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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167981
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】湯口
(51)【国際特許分類】
   B29C 39/26 20060101AFI20231116BHJP
【FI】
B29C39/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079558
(22)【出願日】2022-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】野津 崇司
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202AR07
4F202CA01
4F202CB01
4F202CK02
(57)【要約】
【課題】繰り返し使用可能な湯口を実現する。
【解決手段】湯口(1)は、対象物が有する空洞と連通する第1流路(11a)を内部に有する円筒部(11)と、第1流路と連通する漏斗部(12)とを備え、第1流路は、第1流路内で硬化した樹脂を除去することを可能とする抜き勾配の下限値よりも大きい第1勾配を有し、漏斗部は、第1勾配よりも大きい第2勾配を有し、円筒部および漏斗部は金属で形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に樹脂が注入される空洞を有する対象物に着脱可能に配されるとともに、前記空洞と連通する第1流路を内部に有する円筒部と、
前記円筒部の前記対象物とは逆側に配されるとともに、前記第1流路と連通する漏斗部とを備え、
前記第1流路は、当該第1流路内で硬化した前記樹脂を、前記円筒部から前記漏斗部へ向かう方向に除去することを可能とする抜き勾配の下限値よりも大きい第1勾配を有し、
前記漏斗部は、前記方向に対し、前記第1勾配よりも大きい第2勾配を有し、
前記円筒部および前記漏斗部は金属で形成されている湯口。
【請求項2】
前記円筒部と前記対象物との間に、前記円筒部および前記対象物のそれぞれに対して着脱可能に配されるとともに、前記第1流路および前記空洞の両方と連通する第2流路を内部に有する中間部材をさらに備え、
前記第2流路は、当該第2流路内で硬化した樹脂を、前記対象物に装着される側へ除去することを可能とする抜き勾配の下限値よりも大きい第3勾配を有する請求項1に記載の湯口。
【請求項3】
前記対象物に対してスナップ錠により装着される請求項1に記載の湯口。
【請求項4】
前記円筒部の外周部に、当該円筒部を補強するリブが設けられている請求項1から3のいずれか1項に記載の湯口。
【請求項5】
前記円筒部および前記漏斗部は、板金で形成されている請求項1に記載の湯口。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物に湯を注入する湯口に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、鋳型における湯の注ぎ口として使用可能な鋳型湯口用漏斗が開示されている。当該鋳型湯口用漏斗においては、上方に開口する湯受け部と、下方に開口する濾過材装着部との間を湯道部で上下に連通状となるようにした漏斗本体が、鋳型砂によって形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-61621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている漏斗は、鋳型砂によって形成され、1回使用する毎に壊すことを前提としている。そのため、繰り返し使用することについては考慮されていない。
【0005】
