(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167999
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】容器
(51)【国際特許分類】
B65D 65/42 20060101AFI20231116BHJP
C09D 4/02 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
B65D65/42 C
C09D4/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079590
(22)【出願日】2022-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390002370
【氏名又は名称】大塚包装工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】島田 健太
(72)【発明者】
【氏名】下山 浩平
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 忠司
(72)【発明者】
【氏名】菱沼 圭之郎
【テーマコード(参考)】
3E086
4J038
【Fターム(参考)】
3E086AA21
3E086AB01
3E086AD02
3E086BA04
3E086BA14
3E086BB54
3E086CA01
3E086CA28
3E086CA35
3E086DA08
4J038CG142
4J038FA111
4J038GA08
4J038MA03
4J038PB04
(57)【要約】
【課題】印刷物が容器内面と擦れることにより印刷面に傷が入ることを抑制することができる容器を提供する。
【解決手段】内面に硬化層を有する容器であって、上記硬化層は、光重合性化合物、球状微粒子ポリマー、シリコーン(メタ)アクリレート、光重合開始剤を少なくとも含有する組成物を硬化させてなり、上記球状微粒子ポリマーは、復元率が17~25%であり、上記硬化層の質量を基準として、4~12質量%含有されており、上記シリコーン(メタ)アクリレートに由来する成分を、上記硬化層の質量を基準として、1~9質量%含有されている容器。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面に硬化層を有する容器であって、
前記硬化層は、光重合性化合物、球状微粒子ポリマー、シリコーン(メタ)アクリレート、光重合開始剤を少なくとも含有する組成物を硬化させてなり、
前記球状微粒子ポリマーは、復元率が17~25%であり、前記硬化層の質量を基準として、4~12質量%含有されており、
前記シリコーン(メタ)アクリレートに由来する成分を、前記硬化層の質量を基準として、1~9質量%含有されている容器。
【請求項2】
前記硬化層において、前記光重合性化合物に由来する成分は、前記光重合性化合物に由来する成分の全体の質量を基準として、多官能オリゴマーに由来する成分を50質量%以上含有する請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記多官能オリゴマーは、アミン変性多官能性オリゴマーである請求項2に記載の容器。
【請求項4】
化粧料容器、菓子、健康食品、医薬品、医薬部外品、日用品を収納する請求項1又は2に記載の容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に関する。
【背景技術】
【0002】
経済発展と共に、食生活の向上、物流の発展が進んでいる。印刷が施された化粧品等のボトル、菓子袋等の袋はコートボール紙等から得られる収納容器に梱包され、トラック等により輸送される。
印刷が施された化粧品等のボトル、菓子袋等の袋は、輸送時の振動により、収納容器内面と擦れることにより、ボトル、袋の印刷面に傷が入る問題を有していた。
【0003】
この問題を解決するために、コートボール紙から得られる収納容器の内面に、既存の紙用コーティング用活性エネルギー線硬化型コーティング組成物を塗布して硬化しても、傷を低減させることができなかった(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0004】
また、コートボール紙等の紙基材にフィルムがラミネートされたラミ紙が使用されているが、近年、環境面からプラスチックの低減が要求されるようになってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭59-116495号公報
【特許文献2】特開2015-61897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、収納容器に梱包された印刷が施された化粧料容器、菓子、健康食品、医薬品、医薬部外品、日用品等のボトルや袋(以下、印刷物ともいう)が、容器の内面と擦れることにより印刷面に傷が入ることを抑制することができる容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、容器の内面に特定の組成物を塗工して硬化した硬化層を含む容器を使用することにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち、本発明は、内面に硬化層を有する容器であって、上記硬化層は、光重合性化合物、球状微粒子ポリマー、シリコーン(メタ)アクリレート、光重合開始剤を少なくとも含有する組成物を硬化させてなり、上記球状微粒子ポリマーは、復元率が17~25%であり、上記硬化層の質量を基準として、4~12質量%含有されており、上記シリコーン(メタ)アクリレートに由来する成分を、上記硬化層の質量を基準として、1~9質量%質量%含有されている容器である。
