(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167990
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】液体柔軟剤組成物
(51)【国際特許分類】
D06M 13/463 20060101AFI20231116BHJP
D06M 13/328 20060101ALI20231116BHJP
D06M 13/00 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
D06M13/463
D06M13/328
D06M13/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079574
(22)【出願日】2022-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100162422
【弁理士】
【氏名又は名称】志村 将
(72)【発明者】
【氏名】中村 太一
(72)【発明者】
【氏名】天谷 友彦
【テーマコード(参考)】
4L033
【Fターム(参考)】
4L033AB04
4L033AC02
4L033BA00
4L033BA46
4L033BA86
(57)【要約】 (修正有)
【課題】生乾き臭に対する消臭・防臭効果を有し、かつ基材由来の臭いを抑制できる液体柔軟剤組成物を提供する。
【解決手段】下記の(A)~(D)成分:
(A)エステル基(-COO-)及び/又はアミド基(-NHCO-)で分断されている、炭素数10~26の炭化水素基を分子内に1~3個有するアミン化合物、その塩及びその4級化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物;
(B)特定の4級アンモニウム塩化合物;
(C)特定のアミン化合物及び/又はその塩酸塩;及び
(D)フェノール構造を有する香料成分を含有する香料組成物を含有する液体柔軟剤組成物であって、(C)成分に対する(B)成分の質量比(B)/(C)が、35~600であり、該液体柔軟剤組成物の総重量に対して、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分が特定の含量である、液体柔軟剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)~(D)成分:
(A)エステル基(-COO-)及び/又はアミド基(-NHCO-)で分断されている、炭素数10~26の炭化水素基を分子内に1~3個有するアミン化合物、その塩及びその4級化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物;
(B)下式(B)で表される4級アンモニウム塩化合物;
(式中、R
1は、エステル基(-COO-)やアミド基(-NHCO-)で分断されていない炭素数14~18の炭化水素基であり、R
2、R
3及びR
4は、独立して、炭素数1~3のアルキル基又は炭素数1~3のヒドロキシアルキル基であり、X
-は陰イオンを表す。)
(C)下式(C)で表されるアミン化合物及び/又はその塩酸塩;及び
(式中、R
1は、エステル基(-COO-)やアミド基(-NHCO-)で分断されていない炭素数14~18の炭化水素基であり、R
2及びR
3は、独立して、メチル基又は水素原子である。)
(D)フェノール構造を有する香料成分を含有する香料組成物
を含有する液体柔軟剤組成物であって、(C)成分に対する(B)成分の質量比(B)/(C)が、35~600であり、該液体柔軟剤組成物の総重量に対して、
(A)成分の含量が、1~20質量%であり、
(B)成分の含量が、0.1~1.0質量%であり、
(C)成分の含量が、0.0001~0.01質量%であり、
前記フェノール構造を有する香料成分の含量が、0.01~1質量%である、
液体柔軟剤組成物。
【請求項2】
(C)成分が、ヘキサデシルジメチルアミン又はその塩酸塩である、請求項1記載の液体柔軟剤組成物。
【請求項3】
前記フェノール構造を有する香料成分が、ベンジルサリシレート、ヘキシルサリシレート、オイゲノール、及びイソオイゲノールから選ばれる1種以上を含むか、又はベンジルサリシレート、ヘキシルサリシレート、オイゲノール、及びイソオイゲノールから選ばれる1種以上である、請求項1記載の液体柔軟剤組成物。
【請求項4】
(C)成分が、ヘキサデシルジメチルアミン又はその塩酸塩であり、かつ前記フェノール構造を有する香料成分が、ベンジルサリシレート、ヘキシルサリシレート、オイゲノール、及びイソオイゲノールから選ばれる1種以上を含むか、又はベンジルサリシレート、ヘキシルサリシレート、オイゲノール、及びイソオイゲノールから選ばれる1種以上である、請求項1記載の液体柔軟剤組成物。
【請求項5】
(B)/(C)が、40~500である、及び/又は
(C)成分の含量が、0.0005~0.008質量%である、及び/又は
前記フェノール構造を有する香料成分の含量が、0.01~0.5質量%である、
請求項1~4のいずれか1項に記載の液体柔軟剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体柔軟剤組成物に関する。詳細には、本発明は、消臭・防臭性能に優れた液体柔軟剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
大きく成長した柔軟剤市場を牽引する存在の一つに、消臭・防臭効果を有する柔軟剤がある。消費者は衣類のニオイに悩んでおり、消臭・防臭に対するニーズは今後も続くと考えられる。中でも、部屋干し環境下で乾燥した時に発生するような生乾き臭は、重要なニオイ種であり、これに関する技術が存在する。
例えば、特許文献1には、特定のフェノール構造を有する抗菌性化合物によって部屋干し臭を抑制できることが記載されている。特許文献2には、特定の4級アンモニウム塩2種と、カルシウムやマグネシウムを特定条件で組合わせることで、M.osloensis(モラクセラ・オスロエンシス)の増殖を抑え、衣類に抗菌・防臭効果を付与することが記載されている。また、4級アンモニウム塩に関しては、これを配合することにより、柔軟剤の保存安定性やカプセル香料(消臭性能にも寄与する)の分散安定性を向上させる技術を開示するものとして、特許文献3や特許文献4が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-107590号公報
【特許文献2】特開2017-31532号公報
【特許文献3】特開2015-4145号公報
【特許文献4】特開2015-227515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、消費者の衣類に関するニオイ悩みは完全には解消されておらず、更なる性能の向上が望まれている。また、4級アンモニウム塩等のカチオン基材は、基材由来の臭いを生じることもあり、その基材の性能とトレードオフになる場合がある。
従って、生乾き臭に対する消臭・防臭効果を有し、かつ基材由来の臭いを抑制できる液体柔軟剤組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を鋭意検討した結果、本発明者らは、特定の4級アンモニウム塩、アミン、及び香料を、特定の比率で混合することによって、生乾き臭に対して高い消臭・防臭効果を付与しながら、基材由来の臭いを抑制できることを見出した。本発明は、この知見に基づいてなされたものである。
本発明は、例えば、下記〔1〕~〔8〕に関するものである。
〔1〕下記の(A)~(D)成分:
(A)エステル基(-COO-)及び/又はアミド基(-NHCO-)で分断されている、炭素数10~26の炭化水素基を分子内に1~3個有するアミン化合物、その塩及びその4級化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物;
(B)下式(B)で表される4級アンモニウム塩化合物;
【化1】
(式中、R
1は、エステル基(-COO-)やアミド基(-NHCO-)で分断されていない炭素数14~18の炭化水素基であり、R
2、R
3及びR
4は、独立して、炭素数1~3のアルキル基又は炭素数1~3のヒドロキシアルキル基であり、X
-は陰イオンを表す。)
(C)下式(C)で表されるアミン化合物及び/又はその塩酸塩;及び
【化2】
(式中、R
1は、エステル基(-COO-)やアミド基(-NHCO-)で分断されていない炭素数14~18の炭化水素基であり、R
2及びR
3は、独立して、メチル基又は水素原子である。)
(D)フェノール構造を有する香料成分を含有する香料組成物
を含有する液体柔軟剤組成物であって、(C)成分に対する(B)成分の質量比(B)/(C)が、35~600であり、該液体柔軟剤組成物の総重量に対して、
(A)成分の含量が、1~20質量%であり、
(B)成分の含量が、0.1~1.0質量%であり、
(C)成分の含量が、0.0001~0.01質量%であり、
前記フェノール構造を有する香料成分の含量が、0.01~1質量%である、
液体柔軟剤組成物。
〔2〕(C)成分が、ヘキサデシルジメチルアミン又はその塩酸塩である、前記〔1〕記載の液体柔軟剤組成物。
