(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167982
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】自動車車体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B62D 29/04 20060101AFI20231116BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20231116BHJP
B05D 1/36 20060101ALI20231116BHJP
B05D 5/06 20060101ALI20231116BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20231116BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20231116BHJP
B62D 25/00 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
B62D29/04 Z
B05D7/24 303A
B05D1/36 B
B05D5/06 Z
B05D5/06 101A
B05D5/06 G
B32B7/023
B32B27/20
B62D25/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079560
(22)【出願日】2022-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】593135125
【氏名又は名称】日本ペイント・オートモーティブコーティングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100088801
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 宗雄
(72)【発明者】
【氏名】山根 貴和
(72)【発明者】
【氏名】岡本 圭一
(72)【発明者】
【氏名】寺本 浩司
(72)【発明者】
【氏名】野中 隆治
(72)【発明者】
【氏名】丸王 健志
(72)【発明者】
【氏名】清永 浩
【テーマコード(参考)】
3D203
4D075
4F100
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
【課題】白さと金属調の質感とが両立された自動車車体およびその製造方法を提供する。
【解決手段】被塗物および複層塗膜を備え、複層塗膜は、被塗物上に形成され、白色顔料を含む着色塗膜と、着色塗膜上に形成され、光輝材を含む光輝性塗膜と、光輝性塗膜上に形成されたクリヤー塗膜と、を備え、複層塗膜の表面に対して45度の角度から照射した光I
45を、正反射光に対して45度の角度で受光した分光反射率に基づく明度L
*45は、70以上90以下であり、光I
45を、正反射光に対して5度の角度で受光した分光反射率に基づく明度L
*5と、光I
45を、正反射光に対して15度の角度で受光した分光反射率に基づく明度L
*15との比:L
*5/L
*15は、1.2以上2.5以下であり、複層塗膜の表面からみた光輝材の占有率は、10%以上30%以下であり、複層塗膜の表面における粒子感は、1.0以上3.0以下である、自動車車体。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗物および複層塗膜を備える自動車車体であって、
前記複層塗膜は、
前記被塗物上に形成され、白色顔料を含む着色塗膜と、
前記着色塗膜上に形成され、光輝材を含む光輝性塗膜と、
前記光輝性塗膜上に形成されたクリヤー塗膜と、を備え、
前記複層塗膜の表面に対して45度の角度から照射した光I45を、正反射光に対して45度の角度で受光した分光反射率に基づく明度L*45は、70以上90以下であり、
前記光I45を、正反射光に対して5度の角度で受光した分光反射率に基づく明度L*5と、前記光I45を、正反射光に対して15度の角度で受光した分光反射率に基づく明度L*15との比:L*5/L*15は、1.2以上2.5以下であり、
前記複層塗膜の前記表面からみた前記光輝材の占有率は、10%以上30%以下であり、
前記複層塗膜の前記表面における粒子感は、1.0以上3.0以下である、自動車車体。
【請求項2】
前記着色塗膜の表面に対して45度の角度から照射した光IC45を、正反射光に対して45度の角度で受光した分光反射率に基づく明度CL*45は、70以上95以下である、請求項1に記載の自動車車体。
【請求項3】
前記光輝性塗膜の厚さは、0.05μm以上1.0μm以下である、請求項1または2に記載の自動車車体。
【請求項4】
前記光輝材は、0.05μm以上0.3μm以下の厚さを有する鱗片状光輝性顔料を含む、請求項1または2に記載の自動車車体。
【請求項5】
前記光輝材は、アルミニウム粒子を含む、請求項1または2に記載の自動車車体。
【請求項6】
前記光輝性塗膜は、さらに二酸化チタンを含む、請求項1または2に記載の自動車車体。
【請求項7】
被塗物上に、白色顔料を含む着色塗料を塗装して未硬化の着色塗膜を形成する工程と、
未硬化の前記着色塗膜上に、光輝材を含む光輝性顔料分散体を塗装して未硬化の光輝性塗膜を形成する工程と、
未硬化の前記光輝性塗膜上に、クリヤー塗料を塗装して未硬化のクリヤー塗膜を形成する工程と、
未硬化の前記着色塗膜、未硬化の前記光輝性塗膜および未硬化の前記クリヤー塗膜を硬化させて複層塗膜を得る工程と、を備え、
前記複層塗膜の表面に対して45度の角度から照射した光I45を、正反射光に対して45度の角度で受光した分光反射率に基づく明度L*45は、70以上90以下であり、
前記光I45を、正反射光に対して15度の角度で受光した分光反射率に基づく明度L*5と、前記光I45を、正反射光に対して15度の角度で受光した分光反射率に基づく明度L*15との比:L*5/L*15は、1.2以上2.5以下であり、
前記複層塗膜の前記表面からみた前記光輝材の占有率は、10%以上30%以下であり、
前記複層塗膜の前記表面における粒子感は、1.0以上3.0以下である、自動車車体の製造方法。
【請求項8】
前記クリヤー塗料は、水酸基含有樹脂およびポリイソシアネート化合物を含む2液型塗料である、請求項7に記載の自動車車体の製造方法。
【請求項9】
前記光輝性顔料分散体の固形分含有率は、0.1質量%以上10.0質量%以下である、請求項7または8に記載の自動車車体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車車体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、技術の進歩により、自動車車体用として多様な色および質感を有する塗膜が提案されている。なかでも、金属のような光沢を備える白色の塗膜が注目されている。特許文献1および2は、光輝感と鮮明な白さとを有する塗膜を形成する方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-245603号公報
【特許文献2】特開2011-45805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1および2の方法を用いても、白さと金属調の質感(例えば、光輝感)とを両立させることは難しい。白さを強調させると、光輝感は失われ易くなる。光輝感を強調させると、白さが失われ易くなって、シルバー色に見える。本発明の課題は、白さと金属調の質感とが両立された自動車車体およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は下記態様を提供する。
[1]
被塗物および複層塗膜を備える自動車車体であって、
前記複層塗膜は、
前記被塗物上に形成され、白色顔料を含む着色塗膜と、
前記着色塗膜上に形成され、光輝材を含む光輝性塗膜と、
前記光輝性塗膜上に形成されるクリヤー塗膜と、を備え、
前記複層塗膜の表面に対して45度の角度から照射した光I45を、正反射光に対して45度の角度で受光した分光反射率に基づく明度L*45は、70以上90以下であり、
前記光I45を、正反射光に対して5度の角度で受光した分光反射率に基づく明度L*5と、前記光I45を、正反射光に対して15度の角度で受光した分光反射率に基づく明度L*15との比:L*5/L*15は、1.2以上2.5以下であり、
前記複層塗膜の前記表面からみた前記光輝材の占有率は、10%以上30%以下であり、
前記複層塗膜の前記表面における粒子感は、1.0以上3.0以下である、自動車車体。
【0006】
[2]
前記着色塗膜の表面に対して45度の角度から照射した光IC45を、正反射光に対して45度の角度で受光した分光反射率に基づく明度CL*45は、70以上95以下である、上記[1]に記載の自動車車体。
【0007】
[3]
前記光輝性塗膜の厚さは、0.05μm以上1.0μm以下である、上記[1]または[2]に記載の自動車車体。
【0008】
[4]
前記光輝材は、0.05μm以上0.3μm以下の厚さを有する鱗片状光輝性顔料を含む、上記[1]~[3]のいずれかに記載の自動車車体。
【0009】
[5]
前記光輝材は、アルミニウム粒子を含む、上記[1]~[4]のいずれかに記載の自動車車体。
【0010】
[6]
前記光輝性塗膜は、さらに二酸化チタンを含む、上記[1]~[5]のいずれかに記載の自動車車体。
【0011】
[7]
被塗物上に、白色顔料を含む着色塗料を塗装して未硬化の着色塗膜を形成する工程と、
未硬化の前記着色塗膜上に、光輝材を含む光輝性顔料分散体を塗装して未硬化の光輝性塗膜を形成する工程と、
未硬化の前記光輝性塗膜上に、クリヤー塗料を塗装して未硬化のクリヤー塗膜を形成する工程と、
未硬化の前記着色塗膜、未硬化の前記光輝性塗膜および未硬化の前記クリヤー塗膜を硬化させて複層塗膜を得る工程と、を備え、
前記複層塗膜の表面に対して45度の角度から照射した光I45を、正反射光に対して45度の角度で受光した分光反射率に基づく明度L*45は、70以上90以下であり、
前記光I45を、正反射光に対して15度の角度で受光した分光反射率に基づく明度L*5と、前記光I45を、正反射光に対して15度の角度で受光した分光反射率に基づく明度L*15との比:L*5/L*15は、1.2以上2.5以下であり、
前記複層塗膜の前記表面からみた前記光輝材の占有率は、10%以上30%以下であり、
前記複層塗膜の前記表面における粒子感は、1.0以上3.0以下である、自動車車体の製造方法。
【0012】
[8]
前記クリヤー塗料は、水酸基含有樹脂およびポリイソシアネート化合物を含む2液型塗料である、上記[7]に記載の自動車車体の製造方法。
【0013】
[9]
前記光輝性顔料分散体の固形分含有率は、0.1質量%以上10.0質量%以下である、上記[7]または[8]に記載の自動車車体の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、白さと金属調の質感とが両立された自動車車体およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】本発明の一実施形態に係る自動車車体を模式的に示す断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る光輝性塗膜を模式的に示す断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る自動車車体の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
A.自動車車体
本実施形態に係る自動車車体は、自動車の少なくとも一部を構成する。自動車車体は、被塗物および複層塗膜を備える。複層塗膜は、被塗物上に形成されるとともに白色顔料を含む着色塗膜と、着色塗膜上に形成されるとともに光輝材を含む光輝性塗膜と、光輝性塗膜上に形成されるクリヤー塗膜と、を備える。
【0017】