上記硬化層において、上記光重合性化合物に由来する成分は、上記光重合性化合物に由来する成分の質量を基準として、多官能オリゴマーに由来する成分を50質量%以上含有することが好ましい。
また、上記多官能オリゴマーは、アミン変性多官能性オリゴマーであることが好ましい。
また、本発明の容器は、化粧料容器、菓子、健康食品、医薬品、医薬部外品、日用品を収容することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、印刷物が容器内面と擦れることにより印刷面に傷が入ることを抑制することができる容器を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の容器は、内面に硬化層を有する容器であって、上記硬化層は、光重合性化合物、球状微粒子ポリマー、シリコーン(メタ)アクリレート、光重合開始剤を少なくとも含有する組成物を硬化させてなり、上記球状微粒子ポリマーは、復元率が17~25%であり、上記硬化層の質量を基準として、4~12質量%含有されており、上記シリコーン(メタ)アクリレートに由来する成分を、上記硬化層の質量を基準として、1~9質量%含有されている。
まずは、上記硬化層を構成する組成物について説明する。
【0011】
<組成物>
上記組成物は、光重合性化合物、球状微粒子ポリマー、シリコーン(メタ)アクリレート、光重合開始剤を少なくとも含有する。
【0012】
(光重合性化合物)
上記組成物は、光重合性化合物を含有する。
【0013】
上記光重合性化合物としては、エチレン性不飽和結合を2つ以上備えた化合物であり、公知のエチレン性不飽和結合を2つ以上備えた、例えば、下記の多官能(メタ)アクリレート系化合物、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリレート系化合物、多官能オリゴマー等を用いることができる。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、メタクリレート及び/又はアクリレートを意味する。
また、「多官能」とは、反応性官能基を2以上有することを意味する。
【0014】
上記多官能(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレートジカプロラクトネートジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2,5-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,7-ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,14-テトラデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-テトラデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,16-ヘキサデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-ヘキサデカンジオールジ(メタ)アクリレート、2-メチル-2,4-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、2,4-ジメチル-2,4-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオ-ルジ(メタ)アクリレート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールオクタンジ(メタ)アクリレート、2-エチル-1,3-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2-メチル-1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジカプロラクトネートジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールSテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールFテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAテトラエチレンオキサイド付加体ジカプロラクトネートジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFテトラエチレンオキサイド付加体ジカプロラクトネートジ(メタ)アクリレート等、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン及びジペンタエリスリトール等の多価アルコールのジ(メタ)アクリレート等の2官能モノマー;グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリカプロラクトネートトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールヘキサントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールオクタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の3官能モノマー;及びこれらの3EO(エチレンオキサイド)変性物、6EO変性物、9EO変性物(3EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、3EO変性トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、3EO変性トリメチロールヘキサントリ(メタ)アクリレート等)、トリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラカプロラクトネートテトラ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラカプロラクトネートテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールエタンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールブタンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールオクタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールポリアルキレンオキサイドヘプタ(メタ)アクリレート等の4官能以上のモノマー;等を挙げることができる。
【0015】
上記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸-2-ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸-3-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-1-メチル-2-ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-4-ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸-1-メチル-3-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-1-ビニロキシメチルプロピル、(メタ)アクリル酸-2-メチル-3-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-3-メチル-3-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-1,1-ジメチル-2-ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸-3-ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸-1-メチル-2-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-2-ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸-4-ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸-5-ビニロキシペンチル、(メタ)アクリル酸-6-ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸-4-ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸-3-ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸-2-ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸-p-ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸-m-ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸-o-ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)エチル等が挙げられる。
【0016】
上記多官能オリゴマーとしては、エポキシ変性(メタ)アクリレートオリゴマー、植物油変性多官能(メタ)アクリレートオリゴマー、ロジン変性エポキシアクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、アミン変性ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、アミン変性ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、ウレタン変性(メタ)アクリレート、アミン変性(メタ)アクリレートオリゴマー等を挙げることができる。
【0017】
上記多官能オリゴマーとしては、組成物の硬化性の観点から、アミン変性多官能性オリゴマーを含有することが好ましく、アミン変性ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、アミン変性ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマーから選択される少なくとも1種を含有することがより好ましい。
【0018】
上記多官能オリゴマーは、硬化性の観点から、光重合性化合物の全体の質量に対して、50質量%以上含有することが好ましい。
また、上記多官能オリゴマーは、硬化性、耐摩擦性の観点から、光重合性化合物の全体の質量に対して、90質量%以下であることが好ましい。
【0019】
上記光重合性化合物は、上記例示した化合物以外にも、性能が低下しない範囲で、公知の単官能光重合性化合物を含有させることができる。
【0020】
上記光重合性化合物は、上記組成物における固形分の質量を基準として、10~90質量%含有させることが好ましい。
【0021】
