(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167989
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20231116BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20231116BHJP
B60W 30/18 20120101ALI20231116BHJP
【FI】
G08G1/16 D
B60W60/00
B60W30/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079572
(22)【出願日】2022-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100116942
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 雅信
(74)【代理人】
【識別番号】100167704
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 裕人
(72)【発明者】
【氏名】工藤 新也
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BB34
3D241CC01
3D241CC08
3D241CC17
3D241CD07
3D241CE04
3D241CE05
3D241DC31Z
3D241DC59Z
5H181AA01
5H181BB04
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC05
5H181CC12
5H181CC14
5H181FF05
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL09
5H181LL15
(57)【要約】
【課題】車両走行時の安全性の向上。
【解決手段】車両に搭載される制御装置は、車両の進行方向に前記車両に対して指示を行う矢印式信号機が存在し、かつ前記矢印式信号機の矢印の方向の車線を横断する横断者に対する横断者用信号機が存在する交差点を対象交差点として判定し、対象交差点と判定した場合に、横断者用信号機が停止指示で、車両が矢印式信号機に従った走行を行う該当状況か否かを判定し、該当状況と判定した場合に、乗員への警告制御又は走行抑制制御のいずれかを含む安全支援処理を実行する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される制御装置であって、
一又は複数のプロセッサと、
前記一又は複数のプロセッサによって実行されるプログラムが記憶された一又は複数の記憶媒体と、を備え、
前記プログラムは、一又は複数の命令を含み、
前記命令は、前記一又は複数のプロセッサに、
前記車両の進行方向に前記車両に対して指示を行う矢印式信号機が存在し、かつ前記矢印式信号機の矢印の方向の車線を横断する横断者に対する横断者用信号機が存在する交差点を対象交差点として判定させ、
前記対象交差点と判定した場合に、前記横断者用信号機が停止指示で、前記車両が前記矢印式信号機に従った走行を行う該当状況か否かを判定させ、
前記該当状況と判定した場合に、乗員への警告制御又は走行抑制制御のいずれかを含む第1の安全支援処理を実行させる
制御装置。
【請求項2】
さらに前記命令は、
前記一又は複数のプロセッサに、
前記該当状況と判定した場合において、前記横断者用信号機により停止している横断者の存在を判定した場合は、乗員への横断者存在通知又は前記第1の安全支援処理における走行抑制制御よりも抑制度合いの高い走行抑制制御のいずれかを含む第2の安全支援処理を実行させる
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記矢印式信号機は、前記車両が対向車走行路を横切らない方向へのターンを許可する信号機であり、
前記横断者用信号機は、前記矢印式信号機とは別の信号機で、前記ターンの方向に設けられている信号機である
請求項1又は請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記車両は自動運転車両である
請求項1又は請求項2に記載の制御装置。
【請求項5】
前記矢印式信号機は、矢印形状の青点灯により前記車両が矢印方向に進行可能であることを示す信号機である
