(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167986
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】イネーブルスイッチ
(51)【国際特許分類】
H01H 13/66 20060101AFI20231116BHJP
H01H 13/20 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
H01H13/66
H01H13/20 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079568
(22)【出願日】2022-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000000309
【氏名又は名称】IDEC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【弁理士】
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【弁理士】
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】釜谷 拓次
(72)【発明者】
【氏名】福井 孝男
(72)【発明者】
【氏名】大西 祥太
(72)【発明者】
【氏名】小森 悦朗
【テーマコード(参考)】
5G206
【Fターム(参考)】
5G206AS07H
5G206AS07J
5G206AS07K
5G206AS27H
5G206AS27J
5G206AS27K
5G206AS45K
5G206DS17H
5G206DS17J
5G206DS17M
5G206GS16
5G206HS16
5G206HU05
5G206HW03
5G206JS05
5G206JU01
5G206MS00
(57)【要約】
【課題】接点の切り替えに係る調節を容易に行う。
【解決手段】イネーブルスイッチ1では、可動部材12が押し込まれる際に、接点13は、第1ポジションと第2ポジションとの間のON切替位置にて、開から閉へと移行する。また、接点13は、第2ポジションと第3ポジションとの間のOFF切替位置にて、閉から開へと移行する。可動部材12が第1ポジションとON切替位置との間において押し込まれる際に、第2磁性体52は、第1磁性体51との間に生じる磁気作用による力に抗して移動する。第2磁性体52の当該磁気作用による力に抗した移動に必要な荷重は、一旦立ち上がって減少する磁力ピークを有する。磁力ピークの最大荷重は、磁力部15が設けられないと仮定した場合におけるON切替位置での可動部材12の押し込みに要する荷重以上である。これにより、接点13の切り替えに係る調節を容易に行うことができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作部に設けられて前記操作部による操作対象の操作を許可するイネーブルスイッチであって、
保持部と、
前記保持部に向かって押し込まれる可動部材と、
接点と、
前記可動部材が前記保持部に向かって押し込まれるに従って、前記接点の開閉状態を、開および閉の一方である第1状態から、開および閉の他方である第2状態へと移行し、さらに前記第2状態から前記第1状態へと移行する接点機構と、
少なくとも一方が磁石である第1磁性体および第2磁性体を有する磁力部と、
を備え、
前記第1磁性体は、前記保持部に固定されており、
前記第2磁性体は、前記可動部材の押し込み方向への移動に伴って移動し、
前記可動部材が押し込まれていない状態における前記保持部に対する前記可動部材の位置を第1ポジションとし、
前記可動部材が最も押し込まれた状態における前記保持部に対する前記可動部材の位置を第3ポジションとし、
前記第1ポジションと前記第3ポジションとの間において押し込み量に対する荷重の増加割合が増大することにより前記可動部材の押し込みに要する荷重が立ち上がって最大に至る最大立ち上がりの立ち上がり開始位置を第2ポジションとして、
前記可動部材が押し込まれる際に、前記接点は、前記第1ポジションと前記第2ポジションとの間のON切替位置にて前記第1状態から前記第2状態へと移行し、前記第2ポジションと前記第3ポジションとの間のOFF切替位置にて前記第2状態から前記第1状態へと移行し、
前記可動部材が前記第1ポジションと前記ON切替位置との間において押し込まれる際に、前記第2磁性体は、前記第1磁性体との間に生じる磁気作用による力に抗して移動し、
前記第2磁性体の前記磁気作用による力に抗した移動に必要な荷重は、一旦立ち上がって減少する磁力ピークを有し、
前記磁力ピークの最大荷重は、前記磁力部が設けられないと仮定した場合における前記ON切替位置での前記可動部材の押し込みに要する荷重以上であることを特徴とするイネーブルスイッチ。
【請求項2】
請求項1に記載のイネーブルスイッチであって、
他の接点をさらに備え、
前記他の接点は、前記可動部材が押し込まれる際に、前記第1ポジションと前記第2ポジションとの間の他のON切替位置にて前記第1状態から前記第2状態へと移行し、前記第2ポジションと前記第3ポジションとの間の他のOFF切替位置にて前記第2状態から前記第1状態へと移行し、
前記磁力ピークの最大荷重は、前記磁力部が設けられないと仮定した場合における前記他のON切替位置での前記可動部材の押し込みに要する荷重以上であることを特徴とするイネーブルスイッチ。
【請求項3】
操作部に設けられて前記操作部による操作対象の操作を許可するイネーブルスイッチであって、
保持部と、
前記保持部に向かって押し込まれる可動部材と、
接点と、
前記可動部材が前記保持部に向かって押し込まれるに従って、前記接点の開閉状態を、開および閉の一方である第1状態から、開および閉の他方である第2状態へと移行し、さらに前記第2状態から前記第1状態へと移行する接点機構と、
少なくとも一方が磁石である第1磁性体および第2磁性体を有する磁力部と、
を備え、
前記第1磁性体は、前記保持部に固定されており、
前記第2磁性体は、前記可動部材の押し込み方向への移動に伴って移動し、
前記可動部材が押し込まれていない状態における前記保持部に対する前記可動部材の位置を第1ポジションとし、
前記可動部材が最も押し込まれた状態における前記保持部に対する前記可動部材の位置を第3ポジションとし、
前記第1ポジションと前記第3ポジションとの間において押し込み量に対する荷重の増加割合が増大することにより前記可動部材の押し込みに要する荷重が立ち上がって最大に至る最大立ち上がりの立ち上がり開始位置を第2ポジションとして、
前記可動部材が押し込まれる際に、前記接点は、前記第1ポジションと前記第2ポジションとの間のON切替位置にて前記第1状態から前記第2状態へと移行し、前記第2ポジションと前記第3ポジションとの間のOFF切替位置にて前記第2状態から前記第1状態へと移行し、
前記可動部材が前記第1ポジションと前記ON切替位置との間において押し込まれる際に、前記第2磁性体は、前記第1磁性体との間に生じる磁気作用による力に抗して移動し、
前記第2磁性体の前記磁気作用による力に抗した移動に必要な荷重は、一旦立ち上がって減少する磁力ピークを有し、
前記ON切替位置は、前記磁力ピークの最大荷重に対応する前記可動部材の位置よりも前記可動部材が押し込まれた位置であることを特徴とするイネーブルスイッチ。
【請求項4】
請求項3に記載のイネーブルスイッチであって、
他の接点をさらに備え、
前記他の接点は、前記可動部材が押し込まれる際に、前記第1ポジションと前記第2ポジションとの間の他のON切替位置にて前記第1状態から前記第2状態へと移行し、前記第2ポジションと前記第3ポジションとの間の他のOFF切替位置にて前記第2状態から前記第1状態へと移行し、
前記他のON切替位置は、前記磁力ピークの最大荷重に対応する前記可動部材の位置よりも前記可動部材が押し込まれた位置であることを特徴とするイネーブルスイッチ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1つに記載のイネーブルスイッチであって、
前記第2磁性体の前記第1磁性体に対する相対移動方向は、前記押し込み方向に平行であることを特徴とするイネーブルスイッチ。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれか1つに記載のイネーブルスイッチであって、
前記可動部材が前記第2ポジションから前記第1ポジションへと復帰する際に、前記第1磁性体と前記第2磁性体との間に生じる磁気作用による力によって、前記可動部材の移動が促進されることを特徴とするイネーブルスイッチ。
【請求項7】
請求項1ないし4のいずれか1つに記載のイネーブルスイッチであって、
前記可動部材の前記押し込み方向における位置を示すモニタ信号を生成するモニタ部をさらに備え、
前記モニタ部は、
第1モニタ接点と、
前記可動部材の前記押し込み方向への移動に従って前記第1モニタ接点の一部を移動させることにより、前記第1モニタ接点の開閉状態を切り替える第1モニタ切替部と、
第2モニタ接点と、
前記可動部材の前記押し込み方向への移動に従って前記第2モニタ接点の一部を移動させることにより、前記第2モニタ接点の開閉状態を切り替える第2モニタ切替部と、
を備え、
前記可動部材が押し込まれる際に、前記第1ポジションと前記第2ポジションとの間にて前記第1モニタ接点の開閉状態が切り替えられ、前記第2ポジションと前記第3ポジションとの間にて前記第2モニタ接点の開閉状態が切り替えられ、
前記モニタ部では、前記第1モニタ接点の開閉状態および前記第2モニタ接点の開閉状態に基づいて前記モニタ信号が生成され、
前記磁力部は、前記第1モニタ切替部または前記第2モニタ切替部と同様の構造を有する磁性体移動部をさらに備え、
前記磁力部における前記第2磁性体は、前記第1モニタ接点の前記一部または前記第2モニタ接点の前記一部に対応し、
前記磁性体移動部は、前記可動部材の前記押し込み方向への移動に従って前記第2磁性体を移動させることにより、前記第2磁性体の前記第1磁性体に対する相対位置を変更することを特徴とするイネーブルスイッチ。
【請求項8】
請求項1ないし4のいずれか1つに記載のイネーブルスイッチであって、
前記可動部材の前記押し込み方向における位置を示すモニタ信号を生成するモニタ部をさらに備え、
前記モニタ部は、
モニタ接点と、
前記可動部材の前記押し込み方向への移動に従って前記モニタ接点の一部を移動させることにより、前記モニタ接点の開閉状態を切り替えるモニタ切替部と、
を備え、
前記可動部材が押し込まれる際に、前記第1ポジションと前記第2ポジションとの間にて、または、前記第2ポジションと前記第3ポジションとの間にて、前記モニタ接点の開閉状態が切り替えられ、
前記モニタ部では、前記モニタ接点の開閉状態に基づいて前記モニタ信号が生成され、
前記磁力部は、前記モニタ切替部と同様の構造を有する磁性体移動部をさらに備え、
前記磁力部における前記第2磁性体は、前記モニタ接点の前記一部に対応し、
前記磁性体移動部は、前記可動部材の前記押し込み方向への移動に従って前記第2磁性体を移動させることにより、前記第2磁性体の前記第1磁性体に対する相対位置を変更することを特徴とするイネーブルスイッチ。
【請求項9】
請求項1ないし4のいずれか1つに記載のイネーブルスイッチであって、
前記可動部材の前記押し込み方向における位置を示すモニタ信号を生成するモニタ部をさらに備え、
前記モニタ部は、
第1モニタ接点と、
前記可動部材の前記押し込み方向への移動に従って前記第1モニタ接点の一部を移動させることにより、前記第1モニタ接点の開閉状態を切り替える第1モニタ切替部と、
第2モニタ接点と、
前記可動部材の前記押し込み方向への移動に従って前記第2モニタ接点の一部を移動させることにより、前記第2モニタ接点の開閉状態を切り替える第2モニタ切替部と、
を備え、
前記可動部材が押し込まれる際に、前記第1ポジションと前記第2ポジションとの間にて前記第1モニタ接点の開閉状態が切り替えられ、前記第2ポジションと前記第3ポジションとの間にて前記第2モニタ接点の開閉状態が切り替えられ、
前記モニタ部では、前記第1モニタ接点の開閉状態および前記第2モニタ接点の開閉状態に基づいて前記モニタ信号が生成され、
前記第2磁性体が、前記第1モニタ切替部により前記第1モニタ接点の前記一部と共に移動されることにより、または、前記第2モニタ切替部により前記第2モニタ接点の前記一部と共に移動されることにより、前記第2磁性体の前記第1磁性体に対する相対位置が変更されることを特徴とするイネーブルスイッチ。
【請求項10】
請求項1ないし4のいずれか1つに記載のイネーブルスイッチであって、
前記可動部材の前記押し込み方向における位置を示すモニタ信号を生成するモニタ部をさらに備え、