〔3〕前記フェノール構造を有する香料成分が、ベンジルサリシレート、ヘキシルサリシレート、オイゲノール、及びイソオイゲノールから選ばれる1種以上を含むか、又はベンジルサリシレート、ヘキシルサリシレート、オイゲノール、及びイソオイゲノールから選ばれる1種以上である、前記〔1〕記載の液体柔軟剤組成物。
〔4〕(C)成分が、ヘキサデシルジメチルアミン又はその塩酸塩であり、かつ前記フェノール構造を有する香料成分が、ベンジルサリシレート、ヘキシルサリシレート、オイゲノール、及びイソオイゲノールから選ばれる1種以上を含むか、又はベンジルサリシレート、ヘキシルサリシレート、オイゲノール、及びイソオイゲノールから選ばれる1種以上である、前記〔1〕記載の液体柔軟剤組成物。
〔5〕(B)/(C)が、40~500である、前記〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の液体柔軟剤組成物。
〔6〕(C)成分の含量が、0.0005~0.008質量%である、前記〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載の液体柔軟剤組成物。
〔7〕前記フェノール構造を有する香料成分の含量が、0.01~0.5質量%である、前記〔1〕~〔6〕のいずれか1項に記載の液体柔軟剤組成物。
〔8〕(B)/(C)が、40~500である、及び/又は
(C)成分の含量が、0.0005~0.008質量%である、及び/又は
前記フェノール構造を有する香料成分の含量が、0.01~0.5質量%である、
前記〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の液体柔軟剤組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様によれば、生乾き臭の抑制に優れた液体柔軟剤組成物を提供することができる。
本発明の一態様によれば、基材由来の臭いの抑制に優れた液体柔軟剤組成物を提供することができる。
本発明の一態様によれば、生乾き臭の抑制及び基材由来の臭いの抑制に優れた液体柔軟剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[(A)成分]
(A)成分は、「エステル基(-COO-)及び/又はアミド基(-NHCO-)で分断されている、炭素数10~26の炭化水素基を分子内に1~3個有するアミン化合物、その塩及びその4級化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物」であるカチオン界面活性剤である。
(A)成分は柔軟基材であり、繊維製品へ柔軟性(風合い)を付与する効果を液体柔軟剤組成物へ付与するために配合するものである。
【0008】
炭素数10~26の炭化水素基(以下、「長鎖炭化水素基」ともいう)の炭素数は、17~26が好ましく、18~24がより好ましい。炭素数が10以上であると柔軟性付与効果が良好であり、26以下であると液体柔軟剤組成物のハンドリング性が良好である。
長鎖炭化水素基は、飽和であっても不飽和であってもよい。長鎖炭化水素基が不飽和である場合、二重結合の位置はいずれの箇所にあっても構わないが、二重結合が1個の場合には、その二重結合の位置は長鎖炭化水素基の中央であるか、中央周辺に存在していることが好ましい。
長鎖炭化水素基は、鎖状の炭化水素基であっても、構造中に環を含む炭化水素基であってもよく、好ましくは鎖状の炭化水素基である。鎖状の炭化水素基は、直鎖状又は分岐鎖状のいずれであってもよい。鎖状の炭化水素基としては、アルキル基またはアルケニル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
長鎖炭化水素基は、分断基によって分断されている。分断は1ヶ所でもよく、2ヶ所以上であってもよい。好ましくは1ヶ所である。
分断基はエステル基(-COO-)又はアミド基(-NHCO-)である。長鎖炭化水素基が分断基を2つ以上有する場合、各分断基は、同じであっても異なっていてもよい。
なお、分断基が有する炭素原子は、長鎖炭化水素基の炭素数にカウントするものとする。
長鎖炭化水素基は、通常、工業的に使用される牛脂由来の未水添脂肪酸、不飽和部を水添もしくは部分水添して得られる脂肪酸、パーム椰子、油椰子などの植物由来の未水添脂肪酸もしくは脂肪酸エステル、あるいは不飽和部を水添もしくは部分水添して得られる脂肪酸又は脂肪酸エステル等を使用することにより導入される。
「エステル基(-COO-)又はアミド基(-NHCO-)で分断されている、炭素数10~26の炭化水素基を分子内に1~3個有するアミン化合物(以下、本明細書において「アミン化合物」ということがある)」における長鎖炭化水素基の数は1~3個である。好ましくは2個(2級アミン化合物)又は3個(3級アミン化合物)であり、より好ましくは3個である。
【0009】
アミン化合物としては、下記一般式(A1)で表される化合物が挙げられる。
【化3】
(式中、R
1~R
3はそれぞれ独立に、-CH
2CH(Y)OCOR
4(Yは水素原子又はCH
3であり、R
4は炭素数7~21の炭化水素基である)、-(CH
2)
nNHCOR
5(nは2又は3であり、R
5は炭素数7~21の炭化水素基である)、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、-CH
2CH(Y)OH(Yは水素原子又はCH
3である)、又は、-(CH
2)
nNH
2(nは2又は3である)であり、
R
1~R
3のうちの少なくとも1つは、-CH
2CH(Y)OCOR
4及び/又は-(CH
2)
nNHCOR
5である。)
一般式(A1)における基「-CH
2CH(Y)OCOR
4」中、Yとしては水素原子が好ましい。
R
4としては、炭素数15~19の炭化水素基が好ましい。一般式(A1)で表される化合物中にR
4が複数存在するとき、該複数のR
4は互いに同一であってもよく、それぞれ異なっていても構わない。
R
4の炭化水素基は、炭素数8~22の脂肪酸(R
4COOH)からカルボキシ基を除いた残基(脂肪酸残基)であり、R
4の素となる脂肪酸(R
4COOH)は、飽和脂肪酸でも不飽和脂肪酸でもよく、また、直鎖脂肪酸でも分岐脂肪酸でもよい。なかでも、飽和又は不飽和の直鎖脂肪酸が好ましい。柔軟処理した衣類に良好な吸水性を付与するために、R
4のもととなる脂肪酸の飽和/不飽和比率(質量比)は、90/10~0/100が好ましく、90/10~40/60より好ましく、90/10~70/30が特に好ましい。
R
4が不飽和脂肪酸残基である場合、シス体とトランス体が存在するが、シス体/トランス体の質量比率は、40/60~100/0が好ましく、70/30~90/10が特に好ましい。
R
4の素となる脂肪酸として具体的には、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、部分水添パーム油脂肪酸(ヨウ素価10~60)や、部分水添牛脂脂肪酸(ヨウ素価10~60)などが挙げられる。なかでも、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、エライジン酸、およびリノール酸から選ばれる2種以上を所定量ずつ組み合わせて、以下の条件(a)~(c)を満たすように調整した脂肪酸組成物を用いることが好ましい。
(a)飽和脂肪酸/不飽和脂肪酸の比率(質量比)が90/10~0/100、より好ましくは90/10~40/60、特に好ましくは90/10~70/30である。
(b)シス体/トランス体の比率(質量比)が40/60~100/0、より好ましくは70/30~90/10である。
(c)炭素数18の脂肪酸が60質量%以上、好ましくは80質量%以上であり、炭素数20の脂肪酸が2質量%未満であり、炭素数21~22の脂肪酸が1質量%未満である。
一般式(A1)における、基「-(CH
2)
nNHCOR
5」中、nとしては3が好ましい。
R
5としては、炭素数15~19の炭化水素基が好ましい。一般式(A1)で表される化合物中にR
5が複数存在するとき、該複数のR
5は互いに同一であってもよく、それぞれ異なっていても構わない。
R
5としては、R
4と同様のものが具体的に挙げられる。
【0010】
一般式(A1)において、R1~R3のうち、少なくとも1つは-CH2CH(Y)OCOR4及び/又は-(CH2)nNHCOR5である。R1~R3のうち2つが、-CH2CH(Y)OCOR4及び/又は-(CH2)nNHCOR5であることが好ましい。
R1~R3のうち、1つ又は2つが-CH2CH(Y)OCOR4及び/又は-(CH2)nNHCOR5である場合、残りの2つ又は1つは、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、-CH2CH(Y)OH(Yは水素原子又はCH3である)、又は、-(CH2)nNH2(nは2又は3である)であり、炭素数1~4のアルキル基、-CH2CH(Y)OH、又は、-(CH2)nNH2であることが好ましい。ここで、炭素数1~4のアルキル基としては、メチル基又はエチル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。-CH2CH(Y)OHにおけるYは、-CH2CH(Y)OCOR4中のYと同様である。-(CH2)nNH2におけるnは、-(CH2)nNHCOR5中のnと同様である。
【0011】
一般式(A1)で表される化合物の好ましい例として、下記一般式(A1-1)~(A1-7)で表される3級アミン化合物が挙げられる。
