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特開2023-167988双ドラム式連続鋳造装置および薄肉鋳片の製造方法
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  • 特開-双ドラム式連続鋳造装置および薄肉鋳片の製造方法 図1
  • 特開-双ドラム式連続鋳造装置および薄肉鋳片の製造方法 図2
  • 特開-双ドラム式連続鋳造装置および薄肉鋳片の製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167988
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】双ドラム式連続鋳造装置および薄肉鋳片の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 11/06 20060101AFI20231116BHJP
【FI】
B22D11/06 330B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079571
(22)【出願日】2022-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 浩太
(72)【発明者】
【氏名】宮嵜 雅文
(72)【発明者】
【氏名】吉田 直嗣
【テーマコード(参考)】
4E004
【Fターム(参考)】
4E004DA13
4E004QA01
4E004QA20
(57)【要約】
【課題】研磨剤等を用いることなく、鋳造開始から終了までの間、冷却ドラムの端面とサイド堰との摺動面のシール不十分による溶融金属洩れおよび鋳バリ発生を有利に回避することのできる、双ドラム式連続鋳造装置および薄肉鋳片の製造方法を提供する。
【解決手段】冷却ドラムのサイド堰との摺動面に、面外高さ0.20mm超、0.50mm以下、冷却ドラム周方向の幅0.50mm以下、冷却ドラム半径方向長さが摺動面の幅以下、摺動面に沿った配設ピッチが0.50mm以上、150mm以下である突条部を有し、該突条部の、冷却ドラム周方向の幅と摺動面に沿った配設ピッチは、突条部の側面全面が露出するように設定され、サイド堰のセラミックス摺動面に非定常的な損傷が生じた際にもセラミックス摺動面を速やかに研磨してシール性を回復させる、双ドラム式連続鋳造装置、および該鋳造装置を用いた薄肉鋳片の製造方法が提供される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する一対の冷却ドラムと一対のサイド堰とによって形成された溶鋼溜まり部に溶鋼を供給し、前記冷却ドラムの周面に凝固シェルを形成および成長させて薄肉鋳片を製造する双ドラム式連続鋳造装置であって、
前記冷却ドラムの前記サイド堰との摺動面に、
(a)面外方向の高さが0.20mm超、0.50mm以下、
(b)冷却ドラム周方向の幅が0.50mm以下、
(c)冷却ドラム半径方向の長さが前記摺動面の幅以下、
(d)前記摺動面に沿った配設ピッチが0.50mm以上、150mm以下
である突条部を有し、
前記配設ピッチは、前記突条部の側面全面が露出するように設定される、
双ドラム式連続鋳造装置。
【請求項2】
前記突条部の形状が、冷却ドラムの半径方向に垂直な断面で、三角形、四角形、または曲率部を有する張出形状のいずれかの横断面形状である、請求項1に記載の双ドラム式連続鋳造装置。
【請求項3】
前記突条部が前記冷却ドラム半径方向で複数に分割され、さらに、前記冷却ドラム半径方向で互いに隣接する前記分割された突条部同士が前記摺動面に沿って相互に位置ずれして千鳥状に配設される、請求項1または請求項2に記載の双ドラム式連続鋳造装置。
【請求項4】
回転する一対の冷却ドラムと一対のサイド堰によって形成された溶鋼溜まり部に溶鋼を供給し、前記冷却ドラムの周面に凝固シェルを形成および成長させて薄肉鋳片を製造する薄肉鋳片の製造方法であって、
請求項1または請求項2に記載の双ドラム式連続鋳造装置を用いる、薄肉鋳片の製造方法。
【請求項5】
回転する一対の冷却ドラムと一対のサイド堰によって形成された溶鋼溜まり部に溶鋼を供給し、前記冷却ドラムの周面に凝固シェルを形成および成長させて薄肉鋳片を製造する薄肉鋳片の製造方法であって、
請求項3に記載の双ドラム式連続鋳造装置を用いる、薄肉鋳片の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、双ドラム式連続鋳造装置および薄肉鋳片の製造方法に関し、詳しくは、双ドラム式連続鋳造装置のサイド堰と冷却ドラムの端面との間のシールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
