(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167993
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池用電池ケースおよび非水電解質二次電池用電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/117 20210101AFI20231116BHJP
B32B 5/00 20060101ALI20231116BHJP
B32B 5/24 20060101ALI20231116BHJP
H01M 50/122 20210101ALI20231116BHJP
H01M 50/124 20210101ALI20231116BHJP
【FI】
H01M50/117
B32B5/00 A
B32B5/24
H01M50/122
H01M50/124
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079578
(22)【出願日】2022-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩田 利生
(72)【発明者】
【氏名】白石 幸司
【テーマコード(参考)】
4F100
5H011
【Fターム(参考)】
4F100AA37A
4F100AD11B
4F100AG00B
4F100AK07B
4F100AK46B
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100CA23B
4F100DG01B
4F100DH01B
4F100DH02B
4F100GB41
4F100JA02A
4F100JD08B
4F100JD08C
4F100JJ07
5H011AA13
5H011CC02
5H011CC05
5H011KK02
(57)【要約】
【課題】軽量かつ難燃性に優れる非水電解質二次電池用電池ケースを提供すること。
【解決手段】膨張黒鉛層および繊維強化樹脂層を含み、前記繊維強化樹脂層は、炭素繊維およびガラス繊維の少なくとも一方を前記繊維強化樹脂層の全質量に対して10質量%~60質量%含む、非水電解質二次電池用電池ケースおよびこれを備える非水電解質二次電池用電池。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張黒鉛層および繊維強化樹脂層を含み、
前記繊維強化樹脂層は、炭素繊維およびガラス繊維の少なくとも一方を前記繊維強化樹脂層の全質量に対して10質量%~60質量%含む、
非水電解質二次電池用電池ケース。
【請求項2】
前記膨張黒鉛層における膨張黒鉛の含有量が、前記膨張黒鉛層の全質量に対して50質量%以上である、請求項1に記載の非水電解質二次電池用電池ケース。
【請求項3】
前記繊維強化樹脂層は、ポリプロピレン樹脂またはポリアミド樹脂を含む、請求項1に記載の非水電解質二次電池用電池ケース。
【請求項4】
前記膨張黒鉛層が、電池ケースの内側に配置されている、請求項1に記載の非水電解質二次電池用電池ケース。
【請求項5】
電磁波遮蔽層をさらに含む、請求項1に記載の非水電解質二次電池用電池ケース。
【請求項6】
前記繊維強化樹脂層は、電磁波遮蔽フィラーを含有する、請求項1に記載の非水電解質二次電池用電池ケース。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用電池ケースを備える、非水電解質二次電池用電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池用電池ケースおよび非水電解質二次電池用電池に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車走行時のCO2排出量の削減や、電気自動車等の走行距離アップを達成するには、車両の軽量化がこれまで以上に求められている。軽量化を向上させる観点から、電池パック、電池モジュールに使用される金属を減らしたり、使用する材料を樹脂化したりすることが考えられる。
一方で、電気自動車の安全性もこれまで以上に向上させることが求められている。例えば、リチウム電池に代表される各種バッテリでは、内部短絡、過充電、外部異物貫通、外部過熱、異常発熱等に起因してバッテリが発火することがある。
【0003】
内部短絡等の異常時に電池の発熱を抑制できる非水電解質二次電池として、例えば、特許文献1には、電池ケースを備え、前記電池ケースには、膨張黒鉛層および高熱伝導性層が配置され、前記膨張黒鉛層は、70質量%以上の膨張黒鉛と、30質量%以下のバインダとからなり、前記高熱伝導性層の面方向の熱伝導率が、前記電池ケースの面方向の熱伝導率および前記膨張黒鉛層の面方向の熱伝導率よりも高い、非水電解質二次電池が開示されている。
【0004】
また、軽量化と耐火性を両立できる電池セル収納ケースとして、例えば、特許文献2には、複数の電池セルが載置される底板、前記底板の周囲に立設された側板、及び、前記立設された側板の上端に前記底板と対向するように設けられた天板を有する電池セル収納ケースであって、前記天板が第1の天板構成層と第1の天板構成層より内側にある第2の天板構成層とを有し、前記第1の天板構成層が、厚さ0.5~5.0mmのアルミニウム層、及び非発泡樹脂層のいずれかであり、前記第2の天板構成層が、難燃剤を含むポリウレタン発泡層である電池セル収納ケースが開示されている。
【0005】
耐薬品性及び耐透水性の両者の要求を満たし、しかも、生産性に優れた樹脂製の電池セル筐体として、例えば、特許文献3には樹脂成形体とその表面に形成された金属層とを少なくとも備えてなる電池セル筐体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-181519号公報
【特許文献2】特開2021-002420号公報
【特許文献3】特開2007-227121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の電池ケースは、アルミニウム製の電池ケースが開示されているため、車両の軽量化を実現するためには、更なる電池ケースの軽量化が求められている。特許文献2および3に記載された電池ケースは、樹脂性のケースであるため、金属製のケースよりも軽量であるものの、樹脂製のバッテリーケースは難燃性の更なる向上が求められている。