請求項1又は請求項2に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両に搭載され車両の動作を制御する制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、交差点への車両の進入可能タイミングに合わせた運転支援を行う技術が開示されている。その運転支援装置は、交差点にある複数の信号機の灯火状態の遷移サイクルを定める複数種類の遷移サイクルデータをそれぞれ含む複数の灯火パターンデータと、複数の灯火パターンデータが交差点に適用される期間をそれぞれ定める適用期間データとを保持する地図データベース211を参照する。そして現在が適用期間データにより定められた期間のいずれに該当するかに基づいて、現在の灯火パターンデータを決定し、交差点の信号機の現在の灯火状態と、当該交差点の現在の灯火パターンデータに基づいて、当該交差点への車両の進入可能タイミングを推定し、進入可能タイミングに基づいて車両の運転支援を実行する。
【0003】
下記特許文献2には、自動運転中の自車が左折を開始した後、走行経路上の横断歩道の停止線に到達する前に、歩道上に設けられた監視エリア内にて、移動体が横断歩道に向かって移動していることを検出し、移動体の移動速度が所定の速度以上であることを検出した場合、速度制御部に自車を横断歩道の停止線前にて一旦停止させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-17034号公報
【特許文献2】特開2021-62768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
交通信号機には、矢印表示を行う矢印式信号機が存在する。ドライバにより運転される車両、又は自動運転車両に限らず、矢印式信号機に従って左折や右折を行う場合がある。
ところが、車両が矢印式信号機に従って、対向車線を横切らない方向へのターン、例えば日本国の場合の左折(例えば米国の場合の右折)をした場合に、その車両の左折先の横断歩道の歩行者用信号機が青になるような状況があり得る。当然車両側は停止して歩行者を横断させなければならないが、矢印式信号機による左折(対向車線を横切らない方向へのターン)の場合、ドライバの注意力が低下することがあり、より安全性を向上させる技術が求められている。
【0006】
そこでこのような状況において有効な制御を行う技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施の形態の制御装置は、車両に搭載される制御装置であって、一又は複数のプロセッサと、前記一又は複数のプロセッサによって実行されるプログラムが記憶された一又は複数の記憶媒体と、を備え、前記プログラムは、一又は複数の命令を含み、前記命令は、前記一又は複数のプロセッサに、前記車両の進行方向に前記車両に対して指示を行う矢印式信号機が存在し、かつ前記矢印式信号機の矢印の方向の車線を横断する横断者に対する横断者用信号機が存在する交差点を対象交差点として判定させ、前記対象交差点と判定した場合に、前記横断者用信号機が停止指示で、前記車両が前記矢印式信号機に従った走行を行う該当状況か否かを判定させ、前記該当状況と判定した場合に、乗員への警告制御又は走行抑制制御のいずれかを含む第1の安全支援処理を実行させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車両が矢印式信号機の矢印に従ってターンするという、運転者が意識を他に向けにくい状況下、或いは自動運転においてより緻密な制御が必要になる状況下で、歩行者や自転車などの横断者の安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態の車両の制御構成のブロック図である。
【
図2】実施の形態の制御の対象となる交差点の説明図である。
【
図3】実施の形態の制御の対象となる交差点の状況の説明図である。
【
図4】実施の形態の制御の対象となる交差点の状況の説明図である。
【
図5】実施の形態の処理例のフローチャートである。
【
図6】実施の形態の他の処理例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の制御装置の実施の形態を説明する。制御装置は車両に搭載されるものであり、車両における車両制御システムの一部を構成する装置であるとする。特には特定の状況下での安全性を向上させるための制御処理(安全支援処理)を行う制御装置である。実施の形態では、走行制御装置2の1つの機能として安全支援処理が行われる場合を例に挙げて説明する。
【0011】
