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特開2023-167996手術支援システムおよび手術支援システムの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167996
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】手術支援システムおよび手術支援システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/35 20160101AFI20231116BHJP
   A61B 34/20 20160101ALI20231116BHJP
【FI】
A61B34/35
A61B34/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079586
(22)【出願日】2022-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】514063179
【氏名又は名称】株式会社メディカロイド
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【弁理士】
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】小林 礼貴
(72)【発明者】
【氏名】栗原 剛史
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 裕介
(72)【発明者】
【氏名】兒玉 和樹
(57)【要約】
【課題】ロボットアームに対する操作を行っている際に偏差異常のエラーが発生した場合でも、迅速にエラーをリセットすることが可能な手術支援システムを提供する。
【解決手段】手術支援システム100は、遠隔操作装置2が受け付けた操作に基づいてサーボモータM1、M2およびM3の位置を指令する指令値を生成し、指令値に基づいてサーボモータM1、M2およびM3を駆動する制御装置130を備える。制御装置130は、指令値とエンコーダE1、E2およびE3の各々により検出されたサーボモータM1、M2およびM3の位置との差が許容範囲を超えた場合に偏差異常のエラーを検出する。偏差異常のエラーが発生した場合に、偏差異常のエラーをリセットするイネーブルスイッチ81がロボットアーム60に配置される。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に手術器具が取り付けられ、駆動部および前記駆動部の位置を検出するセンサを含むロボットアームと、
前記手術器具に対する操作を受け付ける操作装置と、
前記操作装置が受け付けた前記操作に基づいて前記駆動部の位置を指令する指令値を生成し、前記指令値に基づいて前記駆動部を駆動する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記指令値と前記センサにより検出された前記駆動部の位置との差が許容範囲を超えた場合に偏差異常のエラーを検出し、
前記偏差異常のエラーが発生した場合に、前記偏差異常のエラーをリセットするリセット部が前記ロボットアームに配置される、手術支援システム。
【請求項2】
前記ロボットアームは、前記ロボットアームを移動させるアーム操作具を含むアーム操作部を備え、
前記リセット部は、前記アーム操作部に配置されている、請求項1に記載の手術支援システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記偏差異常のエラーを検出した場合、前記アーム操作部の入力のみ受け付ける、請求項2に記載の手術支援システム。
【請求項4】
前記アーム操作部は、押下されることにより前記アーム操作具による前記ロボットアームの移動を許可するイネーブルスイッチをさらに含み、
前記イネーブルスイッチは、前記リセット部を兼ねている、請求項2に記載の手術支援システム。
【請求項5】
前記ロボットアームを移動する台車をさらに備え、
前記リセット部は、前記操作装置と前記台車とのうちの少なくとも一方にも配置されている、請求項1に記載の手術支援システム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記リセット部による前記偏差異常のエラーのリセットが実行された場合、前記操作装置の所定の操作に基づいて前記ロボットアームが移動されるフォローイング動作モードに移行する、請求項1に記載の手術支援システム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記フォローイング動作モードへの移行が可能となるフォローイング可能条件が満たされている場合、前記リセット部による前記偏差異常のエラーのリセットの受け付けを停止する、請求項6に記載の手術支援システム。
【請求項8】
前記制御装置は、前記偏差異常のエラーを検出した場合、前記偏差異常のエラーが発生してから所定の期間、前記リセット部による前記偏差異常のエラーのリセットを受け付ける、請求項1に記載の手術支援システム。
【請求項9】
前記偏差異常のエラーを報知する報知部をさらに備え、
前記制御装置は、前記偏差異常のエラーを検出した場合、前記偏差異常のエラーを報知するように前記報知部を制御する、請求項1に記載の手術支援システム。
【請求項10】
表示装置をさらに備え、
前記ロボットアームは、前記ロボットアームを移動させるアーム操作具を含むアーム操作部を含み、
前記制御装置は、前記偏差異常のエラーを検出した場合、前記アーム操作部による前記ロボットアームの移動を促すことと、前記リセット部の操作を促すこととのうちの少なくとも一方を、前記表示装置に表示させる、請求項1に記載の手術支援システム。
【請求項11】
前記操作装置は、内視鏡により撮影された画像を表示する第1表示装置を含み、
前記第1表示装置とは異なる第2表示装置、をさらに備え、
前記ロボットアームは、前記ロボットアームを移動させるアーム操作具を含むアーム操作部を含み、
前記制御装置は、前記偏差異常のエラーを検出した場合、前記アーム操作部による前記ロボットアームの移動を促すことと、前記リセット部の操作を促すこととのうちの少なくとも一方を、前記第1表示装置と前記第2表示装置とのうちの少なくとも一方に表示させる、請求項1に記載の手術支援システム。
【請求項12】
前記手術器具は、先端に鉗子が配置されているインストゥルメントを含み、
前記制御装置は、前記操作装置の操作により前記ロボットアームが移動されるフォローイング動作モードへの移行のために必要となるフォローイング必要条件が満たされている場合に、前記操作装置による前記鉗子の開閉の動作のみを受け付ける、請求項1に記載の手術支援システム。
【請求項13】
前記ロボットアームは、前記ロボットアームを移動させるアーム操作具を含むアーム操作部を含み、
前記アーム操作部は、押下されることにより前記アーム操作具による前記ロボットアームの移動を許可するイネーブルスイッチと、前記イネーブルスイッチとは異なる第2スイッチとを含み、
前記アーム操作具は、傾けられた方向に前記ロボットアームを移動させるジョイスティックであり、
前記制御装置は、前記ジョイスティックが傾いたままでエラーが検出された場合、前記第2スイッチが操作されることにより、前記ジョイスティックが傾いている方向に前記ロボットアームを自動で移動させる、請求項1に記載の手術支援システム。
【請求項14】
前記制御装置は、前記ジョイスティックの傾きが解消された場合、前記ロボットアームの移動を自動で停止する、請求項13に記載の手術支援システム。
【請求項15】
前記ロボットアームは、前記手術器具が取り付けられた手術器具取付部を第1の位置と第2の位置の間で並進させる並進移動機構部と、
前記ロボットアームに取り付けられ、前記ロボットアームを操作するアーム操作部と、
をさらに備え、
前記アーム操作部は、第3スイッチを含み、
前記制御装置は、
前記手術器具取付部から前記手術器具が取り外された際に、前記並進移動機構部により前記手術器具取付部を前記第1の位置に移動させ、
前記手術器具取付部が前記第1の位置に移動している最中に前記手術器具取付部の移動を阻害するエラーが発生した場合において、前記第3スイッチが操作された際、前記手術器具取付部の前記第1の位置への移動を停止させ、前記アーム操作部による前記ロボットアームの操作を受け付ける、請求項1に記載の手術支援システム。
【請求項16】
先端に手術器具が取り付けられ、駆動部および前記駆動部の位置を検出するセンサを含むロボットアームと、
前記手術器具に対する操作を受け付ける操作装置と、
前記操作装置が受け付けた前記操作に基づいて前記駆動部の位置を指令する指令値を生成し、前記指令値に基づいて前記駆動部を駆動する制御装置と、を備える、手術支援システムの制御方法であって、
前記制御装置により、前記指令値と前記センサにより検出された前記駆動部の位置との差が許容範囲を超えた場合に偏差異常のエラーを検出することと、
前記偏差異常のエラーが発生した場合に、前記ロボットアームに配置されたリセット部による前記偏差異常のエラーのリセットを受け付けることと、を備える、手術支援システムの制御方法。
【請求項17】
先端に手術器具が取り付けられ、駆動部および前記駆動部の位置を検出するセンサを含むロボットアームと、
前記ロボットアームに取り付けられ、前記ロボットアームを操作するアーム操作部と、
前記アーム操作部が受け付けた前記操作に基づいて前記駆動部の位置を指令する指令値を生成し、前記指令値に基づいて前記駆動部を駆動する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記指令値と前記センサにより検出された前記駆動部の位置との差が許容範囲を超えた場合に偏差異常のエラーを検出し、
前記偏差異常のエラーが発生した場合に、前記偏差異常のエラーをリセットするリセット部が前記ロボットアームに配置される、手術支援システム。




【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、手術支援システムおよび手術支援システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されている手術支援システムが知られている。特許文献1の手術支援システムは、マスタ制御装置と、スレーブロボットマニピュレータとを備えている。マスタ制御装置は、表示部と、操作部とを含む。スレーブロボットマニピュレータには、手術器具が取り付けられている。マスタ制御装置の表示部には、内視鏡によって撮影された手術部位の画像が表示される。操作者が表示部に表示される手術部位の画像を視認しながらマスタ制御装置の操作部を操作することにより、スレーブロボットマニピュレータに取り付けられた手術器具が移動される。また、マスタ制御装置には、タッチスクリーンが配置されている。タッチスクリーンには、手術支援システムのエラーを解決するための方法が表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2016/201325号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、操作者が操作するマスタ制御装置の近傍に手術支援システムのエラーを解除するためのリセットボタンが配置される。操作者がマスタ制御装置に配置されたリセットボタンを押下することにより、手術支援システムのエラーが解除される。また、操作者は、スレーブロボットマニピュレータのマニピュレータアームの姿勢の調整など、マニピュレータアームに対する操作をマニピュレータアームの近傍で行う場合がある。操作者は、マスタ制御装置を操作して、マニピュレータアームに取り付けられた手術器具に対する操作を行う。しかしながら、マニピュレータアームが他の物体と衝突することなどに起因して、マニピュレータアームの駆動部に対する指令値と現在のマニピュレータアームの位置との差が許容範囲を超える偏差異常のエラーが発生する場合がある。この場合、操作者はマスタ制御装置からマニピュレータアームの近傍まで移動してマニピュレータアームの姿勢を調整してから、リセットボタンを押下する必要がある。このため、偏差異常のエラーが発生しても迅速にリセットボタンを押下することができないという問題点がある。