双ドラム式連続鋳造技術は、図1に示すように、互いに反対方向に回転する一対の冷却ドラム10と、冷却ドラム10の両端の摺動面12に押し付けられて摺動接触する一対のサイド堰20とによって湯溜まり部30を形成する。さらに、湯溜まり部30に連続的に供給した溶融金属31を冷却ドラム10の周面11で冷却して凝固シェル(図示せず)を生成させる。そして、この凝固シェルを一対の冷却ドラム10の最接近部(ドラムキス点)で圧着して一体化し、薄肉鋳片35とする。
【0003】
この技術を担うサイド堰20は、サイド堰ケースに収容された不定型耐火物と、該不定型耐火物に植設されたベース部材と、該ベース部材の冷却ドラムの端面側の摺動面12に対応する面に植設されたセラミックスと、により構成されている。そして、連続鋳造時は、このサイド堰20のセラミックスを、冷却ドラムの端面側の摺動面12に密接させた状態で摺動接触させて均一な摩耗溝を形成させることにより、溶鋼洩れを防止している。
【0004】
しかし、サイド堰20と冷却ドラム10と溶融金属31との三者が接する三重点、正確には、このような三重点が冷却ドラムの周面に沿って連なった部位(単に、三重点部位ともいう)の近傍では地金が生成しやすい。この地金が剥離してドラムキス点に噛みこまれと、冷却ドラム10とサイド堰20の相対位置の変動が生じ、しばしばサイド堰20のセラミックス摺動面の均一な摩耗溝が損傷して新たな線状の溝が発生する。このような新たな線状の溝から、冷却ドラム10とサイド堰20との摺動面のシール不十分による溶融金属洩れが発生し、鋳造停止になる場合もある。鋳造停止に至らない場合でも、薄肉鋳片35の端部に鋳込みバリ(鋳バリ)(単にバリともいう。)と呼ばれる突起が形成され、後工程の圧延や搬送に悪影響を及ぼすため、このような新たな線状の溝は好ましくない。
【0005】
冷却ドラム10とサイド堰20との摺動面のシール不十分による溶融金属洩れを防止する技術として、例えば特許文献1や特許文献2に開示されている双ドラム式連続鋳造装置1がある。特許文献1に開示の双ドラム式連続鋳造装置1では、サイド堰20との摺動面である冷却ドラムの端面側の摺動面12に、研磨剤供給装置(図示せず)が配設される。この研磨剤供給装置によって研磨剤が供給され、さらに冷却ドラム10の回転によりサイド堰20のセラミックスの摺動面に送られる。その結果、セラミックスが速やかに研磨されて平滑化することにより、セラミックス側の摺動面と冷却ドラムの端面側の摺動面12との間隙からの溶融金属洩れを防止する。
【0006】
また、特許文献2に開示の双ドラム式連続鋳造装置1は、一対のサイド堰20のセラミックスの、冷却ドラムの端面側の摺動面12との摺動面(図示せず)が、JIS B 0601で規定された最大高さ(Rmax)で12.5S~200Sの表面粗さとする。これにより、サイド堰20の摺動面が速やかに磨耗して平坦になるようにし、冷却ドラムの端面側の摺動面12との間隙からの溶融金属洩れを防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001-314945号公報
【特許文献2】特開平09-220641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、研磨剤を冷却ドラムの端面側の摺動面12に塗布するため、冷却ドラムの周面11にも研磨剤が付着することによって、薄肉鋳片35の表面疵や材質劣化を引き起こすことが懸念される。
【0009】
また、特許文献2に記載の技術では、サイド堰20のセラミックス摺動面が速やかに磨耗して平坦になるようにして冷却ドラムの端面側の摺動面との間隙からの溶融金属洩れを防止することができるのは1度限りである。そのため、一旦平坦になった後は、鋳造の開始から終了に至る鋳造の全期間に渡って起こり得るシール不十分による溶融金属漏れに対処できないという問題がある。
【0010】
本発明は、前述した状況に鑑みてなされたものであって、表面疵等の品質問題を起こす可能性のある研磨剤を用いることなく、鋳造開始から終了までの全期間に渡って、冷却ドラムの端面とサイド堰との摺動面のシール不十分による溶融金属洩れおよびそれによる薄肉鋳片端部のバリ発生を有利に回避することのできる、双ドラム式連続鋳造装置および薄肉鋳片の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
[1]回転する一対の冷却ドラムと一対のサイド堰とによって形成された溶鋼溜まり部に溶鋼を供給し、前記冷却ドラムの周面に凝固シェルを形成および成長させて薄肉鋳片を製造する双ドラム式連続鋳造装置であって、