前記モニタ部は、
モニタ接点と、
前記可動部材の前記押し込み方向への移動に従って前記モニタ接点の一部を移動させることにより、前記モニタ接点の開閉状態を切り替えるモニタ切替部と、
を備え、
前記可動部材が押し込まれる際に、前記第1ポジションと前記第2ポジションとの間にて、または、前記第2ポジションと前記第3ポジションとの間にて、前記モニタ接点の開閉状態が切り替えられ、
前記モニタ部では、前記モニタ接点の開閉状態に基づいて前記モニタ信号が生成され、
前記モニタ切替部は、前記第2磁性体を前記モニタ接点の前記一部と共に移動することにより、前記第2磁性体の前記第1磁性体に対する相対位置を変更することを特徴とするイネーブルスイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作部による操作対象の操作を許可するイネーブルスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スイッチの可動部材の押し込み量に従って、スイッチの状態がOFFからONに変化し、さらにONからOFFに変化するスイッチが知られている。このようなスイッチは、ロボットや機械を操作する際に作業者が入力を行う端末である操作部に「イネーブルスイッチ」として用いられる。作業者は、入力を行う間、スイッチをON状態に維持する。スイッチがOFF状態になると、作業者による入力は遮断され、ロボット等の操作対象には伝わらない。これにより、作業者が操作部から手を離した場合や、驚く等して力強く操作部を把持した場合に、操作部への入力は操作対象には伝わらず、作業者の安全が確保される。
【0003】
イネーブルスイッチでは、接点の溶着等の故障を検出するために、可動部材の押し込みにより並行して切り替えられる2つの接点が設けられ、当該2つの接点の切り替わりタイミングが大きくずれた場合、エラーとして検知される構造が採用されているものがある。このようなイネーブルスイッチでは、可動部材が傾いた状態でゆっくりと押し込まれると、2つの接点の切り替わりタイミングのずれが大きくなり、故障が生じていないにも関わらずエラーが誤検知されることがある。
【0004】
そこで、特許文献1では、イネーブルスイッチの可動部材が押し込まれる際に、2つの接点がOFFからONに切り替わる切替位置よりも手前側において、可動部材に接続された係合部を凹部に係合させて押し込みに要する荷重を急激に増加させた後、当該係合を解除して荷重を急激に減少させることにより、2つの接点を一気に切り替える技術が提案されている。当該イネーブルスイッチでは、上記切替位置の手前において荷重の急激な増加および減少を生じさせる(すなわち、クリック感を生じさせる)ことにより、切替位置付近にて可動部材をゆっくりと押し込むことが難しくなる。その結果、2つの接点の切り替わりタイミングのずれが低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1のイネーブルスイッチでは、上述のクリック感の大きさやクリック感が生じる位置を変更しようとすると、係合部および凹部の形状、係合部と凹部との係合の深さや摩擦の大きさ等を変更する必要があり、クリック感の調節が容易とは言い難い。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、接点の切り替えに係る調節を容易に行うことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様1は、操作部に設けられて前記操作部による操作対象の操作を許可するイネーブルスイッチであって、保持部と、前記保持部に向かって押し込まれる可動部材と、接点と、前記可動部材が前記保持部に向かって押し込まれるに従って、前記接点の開閉状態を、開および閉の一方である第1状態から、開および閉の他方である第2状態へと移行し、さらに前記第2状態から前記第1状態へと移行する接点機構と、少なくとも一方が磁石である第1磁性体および第2磁性体を有する磁力部と、を備える。前記第1磁性体は、前記保持部に固定されている。前記第2磁性体は、前記可動部材の押し込み方向への移動に伴って移動する。前記可動部材が押し込まれていない状態における前記保持部に対する前記可動部材の位置を第1ポジションとする。前記可動部材が最も押し込まれた状態における前記保持部に対する前記可動部材の位置を第3ポジションとする。前記第1ポジションと前記第3ポジションとの間において押し込み量に対する荷重の増加割合が増大することにより前記可動部材の押し込みに要する荷重が立ち上がって最大に至る最大立ち上がりの立ち上がり開始位置を第2ポジションとする。前記可動部材が押し込まれる際に、前記接点は、前記第1ポジションと前記第2ポジションとの間のON切替位置にて前記第1状態から前記第2状態へと移行し、前記第2ポジションと前記第3ポジションとの間のOFF切替位置にて前記第2状態から前記第1状態へと移行する。前記可動部材が前記第1ポジションと前記ON切替位置との間において押し込まれる際に、前記第2磁性体は、前記第1磁性体との間に生じる磁気作用による力に抗して移動する。前記第2磁性体の前記磁気作用による力に抗した移動に必要な荷重は、一旦立ち上がって減少する磁力ピークを有する。前記磁力ピークの最大荷重は、前記磁力部が設けられないと仮定した場合における前記ON切替位置での前記可動部材の押し込みに要する荷重以上である。
【0009】
本発明の態様2は、態様1のイネーブルスイッチであって、他の接点をさらに備える。前記他の接点は、前記可動部材が押し込まれる際に、前記第1ポジションと前記第2ポジションとの間の他のON切替位置にて前記第1状態から前記第2状態へと移行し、前記第2ポジションと前記第3ポジションとの間の他のOFF切替位置にて前記第2状態から前記第1状態へと移行する。前記磁力ピークの最大荷重は、前記磁力部が設けられないと仮定した場合における前記他のON切替位置での前記可動部材の押し込みに要する荷重以上である。
【0010】
本発明の態様3は、操作部に設けられて前記操作部による操作対象の操作を許可するイネーブルスイッチであって、保持部と、前記保持部に向かって押し込まれる可動部材と、接点と、前記可動部材が前記保持部に向かって押し込まれるに従って、前記接点の開閉状態を、開および閉の一方である第1状態から、開および閉の他方である第2状態へと移行し、さらに前記第2状態から前記第1状態へと移行する接点機構と、少なくとも一方が磁石である第1磁性体および第2磁性体を有する磁力部と、を備える。前記第1磁性体は、前記保持部に固定されている。前記第2磁性体は、前記可動部材の押し込み方向への移動に伴って移動する。前記可動部材が押し込まれていない状態における前記保持部に対する前記可動部材の位置を第1ポジションとする。前記可動部材が最も押し込まれた状態における前記保持部に対する前記可動部材の位置を第3ポジションとする。前記第1ポジションと前記第3ポジションとの間において押し込み量に対する荷重の増加割合が増大することにより前記可動部材の押し込みに要する荷重が立ち上がって最大に至る最大立ち上がりの立ち上がり開始位置を第2ポジションとする。前記可動部材が押し込まれる際に、前記接点は、前記第1ポジションと前記第2ポジションとの間のON切替位置にて前記第1状態から前記第2状態へと移行し、前記第2ポジションと前記第3ポジションとの間のOFF切替位置にて前記第2状態から前記第1状態へと移行する。前記可動部材が前記第1ポジションと前記ON切替位置との間において押し込まれる際に、前記第2磁性体は、前記第1磁性体との間に生じる磁気作用による力に抗して移動する。前記第2磁性体の前記磁気作用による力に抗した移動に必要な荷重は、一旦立ち上がって減少する磁力ピークを有する。前記ON切替位置は、前記磁力ピークの最大荷重に対応する前記可動部材の位置よりも前記可動部材が押し込まれた位置である。
【0011】
本発明の態様4は、態様3のイネーブルスイッチであって、他の接点をさらに備える。前記他の接点は、前記可動部材が押し込まれる際に、前記第1ポジションと前記第2ポジションとの間の他のON切替位置にて前記第1状態から前記第2状態へと移行し、前記第2ポジションと前記第3ポジションとの間の他のOFF切替位置にて前記第2状態から前記第1状態へと移行する。前記他のON切替位置は、前記磁力ピークの最大荷重に対応する前記可動部材の位置よりも前記可動部材が押し込まれた位置である。
【0012】
本発明の態様5は、態様1ないし4のいずれか1つのイネーブルスイッチであって、前記第2磁性体の前記第1磁性体に対する相対移動方向は、前記押し込み方向に平行である。
【0013】
本発明の態様6は、態様1ないし4のいずれか1つ(態様1ないし5のいずれか1つ、であってもよい。)のイネーブルスイッチであって、前記可動部材が前記第2ポジションから前記第1ポジションへと復帰する際に、前記第1磁性体と前記第2磁性体との間に生じる磁気作用による力によって、前記可動部材の移動が促進される。
【0014】
本発明の態様7は、態様1ないし4のいずれか1つ(態様1ないし6のいずれか1つ、であってもよい。)のイネーブルスイッチであって、前記可動部材の前記押し込み方向における位置を示すモニタ信号を生成するモニタ部をさらに備える。前記モニタ部は、第1モニタ接点と、前記可動部材の前記押し込み方向への移動に従って前記第1モニタ接点の一部を移動させることにより、前記第1モニタ接点の開閉状態を切り替える第1モニタ切替部と、第2モニタ接点と、前記可動部材の前記押し込み方向への移動に従って前記第2モニタ接点の一部を移動させることにより、前記第2モニタ接点の開閉状態を切り替える第2モニタ切替部と、を備える。前記可動部材が押し込まれる際に、前記第1ポジションと前記第2ポジションとの間にて前記第1モニタ接点の開閉状態が切り替えられ、前記第2ポジションと前記第3ポジションとの間にて前記第2モニタ接点の開閉状態が切り替えられる。前記モニタ部では、前記第1モニタ接点の開閉状態および前記第2モニタ接点の開閉状態に基づいて前記モニタ信号が生成される。前記磁力部は、前記第1モニタ切替部または前記第2モニタ切替部と同様の構造を有する磁性体移動部をさらに備える。前記磁力部における前記第2磁性体は、前記第1モニタ接点の前記一部または前記第2モニタ接点の前記一部に対応する。前記磁性体移動部は、前記可動部材の前記押し込み方向への移動に従って前記第2磁性体を移動させることにより、前記第2磁性体の前記第1磁性体に対する相対位置を変更する。
【0015】
本発明の態様8は、態様1ないし4のいずれか1つ(態様1ないし6のいずれか1つ、であってもよい。)のイネーブルスイッチであって、前記可動部材の前記押し込み方向における位置を示すモニタ信号を生成するモニタ部をさらに備える。前記モニタ部は、モニタ接点と、前記可動部材の前記押し込み方向への移動に従って前記モニタ接点の一部を移動させることにより、前記モニタ接点の開閉状態を切り替えるモニタ切替部と、を備える。前記可動部材が押し込まれる際に、前記第1ポジションと前記第2ポジションとの間にて、または、前記第2ポジションと前記第3ポジションとの間にて、前記モニタ接点の開閉状態が切り替えられる。前記モニタ部では、前記モニタ接点の開閉状態に基づいて前記モニタ信号が生成される。前記磁力部は、前記モニタ切替部と同様の構造を有する磁性体移動部をさらに備える。前記磁力部における前記第2磁性体は、前記モニタ接点の前記一部に対応する。前記磁性体移動部は、前記可動部材の前記押し込み方向への移動に従って前記第2磁性体を移動させることにより、前記第2磁性体の前記第1磁性体に対する相対位置を変更する。
【0016】
本発明の態様9は、態様1ないし4のいずれか1つ(態様1ないし6のいずれか1つ、であってもよい。)のイネーブルスイッチであって、前記可動部材の前記押し込み方向における位置を示すモニタ信号を生成するモニタ部をさらに備える。前記モニタ部は、第1モニタ接点と、前記可動部材の前記押し込み方向への移動に従って前記第1モニタ接点の一部を移動させることにより、前記第1モニタ接点の開閉状態を切り替える第1モニタ切替部と、第2モニタ接点と、前記可動部材の前記押し込み方向への移動に従って前記第2モニタ接点の一部を移動させることにより、前記第2モニタ接点の開閉状態を切り替える第2モニタ切替部と、を備える。前記可動部材が押し込まれる際に、前記第1ポジションと前記第2ポジションとの間にて前記第1モニタ接点の開閉状態が切り替えられ、前記第2ポジションと前記第3ポジションとの間にて前記第2モニタ接点の開閉状態が切り替えられる。前記モニタ部では、前記第1モニタ接点の開閉状態および前記第2モニタ接点の開閉状態に基づいて前記モニタ信号が生成される。前記第2磁性体が、前記第1モニタ切替部により前記第1モニタ接点の前記一部と共に移動されることにより、または、前記第2モニタ切替部により前記第2モニタ接点の前記一部と共に移動されることにより、前記第2磁性体の前記第1磁性体に対する相対位置が変更される。