【0005】
本開示は、上述の課題を解決するためになされたものであり、ロボットアームに対する操作を行っている際に偏差異常のエラーが発生した場合でも、迅速にエラーをリセットすることが可能な手術支援システムおよび手術支援システムの制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の局面による手術支援システムは、先端に手術器具が取り付けられ、駆動部および駆動部の位置を検出するセンサを含むロボットアームと、手術器具に対する操作を受け付ける操作装置と、操作装置が受け付けた操作に基づいて駆動部の位置を指令する指令値を生成し、指令値に基づいて駆動部を駆動する制御装置と、を備え、制御装置は、指令値とセンサにより検出された駆動部の位置との差が許容範囲を超えた場合に偏差異常のエラーを検出し、偏差異常のエラーが発生した場合に、偏差異常のエラーをリセットするリセット部がロボットアームに配置される。
【0007】
本開示の第1の局面による手術支援システムは、上記のように、偏差異常のエラーが発生した場合に、偏差異常のエラーをリセットするリセット部がロボットアームに配置される。これにより、リセット部がロボットアームに配置されているので、ロボットアームに対する操作を行っている際に偏差異常のエラーが発生した場合でも、ロボットアームに対する操作を行っている操作者は、迅速にリセット部を操作することができる。その結果、ロボットアームに対する操作を行っている際に偏差異常のエラーが発生した場合でも、迅速にエラーをリセットすることができる。
【0008】
本開示の第2の局面による手術支援システムの制御方法は、先端に手術器具が取り付けられ、駆動部および駆動部の位置を検出するセンサを含むロボットアームと、手術器具に対する操作を受け付ける操作装置と、操作装置が受け付けた操作に基づいて駆動部の位置を指令する指令値を生成し、指令値に基づいて駆動部を駆動する制御装置と、を備える、手術支援システムの制御方法であって、制御装置により、指令値とセンサにより検出された駆動部の位置との差が許容範囲を超えた場合に偏差異常のエラーを検出することと、偏差異常のエラーが発生した場合に、ロボットアームに配置されたリセット部による偏差異常のエラーのリセットを受け付けることと、を備える。
【0009】
本開示の第2の局面による手術支援システムの制御方法は、上記のように、偏差異常のエラーが発生した場合に、ロボットアームに配置されたリセット部による偏差異常のエラーのリセットを受け付けることを備える。これにより、リセット部がロボットアームに配置されているので、ロボットアームに対する操作を行っている際に偏差異常のエラーが発生した場合でも、ロボットアームに対する操作を行っている操作者は、迅速にリセット部を操作することができる。その結果、ロボットアームに対する操作を行っている際に偏差異常のエラーが発生した場合でも、迅速にエラーをリセットすることが可能な手術支援システムの制御方法を提供できる。
【0010】
本開示の第3の局面による手術支援システムは、先端に手術器具が取り付けられ、駆動部および駆動部の位置を検出するセンサを含むロボットアームと、ロボットアームに取り付けられ、ロボットアームを操作するアーム操作部と、アーム操作部が受け付けた操作に基づいて駆動部の位置を指令する指令値を生成し、指令値に基づいて駆動部を駆動する制御装置と、を備え、制御装置は、指令値とセンサにより検出された駆動部の位置との差が許容範囲を超えた場合に偏差異常のエラーを検出し、偏差異常のエラーが発生した場合に、偏差異常のエラーをリセットするリセット部がロボットアームに配置される。
【0011】
本開示の第3の局面による手術支援システムは、上記のように、偏差異常のエラーが発生した場合に、偏差異常のエラーをリセットするリセット部がロボットアームに配置される。これにより、リセット部がロボットアームに配置されているので、ロボットアームに対する操作を行っている際に偏差異常のエラーが発生した場合でも、ロボットアームに対する操作を行っている操作者は、迅速にリセット部を操作することができる。その結果、ロボットアームに対する操作を行っている際に偏差異常のエラーが発生した場合でも、迅速にエラーをリセットすることが可能な手術支援システムを提供できる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、ロボットアームに対する操作を行っている際に偏差異常のエラーが発生した場合でも、迅速にエラーをリセットすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態による手術支援システムの構成を示す図である。
図2】一実施形態による医療用台車の表示部を示す図である。
図3】一実施形態による医療用台車の構成を示す図である。
図4】一実施形態によるロボットアームの構成を示す図である。
図5】鉗子を示す図である。
図6】一実施形態によるアーム操作部の構成を示す斜視図である。
図7】ロボットアームの並進移動を説明するための図である。
図8】ロボットアームの回転移動を説明するための図である。
図9】一実施形態によるフットペダルの構成を示す図である。
図10】一実施形態による手術支援ロボットの制御ブロック図である。
図11】一実施形態によるロボットアームの制御ブロック図である。
図12】一実施形態による医療用台車およびポジショナの制御ブロック図である。
図13】偏差異常のエラーを検出した場合に表示されるメッセージを示す図である。
図14】偏差異常のエラーからの復旧方法を促すメッセージを示す図である。
図15】偏差異常以外の所定のエラーが発生した場合に表示されるエラーコードを示す図である。
図16】フォローイング可能条件のうちのいずれかが満たされない場合に表示されるメッセージを示す図である。
図17】ジョイスティックが傾いたままの状態を示す図である。
図18】ジョイスティックが傾いたままでエラーが検出された場合に表示されるメッセージを示す図である。
図19】一実施形態による手術支援システムの制御方法を説明するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(手術支援システムの構成)
本実施形態による手術支援システム100の構成について説明する。手術支援システム100は、手術支援ロボット1と、遠隔操作装置2と、画像処理ユニット8と、を備えている。遠隔操作装置2は、操作装置の一例である。
【0015】
なお、本願明細書において、手術器具4の長手方向をZ方向とする。手術器具4の先端側をZ1側とし、手術器具4の基端側をZ2側とする。Z方向に直交する方向をX方向とする。X方向の一方側をX1側とし、他方側をX2側とする。Z方向およびX方向に直交する方向をY方向とする。Y方向の一方側をY1側とし、他方側をY2側とする。
【0016】
また、本願明細書において、入力装置33の表示部33aを操作する操作者から見た左右方向をXa方向とする。右方向を、Xa1方向とし、左方向を、Xa2方向とする。入力装置33の表示部33aを操作する操作者から見た前後方向をYa方向とする。前方向をYa1方向とし、後方向をYa2方向とする。手術支援ロボット1が配置される床面に対して垂直な方向をZa方向とする。上方向をZa1方向とし、下方向をZa2方向とする。
【0017】
図1に示すように、手術支援ロボット1は、手術室内に配置されている。遠隔操作装置2は、手術支援ロボット1から離間した位置に配置されている。遠隔操作装置2は、手術器具4に対する操作を受け付ける。具体的には、医師などの操作者は、手術支援ロボット1に所望の動作を行わせるための指令を遠隔操作装置2に入力する。遠隔操作装置2は、入力された指令を手術支援ロボット1に送信する。手術支援ロボット1は、受信した指令に基づいて動作する。手術支援ロボット1は、滅菌された滅菌野である手術室内に配置されている。
【0018】
(手術支援ロボットの構成)
図1に示すように、手術支援ロボット1は、医療用台車3と、ポジショナ40と、アームベース50と、複数のロボットアーム60と、アーム操作部80と、を備えている。医療用台車3は、台車の一例である。
【0019】
図3に示すように、台車ポジショナ操作部35が、医療用台車3の後方に台車ポジショナ操作支持部36により支持されており、台車ポジショナ操作部35が操作されることで、医療用台車3またはポジショナ40が移動される。台車ポジショナ操作部35は、入力装置33と、操作ハンドル34を含む。入力装置33は、主に施術前に手術の準備を行うために、ポジショナ40、アームベース50、および、複数のロボットアーム60の移動や姿勢の変更の操作を受け付ける。医療用台車3は、操作ハンドル34、図10に示されるスタビライザ34cおよび電動シリンダ34dを含む。
【0020】
図2に示すように、医療用台車3の入力装置33は、表示部33aと、ジョイスティック33bと、イネーブルスイッチ33cと、エラーリセットボタン33dと、スピーカ33eと、を含む。表示部33aは、たとえば、液晶パネルである。表示部33aには、複数のロボットアーム60に対応する番号が表示されている。また、表示部33aには、複数のロボットアーム60の各々に取り付けられている手術器具4の種類が表示される。表示部33aには、後述するピボット位置PPが教示されたことを示すチェックマークCMが表示される。
【0021】
図3に示すように、ジョイスティック33bは、医療用台車3の入力装置33の近傍に配置されている。入力装置33に表示される動作モードを選択し、ジョイスティック33bを操作することによりポジショナ40が3次元的に移動される。
【0022】
イネーブルスイッチ33cは、医療用台車3のジョイスティック33bの近傍に配置されている。イネーブルスイッチ33cは、ポジショナ40の移動を許可または不許可とする。そして、イネーブルスイッチ33cが押下されポジショナ40の移動が許可された状態でジョイスティック33bが操作されることにより、ポジショナ40が移動される。
【0023】
エラーリセットボタン33dは、手術支援システム100のエラーを解除する。エラーは、たとえば、後述する偏差異常のエラーである。スピーカ33eは、一対配置されている。一対のスピーカ33eは、医療用台車3のうちのポジショナ40が配置される場所の近傍に配置されている。
【0024】