(球状微粒子ポリマー)
上記組成物は、球状微粒子ポリマーを含有する。
本明細書において、球状とは、微粒子の長軸の長さと短軸の長さの比率が0.8以上であることを意味する。
【0022】
上記球状微粒子ポリマーは、硬化層に滑り性を好適に付与する観点から、真球であることが好ましい。
なお、上記真球とは、微粒子の長軸の長さと短軸の長さの比率が0.9以上であることを意味する。
【0023】
上記球状微粒子ポリマーは、復元率が17~25%である。
上記球状微粒子ポリマーの復元率が17~25%であることにより、硬化層とした場合に滑り性を付与して印刷物の傷の発生を抑制することができる。
なお、復元率は、9.8mNの負荷をかけた後、荷重を0.98mNまで減少させたときの変位量を測定(粒子径の変位量)し、算出したものを意味する。
復元率(%)=粒子径の変位量(μm)/粒子径(μm)×100
【0024】
上記球状微粒子ポリマーとしては、例えば、ポリアミド系球状微粒子ポリマー、(メタ)アクリル系ポリマー球状微粒子ポリマー、ポリウレタン系球状微粒子ポリマー、フェノール系球状微粒子ポリマー、オレフィン系球状微粒子ポリマーが例示できる。
【0025】
上記球状微粒子ポリマーは、(メタ)アクリル系ポリマー球状微粒子ポリマーであることが好ましい。
上記(メタ)アクリル系ポリマー球状微粒子ポリマーの具体例としては、テクポリマーMBXシリーズ、BMXシリーズ、ABXシリーズ、ARXシリーズ、AFXシリーズ(積水化成品工業社製)が挙げられる。
【0026】
上記球状微粒子ポリマーは、硬化層とした場合に滑り性を付与して印刷物の傷の発生を抑制する観点から、平均粒子径が3~15μmであることが好ましい。
上記平均粒子径とは、体積平均粒子径を意味し、例えば、レーザー回析式粒度測定法、測定装置:ナノトラック(UPA-EX150、日機装社製)で測定することができる。
【0027】
上記球状微粒子ポリマーは、耐摩擦性の観点から、10%圧縮強度が0.5~1.5kgf/mm2であることが好ましい。
上記10%圧縮強度は、例えば、株式会社島津製作所製の微小圧縮試験機MCTにより測定することができる。
【0028】
上記球状微粒子ポリマー由来する成分を、上記組成物における固形分の質量を基準として、4~12質量%含有させることが好ましい。
【0029】
(シリコーン(メタ)アクリレート)
上記組成物は、シリコーン(メタ)アクリレートを含有する。
【0030】
上記シリコーン(メタ)アクリレートとしては、アクリル構造とシリコーン構造を一分子中に組み込んだ化合物である。シリコーン変性アクリレートとしては、種類は特に制限されるものではないが、アクリル基を有するポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンやアクリル基を有するポリエステル変成ポリジメチルシロキサン等のシリコーンアクリレートを好適に用いることができる。
【0031】
上記シリコーン(メタ)アクリレートの具体例としては、KF-2012、KF-393、KF-684、KF-8002、KF-8004、KF-8005、KF-8021、KF-860、KF-861、KF-865、KF-867、KF-868、KF-869、KF-869、KF-877、KF-880、KF-889、KF-99、KF-9901、X-22-170、X-22-173、X-22-174、X-22-176、X-22-2404、X-22-2426、X-22-3939A(以上商品名、信越シリコーン社製)、TEGO Rad 2010、TEGO Rad 2011、TEGO Rad 2100、TEGO Rad 2200N、TEGO Rad 2250、TEGO Rad 2300、TEGO Rad 2500、TEGO Rad 2650、TEGO Rad 2700、TEGO Rad 2800(以上商品名、エボニックジャパン社製)等が挙げられる。
【0032】
上記シリコーン(メタ)アクリレートは、硬化性、耐摩擦性の観点から、完全架橋性であることが好ましい。
なお、完全架橋性とは、分子内にアクリレート基を有するシリコーンであることを意味する。
【0033】
上記シリコーン(メタ)アクリレートは、硬化層に耐摩擦性を好適に付与する観点から、上記組成物における固形分の質量を基準として、1~9質量%含有させることが好ましい。
【0034】
(光重合開始剤)
上記組成物は、光重合開始剤を含有する。
【0035】
上記光重合開始剤としては特に限定されないが、α-ヒドロキシケトン系重合開始剤やアシルフォスフィン系開始剤を使用することができる。
【0036】
上記アシルフォスフィン系重合開始剤としては、ビス-2,6-ジメトキシベンゾイル-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド(OmniradTPO)、ビス(2,4,6-トリメチルべンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(Omnirad 819、又はSB-PI719)、エトキシ(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(TPOL)等が例示できる。また、上記α-ヒドロキシケトン系重合開始剤としては、2-ヒドロキシ-1-{4-〔4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル〕-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン(Omnirad127)、2-ヒドロキシ-4’-ヒドロキシエトキシ-2-メチルプロピオフェノン(Omnirad2959)、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(Omnirad184)、オリゴ{2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン}(ESACURE ONE)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が例示できる。