白さと金属調の質感とを両立するために、複合塗膜において、ハイライトのうちの狭い領域(以下、超ハイライトと称す)での光輝感を高め、シェードでの明度を高める。金属調の質感が発現される領域を超ハイライトに制限することにより、それよりシェード側の領域では自動車車体を白く見せることができる。
【0018】
すなわち、正反射光の近傍におけるフリップフロップ値(FF値)を大きくする。FF値は、複合塗膜を複数の方向から見たときの明度の変化を示す指標である。FF値が大きいほど、明度差が大きい。本実施形態のように、正反射光の近傍におけるFF値を大きくすることにより、超ハイライトでの金属調の質感が高まる。
【0019】
本実施形態では、正反射光の近傍におけるFF値として、複層塗膜の表面に対して45度(°)の角度から照射した光I45を、正反射光に対して5度の角度で受光した分光反射率に基づく明度L*5と、上記光I45を、正反射光に対して15度の角度で受光した分光反射率に基づく明度L*15との比:L*5/L*15を求める。L*5/L*15は、1.2以上2.5以下である。L*5/L*15がこの範囲であると、ハイライトでの明度変化が大きくなる。つまり、超ハイライトでは高い金属調の質感が得られる一方、それよりシェード側の領域では白の色調が強まる。L*5/L*15は、1.30以上が好ましく、1.35以上がより好ましい。L*5/L*15は、2.40以下が好ましく、2.20以下がより好ましい。超ハイライトは、正反射光(角度0度)に対して-10度から10度までの領域である。
【0020】
明度L*5は、上記光I45を正反射光に対して5度の角度で受光した分光反射率から計算されたL*a*b*表色系(CIE1976L*a*b*色空間)における明度L*である。明度L*15は同様に、上記光I45を正反射光に対して15度の角度で受光した分光反射率から計算されたL*a*b*表色系における明度L*である。後述する明度L*45は同様に、上記光I45を正反射光に対して45度の角度で受光した分光反射率から計算されたL*a*b*表色系における明度L*である。明度L*5、L*15、L*45はいずれも、0以上の数値を取り得る。明度L*は、変角色差計(例えば、Gonio-Spectrophotometer GSP-1、株式会社村上色材研究所製)を用いて得ることができる。明度L*は、異なる5つの試料の明度L*の平均値である。
【0021】
明度L*5は特に限定されない。光輝感がより高まる点で、明度L*5は、120以上が好ましく、150以上がより好ましい。明度L*15も特に限定されない。明度L*15は、90以上であってよく、100以上であってよい。FF値が大きくなり易い点で、明度L*15は、150以下が好ましく、130以下がより好ましい。明度L*5から明度L*15を引いた値は、例えば40以上であり、45以上が好ましく、50以上がより好ましい。
【0022】
図1は、分光反射率の受光角度を説明する図である。複層塗膜の表面に対して45度の角度から照射した光I
45の正反射光は、R
0で示されている。光I
45の正反射光に対して5度の角度で受光される光は、R
5で示されている。光I
45の正反射光に対して15度の角度で受光される光は、R
15で示されている。光I
45の正反射光に対して45度の角度で受光される光は、R
45で示されている。
【0023】
複層塗膜の粒子感(Graininess。以下、粒子感Gと称す。)は小さい。粒子感Gが小さいほど、複合塗膜が緻密である印象が強くなるとともに、金属調の質感がさらに高まる。粒子感は、1.0以上3.0以下である。粒子感Gは、1.5以上が好ましく、1.8以上がより好ましい。粒子感Gは、2.7以下が好ましく、2.3以下がより好ましい。
【0024】
粒子感Gは、拡散光が照射された複合塗膜を撮像して、特定の画像解析アルゴリズムで解析することにより求められる。具体的には、複合塗膜に、白色塗装された半球の中に設置された光源から拡散光を照射する。複合塗膜をその法線方向からCCDカメラにて撮像し、特定の画像解析アルゴリズムで解析することにより求められる。粒子感Gは、マルチアングル測色器(例えば、BYK-mac i、BYK-Gardner社製)を用いて取得することができる。粒子感G*は、異なる5つの試料の粒子感Gの平均値である。
【0025】
複層塗膜の表面からみた光輝材の占有率は、10%以上30%以下である。これにより、光輝材を経ることなく、着色塗膜に含まれる白色顔料を視認することができる。そのため、シェードにおける明度がより高くなる。光輝材の占有率は、13%以上が好ましく、16%以上がより好ましい。光輝材の占有率は、23%以下が好ましく、20%以下がより好ましい。本実施形態では、粒子感Gが低く抑えられている。そのため、光輝材の占有率を小さくしても、金属調の質感を高めることができる。
【0026】
光輝材の占有率は、法線方向からみたときの複層塗膜における光輝材の面積割合である。具体的には、複層塗膜をその法線方向から電子顕微鏡で観察する。観察視野において、光輝材に対応する領域とそれ以外の領域とを画像処理ソフトにより二値化する。観察視野の面積を100%として、光輝材の面積割合を算出する。電子顕微鏡の倍率は特に限定されず、例えば、100倍以上200倍以下程度でよい。観察視野の大きさも特に限定されず、例えば、タテ500nm以上1000nm以下、ヨコ1000nm以上1500nm以下程度でよい。電子顕微鏡としては、工業用顕微鏡(例えば、株式会社ニコンインステック製、ECLIPSE LV150N)が用いられる。画像処理ソフトとしては、例えば、NIS-Elements(ニコン社製、画像総合ソフトウェア)、NIS-A AMEAS(ニコン社製、距離計測および面積計算用ソフトウェア)が用いられる。占有率は、異なる5つの観察視野における占有率の平均値である。
【0027】
本実施形態の複層塗膜において、上記光I45を、正反射光に対して45度の角度で受光した分光反射率に基づく明度L*45は、70以上90以下である。これにより複層塗膜は、ハイライトからシェードにかけて白く見える。明度L*45は、73以上が好ましく、75以上がより好ましい。明度L*45は、87以下が好ましく、85以下がより好ましい。
【0028】
金属調の質感がさらに向上する点で、光輝性塗膜は、当該塗膜と平行に配列した光輝材を含むことが好ましい。なかでも、光輝性塗膜に含まれる光輝材の数の80%以上が、複層塗膜の表面と平行に配列していることが好ましい。平行とは、複層塗膜の断面において、光輝性塗膜の表面と光輝材との成す鋭角θが0度以上30度以下であることをいう。
【0029】
光輝材の配列は、例えば、複層塗膜の光輝強度(Sparkle intensity)によって示される。塗膜の法線方向に対して15度傾いた方向から照射した光を、塗膜の法線方向で受光した光輝強度(以下、Si15値と称す。)が小さいほど、光輝性塗膜と平行に配列された光輝材が多いといえる。本実施形態において、複合塗膜のSi15値は、3.0以上4.0以下になり得る。Si15値がこの範囲であると、光輝性塗膜に含まれる光輝材の数の80%以上が、光輝性塗膜の表面と平行に配列しているといえる。Si15値は、3.1以上が好ましく、3.2以上がより好ましい。Si15値は、3.8以下が好ましく、3.6以下がより好ましい。
【0030】
Si15値は、複層塗膜の法線方向に対して15度傾いた方向から照射した光を、複層塗膜の法線方向から撮像し、特定の画像解析アルゴリズムで解析することにより求められる。画像解析アルゴリズムには、明るさレベルのヒストグラムが用いられる。Si15値は、マルチアングル測色器(例えば、BYK-mac i、BYK-Gardner社製)を用いて取得することができる。Si15値は、異なる5つの試料のSi15値の平均値である。
【0031】
特に、鱗片状の光輝性顔料(以下、鱗片状光輝材と称す。)の配列は、複層塗膜の断面からも確認され得る。鋭角θは、複層塗膜の断面から以下のようにして求められる。まず、複層塗膜の断面を電子顕微鏡で撮像する。得られた断面を2次元の座標(xy座標)上に置いて、光輝性塗膜の表面の近似直線L0を求める。同様にして、鱗片状光輝材の表面の近似直線L1を求める。鱗片状光輝材の表面は、クリヤー塗膜に近い方の主面である。近似直線L0と近似直線L1との成す角度が、角度θである。光輝性塗膜と平行な鱗片状光輝材の割合は、光輝性塗膜と平行に配列しており、かつ、観察視野において全体が確認できる鱗片状光輝材の個数を、観察視野において全体が確認できる光輝材の個数で除すことにより求められる。
【0032】
上記の電子顕微鏡による観察において、倍率は特に限定されない。電子顕微鏡の倍率は、例えば、100倍以上200倍以下程度でよい。観察視野の大きさも特に限定されず、例えば、タテ500nm以上1000nm以下、ヨコ1000nm以上1500nm以下程度でよい。以下の電子顕微鏡による観察においても、倍率および観察視野は上記と同様であってよい。
【0033】
光輝性塗膜において、鱗片状光輝材同士は重なっていないことが好ましい。これにより、鱗片状光輝材は、光輝性塗膜と平行に配列し易くなる。さらに、光輝材の占有率が低い場合であっても、塗膜が緻密である印象が強くなるとともに、金属調の質感が高まる。鱗片状光輝材同士が重なっていないとは、複層塗膜の断面において、鱗片状光輝材と他の鱗片状光輝材の一部または全部が厚さ方向に重なっていないことをいう。鱗片状光輝材同士が接触していることは要しない。例えば、複層塗膜を法線方向から見たとき、鱗片状光輝材同士の一部または全部が重なって見える場合、当該鱗片状光輝材同士は厚さ方向に重なっている。
【0034】
なかでも、光輝性塗膜に含まれる鱗片状光輝材の数の80%以上が、他の鱗片状光輝材と重なっていないことが好ましい。鱗片状光輝材の重複割合は、以下のようにして求められる。まず、複層塗膜の断面を電子顕微鏡で撮像する。得られた断面において、光輝性塗膜の最もクリヤー塗膜側にある1つまたは複数の鱗片状光輝材を基準光輝材とする。基準光輝材と厚さ方向に重なる鱗片状光輝材に印をつける。さらに、印をつけた鱗片状光輝材と厚さ方向に重なる鱗片状光輝材に印をつける。印がつけられており、かつ、観察視野において全体が確認できるすべての鱗片状光輝材(以下、重複光輝材と称する場合がある)をカウントする。このとき、1つの重複光輝材を複数回カウントしないようにする。重複光輝材の割合は、この重複光輝材の個数を、観察視野において全体が確認できる鱗片状光輝材(すなわち、基準光輝材と重複光輝材との合計)の個数で除すことにより求められる。
【0035】
[被塗物]
被塗物の材質は、自動車車体に適する限り特に限定されない。被塗物としては、例えば、鉄、銅、アルミニウム、スズ、亜鉛またはこれらの合金を含む金属材が挙げられる。被塗物の形状も特に限定されない。被塗物は、板状であってもよいし、立体形状を有していてもよい。被塗物は、例えば、乗用車、トラック、バスなどの車体の少なくとも一部を構成する。
【0036】
被塗物は、脱脂処理および/または表面処理されていてもよい。表面処理としては、例えば、リン酸塩処理、クロメート処理、ジルコニウム化成処理、複合酸化物処理が挙げられる。金属材は、表面処理後、電着塗料によって下塗り塗装されていることが好ましい。電着塗料は、カチオン型であってよく、アニオン型であってよい。
【0037】
[複層塗膜]
複層塗膜は、着色塗膜と光輝性塗膜とクリヤー塗膜とをこの順に備える。
【0038】
複層塗膜の鏡面光沢度は特に限定されない。複層塗膜の60度鏡面光沢度は、100%以上180%以下であってよい。60度鏡面光沢度は、JIS Z 8741 鏡面光沢度-測定方法に準拠して測定される。具体的には、複層塗膜の法線に対して入射角60度で光を照射し、反射角60度における反射光の光束φSを測定する。同一条件で、屈折率1.567のガラスの平面に対して光を照射して、反射光の光束φ0を測定する。光束φSを光束φ0で除して100を掛けた値が、60度鏡面光沢度である。60度鏡面光沢度は、異なる5つの試料の60度鏡面光沢度の平均値である。
【0039】
<着色塗膜>
着色塗膜は、被塗物の質感および色彩を隠蔽し、自動車車体に白の色調を与える。
【0040】