【0017】
本発明の態様10は、態様1ないし4のいずれか1つ(態様1ないし6のいずれか1つ、であってもよい。)のイネーブルスイッチであって、前記可動部材の前記押し込み方向における位置を示すモニタ信号を生成するモニタ部をさらに備える。前記モニタ部は、モニタ接点と、前記可動部材の前記押し込み方向への移動に従って前記モニタ接点の一部を移動させることにより、前記モニタ接点の開閉状態を切り替えるモニタ切替部と、を備える。前記可動部材が押し込まれる際に、前記第1ポジションと前記第2ポジションとの間にて、または、前記第2ポジションと前記第3ポジションとの間にて、前記モニタ接点の開閉状態が切り替えられる。前記モニタ部では、前記モニタ接点の開閉状態に基づいて前記モニタ信号が生成される。前記モニタ切替部は、前記第2磁性体を前記モニタ接点の前記一部と共に移動することにより、前記第2磁性体の前記第1磁性体に対する相対位置を変更する。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、接点の切り替えに係る調節を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1の実施の形態に係るイネーブルスイッチの平面図である。
【
図5】イネーブルスイッチの押し込み量と荷重との関係を示す図である。
【
図16】第2の実施の形態に係るイネーブルスイッチの縦断面図である。
【
図19】第3の実施の形態に係るイネーブルスイッチの縦断面図である。
【
図22】第4の実施の形態に係るイネーブルスイッチの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るイネーブルスイッチ1の平面図である。
図2は、イネーブルスイッチ1の正面図である。
図3は、
図1中のIII-IIIの位置におけるイネーブルスイッチ1の断面を示す縦断面図である。
図4は、
図2中のVI-VIの位置におけるイネーブルスイッチ1の断面を示す縦断面図である。
図3および
図4では、イネーブルスイッチ1の内部構造の理解を容易にするために、各部材の断面の位置が異なる部分もある。また、
図3および
図4では、一部の構成の断面における平行斜線を省略している。
図3に対応する後述の
図6および
図8-
図10、並びに、
図4に対応する後述の
図7および
図11においても同様である。また、
図12-
図24においても同様である。
【0021】
イネーブルスイッチ1は、ロボットの教示ペンダントや作業機械のコントローラ等の操作部に設けられる。ロボットや作業機械等は、当該操作部の操作対象である。イネーブルスイッチ1は、操作部からの操作対象の操作を許可する。イネーブルスイッチ1がON状態の間、操作対象の操作が許可され、作業者が操作部に入力を行うと、入力に従った操作部からの信号が操作対象に伝わる。イネーブルスイッチ1がOFF状態の場合は、操作対象の操作が許可されず、作業者の入力は操作対象に伝わらない。
【0022】
以下の説明では、
図2ないし
図4中の上下方向を、単に「上下方向」と呼ぶ。また、当該上下方向は、後述する可動部材12が保持部11に押し込まれる方向であり、「押し込み方向」とも呼ぶ。当該上下方向は、イネーブルスイッチ1が上記操作部に設けられた際の実際の上下方向(すなわち、重力方向)とは、必ずしも一致する必要はない。また、以下の説明では、
図1ないし
図3中の左右方向を「横方向」または「左右方向」と呼び、
図4中の左右方向を「厚さ方向」とも呼ぶ。
【0023】
イネーブルスイッチ1は、保持部11と、可動部材12とを備える。保持部11は、イネーブルスイッチ1のうち保持部11以外の部材を支持する。可動部材12は、イネーブルスイッチ1を操作する際に、作業者により保持部11に向かって押し込まれ、保持部11に対して相対的に下方へと移動する。
図1および
図2に示す例では、可動部材12は左右方向に横長であり、可動部材12が延びる方向とは垂直な上下方向に移動可能である。可動部材12は、保持部11内に収容されているコイルバネ121により、上方に向かう力(すなわち、保持部11から可動部材12に向かう方向の力)が与えられる。
図3では、コイルバネ121および他のコイルバネを破線にて簡略化して示している(他の断面図においても同様。)。作業者が可動部材12を指で保持部11内へ押し込んだ後に、当該指を可動部材12から離すと、コイルバネ121の復元力により可動部材12が元の位置に復帰する。
【0024】
イネーブルスイッチ1は、2つの接点13と、接点機構20と、磁力部15と、ガイド部16と、モニタ部17とを含む。2つの接点13、接点機構20、磁力部15、ガイド部16およびモニタ部17は、保持部11の内部に収容される。各接点13は、下固定端子131と、可動端子132とを備える。正確には、上固定端子も存在し、上固定端子、下固定端子131および可動端子132にそれぞれ接続された3つの接続端子からなる接続端子群134が、保持部11の下方に位置する。接点13が開の状態では、下固定端子131と可動端子132とが上下方向に離間する。接点13が閉の状態では、下固定端子131と可動端子132とが直接的に接触する。接点13が開の状態においてイネーブルスイッチ1はOFF状態であり、接点13が閉の状態においてイネーブルスイッチ1はON状態である。
【0025】
可動部材12の内部には、OFF切替機構14が配置される。OFF切替機構14は、3つの縦コイルバネ241と、縦コイルバネ241を収容する当接部材242と、2つのスライダ243と、2つの横コイルバネ244と、2つの押し込み部材245とを備える。
図3では、当接部材242が、3つの縦コイルバネ241を収容する3つの部位(符号242,242aを付す部位)に分かれて示されているが、これらは1つの部材である。可動部材12の下部材12aには穴が設けられており、当接部材242は下部材12aの穴に嵌め込まれる。可動部材12の上部と下部材12aとの間の空間に、スライダ243および横コイルバネ244が配置される。
【0026】
図3に示す初期状態では、当接部材242は、縦コイルバネ241から下方に向かう力を受ける。また、スライダ243は、横コイルバネ244から横方向内方に向かう力を受ける。スライダ243の先端は、当接部材242の上方に位置する。また、スライダ243の横方向外側の端部である後端部243aの下端には、押し込み部材245の上端が近接する。
【0027】
各接点13では、可動端子132がスナップ機構133に接続されている。後述するように、押し込み部材245が予め定められた位置まで押し込まれると、スナップ機構133が有するバネにより、可動端子132は速やかに下固定端子131に向かって移動し、可動端子132と下固定端子131とが接する。すなわち、接点13が閉となる。
【0028】
OFF切替機構14およびスナップ機構133は、後述するように、可動部材12が保持部11に向かって押し込まれるに従って、接点13の開閉状態を開から閉に移行し、さらに閉から開へと移行する接点機構20を構成する。イネーブルスイッチ1は、2つの接点13を有するため、これらを「第1接点13」および「第2接点13」と区別した場合、接点機構20は、可動部材12が保持部11に向かって押し込まれるに従って、第1接点13および第2接点13の状態を、開から閉に移行し、さらに閉から開へと移行する。第1接点13および第2接点13は、横方向(すなわち、可動部材12が延びる方向)に離間して配列される。
【0029】
ガイド部16は、横方向に長い回動部材261を備える。回動部材261は、金属棒の横方向の両端が横方向の内側を向くように、当該両端を2回に亘って約90°ずつ折り曲げることにより形成される。なお、回動部材261は、金属棒の両端が90°折り曲げられた後、さらに両端側の部位が外側を向くように折り曲げられることにより形成されてもよい。
【0030】
回動部材261は、可動部材12に直接的に回動可能に取り付けられる。具体的には、回動部材261の上部が、可動部材12の下部材12aに回転可能に係合する。回動部材261は、回動部材261が延びる横方向に平行な回動軸J1(
図4参照)を中心に回動可能である。回動部材261の横方向両端の下端部263は、上下方向に関して、下側の部材262と上側の部材111aとの間に挟まれる。回動部材261は、横方向両端の下端部263が下方に位置する部材262に接触した状態で回動する。これにより、横方向に長い可動部材12が横方向に大きく傾くことなく保持部11内へと押し込まれる。
【0031】
磁力部15は、後述するように、作業者が可動部材12を押し込む際に、指にクリック感を生じさせるための構造である。磁力部15は、可動部材12の下部材12aよりも下方において、横方向に関して2つの接点13の間に配置される。磁力部15は、それぞれが磁性体である第1磁性体51および第2磁性体52を備える。第1磁性体51および第2磁性体52のうち少なくとも一方は磁石である。
図3に示す例では、第1磁性体51は、ネオジム磁石等の永久磁石であり、第2磁性体52は、鉄等の金属により形成された略平板状の、磁石ではない部材である。第1磁性体51は、可動部材12の下部材12aよりも下方において保持部11により保持される。第2磁性体52は、第1磁性体51の下方に配置され、第1磁性体51と上下方向に対向する。
図3に示す初期状態では、第2磁性体52は、第1磁性体51と第2磁性体52との間に生じる磁気作用による力(すなわち、磁気引力)により、第1磁性体51に吸着されている。第2磁性体52は、可動部材12が下方へと押し込まれる際に、当該磁気引力に抗して下方に移動可能である。
【0032】
図3に示す例では、第1磁性体51は、2つの略直方体状の磁石片511を有する。2つの磁石片511は、横方向に離間して配置される。各磁石片511は、保持部11を構成する部品の一つであるベース部材111に設けられた上方に向かって開口する凹部内に収容され、保持部11に固定される。第2磁性体52は、略上下方向に延びる略柱状の磁性体ホルダ53に固定されている。磁性体ホルダ53は、2つの磁石片511の間において保持部11に設けられた貫通穴に挿入され、上下方向に移動可能に保持部11によって保持される。第2磁性体52は、各磁石片511が収容される凹部の底板を介して各磁石片511に吸引され、当該底板を介して各磁石片511と間接的に接触している。換言すれば、第2磁性体52は、当該底板を介して第1磁性体51に間接的に吸着されている。なお、第1磁性体51および第2磁性体52の形状は様々に変更されてよい。例えば、第1磁性体51は、磁性体ホルダ53を中心とする略円筒状または略円環板状の1つの磁石であってもよい。
【0033】
磁性体ホルダ53は、作業者により可動部材12が下方へと押し込まれる際に、可動部材12と接触して可動部材12と共に下方へと移動する。このとき、磁性体ホルダ53に固定されている第2磁性体52も、上述の磁気引力に抗して下方(すなわち、上下方向において第1磁性体51から離れる方向)へと移動する。すなわち、磁性体ホルダ53は、可動部材12の上下方向への移動に従って第2磁性体52を移動させることにより、第2磁性体52の第1磁性体51に対する相対位置を変更する磁性体移動部である。磁気引力に抗して第2磁性体52と第1磁性体51との吸着を解除する(すなわち、第2磁性体52を上記底板から下方に離間させる)際には、作業者は比較的大きい力にて可動部材12を押し込む必要があり、当該吸着が解除されると、可動部材12の押し込みに必要な力は急激に減少する。これにより、可動部材12を押し込む作業者の指にクリック感が生じる。
【0034】
作業者による可動部材12の押し込みが解除されると、上述のように可動部材12が上方へと移動する。第2磁性体52は、第2磁性体52の下面と保持部11の底部との間に設けられたコイルバネ54の復元力により、磁性体ホルダ53と共に上方へと移動し、上述の底板を介して第1磁性体51に吸着される。すなわち、第2磁性体52は、可動部材12の上下方向(すなわち、押し込み方向)への移動に伴って、可動部材12の移動方向と略並行な方向に、第1磁性体51に対して相対的に移動する。
図3に示す例では、コイルバネ54は、磁性体ホルダ53を中心として、磁性体ホルダ53に沿って上下方向に延びる。なお、第2磁性体52の上方への移動は、コイルバネ54の復元力以外に、例えば、第1磁性体51と第2磁性体52との間に生じる磁気作用による力(すなわち、磁気引力)によって実現されてもよい。
【0035】
次に、可動部材12を押し込む際の押し込みに要する荷重(すなわち、可動部材12に加える必要がある下向きの力)の変化について説明する。