【0008】
本発明に係る一実施形態が解決しようとする課題は、軽量かつ難燃性に優れる非水電解質二次電池用電池ケースを提供することである。
また、本発明に係る他の実施形態が解決しようとする課題は、軽量かつ難燃性に優れる非水電解質二次電池用電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 膨張黒鉛層および繊維強化樹脂層を含み、
前記繊維強化樹脂層は、炭素繊維およびガラス繊維の少なくとも一方を前記繊維強化樹脂層の全質量に対して10質量%~60質量%含む、
非水電解質二次電池用電池ケース。
<2> 前記膨張黒鉛層における膨張黒鉛の含有量が、前記膨張黒鉛層の全質量に対して50質量%以上である、<1>に記載の非水電解質二次電池用電池ケース。
<3> 前記繊維強化樹脂層は、ポリプロピレン樹脂またはポリアミド樹脂を含む、<1>に記載の非水電解質二次電池用電池ケース。
<4> 前記膨張黒鉛層が、電池ケースの内側に配置されている、<1>に記載の非水電解質二次電池用電池ケース。
<5> 電磁波遮蔽層をさらに含む、<1>に記載の非水電解質二次電池用電池ケース。
<6> 前記繊維強化樹脂層は、電磁波遮蔽フィラーを含有する、<1>に記載の非水電解質二次電池用電池ケース。
<7> <1>~<6>のいずれか1つに記載の非水電解質二次電池用電池ケースを備える、非水電解質二次電池用電池。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る一実施形態によれば、軽量かつ難燃性に優れる非水電解質二次電池用電池ケースが提供される。本発明に係る一実施形態によれば、軽量かつ難燃性に優れる非水電解質二次電池用電池が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の内容の説明は、本発明の代表的な実施形態に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されることはない。
本明細書において、「重合体」とは、単独重合体および共重合体を含む概念である。
本明細書において、数値範囲を示す「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、数値範囲を示す「~」とはその前後いずれか一方に記載される単位は、特に断りがない限り同じ単位を示すことを意味する。
本明細書において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
(非水電解質二次電池用電池ケース)
本発明に係る非水電解質二次電池用電池ケースは、膨張黒鉛層および繊維強化樹脂層を含み、前記繊維強化樹脂層は、炭素繊維およびガラス繊維の少なくとも一方を前記繊維強化樹脂層の全質量に対して10質量%~60質量%含む。
本発明に係る非水電解質二次電池用電池ケース(以下、単に「電池ケース」ともいう。)は、上記構成を有することで、軽量かつ難燃性に優れる。この理由は明らかではないが以下のように推察される。
上記電池ケースは、膨張黒鉛層を含むので、例えば、バッテリが発火した場合、膨張黒鉛層への接炎により、膨張黒鉛層が膨張することで膨張黒鉛層が断熱層となり、耐火難燃効果を発現すると推定している。また、上記電池ケースは、繊維強化樹脂層を含むので、従来の金属層を備える電池ケースと比べて軽量となる。
以下、電池ケースの各構成の詳細について説明する。
【0013】
<繊維強化樹脂層>
本発明に係る電池ケースは、繊維強化樹脂層を含む。繊維強化樹脂層は、樹脂と炭素繊維およびガラス繊維の少なくとも一方を含む層であり、繊維強化樹脂層に含まれる樹脂としては、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0014】
<<樹脂>>
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート、スチレン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS樹脂)、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE樹脂)、ポリアセタール(POM樹脂)、液晶ポリエステル、ポリアリレート、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)などのアクリル樹脂、塩化ビニル、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、変性ポリオレフィン樹脂、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂などが挙げられる。
これらの中でも、軽量かつ難燃性に優れる観点から、熱可塑性樹脂としては、好ましくはアクリル樹脂およびポリオレフィン樹脂であり、より好ましくは、ポリアミド、ポリエステル、および、ポリプロピレン樹脂であり、さらに好ましくはポリアミド樹脂、および、ポリプロピレン樹脂である。
【0015】
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、熱硬化性不飽和ポリエステル樹脂およびフェノール樹脂が挙げられる。
【0016】
軽量かつ難燃性に優れる観点から、繊維強化樹脂層に含まれる樹脂としては、熱可塑性樹脂であることが好ましく、アクリル樹脂およびポリオレフィン樹脂であることがより好ましく、ポリアミド、ポリエステル、および、ポリプロピレン樹脂であることがさらに好ましく、ポリアミド樹脂、および、プロピレン樹脂であることが特に好ましい。
【0017】
-プロピレン樹脂-
上記プロピレン樹脂は、未変性のプロピレン樹脂であっても、変性などの方法でカルボン酸構造やカルボン酸塩構造を含むプロピレン樹脂であってもよい。未変性樹脂とカルボン酸やカルボン酸塩構造を含むプロピレン樹脂の両方を用いる場合、その好ましい質量比は、未変性体/変性体比で、99/1~80/20であり、より好ましくは98/2~85/15であり、更に好ましくは、97/3~90/10である。