【化4】
((A1-1)~(A1-7)の各式中、R
9はそれぞれ独立に、炭素数7~21の炭化水素基であり、(A1-6)~(A1-7)の各式中、R
10はそれぞれ独立に、炭素数7~21の炭化水素基である。)
【0012】
R9及びR10における炭素数7~21の炭化水素基としては、前記一般式(A1)のR4における炭素数7~21の炭化水素基と同様のものが挙げられ、好ましくは、炭素数15~17のアルキル基及びアルケニル基である。なお、一般式中にR9が複数存在するとき、該複数のR9は互いに同一であってもよく、それぞれ異なっていても構わない。
【0013】
(A)成分は、アミン化合物の塩であってもよい。
アミン化合物の塩は、アミン化合物を酸で中和することにより得られる。中和に用いる酸は有機酸でも無機酸でもよく、例えば塩酸、硫酸や、メチル硫酸等が挙げられる。アミン化合物の中和は公知の方法により実施できる。
アミン化合物の4級化物は、アミン化合物に4級化剤を反応させて得られる。4級化剤としては、例えば、塩化メチル等のハロゲン化アルキルや、ジメチル硫酸等のジアルキル硫酸などが挙げられる。これらの4級化剤をアミン化合物と反応させると、アミン化合物の窒素原子に4級化剤のアルキル基が導入され、4級アンモニウムイオンとハロゲンイオン又はモノアルキル硫酸イオンとの塩が形成される。4級化剤により導入されるアルキル基は、炭素数1~4のアルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。アミン化合物の4級化は公知の方法により実施できる。
【0014】
一般式(A1)及び(A1-1)~(A1-7)で表される化合物、その塩及びその4級化物は、市販のものを用いてもよく、公知の方法により製造したものを用いてもよい。
例えば、一般式(A1-1)で表される化合物(以下「化合物(A1-1)」という)及び一般式(A1-2)で表される化合物(以下「化合物(A1-2)」という)は、一般式(1)のR4の欄で説明した脂肪酸組成物、または該脂肪酸組成物における脂肪酸を該脂肪酸のメチルエステルに置き換えた脂肪酸メチルエステル組成物と、メチルジエタノールアミンとの縮合反応により合成することができる。その際、柔軟性付与を良好にする観点から、「化合物(A1-1)/化合物(A1-2)」で表される存在比率が、質量比で99/1~50/50となるように合成することが好ましい。
更に、その4級化物を用いる場合には、4級化剤としてジメチル硫酸を用いることがより好ましい。その際、柔軟性付与の観点から「化合物(A1-1)の4級化物/化合物(A1-2)の4級化物」で表される存在比率が、質量比で99/1~50/50となるように合成することが好ましい。
【0015】
一般式(A1-3)で表される化合物(以下「化合物(A1-3)」という)、一般式(A1-4)で表される化合物(以下「化合物(A1-4)」という)及び一般式(A1-5)で表される化合物(以下「化合物(A1-5)」という)は、一般式(1)のR4の欄で説明した脂肪酸組成物または脂肪酸メチルエステル組成物とトリエタノールアミンとの縮合反応により合成することができる。その際、化合物(A1-3)、(A1-4)及び(A1-5)の合計質量に対する個々の成分の含有比率は、柔軟性付与の観点から、化合物(A1-3)が1~60質量%、化合物(A1-4)が5~98質量%、化合物(A1-5)が0.1~40質量%であることが好ましく、化合物(A1-3)が30~60質量%、化合物(A1-4)が10~55質量%、化合物(A1-5)が5~35質量%であることがより好ましい。
また、その4級化物を用いる場合には、4級化反応を十分に進行させる点で、4級化剤としてジメチル硫酸を用いることがより好ましい。化合物(A1-3)、(A1-4)、(A1-5)の各4級化物の存在比率は、柔軟性付与の観点から質量比で、化合物(A1-3)の4級化物が1~60質量%、化合物(A1-4)の4級化物が5~98質量%、化合物(A1-5)の4級化物が0.1~40質量%であることが好ましく、化合物(A1-3)の4級化物が30~60質量%、化合物(A1-4)の4級化物が10~55質量%、化合物(A1-5)の4級化物が5~35質量%であることがより好ましい。
なお、化合物(A1-3)、(A1-4)、(A1-5)を4級化する場合、一般的に4級化反応後も4級化されていないエステルアミンが残留する。その際、「4級化物/4級化されていないエステルアミン」の比率は70/30~99/1の質量比率の範囲内であることが好ましい。
【0016】
一般式(A1-6)で表される化合物(以下「化合物(A1-6)」という)及び一般式(A1-7)で表される化合物(以下「化合物(A1-7)という」)は、一般式(1)のR4の欄で説明した脂肪酸組成物と、N-メチルエタノールアミンとアクリロニトリルの付加物より、J.Org.Chem.,26,3409(1960)に記載の公知の方法で合成したN-(2-ヒドロキシエチル)-N-メチル-1,3-プロピレンジアミンとの縮合反応により合成することができる。その際、「化合物(A1-6)/化合物(A1-7)」で表される存在比率が質量比で99/1~50/50となるように合成することが好ましい。
またその4級化物を用いる場合には、4級化剤として塩化メチルを用いることが好ましく、「化合物(A1-6)の4級化物/化合物(A1-7)の4級化物」で表される存在比率が、質量比で99/1~50/50となるように合成することが好ましい。
【0017】
(A)成分としては、
一般式(A1)で表される化合物、その塩及びその4級化物からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、
一般式(A1-1)~(A1-7)で表される化合物、その塩及びその4級化物からなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、
一般式(A1-3)~(A1-5)で表される化合物、その塩及びその4級化物からなる群から選ばれる少なくとも1種がさらに好ましい。
(A)成分は公知物質であり、市場で容易に入手可能であるか、又は調製可能である。
(A)成分は、単一種類を使用してもよく、複数種類を併用(例えば、一般式(A1-3)~(A1-5)で表される化合物の混合物)してもよい。
【0018】
(A)成分の含量は、液体柔軟剤組成物の総質量に対して、1~20質量%であり、好ましくは4~18質量%であり、より好ましくは7~12質量%である。(A)成分の含量が1質量%以上であると、柔軟性付与効果が良好である。(A)成分の含量が20質量%以下であると、液体柔軟剤組成物の長期保存時の粘度安定性が良好である。
【0019】
[(B)成分]
(B)成分は、液体柔軟剤組成物により処理される対象に抗菌性及び/又は消臭・防臭性を付与するために配合される。
(B)成分は、下記の式(B)で表される4級アンモニウム塩化合物である。
【化5】
(式中、R
1は、エステル基(-COO-)やアミド基(-NHCO-)で分断されていない炭素数14~18の炭化水素基であり、R
2、R
3及びR
4は、独立して、炭素数1~3のアルキル基又は炭素数1~3のヒドロキシアルキル基であり、X
-は陰イオンを表す。)
【0020】
式(B)におけるR1の炭化水素基の炭素数は14~18である。この炭素数範囲であると、繊維製品への吸着性が向上して、優れた消臭・防臭性が得られる。炭化水素基は、例えば、直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、又は直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基であり得るが、直鎖が好ましい。
R1の具体例としてはテトラデシル基(炭素数14)、ヘキサデシル基(炭素数16)、オクタデシル基(炭素数18)等が挙げられる。
式(B)におけるR2、R3及びR4の具体例としては、メチル基、エチル基やヒドロキシエチル基が挙げられ、好ましくはメチル基である。
Xとしては、メチル硫酸、臭素や塩素等が挙げられ、塩素が好ましい。
【0021】
(B)成分の具体例としては、テトラデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド等が挙げられ、テトラデシルトリメチルアンモニウムクロライド及びヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライドが好ましく、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライドが最も好ましい。
(B)成分は公知物質であり、市場で容易に入手可能であるか、又は調製可能である。
(B)成分は、単一種類を使用してもよく、複数種類を併用してもよい。
【0022】
(B)成分の含量は、液体柔軟剤組成物の総質量に対して、0.1~1.0質量%であり、好ましくは0.2~0.8質量%である。(B)成分の含量が0.1質量%以上であると、抗菌性及び/又は消臭・防臭性付与効果が良好である。(B)成分の含量が1.0質量%以下であると、液体柔軟剤組成物の保存安定性が良好である。
【0023】
[(C)成分]
(C)成分は、液体柔軟剤組成物により処理される対象に消臭・防臭性を付与するため、及び/又は基材由来の臭いの抑制のために配合される。
(C)成分は、下記の式(C)で表されるアミン化合物及び/又はその塩酸塩である。
【化6】
(式中、R