本発明の一態様は、繰り返し使用可能な湯口を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る湯口は、内部に樹脂が注入される空洞を有する対象物に着脱可能に配されるとともに、前記空洞と連通する第1流路を内部に有する円筒部と、前記円筒部の前記対象物とは逆側に配されるとともに、前記第1流路と連通する漏斗部とを備え、前記第1流路は、当該第1流路内で硬化した前記樹脂を、前記円筒部から前記漏斗部へ向かう方向に除去することを可能とする抜き勾配の下限値よりも大きい第1勾配を有し、前記漏斗部は、前記方向に対し、前記第1勾配よりも大きい第2勾配を有し、前記円筒部および前記漏斗部は金属で形成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、繰り返し使用可能な湯口を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る湯口の使用例を示す図である。
図2】対象物に樹脂を注入するための湯口の一例の斜視図である。
図3図2に示した湯口の断面図である。
図4】湯口の内部に残った樹脂を取り出した状態を示す斜視図である。
図5】対象物からの揚がり湯を確認するための湯口の一例の斜視図である。
図6図5に示した湯口の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。以下の説明において、数値範囲を示す「A~B」は、特筆しない限りは「A以上かつB以下」を示すものとする。
【0010】
(湯口1,2の使用例)
図1は、本発明の実施形態に係る湯口1,2の使用例を示す図である。図1に示すように、湯口1,2は、対象物100に装着されて使用される。湯口1は、対象物100の内部の空洞に樹脂を注入するための湯口である。湯口2は、対象物100の内部の空洞からの揚がり湯を目視で確認するための湯口である。
【0011】
対象物100は、樹脂が注入される空洞(不図示)を内部に有する。対象物100は、例えば空洞に注入された樹脂とともに製品を構成する、製品の一部である。ただし、対象物100は、製品には含まれない、空洞に注入された樹脂を製品の形状に成形するための型であってもよい。対象物100は、湯口1,2が装着されている位置に、空洞と連通する開口を有する。
【0012】
(湯口1の構成)
図2は、湯口1の一例の斜視図である。図3は、図2に示した湯口1の断面図である。図1図2および図3に示すように、湯口1は、円筒部11、漏斗部12、台座13、およびブロック15(中間部材)を備える。このうち、ブロック15については、図2では省略している。
【0013】
円筒部11および漏斗部12は、金属で構成されてよい。金属の例として、ステンレスまたは鉄が挙げられる。また、台座13およびブロック15の材質は、円筒部11および漏斗部12の材質と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0014】
円筒部11および漏斗部12は、板金で形成されていることが好ましい。この場合、例えば切削加工などの方法で円筒部11および漏斗部12を形成する場合と比較して、湯口1を安価に製造できる。特に、円筒部11および漏斗部12は、互いに一体に形成されていることが好ましい。
【0015】
円筒部11は、対象物100に注入される樹脂の流れにおいて、対象物100の上流側に位置する。円筒部11は、対象物100の内部の空洞と連通する第1流路11aを内部に有する。円筒部11の外周部に、円筒部11を補強するリブ11bが設けられていてよい。
【0016】
漏斗部12は、対象物100に注入される樹脂の流れにおいて、円筒部11の上流側に位置する。対象物100に樹脂を注入する作業者は、漏斗部12から樹脂を注入する。
【0017】
図3に示すように、湯口1において、第1流路11aは、第1勾配θ11を有する。第1勾配θ11は、第1流路11aの内部で硬化した樹脂を円筒部11から漏斗部12へ向かう方向に除去することを可能とする抜き勾配の下限値よりも大きい。また、図3に示すように、湯口1において、漏斗部12は、第2勾配θ12を有する。第2勾配θ12は、第1勾配θ11よりもさらに大きい。第1勾配θ11は、例えば1°~8°であってよい。また、第2勾配θ12は、例えば40°~60°であってよい。
【0018】
図4は、湯口1の内部に残った樹脂50を取り出した状態を示す斜視図である。上述したとおり、湯口1において、円筒部11および漏斗部12は、いずれも抜き勾配の下限値よりも大きい勾配を有する。このため、湯口1を対象物100から取り外した後、湯口1の内部に残ったまま硬化した樹脂50を、湯口1を破壊することなく、円筒部11から漏斗部12へ向かう方向に取り出すことが可能となる。
【0019】