また、操作ハンドル34は、医療用台車3の表示部33aの近傍に配置されている。そして、操作ハンドル34は、看護師、技師などの操作者が把持するとともに回動されることにより医療用台車3の移動を操作するスロットル34aを有する。具体的には、操作ハンドル34は、入力装置33の下方に配置されている。そして、スロットル34aが、手前側から奥側に回動されることにより、医療用台車3が前進する。また、スロットル34aが、奥側から手前側に回動されることにより、医療用台車3が後進する。また、スロットル34aの回動量に応じて医療用台車3の速度が変更される。また、操作ハンドル34は、R方向で示される左右に回動可能に構成されており、操作ハンドル34の回動とともに医療用台車3が回動する。
【0025】
また、医療用台車3の操作ハンドル34に、医療用台車3の移動を許可または不許可とするイネーブルスイッチ34bが配置されている。そして、イネーブルスイッチ34bが押下され医療用台車3の移動が許可された状態で操作ハンドル34のスロットル34aが操作されることにより、医療用台車3が移動される。
【0026】
図1に示すように、ポジショナ40は、たとえば、7軸多関節ロボットからなる。ポジショナ40は、医療用台車3上に配置されている。ポジショナ40は、アームベース50の位置を調整する。ポジショナ40は、アームベース50の位置を3次元に移動させる。
【0027】
ポジショナ40は、ベース部41と、ベース部41に連結された複数のリンク部42とを含む。複数のリンク部42同士は、関節43により連結されている。
【0028】
アームベース50は、ポジショナ40の先端に取り付けられている。複数のロボットアーム60は、各々のロボットアーム60の基端が、アームベース50に取り付けられている。複数のロボットアーム60は、折り畳まれた収納姿勢をとることが可能である。アームベース50と、複数のロボットアーム60とは、滅菌ドレープにより覆われて使用される。また、ロボットアーム60は、手術器具4を支持する。
【0029】
アームベース50には、図10に示される、ステータスインジケータ53およびアームステータスインジケータ54が配置されている。ステータスインジケータ53は、手術支援システム100の状態を表示する。アームステータスインジケータ54は、ロボットアーム60の状態を表示する。
【0030】
ロボットアーム60は、複数配置されている。具体的には、4つのロボットアーム60a、60b、60cおよび60dが配置されている。ロボットアーム60a、60b、60cおよび60dは、互いに同様の構成を有する。
【0031】
図4に示すように、ロボットアーム60は、アーム部61と、第1リンク部72と、第2リンク部73と、並進移動機構部70とを含む。ロボットアーム60は、回転軸線としてのJT1、JT2、JT3、JT4、JT5、JT6およびJT7軸線と、直動軸線としてのJT8軸線とを有する。JT1からJT7までの軸線は、アーム部61の関節64の回転軸線である。また、JT7軸線は、第1リンク部72の回転軸線である。JT8軸線は、並進移動機構部70が、第2リンク部73を第1リンク部72に対してZ方向に沿って相対的に移動させる直動軸線である。アーム部61は、ベース部62、リンク部63、および関節64を含む。
【0032】
アーム部61は、7軸多関節ロボットアームからなる。第1リンク部72は、アーム部61の先端に配置されている。第2リンク部73には、後述するアーム操作部80が取り付けられる。並進移動機構部70は、第1リンク部72と第2リンク部73との間に配置されている。第2リンク部73には、手術器具4を保持するホルダ71が配置されている。並進移動機構部70は、手術器具4が取り付けられたホルダ71を第1の位置と第2の位置の間で並進させる。第1の位置とは、JT8軸線に沿った並進移動機構部70によるホルダ71の移動範囲のうちのZ2方向側の端部の位置である。第2の位置とは、JT8軸線に沿った並進移動機構部70によるホルダ71の移動範囲のうちのZ1方向側の端部の位置である。ホルダ71は、手術器具取付部の一例である。
【0033】
複数のロボットアーム60の各々の先端には、手術器具4が取り付けられている。手術器具4は、たとえば、取り換え可能なインストゥルメント、手術部位の画像を取り込むための内視鏡6および後述するピボット位置PPを教示するためのピボット位置教示器具などを含む。インストゥルメントとしての手術器具4は、被駆動ユニット4aと鉗子4bとシャフト4cとを含む。
【0034】
図1に示すように、複数のロボットアーム60のうちの一つの、たとえば、ロボットアーム60cの先端には内視鏡6が取り付けられ、残りの、たとえば、ロボットアーム60a、60bおよび60dの先端には、内視鏡6以外の手術器具4が取り付けられる。内視鏡6は、互いに隣り合うように配置されている4つのロボットアーム60のうちの、中央に配置される2つのロボットアーム60bおよび60cのうちのいずれかに取り付けられる。
【0035】
(インストゥルメントの構成)
図5に示すように、インストゥルメントの先端には、たとえば、鉗子4bが設けられている。インストゥルメントの先端には、鉗子4b以外に、関節を有する器具として、ハサミ、グラスパー、ニードルホルダ、マイクロジセクター、ステーブルアプライヤー、タッカー、吸引洗浄ツール、スネアワイヤ、および、クリップアプライヤーなどが配置される。インストゥルメントの先端には、関節を有しない器具として、切断刃、焼灼プローブ、洗浄器、カテーテル、および、吸引オリフィスなどが配置される。
【0036】
鉗子4bは、第1支持体4eと、第2支持体4fとを含む。第1支持体4eは、ジョー部材104aおよび104bの基端側をJT11軸線周りに回転可能に支持する。第2支持体4fは、第1支持体4eの基端側をJT10軸線周りに回転可能に支持する。シャフト4cは、JT9軸線周りに回動する。ジョー部材104aおよびジョー部材104bは、JT12軸線周りに開閉する。
【0037】
(アーム操作部の構成)
図6に示すように、アーム操作部80は、ロボットアーム60に取り付けられており、ロボットアーム60を操作する。具体的には、アーム操作部80は、第2リンク部73に取り付けられている。
【0038】
アーム操作部80は、イネーブルスイッチ81と、ジョイスティック82と、リニアスイッチ83と、モード切替ボタン84と、モードインジケータ84aと、ピボットボタン85と、アジャストメントボタン86と、を含む。イネーブルスイッチ81は、リセット部の一例である。ジョイスティック82は、アーム操作具の一例である。アジャストメントボタン86は、第2スイッチの一例である。モード切替ボタン84は、第3スイッチの一例である。
【0039】
イネーブルスイッチ81は、押下されることにより、ジョイスティック82およびリニアスイッチ83によるロボットアーム60の移動を許可または不許可とする。看護師、助手などの操作者によりアーム操作部80が把持された状態で、イネーブルスイッチ81が押下されることにより、ロボットアーム60による手術器具4の移動が許可される。
【0040】
ジョイスティック82は、ロボットアーム60による手術器具4の移動を操作するための操作具である。ジョイスティック82は、ロボットアーム60の移動方向および移動速度を操作する。ジョイスティック82が倒された方向および倒された角度に応じて、ロボットアーム60が移動される。
【0041】
リニアスイッチ83は、手術器具4の長手方向であるZ方向に手術器具4を移動させるためのスイッチである。リニアスイッチ83は、手術器具4を患者Pに挿入する方向に移動させるリニアスイッチ83aと、手術器具4を患者Pから離間するに方向に移動させるリニアスイッチ83bとを含む。リニアスイッチ83aとリニアスイッチ83bとは、共に、押しボタンスイッチからなる。
【0042】
モード切替ボタン84は、手術器具4を図7に示す並進移動させるモードと図8に示す回転移動させるモードとを切り替えるための押しボタンスイッチである。図7に示すように、ロボットアーム60を並進移動させるモードでは、手術器具4の先端4dが、X-Y平面上において移動するように、ロボットアーム60が移動される。図8に示すように、ロボットアーム60を回転移動させるモードでは、ピボット位置PPが記憶部32に記憶されていない時は、鉗子4bを中心に回転移動し、ピボット位置PPが記憶部32に記憶されている時は、ピボット位置PPを支点として手術器具4が回転移動するように、ロボットアーム60が移動される。なお、手術器具4のシャフト4cがトロカールTに挿入された状態で、手術器具4が回転移動される。モード切替ボタン84は、アーム操作部80のZ方向側の面に配置されている。
【0043】
モードインジケータ84aは、切り替えられたモードを表示する。モードインジケータ84aの点灯は、回転移動モードを表し、消灯は、並進移動モードを表す。また、モードインジケータ84aは、ピボット位置PPが教示されたことを表示するピボット位置インジケータを兼ねている。モードインジケータ84aは、アーム操作部80のZ方向側の面に配置されている。
【0044】
ピボットボタン85は、ロボットアーム60に取り付けられた手術器具4の移動の支点となるピボット位置PPを教示するための押しボタンスイッチである。
【0045】
アジャストメントボタン86は、ロボットアーム60の位置を最適化するためのボタンである。内視鏡6が取り付けられたロボットアーム60に対するピボット位置PPの教示後、アジャストメントボタン86が押下されることにより、他のロボットアーム60およびアームベース50の位置が最適化される。アジャストメントボタン86は、イネーブルスイッチ81とは異なるボタンである。
【0046】
(遠隔操作装置)
図1に示すように、遠隔操作装置2は、たとえば、手術室の中または手術室の外に配置されている。遠隔操作装置2は、アーム121および操作ハンドル21を含む操作部120と、フットペダル22と、タッチパネル23と、モニタ24と、支持アーム25と、支持バー26と、エラーリセットボタン26aと、を含む。操作部120は、医師などの操作者が指令を入力するための操作用のハンドルを構成する。モニタ24は、表示装置および第1表示装置の一例である。エラーリセットボタン26aは、リセット部の一例である。
【0047】
操作部120は、手術器具4を操作するためのハンドルである。また、操作部120は、手術器具4に対する操作量を受け付ける。操作部120は、医師などの操作者から見て、左側に配置され、操作者の左手により操作される操作部120と、右側に配置され、操作者の右手により操作される操作部120と、を含んでいる。操作者の左手により操作される操作部120および操作者の右手により操作される操作部120は、各々、操作ハンドル21Lおよび操作ハンドル21Rを含む。
【0048】
モニタ24は、内視鏡6によって取り込まれた画像を表示するためのスコープ型表示装置である。また、モニタ24には、報知部24aが配置されている。報知部24aは、エラー音を報知する。支持アーム25は、モニタ24の高さを医師などの操作者の顔の高さに合わせるようにモニタ24を支持する。タッチパネル23は、支持バー26に配置されている。モニタ24近傍に設けられたセンサにより操作者の頭部を検知することにより手術支援ロボット1は遠隔操作装置2による操作が可能になる。操作者は、モニタ24により患部を視認しながら、操作部120およびフットペダル22を操作する。これにより、遠隔操作装置2に指令が入力される。遠隔操作装置2に入力された指令は、手術支援ロボット1に送信される。
【0049】