1は、エステル基(-COO-)やアミド基(-NHCO-)で分断されていない炭素数14~18の炭化水素基であり、R
2及びR
3は、独立して、メチル基又は水素原子である。)
【0024】
式(C)におけるR1の炭化水素基の炭素数は14~18である。この炭素数範囲であると、繊維製品への吸着性が向上して、優れた消臭・防臭性が得られる。炭化水素基は、例えば、直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、又は直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基であり得るが、直鎖が好ましい。
R1の具体例としてはテトラデシル基(炭素数14)、ヘキサデシル基(炭素数16)、オクタデシル基(炭素数18)等が挙げられる。
【0025】
(C)成分の具体例としては、テトラデシルジメチルアミン、ヘキサデシルジメチルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルジメチルアミン、それらの塩酸塩等が挙げられ、テトラデシルジメチルアミン、ヘキサデシルジメチルアミン及びそれらの塩酸塩が好ましく、ヘキサデシルジメチルアミン及びその塩酸塩がより好ましい。
【0026】
(C)成分の含量は、液体柔軟剤組成物の総質量に対して、0.0001~0.01質量%であり、好ましくは0.0005~0.008質量%であり、より好ましくは0.001~0.005質量%である。(C)成分の含量が0.0001質量%以上であると、消臭・防臭性付与効果が良好である。(C)成分の含量が0.01質量%以下であると、基材由来の臭いの抑制において良好である。
(C)成分に対する(B)成分の質量比(B)/(C)は、35~600であり、好ましくは40~500であり、より好ましくは50~300である。(B)/(C)が35~600の範囲内であると、基材由来の臭いの抑制において良好であり、十分な消臭・防臭性付与効果を得ることができる。
【0027】
[(D)成分]
(D)成分は、液体柔軟剤組成物により処理される対象への香り付けのために、及び/又は消臭・防臭性付与のために配合される。
(D)成分は、フェノール構造を有する香料成分を含有する香料組成物である。(D)成分中、フェノール構造を有する香料成分は特に限定されないが、例えば、ベンジルサリシレート、ヘキシルサリシレート、オイゲノール、イソオイゲノール、バニリン、エチルバニリン、マルトール、ラズベリーケトン等が挙げられる。中でも、ベンジルサリシレート、ヘキシルサリシレート、オイゲノール、イソオイゲノールが好ましく、ベンジルサリシレート、ヘキシルサリシレートが特に好ましい。
好ましくは、フェノール構造を有する香料成分は、ベンジルサリシレート、ヘキシルサリシレート、オイゲノール、及びイソオイゲノールから選ばれる1種以上、2種以上、3種以上、若しくは4種を含むか、又はベンジルサリシレート、ヘキシルサリシレート、オイゲノール、及びイソオイゲノールから選ばれる1種以上、2種以上、3種以上、若しくは4種である。
【0028】
(D)成分の香料組成物は、フェノール構造を有する香料成分を含有している限り、他の任意の香料成分を含んでもよく、(D)成分において配合され得る香料成分としては、柔軟剤分野で汎用されている香料を特に制限なく使用できる。使用できる香料原料のリストは、様々な文献、例えば「Perfume and Flavor Chemicals」,Vol.I and II,Steffen Arctander,Allured Pub.Co.(1994)および「合成香料 化学と商品知識」、印藤元一著、化学工業日報社(1996)および「Perfume and Flavor Materials of Natural Origin」,Steffen Arctander,Allured Pub.Co.(1994)および「香りの百科」、日本香料協会編、朝倉書店(1989)および「Perfumery Material Performance V.3.3」,Boelens Aroma Chemical Information Service(1996)および「Flower oils and Floral Compounds In Perfumery」,Danute Lajaujis Anonis,Allured Pub.Co.(1993)等に記載されている。
なお、香料成分として使用される化合物のなかには、悪臭受容体のアンタゴニストとして作用するものがある。液体柔軟剤組成物の消臭効果を高めるために、例えば、特開2017-101224号公報、特開2015-193643号公報や、特表2020-500589号公報等に記載の嗅覚受容体のアンタゴニストを(D)成分において使用してもよい。
【0029】
(D)成分中、香料成分は単一種類を使用してもよく、複数種類を併用してもよい。
例えば、配合され得る香料成分として、アルデヒド類、フェノール類、アルコール類、エーテル類、エステル類、ハイドロカーボン類、ケトン類、ラクトン類、ムスク類、テルペン骨格を有する香料、天然香料や、動物性香料などが挙げられる。各香料の具体例は以下の通りである。
アルデヒド類としては、ウンデシレンアルデヒド、ラウリルアルデヒド、アルデヒドC-12MNA、ミラックアルデヒド、α-アミルシンナミックアルデヒド、シクラメンアルデヒド、シトラール、シトロネラール、エチルバニリン、ヘリオトロピン、アニスアルデヒド、α-ヘキシルシンナミックアルデヒド、オクタナール、リグストラール、リリアール、リラール、トリプラール、バニリンや、ヘリオナール等が挙げられる。
フェノール類としては、オイゲノールや、イソオイゲノール等が挙げられる。
アルコール類としては、シトロネロール、ジハイドロミルセノール、ジハイドロリナロール、ゲラニオール、リナロール、ネロール、サンダロール、サンタレックス、ターピネオール、テトラハイドロリナロール、メントール、ボルネオール、1-デカナール、バクダノールや、フェニルエチルアルコール等が挙げられる。
エーテル類としては、セドランバー、グリサルバ、メチルオイゲノールや、メチルイソオイゲノール等が挙げられる。
エステル類としては、シス-3-ヘキセニルアセテート、シス-3-ヘキセニルプロピオネート、シス-3-ヘキセニルサリシレート、p-クレジルアセテート、p-t-ブチルシクロヘキシルアセテート、アミルアセテート、メチルジヒドロジャスモネート(ジヒドロメチルジャスモネート)、アミルサリシレート、ベンジルサリシレート、ベンジルベンゾエート、ベンジルアセテート、セドリルアセテート、シトロネリルアセテート、デカハイドロ-β-ナフチルアセテート、ジメチルベンジルカルビニルアセテート、エリカプロピオネート、エチルアセトアセテート、エリカアセテート、ゲラニルアセテート、ゲラニルフォーメート、ヘディオン、リナリルアセテート、β-フェニルエチルアセテート、ヘキシルサリシレート、スチラリルアセテート、ターピニルアセテート、ベチベリルアセテート、o-t-ブチルシクロヘキシルアセテート、マンザネートや、アリルヘプタノエート等が挙げられる。
ハイドロカーボン類としては、リモネン(特に、d-リモネン)、α-ピネン、β-ピネン、ミルセン、カンフェンや、テルピノーレン等が挙げられる。
ケトン類としては、α-ヨノン、β-ヨノン、メチル-β-ナフチルケトン、α-ダマスコン、β-ダマスコン、δ-ダマスコン、ダマセノン、シス-ジャスモン、メチルヨノン、アリルヨノン、カシュメラン、ジハイドロジャスモン、イソイースーパー、ベルトフィックス、イソロンジフォラノン、コアボン、カルボン、ローズフェノン、ラズベリーケトン、ダイナスコンや、マルトール等が挙げられる。
ラクトン類としては、γ-デカラクトン、γ-ウンデカラクトン、γ-ノナラクトン、γ-ドデカラクトン、クマリンや、アンブロキサン等が挙げられる。
ムスク類としては、シクロペンタデカノライド、エチレンブラシレート、ガラクソライド、ムスクケトン、トナリッド、トナライドや、ニトロムスク類等が挙げられる。
テルペン骨格を有する香料としては、ゲラニオール(ゼラニオール)、ネロール、リナロール、シトラール、シトロネロール、メントール、ミント、シトロネラール、ミルセン、α-ピネン、β-ピネン、リモネン、テレピネロール、カルボン、ヨノン(例えばβ-ヨノン)、カンフェンや、ボルネオール等が挙げられる。
天然香料としては、オレンジ油、レモン油、ライム油、プチグレン油、ユズ油、ネロリ油、ベルガモット油、ラベンダー油、ラバンジン油、アビエス油、アニス油、ベイ油、ボアドローズ油、イランイラン油、シトロネラ油、ゼラニウム油、ペパーミント油、ハッカ油、スペアミント油、ユーカリ油、レモングラス油、パチュリ油、ジャスミン油、ローズ油、シダー油、ベチバー油、ガルバナム油、オークモス油、パイン油、樟脳油、白檀油、芳樟油、テレピン油、クローブ油、クローブリーフ油、カシア油、ナツメッグ油、カナンガ油や、タイム油等の精油が挙げられる。
動物性香料としては、じゃ香、霊猫香、海狸香や、竜涎香等が挙げられる。
【0030】
(D)成分が香料組成物である場合、ClogP値が5以上の香料成分の含量が、香料組成物の全質量に対して、好ましくは25質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、より好ましくは35質量%以上、特に好ましくは40質量%以上である。前記の含量であると、より良好な香りの持続性が得られる。