着色塗膜の厚さは特に限定されない。隠蔽性の観点から、着色塗膜の厚さは、15μm以上50μm以下であってよく、18μm以上45μm以下であってよく、20μm以上40μm以下であってよい。着色塗膜の厚さがこの範囲であると、被塗物の質感および色彩は着色塗膜から透けることなく隠蔽され易い。着色塗膜の厚さは、例えば、電磁式膜厚計により測定される。着色塗膜の厚さは、異なる5つの試料における着色塗膜の厚さの平均値である。他の層の厚さも同様に測定および算出できる。
【0041】
着色塗膜の白黒隠蔽膜厚は、80μm以下が好ましく、10μm以上70μm以下がより好ましく、15μm以上60μm以下が特に好ましい。白黒隠蔽膜厚は、JIS K5600-4-1の4.1.2に規定される白黒の市松模様の隠蔽率試験紙を用いて測定される。具体的には、隠蔽率試験紙を鋼板に貼り付けて、膜厚が連続的に変わるように塗料を傾斜塗りする。塗料を乾燥または硬化させた後、拡散昼光の下で塗面を目視で観察する。隠蔽率試験紙の市松模様の白黒の境界が見えなくなる最小の膜厚が、白黒隠蔽膜厚である。この膜厚も同様に、電磁式膜厚計で測定できる。
【0042】
着色塗膜の表面に対して45度の角度から照射した光IC45を、正反射光に対して45度の角度で受光した分光反射率に基づく明度CL*45は、70以上95以下が好ましい。着色塗膜がシェードにおいて高い明度を有するとともに、光輝材の占有率が小さいことにより、複層塗膜は、超ハイライトよりシェード側の領域においてさらに白く見える。
【0043】
(白色顔料)
着色塗膜は、白色顔料を含む。白色顔料は特に限定されない。白色顔料としては、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛およびシリカが挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。屈折率が高い点で、二酸化チタンが好ましい。二酸化チタンは、ルチル型であってよく、アナターゼ型であってよい。なかでも、耐候性の観点から、ルチル型の二酸化チタンが好ましい。二酸化チタンの表面は、シリカ、ジルコニウム、アルミニウム等の無機化合物で処理されていてもよい。
【0044】
白色顔料の一次粒子径は特に限定されない。隠蔽性の観点から、白色顔料の一次粒子径は、100nm以上500nm以下が好ましく、200nm以上400nm以下がより好ましい。一次粒子径は、複層塗膜の断面の電子顕微鏡の画像から、画像処理ソフトウェアを用いて測定することができる。
【0045】
白色顔料の量は特に限定されない。白色顔料は、明度L*45が70以上90以下になるように、添加される。白色顔料は、好ましくは、着色塗膜の上記明度CL*45が、70以上95以下になるように、添加される。白色顔料の量は、具体的には、着色塗膜の5質量%以上40質量%以下が好ましく、10質量%以上30質量%以下がより好ましく、15質量%以上25質量%以下がさらに好ましい。白色顔料の量は、後述する第1樹脂100質量部に対して、50質量部以上200質量部以下が好ましく、80質量部以上150質量部以下がより好ましい。
【0046】
(第1樹脂)
着色塗膜は、白色顔料の他、ビヒクルとして、例えば第1樹脂を含む。白色顔料は、第1樹脂中に分散している。
【0047】
第1樹脂は特に限定されない。第1樹脂は、第1熱硬化性樹脂の硬化物を含むことが好ましい。第1樹脂は、例えば、架橋性官能基およびベース樹脂により形成される第1熱硬化性樹脂が、硬化されることにより得られる。硬化には、第1硬化剤が用いられてもよい。
【0048】
架橋性官能基としては、例えば、カルボキシ基、水酸基、エポキシ基、シラノール基、(メタ)アクリロイル基が挙げられる。
【0049】
ベース樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂は、ウレタン変性エポキシ樹脂であってよい。ポリエステル樹脂は、ウレタン変性ポリエステル樹脂であってよい。アクリル樹脂は、ウレタン変性アクリル樹脂であってよい。各ウレタン変性樹脂は、樹脂骨格中にウレタン結合を有する。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。なかでも、耐チッピング性が向上する点で、アクリル樹脂およびウレタン変性ポリエステルが好ましい。
【0050】
アクリル樹脂は、例えば、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸、水酸基、アミド基、メチロール基等の官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル、およびその他の(メタ)アクリル酸エステル、スチレンを共重合することにより得られる。
【0051】
ウレタン変性ポリエステルは、水酸基含有ポリエステルと、脂肪族ジイソシアネート化合物との反応により得られる。水酸基含有ポリエステルは、多価カルボン酸および/または酸無水物などの酸成分と多価アルコールとを重縮合することによって調製される。脂肪族ジイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4-ジイソシアネートおよびメチルシクロヘキサンジイソシアネートが挙げられる。
【0052】
第1樹脂の量は特に限定されない。均一な塗膜が形成され易い点で、第1樹脂の量は、着色塗膜の60質量%以上95質量%以下が好ましく、70質量%以上90質量%以下がより好ましく、75質量%以上85質量%以下がさらに好ましい。
【0053】
第1樹脂のガラス転移温度(Tg)は特に限定されない。塗膜硬度および平滑性の観点から、第1樹脂のTgは、-40℃以上20℃以下が好ましく、-30℃以上10℃以下がより好ましい。Tgは、JIS K 7121に準拠した示差走査型熱量計(DSC)によって測定される。
【0054】
(その他)
着色塗膜は、隠蔽性等に応じて、さらに他の顔料を含み得る。他の顔料としては、例えば、メタリック顔料、防錆顔料、白色顔料以外の着色顔料、体質顔料が挙げられる。体質顔料としては、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、タルクが挙げられる。
【0055】
着色塗膜はまた、必要に応じて種々の添加剤を含み得る。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、消泡剤、表面調整剤、分散剤、ピンホール防止剤が挙げられる。
【0056】
<光輝性塗膜>
光輝性塗膜は、自動車車体に金属調の質感を与える。
【0057】
光輝性塗膜の厚さは特に限定されない。光輝材が塗膜と平行に配列し易くなる点で、光輝性塗膜の厚さは、0.05μm以上1.0μm以下が好ましい。光輝性塗膜の厚さは、0.1μm以上であってよく、0.3μm以上であってよい。光輝性塗膜の厚さは、0.8μm以下であってよく、0.7μm以下であってよい。
【0058】
(光輝材)
光輝性塗膜は、光輝材を含む。光輝材は、光を反射する限り特に限定されない。なかでも、光輝性塗膜を薄くすることができるとともに、金属調の質感が向上し易い点で、鱗片状光輝材が好ましい。鱗片状光輝材のアスペクト比は、例えば、2以上である。アスペクト比は、鱗片状光輝材の一方の主面の長径と、鱗片状光輝材の2つの主面の間の距離(厚さ)との比:長径/厚さである。鱗片状光輝材のアスペクト比は、10以上1000以下であってよい。
【0059】
光輝性塗膜は、鱗片状光輝材とともに鱗片状光輝材以外の他の光輝材(アスペクト比が2未満の光輝材)を含んでいてもよい。ただし、他の光輝材の含有量は、全光輝材の10質量%以下が好ましく、5質量%以下が好ましい。これにより、鱗片状光輝材は、さらに塗膜と平行に配列し易くなる。
【0060】
光輝材の長径は特に限定されない。占有率を調整し易い点で、光輝材の長径は、1μm以上80μm以下が好ましく、3μm以上50μm以下が好ましい。上記長径は、複層塗膜をその法線方向から電子顕微鏡で観察することにより算出される。観察視野において、光輝材に対応する領域とそれ以外の領域とを画像処理ソフトにより二値化する。次いで、任意に20個の光輝材を選出し、その最も長い径をそれぞれ測定する。これら測定値の平均値が、光輝材の長径である。
【0061】
光輝材、特に鱗片状光輝材の厚さは、0.05μm以上0.3μm以下が好ましい。これにより、光輝性塗膜を薄くすることができる。光輝材の厚さは、0.25μm以下が好ましく、0.2μm以下がより好ましい。上記厚さは、複層塗膜の断面を電子顕微鏡で観察することにより算出してもよい。観察視野において、光輝材に対応する領域とそれ以外の領域とを画像処理ソフトにより二値化する。次いで、任意に20個の光輝材を選出し、その最も厚い部分の長さをそれぞれ測定する。これら測定値の平均値が、光輝材の厚さである。
【0062】
光輝材の平均粒子径は特に限定されない。光輝感が向上し易い点で、光輝材の平均粒子径は、2μm以上50μm以下が好ましく、5μm以上35μm以下が好ましい。平均粒子径は、体積平均粒子径D50を意味する。体積平均粒子径D50は、レーザードップラー式粒度分析計(例えば、日機装社製、「マイクロトラックUPA150」)を用いて測定することができる。
【0063】
光輝材は特に限定されない。L*5/L*15が大きくなり易い点で、多重反射干渉を発色機能としない光輝材が好ましい。このような光輝材としては、金属粒子が挙げられる。具体的には、アルミニウム、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、スズ、酸化アルミニウムおよびこれらを含む合金の粒子が挙げられる。光輝材は、着色されていてもよい。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。多重反射干渉を発色機能とする光輝材としては、マイカが代表的である。反射率の高い金属粒子を用いる場合でも、その占有率を低く抑えることにより、高い明度L*45を実現することができる。
【0064】
なかでも、鱗片状の金属粒子がより好ましい。少量で高い光輝感が得られる点で、鱗片状のアルミニウム粒子がより好ましい。
【0065】
全光輝材の量は、光輝性塗膜の3質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上25質量%以下がより好ましい。これにより、光輝材の上記占有率が10%以上30%以下になり易い。
【0066】
(粘性調整剤)
光輝性塗膜は、粘性調整剤を含んでもよい。粘性調整剤は、光輝性塗膜の材料である光輝性顔料分散体(Y)の粘度を調整する。塗布直後の光輝性顔料分散体(Y)において、光輝材は塗膜と平行に配列している。しかし、光輝性顔料分散体(Y)に含まれる液状成分が流動すると、光輝材も流動し、その配列が乱れる。光輝性顔料分散体(Y)の粘度を適切に調整することにより、塗布後、硬化前の光輝性塗膜において、上記液状成分の流動が抑制されて、光輝材の配列の乱れも抑制される。よって、光輝材は、塗膜と平行に配列した状態で保持され易くなる。
【0067】
粘性調整剤は特に限定されない。粘性調整剤としては、例えば、シリカ系微粉末、鉱物系粘性調整剤、硫酸バリウム微粒化粉末、ポリアミド系粘性調整剤、有機樹脂微粒子粘性調整剤、ジウレア系粘性調整剤、ウレタン会合型粘性調整剤、アクリル膨潤型であるポリアクリル酸系粘性調整剤、セルロース系粘性調整剤が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。なかでも、光輝材が分散し易く、速乾性に優れる点で、セルロース系粘性調整剤が好ましい。
【0068】
鉱物系粘性調整剤としては、例えば、結晶構造が2:1型構造を有する膨潤性層状ケイ酸塩が挙げられる。具体的には、天然または合成のモンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチブンサイト、バイデライト、ノントロナイト、ベントナイト、ラポナイト等のスメクタイト族粘土鉱物;Na型テトラシリシックフッ素雲母、Li型テトラシリシックフッ素雲母、Na塩型フッ素テニオライト、Li型フッ素テニオライト等の膨潤性雲母族粘土鉱物;バーミキュライト;これらの置換体や誘導体が挙げられる。
【0069】