なお、チオキサントン系重合開始剤を含有しなくても良い。
【0037】
上記光重合開始剤は、上記組成物における固形分の質量を基準として、7~15.0質量%含有することが好ましい。
【0038】
(光増感剤)
上記組成物は、エネルギー線として発光ダイオード(LED)を使用する場合は、硬化性を促進する等のために、400nm以上の主に紫外線の波長域で光吸収特性を有し、その範囲の波長の光により硬化反応の増感機能が発現する光増感剤を併用することができる。
なお、上記「400nm以上の波長の光により増感機能が発現する」とは、400nm以上の波長域で光吸収特性を有することをいう。
このような増感剤を用いることで、上記組成物は、LED硬化性を促進され得る。
【0039】
上記光増感剤は、アントラセン系増感剤、チオキサントン系増感剤等であり、好ましくは、チオキサントン系増感剤である。光増感剤は、併用されてもよい。具体的には、光増感剤は、9,10-ジブトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、9,10-ジプロポキシアントラセン、9,10-ビス(2-エチルヘキシルオキシ)アントラセン等のアントラセン系増感剤、2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系増感剤等である。
【0040】
(その他の成分)
上記組成物は、必要に応じて、樹脂、溶媒、界面活性剤、可塑剤、重合禁止剤、表面調整剤、光安定化剤、酸化防止剤、抗菌剤等の種々の添加剤を本発明の効果が毀損されない範囲で使用できる。
【0041】
また、上記組成物は、無機又は有機の公知の色材を含有しても良い。
上記色材は、本発明の効果が毀損されない範囲で使用できる。
【0042】
(硬化層)
上記組成物は、上記の各材料を、例えば、分散混合し、粘度を調整することによって得ることができる。
【0043】
上記組成物を硬化して硬化層を形成する方法としては特に限定されず、上記組成物を公知の方法により塗布し、公知の方法により硬化すればよい。
上記塗布方法としては、ロールコーター、チャンバーコーター等のフレキソコーター、グラビアコーター等を用いた塗布方法、オフセット印刷を用いた塗布方法等が挙げられる。
また、上記硬化方法としては、紫外線(UV)、紫外線(発光ダイオード(LED)等の光源を用いる方法が挙げられる。
【0044】
上記硬化層の厚みとしては、耐摩擦性の観点から、2.0~5.0μmであることが好ましい。
【0045】
上記硬化層は、意匠性の観点から、村上式デジタル光沢計(村上色彩研究所製)を用いて測定した60°反射光沢値が、10~25であることが好ましい。
【0046】
上記硬化層は、印刷物の傷の発生を抑制する観点から、東洋精機(株)製滑り角度試験機により測定される滑り角が10~40度であることが好ましい。
【0047】
上記硬化層は、上述した組成物に含有される光重合性化合物に由来する成分が、硬化層の質量を基準として、10~90質量%であることが好ましい。
なお、上記硬化層の質量を基準とした光重合性化合物に由来する成分の質量の割合は、上述した組成物における固形分の質量を基準とした光重合性化合物の質量の割合と一致する。
【0048】
上記硬化層は、上述した組成物に含有される球状微粒子ポリマーが、硬化層の質量を基準として、4~12質量%であることが好ましい。
なお、上記硬化層の質量を基準とした球状微粒子ポリマーの質量の割合は、上述した組成物における固形分の質量を基準とした球状微粒子ポリマーの質量の割合と一致する。
【0049】
上記硬化層は、上述した組成物に含有されるシリコーン(メタ)アクリレートに由来する成分が、硬化層の質量を基準として、1~9質量%であることが好ましい。
なお、上記硬化層の質量を基準としたシリコーン(メタ)アクリレートに由来する成分の質量の割合は、上述した組成物における固形分の質量を基準としたシリコーン(メタ)アクリレートの質量の割合と一致する。
【0050】
上記硬化層中の光重合性化合物に由来する成分、球状微粒子ポリマー、及び、シリコーン(メタ)アクリレートに由来する成分は、配合時の含有量により特定することができる。
【0051】
(容器)
本発明の容器としては、印刷物を収容できる形状、大きさ、素材等を有するものであれば特に限定されない。
【0052】
上記容器を構成する基材としては、例えば、上質紙、コート紙、コートボール紙、再生紙等の各種紙材、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の各種基材が利用できる。
【0053】
本発明の容器は、印刷物を収容する容器であることが好ましい。
上記印刷物としては、印刷面を有するものであれば特に限定されず、化粧料容器(化粧水、乳液、整髪料等の容器)、菓子、健康食品、医薬品、医薬部外品、日用品等のボトルや袋等が挙げられる。
【実施例0054】
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味するものである。
【0055】
実施例及び比較例では、以下に記載の材料を用いた。
(光重合性化合物)
TPGDA(2官能モノマー、トリプロピレングリコールジアクリレート、Miwon社製)
HDDA(2官能モノマー、1,6-ヘキサジオールジアクリレート、ダイセルオルネクス社製)