図4においては、樹脂50は、湯口1のうち、円筒部11にのみ残った湯が硬化した形状を有している。しかし、樹脂50が円筒部11だけでなく漏斗部12にまで残った場合であっても、樹脂50を湯の通流方向とは逆方向に取り出すことが可能である。
【0020】
湯口1において、湯の通流方向に垂直な面における円筒部11および漏斗部12の断面の形状は、いずれも円形であってよい。円筒部11は第1勾配θ11を有するため、対象物100側の端部における円筒部11の断面の直径が、漏斗部12側の端部における円筒部11の断面の直径よりも小さい。本明細書ではこのような形状、すなわち断面の直径が一定でない形状についても円筒と称している。
【0021】
円筒部11の内面の、対象物100側の端部における直径は、例えば30mm~60mmであってよい。円筒部11の内面の、漏斗部12側の端部における直径、および漏斗部12の内面の、円筒部11側の端部における直径は、例えば50mm~80mmであってよい。漏斗部12の内面の、円筒部11とは逆側の端部における直径は、例えば200mm~300mmであってよい。
【0022】
台座13は、円筒部11をブロック15に装着するための台である。台座13は、円筒部11の、漏斗部12とは逆側の端部の周囲に位置する。台座13のブロック15側の面には、円筒部11をブロック15に液密に接続するためのガスケット(不図示)、またはガスケットを嵌入するための溝(不図示)が設けられている。後者の場合、円筒部11をブロック15に接続する前に、予めガスケットを溝に嵌入すればよい。
【0023】
台座13の側面には、スナップ錠13aが設けられている。台座13は、スナップ錠13aにより、ブロック15に装着される。スナップ錠13aは、円筒部11を挟んで互いに対向する位置に2つ設けられている。ただし、スナップ錠13aの位置および数は、台座13をブロック15に装着することが可能であればこれに限られない。
【0024】
ブロック15は、円筒部11と対象物100との間に、円筒部11と対象物100のそれぞれに対して着脱可能に配される。ブロック15は、例えば図示しないスナップ錠により対象物100に装着されていてよい。この場合、湯口1は、対象物100に対してスナップ錠により装着される。これにより、対象物100に対する湯口1の着脱が、他の方法と比較して容易になる。
【0025】
ブロック15は、第1流路11a、および対象物100の内部の空洞の両方と連通する第2流路15aを内部に有する。第2流路15aは、第2流路15a内で硬化した樹脂を、対象物100に装着される側に取り出すことが可能な抜き勾配の下限値よりも大きい第3勾配を有する。このため、湯口1における樹脂の流路は、円筒部11とブロック15との境界において最も狭くなる。第3勾配は、例えば1°~8°であってよい。また、樹脂が流れる方向におけるブロック15の長さは例えば1cm~10cmであってよい。
【0026】
図3に示すように、第1流路11aの、第2流路15a側の開口のサイズは、第2流路15aの、第1流路11a側の開口のサイズと等しくてよい。または、第1流路11aの、第2流路15a側の開口のサイズは、第2流路15aの、第1流路11a側の開口のサイズよりも小さくてもよい。これにより、後述するように湯口1内の樹脂を破断させた場合に、当該樹脂が第1流路11aと第2流路15aとの境界よりも第1流路11a側で破断した場合であっても、ブロック15を対象物100から取り外しやすくなる。
【0027】
また、第1流路11aの、第2流路15a側の開口のサイズが、第2流路15aの、第1流路11a側の開口のサイズよりも小さい場合には、第1流路11aと第2流路15aとの境界に段差が形成される。この場合、円筒部11に衝撃を与えると、応力が段差部分に集中するため、樹脂が第1流路11aと第2流路15aとの境界の近傍で破断しやすくなる。
【0028】
ブロック15の対象物100側の面には、ブロック15を対象物100に液密に接続するためのガスケット(不図示)、またはガスケットを嵌入するための溝(不図示)が設けられている。後者の場合、ブロック15を対象物100に接続する前に、予めガスケットを溝に嵌入すればよい。これにより、湯口1と対象物100との間で樹脂の漏れが発生する可能性を低減できる。
【0029】
(湯口2の構成)