図5は、可動部材12の移動量(すなわち、イネーブルスイッチ1の押し込み量)と、押し込みに要する荷重との関係の一例を示す図である。以下、押し込み量に対応する可動部材12の位置を、
図5に付す符号を参照しつつ説明する。
【0036】
図5において、位置301は初期位置である。以下、位置301を「第1ポジション」と呼ぶ。第1ポジション301は、可動部材12が押し込まれていない状態における保持部11に対する可動部材12の相対的な位置である。位置303は、可動部材12が最も押し込まれた状態における保持部11に対する可動部材12の相対的な位置である。以下、位置303を「第3ポジション」と呼ぶ。第1ポジション301および第3ポジション303では、イネーブルスイッチ1はOFF状態である。
【0037】
位置302は、作業者が可動部材12を初期状態からある程度押し込み、ある程度の抵抗力(すなわち、可動部材12を上方に押し返そうとする力)を感じつつ可動部材12を安定して保持することができる位置である。これにより、イネーブルスイッチ1はON状態に安定して保持される。以下、位置302を「第2ポジション」と呼ぶ。第2ポジション302は、第1ポジション301と第3ポジション303との間に位置する。第2ポジション302は、押し込み量に対する荷重の増加割合が増大することにより可動部材12の押し込みに要する荷重が立ち上がって最大に至る最大立ち上がり343の立ち上がり開始位置である。
【0038】
位置311は、可動部材12が押し込まれる際に、接点13が開から閉へと移行し、イネーブルスイッチ1がOFF状態からON状態へと移行する「ON切替位置」である。位置312は、可動部材12が押し込まれる際に、接点13が閉から開へと移行し、イネーブルスイッチ1がON状態からOFF状態へと移行する「OFF切替位置」である。したがって、イネーブルスイッチ1では、可動部材12が押し込まれる際に、第1ポジション301と第2ポジション302との間のON切替位置311にて接点13が開から閉に移行し、第2ポジション302と第3ポジション303との間のOFF切替位置312にて接点13が閉から開に移行する。
【0039】
正確には、イネーブルスイッチ1は2つの接点13を有するため、これらを「第1接点13」および「第2接点13」と区別した場合、可動部材12が押し込まれる際に、第1ポジション301と第2ポジション302との間の第1ON切替位置にて第1接点13が開から閉に移行し、第2ポジション302と第3ポジション303との間の第1OFF切替位置にて第1接点13が閉から開に移行する。また、第1ポジション301と第2ポジション302との間の第2ON切替位置にて第2接点13が開から閉に移行し、第2ポジション302と第3ポジション303との間の第2OFF切替位置にて第2接点13が閉から開に移行する。
【0040】
図5の位置311は、第1接点13の場合、第1ON切替位置に対応し、位置312は第1OFF切替位置に対応する。第2接点13の場合は、位置311は第2ON切替位置に対応し、位置312は第2OFF切替位置に対応する。そして、第1ON切替位置と第2ON切替位置とは一致または近接し、第1OFF切替位置と第2OFF切替位置とは一致または近接する。
【0041】
イネーブルスイッチ1では、第1ポジション301とON切替位置311との間に、可動部材12が押し込まれる際に荷重が一旦立ち上がって減少するピーク341が存在する。ピーク341は、最大立ち上がり343よりも荷重の最大値が小さい小ピークである。ピーク341は、後述するように、磁力部15において上述の磁気引力に抗して第2磁性体52を下方に移動させることにより生じる。以下の説明では、磁力部15により生じるピーク341を「磁力ピーク341」と呼ぶ。
【0042】
図5では、磁力ピーク341の立ち上がりが開始する位置に符号321を付す。磁力ピーク341では、位置321にて、押し込み量がほとんど変化することなく荷重が増大し、磁力ピーク341における荷重の最大値に達する。換言すれば、磁力ピーク341は、位置321において略垂直に立ち上がる。したがって、位置321は磁力ピーク341の立ち上がりが終了する位置でもあり、立ち下がりが開始する位置でもある。
図5では、磁力ピーク341の立ち下がりが終了する位置に符号324を付す。
【0043】
なお、これらの位置は明瞭に現れる必要はなく、明瞭に現れない場合は、様々な方法にてこれらの位置が特定されてよい。例えば、磁力ピーク341の立ち上がり開始位置321や立ち下がり終了位置324が曲線上に位置する場合、曲率が最も大きくなる位置が、位置321,324として特定されてもよい。あるいは、押し込み量を増加させた際の荷重の勾配が、正のある値を超える位置が立ち上がり開始位置321として特定され、負のある値を上回った位置が立ち下がり終了位置324として特定されてもよい。
【0044】
第2ポジション302と第3ポジション303との間において最大立ち上がり343を含むピーク(以下、「主ピーク342」と呼ぶ。)についても、磁力ピーク341と略同様に、立ち上がり開始位置(すなわち、第2ポジション302)、および、立ち下がり終了位置334は、およそその意味を示す位置であれば、様々な手法で定められてよい。また、主ピーク342の立ち上がりが終了する位置332、および、主ピーク342の立ち下がりが開始する位置333についても同様である。主ピーク342では、立ち上がり終了位置332と立ち下がり開始位置333とが一致してもよい。
【0045】
図5に示す例では、ON切替位置311は、磁力ピーク341の最大荷重A1に対応する位置321よりも可動部材12が押し込まれた位置であり、磁力ピーク341の立ち下がり終了位置324と第2ポジション302との間に位置する。磁力ピーク341の最大荷重A1は、ON切替位置311における荷重A2(詳細には、第1ON切替位置における荷重および第2ON切替位置における荷重のうち大きい方の荷重)以上である。また、磁力ピーク341の最大荷重A1は、OFF切替位置312における荷重A3(詳細には、第1OFF切替位置における荷重および第2OFF切替位置における荷重のうち小さい方の荷重)よりも小さい。
【0046】
これにより、作業者が可動部材12を初期状態から下方へと押し込む際に、可動部材12は少し引っかかるようなクリック感の後に一気に押し込まれて第2ポジション302に移行する。すなわち、作業者がイネーブルスイッチ1を通常に操作する場合、可動部材12を押し込む力が磁力ピーク341の最大荷重A1を超えると、可動部材12の下方への移動を途中で(すなわち、第2ポジション302よりも上側で)止めることはできず、可動部材12が何かに当たるような感覚で第2ポジション302に迅速に移行する。その結果、作業者は、可動部材12が第2ポジション302に位置したことを明瞭に感じ取ることができる。換言すれば、作業者は、第2ポジション302のON状態からさらに押し込んで第3ポジション303のOFF状態に移行する前の段階において、押し込み量に対する荷重の増加を明瞭に感じ取ることができる。また、可動部材12は、ON切替位置311(詳細には、第1ON切替位置および第2ON切替位置)を迅速に通過するため、2つの接点13における開から閉への切り替わりタイミングのずれが低減され、2つの接点13の開閉状態の不一致が抑制される。
【0047】
上記観点からは、ON切替位置311は、
図5に示す位置には限定されない。ON切替位置311は、磁力ピーク341の立下り開始位置(
図5に示す例では、位置321)と第2ポジション302との間に位置すればよい。換言すれば、ON切替位置311は、磁力ピーク341の立ち下がり終了位置324と略同じ位置であってもよい。あるいは、ON切替位置311は、位置321と位置324との間に位置していてもよい。
【0048】
また、可動部材12を磁力ピーク341から速やかに第2ポジション302に移行させるという観点からは、磁力ピーク341の最大荷重A1は、第2ポジション302における荷重A4よりも大きいことが好ましい。さらに、磁力ピーク341を超えた後、第2ポジション302およびOFF切替位置312を超えてOFF状態に移行しないために、磁力ピーク341の最大荷重A1は、好ましくは、OFF切替位置312の直前の位置における荷重(詳細には、第1OFF切替位置および第2OFF切替位置の直前の位置における荷重であり、通常は、位置332における荷重)よりも小さい。
【0049】
磁力ピーク341の立ち上がり開始位置321は、第1ポジション301と略一致してもよく、第1ポジション301と完全に一致してもよい。このような場合であっても、作業者は可動部材12を押し込む際に引っ掛かりを感じ取ることができる。
図5に示す例では、磁力ピーク341の立ち上がりが略垂直であるため、作業者は引っ掛かりをさらに明瞭に感じ取ることができる。もちろん、磁力ピーク341の立ち上がり開始位置321が第1ポジション301から離れている場合においても、磁力ピーク341の立ち上がりは、略垂直であることが好ましい。
【0050】
作業者が可動部材12を押し込む際に引っ掛かりを感じた後、第2ポジション302に移行したことを明瞭に感じ取るという観点からは、磁力ピーク341と第2ポジション302とが十分に離れていることが好ましい。具体的には、磁力ピーク341の最大荷重に対応する位置は、第1ポジション301と第2ポジション302との中間位置よりも第1ポジション301に近いことが好ましい。これにより、作業者が磁力ピーク341を主ピーク342と勘違いすることを抑制することができる。
【0051】
図5では、仮に磁力部15による磁力ピーク341が設けられなかった場合の可動部材12の押し込み量と押し込みに要する荷重との関係を二点鎖線にて示す。二点鎖線が表示されていない位置では、磁力ピーク341が設けられなかった場合の押し込み量と荷重との関係は、実線にて示すもの(すなわち、磁力ピーク341が設けられている場合の押し込み量と荷重との関係)と同じである。
図5に示す例では、磁力ピーク341の有無にかかわらず、ON切替位置311における荷重A2は同じである。したがって、磁力ピーク341の最大荷重A1は、上述のように、磁力部15が設けられている場合のON切替位置311における荷重A2以上であり、かつ、磁力部15が設けられず磁力ピーク341が存在しないと仮定した場合のON切替位置311における荷重A2(詳細には、第1ON切替位置における荷重および第2ON切替位置における荷重のうち大きい方の荷重)以上でもある。
【0052】
また、イネーブルスイッチ1では、磁力ピーク341の有無にかかわらず、第2ポジション302における荷重A4は同じである。すなわち、イネーブルスイッチ1では、磁力ピーク341を設けた場合であっても、第2ポジション302にて可動部材12を保持する際に必要な荷重を、設計上変更する必要がない。このため、イネーブルスイッチ1を有する操作部を第2ポジション302にて長時間把持しても、作業者の負担は増加しない。また、磁力ピーク341を設けることにより、誤って可動部材12に触れたときや可動部材12に他の物体が接触したときに、意図せずイネーブルスイッチ1がON状態になることを抑制することもできる。
【0053】
なお、
図5では、磁力ピーク341が立ち下がってから第2ポジション302までの荷重の変化を、ON切替位置311における微小段差を除いて直線にて示しているが、これには限定されない。当該荷重の変化は、大きな変化が存在しなければ様々に変更されてよく、例えば、ON切替位置311を含めて直線であってもよい。
【0054】
次に、イネーブルスイッチ1の各構成の動作の詳細について、
図6ないし
図11を参照しつつ説明する。なお、モニタ部17の構造および動作については後述する。作業者が
図3に示す第1ポジション301から可動部材12を下方に向けて押し始めると、
図6に示すように、コイルバネ121が圧縮されつつ、可動部材12が下方へと移動する。このとき、
図6および
図7に示すガイド部16では、回動部材261の下端部263が部材262の上面を滑り、回動部材261が回動軸J1を中心に僅かに回動する。回動部材261は、
図6および
図7に示す状態においても、可動部材12の横方向への傾きを抑制する。
【0055】
図6に示す状態では、可動部材12の下部材12aから下方へと突出する略棒状の突出部122の下端が、磁力部15の磁性体ホルダ53の上端に接触する。磁力部15では、第2磁性体52が磁気引力により第1磁性体51に吸着されている。このため、
図6に示す状態から下方へと可動部材12を押し込もうとすると、当該磁気引力が抵抗力として働き、可動部材12の押し込みに要する荷重が増大する。すなわち、
図6に示す可動部材12の位置は、
図5中の磁力ピーク341の立ち上がり開始位置321である。立ち上がり開始位置321は、例えば、可動部材12の突出部122の長さや、保持部11に保持される磁性体ホルダ53の上端の位置等を変更することにより、容易に調節することができる。