【0018】
プロピレン樹脂は、例えば、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、変性ポリプロピレンと言われるプロピレン系重合体である。
プロピレン樹脂は、プロピレン由来の構造単位を含む重合体である。プロピレン由来の構造単位と、α-オレフィン、共役ジエンおよび非共役ジエンからなる群より選ばれる少なくとも一種のプロピレン以外のオレフィン由来の構造単位とを含む共重合体であることが好ましい。
【0019】
α-オレフィンの例には、エチレン、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、1-ノネン、1-オクテン、1-ヘプテン、1-ヘキセン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどのプロピレンを除く炭素原子数2~20のα-オレフィンが含まれる。中でも、1-ブテン、エチレン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセンが好ましく、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテンがより好ましい。
共役ジエンおよび非共役ジエンの例には、ブタジエン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,5-ヘキサジエンが含まれる。
【0020】
α-オレフィン、共役ジエンおよび非共役ジエンは、2種以上を併用してもよい。中でも、プロピレン樹脂は、プロピレンとα-オレフィンの共重合体であることが好ましい。当該共重合体の例には、エチレン・プロピレン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・1-ブテン共重合体などが含まれる。
【0021】
プロピレン樹脂のプロピレン由来の構造単位の割合は、得られる電池ケースの機械的強度の点から、プロピレン樹脂の全構成単に対して、好ましくは50~100モル%、より好ましくは60~100モル%、特に好ましくは70~100モル%である。
【0022】
プロピレン樹脂は、例えば周期律表の15~17族元素を含む構造を有してもよい。周期律表の15~17族元素を含む構造の例には、無水カルボン酸基やカルボン酸基、アミノ基、酸アミド基、ハロゲン基などの官能基が含まれる。
このような構造は、ラジカルグラフト反応などの公知の方法で導入することができる。17族元素の例には、塩素原子などのハロゲン原子が含まれる。16族元素の例には、酸素原子、硫黄原子が含まれ、好ましくは酸素原子である。15族元素の例には、窒素原子が含まれる。中でも、酸素原子が好ましい。すなわち、周期律表の15~17族元素を含む構造は、好ましくはカルボン酸(塩)でありうる。カルボン酸(塩)は、好ましくはカルボン酸基または無水カルボン酸基、より好ましくは無水マレイン酸構造を有する基である。
【0023】
プロピレン樹脂が周期律表の15~17族元素を含む構造を有する場合、その元素の含有率は、プロピレン樹脂の全質量に対して、好ましくは0.0003~5質量%、より好ましくは0.0005~4.5質量%、さらに好ましくは0.0008~4.3質量%、特に好ましくは0.001~4質量%である。
【0024】
上記含有率は、例えばグラフト反応における各成分の仕込み比から算出することができる。また、元素分析装置(例えば、varioELIII型:エレメンタール社製)などの元素分析装置により特定することもできる。
【0025】
プロピレン樹脂は、未変性プロピレン樹脂と酸変性プロピレン樹脂とを含むことが好ましい。
【0026】
230℃、2.16kg荷重の条件で測定されるプロピレン樹脂のメルトフローレート(MFR)は、通常3~100g/10分、好ましくは15~100g/10分である。
後述の実施例に記載の測定方法により求められる。
【0027】
<<炭素繊維>>
炭素繊維としては、公知の種々の炭素繊維を使用することができ、例えば、ポリアクリルニトリル系、レーヨン系、ピッチ系、ポリビニルアルコール系、再生セルロース系、メゾフェーズピッチから製造されたピッチ系等の炭素繊維が挙げられる。炭素繊維は汎用繊維でよく、高強度繊維でもよい。また、炭素繊維は、長繊維、短繊維、および、リサイクル繊維であってもよい。前記炭素繊維の繊維径は、好ましくは3~30μm、より好ましくは4~10μmである。
【0028】
<<ガラス繊維>>
ガラス繊維としては、特に制限はなく、例えば、Aガラス、Cガラス、Dガラス、Eガラス、Sガラスなどのガラス組成からなる繊維が挙げられる。これらの中でも、特に、Eガラス(無アルカリガラス)のガラス組成からなる繊維が好ましい。
【0029】
炭素繊維およびガラス繊維は、短繊維であってもよく、長繊維であってもよい。短繊維は、チョップドファイバー(カットファイバー)状短繊維でも、フィブリルを有するパルプ状短繊維でもよい。また、炭素繊維およびガラス繊維は、単繊維であってもよく、単繊維を複数本撚り合わせたものであってもよい。
【0030】
炭素繊維およびガラス繊維の平均繊維長は、好ましくは0.01mm以上、より好ましくは0.1mm以上、さらに好ましくは1mm以上であり、好ましくは100mm以下、より好ましくは50mm以下、さらに好ましくは30mm以下である。平均繊維長が上記範囲であると、炭素繊維およびガラス繊維による機械的物性の補強効果が充分発現される傾向にあり、また、繊維強化樹脂層中の炭素繊維およびガラス繊維の分散性が向上するため、外観が良好となる傾向にある。炭素繊維およびガラス繊維の繊維数全体に対して、繊維長が0.1mm未満である繊維数の割合は、好ましくは18%以下である。
【0031】
炭素繊維およびガラス繊維の平均繊維径は、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上であり、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下である。このような態様であると、成形時に強化繊維が破損し難くなり、また、得られる成形体の衝撃強度が高くなる傾向にあり、また、成形体の外観が良好となり、成形体の剛性、耐熱性などの機械的物性に充分な補強効果が得られる。