ポリアクリル酸系粘性調整剤としては、例えば、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体を挙げることができる。ポリアクリル酸系粘性調整剤の市販品としては、例えば、プライマルASE-60、プライマルTT615、プライマルRM5(いずれもダウケミカル社製)、SNシックナー613、SNシックナー618、SNシックナー630、SNシックナー634、SNシックナー636(いずれもサンノプコ社製)が挙げられる。ポリアクリル酸系粘性調整剤の固形分酸価は特に限定されない。上記固形分酸価は、30mgKOH/g以上300mgKOH/g以下であってよく、80mgKOH/g以上280mgKOH/g以下であってよい。
【0070】
セルロース系粘性調整剤としては、例えば、セルロースアセテートブチレート(CAB)、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドリキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロースおよびセルロースナノファイバーゲルが挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。なかでも、CABが好ましい。
【0071】
粘性調整剤の量は特に限定されない。粘性調整剤の量は、例えば、光輝性顔料分散体100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下であってよく、0.5質量部以上5質量部以下であってよく、1.0質量部以上3.0質量部以下であってよい。これにより、光輝材の配列の乱れが抑制され易くなる。
【0072】
(第2樹脂)
光輝性塗膜は、樹脂成分(第2樹脂)を含んでもよい。第2樹脂は、例えば、第1樹脂と同様の熱硬化性樹脂の硬化物を含む。ただし、第2樹脂の量は少ないことが望ましい。第2樹脂が少ないことにより、光輝性塗膜を薄くすることが容易となる。光輝性塗膜が薄いと、光輝材の配向の乱れが抑制され易くなって、光輝材は塗膜の表面と平行に配列し易くなる。
【0073】
第2樹脂の量は、薄い光輝性塗膜が形成され易い点で、光輝性顔料分散体の15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下が特に好ましい。
【0074】
(その他)
光輝性塗膜は、隠蔽性等に応じて、光輝材以外の他の顔料を含み得る。他の顔料としては、例えば、防錆顔料、着色顔料(白色顔料を含む)、上記の体質顔料が挙げられる。なかでも、光輝性塗膜は、白色顔料(特には二酸化チタン)を含んでいてよい。鱗片状光輝材が塗膜と平行に配列し易くなる点で、他の顔料(特には二酸化チタン)の含有量は、光輝性顔料分散体の10質量%以下が好ましく、2質量%以下が好ましい。他の顔料(特には二酸化チタン)の含有量は、光輝性顔料分散体の0.01質量%以上であってよく、0.1質量%以上であってよい。
【0075】
光輝性塗膜は、必要に応じて種々の添加剤を含み得る。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、消泡剤、沈降防止剤、分散剤、表面調整剤が挙げられる。
【0076】
<クリヤー塗膜>
クリヤー塗膜は、着色塗膜および光輝性塗膜を保護する。クリヤー塗膜は特に限定されず、従来公知のクリヤー塗膜と同様の構成を有する。
【0077】
クリヤー塗膜の厚さは特に限定されない。耐擦傷性の観点から、クリヤー塗膜の厚さは、10μm以上が好ましく、15μm以上がより好ましい。白さおよび金属調の質感が損なわれ難い点で、クリヤー塗膜の厚さは、50μm以下であってよく、40μm以下であってよい。
【0078】
(第3樹脂)
クリヤー塗膜は、例えば、第3樹脂を含む。第3樹脂は、第3熱硬化性樹脂の硬化物を含むことが好ましい。第3樹脂は、具体的には、架橋性官能基およびベース樹脂により形成される第3熱硬化性樹脂が、硬化されることにより得られる。硬化には、第2硬化剤が用いられてもよい。
【0079】
第3熱硬化性樹脂としては、第1熱硬化性樹脂として例示されたのと同様の樹脂が挙げられる。第3樹脂のTgは特に限定されない。塗膜硬度および平滑性の観点から、第3樹脂のTgは、-40℃以上20℃以下が好ましく、-30℃以上10℃以下がより好ましい。
【0080】
(その他)
クリヤー塗膜は、透明性を損なわない範囲で、顔料を含み得る。顔料は特に限定されず、従来公知の顔料を1種あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。顔料の添加量は特に限定されない。顔料の添加量は、例えば、第3樹脂の固形分100質量部に対して、30質量部以下であり、0.01質量部以上10質量部以下であってよい。
【0081】
クリヤー塗膜は、必要に応じて種々の添加剤を含み得る。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、消泡剤、表面調整剤、ピンホール防止剤が挙げられる。
【0082】
図2は、本実施形態に係る自動車車体の一部を模式的に示す断面図である。自動車車体100は、被塗物10と複層塗膜20とを備える。複層塗膜20は、着色塗膜21、光輝性塗膜22およびクリヤー塗膜23をこの順に備える。光輝性塗膜22は、光輝材221を含む。
【0083】
図3は、本実施形態における光輝性塗膜の一部を模式的に示す断面図である。図示例において、光輝性塗膜22の表面の近似直線L
0と、光輝材221の表面の近似直線L
1との成す鋭角は、おおよそ0度である。つまり、光輝材221は、光輝性塗膜22の表面と平行である。
【0084】
B.自動車車体の製造方法
自動車車体は、被塗物上に、着色塗膜、光輝性塗膜およびクリヤー塗膜をこの順に形成することにより製造される。光輝性塗膜が形成される際、着色塗膜は硬化していてもよく、未硬化であってもよい。クリヤー塗膜が形成される際、光輝性塗膜は硬化していてもよく、未硬化であってもよい。なかでも、生産性、付着性および耐水性の観点から、各塗膜を硬化させることなく積層した後、加熱して、これら3つの未硬化の塗膜を同時に硬化させることが好ましい。
【0085】
本明細書において、硬化は、固化を含む概念である。すなわち、本明細書における硬化は、化学反応を伴うか否かにかかわらず、塗膜が流動性を失うことを意味する。具体的には、本明細書における硬化は、し、JIS K 5500(塗料用語)で規定されている「硬化乾燥」と同義である。すなわち、硬化は、a)試験片の中央を親指と人指し指とで強く挟んでみて、塗面に指紋によるへこみが付かず、塗膜の動きが感じられず、また、塗面を指先で急速に繰り返してこすってみて、すり跡が付かない状態(dry hard)であることをいう。本明細書における未硬化は、上記の硬化以外の状態であり、半硬化状態を含む。
【0086】
自動車車体は、好ましくは以下の方法により製造される。すなわち、自動車車体の製造方法は、被塗物上に、着色塗料を塗装して未硬化の着色塗膜を形成する工程と、未硬化の着色塗膜上に、光輝性顔料分散体を塗装して未硬化の光輝性塗膜を形成する工程と、未硬化の光輝性塗膜上に、クリヤー塗料を塗装して未硬化のクリヤー塗膜を形成する工程と、未硬化の着色塗膜、未硬化の光輝性塗膜および未硬化のクリヤー塗膜を硬化させて複層塗膜を得る工程と、を備える。
図4は、本実施形態に係る自動車車体の製造方法を示すフローチャートである。
【0087】
形成される複層塗膜の表面に対して45度の角度から照射した光I45を、正反射光に対して45度の角度で受光した分光反射率に基づく明度L*45は、70以上80以下である。上記の光I45を、正反射光に対して15度の角度で受光した分光反射率に基づく明度L*5と、上記の光I45を、正反射光に対して15度の角度で受光した分光反射率に基づく明度L*15との比:L*5/L*15は、1.2以上2.5以下である。複層塗膜の表面からみた光輝材の占有率は、10%以上30%以下である。複層塗膜の表面における粒子感Gは、1.0以上3.0以下である。
【0088】
(1)未硬化の着色塗膜を形成する工程(S11)
被塗物上に着色塗料(X)を塗装して、未硬化の着色塗膜を形成する。
【0089】
塗装方法は特に限定されない。塗装方法としては、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装が挙げられる。これらの方法と静電塗装とを組み合わせてもよい。なかでも、塗着効率の観点から、回転霧化式静電塗装が好ましい。回転霧化式静電塗装には、例えば、通称「マイクロ・マイクロベル(μμベル)」、「マイクロベル(μベル)」、「メタリックベル(メタベル)」などと呼ばれる回転霧化式の静電塗装機が用いられる。
【0090】
着色塗料(X)の塗布量は特に限定されない。着色塗料(X)は、例えば、硬化後の着色塗膜の厚さが15μm以上50μm以下になるように、塗布される。
【0091】
着色塗料(X)を塗装した後、予備乾燥(プレヒートとも称される)を行ってもよい。これにより、硬化工程において着色塗膜に含まれる溶媒の突沸が抑制されて、ワキの発生が抑制され易くなる。さらに、予備乾燥により、未硬化の着色塗膜と光輝性塗料とが混ざりあうことが抑制されて、混層が形成され難くなる。そのため、得られる複層塗膜の外観が向上し易くなる。
【0092】
予備乾燥の条件は特に限定されない。予備乾燥としては、例えば、20℃以上25℃以下の温度条件で15分以上30分以下放置する方法、50℃以上100℃以下の温度条件で30秒以上10分以下加熱する方法が挙げられる。
【0093】
<着色塗料(X)>
着色塗料(X)は、上記の白色顔料および第1熱硬化性樹脂を含む。着色塗料(X)は、必要に応じて、第1硬化剤、第1溶媒および各種添加剤等を含む。着色塗料(X)は、白色顔料、第1熱硬化性樹脂、さらには第1硬化剤および各種添加剤等の混合物を、第1溶媒で希釈することにより調製される。着色塗料(X)は、1液型塗料であってよく、2液型塗料等の多液型塗料であってよい。
【0094】
着色塗料(X)の粘度は特に限定されない。着色塗料(X)の20℃でB型粘度計により測定される粘度は、例えば、500cps/6rpm以上6000cps/6rpm以下である。
【0095】
着色塗料(X)の固形分含有率は特に限定されない。着色塗料(X)の固形分含有率は、30質量%以上70質量%以下が好ましい。着色塗料(X)の固形分は、着色塗料(X)から第1溶媒を除いた全成分である。
【0096】
(第1熱硬化性樹脂)
第1熱硬化性樹脂は、架橋性官能基およびベース樹脂により形成される。架橋性官能基およびベース樹脂の詳細は、上記の通りである。
【0097】
第1熱硬化性樹脂の量は特に限定されない。第1硬化剤が含まれる場合、第1熱硬化性樹脂の固形分質量は、第1熱硬化性樹脂の固形分質量と第1硬化剤の固形分質量との合計の60質量%以上90質量%以下が好ましく、70質量%以上85質量%以下がより好ましい。
【0098】
(第1硬化剤)
第1硬化剤は特に限定されず、第1熱硬化性樹脂に応じて適宜選択すればよい。第1硬化剤としては、例えば、アミノ樹脂、尿素樹脂、ポリイソシアネート化合物、エポキシ基含有化合物、カルボキシ基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物、ヒドラジド基含有化合物およびセミカルバジド基含有化合物が挙げられる。ポリイソシアネート化合物は、イソシアネート基がブロック剤でブロックされたブロック化ポリイソシアネート化合物を包含する。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。なかでも、得られる塗膜の諸性能およびコストの点で、アミノ樹脂およびポリイソシアネート化合物が好ましい。アミノ樹脂は、例えば、メラミン、ベンゾグアナミンまたは尿素等のアミノ化合物と、ホルムアルデヒドとを縮合させ、さらには低級1価アルコールでエーテル化することにより得られる。ポリイソシアネート化合物の詳細は、後述する。
【0099】
第1硬化剤の量は特に限定されない。硬化性の点で、第1硬化剤の固形分質量は、第1熱硬化性樹脂の固形分質量と第1硬化剤の固形分質量の合計の10質量%以上40質量%以下が好ましく、15質量%以上30質量%以下がより好ましく、15質量%以上25質量%以下が特に好ましい。
【0100】