【0056】
作業者が可動部材12に加える力を増加させ、当該力が
図5に示す磁力ピーク341の最大荷重A1を超えると、第1磁性体51による第2磁性体52の吸着が解除され、第2磁性体52、磁性体ホルダ53および可動部材12の下方への移動が再開される。第2磁性体52が第1磁性体51から下方に離間すると(正確には、第1磁性体51が収容される凹部の底板から下方に離間すると)、可動部材12の押し込みに要する荷重は急激に減少する。これにより、上述のように、可動部材12を押し込む作業者の指にクリック感が生じるとともに、可動部材12が、
図6に示す位置から、
図8に示す位置(すなわち、ON切替位置311)を速やかに通過して、
図9に示す位置(すなわち、第2ポジション302)へと速やかに到達する。上述のように、
図8に示すON切替位置311では、磁力部15の第2磁性体52は第1磁性体51から下方に離間しており、
図9に示す第2ポジション302では、第2磁性体52と第1磁性体51との間の上下方向の距離が拡大している。
【0057】
上述のクリック感は、例えば、磁力ピーク341の最大荷重A1等を変更することにより容易に調節することができる。最大荷重A1は、例えば、第1磁性体51と第2磁性体52との間に生じる磁気作用による力(すなわち、磁気引力)を変更することにより、容易に調節することができる。当該磁気引力は、例えば、磁石である第1磁性体51の磁力の大きさ、第1磁性体51を構成する磁石片511の個数や配置、第2磁性体52の材質や表面状態等を変更することによって、容易に調節することができる。
【0058】
可動部材12が
図6および
図7に示す位置から
図8に示す位置へと移動する際には、スライダ243の後端部243aと押し込み部材245の上端とが接触し、可動部材12の下降に伴って押し込み部材245も下降する。そして、
図8に示すように、押し込み部材245が予め定められた位置まで下降すると、スナップ機構133の特定の部位が押し込み部材245によって押される。その結果、スナップ機構133は、スナップアクションにより可動端子132を瞬時に下降させて下固定端子131に接触させ、接点13は閉の状態になる。
【0059】
可動部材12が
図9に示す第2ポジション302に到達すると、当接部材242の下端は、保持部11のベース部材111の上面に接する。詳細には、当接部材242の符号242aを付す部位が、ベース部材111の一部(
図9に示す例では、上述の部材111a)に接する。
図9に示す状態の可動部材12に下方に向かう力を加えると、当接部材242には、可動部材12に対して相対的に上方に向かう力が作用する。当接部材242の中央部の上面は、横方向外方に向かうに従って下方に向かう傾斜面246を含む。一方、スライダ243の先端の下面は横方向内方に向かうに従って上方に向かう傾斜面247を含む。傾斜面246と傾斜面247とはほぼ平行に接する。
【0060】
したがって、可動部材12に加える荷重を増加させて当接部材242から上方に向かう力がスライダ243に作用すると、横コイルバネ244からの力に逆らってスライダ243は横方向外方に向かって移動を開始する。このとき、縦コイルバネ241は収縮する。この状態が、
図5に示す位置302から位置332を経由して位置333に向かう状態である。
【0061】
可動部材12が
図9に示す状態から押し込まれ、傾斜面246の端部と傾斜面247の端部とが一致すると、当接部材242の中央部の上端の外側面とスライダ243の先端とが擦れるようにして可動部材12がさらに下降する。このとき、可動部材12の押し込みに要する荷重は急激に減少する。したがって、
図5に示す位置333から位置334に速やかに到達する。例えば、位置333と位置334とは略同じ位置であってもよい。以上の動作により、主ピーク342が得られる。
【0062】
図10および
図11は、可動部材12が最も押し込まれた状態を示す図である。
図10および
図11に示す状態では、可動部材12は第3ポジション303(
図5参照)に位置する。可動部材12が
図9に示す位置から
図10に示す位置へと移動する際には、第2ポジション302と第3ポジション303との間のOFF切替位置312において、スライダ243が横方向外方に移動し、スライダ243の後端部243aと押し込み部材245との上下方向の当接状態が解除される。その結果、スナップ機構133からの力を受けて押し込み部材245が上昇し、接点13は閉から開になる。
【0063】
図10および
図11に示すように、可動部材12が最も押し込まれると、縦コイルバネ241はさらに圧縮され、可動部材12の下部材12aが保持部11の部材262に近接し、ベース部材111に接触する。これにより、可動部材12は、これ以上下方に移動することができなくなる。このとき、磁力部15の第2磁性体52は、保持部11の底部近傍に位置し、上下方向に関して第1磁性体51から最も離間した状態となる。また、ガイド部16の回動部材261は倒伏し、可動部材12と保持部11の部材262との間の狭い空間に位置する。
【0064】
図10および
図11に示す状態で作業者が可動部材12から指を離すと(すなわち、可動部材12の押し込みが解除されると)、スライダ243の後端部243aと押し込み部材245とが横方向にずれた状態のまま可動部材12が上昇する。スライダ243が押し込み部材245の上端よりも上方に位置すると、横コイルバネ244の復元力によりスライダ243が移動し、
図3に示すように、スライダ243の後端部243aが押し込み部材245の直上に位置する。これにより、可動部材12が
図3の第1ポジション301に戻るまで、接点13は開の状態で維持される。すなわち、第3ポジション303からの可動部材12の復帰時には、イネーブルスイッチ1のOFF状態が維持される。なお、第2ポジション302において作業者が可動部材12から指を離すと、可動部材12は第1ポジション301に戻ってイネーブルスイッチ1はOFF状態に戻る。
【0065】
可動部材12が第3ポジション303から上昇して第1ポジション301へと復帰する際には、磁力部15の第2磁性体52も、コイルバネ54の復元力により磁性体ホルダ53と共に上昇する。そして、第2磁性体52がある程度まで上昇すると(例えば、
図9に示す位置と
図6に示す位置との間まで上昇すると)、第2磁性体52と第1磁性体51との間に生じる磁気引力により、第2磁性体52が第1磁性体51へと吸引される。当該磁気引力は、磁性体ホルダ53を介して可動部材12の突出部122に付与され、これにより、可動部材12の上昇が促進される。可動部材12が第2ポジション302から第1ポジション301へと復帰する際についても同様である。
【0066】
次に、イネーブルスイッチ1のモニタ部17の構造、および、モニタ部17の動作について、
図12ないし
図15を参照しつつ説明する。
図12は、
図1中のXII-XIIの位置におけるイネーブルスイッチ1の断面を示す縦断面図である。モニタ部17は、可動部材12の上下方向(すなわち、押し込み方向)における位置を示すモニタ信号を生成し、操作部へと送る。操作部側では、当該モニタ信号に基づいて可動部材12の位置を判断し、作業者に対して当該位置を表示する。
【0067】
モニタ部17は、第1モニタ部71と、第2モニタ部72とを備える。第1モニタ部71および第2モニタ部72は、可動部材12の下部材12aよりも下方において横方向に隣接しており、横方向に関して2つの接点13の間に配置される。
【0068】
第1モニタ部71と第2モニタ部72とは、略同様の構成を有する。第1モニタ部71および第2モニタ部72はそれぞれ、モニタ接点73と、モニタ接点ホルダ74とを備える。モニタ接点73は、上固定端子731と、可動端子732とを備える。可動端子732は、略上下方向に延びる略柱状のモニタ接点ホルダ74に固定され、上固定端子731と上下方向に対向する。モニタ接点ホルダ74は、保持部11に設けられた貫通穴に挿入され、上下方向に移動可能に保持部11によって保持される。
【0069】
図12に示す状態では、可動端子732は、可動端子732と保持部11の底部との間に設けられたコイルバネ75により、上固定端子731に付勢されて直接的に接触しており、モニタ接点73は閉の状態となっている。イネーブルスイッチ1において可動部材12が下方へと押し込まれる際には、モニタ接点ホルダ74が可動部材12と接触して可動部材12と共に下方へと移動する。このとき、モニタ接点ホルダ74に固定されている可動端子732も下方(すなわち、上下方向において上固定端子731から離れる方向)へと移動し、モニタ接点73が開の状態となる。すなわち、モニタ接点ホルダ74は、可動部材12の上下方向への移動に従ってモニタ接点73の一部である可動端子732を移動させることにより、モニタ接点73の開閉状態を切り替えるモニタ切替部である。モニタ切替部には、可動部材12、あるいは、可動部材12のうちモニタ接点ホルダ74に接触する部位が含まれてもよい。モニタ部17では、第1モニタ部71のモニタ接点73の開閉状態、および、第2モニタ部72のモニタ接点73の開閉状態に基づいて、上述のモニタ信号が生成される。
【0070】
図12に示すように、可動部材12が第1ポジション301に位置する状態では、第1モニタ部71のモニタ接点73、および、第2モニタ部72のモニタ接点73は、共に閉である。可動部材12が第1ポジション301から
図13に示すON切替位置311(すなわち、
図8と同じ位置)へと押し込まれると、可動部材12の下部材12aから下方へと突出する略棒状の突出部123の下端が、第1モニタ部71のモニタ接点ホルダ74の上端に接触し、モニタ接点ホルダ74を下方へと移動させる。これにより、第1モニタ部71のモニタ接点73の状態が閉から開へと移行する。このとき、第2モニタ部72のモニタ接点ホルダ74は可動部材12と接触していないため、第2モニタ部72のモニタ接点73は閉のままである。
図14に示すように、可動部材12が第2ポジション302(すなわち、
図9と同じ位置)に到達した状態でも同様に、第1モニタ部71のモニタ接点73は開であり、第2モニタ部72のモニタ接点73は閉である。
【0071】
また、可動部材12が
図14に示す第2ポジション302から
図15に示す第3ポジション303(すなわち、
図10と同じ位置)へと押し込まれると、可動部材12の下部材12aから下方へと突出する突出部124の下端が、第2モニタ部72のモニタ接点ホルダ74の上端に接触し、モニタ接点ホルダ74を下方へと移動させる。これにより、第2モニタ部72のモニタ接点73の状態が閉から開へと移行する。その結果、第1モニタ部71のモニタ接点73、および、第2モニタ部72のモニタ接点73は、共に開となる。
【0072】
このように、イネーブルスイッチ1では、第1ポジション301と第2ポジション302との間にて、第1モニタ部71のモニタ接点73の開閉状態のみが切り替えられ、第2モニタ部72のモニタ接点73の開閉状態は切り替えられない。また、第2ポジション302と第3ポジション303との間にて、第2モニタ部72のモニタ接点73の開閉状態のみが切り替えられ、第1モニタ部71のモニタ接点73の開閉状態は切り替えられない。すなわち、第1ポジション301では、第1モニタ部71のモニタ接点73は閉であり、第2モニタ部72のモニタ接点73も閉である。また、第2ポジション302では、第1モニタ部71のモニタ接点73は開であり、第2モニタ部72のモニタ接点73は閉である。第3ポジション303では、第1モニタ部71のモニタ接点73は開であり、第2モニタ部72のモニタ接点73も開である。
【0073】
モニタ部17からのモニタ信号を受け付ける操作部では、例えば、イネーブルスイッチ1がOFF状態の場合に、第1モニタ部71および第2モニタ部72の双方のモニタ接点73が閉であれば、可動部材12が第1ポジション301に位置すると判断される。また、イネーブルスイッチ1がOFF状態の場合に、第1モニタ部71および第2モニタ部72の双方のモニタ接点73が閉であれば、可動部材12が第3ポジション303に位置すると判断される。
【0074】
なお、第1モニタ部71におけるモニタ接点73の開閉状態は、上述の例とは反対であってもよい。第2モニタ部72におけるモニタ接点73の開閉状態についても同様である。具体的には、第1モニタ部71のモニタ接点73は、第1ポジション301において開であり、第2ポジション302および第3ポジション303において閉であってもよい。また、第2モニタ部72のモニタ接点73は、第1ポジション301および第2ポジション302において開であり、第3ポジション303において閉であってもよい。
【0075】