図5は、湯口2の一例の斜視図である。図6は、図5に示した湯口2の断面図である。図1図5および図6に示すように、湯口2は、円筒部21、漏斗部22、台座23、およびブロック25(中間部材)を備える。このうち、ブロック25については、図5では省略している。ブロック25については後述する。湯口2における円筒部21、漏斗部22、および台座23の材質は、湯口1における円筒部11、漏斗部12、および台座13の材質と同様であってよい。また、円筒部21および漏斗部22は、互いに一体に形成されていることが好ましい。
【0030】
円筒部21は、対象物100に注入された湯が湯口2に揚がる流れにおいて、対象物100の下流側に位置する。円筒部21は、対象物100の内部の空洞と連通する第1流路21aを内部に有する。本実施形態においては、円筒部21の周囲にはリブが設けられていない。ただし、円筒部21の周囲にリブが設けられていてもよい。
【0031】
漏斗部22は、対象物100に注入された湯が揚がる流れにおいて、円筒部21の下流側に位置する。対象物100に樹脂を注入する作業者は、漏斗部22に揚がった湯を視認することで、十分な量の樹脂が対象物100に注入されたことを確認する。
【0032】
図6に示すように、湯口2において、第1流路21aは、第1勾配θ21を有する。第1勾配θ21は、第1流路21aの内部で硬化した樹脂を円筒部21から漏斗部22へ向かう方向に除去することを可能とする抜き勾配よりも大きい。また、図6に示すように、湯口2において、漏斗部22は、第2勾配θ22を有する。第2勾配θ22は、第1勾配θ21よりもさらに大きい。第1勾配θ21は、例えば1°~8°であってよい。また、第2勾配θ22は、例えば40°~60°であってよい。第1勾配θ21および第2勾配θ22がこのような値であることで、湯口2を対象物100から取り外した後、湯口2の内部に残ったまま硬化した樹脂を、円筒部21から漏斗部22へ向かう方向に取り出すことが可能となる。
【0033】
湯口2において、湯の通流方向に垂直な面における円筒部21および漏斗部22の断面の形状は、いずれも円形であってよい。円筒部21は第1勾配θ21を有するため、対象物100側の端部における円筒部21の断面の直径が、漏斗部22側の端部における円筒部21の断面の直径よりも小さい。
【0034】
円筒部21の内面の、対象物100側の端部における直径は、例えば30mm~60mmであってよい。円筒部21の内面の、漏斗部22側の端部における直径、および漏斗部22の内面の、円筒部21側の端部における直径は、例えば30mm~70mmであってよい。漏斗部22の内面の、円筒部21とは逆側の端部における直径は、例えば70mm~150mmであってよい。
【0035】
台座23は、円筒部21をブロック25に装着するための台である。台座23は、円筒部21の、漏斗部22とは逆側の端部の周囲に位置する。台座23のブロック25側の面には、円筒部21をブロック25に液密に接続するためのガスケット(不図示)、またはガスケットを嵌入するための溝(不図示)が設けられている。後者の場合、円筒部21をブロック25に接続する前に、予めガスケットを溝に嵌入すればよい。
【0036】
台座23の側面には、スナップ錠23aが設けられている。台座23は、スナップ錠23aにより、ブロック25に装着される。スナップ錠23aは、円筒部21を挟んで互いに対向する位置に2つ設けられている。ただし、スナップ錠23aの位置および数は、台座23をブロック25に装着することが可能であればこれに限られない。
【0037】
ブロック25は、円筒部21と対象物100との間に、円筒部21と対象物100のそれぞれに対して着脱可能に配される。ブロック25は、例えば図示しないスナップ錠により対象物100に装着されていてよい。この場合、湯口2は、対象物100に対してスナップ錠により装着される。これにより、対象物100に対する湯口2の着脱が、他の方法と比較して容易になる。
【0038】
ブロック25は、第1流路21a、および対象物100の内部の空洞の両方と連通する第2流路25aを内部に有する。第2流路25aは、第2流路25a内で硬化した樹脂を、対象物100に装着される側に取り出すことが可能な抜き勾配の下限値よりも大きい第3勾配を有する。このため、湯口2における樹脂の流路は、円筒部21とブロック25との境界において最も狭くなる。第3勾配は、例えば1°~8°であってよい。また、樹脂が流れる方向におけるブロック25の長さは例えば1cm~10cmであってよい。