【0032】
平均繊維長および平均繊維径は、例えば、光学顕微鏡により強化繊維の写真撮影を行い、得られた写真において無作為に選んだ100個の強化繊維の長さまたは径を測定し、それぞれを算術平均することにより求めることができる。
【0033】
上記の中でも、ガラス繊維の形態は、例えば、単繊維や複数本撚り合わせたものを連続的に巻き取った「ガラスロービング」、平均繊維長を1~10mmに切りそろえた「チョップドストランド」、平均繊維長10~500μm程度に粉砕した「ミルドファイバー」などが好適に挙げられる。
【0034】
炭素繊維およびガラス繊維は、表面処理のされていない繊維(以下「繊維(C0)」)であってもよく、表面処理された繊維(以下、「表面処理繊維(C1)」)であってもよい。
【0035】
例えば、「表面処理繊維(C1)」は、各種集束剤を用いて表面処理された繊維(以下、「集束剤処理繊維(C1A)」)であってもよい。前記「集束剤処理繊維(C1A)」は、多くの場合、前記繊維(C0)と、当該繊維(C0)を被覆する集束剤とを含んでいる。
集束剤としては、例えば、アクリル系集束剤、ウレタン系集束剤、酸共重合物系集束剤等が挙げられる。これらの中でも、収束剤としては、酸共重合物系集束剤が好ましい。
【0036】
ここで、前記「集束剤処理繊維(C1A)」が、集束剤を用いて表面処理されたガラス繊維ロービング(以下、「集束剤処理ガラス繊維ロービング」)である場合、集束剤処理繊維への樹脂成分の含浸が十分に行われる点から、「集束剤処理ガラス繊維ロービング」に含まれる集束剤は、酸共重合物系集束剤が好ましい。また、アクリル系集束剤も好適な集束剤の1つである。
【0037】
一方、「集束剤処理繊維(C1A)」が、「集束剤処理ガラス繊維ロービング」以外の繊維、例えば、集束剤を用いて表面処理されたチョップドストランド(以下、「集束剤処理チョップドストランド」)である場合、当該「集束剤処理チョップドストランド」に含まれる集束剤は、酸共重合物系集束剤に限られず、アクリル系集束剤、ウレタン系集束剤などの酸共重合物系集束剤以外の集束剤であってもよい。
そのような酸共重合物系集束剤以外の集束剤を含む「集束剤処理チョップドストランド」であっても、酸共重合物系集束剤を含む「集束剤処理チョップドストランド」と同様、樹脂成分の含浸が十分に行われるので好ましい。
【0038】
炭素繊維およびガラス繊維は、必要に応じて、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤、ボラン系カップリング剤、硬化触媒、潤滑剤、充填剤、チキソ付与剤、粘着付与剤、ワックス、熱安定剤、耐光安定剤、蛍光増白剤、発泡剤、pH調整剤、レベリング剤、ゲル化防止剤、分散安定剤、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、耐熱性付与剤、無機充填剤、有機充填剤、可塑剤、補強剤、抗菌剤、防カビ剤、防錆剤、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、顔料、染料、導電性付与剤、帯電防止剤、透湿性向上剤、撥水剤、撥油剤、中空発泡体、結晶水含有化合物、難燃剤、吸水剤、吸湿剤、消臭剤、整泡剤、消泡剤、防黴剤、防腐剤、防藻剤、顔料分散剤、ブロッキング防止剤、および、加水分解防止剤などから選ばれる1種以上の成分を含んでいてもよい。
【0039】
集束剤を用いた炭素繊維およびガラス繊維の表面処理方法としては、例えば、集束剤をアプリケーター等で強化繊維の表面に塗布する方法、集束剤に強化繊維を浸漬する方法、集束剤を霧状にして強化繊維に吹き付ける方法、集束剤の付着したローラに強化繊維を接する方法が挙げられる。また、上記表面処理方法は、バッチ式および連続式のいずれでもよい。
【0040】
炭素繊維およびガラス繊維が集束剤を用いて表面処理された場合、炭素繊維およびガラス繊維における集束剤の質量割合、すなわち強熱減量は、炭素繊維および/またはガラス繊維の全質量に対して、0.1~1.5質量%であることが好ましい。集束剤の質量割合(強熱減量)は、例えば、アプリケーターなどによって集束剤を強化繊維に塗布し、乾燥させることにより完全に揮発性物質を揮発させて得られた繊維について測定される。炭素繊維またはガラス繊維の表面に塗布された集束剤の強熱減量が0.1質量%以上である場合には、上述した樹脂と炭素繊維およびガラス繊維との界面を安定化でき、耐熱性を発現できるため好ましい。一方、炭素繊維またはガラス繊維の表面に塗布された集束剤の強熱減量が1.5質量%以下である場合には、耐熱性などの物性向上が認められるため好ましい。
【0041】
炭素繊維およびガラス繊維における集束剤の強熱減量は、JIS R 3420(2006)7.3.2に従い測定した値である。
表面処理後の強化繊維は所定本数に集束され、巻き取った後、必要に応じて切断および/または粉砕し、チョップドストランド、ミルドファイバー、ヤーン、ロービング等に加工してもよい。
【0042】
繊維強化樹脂層は、本発明の効果を奏する限り、炭素繊維およびガラス繊維以外の繊維(以下、「その他の繊維)ともいう。)をさらに含んでいてもよい。
その他の繊維としては、例えば、綿繊維、絹繊維、木質繊維、セルロース繊維などの天然繊維;全芳香族ポリアミド(アラミド)、全芳香族ポリエステル、全芳香族ポリエステルアミド、全芳香族ポリエーテル、全芳香族ポリカーボネート、全芳香族ポリアゾメチン、ポリフェニレンスルフィド、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリ(パラ-フェニレンベンゾビスチアゾール)、ポリベンゾイミダゾール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリアリレート、フッ素系ポリマーなどの合成樹脂からなる合成繊維が挙げられる。
【0043】
繊維強化樹脂層は、炭素繊維およびガラス繊維、並びに、炭素繊維およびガラス繊維以外の繊維に加えて、必要に応じて、任意の添加剤を含んでいてもよい。