エラーリセットボタン26aは、支持バー26に配置されている。エラーリセットボタン26aは、手術支援システム100のエラーを解除する。エラーは、たとえば、後述する偏差異常のエラーである。
【0050】
図9に示すように、フットペダル22は、手術器具4に関する機能を実行するように複数設けられている。また、複数のフットペダル22は、基台部28に配置されている。フットペダル22は、切替ペダル22aと、クラッチペダル22bと、カメラペダル22cと、切開ペダル22dと、凝固ペダル22eとを含んでいる。切替ペダル22aと、クラッチペダル22bと、カメラペダル22cと、切開ペダル22dと、凝固ペダル22eとは、操作者の足により操作される。また、切開ペダル22dは、右側のロボットアーム60用の切開ペダル22dRと、左側のロボットアーム60用の切開ペダル22dLとを含む。また、凝固ペダル22eは、右側のロボットアーム60用の凝固ペダル22eRと、左側のロボットアーム60用の凝固ペダル22eLとを含む。
【0051】
切替ペダル22aは、操作ハンドル21で動作させるロボットアーム60を切り替える。クラッチペダル22bは、ロボットアーム60と操作ハンドル21との操作接続を一時切断するクラッチ操作を実行する。クラッチペダル22bが操作者によって踏み込まれている間、操作ハンドル21による操作が、ロボットアーム60に伝達されなくなる。また、カメラペダル22cが操作者によって踏み込まれている間、操作ハンドル21によって、内視鏡6が取り付けられたロボットアーム60を操作することが可能になる。切開ペダル22dまたは凝固ペダル22eが操作者によって踏み込まれている間、電気手術装置が起動する。
【0052】
足検知部27は、フットペダル22を操作する操作者の足を検知する。足検知部27は、フットペダル22の上方に位置するホバー状態の足を検知する。足検知部27は、基台部28に配置されている。
【0053】
図1に示すように、画像処理ユニット8は、内視鏡6により撮影された画像を処理する。画像処理ユニット8は、カート8aに載置されている。カート8aには、表示部8bが配置されている。表示部8bには、内視鏡6により撮影された画像が表示される。本実施形態では、画像処理ユニット8には、エラーリセットボタン8cおよび報知部8dが配置されている。エラーリセットボタン8cは、手術支援システム100のエラーを解除する。エラーは、たとえば、後述する偏差異常のエラーである。報知部8dは、エラー音を報知する。表示部8bは、表示装置および第2表示装置の一例である。エラーリセットボタン8cは、リセット部の一例である。
【0054】
(制御系の構成)
図10に示すように、手術支援システム100は、制御装置130と、アーム制御部31aと、ポジショナ制御部31bと、操作制御部110と、を備えている。
【0055】
制御装置130は、医療用台車3の内部においてアーム制御部31aおよびポジショナ制御部31bと通信するように配置され、手術支援システム100の全体を制御する。具体的には、制御装置130は、アーム制御部31a、ポジショナ制御部31b、および、操作制御部110の各々と通信し、制御する。制御装置130と、アーム制御部31a、ポジショナ制御部31b、および、操作制御部110とは、LANなどによって接続されている。制御装置130は、医療用台車3の内部に配置されている。
【0056】
アーム制御部31aは、複数のロボットアーム60ごとに配置されている。すなわち、医療用台車3の内部には、複数のロボットアーム60の数に対応した複数のアーム制御部31aが配置されている。
【0057】
図10に示すように、入力装置33は、制御装置130にLANなどによって接続されている。ステータスインジケータ53、アームステータスインジケータ54、操作ハンドル34、スロットル34a、ジョイスティック33b、スタビライザ34cおよび電動シリンダ34dと、ポジショナ制御部31bとは、配線145によって、互いの情報を共有可能な通信ネットワークによりシリアル通信接続されている。なお、図10では、1つの配線145に、ステータスインジケータ53、アームステータスインジケータ54などの全てが接続されているように記載されているが、実際には、ステータスインジケータ53、アームステータスインジケータ54、操作ハンドル34、スロットル34a、ジョイスティック33b、スタビライザ34cおよび電動シリンダ34dごとに、配線145が配置されている。
【0058】
図11に示すように、アーム部61には、複数の関節64に対応するように、複数のサーボモータM1と、エンコーダE1と、減速機とが設けられている。エンコーダE1は、サーボモータM1の回転角を検出する。減速機は、サーボモータM1の回転を減速させてトルクを増大させる。医療用台車3の内部には、サーボモータM1を制御するためのサーボ制御部C1がアーム制御部31aに隣接して配置されている。また、サーボ制御部C1には、サーボモータM1の回転角を検出するためのエンコーダE1が電気的に接続されている。サーボモータM1は、駆動部の一例である。エンコーダE1は、センサの一例である。
【0059】
図11および図12に示すように、アーム部61の関節64と、ポジショナ40の関節43の各々には、ブレーキBRKが搭載されている。また、医療用台車3の前輪と、アームベース50および並進移動機構部70にもブレーキBRKが搭載されている。アーム制御部31aからアーム部61の関節64と並進移動機構部70とに搭載された各ブレーキBRKへ制御信号が各々一方通行で送信される。制御信号は、ブレーキBRKをオンオフする信号である。ブレーキBRKをオンする信号は、ブレーキBRKが効いている状態を保持する信号を含む。ポジショナ制御部31bから、ポジショナ40の関節43とアームベース50とに搭載された各ブレーキBRKへの制御信号についても同様である。アームベース50とアーム部61と並進移動機構部70とは、起動時に全てのブレーキBRKが解除され、重力に抗するようにサーボモータSMが駆動されることにより、ロボットアーム60の姿勢とアームベース50の姿勢とが維持される。手術支援システム100にエラーが発生した際には、アームベース50とアーム部61と並進移動機構部70とに搭載されたブレーキBRKがオンされる。手術支援システム100のエラーが解除されると、アームベース50とアーム部61と並進移動機構部70とに搭載されたブレーキBRKはオフされる。手術支援システム100のシャットダウン操作によって、アームベース50とアーム部61と並進移動機構部70とに搭載されたブレーキBRKはオンされる。また、医療用台車3の前輪は、常にブレーキBRKがオンされており、医療用台車3のイネーブルスイッチ34bが押下されている間だけブレーキBRKが解除される。また、ポジショナ40の各関節43は、常にブレーキBRKがオンされており、医療用台車3のイネーブルスイッチ33cが押下されている間だけブレーキBRKが解除される。
【0060】
第2リンク部73には、手術器具4の被駆動ユニット4aに配置された被駆動部材を回転させるためのサーボモータM2と、エンコーダE2と、減速機とが配置されている。エンコーダE2は、サーボモータM2の回転角を検出する。減速機は、サーボモータM2の回転を減速させてトルクを増大させる。また、医療用台車3には、手術器具4を駆動するサーボモータM2を制御するためのサーボ制御部C2が配置されている。サーボ制御部C2には、サーボモータM2の回転角を検出するためのエンコーダE2が電気的に接続されている。なお、サーボモータM2、エンコーダE2およびサーボ制御部C2は、各々複数配置されている。サーボモータM2は、駆動部の一例である。エンコーダE2は、センサの一例である。
【0061】
並進移動機構部70には、手術器具4を並進移動させるためのサーボモータM3と、エンコーダE3と、減速機とが設けられている。エンコーダE3は、サーボモータM3の回転角を検出する。減速機は、サーボモータM3の回転を減速させてトルクを増大させる。また、医療用台車3には、手術器具4を並進移動するサーボモータM3を制御するためのサーボ制御部C3が配置されている。サーボ制御部C3には、サーボモータM3の回転角を検出するためのエンコーダE3が電気的に接続されている。サーボモータM3は、駆動部の一例である。エンコーダE3は、センサの一例である。
【0062】
本実施形態では、制御装置130は、遠隔操作装置2が受け付けた操作に基づいてサーボモータM1、M2およびM3の位置を指令する指令値を生成し、指令値に基づいてサーボモータM1、M2およびM3を駆動する。そして、制御装置130は、指令値とセンサにより検出されたサーボモータM1、M2およびM3の位置との差が許容範囲を超えた場合に偏差異常のエラーを検出する。なお、偏差異常の詳細については、後述する。
【0063】
図12に示すように、ポジショナ40には、ポジショナ40の複数の関節43に対応するように、複数のサーボモータM4と、エンコーダE4と、減速機とが設けられている。エンコーダE4は、サーボモータM4の回転角を検出するように構成されている。減速機は、サーボモータM4の回転を減速させてトルクを増大させるように構成されている。
【0064】
医療用台車3は、車輪を備えており、駆動輪としての前輪と、操作ハンドル34によって操舵される後輪とを有する。なお、後輪は、前輪よりも操作ハンドル34に近い側に配置されている。また、医療用台車3には、医療用台車3の複数の前輪の各々を駆動するサーボモータM5と、エンコーダE5と、減速機とブレーキが配置されている。減速機は、サーボモータM5の回転を減速させてトルクを増大させるように構成されている。また、医療用台車3の操作ハンドル34には、図3に示すポテンショメータP1が配置されており、スロットル34aの捻りに応じてポテンショメータP1で検出した回転角に基づき、前輪のサーボモータM5は駆動される。また、医療用台車3の後輪は、双輪形式であり、操作ハンドル34の左右の回動に基づき、後輪は操舵される。また、医療用台車3の操作ハンドル34には、図3に示すポテンショメータP2が回動軸に配置されており、医療用台車3の後輪には、サーボモータM5aとエンコーダE5aと減速機が配置されている。減速機は、サーボモータM5aの回転を減速させてトルクを増大させるように構成されている。操作ハンドル34の左右の回動に応じてポテンショメータP2で検出した回転角に基づき、サーボモータM5aは駆動される。すなわち、操作ハンドル34の左右の回動による後輪の操舵は、サーボモータM5aによりパワーアシストされるように構成されている。
【0065】
医療用台車3は、前輪が駆動されることにより、前後方向に移動する。また、医療用台車3の操作ハンドル34が回動されることにより、後輪が操舵されて、医療用台車3が左右方向に回動する。
【0066】
図12に示すように、医療用台車3には、ポジショナ40を移動するサーボモータM4を制御するためのサーボ制御部C4が配置されている。また、サーボ制御部C4には、サーボモータM4の回転角を検出するためのエンコーダE4が電気的に接続されている。また、医療用台車3には、医療用台車3の前輪を駆動するサーボモータM5を制御するためのサーボ制御部C5が配置されている。サーボ制御部C5には、サーボモータM5の回転角を検出するためのエンコーダE5が電気的に接続されている。医療用台車3には、医療用台車3の後輪の操舵をパワーアシストするサーボモータM5aを制御するためのサーボ制御部C5aが配置されている。サーボ制御部C5aには、サーボモータM5aの回転角を検出するためのエンコーダE5aが電気的に接続されている。
