135に接続されている。導電膜135には、導電テープ41によってグランド電位が供給されている。導電膜135は、グランド電位とされる導電テープ41に接続され、CF基板120の表示面120Aに対して外側に位置し、表示面120Aと重畳して配されているので、電磁波を良好に遮蔽することができる。これにより、近年求められる高度なEMC及びESDの対策が実現され、良好な表示品位が得られる。
【0050】
以上説明したように本実施形態によれば、CF基板120の表示面120Aと対向して配される保護基板39を備え、導電膜135は、保護基板39のうちの表示面120Aとは反対側の面に設けられる。このようにすれば、CF基板120の表示面120Aと対向して配される保護基板39によってCF基板120の表示面120Aを保護することができる。保護基板39のうちの表示面120Aとは反対側の面に設けられた導電膜135によってCF基板120に対して表示面120Aの外側から印加されるESDに起因する電荷のチャージを抑制することができる。これにより、液晶層に含まれる液晶分子に配向乱れが生じ難くなり、良好な表示品位が得られる。
【0051】
<実施形態3>
実施形態3を図15によって説明する。この実施形態3では、上記した実施形態2から導電膜235の配置を変更した場合を示す。なお、上記した実施形態2と同様の構造、作用及び効果について重複する説明は省略する。
【0052】
本実施形態に係る導電膜235は、図15に示すように、保護基板239の裏側の面、つまりCF基板220の表示面220Aとの対向面に設けられている。保護基板239の裏側の面上には、グランド接続される導電テープ241が取り付けられている。導電テープ241は、保護基板239の裏側の面上にて導電膜235に接続されている。導電膜235には、導電テープ241によってグランド電位が供給されている。本実施形態によれば、実施形態2と同様に、グランド電位に保たれる導電膜235によって電磁波を良好に遮蔽することができるので、近年求められる高度なEMC及びESDの対策が実現され、良好な表示品位が得られる。
【0053】
以上説明したように本実施形態によれば、CF基板220の表示面220Aと対向して配される保護基板239を備え、導電膜235は、保護基板239のうちの表示面220Aとの対向面に設けられる。このようにすれば、CF基板220の表示面220Aと対向して配される保護基板239によってCF基板220の表示面220Aを保護することができる。保護基板239のうちの表示面220Aとの対向面に設けられた導電膜235によってCF基板220に対して表示面220Aの外側から印加されるESDに起因する電荷のチャージを抑制することができる。これにより、液晶層に含まれる液晶分子に配向乱れが生じ難くなり、良好な表示品位が得られる。
【0054】
<他の実施形態>
本明細書が開示する技術は、上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
【0055】
(1)導電膜35,135,235にグランド電位を供給する接続部38及び導電テープ41,241の具体的な構成は、適宜に変更可能である。
【0056】
(2)ゲート回路部14は、表示領域AAをX軸方向の両側から挟み込む構成に限らず、表示領域AAに対してX軸方向の一方側にのみ配されていてもよい。また、非表示領域NAAのゲート回路部14を省略し、ゲート回路部14を構成する回路を表示領域AA内に設けることも可能である。
【0057】
(3)実施形態1に記載の液晶パネル11において、共通電極25が画素電極24よりも下層側に配されてもよい。
【0058】
(4)実施形態1に記載の構成において、液晶パネル11は、表示モードがIPSモードやVAモードなどでもよい。
【0059】
(5)実施形態2,3に記載の構成において、金属製でグランド電位とされるケーシングが備えられるとともに、そのケーシングに導電テープ41,241が接続されてもよい。
【0060】
(6)実施形態2,3に記載の保護基板39,239は、ガラス以外の材料(合成樹脂材料等)でもよい。
【0061】
(7)実施形態2,3に記載の構成において、液晶パネル111は、表示モードがFFSモードやIPSモードなどでもよい。
【0062】
(8)液晶パネル11,111は、CF基板20,120,220が裏側に位置し、アレイ基板21,121が表側に位置する構成でもよい。その場合、アレイ基板21,121の表側の面が、画像が表示される表示面となる。
【0063】
(9)液晶パネル11,111の平面形状は、横長の方形状だけでなく、縦長の方形状・正方形・円形・釣鐘型・アーチタイプ等の異形(非方形)でもよい。また、液晶パネル11,111におけるX軸方向の寸法とY軸方向の寸法との比率は、図示以外にも適宜に変更可能である。なお、液晶パネル11,111の平面形状に応じてシール部15の平面に視た形状も適宜に変更すればよい。
【0064】
(10)液晶パネル11,111は、透過型以外にも反射型や半透過型であってもよい。
【0065】
(11)液晶表示装置10,110は、車載以外の用途であってもよい。
【0066】
(12)ドライバ12及びフレキシブル基板13の設置数は、適宜に変更可能である。
【0067】
(13)カラーフィルタ31の色数は、4色以上でもよい。追加するカラーフィルタ31は、黄色の波長領域に含まれる黄色光を選択的に透過する黄色カラーフィルタや全波長領域の光を透過する白色カラーフィルタなどであってもよい。
【0068】
(14)オーバーコート膜33を省略することも可能である。
【0069】
(15)グランド電極36の設置数や配置は、適宜に変更可能である。グランド電極36の設置数を増やすほど、高い遮蔽効果を得ることができる。グランド電極36の設置数を3つ以上とする場合、配列間隔が等しくなるようにするのが、高い遮蔽効果を得る上で好ましい。
【符号の説明】
【0070】
10,110…液晶表示装置(表示装置)、11,111…液晶パネル、14…ゲート回路部、20,120,220…CF基板(第1基板)、20A,120A,220A…表示面、21,121…アレイ基板(第2基板)、22…液晶層、26…ゲート配線、35,135,235…導電膜、38…接続部、39,239…保護基板、41,241…導電テープ(接続部)
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