(第1溶媒)
第1溶媒は特に限定されない。第1溶媒は水(脱イオン水)であってよく、有機溶媒であってよく、これらの組み合わせであってよい。なかでも、低VOC(Volatile Organic Compounds)の観点から、水が好ましい。第1溶媒に占める水の割合は、50質量%以上が好ましく、80質量%以上が好ましい。
【0101】
有機溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル系溶剤;
プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、メチルメトキシブタノール、エトキシプロパノール、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコール-t-ブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、メトキシブタノール、プロピレングリコールモノブチルエーテルなどのエーテル系溶媒;メタノール、エタノール、ブタノール、プロピルアルコールなどのアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;スワゾール、シェルゾール、ミネラルスピリットなどの脂肪族炭化水素系溶剤;キシレン、トルエン、ソルベッソ-100(S-100)、ソルベッソ-150(S-150)などの芳香族系溶剤が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0102】
第1溶媒の量は特に限定されず、着色塗料(X)の固形分および粘度等に応じて適宜設定される。第1溶媒は、例えば、着色塗料(X)の固形分が30質量%以上70質量%以下であって、着色塗料(X)の20℃でB型粘度計により測定される粘度が500cps/6rpm以上6000cps/6rpm以下になるように、添加される。
【0103】
第1溶媒として水を用いる場合、親水性基を有する第1熱硬化性樹脂を用いてもよい。第1熱硬化性樹脂の親水性基を中和してアルカリ塩とすることにより、第1熱硬化性樹脂は水溶性化もしくは水分散化される。親水性基としては、例えば、カルボキシ基、水酸基、メチロール基、アミノ基、スルホン酸基、ポリオキシエチレン結合が挙げられる。中和剤としては、例えば、水酸化ナトリウムおよびアミン化合物等のアルカリ性物質が挙げられる。
【0104】
第1熱硬化性樹脂は、第1熱硬化性樹脂の原料モノマーを界面活性剤や水溶性樹脂の存在下で乳化重合させることにより、水分散した状態で調製され得る。あるいは、第1熱硬化性樹脂を乳化剤により、水分散させてもよい。これらの場合、第1熱硬化性樹脂は親水性基を含まなくてもよく、あるいは、親水性基をわずかに含んでいればよい。
【0105】
(その他)
着色塗料(X)は、その他、着色塗膜に含まれるものとして例示された顔料、各種添加剤を含む。
【0106】
(2)未硬化の光輝性塗膜を形成する工程(S12)
未硬化の着色塗膜上に光輝性顔料分散体(Y)を塗装して、未硬化の光輝性塗膜を形成する。
【0107】
塗装方法は特に限定されない。塗装方法としては、例えば、着色塗料の塗装方法と同様の方法が挙げられる。なかでも、塗着効率の観点から、回転霧化式静電塗装が好ましい。
【0108】
光輝性顔料分散体(Y)の塗布量は特に限定されない。光輝性顔料分散体(Y)は、例えば、得られる複層塗膜における光輝性塗膜の厚さが0.05μm以上1.0μm以下になるように、塗布される。
【0109】
光輝性顔料分散体(Y)を塗装した後、予備乾燥を行ってもよい。これにより、光輝性塗膜の流動性が速やかに低下して、光輝材の流動も抑制され易くなる。予備乾燥の条件は特に限定されず、着色塗膜の予備乾燥と同様であってよい。
【0110】
<光輝性顔料分散体(Y)>
光輝性顔料分散体(Y)は、光輝材を含む。光輝性顔料分散体(Y)は、必要に応じて、粘性調整剤および第2溶媒等を含む。光輝性顔料分散体(Y)は、光輝材、さらには粘性調整剤および各種添加剤等の混合物を、第2溶媒で希釈することにより調製される。
【0111】
光輝性顔料分散体(Y)の粘度は特に限定されない。光輝性顔料分散体(Y)の粘度は、光輝材の配列の乱れが抑制され易くなる点で、20℃でB型粘度計により測定される粘度は、20cps/6rpm以上3000cps/6rpm以下が好ましい。
【0112】
光輝性顔料分散体(Y)の固形分含有率は、0.1質量%以上10.0質量%以下が好ましい。これにより、薄い光輝性塗膜を形成することが容易となる。光輝性顔料分散体(Y)の固形分含有率は、9.0質量%以下が好ましく、8.0質量%以下がより好ましく、7.5質量%以下が特に好ましい。光輝性顔料分散体(Y)の固形分は、光輝性顔料分散体(Y)から第2溶媒を除いた全成分である。
【0113】
なかでも、光輝性顔料分散体(Y)が水系である場合、すなわち、第2溶媒が水を50質量%以上含む場合、光輝性顔料分散体(Y)の固形分含有率は、3.5質量%以上が好ましく、4.0質量%以上がより好ましく、4.5質量%以上が特に好ましい。第2溶媒が水を50質量%以上含む場合、光輝性顔料分散体(Y)の固形分含有率は、8.5質量%以下が好ましく、8.0質量%以下がより好ましく、7.5質量%以下が特に好ましい。
【0114】
光輝性顔料分散体(Y)が溶剤系である場合、すなわち、第2溶媒が有機溶媒を50質量%以上含む場合、光輝性顔料分散体(Y)の固形分含有率は、1.0質量%以上が好ましく、2.0質量%以上がより好ましい。第2溶媒が有機溶媒を50質量%以上含む場合、光輝性顔料分散体(Y)の固形分含有率は、5.0質量%以下が好ましく、3.5質量%以下がより好ましい。
【0115】
(光輝材)
光輝材の詳細は、上記の通りである。
【0116】
光輝材の量は特に限定されない。光輝材の量は、例えば、光輝性顔料分散体(Y)の0.05質量%以上3.0質量%以下であってよく、0.2質量%以上1.5質量%以下であってよく、0.3質量%以上0.8質量%以下であってよい。これにより、光輝材の上記占有率が10%以上30%以下になり易い。
【0117】
(粘性調整剤)
粘性調整剤の詳細は、上記の通りである。
【0118】
粘性調整剤の量は、光輝性顔料分散体(Y)の1質量%以上50質量%以下が好ましく、10質量%以上30質量%以下がより好ましい。これにより、光輝材の配列の乱れが抑制され易くなる。
【0119】
(第2溶媒)
第2溶媒は特に限定されない。第2溶媒は、水であってよく、有機溶媒であってよく、これらの組み合わせであってよい。なかでも、低VOCの観点から、水が好ましい。第2溶媒に占める水の割合は、50質量%以上が好ましく、80質量%以上が好ましい。第2溶媒に用いられる有機溶媒としては、第1溶媒として例示されたのと同様の有機溶媒が挙げられる。
【0120】
第2溶媒の量は特に限定されず、光輝性顔料分散体(Y)の固形分および粘度等に応じて適宜設定される。第2溶媒は、例えば、光輝性顔料分散体(Y)の固形分が0.1質量%以上10.0質量%以下であって、光輝性顔料分散体(Y)の20℃でB型粘度計により測定される粘度が20cps/6rpm以上3000cps/6rpm以下になるように、添加される。
【0121】
(その他)
光輝性顔料分散材(Y)は、その他、光輝性塗膜に含まれるものとして例示された各種添加剤を含む。
【0122】
例えば、分散剤は、光輝材の分散性を高めるために添加される。分散剤は特に限定されず、第2溶媒および光輝材等に応じて適宜選択される。
【0123】
光輝性顔料分散体(Y)が水系である場合、分散剤としては、例えば、リン酸塩、ポリリン酸塩等の無機型分散剤;ポリカルボン酸系ポリエチレングリコール系、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合系等の高分子型分散剤;アルキルスルホン酸系、四級アンモニウム系、高級アルコールアルキレンオキサイド系等の低分子型分散剤が用いられる。リン酸塩としては、例えば、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウムおよびリン酸ナトリウムが挙げられる。
【0124】
光輝性顔料分散体(Y)が溶剤系である場合、分散剤としては、例えば、ポリカルボン酸部分アルキルエステル系、ポリエーテル系、ポリアルキレンポリアミン系等の高分子型分散剤が用いられる。
【0125】
分散剤の量は特に限定されない。分散剤の量は、例えば、光輝性顔料分散体(Y)の0.01質量%以上3質量%以下であってよく、0.1質量%以上1.0質量%以下であってよい。
【0126】
表面調整剤は、光輝性塗膜の表面張力を制御するために添加される。これにより、光輝材は塗膜と平行に配列し易くなる。さらに、層間の密着性が向上する。
【0127】
表面調整剤は特に限定されない。表面調整剤としては、例えば、シリコーン系、アクリル系、ビニル系、フッ素系の表面調整剤が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。なかでも、光輝性塗膜の光輝性および耐水性等の観点から、シリコーン系の表面調整剤が好ましい。シリコーン系の表面調整剤としては、例えば、ポリジメチルシロキサンおよびこれを変性した変性シリコーンが挙げられる。変性シリコーンとしては、例えば、ポリエーテル変性体、アクリル変性体、ポリエステル変性体が挙げられる。
【0128】
市販されている表面調整剤としては、例えば、BYKシリーズ(ビックケミー社製)、Tegoシリーズ(エヴォニック社製)、グラノールシリーズ、ポリフローシリーズ(いずれも共栄社化学社製)、ディスパロンシリーズ(楠本化成社製)が挙げられる。
【0129】
表面調整剤の量は特に限定されない。表面調整剤の量は、光輝性顔料分散体(Y)の0.1質量%以上10質量%以下が好ましく、0.2質量%以上8質量%以下がより好ましく、0.4質量%以上6質量%以下が特に好ましい。表面調整剤がこの範囲であると、光輝性塗膜の表面張力が低下して、光輝性顔料分散体(Y)の未硬化の着色塗膜に対する濡れ性が向上し易くなる。
【0130】
(3)未硬化のクリヤー塗膜を形成する工程(S13)
光輝性塗膜上にクリヤー塗料(Z)を塗装して、未硬化のクリヤー塗膜を形成する。
【0131】
塗装方法は特に限定されない。塗装方法としては、例えば、着色塗料の塗装方法と同様の方法が挙げられる。なかでも、塗着効率の観点から、回転霧化式静電塗装が好ましい。
【0132】
クリヤー塗料(Z)の塗布量は特に限定されない。クリヤー塗料(Z)は、例えば、硬化後のクリヤー塗膜の厚さが25μm以上45μm以下になるように、塗布される。
【0133】
<クリヤー塗料(Z)>
クリヤー塗料(Z)は特に限定されず、従来公知のクリヤー塗料が使用できる。クリヤー塗料(Z)の形態も特に限定されない。クリヤー塗料(Z)は、粉体であってよく、水系であってよく、溶剤系であってよい。
【0134】
クリヤー塗料(Z)は、上記の第3熱硬化性樹脂を含む。クリヤー塗料(Z)は、必要に応じて、第2硬化剤、第3溶媒および各種添加剤等を含む。クリヤー塗料(Z)は、第3熱硬化性樹脂、第2硬化剤および各種添加剤等の混合物を、第3溶媒で希釈することにより調製される。クリヤー塗料(Z)は、1液型塗料であってよく、2液型塗料等の多液型塗料であってよい。
【0135】
クリヤー塗料(Z)の粘度は特に限定されない。クリヤー塗料(Z)の20℃でB型粘度計により測定される粘度は、例えば、500cps/6rpm以上6000cps/6rpm以下である。
【0136】
クリヤー塗料(Z)の固形分は特に限定されない。クリヤー塗料(Z)の固形分は、例えば、40質量%以上60質量%以下である。
【0137】
(第3熱硬化性樹脂)
第3熱硬化性樹脂は、架橋性官能基およびベース樹脂により形成される。架橋性官能基およびベース樹脂の詳細は、上記の通りである。
【0138】