なお実施の形態では、「左折」「右折」という用語を用いるが、日本国のように車両が左側走行を行う国や地域を想定し、「左折」とは、対向車走行路を横切らない方向へのターンを意味する。また「右折」は対向車走行路を横切る方向へのターンを意味する。従って実施の形態でいう「左折」の状況は、米国等の車両が右側走行を行う国や地域の場合では右折の状況であると理解されたい。
【0012】
<1.車両制御システムの構成>
図1に、車両100に搭載される車両制御システム1の例を示している。この車両制御システム1は、走行制御装置2を含む。
走行制御装置2は、設定した車速で車両100を定速走行させたり、或いは車両100を先行車に追従走行させたりする運転支援制御を行うプロセッサにより構成される。
或いは走行制御装置2は、いわゆる自動運転レベルのレベル3以上の自動運転機能を実現するプロセッサとして構成されてもよい。
【0013】
なお
図1は、車両制御システム1が備える各構成のうち、本発明に係る要部の構成を中心に示したものである。従って、車両制御システム1が
図1に示していない構成を備えていてもよい。また車両制御システム1が図示の全ての構成を備えていなくてもよい。
【0014】
車両制御システム1は、走行制御装置2、外部環境認識装置3、地図ロケータ4、通信部5、表示/音制御部6、エンジン制御部7、トランスミッション制御部8、ブレーキ制御部9、操舵制御部10を備えている。これらの各部はバス17を介して相互に接続されており、各種の制御信号や情報の通信を行う。
【0015】
なお
図1では、地図ロケータ4とともに、例えば全地球衛星航法システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)用の受信器であるGNSS受信機21と、高精度の地図データが記憶された地
図DB(Database)22を示している。
本実施の形態に関しては、車両制御システム1としては、これら地図ロケータ4、GNSS受信機21、地
図DB22を備えない構成も考えられる。
なお地図ロケータ4とは、自動運転における走行経路判定等に用いる狭義のロケータのみでなく、GNSSを利用したナビゲーションシステムなども含む。つまり現在位置と周辺の交差点情報を取得できるものを指す。
【0016】
外部環境認識装置3は、車両100の外部環境を認識し外部環境情報を取得するための機能を備えた1又は複数の装置を示している。
例えば外部環境認識装置3は、車両100の前方を所定の視野範囲で撮像可能なカメラ18や、カメラ18から取得した画像に対する各種の処理を行う画像処理部19により構成される。また外部環境認識装置3は、ミリ波レーダーやLiDER(ライダー)など、物体(人、自転車など、横断者用信号機に従うもの)との相対距離を検出できる距離検出部20を備える場合もある。
【0017】
カメラ18は、ステレオカメラとされてもよいし、単眼カメラでもよい。少なくとも交通信号機の点灯状態や歩行者等の横断者の存在を確認するための撮像を行うカメラであるとする。
【0018】
カメラ18は1又は複数の撮像部を備える。撮像部は光学系と撮像素子とを備えて構成され、光学系により撮像素子の撮像面に被写体像が結像されて受光光量に応じた電気信号が画素単位で得られる。そして撮像部で得られた電気信号はA/D変換や所定の補正処理が施され、画素単位で所定階調による輝度値を表すデジタル画像信号(撮像画像データ)として画像処理部19に供給される。
【0019】
画像処理部19は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等CPU、ROM、RAM等を備えたマイクロコンピュータで構成され、カメラ18等の撮像部によって得られた撮像画像データに基づき、車外環境の認識に係る所定の画像処理を実行する。
【0020】
画像処理部19は、撮像画像データに基づく各種の画像解析処理を実行し、自車両の前方の立体物データや区画線(センターラインや車線境界線など)等の前方情報を認識する。そして、これら認識情報等に基づいて自車両が走行している道路や車線(自車走行車線)、自車走行車線上の物体の検出を行う。例えば自車両に先行して走行する先行車両、白線データ、道路に沿って存在するガードレール、縁石等の側壁データ、車両等の立体物データ、一時停止線、交通信号機、踏切、横断歩道、レーン等を検出する。また、カメラ18の視野角、配置等によっては、画像処理部19は自車両と並進する並進車両を検出することもできる。
【0021】
また画像処理部19はカメラ18の撮像画像に基づいて周囲の物体を認識すると共に、その挙動を認識することもできる。例えば先行車両や並進車両の速度、加速度(加速又は減速による正負の加速度)、進行方向の変化、ターンシグナルランプの点滅、交通信号機の点灯状態、点灯色等を認識することも可能である。