任意の添加剤としては、例えば、核剤、アンチブロッキング剤、顔料、繊維、充填剤、フィラー、染料、滑剤、可塑剤、離型剤、酸化防止剤、難燃剤、難燃助剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、界面活性剤、帯電防止剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、スリップ防止剤、発泡剤、結晶化助剤、防曇剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、衝撃改良剤、架橋剤、共架橋剤、架橋助剤、粘着剤、軟化剤、加工助剤などが挙げられる。
これら添加剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、添加剤としては難燃剤および難燃助剤が好ましい。
【0044】
難燃剤としては、特に制限はなく、例えば、ハロゲン系難燃剤(例:ハロゲン化芳香族化合物)、リン系難燃剤(例:窒素含有リン酸塩化合物、リン酸エステル)、窒素系難燃剤(例:グアニジン、トリアジン、メラミンおよびこれらの誘導体)、無機系難燃剤(例:金属水酸化物)、ホウ素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、硫黄系難燃剤、赤リン系難燃剤が挙げられる。
難燃助剤としては、例えば、各種アンチモン化合物、亜鉛を含む金属化合物、ビスマスを含む金属化合物、水酸化マグネシウム、粘土質珪酸塩が挙げられる。
【0045】
難燃剤の含有量としては、繊維強化樹脂層の全質量に対して、好ましくは5質量%~50質量%であり、より好ましくは10質量%~45質量%であり、さらに好ましくは10質量%~45質量%である。
【0046】
繊維強化樹脂層は、炭素繊維またはガラス繊維を前記繊維強化樹脂層の全質量に対して10質量%~60質量%含み、好ましくは、前記繊維強化樹脂層の全質量に対して10質量%~60質量%含み、より好ましくは前記繊維強化樹脂層の全質量に対して10質量%~60質量%含む。
【0047】
繊維強化樹脂層の密度は、好ましくは0.9~1.8g/cm3であり、より好ましくは1.0~1.7g/cm3である。
繊維強化樹脂層の密度は、後述の実施例に記載の測定方法により求められる。
【0048】
繊維強化樹脂層の厚みとしては、好ましくは500~40,000μmであり、より好ましくは1,000~30,000μmであり、さらに好ましくは1,000~20,000μmである。
【0049】
<<電磁波遮蔽フィラー>>
リチウムイオンバッテリー等から生じる電磁波ノイズの外部への漏洩を防止する観点から、繊維強化樹脂層は、電磁波遮蔽フィラーを含有することが好ましい。
電磁波遮蔽フィラーは、電磁波を遮蔽できれば特に制限はなく、公知公用の電磁波遮蔽フィラーを用いることができる。電磁波遮蔽フィラーとしては、軟磁性粉片に導電性金属が被覆されたフィラーが好ましい。
【0050】
軟磁性粉片としては、硅素鋼、センダスト合金、パーマロイ合金、Co系もしくはFe系非晶質合金粉片またはフェライト系酸化物粉片であることが好ましい。
導電性金属としては、後述する電磁波遮蔽層に含まれる導電性金属よりなるフィラーのおける導電性金属と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0051】
導電性金属の被覆方法としては、既知の方法を使用することができるが、無電解めっき法が特に好ましい。この方法によれば、粉片表面に一定量の均一な被覆を得ることができる。無電解めっきは、常法に従って行えばよく、例えば、軟磁性粉片を洗浄して表面を活性化し、錯化剤と還元剤を含む水溶液中に添加し、これに導電性金属の塩を滴下して行なう。錯化剤としては、例えば、アンモニア水、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸等の塩類が挙げられ、還元剤としては、ホルマリン、ヒドラジン及びその誘導体、酒石酸、ブドウ糖等を用いることができる。これらは、使用する導電性金属に応じて適宜選択すればよい。導電性金属の塩には、例えば、硝酸塩、硫酸塩等を用いることができる。
【0052】
導電性金属の好ましい被覆量は、軟磁性粉片の種類、粉片の大きさ、形状および導電性金属の種類などによって異なり、例えば、フェライト系酸化物は合金系粉片よりも比重が軽いので、ほぼ同じ厚さの被覆を有する同形の粉片でも、フェライト系粉片を用いた場合には合金系粉片を用いた場合よりも被覆粉片での金属質量比(%)が高くなる。例えば、平均粒径5~200μm、アスペクト比10~50の鉄系軟磁性合金粉片を用い、銀、銅、またはニッケルを被覆したとき、この被覆量は被覆粉片の単位質量あたり約5~75質量%が適当であり、10~50質量%が好ましく、さらに10~20質量%がより好ましい。
【0053】
<<繊維強化樹脂層の形成方法>>
繊維強化樹脂層の形成方法は、特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。
例えば、樹脂成分が硬化性樹脂の場合は、上記炭素繊維およびガラス繊維の少なくとも一方に樹脂成分を含浸させたプリプレグ、または上記炭素繊維およびガラス繊維の少なくとも一方に樹脂成分を部分的に含浸(半含浸)させ空隙量を制御したセミプレグを用いて熱等により硬化して、繊維強化樹脂層を形成する方法が好ましい。
【0054】
樹脂成分が熱可塑性樹脂の場合は、樹脂と上記炭素繊維およびガラス繊維の少なくとも一方とを混合し、押出成形、射出成形、真空成形、圧空成形、プレス成形等を採用することにより、繊維強化フィルム、繊維強化シート、繊維強化板等に成形し、繊維強化樹脂層とすることができる。また、上記炭素繊維およびガラス繊維の少なくとも一方と熱可塑性樹脂とからなるマスターバッチ状のペレットと、熱可塑性樹脂ペレットとを混合し、射出成形等で繊維強化樹脂層を形成することができる。あるいは、上記炭素繊維およびガラス繊維の少なくとも一方と熱可塑性樹脂とからなる混抄マットを用い、該熱可塑性樹脂の流動開始温度以上においてプレス成形等することによっても、繊維強化樹脂層を形成することができる。
【0055】
<<膨張黒鉛層>>
膨張黒鉛層は、膨張黒鉛とバインダとを含む層であることが好ましい。
膨張黒鉛は、黒鉛の結晶構造の層間が拡張された材料であり、例えば、天然黒鉛や合成黒鉛等の黒鉛に硫酸等の酸や有機化合物等をインターカレートしたものが挙げられる。膨張黒鉛は例えば、黒鉛材料を酸(硫酸、硝酸等)に浸漬させることで得ることができる。