【0039】
図6に示すように、第1流路21aの、第2流路25a側の開口のサイズは、第2流路25aの、第1流路21a側の開口のサイズと等しくてよい。または、第1流路21aの、第2流路25a側の開口のサイズは、第2流路25aの、第1流路21a側の開口のサイズよりも小さくてもよい。これにより、後述するように湯口2内の樹脂を破断させた場合に、当該樹脂が第1流路21aと第2流路25aとの境界よりも第1流路21a側で破断した場合であっても、ブロック25を対象物100から取り外しやすくなる。
【0040】
また、第1流路21aの、第2流路25a側の開口のサイズが、第2流路25aの、第1流路21a側の開口のサイズよりも小さい場合には、第1流路21aと第2流路25aとの境界に段差が形成される。この場合、円筒部21に衝撃を与えると、応力が段差部分に集中するため、樹脂が第1流路21aと第2流路25aとの境界の近傍で破断しやすくなる。
【0041】
ブロック25における第3勾配は、ブロック15における第3勾配と同じであってもよく、異なっていてもよい。また、樹脂が流れる方向におけるブロック25の長さは、樹脂が流れる方向におけるブロック15の長さと同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0042】
ブロック25の対象物100側の面には、ブロック25を対象物100に液密に接続するためのガスケット(不図示)、またはガスケットを嵌入するための溝(不図示)が設けられている。後者の場合、ブロック25を対象物100に接続する前に、予めガスケットを溝に嵌入すればよい。これにより、湯口2と対象物100との間で樹脂の漏れが発生する可能性を低減できる。
【0043】
(湯口1,2の位置関係)
上述したとおり、対象物100は、湯口1,2が装着される位置に、対象物100の内部の空洞と連通する開口を有する。対象物100を、当該対象物100に湯を注入する姿勢とした場合において、湯口2が装着される位置に対象物100が有する開口の位置は、対象物100の最も高い位置になる。換言すれば、湯口2が装着される位置に対象物100が有する開口の位置は、対象物100の内部において空気溜まりが発生しやすい位置である。当該位置において対象物100に開口を設け、湯口2を装着して揚がり湯を確認することで、対象物100の内部における空気溜まりの発生を低減し、対象物100の全体に湯が注入されたことを確認できる。
【0044】
対象物100を、当該対象物100に湯を注入する姿勢とした場合において、湯口1が装着される位置に対象物100が有する開口の位置は、湯口2が装着される位置に対象物100が有する開口の位置よりも低くなる。しかし、湯口2に揚がり湯が確認される場合には、湯口1にも同じ高さまで揚がり湯が生じる。このため、湯口2に揚がり湯が確認される場合であっても湯口1から湯が溢れないよう、湯口2の上端よりも湯口1の上端の方が高くなるように、円筒部11,21の高さが設定されればよい。
【0045】
(樹脂の注入方法)
作業者が対象物100の内部の空洞に樹脂を注入する方法は以下のとおりである。まず、作業者は、湯口1を対象物100に装着する。また、作業者は、湯口2を対象物100に装着する。その状態で、作業者は、湯口1から対象物100の内部の空洞に液状の樹脂(湯)を注入する。対象物100の内部の空洞が樹脂で満たされると、樹脂の液面が湯口2に現れる。作業者は、湯口2に現れた液面を確認した場合、樹脂の注入を終了する。作業者は、樹脂の注入を終了した後、樹脂を冷却して硬化させる。これにより、対象物100および湯口1,2の内部に、一体の樹脂が形成される。
【0046】
樹脂を硬化させた後、作業者は、湯口1における円筒部11とブロック15との連結を解除する。その状態で、作業者は、湯口1における湯の通流方向に略垂直な方向から円筒部11に衝撃を与えることで、円筒部11とブロック15との境界において樹脂を破断させる。これにより、作業者は、円筒部11および漏斗部12を対象物100から取り外すことができる。
【0047】
また、作業者は、湯口2における円筒部21とブロック25との連結を解除する。その状態で、作業者は、湯口2における湯の通流方向に略垂直な方向から円筒部21に衝撃を与えることで、円筒部21とブロック25との境界において樹脂を破断させる。これにより、作業者は、円筒部21および漏斗部22を対象物100から取り外すことができる。