可動部材12が第3ポジション303から上昇して第1ポジション301へと復帰する際には、第1モニタ部71および第2モニタ部72の可動端子732も、コイルバネ75の復元力によりモニタ接点ホルダ74と共に上昇し、
図12に示すように上固定端子731に接触する。可動部材12が第2ポジション302から第1ポジション301へと復帰する際についても同様である。
【0076】
第1モニタ部71と上述の磁力部15(
図3参照)とを比較すると、第1モニタ部71の上固定端子731、可動端子732およびモニタ接点ホルダ74は、磁力部15の第1磁性体51、第2磁性体52および磁性体ホルダ53に対応付けることが可能である。また、第2モニタ部72の上固定端子731、可動端子732およびモニタ接点ホルダ74も、磁力部15の第1磁性体51、第2磁性体52および磁性体ホルダ53に対応付けることが可能である。
【0077】
第1モニタ部71および第2モニタ部72において可動端子732を上下方向に移動させるモニタ切替部であるモニタ接点ホルダ74は、磁力部15において第2磁性体52を上下方向に移動させる磁性体移動部である磁性体ホルダ53と略同様の構造を有する。具体的には、磁性体ホルダ53とモニタ接点ホルダ74とは、上下方向に延びる略棒状の部材である点で共通する。また、磁性体ホルダ53とモニタ接点ホルダ74とは、作業者により押し込まれる可動部材12に接触し、可動部材12の上下方向における移動に伴って移動する点でも共通する。磁性体ホルダ53とモニタ接点ホルダ74とは、可動部材12の移動に伴って移動する際の方向が、可動部材12の移動方向と略平行な方向であり、かつ、当該方向の同じ向きである点でも共通する。磁性体ホルダ53とモニタ接点ホルダ74とは、移動対象(すなわち、第2磁性体52および可動端子732)を、可動部材12の移動方向と略平行に移動させる点でも共通する。
【0078】
以下の説明では、第1モニタ部71の構成と第2モニタ部72の構成とを区別する場合、第1モニタ部71のモニタ接点73およびモニタ接点ホルダ74(すなわち、モニタ切替部)を、「第1モニタ接点73」および「第1モニタ接点ホルダ74(すなわち、第1モニタ切替部)」と呼ぶ。また、第2モニタ部72のモニタ接点73およびモニタ接点ホルダ74(すなわち、モニタ切替部)を、「第2モニタ接点73」および「第2モニタ接点ホルダ74(すなわち、第2モニタ切替部)」と呼ぶ。
【0079】
第1モニタ部71の第1モニタ接点ホルダ74と磁性体ホルダ53とは、可動部材12が第1ポジション301から第2ポジション302へと移動する際に、上述の移動対象(すなわち、第1モニタ接点73の可動端子732および第2磁性体52)の移動を開始する点でも共通する。このことからも、第1モニタ接点ホルダ74は、磁性体ホルダ53と略同様の構造を有するといえる。なお、磁性体ホルダ53による第2磁性体52の移動開始タイミングと、モニタ接点ホルダ74による可動端子732の移動開始タイミングとは、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0080】
イネーブルスイッチ1では、
図3に示すように、磁力部15に隣接する位置にもう1つの第2モニタ部72が設けられる。もう1つの第2モニタ部72の構造および動作は、上述の第2モニタ部72と同様であり、当該第2モニタ部72と略同じタイミングで開閉状態が切り替えられる。当該もう1つの第2モニタ部72の開閉状態も、上述のモニタ信号に含められて操作部へと送られる。このように、2つの第2モニタ部72が設けられることにより、一方の第2モニタ部72が故障したとしても、モニタ部17により可動部材12の位置(すなわち、イネーブルスイッチ1の状態)を検出することができる。
【0081】
上述のように、イネーブルスイッチ1では、ON切替位置311において接点13が開から閉へと移行することにより、イネーブルスイッチ1がOFF状態からON状態へと移行し、OFF切替位置312において接点13が閉から開へと移行することにより、イネーブルスイッチ1がON状態からOFF状態へと移行するが、これには限定されない。例えば、ON切替位置311では、接点13が閉から開へと移行することにより、イネーブルスイッチ1がOFF状態からON状態へと移行してもよい。また、OFF切替位置312では、接点13が開から閉へと移行することにより、イネーブルスイッチ1がON状態からOFF状態へと移行してもよい。
【0082】
上述のイネーブルスイッチ1では、2つの接点13が設けられるが、接点13の数は1つであってもよく、3つ以上であってもよい。また、イネーブルスイッチ1では、モニタ部17において、1つの第1モニタ部71と、2つの第2モニタ部72が設けられるが、第1モニタ部71および第2モニタ部72の数は適宜変更されてよい。例えば、第1モニタ部71の数は、2つ以上であってもよい。また、第2モニタ部72の数は、1つであってもよく、3つ以上であってもよい。
【0083】
モニタ部17では、第1モニタ部71および第2モニタ部72のうち、一方のみが設けられてもよい。この場合、モニタ部17では、第1ポジション301と第2ポジション302との間、および、第2ポジション302と第3ポジション303との間のいずれか一方において可動部材12が移動する際に、モニタ接点73の開閉状態が切り替えられる。
【0084】
以上に説明したように、イネーブルスイッチ1は、操作部に設けられて当該操作部による操作対象の操作を許可するスイッチである。イネーブルスイッチ1は、保持部11と、可動部材12と、接点13(例えば、第1接点13)と、接点機構20(上記例では、OFF切替機構14およびスナップ機構133)と、磁力部15とを備える。可動部材12は、保持部11に向かって押し込まれる。接点機構20は、可動部材12が保持部11に向かって押し込まれるに従って、接点13の開閉状態を、開および閉の一方である第1状態から、開および閉の他方である第2状態へと移行し、さらに第2状態から第1状態へと移行する。磁力部15は、第1磁性体51および第2磁性体52を有する。第1磁性体51および第2磁性体52の少なくとも一方は磁石である。第1磁性体51は、保持部11に固定されている。第2磁性体52は、可動部材12の押し込み方向への移動に伴って移動する。
【0085】
上述のように、可動部材12が押し込まれていない状態における保持部11に対する可動部材12の位置を第1ポジション301とする。また、可動部材12が最も押し込まれた状態における保持部11に対する可動部材12の位置を第3ポジション303とする。さらに、第1ポジション301と第3ポジション303との間において、押し込み量に対する荷重の増加割合が増大することにより可動部材12の押し込みに要する荷重が立ち上がって最大に至る最大立ち上がり343の立ち上がり開始位置を第2ポジション302とする。
【0086】
可動部材12が押し込まれる際に、接点13は、第1ポジション301と第2ポジション302との間のON切替位置311(例えば、第1ON切替位置)にて、上述の第1状態から第2状態へと(上記例では、開から閉へと)移行する。また、接点13は、第2ポジション302と第3ポジション303との間のOFF切替位置312(例えば、第1OFF切替位置)にて、上述の第2状態から第1状態へと(上記例では、閉から開へと)移行する。
【0087】
可動部材12が第1ポジション301とON切替位置311との間において押し込まれる際に、第2磁性体52は、第1磁性体51との間に生じる磁気作用による力(上述の磁気引力)に抗して移動する。第2磁性体52の当該磁気作用による力に抗した移動に必要な荷重は、一旦立ち上がって減少する磁力ピーク341を有する。磁力ピーク341の最大荷重A1は、磁力部15が設けられないと仮定した場合におけるON切替位置311での可動部材12の押し込みに要する荷重A2以上である。
【0088】
このように、イネーブルスイッチ1では、可動部材12を第1ポジション301から押し込む際に、ON切替位置311における接点13の切り替えよりも前に、上述の磁力ピーク341に起因するクリック感が作業者の指に生じる。また、当該クリック感が生じた後、可動部材12はON切替位置311を速やかに通過し、接点13の切り替えが速やかに行われる。これにより、作業者は、ON切替位置311における接点13の切り替えを容易に認識することができる。また、磁力ピーク341の生成に、第1磁性体51および第2磁性体52を有する磁力部15を用いることにより、上述のように、作業者が感じるクリック感や、クリック感が生じる位置(すなわち、磁力ピーク341の立ち上がり開始位置321)等を容易に調節することができる。換言すれば、イネーブルスイッチ1では、接点13の切り替えに係る調節を容易に行うことができる。
【0089】
上述のように、イネーブルスイッチ1は、上記接点13に加えて、他の接点13(例えば、第2接点13)をさらに備えることが好ましい。当該他の接点13は、可動部材12が押し込まれる際に、第1ポジション301と第2ポジション302との間の他のON切替位置311(例えば、第2ON切替位置)にて、上述の第1状態から第2状態へと(上記例では、開から閉へと)移行する。また、第2ポジション302と第3ポジション303との間の他のOFF切替位置312(例えば、第2OFF切替位置)にて上述の第2状態から第1状態へと(上記例では、閉から開へと)移行する。磁力ピーク341の最大荷重A1は、磁力部15が設けられないと仮定した場合における当該他のON切替位置311での可動部材12の押し込みに要する荷重A2以上である。
【0090】
イネーブルスイッチ1では、上述のように、磁力ピーク341に起因するクリック感が生じた後、可動部材12の下方への移動を途中で止めることはできず、可動部材12がON切替位置311を速やかに通過する。このため、2つの接点13(すなわち、第1接点13および第2接点13)において、上述の第1状態から第2状態への切り替わりタイミングがずれることを抑制することができる。換言すれば、2つの接点13の開閉状態の不一致を抑制することができる。その結果、当該開閉状態の不一致がエラーとして検出されることを抑制することができる。
【0091】
上述のように、第2磁性体52の第1磁性体51に対する相対移動方向は、上述の押し込み方向に平行であることが好ましい。これにより、第2磁性体52の当該相対移動に係る構造(上記例では、磁性体ホルダ53および可動部材12の突出部122)を簡素化することができる。その結果、イネーブルスイッチ1の構造を簡素化することができる。
【0092】
上述のように、イネーブルスイッチ1では、可動部材12が第2ポジション302から第1ポジション301へと復帰する際に、第1磁性体51と第2磁性体52との間に生じる磁気作用による力によって、可動部材12の移動が促進されることが好ましい。これにより、押し込まれた可動部材12が第1ポジション301へと復帰するために要する時間を短縮することができる。なお、可動部材12が第3ポジション303から第2ポジション302へと復帰する際にも、当該磁気作用による力によって可動部材12の移動が促進されてもよい。
【0093】
上述のように、イネーブルスイッチ1は、モニタ部17をさらに備えることが好ましい。モニタ部17は、可動部材12の押し込み方向における位置を示すモニタ信号を生成する。モニタ部17は、モニタ接点73と、モニタ切替部(上記例では、モニタ接点ホルダ74)とを備える。モニタ切替部は、可動部材12の押し込み方向への移動に従ってモニタ接点73の一部(上記例では、可動端子732)を移動させることにより、モニタ接点73の開閉状態を切り替える。可動部材12が押し込まれる際には、第1ポジション301と第2ポジション302との間にて、または、第2ポジション302と第3ポジション303との間にて、モニタ接点73の開閉状態が切り替えられる。モニタ部17では、モニタ接点73の開閉状態に基づいてモニタ信号が生成される。磁力部15は、モニタ切替部と同様の構造を有する磁性体移動部(上記例では、磁性体ホルダ53)をさらに備える。磁力部15における第2磁性体52は、モニタ接点73の上記一部(上記例では、可動端子732)に対応する。磁性体移動部は、可動部材12の押し込み方向への移動に従って第2磁性体52を移動させることにより、第2磁性体52の第1磁性体51に対する相対位置を変更する。
【0094】
イネーブルスイッチ1では、モニタ部17を設けることにより、可動部材12の位置を精度良く検出することができる。また、可動部材12の位置を検出するためのモニタ部17の構造を、磁力部15に流用することにより、イネーブルスイッチ1の構造が複雑化することを抑制しつつ、上述のクリック感を生じさせる磁力部15を設けることができる。
【0095】