上記黒鉛としては、鱗片状の黒鉛を用いることが好ましい。
膨張黒鉛の膨張開始温度は特に限定されないが、たとえば150℃~220℃であってもよい。
なお、「膨張開始温度」とは、膨張黒鉛の体積変化が生じる温度をいう。膨張黒鉛の膨張倍率は特に限定されないが、たとえば150%~400%であってもよい。なお、「膨張倍率」は、熱により膨張した後の膨張黒鉛の体積を、熱で膨張する前の膨張黒鉛の体積で割り、100を乗じることにより求められる。膨張前の膨張黒鉛の粒径は特に限定されないが、たとえば10μm~100μmであってもよい。
【0056】
膨張黒鉛層に含まれるバインダは特に制限はなく、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、アクリル樹脂、アラミド樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が挙げられる。
【0057】
膨張黒鉛層における膨張黒鉛の含有量は、膨張黒鉛層の全質量に対して、好ましくは50%以上であり、より好ましくは70質量%~99.5質量%であり、さらに好ましくは81質量%~99.0質量%であり、特に好ましくは85質量%~98質量%である。また、膨張黒鉛層中のバインダの含有量は、膨張黒鉛層の全質量に対して、好ましくは0.5質量%~30質量%であり、より好ましくは1質量%~19質量%であり、さらに好ましくは2質量%~15質量%である。
膨張黒鉛層は、膨張黒鉛層の全質量に対して70質量%以上の膨張黒鉛と、膨張黒鉛層の全質量に対して30質量%以下のバインダと、からなることが好ましい。
【0058】
膨張黒鉛層の厚みは、50μm~5,000μmであることが好ましく、100μm~3,000μmであることがより好ましい。
【0059】
難燃性に優れるといる観点から、前記膨張黒鉛層は、電池ケースの内側に配置されていることが好ましく、膨張黒鉛層が電池ケースの内側表面に配置されていることがより好ましい。
電池ケースは、その内部に非水電解質や電極群等を通常備えている。「電池ケースの内部」とは、電池ケースにおいて、非水電解質や電極群等が収納されている側を意味する。また、「電池ケースの内側表面」とは、当該電池ケースの内部における表面を意味する。
【0060】
<<膨張黒鉛層の作製方法>>
膨張黒鉛層の作製方法としては、特に制限はなく、従来公知の作製方法を用いることができる。例えば、膨張黒鉛層に含まれる成分を、溶融混練したのち、従来公知の成形法、例えば、射出成形法、プレス成形法等の方法により膨張黒鉛層を形成することができる。
その溶融混練方法については、特に制限はなく、ニーダー、ロールミル、バンバリーミキサー、単軸または二軸押出機等の通常使用されている公知の混合機を用いて、例えば180~250℃下で溶融混練後、造粒あるいは粉砕する方法を採用することができる。
【0061】
<<電磁波遮蔽層>>
本発明に係る電池ケースは、電磁波遮蔽層をさらに含んでいてもよい。電磁波遮蔽層は、電磁波が遮蔽される層であれば特に制限はなく、公知公用の電磁波遮蔽層を用いることができる。電磁波遮蔽層としては、例えば、バインダ樹脂と、上記電磁波遮蔽フィラーと、を含む層であることが好ましい。
上記電磁波遮蔽フィラーは、上記繊維強化樹脂層に含まれる電磁波遮蔽フィラーと同義であり、好ましい態様も同様である。
電磁波遮蔽層は、導電性金属を含むコート剤を用いて形成してもよいし、または、導電性金属箔を電磁波遮蔽層として用いてもよい。
電磁波遮蔽層に含まれるバインダ樹脂としては、特に制限はなく、繊維強化樹脂層に含まれる樹脂が挙げられ、好ましい態様も同様である。
【0062】
上記電磁波遮蔽フィラーを構成する導電性金属は、例えば、銅、銀、鉄、ニッケル、金、パラジウム、クロムまたはこれらの合金が挙げられる。これらの中でも、導電性金属は、銀、ニッケル、銅及びステンレスから選ばれた少なくとも一つの金属からなることが好ましく、銅及びステンレスから選ばれた少なくとも一つの金属からなることがより好ましい。
上記電磁波遮蔽フィラーの形状としては、繊維状であることが好ましい。
上記電磁波遮蔽フィラーの径は、好ましくは1μm~20μmであり、4μm~8μmであるのが好ましい。
上記電磁波遮蔽フィラーの長さは、好ましくは0.5mm~5.0mmであり、より好ましくは1mm~2mmである。
上記電磁波遮蔽フィラーの含有量は、電磁波遮蔽層の全固形分量に対して、好ましくは0.1質量%以上30.0質量%未満であり、より好ましくは0.1質量%~10.0質量%であり、さらに好ましくは0.3質量%~5.0質量%である。
【0063】
電磁波遮蔽層の厚みとしては、好ましくは50~5,000μmであり、より好ましくは50~3,000μmであり、さらに好ましくは100~2,000μmである。
【0064】
電池ケースにおいて、上記膨張黒鉛層と上記繊維強化樹脂層とが接して積層されていてもよいし、膨張黒鉛層と上記繊維強化樹脂層との間に、上記電磁波遮蔽層が積層されていてもよい。
リチウムイオンバッテリー等から生じる電磁波ノイズの外部への漏洩を防止する観点から上記電磁波遮蔽層は、膨張黒鉛層と上記繊維強化樹脂層との間に積層されていることが好ましく、電磁波遮蔽層は、膨張黒鉛層と上記繊維強化樹脂層との間に積層され、かつ、膨張黒鉛層と上記繊維強化樹脂層とが接して積層されていることがより好ましい。
電池ケースは、膨張黒鉛層とは反対側の面(すなわち、上記繊維強化樹脂層の上)に電磁波遮蔽層以外の他の層を更に備えていてもよい。
他の層としては、例えば、保護層等が挙げられる。保護層としては、例えば、上記熱可塑性樹脂からなる層が挙げられる。
【0065】
<<非水電解質二次電池用電池ケース>>
本発明に係る電池ケースは、非水電解質二次電池用電池が収納されるものであれば、特に限定はされず、例えば、リチウムイオンバッテリーを収納するケースとして成形したものが挙げられる。本発明に係る電池ケースを電気自動車用のバッテリーパックに適用した場合、金属製のケースなどよりも軽量であるので、電気自動車の走行距離を延ばすことができる。
【0066】
電池ケースの形状は、二次電池を収容可能であれば特に制限はなく、たとえば角形(扁平直方体)であってもよいし、円筒形であってもよいし、袋状であってもよい。