DPGDA(2官能モノマー、ジプロピレングリコールジアクリレート、DSM-Agi社製)
アミン変性ポリエーテルアクリレートオリゴマー(2.5官能、酸価56mgKOH/g、エベクリル 81、ダイセル・オルネクセス社製)
アミン変性ポリエステルアクリレートオリゴマー(4官能、酸価60mgKOH/g、エベクリル 80、ダイセル・オルネクセス社製)
(光重合開始剤)
光重合開始剤(ランテキュア1104、Runtec社製)
(球状微粒子ポリマー)
真球状微粒子ポリマーA(テクポリマーAFX-8、積水化成品工業社製、架橋ポリアクリル酸エステル、平均粒子径8μm、10%圧縮強度0.55kgf/mm2、復元率20.0%)
真球状微粒子ポリマーB(テクポリマーMBX-8、積水化成品工業社製、架橋ポリメタクリル酸メチル、平均粒子径8μm、10%圧縮強度2.50kgf/mm2、復元率5.3%)
真球状微粒子ポリマーC(テクポリマーBM30X-8、積水化成品工業社製、架橋ポリメタクリル酸ブチル、平均粒子径8μm、10%圧縮強度1.86kgf/mm2、復元率16.0%)
真球状微粒子ポリマーD(テクポリマーABX-8、積水化成品工業社製、架橋ポリアクリル酸エステル、平均粒子径8μm、10%圧縮強度1.05kgf/mm2、復元率17.6%)
(シリコーン(メタ)アクリレート)
シリコーンアクリレートA(TEGO RAD 2100、エボニックジャパン社製、完全架橋性シリコーンポリエーテルアクリレート)
シリコーンアクリレートB(TEGO RAD 2800、エボニックジャパン社製、完全架橋性シリコーンアクリレート)
シリコーンアクリレートC(EBECRYL 350、ダイセル・オルネクセス社製、シリコーンジアクリレート)
(比較用シリコーン)
ポリシロキサン共重合体(テゴグライド 410、エボニックデクサ社製)
【0056】
(実施例1~11、比較例1~9)
表1及び2に記載の処方に基づいて、実施例1~11及び比較例1~9の組成物を調製した。
実施例1~11及び比較例1~9の組成物をそれぞれ、RIテスターにより、組成物の乾燥塗布量を0.35g/m2となるようにコートボール紙(商品名:OKフレーズ、王子製紙(株)製)の印刷される側の反対面に塗布し、その後、高圧水銀ランプ120W/cm、130m/min、パス回数3回照射して硬化層を形成し、これを試験片とした。
【0057】
<評価結果>
(硬化性)
各組成物を塗工した塗面(硬化層)の中央に指先で軽く触れたときに、指先に塗膜が付着する度合いを以下の基準で評価した。その結果を表1及び2に示した。
(評価基準)
○:塗膜が全く付着しない。
△:塗膜が付着するが、タックが認められない。
×:塗膜が付着し、タックが認められる。
【0058】
(レベリング)
各組成物を塗工した塗面(硬化層)を目視にて確認し、以下の基準で評価した。その結果を表1及び2に示した。
(評価基準)
〇:良好なもの
×:不良なもの
【0059】
(光沢値)
タックフリーとなった各硬化層の光沢値の測定を行った。
測定に際しては、村上式デジタル光沢計(村上色彩研究所製)を用いて、60°反射光沢値を求めた。その結果を表1及び2に示した。
【0060】
(滑り角)
各硬化層について、東洋精機(株)製滑り角度試験機により滑り角を測定した。その結果を表1及び2に示した。
測定条件:硬化層の表面と、用紙裏面(硬化層を形成していない面)を測定
【0061】
(耐摩擦性)
PETフィルムと各硬化層の耐摩擦性を、学振型摩擦堅牢度試験機を用いて以下の評価条件で評価し、PETフィルムの上記硬化層と擦り合わせた面を目視にて確認し、以下の基準で評価した。その結果を表1及び2に示した。
なお、下記評価基準で〇のものを合格と判断した。
評価条件:硬化層の表面に対して、PETフィルム(東洋紡社製 東洋紡エステルフィルム E5100)を用いて荷重200g、ストローク50回、速度60往復/分の条件で摩擦した。
(評価基準)
〇:見た目にはないが、よく確認すれば傷本数が5本より少ないもの
△:見た目にはないが、よく確認すれば傷本数が6本以上確認されるもの
×:見た目に傷あるもの。よく確認すれば傷本数は無数あるもの
この場合の「見た目」とは、机上にサンプル(PETフィルム)を置き、サンプルに対して45~90°の角度から観察距離40~50cmで確認した場合のことをいう。
一方、「よく確認すれば」とは、手でサンプルを持ち、サンプルに対してあらゆる角度から観察距離5~10cmで確認した際に確認した場合のことをいう。
【0062】
【0063】
【0064】
表1及び2より、実施例の硬化層では、PETフィルムと擦り合わせたとしてもPETフィルムに傷が生じることを抑制できたため、容器の内面に使用した場合に、印刷物が容器内面と擦れることにより印刷面に傷が入ることを抑制することができると予測される。
【0065】
本開示(1)は、内面に硬化層を有する容器であって、上記硬化層は、光重合性化合物、球状微粒子ポリマー、シリコーン(メタ)アクリレート、光重合開始剤を少なくとも含有する組成物を硬化させてなり、上記球状微粒子ポリマーは、復元率が17~25%であり、上記硬化層の質量を基準として、4~12質量%含有されており、上記シリコーン(メタ)アクリレート由来する成分を、上記硬化層の質量を基準として、1~9質量%含有されている容器である。
本開示(2)は、上記硬化層において、上記光重合性化合物に由来する成分は、上記光重合性化合物に由来する成分の全体の質量を基準として、多官能オリゴマーに由来する成分を50質量%以上含有する本開示(1)に記載の容器である。
本開示(3)は、上記多官能オリゴマーは、アミン変性多官能性オリゴマーである本開示(2)に記載の容器である。
本開示(4)は、化粧料容器、菓子、健康食品、医薬品、医薬部外品、日用品を収納する本開示(1)~(3)の何れかに記載の容器である。