【0048】
さらに、作業者は、ブロック15,25のそれぞれを対象物100から取り外す。このとき、ブロック15,25のそれぞれの内部で硬化した樹脂は、対象物100の表面から突出した状態となっている。作業者は、対象物100の表面から突出した樹脂を除去することで、対象物100に樹脂を注入する工程を完了させる。
【0049】
作業者は、対象物100から取り外した円筒部11,21のそれぞれから、それぞれの内部で硬化した樹脂を除去する。樹脂を除去した後の円筒部11に、対象物100から取り外したブロック15を装着することで、湯口1が再使用可能となる。また、樹脂を抜き取った後の円筒部21に、対象物100から取り外したブロック25を装着することで、湯口2が再使用可能となる。
【0050】
湯口1,2の内部で硬化した樹脂を破断させるために湯口1,2に衝撃を与えることで、湯口1,2が破損する可能性がある。特に、湯口1は湯口2と比較して、内部で硬化する樹脂の量が多く、より強い衝撃を与える必要があるため、破損の可能性が高い。このため、湯口1においては、上述したとおり、円筒部11の周囲にリブ11bを設けている。一方で、湯口2においては、円筒部21の周囲にリブを設けていない。
【0051】
ただし、湯口1,2が破損する可能性は、湯口1,2の材質および樹脂の材質によって異なる。このため、円筒部11,21のそれぞれの周囲にリブを設けるか否かについては、湯口1,2の材質および想定される樹脂の材質に応じて、湯口1,2の設計者が適宜決定すればよい。
【0052】
また、湯口1,2の内部で硬化した樹脂を破断させるために円筒部11,21に衝撃を与えた場合、必ずしも円筒部11,21のそれぞれの、対象物100側の端部において樹脂が破断するとは限らない。すなわち、湯口1,2の内部で硬化した樹脂を破断させるために円筒部11,21に衝撃を与えた場合、当該端部よりも円筒部11,21の側、または対象物100の側へ樹脂の破断が進行する可能性がある。仮に樹脂の破断が対象物100の内部まで進行した場合、対象物100の内部の樹脂を含む製品の品質が低下することとなる。
【0053】
このため、上述したとおり、湯口1はブロック15を備える。湯口1において、円筒部11の対象物100側の端部は、ブロック15のサイズだけ対象物100から離隔している。このため、円筒部11における対象物100側の端部よりも対象物100の側へ樹脂の破断が進行した場合であっても、樹脂の破断が対象物100の内部まで進行する可能性が低減される。
【0054】
また、上述したとおり、湯口2はブロック25を備える。湯口2において、円筒部21の対象物100側の端部は、ブロック25のサイズだけ対象物100から離隔している。このため、円筒部21における対象物100側の端部よりも対象物100の側へ樹脂の破断が進行した場合であっても、樹脂の破断が対象物100の内部まで進行する可能性が低減される。
【0055】
ただし、湯口1,2は、必ずしもブロック15,25を備えなくてもよい。その場合、湯口1が対象物100に装着された状態において、円筒部11が対象物100に接続されることとなる。また、湯口2が対象物100に装着された状態において、円筒部21が対象物100に接続されることとなる。このため、対象物100の内部に樹脂を注入し、当該樹脂を硬化させた後、対象物100から湯口1,2を取り外すこととなる。
【0056】
したがって、対象物100からさらにブロック15,25を取り外し、対象物100の表面から突出した樹脂を除去する工程は不要となる。ただし、その場合には、湯口1,2がそれぞれブロック15,25を備える場合と比較して、湯口1,2のそれぞれを対象物100から取り外す時に、樹脂の破断が対象物100の内部にまで進行する可能性が大きくなる。
【0057】
(湯口1,2の効果)
以上のとおり、湯口1,2においては、内部で硬化した樹脂を、当該湯口1,2を壊すことなく除去することができる。したがって、湯口1,2を繰り返し使用することができる。
【0058】