前記冷却ドラムの前記サイド堰との摺動面に、
(a)面外方向の高さが0.20mm超、0.50mm以下、
(b)冷却ドラム周方向の幅が0.50mm以下、
(c)冷却ドラム半径方向の長さが前記摺動面の幅以下
(d)前記摺動面に沿った配設ピッチが0.50mm以上、150mm以下
である突条部を有し、
前記配設ピッチは、前記突条部の側面全面が露出するように設定される、双ドラム式連続鋳造装置。
[2]前記突条部の形状が、冷却ドラムの半径方向に垂直な断面で、三角形、四角形、または曲率部を有する張出形状のいずれかの横断面形状である、[1]に記載の双ドラム式連続鋳造装置。
[3]前記突条部が前記冷却ドラム半径方向で複数に分割され、さらに、前記冷却ドラム半径方向で互いに隣接する前記分割された突条部同士が前記摺動面に沿って相互に位置ずれして千鳥状に配設される、[1]または[2]に記載の双ドラム式連続鋳造装置。
[4]回転する一対の冷却ドラムと一対のサイド堰によって形成された溶鋼溜まり部に溶鋼を供給し、前記冷却ドラムの周面に凝固シェルを形成および成長させて薄肉鋳片を製造する薄肉鋳片の製造方法であって、[1]または[2]に記載の双ドラム式連続鋳造装置を用いる、薄肉鋳片の製造方法。
[5]回転する一対の冷却ドラムと一対のサイド堰によって形成された溶鋼溜まり部に溶鋼を供給し、前記冷却ドラムの周面に凝固シェルを形成および成長させて薄肉鋳片を製造する薄肉鋳片の製造方法であって、[3]に記載の双ドラム式連続鋳造装置を用いる、薄肉鋳片の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
上述のように、本発明によれば、表面疵等の品質問題を起こす可能性のある研磨剤を用いることなく、鋳造開始から終了までの全期間に渡って、冷却ドラムの端面とサイド堰との摺動面のシール不十分による溶融金属洩れおよびそれによる薄肉鋳片端部のバリ発生を有利に回避することのできる、双ドラム式連続鋳造装置および薄肉鋳片の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態における双ドラム式連続鋳造装置の例を斜視図で説明する図である。
図2】本発明の一実施形態における横断面三角形の突条部を、冷却ドラム半径方向から見た部分断面図で模式的に説明する図である。
図3】本発明の一実施形態における横断面三角形の突条部の冷却ドラムの端面側の摺動面への配設例を、冷却ドラムの端面側の摺動面に垂直な方向から見た部分側面図で模式的に説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態である双ドラム式連続鋳造装置およびその双ドラム式連続鋳造装置を用いた薄肉鋳片の製造方法について、添付した図面を参照して説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態における双ドラム式連続鋳造装置の例を斜視図で説明する図であり、図2は、本発明の一実施形態における横断面三角形の突条部を、冷却ドラム半径方向から見た部分断面図で模式的に説明する図である。
【0016】
また、図3は、本発明の一実施形態における横断面三角形の突条部の冷却ドラムの端面側の摺動面への配設例を、冷却ドラムの端面側の摺動面に垂直な方向から見た部分側面図で模式的に説明する図である。同図(a)は、摺動面の幅方向全幅に渡る突条部の摺動方向での配設例を示している。また、同図(b)は、摺動面の幅方向で2分割され、さらに摺動面に沿って相互に位置ずれして千鳥状に配設された突条部の配設例を示している。
【0017】
図1に示すような本実施形態の双ドラム式連続鋳造装置1による連続鋳造では、定常状態において、冷却ドラム10の端面側の摺動面12を、サイド堰20のセラミックスに密接させた状態で摺動接触させる。これにより、サイド堰20のセラミックスに均一な摩耗溝を形成させてシール性を確保し、溶融金属洩れを防止する。しかし、上述したような地金のドラムキス点への噛み等のために、冷却ドラム10とサイド堰20の相対位置が変動してセラミックス摺動面の均一な摩耗溝が損傷し、シール不良が発生するような非定常状態が起こり得る。このような事態に備えて、図2図3に示すように、本実施形態の冷却ドラム10の端面側の摺動面12には所定の突条部15が配設されている。これによりサイド堰20のセラミックス摺動面を速やかに研磨して均一な摩耗溝を再形成させることができる。そのため、本実施形態では、非定常状態においてもシール不良による溶融金属漏れを起こすことがない。
【0018】