1液型のクリヤー塗料(Z)は、第3熱硬化性樹脂として、例えば、ポリエポキシドおよびポリ酸を含む。具体的には、1液型のクリヤー塗料(Z)は、第3熱硬化性樹脂として、酸無水物基を含有するアクリル樹脂(1)と、カルボキシ基を含有するポリエステル樹脂(2)と、水酸基およびエポキシ基を含有するアクリル樹脂(3)とを含む。貯蔵安定性の観点から、アクリル樹脂(1)の酸無水物基は、低分子量のアルコールなどによってハーフエステル化されていてもよい。以下、このような第3熱硬化性樹脂を、酸エポキシ硬化系樹脂組成物と称す。酸エポキシ硬化系樹脂組成物は、クリヤー塗料(Z)の固形分含有率を高くし易い。さらに、酸エポキシ硬化系樹脂組成物によれば、耐酸性に優れたクリヤー塗膜が得られ易い。
【0139】
酸エポキシ硬化系樹脂組成物は、上記の3種類のポリマーが相互に反応することにより硬化が進行する。酸エポキシ硬化系樹脂組成物の硬化機構は以下の通りである。まず、加熱により、アクリル樹脂(1)中の酸無水物基と、ポリエステル樹脂(2)およびアクリル樹脂(3)中の水酸基とが反応して、カルボキシ基が形成される。このカルボキシ基およびポリエステル樹脂(2)中のカルボキシ基と、アクリル樹脂(3)中に存在するエポキシ基とが反応して、架橋点が形成される。この架橋点を起点として、架橋反応が生じる。
【0140】
アクリル樹脂(1)、ポリエステル樹脂(2)およびアクリル樹脂(3)の配合は特に限定されない。酸エポキシ硬化系樹脂組成物の配合は、当業者に周知の量および方法で行われる。
【0141】
なかでも、アクリル樹脂(1)およびポリエステル樹脂(2)が有するカルボキシ基と、アクリル樹脂(3)が有するエポキシ基とのモル比は、1/1.4以上1/0.6以下が好ましく、1/1.2以上1/0.8以下がより好ましい。これにより、クリヤー塗料(Z)の硬化性が向上し易い。さらに、黄変し難いクリヤー塗膜が得られ易い。
【0142】
アクリル樹脂(1)が有するカルボキシ基と、ポリエステル樹脂(2)およびアクリル樹脂(3)が有する水酸基とのモル比は、1/2.0以上1/0.5以下が好ましく、1/1.5以上1/0.7以下がより好ましい。これにより、クリヤー塗料(Z)の硬化性が向上し易い。さらに、耐水性に優れるクリヤー塗膜が得られ易い。
【0143】
2液型のクリヤー塗料(Z)は、塗膜の物性が向上し易い点で好ましい。2液型のクリヤー塗料(Z)は、分離された第3熱硬化性樹脂と第2硬化剤とを含む。第3熱硬化性樹脂と第2硬化剤とは、使用の直前に混合される。第3熱硬化性樹脂/第2硬化剤の組み合わせとして、例えば、カルボキシ基含有樹脂/エポキシ基含有樹脂、水酸基含有樹脂/ポリイソシアネート化合物、水酸基含有樹脂/ブロックイソシアネート化合物、水酸基含有樹脂/メラミン樹脂が挙げられる。これらは、特にクリヤー塗膜を形成するのに適している。
【0144】
なかでも、塗膜の物性が向上し易い点で、2液型のクリヤー塗料(Z)は、第3熱硬化性樹脂として水酸基含有樹脂を含み、第2硬化剤としてポリイソシアネート化合物を含むことが好ましい。
【0145】
水酸基含有樹脂としては、具体的には、水酸基含有アクリル樹脂、水酸基含有ポリエステル樹脂、水酸基含有ポリエーテル樹脂、水酸基含有ポリウレタン樹脂が挙げられる。なかでも、水酸基含有アクリル樹脂および水酸基含有ポリエステル樹脂が好ましく、水酸基含有アクリル樹脂が特に好ましい。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0146】
水酸基含有アクリル樹脂の水酸基価は特に限定されない。塗膜の耐擦り傷性および耐水性の観点から、水酸基含有アクリル樹脂の水酸基価は、80mgKOH/g以上200mgKOH/g以下が好ましく、100mgKOH/g以上180mgKOH/g以下がよりに好ましい。
【0147】
水酸基含有アクリル樹脂の重量平均分子量は特に限定されない。塗膜の耐酸性および平滑性の観点から、水酸基含有アクリル樹脂の重量平均分子量は、2500以上40000以下が好ましく、5000以上30000以下がより好ましい。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフで測定したクロマトグラムから、標準ポリスチレンの分子量を基準にして算出できる。ゲルパーミエーションクロマトグラフとしては、例えば、HLC8120GPC(東ソー社製)が用いられる。カラムとしては、TSKgel G-4000HXL、TSKgel G-3000HXL、TSKgel G-2500HXL、TSKgel G-2000HXL(いずれも東ソー(株)社製)が用いられる。クロマトグラフィーは、例えば、移動相としてテトラヒドロフランを、検出器として示差屈折率検出器(RI)を用いて、測定温度40℃、流速1cc/分の条件下で行われる。
【0148】
(第2硬化剤)
第2硬化剤は特に限定されず、第3熱硬化性樹脂に応じて適宜選択すればよい。第2硬化剤としては、第1硬化剤として例示されたのと同様の硬化剤が挙げられる。
【0149】
例えば、ポリイソシアネート化合物は、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有する。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、分子中にイソシアネート基に結合していない芳香環を有する脂肪族ポリイソシアネート(芳香脂肪族ポリイソシアネート)、芳香族ポリイソシアネート、これらポリイソシアネートの誘導体などを挙げることができる。
【0150】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-又は2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトヘキサン酸メチル(慣用名:リジンジイソシアネート)などの脂肪族ジイソシアネート;2,6-ジイソシアナトヘキサン酸2-イソシアナトエチル、1,6-ジイソシアナト-3-イソシアナトメチルヘキサン、1,4,8-トリイソシアナトオクタン、1,6,11-トリイソシアナトウンデカン、1,8-ジイソシアナト-4-イソシアナトメチルオクタン、1,3,6-トリイソシアナトヘキサン、2,5,7-トリメチル-1,8-ジイソシアナト-5-イソシアナトメチルオクタンなどの脂肪族トリイソシアネートが挙げられる。
【0151】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、4-メチル-1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート(慣用名:水添TDI)、2-メチル-1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-もしくは1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(慣用名:水添キシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物、メチレンビス(4,1-シクロヘキサンジイル)ジイソシアネート(慣用名:水添MDI)、ノルボルナンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)などの脂環族ジイソシアネート;1,3,5-トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5-トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2-(3-イソシアナトプロピル)-2,5-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2-(3-イソシアナトプロピル)-2,6-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3-(3-イソシアナトプロピル)-2,5-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-3-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-3-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)-ヘプタン、6-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタンなどの脂環族トリイソシアネートが挙げられる。
【0152】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、メチレンビス(4,1-フェニレン)ジイソシアネート(慣用名:MDI)、1,3-もしくは1,4-キシリレンジイソシアネート又はその混合物、ω,ω'-ジイソシアナト-1,4-ジエチルベンゼン、1,3-又は1,4-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物などの芳香脂肪族ジイソシアネート;1,3,5-トリイソシアナトメチルベンゼンなどの芳香脂肪族トリイソシアネートが挙げられる。
【0153】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート(慣用名:2,4-TDI)もしくは2,6-トリレンジイソシアネート(慣用名:2,6-TDI)もしくはその混合物、4,4'-トルイジンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;トリフェニルメタン-4,4',4''-トリイソシアネート、1,3,5-トリイソシアナトベンゼン、2,4,6-トリイソシアナトトルエンなどの芳香族トリイソシアネート;4,4'-ジフェニルメタン-2,2',5,5'-テトライソシアネートなどの芳香族テトライソシアネートが挙げられる。
【0154】
ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネートのダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、オキサジアジントリオン、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)、クルードTDIが挙げられる。
【0155】
ポリイソシアネート化合物は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0156】
なかでも、付着性および相溶性等の観点から、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)が好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートの誘導体がより好ましい。
【0157】
ポリイソシアネート化合物として、上記のポリイソシアネートまたはその誘導体のプレポリマーを使用してもよい。プレポリマーは、ポリイソシアネートまたはその誘導体と、これと反応し得る化合物とを、イソシアネート基過剰の条件で反応させることにより得られる。ポリイソシアネートまたはその誘導体と反応し得る化合物は、水酸基、アミノ基などの活性水素基を有する化合物である。上記化合物としては、例えば、多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂、アミン、水が挙げられる。
【0158】
ポリイソシアネート化合物として、ブロック化ポリイソシアネート化合物を使用してもよい。ブロック化ポリイソシアネート化合物は、上記のポリイソシアネートまたはその誘導体中のイソシアネート基をブロック剤でブロックすることにより得られる。
【0159】
ブロック剤としては、例えば、フェノール化合物、ラクタム化合物、アルコール、エーテル、オキシム化合物、活性メチレン基を有する化合物、メルカプタン化合物、酸アミド化合物、イミド化合物、アミン化合物、イミダゾール化合物、尿素化合物、カルバミン酸エステル、イミン化合物、亜硫酸塩、アゾール化合物およびケトン化合物が挙げられる。
【0160】
フェノール化合物としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、エチルフェノール、ヒドロキシジフェニル、ブチルフェノール、イソプロピルフェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノールおよびヒドロキシ安息香酸メチルが挙げられる。