電池ケースは、外部端子、注液孔、ガス排出弁、電流遮断機構(CID)等を備えていてもよい。
【0067】
<<ケースの作製方法>>
電池ケースの形成方法としては、特に制限はなく、公知の成形方法を適用することができる。例えば、ブロー成形法、射出成形法、プレス成形法、押出成形法、押出ブロー成形法、射出ブロー成形法、真空成形法等により成形して得ることができる。上記成形法の中でも、電池ケースは、射出成形法により成形されることが好ましい。
【0068】
<非水電解質二次電池>
本発明に係る非水電解質二次電池用電池(以下、「非水電解質二次電池」とも称する場合がある。)は、上記非水電解質二次電池用電池ケースを備える。
非水電解質二次電池は、上記の電池ケースを備える限り、従来公知の非水電解質二次電池用電池の構成を備えることができる。従来公知の非水電解質二次電池用電池の構成は、たとえば正極と、負極と、正極と負極との間に配置されたセパレータとを有する電極体を備え、この電極体が非水電解質とともに電池ケースに配置される構成が挙げられる。
非水電解質二次電池としては、非水電解質を含むリチウムイオン二次電池が好適に挙げられる。
【0069】
<<正極>>
正極は、正極集電体と、正極集電体の主面上に形成された正極合材層とを含むことが好ましい。正極集電体は、たとえばアルミニウム(Al)箔等であってもよい。Al箔は、純Al箔であってもよいし、Al合金箔であってもよい。正極集電体は、たとえば10~30μmの厚さを有してもよい。
【0070】
<<正極合材層>>
正極合材層は、正極活物質、導電材およびバインダを含むことが好ましい。正極合材層は、たとえば80~98質量%の正極活物質、1~15質量%以下の導電材および1~5質量%以下のバインダを含んでもよい。正極合材層は、たとえば100~200μmの厚さを有してもよい。
【0071】
<<正極活物質、導電材およびバインダ>>
正極活物質、導電材およびバインダは特に限定されない。
正極活物質は、たとえばLiCoO2、LiNiO2、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2(NCM: nickel cobalt manganese oxide)、LiMnO2、LiMn2O4、LiFePO4等であってもよい。
導電材は、たとえばアセチレンブラック(AB)、ファーネスブラック、気相成長炭素繊維(VGCF)、黒鉛等であってもよい。
バインダは、たとえばPVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等であってもよい。
【0072】
<<負極>>
負極は、負極集電体と、負極集電体の主面上に形成された負極合材層とを含むことが好ましい。負極集電体は、たとえば銅(Cu)箔等であってもよい。負極集電体は、たとえば5~20μm程度の厚さを有してもよい。
【0073】
<<負極合材層>>
負極合材層は、負極活物質およびバインダを含むことが好ましい。負極合材層は、たとえば95~99質量%の負極活物質、および1~5質量%のバインダを含んでもよい。負極合材層は、たとえば50~150μm程度の厚さを有してもよい。
【0074】
<<負極活物質およびバインダ>>
負極活物質およびバインダは特に限定されない。負極活物質は、たとえば黒鉛、易黒鉛化性炭素、難黒鉛化性炭素、珪素、酸化珪素、錫、酸化錫等であってもよい。また、これらに非晶質炭素による被覆処理を行ってもよい。バインダは、たとえばカルボキシメチルセルロース(CMC)、スチレンブタジエンゴム(SBR)等であってもよい。
【0075】
<<非水電解質>>
非水電解質は、リチウム塩、添加剤および溶媒を含む。リチウム塩は、たとえばLiPF6、LiFSI等であってもよい。添加剤は、たとえばLi[B(C2O4)]、LiPO2F2、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、エチレンサルファイト(ES)、プロパンサルトン(PS)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、LiBF2(C2O4)、LiPF2(C2O4)2等であってもよい。溶媒は、たとえば環状カーボネートと鎖状カーボネートとの混合物でよい。
環状カーボネートと鎖状カーボネートとの混合比は、体積比で、たとえば環状カーボネート:鎖状カーボネート=1:9~5:5でよい。環状カーボネートとしては、たとえば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)等であってもよい。鎖状カーボネートは、たとえば、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)等であってもよい。
【0076】
<<セパレータ>>
セパレータには、たとえばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等の微多孔膜が好適に挙げられる。セパレータは、PEの単層構造であってもよいし、PP膜、PE膜、およびPP膜がこの順序で積層される3層構造を有してもよい。セパレータの厚さは、たとえば9~30μm程度であってもよい。セパレータが上述の3層構造を有する場合、PE層の厚さは、たとえば3~10μm程度であってもよく、PP層の厚さは、たとえば3~10μm程度であってもよい。セパレータの孔径および空孔率は、透気度が所望の値となるように適宜調整すればよい。
またセパレータは、複数の微多孔膜が積層されたものであってもよいし、その表面に無機フィラーおよびバインダを含む耐熱層が形成されたものであってもよい。耐熱層に含まれる無機フィラーは、たとえばアルミナ、ベーマイト、チタニア、ジルコニア、マグネシア等であってもよい。耐熱層に含まれるバインダは、たとえばPVdF、アラミド、SBR、PTFE等であってもよい。耐熱層に含まれるバインダの量は、2~30質量%であってもよく、耐熱層の厚さは、たとえば3~10μm程度であってもよい。
【実施例0077】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
各種物性の測定方法は、以下のとおりである。
【0078】
<<密度>>