【0067】
図10に示すように、制御装置130は、アーム操作部80に受け付けられた操作に基づいてロボットアーム60を制御する。たとえば、制御装置130は、アーム操作部80のジョイスティック82に受け付けられた操作に基づいてロボットアーム60を制御する。具体的には、アーム制御部31aは、ジョイスティック82から入力された入力信号を制御装置130に出力する。制御装置130は受け取った入力信号と、エンコーダE1により検出された回転角とに基づいて位置指令を生成するとともに、アーム制御部31aを介して、位置指令をサーボ制御部C1に出力する。サーボ制御部C1は、アーム制御部31aから入力された位置指令と、エンコーダE1により検出された回転角とに基づいて、電流指令を生成するとともに、電流指令をサーボモータM1に出力する。これにより、ジョイスティック82に入力された動作指令に沿うように、ロボットアーム60が移動される。
【0068】
制御装置130は、アーム操作部80のリニアスイッチ83からの入力信号に基づいてロボットアーム60を制御する。具体的には、アーム制御部31aは、リニアスイッチ83から入力された入力信号を制御装置130に出力する。制御装置130は受け取った入力信号と、エンコーダE1またはE3により検出された回転角とに基づいて位置指令を生成するとともに、アーム制御部31aを介して、位置指令をサーボ制御部C1またはC3に出力する。サーボ制御部C1またはC3は、アーム制御部31aから入力された位置指令と、エンコーダE1またはE3により検出された回転角とに基づいて、電流指令を生成するとともに、電流指令をサーボモータM1またはM3に出力する。これにより、リニアスイッチ83に入力された動作指令に沿うように、ロボットアーム60が移動される。
【0069】
ポジショナ制御部31bは、医療用台車3に配置されている。ポジショナ制御部31bは、ポジショナ40および医療用台車3を制御する。ポジショナ40には、ポジショナ40の複数の関節43に対応するように、サーボモータSMと、エンコーダENと、減速機とが配置されている。ポジショナ40のサーボモータSMを制御するサーボ制御部SCは、医療用台車3に配置されている。医療用台車3には、医療用台車3の複数の前輪の各々を駆動するサーボモータSMと、エンコーダENと、減速機と、サーボ制御部SCと、ブレーキとが配置されている。
【0070】
操作制御部110は、遠隔操作装置2の本体に配置されている。操作制御部110は、操作部120を制御する。操作制御部110は、左手用の操作部120と右手用の操作部120との各々に対応するように配置されている。操作部120には、操作部120の複数の関節に対応するように、サーボモータSMと、エンコーダENと、減速機とが配置されている。操作部120のサーボモータSMを制御するサーボ制御部SCは、操作制御部110に隣接して遠隔操作装置2の本体に配置されている。
【0071】
図10に示すように、画像処理ユニット8は、LANなどにより、制御装置130に接続されている。表示部8bは、画像処理ユニット8に接続されている。
【0072】
(偏差異常)
ここで、偏差異常について説明する。偏差異常とは、ロボットアーム60のサーボモータSMに対する指令値と現在のロボットアーム60の位置との差が許容範囲を超える異常を意味する。偏差異常は、ロボットアーム60が、患者P、手術台5、手術台5上の離被架などに接触した場合に発生する。また、偏差異常は、ロボットアーム60が、操作者に接触した場合に発生する。また、偏差異常は、ロボットアーム60が、内視鏡6のケーブルに引っ掛かった場合に発生する。また、偏差異常は、内視鏡6と、患者Pに挿入されたトロカールTとが接触した場合に発生する。また、偏差異常は、手術器具4をロボットアーム60に取り付ける際に、手術器具4がロボットアーム60に強く押し込まれた際に発生する。偏差異常のエラーが発生すると、後述するフォローイング動作が行えなくなる。
【0073】
ここで、本実施形態では、図6に示すように、ロボットアーム60には、イネーブルスイッチ81が配置されている。イネーブルスイッチ81は、偏差異常のエラーが発生した場合に、偏差異常のエラーをリセットする。エラーをリセットするとは、エラーを解除して、操作ハンドル21によってロボットアーム60を再び操作できる状態とすることを意味する。
【0074】
本実施形態では、偏差異常のエラーをリセットするイネーブルスイッチ81は、ロボットアーム60を移動させるジョイスティック82を含むアーム操作部80に配置されている。イネーブルスイッチ81は、偏差異常のエラーをリセットするリセット部を兼ねている。
【0075】
(偏差異常のエラーのリセットの流れ)
以下に、偏差異常のエラーのリセットの流れについて説明する。
【0076】
本実施形態では、制御装置130は、偏差異常のエラーを検出した場合、偏差異常のエラーが発生してから所定の期間、アーム操作部80のイネーブルスイッチ81、画像処理ユニット8のエラーリセットボタン8c、遠隔操作装置2のエラーリセットボタン26aおよび医療用台車3のエラーリセットボタン33dによる偏差異常のエラーのリセットを受け付ける。所定の期間は、たとえば、60秒である。なお、所定の期間を60秒以外の期間にしてもよい。制御装置130は、タイマーを有しており、タイマーによって所定の期間をカウントする。偏差異常のエラーがリセットされた場合、タイマーはリセットされる。
【0077】
本実施形態では、制御装置130は、偏差異常のエラーを検出した場合、偏差異常のエラーを報知するように遠隔操作装置2の報知部24aおよび画像処理ユニット8の報知部8dを制御する。なお、偏差異常のエラーのエラー音は、他のエラーのエラー音と異なっている。
【0078】
本実施形態では、制御装置130は、偏差異常のエラーを検出した場合、アーム操作部80によるロボットアーム60の操作を受け付ける。但し、制御装置130は、操作ハンドル21によるロボットアーム60の操作を受け付けない。すなわち、制御装置130は、偏差異常のエラーを検出した場合、アーム操作部80の入力のみ受け付ける。一方、制御装置130は、他のエラーを検出した場合、制御装置130は、アーム操作部80によるロボットアーム60の操作、および、操作ハンドル21によるロボットアーム60の操作を受け付けない。
【0079】
本実施形態では、偏差異常のエラーが検出されてから所定の期間が経っても、偏差異常のエラーが解消されない場合、制御装置130は、継続して偏差異常のエラーのリセットを受け付ける。但し、制御装置130は、新たに偏差異常のエラーを検出した場合、偏差異常を示すエラー音から他のエラーと同じエラー音に切り替えるとともに、アーム操作部80のイネーブルスイッチ81による偏差異常のエラーのリセットを受け付けない。
【0080】
本実施形態では、制御装置130は、偏差異常のエラーを検出した場合、アーム操作部80によるロボットアーム60の移動を促すことと、エラーリセットボタン8c、エラーリセットボタン26aおよびエラーリセットボタン33dの操作を促すこととのうちの少なくとも一方を、遠隔操作装置2のモニタ24と、遠隔操作装置2のモニタ24とは異なる表示部に表示させる。遠隔操作装置2のモニタ24とは異なる表示部とは、画像処理ユニット8に配置された表示部8bである。たとえば、図13に示すように、接触を検知しました、緩和方向にアーム操作部80で操作もしくはエラーリセットしてください、というメッセージが表示される。操作者は、アーム操作部80のイネーブルスイッチ81を押下するとともに、ジョイスティック82またはリニアスイッチ83を操作することにより、偏差異常のエラーを解消するようにロボットアーム60を移動させる。たとえば、ロボットアーム60と手術台5とが干渉している場合、ロボットアーム60が移動されて、ロボットアーム60と手術台5との干渉が解消される。後述するフォローイング可能条件を満たしている場合に、操作者がイネーブルスイッチ81を離したタイミングにおいて、制御装置130は、偏差異常のエラーを自動的にリセットする。また、操作者が、エラーリセットボタン8c、エラーリセットボタン26aおよびエラーリセットボタン33dを操作することによっても、制御装置130は、後述するフォローイング可能条件を満たしている場合に、偏差異常のエラーをリセットする。
【0081】
ジョイスティック82またはリニアスイッチ83が操作され、イネーブルスイッチ81の押下が解除されても、偏差異常のエラーが解消されない場合、制御装置130は、再びロボットアーム60を移動させることを促すメッセージを、モニタ24および表示部8bに表示させる。たとえば、図14に示すように、アライメントしてください、干渉している場合はアーム操作部で移動してください、というメッセージが表示される。このメッセージでは、アーム操作部80のアジャストメントボタン86を強調するように、たとえば、Aの表示が円CCで囲まれる。操作者は、イネーブルスイッチ81を押下して、アジャストメントボタン86、ジョイスティック82またはリニアスイッチ83を操作することにより、偏差異常のエラーを解消するようにロボットアーム60を移動させる。そして、偏差異常のエラーが解消された場合、制御装置130は、偏差異常のエラーの報知を停止させる。
【0082】
本実施形態では、制御装置130は、イネーブルスイッチ81、エラーリセットボタン8c、エラーリセットボタン26aおよびエラーリセットボタン33dによる偏差異常のエラーのリセットが実行された場合、遠隔操作装置2の所定の操作に基づいてロボットアーム60が移動されるフォローイング動作モードに移行する。フォローイング動作モード中は、操作ハンドル21の動きに合わせて、ロボットアーム60が動作するとともに、手術器具4が鉗子4bの開閉の動作を含む動作を行う。
【0083】
本実施形態では、制御装置130は、フォローイング動作モードへの移行が可能となるフォローイング可能条件が満たされている場合、イネーブルスイッチ81、エラーリセットボタン8c、エラーリセットボタン26aおよびエラーリセットボタン33dによる偏差異常のエラーのリセットの受け付けを停止する。具体的には、制御装置130は、下記の3つのフォローイング可能条件の全てが満たされている場合、イネーブルスイッチ81の押下が解除されたタイミングで、イネーブルスイッチ81、エラーリセットボタン8c、エラーリセットボタン26aおよびエラーリセットボタン33dによる偏差異常のエラーのリセットの受け付けを停止する。
【0084】
フォローイング可能条件は、以下の3つの条件を含む。1つ目の条件は、現在のロボットアーム60の姿勢に対して逆運動学計算の計算を行った際に、ロボットアーム60の位置が逆運動学計算のエラーとならない位置であることである。これにより、フォローイング動作によって、ロボットアーム60の姿勢を開始位置から元に戻すことが困難になることを抑制できる。なお、逆運動学計算とは、後述する順運動学計算の逆であり、ロボットアーム60の位置姿勢からロボットアーム60の関節角度を求めることを意味する。
【0085】
フォローイング可能条件のうちの2つ目の条件は、現在のロボットアーム60の姿勢を逆運動学計算した際におけるロボットアーム60の関節角度が、動作可能範囲内であることである。これによっても、フォローイング動作によって、ロボットアーム60の姿勢を開始位置から元に戻すことが困難になることを抑制できる。