【0022】
画像処理部19は、上記のような各種の周囲環境の情報を例えば撮像画像データのフレームごとに算出し、算出した情報を逐次、記憶部に記憶させたり、走行制御装置2に送信したりする。
【0023】
走行制御装置2は、一又は複数のプロセッサと、該プロセッサによって実行されるプログラムが記憶された一又は複数の記憶媒体とを備える。例えば走行制御装置2はCPU、ROM、RAM等を備えたマイクロコンピュータで構成される。
走行制御装置2は、外部環境認識装置3や、地図ロケータ4や、通信部5や、センサ・操作子類16が備える各種のセンサ等から得られる情報や、操作入力情報などに基づいて、運転支援又は自動運転のための各種の制御処理を実行する。
【0024】
この走行制御装置2は、同じくマイクロコンピュータで構成されたエンジン制御部7、トランスミッション制御部8、ブレーキ制御部9、操舵制御部10の各制御部とバス17を介して接続されており、これら各制御部との間で相互にデータ通信を行うことが可能とされる。走行制御装置2は、上記の各制御部のうち必要な制御部に対して指示を行って運転支援に係る動作(運転支援制御)或いは自動運転制御を実行させる。
【0025】
走行制御装置2が実行する運転支援制御としては、例えばオートレーンキープ制御、衝突被害軽減ブレーキ制御(AEB:Autonomous Emergency Braking )、車間距離制御付クルーズコントロール(ACC:Adaptive Cruise Control)、自動車線変更制御、追い越し制御などが想定される。
或いは走行制御装置2が実行する自動運転制御としては、レベル3の条件付き自動運転の制御、レベル4の特定条件下での完全自動運転制御、レベル5の完全自動運転制御などが想定される。
【0026】
本実施の形態では、走行制御装置2は、これらの運転支援制御又は自動運転制御に加えて、特定の状況における安全支援処理を行う安全支援処理部2aとしての機能を有する。安全支援処理の例については後述する。
【0027】
通信部5は、ネットワーク通信やいわゆるV2V通信(車車間通信)や路車間通信を行うことが可能とされている。走行制御装置2は通信部5によって受信した各種の情報を取得することができる。また通信部5はインターネット等のネットワーク通信により各種情報、例えば現在地の周辺環境情報、道路情報等を取得することもできる。
【0028】
表示/音制御部6は、乗員に対して各種通知制御を行う。すなわち表示/音制御部6は、車両100のフロントコンソール等におけるディスプレイなどによる表示部23や、音出力部24を制御して、各種の表示や音声出力を実行させる。例えば表示/音制御部6は、メッセージ、警告などのための表示や音の出力を制御することができる。具体的には後述の安全支援処理による警告出力などを行う。
【0029】
センサ・操作子類16は、車両100に設けられた各種のセンサや操作子を包括的に表している。センサ・操作子類16が有するセンサとしては、自車両の速度を検出する車速センサ16a、エンジンの回転数を検出するエンジン回転数センサ16b、アクセルペダルの踏込み量からアクセル開度を検出するアクセル開度センサ16c、操舵角を検出する舵角センサ16d、ヨーレート(Yaw Rate)を検出するヨーレートセンサ16e、ブレーキペダルの操作や非操作に応じてONまたはOFFされるブレーキスイッチ16fなどがある。
【0030】
またセンサ・操作子類16における操作子としては、図示していないが、エンジンの始動/停止を指示するためのイグニッションスイッチや、ターンシグナルの操作レバー、運転支援制御関連の操作として例えば運転モードを切り換えるための操作子などがある。
なお、これらは例示に過ぎず、これら以外にも各種のセンサや操作子が設けられる。
【0031】
センサ・操作子類16からの各種の検出信号や操作信号は、走行制御装置2、エンジン制御部7、トランスミッション制御部8、ブレーキ制御部9、操舵制御部10などの必要各部に供給される。
【0032】
エンジン制御部7は、走行制御装置2からの指示や、センサ・操作子類16における所定のセンサからの検出信号や、操作子による操作入力情報等に基づき、エンジン関連アクチュエータ12として設けられた各種アクチュエータを制御する。
エンジン関連アクチュエータ12としては、例えばスロットル弁を駆動するスロットルアクチュエータや燃料噴射を行うインジェクタ等のエンジン駆動に係る各種のアクチュエータが設けられる。
【0033】