また、上述したとおり、漏斗部12における第2勾配θ12は、円筒部11の第1流路11aにおける第1勾配θ11よりも大きい。このため、湯口1の直上から外れた位置からでも、対象物100に注入される樹脂の、湯口1における液面を視認しやすい。また、湯口1から対象物100への単位時間当たりの樹脂の注入量よりも、湯口1への単位時間当たりの樹脂の供給量の方が大きい場合であっても、漏斗部12においては円筒部11と比較して樹脂の液面の上昇が緩やかになる。このため、作業者は、湯口1における液面の上昇を視認して湯口1への樹脂の注入を停止しやすい。したがって、湯口1から樹脂が溢れる可能性が低減される。
【0059】
また、上述したとおり、漏斗部22における第2勾配θ22は、円筒部21の第1流路21aにおける第1勾配θ21よりも大きい。このため、対象物100から湯口2へ樹脂が揚がってきた場合に、湯口2の直上から外れた位置からでも樹脂の液面を視認しやすい。また、漏斗部22においては円筒部21と比較して樹脂の液面の上昇が緩やかになる。このため、作業者は、湯口2における液面の上昇を視認して湯口1への樹脂の注入を停止しやすい。したがって、湯口2から樹脂が溢れる可能性が低減される。
【0060】
(湯口1,2の変形例)
上述した例では、樹脂の通流方向に垂直な面において、円筒部11、漏斗部12、円筒部21および漏斗部22の断面は、いずれも円形であった。しかし、樹脂の通流方向に垂直な面において、円筒部11、漏斗部12、円筒部21および漏斗部22のうち、1以上の断面が、楕円形または長円形であってもよい。そのような湯口1,2も、上述の効果を奏する。
【0061】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る湯口は、内部に樹脂が注入される空洞を有する対象物に着脱可能に配されるとともに、前記空洞と連通する第1流路を内部に有する円筒部と、前記円筒部の前記対象物とは逆側に配されるとともに、前記第1流路と連通する漏斗部とを備え、前記第1流路は、当該第1流路内で硬化した前記樹脂を、当該第1流路内を前記樹脂が通流する方向とは逆側に除去することを可能とする抜き勾配の下限値よりも大きい第1勾配を有し、前記漏斗部は、前記方向に対し、前記第1勾配よりも大きい第2勾配を有し、前記円筒部および前記漏斗部は金属で形成されている。
【0062】
上記の構成によれば、湯口において、樹脂が通流する円筒部および漏斗部は、金属で形成されている。また、円筒部および漏斗部は、樹脂が通流する方向とは逆方向に、内部で硬化した樹脂を除去することを可能とする抜き勾配の下限値よりも大きい勾配を有する。したがって、内部で硬化した樹脂を除去し、繰り返し使用可能な湯口を実現できる。
【0063】
本発明の態様2に係る湯口は、前記円筒部と前記対象物との間に、前記円筒部および前記対象物のそれぞれに対して着脱可能に配されるとともに、前記第1流路および前記空洞の両方と連通する第2流路を内部に有する中間部材をさらに備え、前記第2流路は、当該第2流路内で硬化した樹脂を、当該第2流路内を前記樹脂が通流する方向に対し、除去することを可能とする抜き勾配の下限値よりも大きい第3勾配を有する。
【0064】
上記の構成によれば、湯口と対象物とが、中間部材のサイズだけ離隔する。このため、対象物から湯口を取り外す工程において、樹脂の破断が対象物の内部まで進行する可能性が低減される。
【0065】
本発明の態様3に係る湯口は、前記対象物に対してスナップ錠により装着される。
【0066】
上記の構成によれば、対象物に対して湯口を容易に着脱できる。
【0067】
本発明の態様4に係る湯口は、前記円筒部の外周部に、当該円筒部を補強するリブが設けられている。
【0068】
上記の構成によれば、湯口を対象物から取り外す工程において、樹脂を破断させるために湯口に与えられる衝撃により湯口が破損する可能性を低減できる。
【0069】
本発明の態様5に係る湯口において、前記円筒部および前記漏斗部は、板金で形成されている。
【0070】
上記の構成によれば、例えば切削加工などの方法と比較して湯口を安価に製造できる。
【0071】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0072】
1,2 湯口
11,21 円筒部
11a,21a 第1流路
11b リブ
12,22 漏斗部
13a,23a スナップ錠
15,25 ブロック(中間部材)
15a,25a 第2流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6