すなわち、図1に示すような本実施形態の双ドラム式連続鋳造装置1では、図2図3に示すような冷却ドラム10のサイド堰20との摺動面12に所定の突条部15を設けている。そのため、上述のような鋳造の定常状態、非定常状態にかかわらず、定常的にサイド堰20のセラミックス摺動面を摩耗させることにより、シール性を確保して溶融金属洩れを防止する。
【0019】
次に、本実施形態の冷却ドラム10のサイド堰20との摺動面12に配設される突条部15の具体的な条件について図2図3を参照しながら説明する。
【0020】
突条部15の面外方向の高さhは、0.20mm超、0.50mm以下とする。突条部15の面外方向の高さhが0.20mm以下であると、上述のような鋳造の非定常状態の際に、サイド堰20のセラミックス摺動面の摩耗が十分に進行せず、速やかに均一な摩耗溝を再形成させることができないためである。また、突条部15の面外方向の高さhが0.50mmを超えるほど大きいと、サイド堰20のセラミックス摺動面の摩耗が進み、冷却ドラムの端面とサイド堰20との摺動面に間隙ができて漏鋼が発生する懸念があるためである。
【0021】
突条部15の冷却ドラム周方向の幅wは、0.50mm以下とする。突条部15の冷却ドラム周方向の幅wが0.50mmを超えるほど大きいと、冷却ドラムの端面とサイド堰20との摺動面との接触面積が過大となり面接触するようになる。このような場合は、冷却ドラムの端面とサイド堰20との摺動面に間隙ができやすく、漏鋼が発生する懸念があるためである。
【0022】
突条部15の冷却ドラム半径方向の長さは、摺動面12の幅以下とする。図3(a)は、突条部15の冷却ドラム半径方向の長さが摺動面12の幅と一致する場合の例である。突条部15の冷却ドラム半径方向の長さは、摺動面12の幅を超えて設けることはそもそも設置面がなく不可能であり、また、突条部15によるサイド堰20のセラミックス摺動面の研磨効果が得られる限りにおいて摺動面12以下とすることができるからである。なお、摺動面12の幅は、一般的に10mm±5mm程度である。
【0023】
突条部15の摺動面12に沿った配設ピッチpは、0.50mm以上、150mm以下とする。この配設ピッチpが0.50mm未満となるほど小さいと、長時間鋳造した際に、サイド堰20のセラミックス摺動面の摩耗粉が小さい配設ピッチの突条部15の間隙に詰まるためにサイド堰20のセラミックス摺動面の摩耗が進行しなくなるためである。また、この配設ピッチpを150mm超となるほど大きくすると、単位面積当たりの突条部15の数が極端に少なくなり、サイド堰20のセラミックス摺動面の摩耗が十分に進行しなくなるためである。
【0024】
さらに、突条部の摺動面に沿った配設ピッチは、突条部の側面全面が露出するように設定される必要がある。例えば突条部15の幅wが0.50mmであり、ピッチpが突条部15の幅wと同じ0.50mmであって、典型的には突条部の横断面形状が四角形である場合には、次のような問題があるからである。すなわち、このような場合は、突条部15の側面全面が露出しない状態となり、突条部15が配設されない場合と同じになり、突条部15としてサイド堰20のセラミックス摺動面を研磨する機能を果たし得ないためである。
【0025】
なお、突条部15のピッチpは、突条部15の横断面形状に頂点がある場合は、図2に示すように、この頂点間の距離pと定義する。また、そのような頂点がない場合は、突条部15の横断面形状の上部の中心位置を頂点とみなすことにより、同様にピッチpを定義する。
【0026】
突条部15の横断面形状は、三角形、四角形、または曲率部を有する張出形状のいずれかであることが好ましい。この横断面形状が三角形の場合は、図2に示すように、突条部15の頂部16が、セラミックス摺動面に対する単位面積当たりの押圧力を効率的に高めて、セラミックス摺動面の摩耗を促進することができるため好ましい。一方で、この横断面形状が三角形の場合は、高い押圧力に応じて頂部16の摩耗が進みやすい。そのため、このような突条部15自体の摩耗促進傾向を緩和できる突条部15の横断面形状として、四角形や曲率部を有する張出形状とすることもできる。なお、曲率部を有する張出形状の典型例としては、一部に半円形状や半楕円形状を含む場合があるが、これに限定されない。また、突条部15の横断面形状が三角形や四角形の場合は、角部が面取り形状であるものを含むものであってもよい。
【0027】
突条部15の摺動面12上での配設は、図3(a)に示すような突条部15の冷却ドラム半径方向の長さが摺動面12の幅と一致する場合に限られない。図3(b)に示すように、突条部15が冷却ドラム半径方向で複数に分割され、さらに、冷却ドラム半径方向で互いに隣接する分割突条部同士が摺動面12に沿って相互に千鳥状に配設されてもよい。このような突条部15の千鳥状配設の場合は、サイド堰20のセラミックス摺動面の摩耗粉を、突条部15同士の間隙からより効率的に排除することができるため好ましい。なお、突条部15の冷却ドラム半径方向での分割は、等分割でも不等分割でもよい。