【0161】
ラクタム化合物としては、例えば、ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタムおよびβ-プロピオラクタムが挙げられる。
【0162】
アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ラウリルアルコール、ベンジルアルコール、グリコール酸、グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、グリコール酸ブチル、乳酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチロール尿素、メチロールメラミン、ジアセトンアルコール、2-ヒドロキシエチルアクリレートおよび2-ヒドロキシエチルメタクリレートが挙げられる。
【0163】
エーテルとしては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルおよびメトキシメタノールが挙げられる。
【0164】
オキシム化合物としては、例えば、ホルムアミドオキシム、アセトアミドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシムおよびシクロヘキサンオキシムが挙げられる。
【0165】
活性メチレン基を有する化合物としては、例えば、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチルおよびアセチルアセトンが挙げられる。
【0166】
メルカプタン化合物としては、例えば、ブチルメルカプタン、t-ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、2-メルカプトベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノールおよびエチルチオフェノールが挙げられる。
【0167】
酸アミド化合物としては、例えば、アセトアニリド、アセトアニシジド、アセトトルイド、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ステアリン酸アミドおよびベンズアミドが挙げられる。
【0168】
イミド化合物としては、例えば、コハク酸イミド、フタル酸イミドおよびマレイン酸イミドが挙げられる。
【0169】
アミン化合物としては、例えば、ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N-フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミンおよびブチルフェニルアミンが挙げられる。
【0170】
イミダゾール化合物としては、例えば、イミダゾールおよび2-エチルイミダゾールが挙げられる。
【0171】
尿素化合物としては、例えば、尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素およびジフェニル尿素が挙げられる。
【0172】
カルバミン酸エステルとしては、例えば、N-フェニルカルバミン酸フェニルが挙げられる。
【0173】
イミン化合物としては、例えば、エチレンイミンおよびプロピレンイミンが挙げられる。
【0174】
亜硫酸塩としては、例えば、重亜硫酸ソーダおよび重亜硫酸カリが挙げられる。
【0175】
アゾール化合物としては、例えば、ピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール、3-メチルピラゾール、4-ベンジル-3,5-ジメチルピラゾール、4-ニトロ-3,5-ジメチルピラゾール、4-ブロモ-3,5-ジメチルピラゾール、3-メチル-5-フェニルピラゾール等のピラゾール又はピラゾール誘導体;イミダゾール、ベンズイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール等のイミダゾールまたはイミダゾール誘導体;2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾリン誘導体が挙げられる。
【0176】
ケトン化合物としては、例えば、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトンが挙げられる。
【0177】
市販されているブロックイソシアネート化合物としては、例えば、デュラネート(ブロック化ヘキサメチレンジイソシアネート)シリーズ(旭化成社製)、スミジュールBL3175、デスモジュールBL3272MPA、デスモジュールBL3475 BA/SN、デスモジュールBL3575/1 MPA/SN、デスモジュールBL4265 SN、デスモジュールBL5375 MPA/SN、デスモジュールVP LS2078/2(いずれもバイエル社製)が挙げられる。
【0178】
水酸基含有樹脂の水酸基とポリイソシアネート化合物のイソシアネート基との当量比(=OH/NCO)は特に限定されない。塗膜の硬化性および耐擦傷性等の観点から、上記当量比(=OH/NCO)は、0.5以上2.0以下が好ましく、0.8以上1.5以下がより好ましい。
【0179】
(第3溶媒)
クリヤー塗料(Z)は、必要に応じて、第3溶媒を含む。
第3溶媒は特に限定されない。第3溶媒は、水であってよく、有機溶媒であってよく、これらの組み合わせであってよい。なかでも、低VOCの観点から、水が好ましい。第3溶媒に占める水の割合は、50質量%以上が好ましく、80質量%以上が好ましい。第3溶媒に用いられる有機溶媒としては、第1溶媒として例示されたのと同様の有機溶媒が挙げられる。
【0180】
第3溶媒の量は特に限定されず、クリヤー塗料(Z)の固形分および粘度等に応じて適宜設定される。第3溶媒は、例えば、クリヤー塗料(Z)の固形分が30質量%以上70質量%以下になるように、添加される。
【0181】
(4)硬化工程(S14)
未硬化の着色塗膜、未硬化の光輝性塗膜および未硬化のクリヤー塗膜を一度に硬化させる。各塗膜は加熱により硬化し得る。
【0182】
加熱条件は、各塗膜の組成等に応じて適宜設定される。加熱温度は、例えば70℃以上150℃以下であり、80℃以上140℃以下であってよい。加熱時間は、例えば10分以上40分以下であり、20分以上30分以下であってよい。加熱装置としては、例えば、熱風炉、電気炉、赤外線誘導加熱炉等の乾燥炉が挙げられる。
【0183】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものである。
【0184】
[評価]
(1)明度L*45、CL*45
変角色差計(Gonio-Spectrophotometer GSP-1、株式会社村上色材研究所製)を用いて、塗膜に対して45度の角度から照射した光I45を、正反射光に対して45度の角度で受光した分光反射率を測定した。この分光反射率から、L*a*b*表色系における明度L*45またはCL*45を算出した。異なる5つの試料の平均値を、明度L*45またはCL*45とした。
【0185】
(2)L*5/L*15
変角色差計(Gonio-Spectrophotometer GSP-1、株式会社村上色材研究所製)を用いて、塗膜に対して45度の角度から照射した光I45を、正反射光に対して5度および15度の角度で受光した分光反射率をそれぞれ測定した。この分光反射率から、L*a*b*表色系における明度L*5および明度L*15を算出した。異なる5つの試料の平均値を、明度L*5および明度L*15とした。明度L*5を明度L*15で除して、L*5/L*15を求めた。
【0186】
(3)粒子感G
マルチアングル測色器(BYK-mac i、BYK-Gardner社製)を用いて、粒子感Gを取得した。異なる5つの試料の平均値を、粒子感Gとした。
【0187】
(4)光輝性塗膜の厚さ
電磁式膜厚計(FISCHERSCOPE(登録商標)MMS PC2、株式会社フィッシャー・インストルメンツ製)を用いて、光輝性塗膜の厚さを測定した。異なる5つの試料の平均値を、光輝性塗膜の厚さとした。
【0188】
(5)占有率
複層塗膜をその法線方向から工業用顕微鏡(NICON社製、ECLIPSE LV150N)で撮像して、光輝材に対応する領域とそれ以外の領域とを画像処理ソフトにより二値化した。観察視野の面積を100%として、光輝材の面積割合を算出した。撮像における倍率は200倍とした。観察視野は、タテ480nm、ヨコ720nmとした。異なる5つの観察視野における平均値を、占有率とした。
【0189】
(6)Si15値
マルチアングル測色器(BYK-mac i、BYK-Gardner社製)を用いて、複層塗膜の法線方向に対して15度傾いた方向から照射した光を、複層塗膜の法線方向から撮像し解析することにより、Si15値を取得した。異なる5つの試料の平均値を、Si15値とした。
【0190】
(7)鱗片状光輝材の配向性
複層塗膜の断面を工業用顕微鏡(NICON社製、ECLIPSE LV150N)で撮像した。観察視野内における光輝性塗膜の表面と鱗片状光輝材との成す角度θを、上記の方法によりそれぞれ算出した。角度θが30度以下である場合を、光輝性塗膜の表面と鱗片状光輝材とが平行であるとした。
【0191】
(8)光輝材の配置
複層塗膜の断面を工業用顕微鏡(NICON社製、ECLIPSE LV150N)で撮像した。観察視野内における重複光輝材の個数を、上記の方法によりそれぞれ算出した。
【0192】
[実施例1]
(I)被塗物の準備
被塗物として、硬化電着塗膜を備えるリン酸亜鉛処理鋼板を準備した。硬化電着塗膜は、日本ペイント社製のカチオン電着塗料組成物である「パワーニクス」を、乾燥膜厚が20μmとなるようにリン酸亜鉛処理鋼板に電着塗装した後、160℃で30分間加熱することにより形成した。
【0193】
(II)塗料の準備
(II-1)着色塗料の準備
以下のようにして製造された白色顔料分散ペースト130.5部、水酸基含有アクリル樹脂エマルション樹脂73.9部(樹脂固形分量で30部)および水酸基含有ポリエステル樹脂60部(樹脂固形分量で30部)と、水酸基含有ポリウレタン樹脂(日本ペイントオートモーティブコーティングス社製)を100部(樹脂固形分量で20部)と、第1硬化剤としてサイメル327(日本サイテックインダストリーズ社製、メラミン樹脂)22.2部とを混合した。その後、混合物にイオン交換水40部を加えてさらに混合した。続いて、混合物に、粘性調整剤としてビスカレックスHV-30(BASF社製、ポリカルボン酸系粘性調整剤、不揮発分30%)3.3部を加えて、さらに混合および撹拌し、着色塗料(X-1)を得た。
【0194】
(白色顔料分散ペーストの製造)
分散剤としてDisperbyk 190(ビックケミー社製、ノニオン・アニオン系分散剤)4.5部、消泡剤としてBYK-011(ビックケミー社製)0.5部、イオン交換水22.9部、二酸化チタン72.1部を予備混合した後、ペイントコンディショナー中でガラスビーズ媒体を加え、二酸化チタンの二次粒子径が5μm以下となるまで室温で混合し、顔料分散ペーストを得た。
【0195】
(水酸基含有アクリル樹脂エマルションの製造)
攪拌機、温度計、滴下ロート、還流冷却器および窒素導入管などを備えた通常のアクリル系樹脂エマルション製造用の反応容器に、水445部およびニューコール293(日本乳化剤社製)5部を仕込み、これらを攪拌しながら75℃に昇温した。メタクリル酸メチル145部、スチレン50部、アクリル酸エチル220部、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル70部およびメタクリル酸15部を含むモノマー混合物、水240部およびニューコール293(日本乳化剤社製)30部の混合物を、ホモジナイザーを用いて乳化して、モノマープレ乳化液を得た。上記反応容器内を攪拌しながら、モノマープレ乳化液を3時間にわたって滴下した。モノマープレ乳化液の滴下と併行して、重合開始剤としてAPS(過硫酸アンモニウム)1部を水50部に溶解した水溶液を、上記反応容器中に上記モノマープレ乳化液の滴下終了時まで均等に滴下した。モノマープレ乳化液の滴下終了後、さらに80℃で1時間、反応を継続した。反応物を冷却した後、上記反応容器にジメチルアミノエタノール2部を水20部に溶解した水溶液を投入し、固形分含有率40.6質量%の水酸基含有アクリル樹脂エマルションを得た。