【0086】
フォローイング可能条件のうちの3つ目の条件は、ロボットアーム60に取り付けられた手術器具4の移動の支点となる予め設定されたピボット位置PPから、手術器具4が所定の距離以上離れていないことである。所定の距離は、ピボット位置PPのずれが大きくなることを抑制できる距離に設定される。
【0087】
また、偏差異常のエラーが発生した場合、イネーブルスイッチ81が操作されることにより、偏差異常のエラーのリセットに加えて、偏差異常以外の所定のエラーもリセットされる。所定のエラーは、ブレーキリリース回路異常、速度偏差過大、停止監視異常、および、指令値急変を含む。ブレーキリリース回路異常とは、ブレーキリリース回路が故障していることを意味する。速度偏差過大とは、サーボ制御部SCからの速度指令値と、検出した速度の差が過大であることを意味する。ロボットアーム60が停止している際には、ロボットアーム60が停止していることが常に監視されている。停止監視異常とは、ロボットアーム60が停止していることが監視されている最中に、ロボットアーム60が動作した時に通知される異常のことを意味する。指令値急変とは、サーボ制御部SCからの指令値が急激に変化することを意味する。なお、偏差異常が解除される際に、ロボットアーム60と手術台5とが干渉している場合などに、ロボットアーム60が反力で動くことがあり、上記の4つの所定のエラーは、結果として発生し易い。
【0088】
具体的には、偏差異常のエラーが発生している間において、上記の偏差異常以外の所定のエラーが発生した場合、制御装置130は、図15に示すように、所定のエラーに対応するエラーコードを、モニタ24および表示部8bに表示させる。一方、制御装置130は、偏差異常のエラーに対応するエラー音を報知し続け、偏差異常以外の所定のエラーに対応するエラー音は報知しない。また、上記の4つの所定のエラーは、操作者によってイネーブルスイッチ81が押下された際に解除される。また、イネーブルスイッチ81が、ある一定の時間以上押下され続けても所定のエラーが解除できない場合、制御装置130は、エラー音を報知する。この場合のエラー音は、偏差異常のエラーに対するエラー音とは異なる。ある一定の時間は、たとえば、数十秒である。
【0089】
本実施形態では、制御装置130は、遠隔操作装置2の操作によりロボットアーム60が移動されるフォローイング動作モードへの移行が可能となるフォローイング可能条件が満たされていない場合に、後述するフォーイング必要条件を満たしていれば、遠隔操作装置2による鉗子4bの開閉の動作のみを受け付ける。ここで、鉗子4bが物体を把持している最中に偏差異常などのエラーが発生した場合にフォローイング動作が行えないと、鉗子4bが物体を把持している状態が解除できない。そこで、制御装置130は、フォローイング動作が可能となるフォローイング可能条件が満たされていない場合でも、後述するフォーイング必要条件を満たしていれば、操作ハンドル21による鉗子4bの開閉の動作を受け付ける。なお、操作ハンドル21による鉗子4bの開閉の動作は、偏差異常のエラーの発生時以外でも受け付けられる。
【0090】
制御装置130は、フォローイング動作のための6個のフォローイング必要条件を有している。1つ目のフォローイング必要条件は、ロールイン後、ロボットアーム60のセットアップ姿勢への移行が完了してから、ロールアウトするまでの期間であることである。ロールインとは、ロボットアーム60が患者Pの上方に位置するように手術支援ロボット1が移動されることを意味する。セットアップ姿勢とは、複数のロボットアーム60の各々に内視鏡6またはピボット位置PPを教示するためのピボット位置教示器具を取り付け易いように、互いのロボットアーム60同士の間隔が広げられた姿勢を意味する。ロールアウト姿勢とは、ロボットアーム60が患者Pの上方から離間するように手術支援ロボット1が移動されることを意味する。2つ目のフォローイング必要条件は、ピボット位置PPの設定が終了していることである。3つ目のフォローイング必要条件は、ロボットアーム60にインストゥルメントが正常に取り付けられていることである。4つ目のフォローイング必要条件は、操作者が遠隔操作装置2のモニタ24をのぞき込んでいることが検知されることである。5つ目のフォローイング必要条件は、操作者によって、遠隔操作装置2のクラッチペダル22bが踏み込まれていないことである。6個目のフォローイング必要条件は、手術支援システム100のシステムエラーが発生していないことである。そして、制御装置130は、上記3つのフォローイング可能条件が満たされていない場合でも、上記の6個のフォローイング必要条件が満たされている場合、操作ハンドル21による鉗子4bの開閉の動作のみを受け付ける。すなわち、鉗子4bの先端位置の移動は、受け付けられない。一方、制御装置130は、上記の3つのフォローイング可能条件を全て満たし、かつ、上記の6個のフォローイング必要条件を全て満たした場合に、フォローイング動作を受け付ける。
【0091】
また、上記の6個のフォローイング必要条件が満たされている場合、制御装置130は、たとえば、図16に示すように、フォローイング動作は受け付けないが、操作ハンドル21による鉗子4bの開閉の動作のみを受け付けることを表示するとともに、アーム操作部80によりロボットアーム60を操作することを促すメッセージを、モニタ24および表示部8bに表示させる。
【0092】
(ジョイスティックが傾いている際の対応)
本実施形態では、制御装置130は、ジョイスティック82が傾いたままでエラーが検出された場合、アジャストメントボタン86が操作されることにより、ジョイスティック82が傾いている方向にロボットアーム60を自動で移動させる。ここで、図17に示すように、ロボットアーム60が、手術台5などと干渉して、アーム操作部80のジョイスティック82が傾いた状態で、手術台5に干渉する場合がある。この場合、制御装置130は、たとえば、図18に示すように、ジョイスティックを戻してイネーブルスイッチを押してください、戻せない時はAボタンを押してください、というメッセージを、モニタ24および表示部8bに表示させる。なお、Aボタンとは、アジャストメントボタン86を意味する。そして、操作者が、アジャストメントボタン86を押下することにより、ジョイスティック82が傾いている方向にロボットアーム60が移動される。これにより、ジョイスティック82と手術台5などとの干渉が解消される。また、アジャストメントボタン86が操作されることにより移動するロボットアーム60の速度は、ジョイスティック82などが操作されることにより移動するロボットアーム60の速度よりも低速である。
【0093】
本実施形態では、制御装置130は、ジョイスティック82の傾きが解消された場合、ロボットアーム60の移動を自動で停止する。すなわち、操作者がアジャストメントボタン86の押下を解除しなくても、ロボットアーム60の移動が自動で停止される。
【0094】
(ガイドツールチェンジ中の対応)
本実施形態では、制御装置130は、ホルダ71から手術器具4が取り外された際に、並進移動機構部70によりホルダ71を第1の位置に移動させる。なお、ホルダ71を第1の位置に移動させる動作を、ガイドツールチェンジと呼ぶ。そして、制御装置130は、ホルダ71が第1の位置に移動している最中にホルダ71の移動を阻害するエラーが発生した場合において、モード切替ボタン84が操作された際、ホルダ71の第1の位置への移動を停止させ、アーム操作部80によるロボットアーム60の操作を受け付ける。具体的には、制御装置130は、ロボットアーム60が第1の位置に移動している最中にロボットアーム60の移動を阻害するエラーが発生した場合、操作者がアーム操作部80のモード切替ボタン84を押下することにより、ガイドツールチェンジのモードが解除される。これにより、並進移動機構部70による手術器具4のZ2方向側への移動が停止される。そして、操作者は、アーム操作部80のイネーブルスイッチ81を押下しながらジョイスティック82を操作することにより、ロボットアーム60と、ロボットアーム60の移動を阻害する物体との干渉を解消する。その後、操作者が、アーム操作部80のイネーブルスイッチ81の押下を解除することにより、制御装置130は、並進移動機構部70により手術器具4を第1の位置まで移動させる。なお、上記のガイドツールチェンジ中の操作は、偏差異常のエラーの発生中以外でも受け付けられる。
【0095】
(手術支援システムの制御方法)
図19に示すように、ステップS1において、制御装置130により、遠隔操作装置2が受け付けた操作に基づいてサーボモータM1、M2およびM3の各々の位置を指令する指令値と、エンコーダE1、E2およびE3の各々により検出されたサーボモータM1、M2およびM3の位置との差が許容範囲を超えた場合に偏差異常のエラーを検出する。具体的には、指令値と位置との差が許容範囲を超えているか否かが判定される。
【0096】
ステップS1でyesの場合、ステップS2において、偏差異常のエラーが報知される。また、アーム操作部80によるロボットアーム60の移動を促すことと、イネーブルスイッチ81、エラーリセットボタン8c、エラーリセットボタン26aおよびエラーリセットボタン33dの操作を促すこととのうちの少なくとも一方が、モニタ24および表示部8bに表示される。
【0097】
ステップS3において、偏差異常のエラーが発生した場合に、ロボットアーム60に配置されたイネーブルスイッチ81による偏差異常のエラーのリセットを受け付ける。なお、偏差異常のエラーが発生してから所定の期間、イネーブルスイッチ81によるエラーのリセットを受け付けるとともに、エラーリセットボタン8c、エラーリセットボタン26aおよびエラーリセットボタン33dによるエラーのリセットも受け付けられる。
【0098】
ステップS4において、イネーブルスイッチ81、エラーリセットボタン8c、エラーリセットボタン26aおよびエラーリセットボタン33dによる偏差異常のエラーのリセットが実行されたか否かが判定される。
【0099】
ステップS4においてyesの場合、ステップS5において、フォローイング可能条件が満たされているか否かが判定される。
【0100】
ステップS5においてyesの場合、ステップS6において、遠隔操作装置2の操作によりロボットアーム60が移動されるフォローイング動作モードに移行する。また、イネーブルスイッチ81、エラーリセットボタン8c、エラーリセットボタン26aおよびエラーリセットボタン33dによる偏差異常のエラーのリセットの受け付けが停止される。
【0101】
また、上記のステップS1からステップS6までの間だけでなく、ステップS1からステップS6までの間以外でも、遠隔操作装置2による鉗子4bの開閉の動作のみは受け付けられる。同様に、上記のステップS1からステップS6までの間だけでなく、ステップS1からステップS6までの間以外でも、ジョイスティック82が傾いたままでエラーが検出された場合のアジャストメントボタン86によるロボットアーム60の自動の移動の動作は受け付けられる。
【0102】
[本実施形態の効果]
偏差異常のエラーが発生した場合に、偏差異常のエラーをリセットするイネーブルスイッチ81がロボットアーム60に配置される。これにより、イネーブルスイッチ81がロボットアーム60に配置されているので、ロボットアーム60に対する操作を行っている際に偏差異常のエラーが発生した場合でも、ロボットアーム60に対する操作を行っている操作者は、迅速にイネーブルスイッチ81を操作することができる。その結果、ロボットアーム60に対する操作を行っている際に偏差異常のエラーが発生した場合でも、迅速にエラーをリセットすることができる。