ClogP値が5以上の香料成分の種類は特に制限されないが、好ましい例として、ハバノライド(5.0)、アンブロキサン(5.3)、トナライド(6.3)、ヘキシルサリシレート(5.1)、ガラクソライド(6.1)、ムスコン(6.0)、エキサルトリド(6.2)、イソイースーパー(5.2)、ベルトフィックス(アセチルセドレン)(5.0)、セドリルメチルエーテル(5.1)等が挙げられる(カッコ内の数値は、ClogP値を表す)。なかでも、ハバノライド、アンブロキサン、ガラクソライド、イソイースーパーや、トナライドがより好ましい。
【0031】
ClogP値とは、化学物質について、1-オクタノール中及び水中の平衡濃度の比を表す1-オクタノール/水分配係数Pを、底10に対する対数logPの形態で表した値である。
ClogP値は、f値法(疎水性フラグメント定数法)により、化合物の化学構造をその構成要素に分解し、各フラグメントの有する疎水性フラグメント定数・f値を積算して求めることができる(例えば、Clog 3 Reference Manual DaylightSoftware 4.34,Albert Leo,David Weininger, Version 1,March 1994 参照)。
一般に、香料はClogP値が大きいほど疎水的であることから、ClogP値が小さい香料成分を多く含む香料組成物は、ClogP値が大きい香料成分を多く含む香料組成物よりも親水的な香料組成物であるといえる。
【0032】
香料組成物には、液体柔軟剤に一般的に使用される溶剤を配合してもよい。香料用溶剤としては、アセチン(トリアセチン)、MMBアセテート(3-メトキシ-3-メチルブチルアセテート)、スクロースジアセテートヘキサイソブチレート、エチレングリコールジブチレート、ヘキシレングリコール、ジブチルセバケート、デルチールエキストラ(イソプロピルミリステート)、メチルカルビトール(ジエチレングリコールモノメチルエーテル)、カルビトール(ジエチレングリコールモノエチルエーテル)、TEG(トリエチレングリコール)、安息香酸ベンジル(BB)、プロピレングリコール、フタル酸ジエチル、トリプロピレングリコール、アボリン(ジメチルフタレート)、デルチルプライム(イソプロピルパルミテート)、ジプロピレングリコール(DPG)、ファルネセン、ジオクチルアジペート、トリブチリン(グリセリルトリブタノエート)、ヒドロライト-5(1,2-ペンタンジオール)、プロピレングリコールジアセテート、セチルアセテート(ヘキサデシルアセテート)、エチルアビエテート、アバリン(メチルアビエテート)、シトロフレックスA-2(アセチルトリエチルシトレート)、シトロフレックスA-4(トリブチルアセチルシトレート)、シトロフレックスNo.2(トリエチルシトレート)、シトロフレックスNo.4(トリブチルシトレート)、ドゥラフィックス(メチルジヒドロアビエテート)、MITD(イソトリデシルミリステート)、ポリリモネン(リモネンポリマー)や、1,3-ブチレングリコール等が挙げられる。
溶剤の含量は、香料組成物の総質量に対して、例えば0.1~30質量%、好ましくは1~20質量%である。
【0033】
香料組成物には、液体柔軟剤に一般的に使用される酸化防止剤を配合してもよい。香料用酸化防止剤としては、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシトルエン(BHT)、t-ブチル-p-ヒドロキシアニソール(BHA)、p-メトキシフェノール、β-ナフトール、フェニル-α-ナフチルアミン、テトラメチルジアミノジフェニルメタン、γ-オリザノール、ビタミンE(α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、δ-トコフェロール)、2,2’-エチリデンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェノール)、トリス(テトラメチルヒドロキシピペリジノール)・1/3クエン酸塩、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、クェルセチンや、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等が挙げられる。好ましくは3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシトルエン(BHT)である。
酸化防止剤の含量は、香料組成物の総質量に対して、例えば0.001~10質量%、好ましくは0.01~5質量%である。
【0034】
フェノール構造を有する香料成分の含量は、液体柔軟剤組成物の総質量に対して、0.01~1質量%であり、好ましくは0.01~0.5質量%であり、より好ましくは0.04~0.2質量%である。フェノール構造を有する香料成分の含量が0.01質量%以上であると、配合目的を良好に達成できる。フェノール構造を有する香料成分の含量が1質量%以下であると、においが強すぎず良好である。
(D)成分の含量は、特に限定されず、液体柔軟剤組成物の総質量に対するフェノール構造を有する香料成分の含量が上記の範囲内となる量であればよい。
【0035】
[他の任意成分]
本発明の液体柔軟剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、上記(A)~(D)成分以外にも、以下のような成分を含有してもよい。例えば、水、水溶性溶剤、シリコーン、防腐剤、抗菌剤、マイクロカプセル、デキストリン類等を配合することができる。
【0036】
<水>
本発明の液体柔軟剤組成物は、好ましくは水を含む水性組成物である。
水としては、水道水、イオン交換水、純水、蒸留水など、いずれも用いることができる。中でもイオン交換水が好適である。
水の配合量は特に限定されないが、液体柔軟剤組成物の総質量に対し、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上である。配合量が50質量%以上であると、ハンドリング性がより良好となる。
【0037】
<ノニオン界面活性剤>
ノニオン界面活性剤は、液体柔軟剤組成物の安定性の更なる向上、特に凍結復元性の更なる向上のために配合することができる。
ノニオン界面活性剤としては、液体柔軟剤組成物分野において公知の成分を特に制限なく用いることができる。例えば、アルコール、アミン又は脂肪酸のアルキレンオキサイド付加物を用いることができる。
アルコール、アミン及び脂肪酸の各炭素鎖部分は、分岐していても直鎖でもよく、不飽和があってもよい。また、炭素鎖に分布があってもよい。炭素鎖の炭素数は、好ましくは6~20、より好ましくは8~18である。炭素鎖が直鎖である場合には、その炭素数は好ましくは6~14、より好ましくは8~12、最も好ましくは8~10である。炭素鎖が分岐鎖である場合には、その炭素数は好ましくは6~18、より好ましくは9~18、最も好ましくは13である。
ノニオン界面活性剤の原料としては、エクソン化学製エクサール、BASF社製LUTENSOL(ルテンゾール)シリーズ、協和発酵工業製オキソコール、HoechstAG社製GENAPOLシリーズや、Shell社製DOBANOLシリーズなどを使用することができる。ノニオン界面活性剤がアルコールのアルキレンオキシド付加物である場合には、1級アルコール及び2級アルコールのいずれも使用することができる。炭素数13のアルコールは、例えばドデセンを原料として製造されるが、その出発原料としてはブチレンでもプロピレンでもよい。
炭素鎖が不飽和基を含む場合、その炭素数は18であるものが特に好ましい。不飽和基の立体異性体構造は、シス体又はトランス体であっても、両者の混合物であってもよいが、特にシス体/トランス体の比率が25/75~100/0(質量比)であることが好ましい。
アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド(EO)が好ましいが、EOとともにプロピレンオキサイド(PO)またはブチレンオキサイド(BO)を付加したものであってもよい。EOの平均付加モル数としては10~100モルが好適であり、より好ましくは20~80モル、特に好ましくは40~70モルである。また、EOとともに付加するPO又はBOの平均付加モル数としては1~5が好適であり、より好ましくは1~3モルである。この際、EOを付加した後、PO又はBOを付加しても、あるいはPO又はBOを付加した後、EOを付加してもよい。
ノニオン界面活性剤の具体例としては、ノニルアルコールの平均EO9PO1付加物、一級イソノニルアルコールの平均EO40モル付加物、一級イソデシルアルコールの平均EO20モル付加物、ラウリルアルコールの平均EO20モル付加物、一級イソへキサデシルアルコールの平均EO60モル付加物、一級イソトリデシルアルコールの平均EO60モル付加物、トリデシルアルコールの平均EO50モル付加物、牛脂アルキルアミンの平均EO60付加物、牛脂アルキルアミンの平均EO60付加物、オレイルアミンの平均EO50付加物や、ラウリン酸の平均EO20モル付加物などが挙げられる。市販品としては、日本エマルジョン製エマレックスシリーズ、三洋化成製エマルミンシリーズ、ライオン化学製TDAシリーズ、エソミンシリーズ、日本触媒製ソフタノールシリーズや、BASF社製LUTESOLシリーズなどを使用することができる。
ノニオン界面活性剤の配合量は、配合目的を達成できる量である限り特に限定されないが、液体柔軟剤組成物の総質量に対し、0~10質量%、好ましくは0.5~7質量%、より好ましくは1~4質量%である。