【0196】
得られた水酸基含有アクリル樹脂エマルションの固形分について、酸価は20mgKOH/g、水酸基価は60mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)は30℃であった。固形分含有率は、JIS K 5601-1-2 加熱残分測定方法に従って測定した。
【0197】
(水酸基含有ポリエステル樹脂の製造)
反応器にイソフタル酸25.6部、無水フタル酸22.8部、アジピン酸5.6部、トリメチロールプロパン19.3部、ネオペンチルグリコール26.7部、ε-カプロラクトン17.5部およびジブチルスズオキサイド0.1部を加え、これらを混合撹拌しながら170℃まで昇温した。その後3時間かけて反応物を220℃まで昇温しつつ、酸価8となるまで縮合反応により生成する水を除去した。次いで、反応器に無水トリメリット酸7.9部を加え、150℃で1時間反応させ、酸価が40のポリエステル樹脂を得た。さらに、ポリエステル樹脂を100℃まで冷却した後、ブチルセロソルブ11.2部を加え均一になるまで撹拌した。続いて、ポリエステル樹脂を60℃まで冷却し、その後、イオン交換水98.8部およびジメチルエタノールアミン5.9部を加えた。これにより、固形分50質量%の水酸基含有ポリエステル樹脂を得た。水酸基含有ポリエステル樹脂の固形分について、酸価は40mgKOH/g、水酸基価は110mgKOH/g、数平均分子量は2870、ガラス転移温度(Tg)は-3℃であった。上記ガラス転移温度(Tg)は、セイコーインスツル(SII)社製の示差走査熱量計(DSC220C)を用いて測定した。測定条件は、試料量10mg、上昇速度10℃/分、測定温度-20℃から100℃であった。
【0198】
(II-2)光輝性顔料分散体の準備
CAB1.05部、セルロースナノファイバー0.16部、鱗片状アルミニウム粒子A0.16部、アルミ溶解シンナー6.55部、二酸化チタン0.51部、アクリル樹脂1.49部、熱硬化性樹脂1.08部、リン酸0.42部、アミン0.72部、消泡剤0.51部に、全量が100部になるように脱イオン水を加えて撹拌し、光輝性顔料分散体(Y-1)を得た。
【0199】
鱗片状アルミニウム粒子Aとしては、商品名「EMR-D4670」、東洋アルミ社製、厚さ0.16μm、平均粒子径8μmを用いた。光輝性顔料分散体(Y-1)の固形分含有率は、5.5%であった。
【0200】
(II-3)クリヤー塗料の準備
クリヤー塗料(Z-1)として、PUエクセルO-2100(日本ペイント社製、2液クリヤー塗料)を準備した。
【0201】
(III)未硬化の着色塗膜の形成工程
被塗物上に、着色塗料(X-1)をメタベルを用いて塗装した。
【0202】
(IV)未硬化の光輝性塗膜の形成工程
未硬化の着色塗膜上に、光輝性顔料分散体(Y-1)をメタベルを用いて塗装した。
【0203】
(V)未硬化のクリヤー塗膜の形成工程
未硬化の光輝性塗膜上に、クリヤー塗料(Z-1)をマイクロマイクロベルを用いて塗装した。
【0204】
(VI)硬化工程
クリヤー塗膜の形成工程(V)の後、140℃で20分間加熱して、複層塗膜A1を備える被塗物を得た。複層塗膜A1において、着色塗膜の厚さは30μmであり、着色塗膜の白黒隠蔽膜厚は60μmであった。光輝性塗膜の厚さは0.5μmであった。クリヤー塗膜の厚さは30μmであった。
【0205】
(VII)評価
複層塗膜A1に対して、上記の評価を行った。評価(1)~(5)の結果を表1に示す。評価(6)に関して、複層塗膜A1のSi15値は3.3であった。複層塗膜A1の評価(7)に関して、鱗片状光輝材うちの80%以上が、光輝性塗膜の表面と平行に配列していた。複層塗膜A1の評価(8)に関して、鱗片状光輝材うちの80%以上が、他の鱗片状光輝材と重なっていなかった。
【0206】
[比較例1]
着色塗料としてカーボンブラックを用いたこと以外、実施例1と同様にして、複層塗膜B1を備える被塗物を得て、評価(1)~(5)を行った。結果を表1に示す。
【0207】
[比較例2]
光輝性塗膜の形成工程(IV)において、得られる複層塗膜における光輝性塗膜の膜厚が2μmになるように、光輝性顔料分散体を塗布したこと以外、実施例1と同様にして、複層塗膜B2を備える被塗物を得て、評価(1)~(5)を行った。結果を表1に示す。
【0208】
[比較例3]
光輝性顔料分散体の準備(II-2)において、鱗片状アルミニウム粒子Aに替えて、マイカ(厚さ1μm、平均粒子径17μm)を用いたこと以外、実施例1と同様にして、複層塗膜B3を備える被塗物を得て、評価(1)~(5)を行った。結果を表1に示す。
【0209】
[比較例4]
光輝性顔料分散体の準備(II-2)において、鱗片状アルミニウム粒子Aに替えて、鱗片状アルミニウム粒子B(商品名「6320N」、東洋アルミ社製、厚さ0.5μm、平均粒子径15μm)を用いたこと以外、実施例1と同様にして、複層塗膜B4を備える被塗物を得て、評価(1)~(5)を行った。結果を表1に示す。
【0210】
[比較例5]
光輝性顔料分散体の準備(II-2)において、光輝性顔料分散体の固形分含有率が12%になるように脱イオン水を加えたこと以外、実施例1と同様にして、複層塗膜B5を備える被塗物を得て、評価(1)~(5)を行った。結果を表1に示す。
【0211】
[比較例6]
光輝性顔料分散体の準備(II-2)において、鱗片状アルミニウム粒子Aを0.32部配合したこと以外、実施例1と同様にして、複層塗膜B6を備える被塗物を得て、評価(1)~(5)を行った。結果を表1に示す。
【0212】
【0213】
[実施例2]
以下の着色塗料(X-2)、光輝性顔料分散体(Y-2)およびクリヤー塗料(Z-2)を用いたこと以外、実施例1と同様にして、複層塗膜A2を備える被塗物を得て、評価した。評価(1)~(5)の結果を表1に示す。評価(6)に関して、複層塗膜A2のSi15値は3.3であった。複層塗膜A2の評価(7)に関して、鱗片状光輝材うちの80%以上が、光輝性塗膜の表面と平行に配列していた。複層塗膜A2の評価(8)に関して、鱗片状光輝材うちの80%以上が、他の鱗片状光輝材と重なっていなかった。
【0214】
複層塗膜A2において、着色塗膜の厚さは30μmであり、着色塗膜の白黒隠蔽膜厚は60μmであった。光輝性塗膜の厚さは0.5μmであった。クリヤー塗膜の厚さは30μmであった。
【0215】
(II-1)着色塗料の準備
ステンレスビーカーに、以下のようにして製造されたエポキシ基を有するアクリル樹脂7.59部、ダイヤナール HR-2077(三菱レイヨン社製、アクリル樹脂)13.81部、ダイヤナール HR-2025(三菱レイヨン社製、アクリル樹脂)15.45部、ユーバン 20N60(三井サイテック社製、ブチル化メラミン樹脂)3.89部、ユーバン 226(ユーバン 225)(三井化学社製、ブチル化メラミン樹脂)3.89部、マイコート506(三井サイテック社製、ブチル化メラミン樹脂)0.99部、スミジュール BL-3175(住化バイエルウレタン社製、ブロックタイプポリイソシアネート)1.91部、デュラネート MF-K60X(旭化成ケミカルズ社製、HDIブロックポリイソシアネート)2部、TINUVIN 384-2(BASFジャパン社製、紫外線吸収剤)0.49部、CHISORB 523(Double Bond Chemical Ind.,Co.,Ltd.社製、光安定剤)0.49部、ディスパロン 4200-10(楠本化成社製、ダレ止・沈降防止剤、酸化ポリエチレン)0.49部、ディスパロン 4200-20(楠本化成社製、ダレ止・沈降防止剤、酸化ポリエチレン)0.02部、BYK-110(ビックケミー・ジャパン社製、顔料分散剤)0.04部、BYK-182(ビックケミー・ジャパン社製、顔料分散剤)0.16部、フローレン AC-300(共栄社化学社製、アルキルビニルエーテル重合物・アクリル酸アルキル重合物・メタクリル酸アルキル重合物の混合物)0.05部、ジ-2-エチルヘキシルリン酸0.37部、白色顔料、トルエン/S-100/S-150/エチルエトキシプロピオネート(質量比:62/3/1/3)から構成される溶媒を加えて、ディスパーで混合、撹拌し、着色塗料(X-2)を得た。
【0216】
(エポキシ基を有するアクリル樹脂の製造)
還流冷却器、滴下ロート、温度計、撹拌翼を備えたセパラブルフラスコにソルベッソ100(S-100)を520部および酢酸ブチル50部を仕込み、窒素雰囲気下で120℃に昇温した。これにスチレン250部、アクリル酸n-ブチル60部、メタクリル酸イソブチル60部、アクリル酸イソボロニル173部、アクリル酸2-ヒドロキシエチル103部、メタクリル酸グリシジル354部、カヤエステル-Oを28.5部および酢酸ブチル50部からなるモノマー混合溶液を、滴下ロートを通じて、3時間かけて等速で滴下した。滴下終了の後、さらに30分間、窒素雰囲気および温度をそのまま維持して、撹拌した。その後、上記フラスコに、酢酸ブチル40部およびカヤエステル-O99部の混合溶液を、滴下ロートを通じて、30分かけて等速で滴下した。滴下終了の後、さらに2時間、窒素雰囲気および温度をそのまま維持して、撹拌した。その後、上記フラスコにS-10020部および酢酸ブチル9部を加え、アクリル樹脂を得た。得られたアクリル樹脂の水酸基価は50mgKOH/g、エポキシ基当量405g/eq、数平均分子量は2150であった。
【0217】
(II-2)光輝性顔料分散体の準備
CAB0.41部、アクリル樹脂0.8部、熱硬化性樹脂0.16部、ブロック化ポリイソシアネート0.1部、リン酸0.1、鱗片状アルミニウム粒子A0.5部、アルミ溶解シンナー19.84部、界面活性剤0.07部、2種の希釈シンナー計77.77部を混合および撹拌し、光輝性顔料分散体(Y-2)を得た。光輝性顔料分散体(Y-2)の固形分含有率は、2.4%であった。
【0218】
(II-3)クリヤー塗料の準備
クリヤー塗料(Z-2)として、マックフローO-1820クリヤー(日本ペイント社製、酸エポキシ硬化系樹脂組成物)を準備した。
【0219】
[比較例7]
着色塗料としてカーボンブラックを用いたこと以外、実施例2と同様にして、複層塗膜B7を備える被塗物を得て、評価(1)~(5)を行った。結果を表2に示す。
【0220】
[比較例8]
光輝性塗膜の形成工程(IV)において、得られる複層塗膜における光輝性塗膜の膜厚が2μmになるように、光輝性顔料分散体を塗布したこと以外、実施例2と同様にして、複層塗膜B8を備える被塗物を得て、評価(1)~(5)を行った。結果を表2に示す。
【0221】
[比較例9]
光輝性顔料分散体の準備(II-2)において、鱗片状アルミニウム粒子Aに替えて、マイカ(厚さ1μm、平均粒子径17μm)を用いたこと以外、実施例2と同様にして、複層塗膜B9を備える被塗物を得て、評価(1)~(5)を行った。結果を表2に示す。
【0222】
[比較例10]
光輝性顔料分散体の準備(II-2)において、鱗片状アルミニウム粒子Aに替えて、鱗片状アルミニウム粒子B(商品名「6320N」、東洋アルミ社製、厚さ0.5μm、平均粒子径15μm)を用いたこと以外、実施例2と同様にして、複層塗膜B10を備える被塗物を得て、評価(1)~(5)を行った。結果を表2に示す。
【0223】
[比較例11]
光輝性顔料分散体の準備(II-2)において、光輝性顔料分散体の固形分含有率が12%になるように希釈シンナーを加えたこと以外、実施例2と同様にして、複層塗膜B11を備える被塗物を得て、評価(1)~(5)を行った。結果を表2に示す。
【0224】
[比較例12]
光輝性顔料分散体の準備(II-2)において、鱗片状アルミニウム粒子Aを1.0部配合したこと以外、実施例2と同様にして、複層塗膜B12を備える被塗物を得て、評価(1)~(5)を行った。結果を表2に示す。
【0225】
【産業上の利用可能性】
【0226】
本発明の自動車車体および自動車車体の製造方法は、特に自動車車体の外板に適用できる。
【符号の説明】
【0227】
100 自動車車体
10 被塗物
20 複層塗膜
21 着色塗膜
22 光輝性塗膜
221 光輝材
23 クリヤー塗膜