樹脂の密度はJIS K 7112(水中置換法)に準拠して求めた。金属の密度の値は一般値を記載した。
【0079】
<<製造例1~6>>
表1に記載の原料配合比率にて、熱可塑性樹脂と添加剤マスターバッチと繊維マスターバッチとをドライブレンドし、株式会社日本製鋼所(JSW)製の180t射出成型機内で溶融混練して繊維強化樹脂層用組成物を調製し、平板試験片(厚さ2mm、150mm角)を成形した。
成形条件はバレル温度220~250℃、射出速度10~100mm/s、背圧2~5MPa、型温60~100℃の範囲で成形を行った。
【0080】
<<製造例7および8>>
平板試験片として厚さ2mm、150mm角の鉄板またはアルミニウム板を用意した。
【0081】
【0082】
表1中、「PP」はポリプロピレン樹脂を表し、CFは炭素繊維を表し、GFはガラス繊維を表す。表1中、原料として用いた熱可塑性樹脂「PP」は、プロピレン単独重合体:(MFR30g/10分 :ASTM D1238に準拠、230℃、2.16kg)である。
【0083】
・添加剤マスターバッチ:銘柄名 MB32B (メーカー:JLS社)、リン系難燃剤(Melamine polyphosphate:濃度39質量%、Polyphosphoric acid salt, compound:濃度36質量%):75質量%、PP:25質量%
・繊維マスターバッチ:下記表2に示す組成(質量%)
【0084】
【0085】
〔GF:ガラス繊維〕
セントラルグラスファイバー社製の下記ガラスロービングを用いた。
型番:ERS1150-820;繊維径=16μm、目付け=1150g/1000m
〔CF:炭素繊維(CF)〕
東レ株式会社製、型番:T700を用いた。
〔PP:ポリプロピレン樹脂(PP)〕
プロピレン単独重合体(MFR220g/10分:ASTM D1238に準拠、230℃、2.16kg)
〔酸変性PP:酸変性ポリプロピレン〕
ポリプロピレン(プライムポリマー社製、プロピレン単独重合体(MFR(230℃、
2.16kg)=15g/10分)100質量部に対して、ジアルキルパーオキサイド(
日油株式会社製、パーヘキサ(登録商標)25B)1質量部、粉末化した無水マレイン酸(日油株式会社製、CRYSTAL MAN(登録商標))3質量部を予備混合した。この混合物を190℃に温度調節した30mmφの二軸押出機に供給して、200rpmにて溶融混練して得たストランドを水槽で冷却して無水マレイン酸変性ポリプロピレンを得た。未変性の残留無水マレイン酸を除去するために、この無水マレイン酸変性ポリプロピレンを40℃で2時間真空乾燥した。得られた無水マレイン酸変性ポリプロピレンのマレイン酸含量は2.5質量%、MFR(230℃、2.16Kg)は800g/10分であった。
〔PA12:ポリアミド樹脂〕
宇部興産株式会社製、型番:3012Uを使用した。
【0086】
<<繊維マスターバッチの調製方法>>
ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリアミド12(PA12)および酸変性ポリプロピレン(酸変性PP)を表2の割合で混合した樹脂混合物を押出機で溶融物とした。続けてこの溶融物を、含浸ダイへ挿入された繊維(GFまたはCF)に含浸して樹脂含浸繊維を作製した。続けてその樹脂含浸繊維を冷却しペレタイザーにより切断し、マスターバッチを作製した。
【0087】
(実施例1~6ならびに比較例7および8)
「繊維強化樹脂層」として、上記製造例1~6で作製した平板試験片または金属板を厚さ2mm、大きさ150mm角に切り出した。また、「膨張黒鉛層」を設ける場合は、後述するフィブロック(製品名、厚さ2mm)を150mm角の大きさにハサミで切り出し、「繊維強化樹脂層」と「膨張黒鉛層」とを貼り合わせ、評価用試験片(厚さ4mm、150mm×150mm)を作製した。なお、フィブロック(製品名)には自己粘着性があるため、貼り付けが可能である。
【0088】
(比較例1~6)
「繊維強化樹脂層」として、上記製造例1~6で作製した平板試験片を厚さ2mm、大きさ150mm角に切り出し、評価用試験片とした。
【0089】
<<評価>>
上記で作製した評価用試験片を用いて、下記の評価をそれぞれ行った。結果を表3に示す。
【0090】
〔難燃性:UL94 5V試験〕
上記の平板試験片を用いてUL94 5V規格を準拠した燃焼試験を行った。評価用試験片の膨張黒鉛層の中央部を接炎させ、穴が開かないかを確認した。
膨張黒鉛層がない比較例1~6の場合には、評価用試験片(繊維強化樹脂層)の中央部を接炎させ、穴が開かないかを確認した。穴が開かない場合を合格(OK)とし、穴が開いた場合を不合格(NG)とした。
【0091】
〔難燃性:バーナー試験〕
上記試験よりも厳しい難燃性の評価方法であるバーナー試験をさらに行った。膨張黒鉛層または繊維強化樹脂層に対してバーナー炎を接炎し、接炎開始から5分経過後の膨張黒鉛層および/または繊維強化樹脂層を観察し、以下の基準に従って難燃性を評価した。
接炎開始から5分経過後、膨張黒鉛層もしくは繊維強化樹脂層が燃焼及び穴が開いた場合、または、膨張黒鉛層および繊維強化樹脂層に穴が開いていないが繊維強化樹脂層に変形が確認され、かつ、繊維強化樹脂層の変形方向に対する変形量が2mm以上と大きく変形した場合は不合格(NG)とし、膨張黒鉛層および繊維強化樹脂層に変形が無いか、または繊維強化樹脂層に変形があった場合、繊維強化樹脂層の変形方向に対する変形量が2mm未満と小さい場合には合格(OK)とした。
【0092】
〔軽量化〕
繊維強化樹脂層の密度を上記の方法で測定し、その結果を表2に示した。
【0093】
【0094】
表3中に記載の成分は以下のとおりである。
・フィブロック:積水化学工業株式会社製 膨張黒鉛含有ブチルゴムシート 厚さ2mm
【0095】
表3に示されるとおり、実施例1~6の本発明に係る非水電解質二次電池用電池ケースは、比較例1~8の非水電解質二次電池用電池ケースに比べて、軽量かつ難燃性に優れることがわかる。炭素繊維を含む実施例1では、厳しい難燃性の評価であるバーナー試験においても難燃性を示されていた。ガラス繊維を含む実施例3~6においては、難燃剤を併用することで、厳しい難燃性の評価であるバーナー試験においても難燃性を示すことが可能であることがわかる。