トランスミッション制御部8は、走行制御装置2からの指示や、センサ・操作子類16における所定のセンサからの検出信号や、操作子による操作入力情報等に基づき、トランスミッション関連アクチュエータ13として設けられた各種のアクチュエータを制御する。トランスミッション関連アクチュエータ13としては、例えば自動変速機の変速制御を行うためのアクチュエータが設けられる。
【0034】
ブレーキ制御部9は、走行制御装置2からの指示や、センサ・操作子類16における所定のセンサからの検出信号や、操作子による操作入力情報等に基づき、ブレーキ関連アクチュエータ14として設けられた各種のアクチュエータを制御する。
ブレーキ関連アクチュエータ14としては、例えば、ブレーキブースターからマスターシリンダへの出力液圧やブレーキ液配管内の液圧をコントロールするための液圧制御アクチュエータ等、ブレーキ関連の各種のアクチュエータが設けられる。
【0035】
操舵制御部10は、例えば走行制御装置2から与えられた目標の操舵角に応じて必要なステアトルクを求め、操舵関連アクチュエータ15を制御することで、必要な自動操舵を実現する。
【0036】
地図ロケータ4は、GNSS受信機21と、地
図DB22を用いて車両100についての現在位置を高精度に特定することが可能とされている。例えば地図ロケータ4は、車両100が走行している道路だけでなく走行レーンについても特定可能とされている。
【0037】
<2.安全支援処理を行う状況>
本実施の形態において走行制御装置2が安全支援処理部2aの機能による安全支援処理を行う状況について説明する。
【0038】
この安全支援処理は、
図2、
図3、
図4のように、左折矢印90Lがある矢印式信号機90がある交差点で安全性を向上させるものである。
交差点は十字路、T字路、五叉路など、多様であるが、いずれの場合でも安全支援処理が発動される可能性はある。T字路が典型的なシチュエーションであるため、
図2、
図3、
図4ではT字路を例にしている。
【0039】
図2はT字路の交差点であり、T字路に突き当たる車線93に対して矢印式信号機90が設けられている。自車としての車両100は、このT字路に突き当たる車線93から進入する場合を想定している。
信号機92は、車線93が突き当たる車線94に対して設けられている信号機である。
また車線94を横断するための横断歩道95が存在し、その横断歩道95に横断者用信号機91が設けられているとする。
つまりこの交差点は、車線93側からみて左折した方向に横断者用信号機91が存在する交差点である。
【0040】
なお、説明上、歩行者用信号機、自転車用信号機など横断者に対して指示する信号機を総称して「横断者用信号機」と呼ぶこととしている。
また「横断者」とは歩行者や自転車など、横断者用信号機に従う人を指す。
【0041】
図2は、矢印式信号機90が「赤」で左折矢印90Lが非点灯の状態である。車両100は車線93を進行して、この交差点に進入しようとしている。車線94側の信号機92は「青」であり、横断者用信号機91は「赤」であり、横断者120が信号待ちをしている。
【0042】
図3は、矢印式信号機90の左折矢印90Lが点灯して左折可となった状態を示している。横断者用信号機91は「赤」のままである。
車両100は車線93から交差点に進入し、左折しようとしている。
なお車両100の前方の破線はカメラ18の視野範囲であり、例えば車両100はこの視野範囲で矢印式信号機90、横断者用信号機91の点灯状態や、横断者120(横断待機者を含む)などを検知できる。
【0043】
図4は矢印式信号機90が、車両100の左折中に、左折矢印90Lの点灯から「青」に変化した状態を示している。矢印式信号機90が「青」になることと略同時に、横断者用信号機91も「青」になる。また信号機92は「赤」になる。
【0044】
本実施の形態では、この
図2、
図3、
図4のような状況において安全支援処理が行われるようにする。
つまり車両100が矢印式信号機90のある交差点に対して突き当たる方向にし、左折矢印90Lに応じて左折する場合などにおいて、その左折中に、横断者用信号機91が「赤」から「青」に切り替わる状況である。
車両100からみると、左折矢印90Lに従って左折しているときに、突然、横断者120が横断歩道95を渡り始めることになる状況であるといえる。
【0045】
この場合、ある程度の速度で走行してきて、左折矢印90Lに従って左折を始めていた車両100に対し、横断者用信号機91が前触れもなく「青」に切り替わって横断者120が横断を始めることがあり得る。そのため危険な状況に陥る可能性がある。
そこで安全支援処理では、このように、ターン時に途中から横断者120が現れるような状況を判定し、危険を回避するようにする。