上述のように、モニタ部17は、第1モニタ接点73と、第1モニタ切替部(上記例では、第1モニタ接点ホルダ74)と、第2モニタ接点73と、第2モニタ切替部(上記例では、第2モニタ接点ホルダ74)とを備えることも好ましい。第1モニタ切替部は、可動部材12の押し込み方向への移動に従って第1モニタ接点73の一部を移動させることにより、第1モニタ接点73の開閉状態を切り替える。第2モニタ切替部は、可動部材12の押し込み方向への移動に従って第2モニタ接点73の一部を移動させることにより、第2モニタ接点73の開閉状態を切り替える。可動部材12が押し込まれる際には、第1ポジション301と第2ポジション302との間にて、第1モニタ接点73の開閉状態が切り替えられ、第2ポジション302と第3ポジション303との間にて第2モニタ接点73の開閉状態が切り替えられる。モニタ部17では、第1モニタ接点73の開閉状態および第2モニタ接点73の開閉状態に基づいてモニタ信号が生成される。磁力部15は、第1モニタ切替部または第2モニタ切替部と同様の構造を有する磁性体移動部(上記例では、磁性体ホルダ53)をさらに備える。磁力部15における第2磁性体52は、第1モニタ接点73の上記一部(上記例では、第1モニタ部71の可動端子732)または第2モニタ接点73の上記一部(上記例では、第2モニタ部72の可動端子732)に対応する。磁性体移動部は、可動部材12の押し込み方向への移動に従って第2磁性体52を移動させることにより、第2磁性体52の第1磁性体51に対する相対位置を変更する。
【0096】
イネーブルスイッチ1では、第1モニタ接点73および第2モニタ接点73等を備える上記モニタ部17を設けることにより、可動部材12の位置をさらに精度良く検出することができる。また、可動部材12の位置を検出するためのモニタ部17の構造を、磁力部15に流用することにより、イネーブルスイッチ1の構造が複雑化することを抑制しつつ、上述のクリック感を生じさせる磁力部15を設けることができる。
【0097】
イネーブルスイッチ1では、磁力部15の構造は上記例には限定されず、様々に変更されてよい。例えば、
図16ないし
図18に示す第2の実施の形態に係るイネーブルスイッチ1aでは、磁力部15とは構造が異なる磁力部15aが、磁力部15に代えて設けられてもよい。
図16ないし
図18は、磁力部15aが設けられたイネーブルスイッチ1aの縦断面図である。
図16ないし
図18における可動部材12の上下方向(すなわち、押し込み方向)の位置はそれぞれ、第1ポジション301、第2ポジション302および第3ポジション303である。以下の説明では、イネーブルスイッチ1aの各構成のうち、イネーブルスイッチ1の構成と同様の構成には同符号を付す(後述するイネーブルスイッチ1b,1cにおいても同様)。
【0098】
磁力部15aは、2つの接点13の間に配置される。磁力部15aは、それぞれが磁性体である第1磁性体51aおよび第2磁性体52aと、磁性体移動部53aとを備える。第1磁性体51aは、第1磁性体51と同様、ネオジム磁石等の永久磁石であり、保持部11により保持される。第2磁性体52aは、鉄等の金属により形成された略板状の、磁石ではない部材であり、図中の右側の部位は、他の部位に対して折り曲げられた折り曲げ部521aとなっている。
図16に示す状態では、第2磁性体52aの折り曲げ部521aは、第1磁性体51aの下方に位置し、第1磁性体51aに吸着されている。第2磁性体52aの図中の左側の端部は、保持部11に設けられた回転軸522aに取り付けられている。第2磁性体52aは、回転軸522aを中心として回転可能である。
【0099】
磁性体移動部53aは、磁性体ホルダ53と略同様に、上下方向に延びる略柱状の部材であり、上下方向の中央部に段差を有している。磁性体移動部53aは、第1磁性体51aの側方(
図16に示す例では、左側)において保持部11に設けられた貫通穴に挿入され、上下方向に移動可能に保持部11によって保持される。
【0100】
イネーブルスイッチ1aでは、可動部材12が、
図16に示す第1ポジション301から
図17に示す第2ポジション302へと押し込まれる途中で、可動部材12の突出部122の下端が磁性体移動部53aの上端に接触し、磁性体移動部53aが下方へと移動する。そして、磁性体移動部53aの上記段差が、第2磁性体52aに上側から接触し、第2磁性体52aに下向きの力が加えられる。上述のように、第2磁性体52aは第1磁性体51aに吸着されているため、第1磁性体51aと第2磁性体52aとの間の磁気引力により、上述の磁力ピーク341(
図5参照)が生じる。その後、磁気引力に抗して第2磁性体52aの吸着が解除され、作業者の指にクリック感が生じるとともに、第2磁性体52aは第1磁性体51aから下方に離間し(正確には、第1磁性体51aが収容される保持部11の凹部の底板から下方に離間し)、
図17に示す第2ポジション302へと速やかに移動する。
【0101】
可動部材12が、
図17に示す第2ポジション302から
図18に示す第3ポジション303へと押し込まれる際には、第2磁性体52aは磁性体移動部53aにより押し下げられて、さらに下方へと移動する。可動部材12が第3ポジション303から第1ポジション301へと復帰する際には、コイルバネ54aの復元力により第2磁性体52aが押し上げられ、上述の底板を介して第1磁性体51aに吸着される。
【0102】
磁力部15aが設けられるイネーブルスイッチ1aにおいても、上記と略同様に、接点13の切り替えに係る調節を容易に行うことができる。また、2つの接点13の開閉状態の不一致を抑制することができる。
【0103】
図19ないし
図21に示す第3の実施の形態に係るイネーブルスイッチ1bでは、磁力部15とは構造が異なる磁力部15bが、磁力部15に代えて設けられる。
図19ないし
図21は、磁力部15bが設けられたイネーブルスイッチ1bの縦断面図である。
図19ないし
図21における可動部材12の上下方向(すなわち、押し込み方向)の位置はそれぞれ、第1ポジション301、第2ポジション302および第3ポジション303である。
【0104】
磁力部15bは、それぞれが磁性体である第1磁性体51bおよび第2磁性体52bを備える。第2磁性体52bは、上述のガイド部16の回動部材261である。詳細には、磁石ではない金属製の回動部材261の横方向の端部において横方向の内側を向くように折り曲げられた下端部263が、磁力部15bの第2磁性体52bとして利用される。第1磁性体51bは、ネオジム磁石等の永久磁石であり、厚さ方向における第2磁性体52bの奥側(すなわち、
図19中における右側)に、第2磁性体52bに隣接して配置される。第1磁性体51bは、保持部11に固定されている。
図19に示す状態では、第2磁性体52bは、第1磁性体51bに吸着されている。
【0105】
イネーブルスイッチ1bでは、可動部材12が、
図19に示す第1ポジション301から
図20に示す第2ポジション302へと押し込まれる際に、第2磁性体52bに厚さ方向の手前側に向かう(すなわち、第1磁性体51bから離れる方向に向かう)力が加えられる。上述のように、第2磁性体52bは第1磁性体51bに吸着されているため、第1磁性体51bと第2磁性体52bとの間の磁気引力により、上述の磁力ピーク341(
図5参照)が生じる。その後、磁気引力に抗して第2磁性体52bの吸着が解除され、作業者の指にクリック感が生じるとともに、回動部材261が
図19中の時計回り方向に回動して第2磁性体52bが第1磁性体51bから手前側に離間し、
図20に示す第2ポジション302へと速やかに移動する。
【0106】
可動部材12が、
図20に示す第2ポジション302から
図21に示す第3ポジション303へと押し込まれる際には、第2磁性体52bはさらに手前側へと移動する。可動部材12が第3ポジション303から第1ポジション301へと復帰する際には、回動部材261の上端部が可動部材12によって引き上げられることにより、回動部材261が
図21中の反時計回り方向に回動して第2磁性体52bが奥側へと移動し、第1磁性体51bに吸着される。
【0107】
磁力部15bが設けられるイネーブルスイッチ1bにおいても、上記と略同様に、接点13の切り替えに係る調節を容易に行うことができる。また、2つの接点13の開閉状態の不一致を抑制することができる。
【0108】
次に、本発明の第4の実施の形態に係るイネーブルスイッチ1cについて説明する。
図22ないし
図24は、イネーブルスイッチ1cの縦断面図である。
図22ないし
図24における可動部材12の上下方向(すなわち、押し込み方向)の位置はそれぞれ、第1ポジション301、第2ポジション302および第3ポジション303である。
【0109】
イネーブルスイッチ1cでは、磁力部15に代えて、磁力部15cが設けられる。磁力部15cは、2つの接点13の間にて第2モニタ部72に隣接して配置される。磁力部15cは、それぞれが磁性体である第1磁性体51cおよび第2磁性体52cと、磁性体ホルダ53cとを備える。磁性体ホルダ53cは、上述の磁性体ホルダ53と同様に、略上下方向に延びる略柱状の部材である。磁性体ホルダ53cは、保持部11に設けられた貫通穴に挿入され、上下方向に移動可能に保持部11によって保持される。
【0110】
第2磁性体52cは、略直方体状または略平板状のネオジム磁石等の永久磁石である。第2磁性体52cは、
図22中において磁性体ホルダ53cの右側に配置され、磁性体ホルダ53cに固定されている。第2磁性体52cは、磁性体ホルダ53cと共に上下方向に移動する。すなわち、磁性体ホルダ53cは、第2磁性体52cを上下方向に移動する磁性体移動部である。第1磁性体51cは、第2磁性体52cと上下方向に対向する位置において、保持部11に設けられた凹部に収容されて保持部11により保持される。第1磁性体51cは、鉄等の金属により形成された略直方体状または略平板状の、磁石ではない部材である。
図22に示す状態では、第1磁性体51cは、磁気引力により当該凹部の底板を介して第2磁性体52cに吸着されている。
【0111】
イネーブルスイッチ1cでは、
図22中における磁性体ホルダ53cの左側にモニタ接点73cが設けられる。モニタ接点73cは、モニタ部17cの一部である。モニタ接点73cは、リードスイッチ733と、モニタ磁石734とを備える。モニタ磁石734は、略直方体状または略平板状のネオジム磁石等の永久磁石である。モニタ磁石734は、
図22中において磁性体ホルダ53cの左側に配置され、磁性体ホルダ53cに固定されている。モニタ磁石734は、磁性体ホルダ53cを挟んで第2磁性体52cと横方向に並ぶ。モニタ磁石734は、例えば、第2磁性体52cと略同形状である。
図22に示す例では、第2磁性体52cとモニタ磁石734とは別個の磁石である。第2磁性体52cおよびモニタ磁石734では、磁石の種類、磁力、形状等は同じであってもよく、異なっていてもよい。なお、第2磁性体52cおよびモニタ磁石734は、磁性体ホルダ53cを中心とする略円筒状または略円環板状の1つの磁石であってもよい。
【0112】
リードスイッチ733は、モニタ磁石734と上下方向に対向する位置において、保持部11に設けられた凹部に収容されて保持部11により保持される。リードスイッチ733は、磁性体ホルダ53cを挟んで第1磁性体51cと横方向に並ぶ。リードスイッチ733は、モニタ磁石734との距離に応じて開閉状態が切り替わるスイッチである。具体的には、リードスイッチ733は、所定距離内にモニタ磁石734が存在する状態では、モニタ磁石734の磁界により閉となり、モニタ磁石734が当該所定距離よりも離れると開となる。モニタ磁石734は、磁性体ホルダ53cと共に上下方向に移動する。すなわち、磁性体ホルダ53cは、モニタ接点73cの一部であるモニタ磁石734を移動させることにより、モニタ接点73cの開閉状態を切り替えるモニタ切替部でもある。
【0113】
イネーブルスイッチ1cでは、可動部材12が、
図22に示す第1ポジション301から
図23に示す第2ポジション302へと押し込まれる途中で、可動部材12の突出部122の下端が磁性体ホルダ53cの上端に接触し、磁性体ホルダ53cに下向きの力が加えられる。上述のように、磁性体ホルダ53cに固定されている第2磁性体52cは、保持部11に保持されている第1磁性体51cを吸着しているため、第2磁性体52cと第1磁性体51cとの間の磁気引力により、上述の磁力ピーク341(
図5参照)が生じる。その後、磁気引力に抗して第1磁性体51cの吸着が解除され、作業者の指にクリック感が生じるとともに、第2磁性体52cは第1磁性体51cから下方に離間し(正確には、第1磁性体51cが収容される保持部11の凹部の底板から下方に離間し)、
図23に示す第2ポジション302へと速やかに移動する。
【0114】