【0038】
<水溶性溶剤>
水溶性溶剤は、液体柔軟剤組成物の安定性の更なる向上、特に凍結復元性の更なる向上のために配合することができる。
水溶性溶剤としては、炭素数1~4のアルコール、グリコールエーテル系溶剤、多価アルコールからなる群から選ばれる1種又は2種以上が好ましい。具体的には、エタノール、イソプロパノール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、及び、下記一般式(X)で表わされる水溶性溶剤から選ばれる溶媒成分を配合することが好ましい。
R4-O-(C2H4O)y-(C3H6O)Z-H ・・・(X)
(式中、R4は、炭素数1~6、好ましくは2~4のアルキル基又はアルケニル基であり、yおよびzはそれぞれ平均付加モル数であり、yは1~10、好ましくは2~5であり、zは0~5、好ましくは0~2である。)
上記に挙げた中でも、エタノール、エチレングリコール、ブチルカルビトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルや、ジエチレングリコールモノブチルエーテルが好ましい。
水溶性溶剤の配合量は特に限定されないが、液体柔軟剤組成物の総質量に対し、好ましくは0~30質量%、より好ましくは0.01~25質量%、さらに好ましくは0.1~20質量%である。
【0039】
<シリコーン>
シリコーン化合物は、香り持続性の更なる向上を主目的として配合することができる。
シリコーン化合物は、液体柔軟剤組成物分野において公知の成分を特に制限なく用いることができる。
シリコーン化合物の分子構造は、直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよいし、また、架橋していてもよい。また、シリコーン化合物は変性シリコーン化合物であってもよい。変性シリコーン化合物は、1種以上の有機官能基により変性されたものであってもよい。
シリコーン化合物は、オイルの状態で使用することができ、また任意の乳化剤によって分散された乳化物の状態でも使用することができる。
シリコーン化合物の具体例としては、例えば、ジメチルシリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、メチルフェニルシリコーン、アルキル変性シリコーン、高級脂肪酸変性シリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン、フッ素変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、カルビノール変性シリコーンや、アミノ変性シリコーンなどが挙げられる。
これらの中でも、汎用性や香り持続性の向上の観点からは、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーンや、ジメチルシリコーンが好ましい。香り持続性の更なる向上効果や製造時の取り扱いの観点からは、ポリエーテル変性シリコーンやアミノ変性シリコーンが好ましい。
ジメチルシリコーンについて、その動粘度に特に制限はないが、1~100,000,000mm2/sが好ましく、10~10,000,000mm2/sがより好ましく、100~1,000,000mm2/sが更に好ましい。また、ジメチルシリコーンは、オイルであっても、エマルジョンであってもよい。
【0040】
ポリエーテル変性シリコーンの具体例としては、例えば、アルキルシロキサンとポリオキシアルキレンとの共重合体などが挙げられる。アルキルシロキサンのアルキル基の炭素数としては、1~3が好ましい。ポリオキシアルキレンのアルキレン基の炭素数としては、2~5が好ましい。
好ましいポリエーテル変性シリコーンとしては、ジメチルシロキサンとポリオキシアルキレン(ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンや、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのランダム又はブロック共重合体等)との共重合体が挙げられる。具体例としては、例えば、下記一般式(I)で表される化合物が挙げられる。
【化7】
(式中、M、N、a及びbは、それぞれ独立して平均重合度であり、Rは水素又はアルキル基である。)
一般式(I)中、Mは、10~10,000、好ましくは100~300である。
Nは、1~1,000、好ましくは1~100である。更に、M>Nであることが好ましい。
aは、2~100であり、好ましくは2~50である。
bは、0~50であり、好ましくは0~10である。
Rは、水素又は炭素数1~4のアルキル基であることが好ましい。
一般式(I)で表されるポリエーテル変性シリコーンは、一般に、Si-H基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、例えば、ポリオキシアルキレンアリルエーテル等の炭素-炭素二重結合を末端に有するポリオキシアルキレンアルキルエーテルとを、白金触媒下、付加反応させることにより製造することができる。この場合、生成物中に未反応のポリオキシアルキレンアルキルエーテルやSi-H基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンがわずかに含まれる場合がある。Si-H基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンは反応性が高いため、前記ポリエーテル変性シリコーン中での存在量としては、30ppm以下(Si-Hの量として)であることが好ましい。
【0041】
好ましいポリエーテル変性シリコーンとして、下記一般式(II)で表される線状ポリシロキサン-ポリオキシアルキレンブロック共重合体も挙げられる。
【化8】
(式中、A、B、h及びiは、それぞれ平均重合度であり、Rはアルキル基であり、R’は水素又はアルキル基である。)
一般式(II)中、Aは5~10,000であり、
Bは、2~10,000であり、
hは、2~100であり、
iは、0~50である。
Rは、炭素数1~5のアルキル基であることが好ましい。
R’は、水素又は炭素数1~4のアルキル基であることが好ましい。
一般式(II)で表される線状ポリシロキサン-ポリオキシアルキレンブロック共重合体は、反応性末端基を有するポリオキシアルキレン化合物と、該化合物の反応性末端基と反応する末端基を有するジヒドロカルビルシロキサンとを反応させることにより製造することができる。このようなポリエーテル変性シリコーンは、側鎖のポリオキシアルキレン鎖が長く、ポリシロキサン鎖の重合度が大きいものほど粘度が高くなるので、製造時の作業性改善及び水性組成物への配合を容易にするために、水溶性有機溶剤とのプレミックスの形で配合に供することが好ましい。水溶性有機溶剤としては、例えば、エタノール、ジプロピレングリコール、ブチルカルビトール等が挙げられる。
ポリエーテル変性シリコーンとしては、より具体的には、例えば、東レ・ダウコーニング(株)製のSH3772M、SH3775M、FZ-2166、FZ-2120、L-720、SH8700、L-7002、L-7001、SF8410、FZ-2164、FZ-2203や、FZ-2208、信越化学工業(株)製のKF352A、KF615A、X-22-6191、X-22-4515、KF-6012や、KF-6004等、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製のTSF4440、TSF4441、TSF4445、TSF4450、TSF4446、TSF4452や、TSF4460等が挙げられる。
【0042】
アミノ変性シリコーンは、ジメチルシリコーン骨格の末端あるいは側鎖にアミノ基を導入したものである。アミノ基以外に、水酸基、アルキル基やフェニル基等の置換基が導入されていてもよい。
アミノ変性シリコーンは、オイルの形態でも良く、ノニオン界面活性剤やカチオン界面活性剤を乳化剤として用いて乳化させたアミノ変性シリコーンエマルジョンの形態でも良い。
好ましいアミノ変性シリコーンのオイル、又はエマルジョンにおける基油オイルは、次の一般式(III)で表される化合物である。
【化9】
(式中、R
1及びR
6は互いに同一でも、異なっていてもよい、メチル基、水酸基又は水素であり、
R
2は、-(CH
2)
n-A1、又は、-(CH
2)
n-NHCO-(CH
2)
m-A
1(各式中、A
1は、-N(R
3)(R
4)、-N
+(R
3)(R
4)(R
5)・X
-(各式中、R
3、R
4及びR
5は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、フェニル基又は-(CH
2)
n-NH
2(式中、nは0~12である)であり、X
-は、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、硫酸メチルイオン又は硫酸エチルイオンである)であり、m及びnの値は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、0~12の整数である)であり、
p及びqはそれぞれポリシロキサンの重合度を表し、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、pは0~20000、好ましくは10~10000であり、qは1~500、好ましくは1~100である。)