具体的には運転車に対して警告を行ったり、自動運転車両の場合は、走行抑制制御を行ったりする。
これにより例えば左折矢印90Lに応じた左折中など、ドライバが意識を他に向けにくい状況下で横断者120の安全を確保できるようにする。
【0046】
<3.安全支援処理例>
走行制御装置2による安全支援処理の具体例を
図5で説明する。
走行制御装置2におけるプロセッサ(CPU)は記憶媒体に記憶されたプログラムに従って、例えば
図5の処理を定期的に繰り返し実行する。
【0047】
ステップS101で走行制御装置2は、対象交差点の判定を実行する。対象交差点とは
図2のような交差点を含む。つまり自車両である車両100の進行方向に、車両100に対して指示を行う矢印式信号機90が存在し、かつ矢印式信号機90の矢印の方向の車線94を横断する横断者120に対する横断者用信号機91が存在する交差点を対象交差点として判定する。
【0048】
走行制御装置2は、外部環境認識装置3による情報、例えばカメラ18の撮像画像についての画像処理部19による解析情報から、前方にこのような対象交差点が存在するか否かを判定できる。また走行制御装置2は、地図ロケータ4の情報により、対象交差点が前方に存在するか否かを判定してもよい。
このような対象交差点でないと判定したら、走行制御装置2は
図5の処理を終える。
【0049】
一方、対象交差点と判定したら、走行制御装置2はステップS102に進み、現在、左折矢印90Lで走行可能な状態であるか否かを判定する。つまり矢印式信号機90における左折矢印90Lが点灯しているか否かを、例えば外部環境認識装置3におけるカメラ18の撮像画像についての画像処理部19による解析情報から判定する。
現在、左折矢印90Lが非点灯であると判定したら、走行制御装置2はステップS110に進み、「青」に切り替わったのでもなければ、車両100が進行するタイミングではないため、
図5の処理を終える。
【0050】
現在、左折矢印90Lが点灯していると判定したら、走行制御装置2はステップS102からステップS103に進む。
ステップS103で走行制御装置2は、現在、車両100が左折走行を行う状況で、かつ横断者用信号機91が「赤」である状況であるか否かを判定する。
車両100が左折走行を行う状況というのは、車両100が左折可能なレーンにいる状況や、左折可能なレーンで実際に左折走行を開始している状況である。この状況で、かつ横断者用信号機91が停止指示である状況を、安全支援処理を行う該当状況とする。
このような「該当状況」でなければ、走行制御装置2は
図5の処理を終える。
【0051】
一方、現在「該当状況」と判定した場合は、走行制御装置2はステップS104に進み、横断者用信号機91に従って横断を待機している人や自転車等の横断待機者が存在するか否かを判定する。これも例えば外部環境認識装置3からの情報により判定できる。
【0052】
横断待機者がいない場合は、走行制御装置2はステップS105で第1の安全支援処理を行う。つまりこの場合は、矢印式信号機90としては左折矢印90Lの点灯が検出されていて、その左側に別の信号機として横断者用信号機91の「赤」が検出されている場合であるが、横断を待機者している人は検出されていない。但し、左折中に横断者用信号機91が「青」に変化する可能性のある場合である。
【0053】
そこで第1の安全支援処理として走行制御装置2は、『歩行者信号切り替わり注意』などの通知をドライバに行うか、または自動運転中の状況では通常の左折時よりも走行抑制制御を行う。
ドライバが運転を行っている場合は、上記通知により、左折後に横断歩道95を注意すべきことをドライバに伝えることで、ドライバの注意を喚起する。
自動運転の場合では、走行抑制制御として、速度低下制御又は加速抑制制御を行う。これにより、比較的速い速度で左折を実行しないように制御し、もし横断者120が現れたような場合にでも停止対応ができるようにする。
【0054】
ステップS104で横断を待機している人がいると判定した場合は、走行制御装置2はステップS106で第2の安全支援処理を行う。これは、実際に横断しようとしている人や自転車などを検知することにより、第1の安全支援処理よりも強力な安全支援処理を行うものである。
【0055】
例えば第2の安全支援処理として走行制御装置2は、『歩行者信号の切り替わり注意・歩行者あり』など、第1の安全支援処理では行わない歩行者等の存在の通知も行うようにすることで、ドライバが横断者120を認知できるようにする。また、ドライバのアクセル操作による加速応答を抑制させるように制御する。