【0103】
ロボットアーム60は、ロボットアーム60を移動させるジョイスティック82を含むアーム操作部80を備え、イネーブルスイッチ81は、アーム操作部80に配置されている。これにより、操作者がロボットアーム60を移動させる際に操作するアーム操作部80にイネーブルスイッチ81が配置されているので、操作者は、より迅速にイネーブルスイッチ81を操作することができる。その結果、より迅速に偏差異常のエラーをリセットすることができる。
【0104】
制御装置130は、偏差異常のエラーを検出した場合、アーム操作部80の入力のみ受け付ける。これにより、偏差異常のエラーが発生している状態で、操作ハンドル21によってロボットアーム60が操作されることを抑制できる。
【0105】
アーム操作部80は、押下されることによりジョイスティック82によるロボットアーム60の移動を許可するイネーブルスイッチ81をさらに含み、イネーブルスイッチ81は、偏差異常のエラーをリセットするリセット部を兼ねている。これにより、イネーブルスイッチ81とリセット部とを別個に配置する場合と異なり、アーム操作部80の構成が複雑化することを抑制できる。
【0106】
手術支援システム100は、ロボットアーム60を移動する医療用台車3をさらに備える。エラーリセットボタンは、遠隔操作装置2と医療用台車3とのうちの少なくとも一方にも配置されている。これにより、遠隔操作装置2と医療用台車3とのうちの少なくとも一方に配置されているエラーリセットボタンによっても、偏差異常のエラーをリセットすることができる。
【0107】
制御装置130は、イネーブルスイッチ81による偏差異常のエラーのリセットが実行された場合、遠隔操作装置2の所定の操作に基づいてロボットアーム60が移動されるフォローイング動作モードに移行する。これにより、偏差異常のエラーが解消された状態で、適切に、フォローイング動作を行うことができる。
【0108】
制御装置130は、フォローイング動作モードへの移行が可能となるフォローイング可能条件が満たされている場合、イネーブルスイッチ81による偏差異常のエラーのリセットの受け付けを停止する。これにより、偏差異常のエラーのリセットの受け付けの制御と、フォローイング動作の制御とが干渉することを抑制できる。
【0109】
制御装置130は、偏差異常のエラーを検出した場合、偏差異常のエラーが発生してから所定の期間、イネーブルスイッチ81による偏差異常のエラーのリセットを受け付ける。これにより、偏差異常のエラーが発生していないタイミングで、エラーのリセットが受け付けられてしまうことを抑制できる。
【0110】
手術支援システム100は、偏差異常のエラーを報知する報知部24aおよび報知部8dをさらに備える。制御装置130は、偏差異常のエラーを検出した場合、偏差異常のエラーを報知するように報知部24aおよび報知部8dを制御する。これにより、操作者は、偏差異常のエラーが発生したことを容易に認識できる。
【0111】
制御装置130は、偏差異常のエラーを検出した場合、アーム操作部80によるロボットアーム60の移動を促すことと、イネーブルスイッチ81の操作を促すこととのうちの少なくとも一方を、モニタ24および表示部8bに表示させる。これにより、操作者は、モニタ24および表示部8bを視認することにより、偏差異常のエラーの解消のためのメッセージを容易に視認することができる。
【0112】
手術支援システム100は、内視鏡6により撮影された画像を表示するモニタ24を備える。手術支援システム100は、モニタ24とは異なる表示部8bをさらに備える。制御装置130は、偏差異常のエラーを検出した場合、アーム操作部80によるロボットアーム60の移動を促すことと、イネーブルスイッチ81、エラーリセットボタン8c、エラーリセットボタン26aおよびエラーリセットボタン33dの操作を促すこととのうちの少なくとも一方を、モニタ24と表示部8bとのうちの少なくとも一方に表示させる。これにより、偏差異常のエラーを検出した場合、アーム操作部80によるロボットアーム60の移動を促すことと、イネーブルスイッチ81、エラーリセットボタン8c、エラーリセットボタン26aおよびエラーリセットボタン33dの操作を促すこととのうちの少なくとも一方が、モニタ24と表示部8bとの両方に表示されるので、操作者は、より容易に、偏差異常のエラーの解消の方法を視認することができる。
【0113】
手術器具4は、先端に鉗子4bが配置されているインストゥルメントを含む。制御装置130は、遠隔操作装置2の操作によりロボットアーム60が移動されるフォローイング動作モードへの移行のために必要となるフォローイング必要条件が満たされている場合に、遠隔操作装置2による鉗子4bの開閉の動作のみを受け付ける。ここで、偏差異常のエラーが発生した場合に鉗子4bによって臓器が把持されている場合がある。また、偏差異常のエラーが発生した場合、フォローイング動作が可能となるフォローイング可能条件が満たされなくなる。このため、偏差異常のエラーが発生した場合、エラーがリセットされるまで、鉗子4bの臓器の把持状態の解除を行うことができない。そこで、上記のように、制御装置130が、フォローイング必要条件が満たされている場合に、遠隔操作装置2による鉗子4bの開閉の動作のみを受け付けることによって、偏差異常のエラーがリセットされるまでの間でも、鉗子4bの臓器の把持状態を解除できる。
【0114】
アーム操作部80は、イネーブルスイッチ81とは異なるアジャストメントボタン86を含む。ジョイスティック82は、傾けられた方向にロボットアーム60を移動させる。制御装置130は、ジョイスティック82が傾いたままでエラーが検出された場合、アジャストメントボタン86が操作されることにより、ジョイスティック82が傾いている方向にロボットアーム60を自動で移動させる。たとえば、ジョイスティック82が他の物体と干渉したままの状態が維持された際、ジョイスティック82が傾いたままの異常が発生する。この場合、アーム操作部80によるロボットアーム60の移動の操作が禁止されていると、イネーブルスイッチ81を押下したとしてもジョイスティック82が傾いたままの状態が解消できない。そこで、上記のように、制御装置130は、ジョイスティック82が傾いたままでエラーが検出された場合、イネーブルスイッチ81とは異なるアジャストメントボタン86が操作されることにより、ジョイスティック82が傾いている方向にロボットアーム60を自動で移動させることによって、ジョイスティック82が傾いたままの状態を容易に解消することができる。
【0115】
制御装置130は、ジョイスティック82の傾きが解消された場合、ロボットアーム60の移動を自動で停止する。これにより、ロボットアーム60の移動を停止させるための操作者の手間を省くことができる。
【0116】
ロボットアーム60は、手術器具4が取り付けられたホルダ71を第1の位置と第2の位置の間で並進させる並進移動機構部70と、ロボットアーム60に取り付けられ、ロボットアーム60を操作するアーム操作部80と、をさらに備える。アーム操作部80は、モード切替ボタン84を含む。制御装置130は、ホルダ71から手術器具4が取り外された際に、並進移動機構部70によりホルダ71を第1の位置に移動させ、ホルダ71が第1の位置に移動している最中にホルダ71の移動を阻害するエラーが発生した場合において、モード切替ボタン84が操作された際、ホルダ71の第1の位置への移動を停止させ、アーム操作部80によるロボットアーム60の操作を受け付ける。ここで、ロボットアーム60から手術器具4が取り外された後、ホルダ71が第1の位置に移動するまでアーム操作部80によるロボットアーム60の操作が禁止されると、ホルダ71が第1の位置に移動している最中にホルダ71の移動を阻害するエラーが発生しても、ホルダ71の移動を阻害するエラーを除去することができない。そこで、上記のように、モード切替ボタン84が操作されることにより、アーム操作部80によるロボットアーム60の操作の受け付けが容認されるので、ホルダ71の移動を阻害するエラーが発生した場合、アーム操作部80によりロボットアーム60を移動させて、ホルダ71の移動を阻害する要因を除去できる。
【0117】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更または変形例が含まれる。
【0118】
上記実施形態では、偏差異常のエラーをリセットするイネーブルスイッチ81が、アーム操作部80に配置されている例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、イネーブルスイッチ81が、アーム操作部80以外のロボットアーム60の部分に配置されていてもよい。
【0119】
上記実施形態では、イネーブルスイッチ81が、偏差異常のエラーをリセットするリセット部を兼ねている例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、イネーブルスイッチ81とは別個に、偏差異常のエラーをリセットするリセット部をアーム操作部80などに配置してもよい。
【0120】
上記実施形態では、医療用台車3にエラーリセットボタン33dが配置され、遠隔操作装置2にエラーリセットボタン26aが配置され、画像処理ユニット8にエラーリセットボタン8cが配置される例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、医療用台車3、遠隔操作装置2および画像処理ユニット8以外の部分にも偏差異常のエラーをリセットするリセット部が配置されていてもよい。
【0121】
上記実施形態では、制御装置130は、偏差異常のエラーを検出した場合、エラー音により、偏差異常のエラーを報知する例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、ランプの点灯などにより、偏差異常のエラーが報知されてもよい。
【0122】
上記実施形態では、制御装置130は、偏差異常のエラーを検出した場合、アーム操作部80によるロボットアーム60の移動を促すことと、イネーブルスイッチ81、エラーリセットボタン8c、エラーリセットボタン26aおよびエラーリセットボタン33dの操作を促すこととの両方を、モニタ24および表示部8bに表示させる例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、制御装置130は、上記のメッセージのいずれかのみをモニタ24および表示部8bに表示させてもよい。
【0123】
上記実施形態では、ジョイスティック82が傾いたままでエラーが検出された場合、アジャストメントボタン86が操作されることにより、ジョイスティック82が傾いている方向にロボットアーム60が移動される例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、アジャストメントボタン86以外のスイッチが操作されることにより、ジョイスティック82が傾いている方向にロボットアーム60が移動されてもよい。
【0124】