また、可動部材12が、第1ポジション301から第2ポジション302へと押し込まれる際には、モニタ接点73cにおいて、モニタ磁石734がリードスイッチ733から下方に離れることにより、リードスイッチ733の状態が閉から開へと移行する。
【0115】
可動部材12が、
図23に示す第2ポジション302から
図24に示す第3ポジション303へと押し込まれる際には、第2磁性体52cは磁性体ホルダ53cと共にさらに下方へと移動する。同様に、モニタ磁石734もさらに下方へと移動するため、リードスイッチ733は開状態にて維持される。
【0116】
モニタ接点73cは、上述の第1モニタ部71と同様に、第1ポジション301において閉であり、第2ポジション302および第3ポジション303において開である。イネーブルスイッチ1cでは、モニタ接点73cおよび磁性体ホルダ53cにより第1モニタ部71cが構成される。なお、イネーブルスイッチ1cでは、第1モニタ部71cおよび第2モニタ部72よりも厚さ方向の奥側に、イネーブルスイッチ1と同様に、第1モニタ部71およびもう1つの第2モニタ部72が配置されている。上述のモニタ信号は、これらの第1モニタ部71および第2モニタ部72におけるモニタ接点73の開閉状態に加えて、モニタ接点73cの開閉状態にも基づいて生成される。
【0117】
可動部材12が第3ポジション303から第1ポジション301へと復帰する際には、コイルバネ54cの復元力により、第2磁性体52c、モニタ磁石734および磁性体ホルダ53cが押し上げられる。第2磁性体52cは、上述の底板を介して第1磁性体51cを吸着する。
【0118】
磁力部15cが設けられるイネーブルスイッチ1cにおいても、上記と略同様に、接点13の切り替えに係る調節を容易に行うことができる。また、2つの接点13の開閉状態の不一致を抑制することができる。
【0119】
上述のモニタ接点73cでは、モニタ磁石734の磁力やリードスイッチ733の種類を変更することにより、リードスイッチ733の開閉状態の切り替えが発生するモニタ磁石734の位置を容易に調節することができる。例えば、モニタ磁石734の磁力を強くすることにより、可動部材12が第1ポジション301から第2ポジション302へと押し込まれる間、リードスイッチ733は閉状態にて維持され、可動部材12が第2ポジション302から第3ポジション303へと押し込まれる際に、リードスイッチ733の状態が閉から開へと移行するようにしてもよい。この場合、モニタ接点73cは、上述の第2モニタ部72と同様に、第1ポジション301および第2ポジション302において閉であり、第3ポジション303において開である。すなわち、モニタ接点73cおよび磁性体ホルダ53cにより第2モニタ部が構成される。
【0120】
以上に説明したように、イネーブルスイッチ1cでは、モニタ部17cは、モニタ接点73cと、磁性体ホルダ53cとを備える。磁性体ホルダ53cは、可動部材12の押し込み方向への移動に従ってモニタ接点73cの一部(上記例では、モニタ磁石734)を移動させることにより、モニタ接点73cの開閉状態を切り替えるモニタ切替部である。可動部材12が押し込まれる際には、第1ポジション301と第2ポジション302との間にて、または、第2ポジション302と第3ポジション303との間にて、モニタ接点73cの開閉状態が切り替えられる。モニタ部17cでは、モニタ接点73cの開閉状態に基づいてモニタ信号が生成される。磁性体ホルダ53cは、第2磁性体52cをモニタ接点73cの上記一部(上記例では、モニタ磁石734)と共に移動することにより、第2磁性体52cの第1磁性体51cに対する相対位置を変更する。
【0121】
イネーブルスイッチ1cでは、モニタ接点73c等を備えるモニタ部17cを設けることにより、可動部材12の位置を精度良く検出することができる。また、モニタ接点73cの開閉状態を切り替えるモニタ切替部、および、第2磁性体52cを移動する磁性体移動部として、1つの構成(上記例では、磁性体ホルダ53c)を共用することにより、イネーブルスイッチ1cの構造を簡素化することができる。
【0122】
上述のように、モニタ接点73cおよび磁性体ホルダ53cが第1モニタ部71cを構成する場合、モニタ部17cは、第1モニタ接点であるモニタ接点73cと、第1モニタ切替部である磁性体ホルダ53cと、第2モニタ接点73と、第2モニタ切替部である第2モニタ接点ホルダ74とを備える。磁性体ホルダ53cは、可動部材12の押し込み方向への移動に従ってモニタ接点73cの一部(上記例では、モニタ磁石734)を移動させることにより、モニタ接点73cの開閉状態を切り替える。第2モニタ接点ホルダ74は、可動部材12の押し込み方向への移動に従って第2モニタ接点73の一部(上記例では、可動端子732)を移動させることにより、第2モニタ接点73の開閉状態を切り替える。可動部材12が押し込まれる際には、第1ポジション301と第2ポジション302との間にてモニタ接点73cの開閉状態が切り替えられ、第2モニタ接点73の開閉状態は切り替えられない。また、可動部材12が押し込まれる際には、第2ポジション302と第3ポジション303との間にて第2モニタ接点73の開閉状態が切り替えられ、モニタ接点73cの開閉状態は切り替えられない。モニタ部17cでは、モニタ接点73cの開閉状態および第2モニタ接点73の開閉状態に基づいてモニタ信号が生成される。イネーブルスイッチ1cでは、第2磁性体52cが、磁性体ホルダ53cによりモニタ接点73cの上記一部(上記例では、モニタ磁石734)と共に移動されることにより、第2磁性体52cの第1磁性体51cに対する相対位置が変更される。
【0123】
イネーブルスイッチ1cでは、モニタ接点73cおよび第2モニタ接点73等を備えるモニタ部17cを設けることにより、可動部材12の位置をさらに精度良く検出することができる。また、モニタ接点73cの開閉状態を切り替えるモニタ切替部、および、第2磁性体52cを移動する磁性体移動部として、1つの構成(上記例では、磁性体ホルダ53c)を共用することにより、イネーブルスイッチ1cの構造を簡素化することができる。
【0124】
上述のように、モニタ接点73cおよび磁性体ホルダ53cが第2モニタ部を構成する場合、モニタ部17cは、第1モニタ接点73(
図12ないし
図15参照)と、第1モニタ切替部である第1モニタ接点ホルダ74と、第2モニタ接点であるモニタ接点73cと、第2モニタ切替部である磁性体ホルダ53cとを備える。第1モニタ接点ホルダ74は、可動部材12の押し込み方向への移動に従って第1モニタ接点73の一部(上記例では、可動端子732)を移動させることにより、第1モニタ接点73の開閉状態を切り替える。磁性体ホルダ53cは、可動部材12の押し込み方向への移動に従ってモニタ接点73cの一部(上記例では、モニタ磁石734)を移動させることにより、モニタ接点73cの開閉状態を切り替える。可動部材12が押し込まれる際には、第1ポジション301と第2ポジション302との間にて第1モニタ接点73の開閉状態が切り替えられ、モニタ接点73cの開閉状態は切り替えられない。また、可動部材12が押し込まれる際には、第2ポジション302と第3ポジション303との間にてモニタ接点73cの開閉状態が切り替えられ、第1モニタ接点73の開閉状態は切り替えられない。モニタ部17cでは、第1モニタ接点73の開閉状態およびモニタ接点73cの開閉状態に基づいてモニタ信号が生成される。イネーブルスイッチ1cでは、第2磁性体52cが、磁性体ホルダ53cによりモニタ接点73cの上記一部(上記例では、モニタ磁石734)と共に移動されることにより、第2磁性体52cの第1磁性体51cに対する相対位置が変更される。
【0125】
イネーブルスイッチ1cでは、第1モニタ接点73およびモニタ接点73c等を備えるモニタ部17cを設けることにより、可動部材12の位置をさらに精度良く検出することができる。また、モニタ接点73cの開閉状態を切り替えるモニタ切替部、および、第2磁性体52cを移動する磁性体移動部として、1つの構成(上記例では、磁性体ホルダ53c)を共用することにより、イネーブルスイッチ1cの構造を簡素化することができる。
【0126】
上述のイネーブルスイッチ1,1a~1cでは、様々な変更が可能である。
【0127】
例えば、イネーブルスイッチ1の磁力部15では、第1磁性体51は、永久磁石ではなく電磁石等の他の種類の磁石であってもよい。また、磁力部15では、第2磁性体52が磁石であり、第1磁性体51は鉄等の金属により形成された、磁石ではない部材であってもよい。磁力部15では、第1磁性体51および第2磁性体52の双方が磁石であってもよい。磁力部15a~15cにおいても同様である。
【0128】
磁力部15では、磁力ピーク341は、第1磁性体51と第2磁性体52との間の磁気引力により生成されるが、これには限定されず、第1磁性体51と第2磁性体52との間の磁気斥力により生成されてもよい。磁力部15a~15cにおいても同様である。
【0129】
上述の磁力部15,15a,15cでは、第2磁性体52,52a,52cは可動部材12の押し込み方向に略平行な方向に移動し、磁力部15bでは、第2磁性体52bである回動部材261の下端部263は、当該押し込み方向に略垂直な方向に移動するが、これには限定されない。磁力部15,15a~15cにおける第2磁性体52,52a~52cの移動方向は、当該押し込み方向に対して平行でも垂直でもない方向であってもよい。
【0130】
イネーブルスイッチ1では、接点13の数は、3以上であってもよい。また、接点13の開閉状態を切り替える接点機構20の構造は、様々に変更されてよい。可動部材12は、押し込まれることにより回動するレバーであってもよい。可動部材12が回動するタイプの場合、可動部材12の押し込み量は回動角に対応する。イネーブルスイッチ1a~1cにおいても同様である。
【0131】
イネーブルスイッチ1では、スナップアクションを利用して接点13の開閉が行われるが、これには限定されない。例えば、ON切替位置311近傍において、可動部材12が保持部11に押し込まれるに従って、接点13に含まれる2つの端子が漸次近づいて接触することにより、接点が閉になってもよい。この場合、磁力ピーク341から第2ポジション302に速やかに移行することにより、接点13が閉になる際の放電を抑制することができ、接点13の溶着を抑制することができる。イネーブルスイッチ1a~1cにおいても同様である。
【0132】
イネーブルスイッチ1では、第2ポジション302と第3ポジション303との間の主ピーク342(
図5参照)は、必ずしも、上述の縦コイルバネ241、当接部材242、スライダ243および横コイルバネ244等を利用して実現される必要はなく、他の様々な構造により実現されてよい。例えば、主ピーク341は、磁力ピーク341と略同様に磁力を利用して実現されてもよい。具体的には、例えば、第2モニタ部72において、モニタ接点73の上固定端子731および可動端子732に代えて少なくとも一方が磁石である2つの磁性体を設け、一方の磁性体をモニタ接点ホルダ74と略同形状の磁性体ホルダに固定する。これにより、可動部材12が第2ポジション302から第3ポジション303へと押し込まれる際に、当該一方の磁性体が他方の磁性体との間に生じる磁気作用による力に抗して下方へと移動し、主ピーク342が実現される。このように、主ピーク342も磁力を利用して実現することにより、イネーブルスイッチ1の構造をさらに簡素化することができる。なお、主ピーク342の形状は、上記2つの磁性体の間に生じる磁気作用による力等を変更することにより、容易に調節することができる。イネーブルスイッチ1aにおいても同様である。
【0133】
イネーブルスイッチ1,1a~1cが設けられる操作部は、教示ペンダントの操作部には限定されず、ホイスト等の重機の操作部、車両の操作部、電動車いすの操作部等の様々な操作部に利用可能である。
【0134】
上記実施形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明は、産業ロボット、ホイスト、車いす等の多岐に亘る操作対象の操作に利用される操作部のイネーブルスイッチとして利用可能である。
【符号の説明】
【0136】
1,1a~1c イネーブルスイッチ
11 保持部
12 可動部材
13 接点
15,15a~15c 磁力部
17,17c モニタ部
51,51a~51c 第1磁性体
52,52a~52c 第2磁性体
53,53c 磁性体ホルダ
53a 磁性体移動部
73 モニタ接点(第1モニタ接点および第2モニタ接点)
73c モニタ接点
74 モニタ接点ホルダ
132 可動端子
301 第1ポジション
302 第2ポジション
303 第3ポジション
311 ON切替位置
312 OFF切替位置
341 磁力ピーク
343 最大立ち上がり
732 可動端子
734 モニタ磁石