自動運転の場合では、より強力な走行抑制制御として、第1の安全支援処理の場合よりも強い速度低下制御又は加速抑制制御を行う。これにより、左折速度を大きく低下させ、横断者が横断を開始した場合(つまり左折完了前に横断者用信号機91が「青」になった場合)でも即時に停止対応ができるようにする。
【0056】
左折中も、以上のステップS105やステップS106の処理を行いながら
図5の処理を繰り返すが、左折途中で、
図3から
図4のように、矢印式信号機90の左折矢印90Lが消灯し、「青」になることがある。車両100は当然、そのまま左折を継続してよいが、このような状況を想定して、
図5の処理はステップS102からステップS110に進む場合がある。
【0057】
つまりステップS102で左折矢印90Lが消灯したと判定されても、「青」に切り替わったものであった場合は、走行制御装置2はステップS110からステップS111に進むことになり、横断者用信号機91が「青」であるか否かを判定する。
ここで横断者用信号機91が「赤」であった場合は、車両100にとっては、その直前時点までと同じ状況であると言える。つまり左折矢印90Lで開始した左折中であって、左折先に横断歩道95が存在する状況である。従って走行制御装置2はステップS104からステップS105又はステップS106に進み、第1又は第2の安全支援処理を継続する。
【0058】
一方、ステップS111で横断者用信号機91が「青」と判定した場合は、走行制御装置2はステップS112に進み、それまでの第1又は第2の安全支援処理を継続しつつ、第3の安全支援処理を追加的に実行する。
これは左折中に横断者120が横断を開始する状況であるため、第3の安全支援処理としては、例えば横断者120に対する衝突警報タイミングを、通常より早める処理とすることが考えられる。これは、左折矢印90Lの点灯で左折を開始した場合、左折優先としてドライバが気を抜いて運転している可能性があり、ドライバの反応時間が長くなる可能性があるためである。
自動運転中の場合でも、第3の安全支援処理としては、衝突回避の開始タイミングを早くするような制御を行うと良い。例えば衝突回避ブレーキ制御のためのTTC(Time-To-Collision)による制御開始閾値を一定時間だけ長い時間に一時的に変更する。
【0059】
以上の
図5の処理により、左折矢印90Lに従った左折を行う場合に、左折先に横断歩道95が存在する状況において、的確に安全支援処理を発動することができる。
【0060】
図6は走行制御装置2の処理の変型例を示している。なお
図5と同じ処理は同じステップ番号を付し、重複説明を避ける。
【0061】
この
図6は、走行制御装置2は、ステップS103で左折走行かつ横断者用信号機91が「赤」であるという「該当状況」と判定した場合に、ステップS120で除外ケースであるか否かの判定を行う。
除外ケースとは安全支援処理が不要なケースである。例えば現在の交差点が、切り替わりのパターンとして、左折矢印90Lで開始した車両100の左折中に、左折先の横断者用信号機91が「青」になることがない交差点であった場合は、除外ケースとなる。
【0062】
例えば全方向の矢印を有する矢印式信号機などでは左折矢印と共に他の方向への矢印も点灯していて、横断者用信号機91が「赤」の場合もある。これは、十字路の交差点環境を含めて、自車向けと横断者向けの「青」が終わった直後に、対向車線・交差車両などを「赤」として一時的に他方向の車両を止める状況で自車両側を走行させる目的の場合である。このような場合も、横断者用信号機91が左折中に「青」になることはないとすることができるため、除外ケースとなる。
【0063】
さらに、一般車両の走行制御装置2を想定した場合は、車両100が対象交差点で左折レーンにいて、矢印式信号機90の矢印が点灯した場合でも、それが路面電車用の黄色矢印などであった場合は、除外ケースとしてよい。
【0064】
また米国等では、「黄色で点滅した矢印」の信号があり、これは、「対向車が来てなかったら進行可能」の表示である。この場合は、ドライバは注意をすることが当然であるため、除外ケースとしてもよい。
【0065】
これらのような除外ケースではない場合は、走行制御装置2はステップS120からステップS104に進み、
図5と同様の処理を行う。
一方、除外ケースに該当する場合はステップS120から
図6の処理を終える。つまり第1又は第2の安全支援処理を行わない。
これにより警告や速度抑制制御がむやみに発動しないようにすることができる。
【0066】
<4.実施の形態の効果>