【0043】
アミノ変性シリコーンのオイルは、25℃における動粘度が50~20000mm2/sであることが好ましく、100~10000mm2/sであることがより好ましい。動粘度がこの範囲にあると、高い香り持続性効果が発現されるとともに、製造性が良好となり、成物の取り扱いも容易になる。
アミノ変性シリコーンとしては商業的に入手できるものを使用することができる。
アミノ変性シリコーンオイルとしては、例えば、東レ・ダウコーニング株式会社からSF―8417、BY16-892や、BY16-890で販売されているもの、信越化学工業株式会社からKF-864、KF-860、KF-8004、KF-8002、KF-8005、KF-867、KF-861、KF-880や、KF-867Sで販売されているもの等が挙げられる。
アミノ変性シリコーンエマルジョンタイプとしては、例えば、東レ・ダウコーニング株式会社からSM8904、BY22-079、FZ-4671や、FZ-4672で販売されているもの、信越化学工業株式会社からPolonシリーズで販売されているPolonMF-14、PolonMF-29、PolonMF-14D、PolonMF-44、PolonMF-14ECや、PolonMF-52と、旭化成ワッカーシリコーン(株)からWACKER FC201で販売されているもの等があげられる。
【0044】
シリコーン化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上からなる混合物として用いてもよい。
シリコーン化合物の配合量は、配合目的を達成できる量である限り特に限定されないが、液体柔軟剤組成物の総質量に対し、0.01~10質量%、好ましくは0.05~8質量%、より好ましくは0.1~5質量%である。
【0045】
<防腐剤>
防腐剤は、主に、液体柔軟剤組成物の防腐力や殺菌力を強化し、長期保存中の防腐性を保つために配合することができる。
防腐剤としては、液体柔軟剤組成物分野において公知の成分を特に制限なく用いることができる。具体例としては、例えば、イソチアゾロン系の有機硫黄化合物、ベンズイソチアゾロン系の有機硫黄化合物、安息香酸類、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-プロパンジオール等が挙げられる。
イソチアゾロン系の有機硫黄化合物としては、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-n-ブチル-3-イソチアゾロン、2-ベンジル-3-イソチアゾロン、2-フェニル-3-イソチアゾロン、2-メチル-4,5-ジクロロイソチアゾロン、5-クロロ-2-メチル-3-イソチアゾロン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンや、これらの混合物などが挙げられる。なかでも、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンが好ましく、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンと2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンとの混合物がより好ましく、前者が約77質量%と後者が約23質量%との混合物やその希釈液(例えば、イソチアゾロン液)が特に好ましい。
ベンズイソチアゾロン系の有機硫黄化合物としては、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4,5-トリメチレン-4-イソチアゾリン-3-オン、類縁化合物としてジチオ-2,2-ビス(ベンズメチルアミド)や、これらの混合物などが挙げられる。中でも、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンが特に好ましい。
安息香酸類としては、安息香酸又はその塩、パラヒドロキシ安息香酸又はその塩、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチルや、パラオキシ安息香酸ベンジル等が挙げられる。
防腐剤の配合量は、配合目的を達成できる量である限り特に限定されないが、液体柔軟剤組成物の総質量に対し、好ましくは0.0001~1質量%である。0.0001質量%以上であると、防腐剤の配合効果が十分に得られ、1質量%以下であると、液体柔軟剤組成物の高い保存安定性を十分に維持することができる。
【0046】
<抗菌剤>
抗菌剤は、液体柔軟剤組成物の保存性を高めるために配合することができる。
抗菌剤としては、液体柔軟剤組成物分野において公知の成分を特に制限なく用いることができる。具体例としては、例えば、ダイクロサン、トリクロサン、塩化ベンザルコニウム、ビス-(2-ピリジルチオ-1-オキシド)亜鉛、8-オキシキノリン、ビグアニド系化合物(例えば、ポリヘキサメチレンビグアニド)、塩酸クロロヘキシジンや、ポリリジン等が挙げられる。これらの中でも、塩化ベンザルコニウム、ビグアニド系化合物や、塩酸クロロヘキシジンが好ましい。
抗菌剤の配合量は、配合目的を達成できる量である限り特に限定されないが、液体柔軟剤組成物の総質量に対し、好ましくは0.001~5質量%である。
【0047】
<マイクロカプセル>
マイクロカプセルは、機能性カプセルである。機能性カプセルは、様々な機能を付与する目的で使用され得、芯物質としては、香料、精油、増白剤、虫除け剤、シリコーン、ワックス、香味料、ビタミン、スキンケア剤、酵素、プロバイオティクス、染料、顔料、香料前駆体、冷感剤、温感剤、フェロモン等の誘引剤、抗菌剤、漂白剤、香味料、甘味料、ワックス、薬剤、肥料、除草剤を含み、壁物質が高分子物質から構成されるマイクロカプセルである。1種単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせてもよい。
カプセル香料の具体例としては、フィルメニッヒ社製のBLUEFLOWERPOP「FFMHN2814」、ジボダン社製のGREEN BREEZE CAPS、ORCHARD GARDEN CAPS、RAINBOW CAPS、VELVET CAPS、AURORACAPS、およびCOSMICCAPS;IFF社製のUNICAP101、およびUNICAP503等が挙げられる。
【0048】
<デキストリン類>
デキストリン類としては、シクロデキストリン、高度分岐環状デキストリン等が挙げられる。高度分岐環状デキストリンとしては、内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有する重合度が50~10000の範囲にあるグルカンであって、内分岐環状構造部分はα-1,4-グルコシド結合とα-1,6-グルコシド結合とで形成される環状のグルカン鎖であり、外分岐構造部分は内分岐環状構造部分に結合した非環状のグルカン鎖であるデキストリンが挙げられる。高度分岐環状デキストリンとしては、クラスターデキストリン(グリコ栄養食品株式会社製)等が挙げられる。
【0049】
[液体柔軟剤組成物の粘度]
本発明の柔軟剤組成物の粘度は特に限定されないが、使用性や柔軟剤液の分離安定性、機能性粒子の分散安定性の観点から、下記のように測定したTI(チキソトロピーインデックス)値が2.0以上を有し、さらに25℃における回転速度30rpmの粘度が1~1000mpa・sであることが好ましい。
ここでTI値とは、25℃に調整された各組成物について、B型粘度計(TOKIMEC社製、ローターNo.2)により、回転速度6rpmと60rpmのそれぞれの10回転後の粘度値から下記式に基づき、算出した値である。このTI値はせん断速度(粘度計の回転数)と粘度の依存性を測定し、チキソトロピー性を表す指標として用いられている。
TI値=(6rpm粘度値)/(60rpm粘度値)
【0050】
上記TI値はせん断速度が変わっても粘度の変化がない水のようなニュートン流体の場合、TI値=1となる。TI値が1より大きい場合は、せん断力が小さい方が、せん断力が大きい場合に比べ高い粘度を有することを示し、チキソトロピー性を有する液体となる。
本発明の液体柔軟剤組成物では、チキソトロピー性を示すTI値の範囲が、好ましくは2.0以上、より好ましくは2.0~5.0、さらに好ましくは2.5~4.0である。TI値が2.0以上の場合、優れたチキソトロピー性が得られ、カプセル香料などの機能性粒子の分散安定性がより向上する。一方、5.0を越えると、チキソトロピー性が高まり、液体柔軟剤組成物の計量時に組成物をキャップに取り出しにくい等の不具合が生じる場合がある。
さらに、本発明の液体柔軟剤組成物は、上記の25℃における、粘度計の回転数が30rpm時の粘度が1~1000mpa・sの範囲内であると、使用性や柔軟剤液の分離安定性、機能性粒子の分散安定性が良好となる。
【0051】
[液体柔軟剤組成物のpH]
液体柔軟剤組成物のpHは特に限定されないが、保存経日に伴う(A)成分の加水分解を抑制する等の観点から、25℃におけるpHが1~6の範囲内であることが好ましく、2~4の範囲内であることがより好ましく、2~3の範囲内であることがさらに好ましい。