【0028】
突条部15は、冷却ドラムの端面側の摺動面12に形成されることから、冷却ドラムの端面側の摺動面12のめっき層と同様の耐熱衝撃性が求められる。そのため、突条部15の材質は、冷却ドラムの端面側の摺動面12のめっき層と同様に耐熱衝撃性を有するニッケルまたはニッケル基合金とするのが好ましい。さらに、耐摩耗性を向上させる場合は、冷却ドラムの端面側の摺動面12のめっき層とともに突条部15の材質は、タングステン含有のニッケル基合金とすることができる。
【0029】
また、突条部15の形成方法としては、まず、冷却ドラムの端面側の摺動面12に厚さ2~3mm程度の通常のめっき層を形成した後に、切削加工等の機械加工によりめっき層表面側から削り出して形成すればよい。なお、この場合の切削加工深さは、深くても本発明の突条部15の面外方向高さ0.50mm程度であり、従来の冷却ドラムの端面側の摺動面12のめっき層の機能を損なうことはない。なお、必要に応じて切削加工前のめっき層の形成厚さを、この切削加工深さを考慮した厚さに増厚するようにしてもよい。
【0030】
ここで、本実施形態において製造される薄肉鋳片35は、例えば成分組成が各種組成の鋼とすることができ、その幅が100mm以上2000mmの範囲内、厚さが0.5mm以上6mm以下の範囲内とされるものでもよい。
【実施例0031】
以下に、本発明の効果を確認すべく実施した実験結果について説明する。なお、本発明は上記で実施形態として説明した各種の形態を含み、以下で説明する実施例の形態に限定されるものではない。
【0032】
まず、ここでの薄肉鋳片の製造実験の共通条件について説明する。双ドラム式連続鋳造装置を用いて、質量%で0.05%C-0.6%Si-1.5%Mn-0.03%Al、残部Fe及び不純物とされた組成の鋼からなる薄肉鋳片を鋳造した。双ドラム式連続鋳造装置の冷却ドラムは、直径600mm、幅600mmとし、内部水冷式のドラム本体と、その外周部に装着した銅製スリーブとからなり、銅製スリーブの周面にNiめっきを施したものを用意した。また、冷却ドラムの端面側の摺動面にはNiめっきを施し、表1に示すように冷却ドラムの端面側の摺動面に突条部を設けた。また、サイド堰の摺動面をなすセラミックスの材質は窒化ホウ素(BN)とした。サイド堰は、鋳造中、荷重3.9~14.7kNで冷却ドラムに押し付けた。溶鋼プールにおける溶鋼深さは212mm、冷却ドラムの周速度50m/minにて、厚さ2mmの薄肉鋳片を鋳造した。鋳造実験後、薄肉鋳片の鋳バリの有無を確認するとともに、サイド堰の外観を観察してセラミックス摺動面に均一な摩耗溝の他に非定常状態で発生する線状の溝がないか、またサイド堰の下端に欠損がないかを確認した。なお、本実施例では鋳バリの有無で合格不合格を判断した。
【0033】
表1に発明例、比較例の突条部条件とその評価結果についてまとめて示す。発明例1~12および比較例2~6は、冷却ドラムの端面側の摺動面に横断面形状が三角形の突条部を付与したものである。比較例1は、このような突条部を付与しない条件のものである。また、発明例13、14は、突条部の横断面形状が四角形のものであり、発明例15は、突条部の横断面形状が一辺0.3mmの正方形の上半分を曲率半径0.15mmの半円に置換した、曲率部を有する張出形状のものである。また、発明例11、12は、突条部が冷却ドラム半径方向で複数に分割され、さらに、冷却ドラム半径方向で互いに隣接する分割突条部同士が摺動面に沿って相互に千鳥状に配設されたものである。発明例11では2等分割された例であり、発明例12では3等分割された例である。なお、発明例11、12および突条部を付与しない比較例1を除いた他の発明例、比較例では、突条部の冷却ドラム半径方向での分割は行われていない。
【0034】
表1に示すとおり、本発明の要件を全て満たす発明例1~15では、薄肉鋳片の鋳バリは皆無であり、鋳造後のサイド堰にも、非定常状態で発生する線状の溝やサイド堰下端の欠損の個所などの異常は見られなかった。一方、比較例1~6ではサイド堰に非定常状態で発生する線状の溝およびサイド堰下端の欠損のいずれかが観察され、薄肉鋳片の端部に鋳バリが発生した。
【0035】
【表1】
【符号の説明】
【0036】
1 双ドラム式連続鋳造装置
10 冷却ドラム
11 冷却ドラムの周面
12 冷却ドラムの端面側の摺動面
15 突条部
16 頂部
20 サイド堰
30 湯溜まり部
31 溶融金属
35 薄肉鋳片

図1
図2
図3