以上の実施の形態では、車両に搭載される制御装置としての走行制御装置2は、車両100の進行方向に車両100に対して指示を行う矢印式信号機90が存在し、かつ矢印式信号機90の矢印の方向の車線94を横断する横断者に対する横断者用信号機91が存在する交差点を対象交差点として判定する(S101)。そして対象交差点と判定した場合に、横断者用信号機91が停止指示で、車両100が矢印式信号機90に従った走行を行う該当状況か否かを判定させる(S102,S103)。そして該当状況と判定した場合には、走行制御装置2は、乗員への警告制御又は走行抑制制御のいずれかを含む第1の安全支援処理を実行する(S105)。
【0067】
これにより、矢印式信号機90の矢印による左折という運転者が意識を他に向けにくい状況下で、交通弱者である歩行者や自転車などの安全性を高めることができる。
特に矢印式信号機90の左折矢印90Lで進行する場合、運転者は、左折矢印90Lに従って急いで交差点を通過してしまおうという意識が働くことが多い。そのような状況で警告を行うことは安全性向上に有効である。また自動運転の場合も、走行抑制制御(速度低下や加速制限の制御)を行うことで安全性向上に有効である。
自動運転の車両100の場合でも、矢印式信号機90の矢印による左折中は、左折途中で横断者用信号機91が青になることもあるため、緻密な制御が必要なシチュエーションといえる。このような場合に、走行抑制制御(速度低下又は加速制限)を行うことは安全性向上に寄与できる。
また、車両100が矢印式信号機90の矢印方向に進行し、かつ横断者用信号機91が赤の状態である状況を判定して第1の安全支援処理を実行するもので、この第1の安全支援処理が頻発されるものではない。よって警告や走行抑制が頻繁に発生するものでもないため、不必要に円滑な走行が妨げられるものでもない。
【0068】
また走行制御装置2は、ステップS103で該当状況と判定した場合において、横断者用信号機91により停止している横断者の存在を判定した場合は、乗員への横断者存在通知又は第1の安全支援処理よりも抑制度合いの高い走行抑制制御のいずれかを含む第2の安全支援処理を実行する(S106)。
これにより「赤」で止まっている歩行者等が存在する場合、つまり、より安全性を求められる場合に、強い安全支援処理を実行させることができる。
【0069】
実施の形態で例示したのは、矢印式信号機90は、車両100が対向車走行路を横切らない方向へのターンを許可する信号機であり、横断者用信号機91は、矢印式信号機とは別の信号機で、ターンの方向に設けられている信号機であるとした。
つまり日本国の場合でいえば、矢印式信号機90は、左折の矢印を表示する信号機であり、横断者用信号機91は、車両100は左折した場合の走行車線を横断する横断者に対する信号機(例えば歩行者専用信号機、自転車専用信号機等)である。
矢印式信号機90の矢印による左折の場合に、途中で横断者用信号機91が青になる場合があるため、このような交差点を対象として第1,第2,第3の安全支援処理を行うことが好適である。
なお、車両100が対向車走行路を横切らない方向へのターンは、車両100が右側走行を行う国や地域では、右折となる。そのような国や地域では、矢印式信号機90の矢印に従った右折先に横断者用信号機91が存在する状況で、第1,第2,第3の安全支援処理を行うことになる。
【0070】
実施の形態において車両100は自動運転車両である場合も含めて説明した。
自動運転車両の場合に、該当状況において速度低下や加速制限を行うことで、より安全性を高めた自動運転走行を促進できる。
なお自動運転車両とは、レベル3以上の自動運転の車両を指すことはもちろんだが、レベル2以下で、例えばACCを行う車両をここでいう自動運転車両として考えてもよい。
【0071】
実施の形態において矢印式信号機90は、矢印形状の青点灯により車両100が矢印方向に進行可能であることを示す信号機であるとした。
すなわち一般の道路を走行する車両に対する矢印式信号機90の場合に、状況に応じて第1,第2,第3の安全支援処理を行うようにし、一般道路での安全性を高めるようにするものである。
【0072】
なお実施の形態として説明した
図5,
図6の処理例は一例である。本技術の制御装置の処理手順としては、
図5,
図6の例に限られず、異なる手順の処理であってもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 車両制御システム
2 走行制御装置
2a 安全支援処理部
3 外部環境認識装置
4 地図ロケータ
6 表示/音制御部
18 カメラ
19 画像処理部
20 距離検出部
90,92 信号機
91 歩行者用信号機
100 車両
120 歩行者