pH調整には、塩酸、硫酸、リン酸、アルキル硫酸、安息香酸、パラトルエンスルホン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、グリコール酸、ヒドロキシエタンジホスホン酸、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸、ジメチルアミン等の短鎖アミン化合物、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩や、アルカリ金属珪酸塩などのpH調整剤を用いることができる。
【0052】
[液体柔軟剤組成物の調製方法]
本発明の液体柔軟剤組成物の調製方法は特に限定されない。液体柔軟剤組成物は、公知の方法、例えば主剤としてカチオン界面活性剤を用いる従来の液体柔軟剤組成物の製造方法と同様の方法により製造できる。
例えば、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分、並びに必要に応じて他の成分を含む油相と、水相とを、(A)成分の融点以上の温度条件下で混合して乳化物を調製し、得られた乳化物に、必要に応じて他の成分を添加、混合することにより、液体柔軟剤組成物を製造できる。
【0053】
[液体柔軟剤組成物の使用方法]
本発明の液体柔軟剤組成物の使用方法に特に制限はなく、一般の柔軟剤組成物と同様の方法で使用することができる。例えば、洗濯のすすぎの段階ですすぎ水へ液体柔軟剤組成物を溶解させて被洗物を柔軟処理する方法や、液体柔軟剤組成物をたらいのような容器中の水に溶解させ、更に被洗物を入れて浸漬処理する方法がある。いずれの場合も液体柔軟剤組成物を適度な濃度に希釈して使用するが、浴比(被洗物に対する処理液の重量比)は3~100倍、特に5~50倍であることが好ましい。具体的には、全使用水量に対して、(A)成分の濃度が好ましくは0.01ppm~1000ppm、さらに好ましくは0.1ppm~300ppmとなるような量で使用される。
液体柔軟剤組成物で処理可能な被洗物、例えば繊維製品の種類は特に限定されず、例えば、衣類、カーテン、ソファー、カーペット、タオル、ハンカチ、シーツや、マクラカバー等が挙げられる。その素材も、綿や絹、ウール等の天然繊維でもよいし、ポリエステル等の化学繊維でもよい。
【実施例0054】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。尚、実施例において各成分の配合量はすべて質量%(指定のある場合を除き、純分換算)を示す。
【0055】
[(A)成分]
下記のA-1を使用した。
A-1:特開2003-12471号公報の実施例4に記載のカチオン界面活性剤
A-1は、一般式(A1-3)、(A1-4)及び(A1-5)で表される化合物(各式中、R9は炭素数15~17のアルキル基及びアルケニル基である)をジメチル硫酸で4級化したものを含む組成物である。
【0056】
[(B)成分]
下記のB-1~B-4を使用した。
B-1:テトラデシルトリメチルアンモニウムクロライド(東京化成工業株式会社)
B-2:ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド(東京化成工業株式会社)
B-3:オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド(東京化成工業株式会社)
B-4:MICONIUM CTAC29(MIWON社)
B-4中、以下成分が含まれる。
ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド:29.0質量%
ヘキサデシルアミン、ヘキサデシルメチルアミン、ヘキサデシルジメチルアミン又はそれらのアミン塩酸塩の総量:0.1質量%
また、比較例としてB-1’を使用した。
B-1’:ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド(東京化成工業株式会社)
【0057】
[(C)成分]
下記のC-1~C-4を使用した。
C-1:テトラデシルジメチルアミン(東京化成工業株式会社)
C-2:ヘキサデシルジメチルアミン(東京化成工業株式会社)
C-3:ヘキサデシルアミン(東京化成工業株式会社)
C-4:オクタデシルジメチルアミン(東京化成工業株式会社)
また、比較例としてC-1’を使用した。
C-1’:ドデシルジメチルアミン(東京化成工業株式会社)
【0058】
[(D)成分]
下記表1に示される組成(質量%)で香料成分を含むD-1~D-6を使用した。D-6は比較例である。
【表1】
【0059】
[任意成分]
下記表2に示される成分を共通に使用した。
【表2】
表2中の配合量は、液体柔軟剤組成物の総質量に対する配合量(質量%)である。
【0060】
[液体柔軟剤組成物の調製方法]
内径100mm、高さ150mmのガラス容器と、攪拌機(アジターSJ型、島津製作所製)を用い、各成分の配合量を、下記表3に記載の通り調整して、次の手順により液体柔軟剤組成物を調製した。まず(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、TA600 1.5%を混合攪拌して、油相混合物を得た。一方、バランス用イオン交換水にNIPACIDE BIT20を溶解して水相混合物を得た。バランス用イオン交換水(NIPACIDE BIT20を含む)の質量は、980gから油相混合物の合計量を差し引いた残部に相当する。
次に、(A)成分の融点以上に加温した油相混合物をガラス容器に収納して攪拌しながら、(A)成分の融点以上に加温した水相混合物を2度に分割して添加し、攪拌した。ここで、水相混合物の分割比率は30:70(質量比)とし、攪拌は回転速度1,000rpmで、1回目の水相混合物添加後に3分間、2回目の水相混合物添加後に2分間行った。その後、得られた乳化物に、残りのTA600 0.5%及び任意成分を添加し攪拌した。また必要に応じて、塩酸(試薬1mol/L、関東化学)、または水酸化ナトリウム(試薬1mol/L、関東化学)を適量添加してpHを調整し、更に全体質量が1,000gになるようにイオン交換水を添加して、目的の液体柔軟剤組成物(実施例1~17、比較例1~4)を得た。
【0061】
[液体柔軟剤組成物の評価方法]
<生乾き臭の抑制効果>
一般家庭に存在する生乾き臭が気になる使い古しのタオルを評価布とした。評価布を、二槽式洗濯機(三菱電機製CW-C30A1-H)を用いて、市販洗剤「トッププラチナクリア」(ライオン社製)で10分間洗浄し(標準使用量、標準コース、浴比20倍、25℃の水道水使用)、1回目のすすぎ(3分間)を行い、続く2回目のすすぎ時に上記のとおり調製した液体柔軟剤組成物にて3分間の柔軟処理(試験布1kgに対して、液体柔軟剤組成物5mL、浴比20倍、25℃の水道水使用)を行った。柔軟処理後に脱水した評価布を、室内(20℃、90%RH)で6時間放置(部屋干し)した。
部屋干し後の評価布の臭いを以下の評価基準に従い官能評価した。評価は、専門パネラー6名で行った。6名の平均点(小数点第1位まで算出)を下記判定基準に適用して、液体柔軟剤組成物の部屋干し臭抑制効果を判定した。判定結果を表3の「消臭性」の欄に示す。商品価値上、〇以上を合格とした。
【0062】
(評価基準)
0点:異臭が全くしない。
1点:異臭がやっと感知できる程度に感じられる。
2点:異臭が弱く感じられる。
3点:異臭がやや強く感じられる。
4点:異臭が強く感じられる。
5点:異臭が強烈に感じられる。
【0063】
(判定基準)
◎◎◎:1.0点未満
◎◎:1.0点以上、1.5点未満
◎:1.5点以上、2.0点未満
〇:2.0点以上、2.5点未満
△:2.5点以上、3.0点未満
×:3.0点以上
【0064】
<基材臭の評価>
(評価用布の前処理)
市販の綿タオル(東進社製)を、市販洗剤「トッププラチナクリア」(ライオン社製)で、二槽式洗濯機(東芝製VH-30S)を用いて、以下の前処理を3回行った。
前処理:洗剤標準使用量、浴比30倍、45℃の水道水での洗浄10分間と、続く注水すすぎ10分間とのサイクルを2回行った。
【0065】
(洗濯時すすぎ工程における液体柔軟剤組成物による処理)
上記のとおり前処理洗浄した綿タオル1.0kgを、二槽式洗濯機(東芝製VH-30S)を用いて、市販洗剤「トッププラチナクリア」(ライオン社製)で10分間洗浄処理を行った(標準使用量、標準コース、浴比30倍、25℃の水道水使用)。その後、1回目のすすぎを3分間行った。1回目のすすぎに続いて2回目のすすぎを3分間行った。2回目のすすぎの開始時に、上記のとおり調製した液体柔軟剤組成物を添加して、3分間の柔軟処理(仕上げ剤6.67mL、浴比20倍、25℃の水道水使用)を行った。洗浄とすすぎの各処理間に脱水を1分間行った。
すすぎ処理後、二槽式洗濯機から綿タオルを取出し、評価用処理布とした。
【0066】
(基材臭の強度評価)
評価用処理布の基材由来の臭気強度を、下記の6段階臭気強度表示法に準拠し官能評価した。専門パネラー8人の平均点により、下記判定基準で臭気強度を判定した。判定結果を表3の「基材臭」の欄に示す。商品価値上、〇以上を合格とした。
【0067】
(評価基準)
0点:異臭が全くしない。
1点:異臭がやっと感知できる程度に感じられる。
2点:異臭が弱く感じられる。
3点:異臭がやや強く感じられる。
4点:異臭が強く感じられる。
5点:異臭が強烈に感じられる。
【0068】
(判定基準)
◎◎◎:1.0点未満
◎◎:1.0点以上、1.5点未満
◎:1.5点以上、2.0点未満
○:2.0点以上、2.5点未満
△:2.5点以上、3.0点未満
×:3.0点以上
【0069】