上記実施形態では、ホルダ71が第1の位置に移動している最中にホルダ71の移動を阻害するエラーが発生した場合において、モード切替ボタン84が操作された際、ホルダ71の第1の位置への移動が停止される例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、モード切替ボタン84以外のスイッチが操作されることにより、ホルダ71の第1の位置への移動が停止されてもよい。
【0125】
上記実施形態では、ロボットアーム60が4つ設けられている例を示したが、本開示はこれに限られない。本開示では、ロボットアーム60の数は、少なくとも1つ以上設けられていれば他の任意の数であってもよい。
【0126】
上記実施形態では、アーム部61およびポジショナ40が7軸多関節ロボットから構成されている例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、アーム部61およびポジショナ40が7軸多関節ロボット以外の軸構成の多関節ロボットなどから構成されていてもよい。7軸多関節ロボット以外の軸構成とは、例えば、6軸や8軸である。
【0127】
上記実施形態では、手術支援ロボット1が、医療用台車3と、ポジショナ40と、アームベース50とを備えている例を示したが、本開示はこれに限らない。たとえば、医療用台車3と、ポジショナ40と、アームベース50とは必ずしも必要なく、手術支援ロボット1が、ロボットアーム60だけで構成されてもよい。
【0128】
本明細書で開示する要素の機能は、開示された機能を実行するよう構成またはプログラムされた汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、従来の回路、および/または、それらの組み合わせ、を含む回路または処理回路を使用して実行できる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路または回路と見なされる。本開示において、回路、ユニット、または手段は、列挙された機能を実行するハードウェアであるか、または、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されているハードウェアであってもよいし、あるいは、列挙された機能を実行するようにプログラムまたは構成されているその他の既知のハードウェアであってもよい。ハードウェアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、回路、手段、またはユニットはハードウェアとソフトウェアの組み合わせであり、ソフトウェアはハードウェアおよび/またはプロセッサの構成に使用される。
【0129】
[態様]
上記した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0130】
(項目1)
先端に手術器具が取り付けられ、駆動部および前記駆動部の位置を検出するセンサを含むロボットアームと、
前記手術器具に対する操作を受け付ける操作装置と、
前記操作装置が受け付けた前記操作に基づいて前記駆動部の位置を指令する指令値を生成し、前記指令値に基づいて前記駆動部を駆動する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記指令値と前記センサにより検出された前記駆動部の位置との差が許容範囲を超えた場合に偏差異常のエラーを検出し、
前記偏差異常のエラーが発生した場合に、前記偏差異常のエラーをリセットするリセット部が前記ロボットアームに配置される、手術支援システム。
【0131】
(項目2)
前記ロボットアームは、前記ロボットアームを移動させるアーム操作具を含むアーム操作部を備え、
前記リセット部は、前記アーム操作部に配置されている、項目1に記載の手術支援システム。
【0132】
(項目3)
前記制御装置は、前記偏差異常のエラーを検出した場合、前記アーム操作部の入力のみ受け付ける、項目2に記載の手術支援システム。
【0133】
(項目4)
前記アーム操作部は、押下されることにより前記アーム操作具による前記ロボットアームの移動を許可するイネーブルスイッチをさらに含み、
前記イネーブルスイッチは、前記リセット部を兼ねている、項目2に記載の手術支援システム。
【0134】
(項目5)
前記ロボットアームを移動する台車をさらに備え、
前記リセット部は、前記操作装置と前記台車とのうちの少なくとも一方にも配置されている、項目1から項目4までのいずれか1項に記載の手術支援システム。
【0135】
(項目6)
前記制御装置は、前記リセット部による前記偏差異常のエラーのリセットが実行された場合、前記操作装置の所定の操作に基づいて前記ロボットアームが移動されるフォローイング動作モードに移行する、項目1から項目5までのいずれか1項に記載の手術支援システム。
【0136】
(項目7)
前記制御装置は、前記フォローイング動作モードへの移行が可能となるフォローイング可能条件が満たされている場合、前記リセット部による前記偏差異常のエラーのリセットの受け付けを停止する、項目6に記載の手術支援システム。
【0137】
(項目8)
前記制御装置は、前記偏差異常のエラーを検出した場合、前記偏差異常のエラーが発生してから所定の期間、前記リセット部による前記偏差異常のエラーのリセットを受け付ける、項目1から項目7までのいずれか1項に記載の手術支援システム。
【0138】
(項目9)
前記偏差異常のエラーを報知する報知部をさらに備え、
前記制御装置は、前記偏差異常のエラーを検出した場合、前記偏差異常のエラーを報知するように前記報知部を制御する、項目1から項目8までのいずれか1項に記載の手術支援システム。
【0139】
(項目10)
表示装置をさらに備え、
前記ロボットアームは、前記ロボットアームを移動させるアーム操作具を含むアーム操作部を含み、
前記制御装置は、前記偏差異常のエラーを検出した場合、前記アーム操作部による前記ロボットアームの移動を促すことと、前記リセット部の操作を促すこととのうちの少なくとも一方を、前記表示装置に表示させる、項目1から項目9までのいずれか1項に記載の手術支援システム。
【0140】
(項目11)
前記操作装置は、内視鏡により撮影された画像を表示する第1表示装置を含み、
前記第1表示装置とは異なる第2表示装置、をさらに備え、
前記ロボットアームは、前記ロボットアームを移動させるアーム操作具を含むアーム操作部を含み、
前記制御装置は、前記偏差異常のエラーを検出した場合、前記アーム操作部による前記ロボットアームの移動を促すことと、前記リセット部の操作を促すこととのうちの少なくとも一方を、前記第1表示装置と前記第2表示装置とのうちの少なくとも一方に表示させる、項目1から項目10までのいずれか1項に記載の手術支援システム。
【0141】
(項目12)
前記手術器具は、先端に鉗子が配置されているインストゥルメントを含み、
前記制御装置は、前記操作装置の操作により前記ロボットアームが移動されるフォローイング動作モードへの移行のために必要となるフォローイング必要条件が満たされている場合に、前記操作装置による前記鉗子の開閉の動作のみを受け付ける、項目1から項目11までのいずれか1項に記載の手術支援システム。
【0142】
(項目13)
前記ロボットアームは、前記ロボットアームを移動させるアーム操作具を含むアーム操作部を含み、
前記アーム操作部は、押下されることにより前記アーム操作具による前記ロボットアームの移動を許可するイネーブルスイッチと、前記イネーブルスイッチとは異なる第2スイッチとを含み、
前記アーム操作具は、傾けられた方向に前記ロボットアームを移動させるジョイスティックであり、
前記制御装置は、前記ジョイスティックが傾いたままでエラーが検出された場合、前記第2スイッチが操作されることにより、前記ジョイスティックが傾いている方向に前記ロボットアームを自動で移動させる、項目1から項目12までのいずれか1項に記載の手術支援システム。
【0143】
(項目14)
前記制御装置は、前記ジョイスティックの傾きが解消された場合、前記ロボットアームの移動を自動で停止する、項目13に記載の手術支援システム。
【0144】
(項目15)
前記ロボットアームは、前記手術器具が取り付けられた手術器具取付部を第1の位置と第2の位置の間で並進させる並進移動機構部と、
前記ロボットアームに取り付けられ、前記ロボットアームを操作するアーム操作部と、
をさらに備え、
前記アーム操作部は、第3スイッチを含み、
前記制御装置は、
前記手術器具取付部から前記手術器具が取り外された際に、前記並進移動機構部により前記手術器具取付部を前記第1の位置に移動させ、
前記手術器具取付部が前記第1の位置に移動している最中に前記手術器具取付部の移動を阻害するエラーが発生した場合において、前記第3スイッチが操作された際、前記手術器具取付部の前記第1の位置への移動を停止させ、前記アーム操作部による前記ロボットアームの操作を受け付ける、項目1から項目14までのいずれか1項に記載の手術支援システム。
【0145】
(項目16)
先端に手術器具が取り付けられ、駆動部および前記駆動部の位置を検出するセンサを含むロボットアームと、
前記手術器具に対する操作を受け付ける操作装置と、
前記操作装置が受け付けた前記操作に基づいて前記駆動部の位置を指令する指令値を生成し、前記指令値に基づいて前記駆動部を駆動する制御装置と、を備える、手術支援システムの制御方法であって、
前記制御装置により、前記指令値と前記センサにより検出された前記駆動部の位置との差が許容範囲を超えた場合に偏差異常のエラーを検出することと、
前記偏差異常のエラーが発生した場合に、前記ロボットアームに配置されたリセット部による前記偏差異常のエラーのリセットを受け付けることと、を備える、手術支援システムの制御方法。
【0146】
(項目17)
先端に手術器具が取り付けられ、駆動部および前記駆動部の位置を検出するセンサを含むロボットアームと、
前記ロボットアームに取り付けられ、前記ロボットアームを操作するアーム操作部と、
前記アーム操作部が受け付けた前記操作に基づいて前記駆動部の位置を指令する指令値を生成し、前記指令値に基づいて前記駆動部を駆動する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記指令値と前記センサにより検出された前記駆動部の位置との差が許容範囲を超えた場合に偏差異常のエラーを検出し、
前記偏差異常のエラーが発生した場合に、前記偏差異常のエラーをリセットするリセット部が前記ロボットアームに配置される、手術支援システム。
【符号の説明】
【0147】
2 遠隔操作装置(操作装置)
3 医療用台車(台車)
4 手術器具
4b 鉗子
6 内視鏡
8b 表示部(表示装置、第2表示装置)
8c エラーリセットボタン(リセット部)
8d 報知部
24 モニタ(表示装置、第1表示装置)
24a 報知部
26a エラーリセットボタン(リセット部)
33d エラーリセットボタン(リセット部)
60 ロボットアーム
70 並進移動機構部
71 ホルダ(手術器具取付部)
80 アーム操作部
81 イネーブルスイッチ(リセット部)
82 ジョイスティック(アーム操作具)
84 モード切替ボタン(第3スイッチ)
86 アジャストメントボタン(第2スイッチ)
100 手術支援システム
130 制御装置
E1、E2、E3 エンコーダ(センサ)
M1、M2、M3 サーボモータ(駆動部)
図1
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